説明

集塵機

【課題】軽量小型は従来のものと同じで、特に多数の集塵機を保管するのに大きな保管スペースを必要とせず、且つフィルタの清掃、交換等のメンテナンス作業性の向上を図った集塵機を提供する。
【解決手段】筒状筐体11内を仕切板12を介して上下2つの室に仕切り、一方の室の側壁に吸気口29を設けると共に内部に筒状フィルタ25を配置し、他方の室の側壁に排気口17を設けると共に内部にファンの羽根車16と該羽根車16の外周部に位置しその吐出口が排気口17に連通するボリュート型排気通路を設けた集塵機において、筒状筐体11を横断面矩形状にすると共に排気口17を複数とし、ボリュート型排気通路を排気口と同数とし、該ボリュート型排気通路の吐出口をそれぞれ排気口に接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ及びファンを備え、ファンでフィルタを介して空気を吸引し、該空気中に浮遊する塵芥を除去し、塵芥の除去された空気を排気する集塵機に関し、特に塵芥が多量に発生する工事現場等の作業場内で空中に浮遊する多量の塵芥を除去するのに好適な集塵機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来のこの種の集塵機の構成を示す図である。図示するように、集塵機100は横断面円形状の筐体(円筒状のケーシング)101を具備し、該筐体101内を仕切板102で上下方向の室に、即ち上部室103と下部室104に区分し、下部室104の側壁に吸気口105を設け、上部室103の側壁に排気口106を設けている。下部室104に筒状フィルタ107を配置し、上部室103にファン部108の羽根車109をその吸気部(吸気口)が仕切板103の中央部に設けた円筒状の吸引口110に対向させて配置している。111は羽根車109を回転駆動するモータである。
【0003】
モータ111を起動し羽根車109を回転駆動すると、吸気口105を通って吸気された空気は、筒状フィルタ107の外周側から内周側に通り、仕切板102に設けた吸引口110からファン部108の羽根車109の吸気部に吸引され、羽根車109の排気部から後述するボリュート型排気通路を通って排気口106から排気されるように構成されている。なお、113は筐体101の下面に取り付けたキャスターである。
【0004】
図2は上部室103に配置されているボリュート型の排気通路112の平面形状を示す図である。図2において、Dは羽根車109の外径寸法(基本渦径)、Aは排気通路112のボリュートの終点深さ、Bは排気口106の長さを示す。羽根車109の吸気部に吸引された空気は羽根車109の外周排気口からボリュート型の排気通路112を通って排気口106から排気される。ここで筐体101の最大径寸法はY1はY1=D+1.5Aとなり、筐体101の外形周囲長L1はL1=π(D+1.5A)となる。
【0005】
上記構成の集塵機100の内で単相100Vの電源で運転される小型軽量の機種は、軽量小型化、低コスト化を最優先としているため、筒状フィルタ107のメンテナンス性には特に配慮されておらず、メンテナンスに際しては、図3に示すように、筐体101の下部室(筐体本体)104から上部室103を含むファン部108を外すと共に、下部室104内に収納配置している筒状フィルタ107を取り出して行っている。集塵機としての工事現場等で日常的なメンテナンスは、筒状フィルタ107を洗浄して行っている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、上記のよう集塵機はレンタル業者が多数保有し、集塵機を使用する毎に有料で貸し与える、いわゆるレンタル形式の使用形態が多くなってきている。集塵機のレンタル業者としては多数台の集塵機を保有するため、その保管スペースが大きくなり、保管スペースが小さくなる集塵機の要望が強くなっている。上記従来の円筒状の筐体101を備えた集塵機は、筐体101の外周長さが短く、且つ耐負圧強度に有利で、筐体101を構成する鉄板等に肉薄のものを用いることができるが、円筒形状であるため多量の集塵機を保管するとなると大きい保管スペースが必要となるという問題がある。
【0007】
また、メンテナンス時、図3に示すように、上部室103を含むファン部108を筐体101の下部室(筐体本体)104から分解して取り外し、更に筒状フィルタ107を外部に取り出して行うため、メンテナンス作業性が悪かった。特にモータ111を含むファン部108の重さは単相100Vで運転される小型軽量の機種でも、数十kgと重く、筐体本体から分離したファン部108を持ち上げる作業は重労働であった。また、フィルタの清掃中は筐体101の他にファン部108を別に置いておくために、メンテナンス作業に大きなスペースを必要としていた。
【0008】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、上記問題点を除去し、軽量小型は従来のものと同じで、特に多数の集塵機を保管するのに大きな保管スペースを必要とせず、且つフィルタの清掃、交換等のメンテナンス作業性の向上を図った集塵機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、筒状筐体内を仕切板を介して上下2つの室に仕切り、一方の室の側壁に吸気口を設けると共に内部に筒状フィルタを配置し、他方の室の側壁に排気口を設けると共に内部にファンの羽根車と該羽根車の外周部に位置しその吐出口が前記排気口に連通するボリュート型排気通路を設け、前記ファンの駆動により前記吸気口を通して吸気された空気が前記筒状フィルタの外周側から内周側に通り前記仕切板に設けた吸引口から前記ファンの羽根車の吸気部に吸引され、該羽根車の排気部から前記ボリュート型排気通路を通って前記排気口から排気されるように構成された集塵機において、前記筒状筐体を横断面矩形状にすると共に前記排気口を複数とし、前記ボリュート型排気通路を前記排気口と同数とし、該ボリュート型排気通路の吐出口をそれぞれ前記排気口に接続したことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の集塵機において、前記複数のボリュート型排気通路の中心を前記ファンの羽根車の回転中心と略一致させたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の集塵機において、前記筐体内の前記吸気口に対向し所定間隔離れた位置に該筐体内壁に取付けたリブ板に支持された当板を配置したことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の集塵機において、前記ファンの羽根車を前記仕切板で仕切られた筐体の上部室に配置すると共に前記筒状フィルタを下部室に配置し、前記筐体底側部に開閉扉を設け、該開閉扉を開いた状態で前記筒状フィルタを下部室に出し入れできるように構成したことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の集塵機において、前記下部室の前記筒状フィルタを収納した状態で筒状フィルタを押し上げその上端を前記仕切板の前記吸引口の外周近傍に密接させる昇降機構を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の集塵機において、前記ファンは前記仕切板で仕切られた筐体の上部室に配置する共に前記筒状フィルタを下部室に配置し、該下部室の底部に引出しを配置すると共に前記筒状フィルタを該引出し上に配置し、前記筐体底側部に開閉扉を設け、該開閉扉を開いた状態で前記引出しを前記筐体外側に引き出せるように構成したことを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の集塵機において、前記筒状フィルタを前記引出し上に配置し、該引出しを前記下部室に収納した状態で、前記筒状フィルタを押し上げその上端を前記仕切板の前記吸引口の外周近傍に密接させる昇降機構を設けたことを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の集塵機において、前記ファンの羽根車を前記仕切板で仕切られた筐体の下部室に配置すると共に前記筒状フィルタを上部室に配置し、前記筐体底側部に開閉扉を設け、該開閉扉を開いた状態で前記筒状フィルタを下部室に出し入れできるように構成したことを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の集塵機において、前記上部室に前記筒状フィルタを収納した状態で筒状フィルタ上端を押圧しその下端を前記仕切板の前記吸引口の外周近傍に密接させる押圧機構を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、筒状筐体を横断面矩形状にすると共に排気口を複数とし、ボリュート型排気通路を排気口と同数とし、ボリュート型排気通路の吐出口をそれぞれ排気口に接続したことにより、ファンの羽根車から排出される空気が複数のボリュート型排気通路を通って排出されることになり、後に詳述するように筐体の横断面積を小さくでき、筒状フィルタやファンの大きさが従来のものと同じでも、水平面積、即ち保管スペースが少なくて済む集塵機を提供できる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、複数のボリュート型排気通路の中心をファンの羽根車の回転中心と略一致させたので、ラジアル方向の機械的バランスが良好となり、ラジアル方向の振動が小さく、且つ軸受寿命の向上、モータの温度上昇の低減ができ安定した集塵機を提供できる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、筐体内の吸気口に対向し所定間隔離れた位置に該筐体内壁に取付けたリブ板に支持された当板を配置したので、吸気口から吸込まれた異物、例えば金属片はこの当板に当接し、筒状フィルタに突き刺さる等して該筒状フィルタを破損させることがない。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、ファンの羽根車を仕切板で仕切られた筐体の上部室に配置すると共に筒状フィルタを下部室に配置し、筐体底側部に開閉扉を設け、該開閉扉を開いた状態で筒状フィルタを下部室に出し入れできるように構成されたので、開閉扉を開いただけで、筒状フィルタを当該集塵機から取り出すことができ、収納が容易となり、メンテナンス作業性が容易な集塵機を提供できる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、下部室の筒状フィルタを収納した状態で筒状フィルタを押し上げその上端を仕切板の吸引口の外周近傍に密接させる昇降機構を設けたので、筒状フィルタの上端を仕切板の吸引口の外周近傍に密接させることができ、これにより筒状フィルタのフィルタとしての塵芥除去機能を十分に発揮させることができる集塵機を提供できる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、下部室の底部に引出し(塵芥受け)を配置すると共に筒状フィルタを該引出し上に配置し、開閉扉を開いた状態で引出しを筐体外側に引き出せるようにしたので、筒状フィルタの当該集塵機からの取り出し、収納が容易となり、メンテナンス作業が容易な集塵機を提供できる。また、筒状フィルタの取り出しに、図3に示すようにファン部108を置くような余分なスペースを必要としない。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、筒状フィルタを該引出し上に配置し、該引出しを下部室に収納した状態で、筒状フィルタを押し上げその上端を仕切板の前記吸引口の外周近傍に密接させる昇降機構を設けたので、メンテナンス作業が容易で、且つ筒状フィルタのフィルタとしての塵芥除去機能を十分に発揮させることができる集塵機を提供できる。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、ファンの羽根車を仕切板で仕切られた筐体の下部室に配置すると共に筒状フィルタを上部室に配置し、筐体に開閉扉を設け、該開閉扉を開いた状態で筒状フィルタを下部室に出し入れできるように構成したので、開閉扉を開いただけで、筒状フィルタの取り出し、収納ができ、メンテナンス作業が容易になると共に、ファンを下部室に配置するので、モータや羽根車を含む重量の大きいファン部が筐体の下部に位置するため重心が低くなり、転倒し難い安定した集塵機を提供できる。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、上部室の筒状フィルタを収納した状態で筒状フィルタを押し下げその下端を仕切板の吸引口の外周近傍に密接させる押圧機構を設けたので、筒状フィルタ上端を押圧しその仕切板の吸引口の外周近傍に密接させることにより筒状フィルタのフィルタとしての塵芥除去機能を十分に発揮させることができる集塵機を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。図4乃至図6は本発明に係る集塵機の構成例を示す図であり、図4(a)は集塵機の外観正面図、図4(b)は開閉扉を開いた状態の集塵機の外観斜視図、図4(c)は開閉扉を開き且つ引出しを引き出した状態を示す外観斜視図、図5は集塵機の縦断面図(図4(a)のA−A断面矢視図(但し排気口は説明の便宜上その位置が異なる)、図6は集塵機の運転中の空気の流れを示す図である。
【0028】
図示するように、本集塵機10は横断面が矩形状の筒状の筐体11を備えている。該筐体11内の所定位置には仕切り板12が設けられ、該仕切り板12により筐体11内を上部室13と下部室14に区分している。仕切り板12の中央部には円筒状の吸引口15を設けている。上部室13内にはファンの羽根車16が水平面上で回転できるように配置され、側壁には後に詳述するように複数個の排気口17が設けられている。上部室13の上部には蓋板18が取り付けられ、該蓋板18にモータ19が搭載され、該モータ19の回転軸20に羽根車16が連結されている。なお、モータ19はカバー27で覆われ、羽根車16、モータ19及びカバー27等でファン部28を構成している。
【0029】
筐体11の正面側部には開閉扉22が設けられ、下部室14の底部には後に詳述する引出し(塵芥受け)23が設けられている。引出し23は図4(b)に示すように開閉扉23を開いた状態で筐体11の外側に引き出すことができるようになっている。引出し23の底部には後に詳述する構成の昇降機構24が設けられ、該昇降機構24の上に筒状フィルタ25が配置されるようになっている。昇降機構24で筒状フィルタ25を押し上げることにより、該筒状フィルタ25の上端部が仕切り板12に設けた吸引口15の外周近傍にゴムパッキン等のシール部材26を介して密接するようになっている。また、下部室14の側壁には、1個の吸気口29を設けている。
【0030】
上記構成の集塵機において、モータ19を起動して、羽根車16を回転すると、吸気口29から吸込まれた空気は、下部室14に流入し、筒状フィルタ25の外周に流れ、該筒状フィルタ25の外周側から該筒状フィルタ25を通って内周側に流れ込む。この筒状フィルタ25を通る時に空気中の塵芥は捕捉され、筒状フィルタ25のろ紙外周面に堆積し、引出し23内に落下して収集される。塵芥の除去された空気は内周側に流れ込むことになる。この筒状フィルタ25の内周側に流れ込んだ空気は仕切板12に設けた吸引口15を通って羽根車16の吸気部に吸引され、該羽根車16の吐出部から後に詳述する羽根車16の外周に配置された複数のボリュート型排気通路を通って排気口17から排気される。このとき筒状の吸引口15の上端を可能な限り羽根車16に接近させ且つ上端外周に鍔部15aを設けることにより、吐出側からの逆流を防ぎファン効率を向上させることができる。
【0031】
筐体11の底面の4角部にはそれぞれキャスター30が設けられている。ここでは筐体11の横断面を矩形としているから、キャスター30を筐体11の底面の4角部に設けることができ、筐体の横断面が円形の従来例に比較し、キャスター30が筐体11の底面からはみ出すことが無く又ははみ出し量を小さくできるので、筐体が円筒状の場合に比較し集塵機10の保管スペースを小さくできる。なお、吸気口29に可撓性ダクト31を接続し、工事現場等を目的とする領域の塵芥が多く浮遊する空気を吸込むことができるようになっている。
【0032】
図7は筐体11の上部室13の羽根車16の外周に配置されたボリュート型排気通路の平面構成例を示す図である。図示するように、羽根車16の外周に2本のボリュート型排気通路32−1、32−2を該2本のボリュート型排気通路32−1、32−2の中心がファンの羽根車16の回転中心Oと一致するように配置し、ボリュート型排気通路32−1、32−2のそれぞれの吐出し口は排気口17に連通している。このように羽根車16の外周に2本のボリュート型排気通路32−1、32−2を配置することにより、筐体11の直交する2辺の長さが夫々D+A、D+0.5Aとなる。なお、図7において、Dはファンの羽根車16の外径寸法(基本渦径)、Aはボリュート型排気通路32−1、32−2の終点深さ、Bは排気口17の長さを示す。
【0033】
図8は筐体11の上部室13の羽根車16の外周に配置されたボリュート型排気通路の平面構成例を示す図である。図示するように、羽根車16の外周に4本のボリュート型排気通路32−1、32−2、32−3、32−4を該4本のボリュート型排気通路32−1、32−2、32−3、32−4の中心がファンの羽根車16の回転中心Oと一致するように配置し、ボリュート型排気通路32−1、32−2、32−3、32−4のそれぞれの吐出し口は排気口17に連通している。このように羽根車16の外周に4本のボリュート型排気通路32−1、32−2、32−3、32−4を配置することにより、筐体11の直交する2辺の長さが夫々D+0.5A、D+0.5Aとなる。なお、図8において、Dはファンの羽根車16の外径寸法(基本渦径)、Aはボリュート型排気通路32−1、32−2、32−3、32−4の終点深さ、Bは排気口17の長さを示す。
【0034】
上記のように、ファンの羽根車16の外周に複数(図では、2本、4本)のボリュート型排気通路32を配することにより、筐体11の直交する2辺の長さ寸法が小さくなり、図2に示す従来の円筒状の筐体を備えた集塵機に比較し、保管スペースが少なくて済む。図9は横断面矩形状の筐体11の上部室13の羽根車16の外周に1本のボリュート型排気通路32を配置した場合の平面構成例を示す図である。図9に示すように、1本のボリュート型排気通路32とした場合でも直交する2辺の長さが夫々D+1.5A、D+Aとなり、図2に示す従来の円筒状筐体を備えた集塵機に比較し、保管スペースが若干小さくなる。また、本集塵機10はファンの羽根車16の中心Oと各ボリュート排気通路32-1〜32−4の中心を一致させているので、装置の重心位置が回転中心となり、運転中の半径方向(ラジアル方向)のバランスが良好となり、軸受(図示せず)寿命の向上、モータ19の温度上昇の低減を図ることができる。
【0035】
図10及び図11は引出し(塵芥受け)及び昇降機構の構成を示す図で、図10(a)は引出し23及び昇降機構24の平面図、図10(b)は図10(a)のA−A断面矢視図、図11(a)は昇降機構24の平面図、図11(b)、(c)は図11(a)のA矢視図である。図示するように、引出し23の底部に昇降機構24が設けられ、該昇降機構24の上に筒状フィルタ25が搭載されている。昇降機構24は回動軸24−1に複数個(図では2個)のカム部材24−2が所定の間隔で固定されており、該回動軸24−1の一端近傍に昇降操作レバー24−3が固定された構成である。回動軸24−1の両端は引出し23の対向する内側壁面に設けられた支持部材24−4に回動自在に支持されている。
【0036】
上記構成の昇降機構24を2個、その回動軸24−1、24−1が互いに平行になるように、配置されている。図11(b)、(c)に示すように、カム部材24−2及び昇降操作レバー24−3が引出し23の底面に倒れている状態から、昇降操作レバー24−3を矢印B方向に回動させることにより、回動軸24−1及びカム部材24−2を同じ方向に90°回動させると、カム部材24−2の筒状フィルタ25の搭載面が寸法Uだけ上昇し、該筒状フィルタ25の上端部が図5に示すように、仕切り板12に設けた吸引口15の外周近傍にゴムパッキン等のシール部材26を介して密着する。
【0037】
図12は筒状フィルタの構成例を示す図で、図12(a)は平面図(一部断面)、図12(b)は側面図(一部断面図)を示す図である。図示するように、筒状フィルタ25は側面に多数の小孔25−1が形成されたパンチングメタル等の板体を円筒状に形成してなる内筒25−2を備え、該内筒25−2の上下端にエンドプレート25−4、25−5を装着し、外周にジグザグ状に折り込んだろ紙25−3を配置し、ろ紙25−3の上下端を接着剤でエンドプレート25−4、25−5に接着した構成である。また、上端のエンドプレート25−4は円環状で中央部は開口しており、その上面にはゴムパッキン等のシール部材26が装着されている。また、下端のエンドプレート25−5は円板状で内筒25−2及びろ紙25−3の下端を閉塞している。
【0038】
上記構成の筒状フィルタ25を上端のエンドプレート25−4を上方に向けて、図4(c)に示すように、筐体11から引き出した引出し23内に配置された昇降機構24の上に搭載した後、図4(b)に示すように引出し23を筐体内に収容し、昇降操作レバー24−3を操作して筒状フィルタ25を上昇させ、その上端のエンドプレート25−4を図5に示すように、仕切り板12に設けた吸引口15の外周近傍にシール部材26を介して密着させた後、図4(a)に示すように開閉扉22を閉じ、モータ19を起動して羽根車16を回転すると、吸気口29から吸込まれた空気は筒状フィルタ25のろ紙25−3を通って内筒25−2内に流れ込む。この時筒状フィルタ25上端のエンドプレート25−4が仕切り板12に設けた吸引口15の外周近傍にシール部材26を介して密着させているから、この部分を空気は通り抜けることなく、確実にろ紙25−3を通るから空気中の塵芥も確実に捕捉される。
【0039】
また、開閉扉22の外周部の内側面が当接する筐体11の部分には、図4(b)及び図5に示すようにゴムパッキン等のシール部材33が設けられており、ここから外部空気が筐体11内に浸入することはない。特にファンを起動すると筐体11の内部は負圧となるから、開閉扉22には外側から圧力が加わり、そのシール性が向上する。筒状フィルタ25を清掃するときは、図4(a)の状態から、図4(b)に示すように開閉扉22を開け、更に昇降操作レバー24−3を操作し筒状フィルタ25を降下させた後、図4(c)に示すように引出し23を引き出して筒状フィルタ25を取り出して行う。
【0040】
上記のようにファンを起動して筐体11内が負圧になると、筐体11の側壁に外圧力が加わる。ここでは筐体11の横断面が矩形状となっているから、側壁が内側に凹むという問題が発生する。そこで、ここでは図13に示すように筐体11の内壁面11aに断面コ字状に屈曲形成した補強部材34を上下方向に溶接等で接合して、筐体11の側壁を補強している。なお、図13(a)は筐体11の内壁面11aの一部を示す図、図13(b)は(a)のA−A矢視断面図、図13(c)は(a)のB−B断面図である。
【0041】
また、上記構成の集塵機において、吸気口29から吸込まれた空気中に金属片等のエッヂ部が鋭利な異物が混入していた場合、これが筒状フィルタ25のろ紙25−3に突き刺さり、ろ紙25−3に裂け目が発生し、筒状フィルタ25が損傷するばかりか、この裂け目を通して塵芥が筒状フィルタ25の内周側に浸入し、筒状フィルタ25のフィルタ機能が損なわれる場合がある。そこでここでは図14に示すように、筐体11内の吸気口29から所定間隔離れた位置で且つ該吸気口29に対向する位置に当板35を設けている。該当板35は筐体11の内壁面11aに溶接等で取り付けた十字状に配置したリブ板36に支持されている。この十字状に配置したリブ板36は筐体の側壁の強度を補強する作用も奏する。このように吸気口29に対向する位置に当板35を設けることにより、吸気口29から吸込まれたエッヂ部が鋭利な異物は当板35に突き当たり、直接筒状フィルタ25のろ紙25−3に突き刺さることがなく、筒状フィルタ25が損傷することがない。なお、図14(a)は当板部分の筐体11の内部を示す図、図14(b)は当板とリブ板の側面図、図14(c)は当板とリブ板の正面図である。
【0042】
図15乃至図17は本発明に係る集塵機の他の構成例を示す図であり、図15は集塵機の縦断面図、図16は筒状フィルタの清掃時の状態を示す縦断面図、図17は筒状フィルタを取り外した状態を示す縦断面図である。図示するように、本集塵機10は横断面が矩形状の筒状の筐体11を備えている。該筐体11内の所定位置には仕切り板12が設けられ、該仕切り板12により筐体11内を上部室13と下部室14に区分されている。仕切り板12の中央部には円筒状の吸引口15が設けられている。
【0043】
下部室14内にはファンの羽根車16が水平面上で回転できるように配置され、該羽根車16の外周には、図7又は図8に示すのと同様のボリュート型排気通路が設けられ、側壁にはボリュート型排気通路吐出口に連通する排気口(図示せず)が設けられている。下部室14の底部には蓋板18が取り付けられ、該蓋板18にモータ19が取付けられている。該モータ19の回転軸20に羽根車16が連結されている。なお、モータ19はカバー27で覆われ、羽根車16、モータ19及びカバー17等でファン部28を構成している。カバー27の四角にはアングル部材38を介してキャスター30が取付けられている。なお、筐体11及びファン部28は、図4及び図5に示す集塵機を構成する筐体11及びファン部28と同じものを用い、筒状フィルタ25は図12に示す筒状フィルタ25と同じものを用いている。
【0044】
筐体11の正面側部には開閉扉22が設けられている。上部室13内には筒状フィルタ25がその円板状のエンドプレート25−5を上に、円環状のエンドプレート25−4を下にして配置されている。また、円環状のエンドプレート25−4はその中央開口が仕切り板12の吸引口15には対向するように、該仕切り板12の吸引口15の外周近傍にシール部材26を介して密接して配置している。37は筒状フィルタ25の下端のエンドプレート25−4をシール部材26を介して仕切り板12に密接(圧接)させるための押圧機構である。該押圧機構は円板状のプレート37−1と該プレート37−1の中央部に設けたナット37−2と該ナット37−2に螺合するボルト37−3を備えている。
【0045】
開閉扉22を開けて、上部室13内に筒状フィルタ25を挿入配置し、押圧機構37のプレート37−1を筐体11の上部穴11a(図16参照)を塞ぐように取付け、ボルト37−3をナット37−2に螺合させて下降させ、その先端(下端)を筒状フィルタ25のエンドプレート25−5に当接させ押圧することにより、下端のエンドプレート25−4に装着したシール部材26が仕切り板12の吸引口15の外周近傍に密接する。押圧機構37は上記構成に限定されるものではなく、例えば図11に示すような昇降機構24を筐体11の上部内壁面に設けておき、開閉扉22を開いた状態で、筒状フィルタ25を挿入配置した後、該昇降機構の昇降操作レバー24−3を操作して、筒状フィルタ25を下方に押圧するようにしてもよい。
【0046】
上記構成の集塵機において、モータ19を起動して、羽根車16を回転すると、吸気口29から吸込まれた空気は、上部室13に流入し、筒状フィルタ25の外周に流れ、該筒状フィルタ25の外周側から該筒状フィルタ25を通って内周側に流れ込む。この筒状フィルタ25を通る時に空気中の塵芥が捕捉され、該塵芥の除去された空気が内周側に流れ込むことになる。この筒状フィルタ25の内周側に流れ込んだ空気は仕切板12に設けた吸引口15を通って羽根車16の吸気部に吸引され、該羽根車16の吐出部から羽根車16の外周に配置された複数のボリュート型排気通路を通って排気口(図示せず)から排気される。
【0047】
筒状フィルタ25を清掃するときは、図16に示すように、筐体11の上部から押圧機構37を取り外し、開閉扉22を開いて、筒状フィルタ25を取り出して清掃する。また、筐体11の内部を清掃するときは、図17に示すように仕切板12に設けた吸引口15を押圧機構37で閉塞して、下部室14に塵芥が入り込まないようにして行う。なお、図15乃至図17に示す集塵機においても、図13に示すような筐体側壁補強や、図14に示すような吸気口に対向して当板を設ける構成を採用する。
【0048】
図18は本発明に係る集塵機と従来の集塵機の性能評価を示す図である。曲線Aが本発明に係る集塵機の性能を、曲線Bは従来の集塵機の性能を示す。また、曲線Cは本発明に係る集塵機のフィルタ損失曲線を示す。図から明らかなように、本発明に係る集塵機は性能評価の上でも優れたものとなる。
【0049】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】従来の集塵機の構成例を示す正面図である。
【図2】従来の集塵機の排気通路の平面構成例を示す図である。
【図3】従来の集塵機の分解した状態を示す図である。
【図4】本発明に係る集塵機の構成例を示す図で、図4(a)は外観正面図、図4(b)は開閉扉を開いた状態を示す外観斜視図、図4(c)は開閉扉を開き且つ引出し(塵芥受け)を引き出した状態を示す外観斜視図である。
【図5】本発明に係る集塵機の構成例を示す縦断面図である。
【図6】本発明に係る集塵機の空気の流れを示す図である。
【図7】本発明に係る集塵機の排気通路の平面構成例を示す図である。
【図8】本発明に係る集塵機の排気通路の平面構成例を示す図である。
【図9】集塵機の排気通路の平面構成例を示す図である。
【図10】本発明に係る集塵機の引出し及び昇降機構の構成例を示す図で、図10(a)は平面図、図10(b)は(a)のA−A断面矢視図である。
【図11】本発明に係る集塵機の昇降機構の構成例を示す図で、図11(a)は平面図、図11(b)及び(c)は(a)のA矢視図である。
【図12】本発明に係る集塵機の筒状フィルタの構成例を示す図で、図12(a)は一部断面平面図、図12(b)は一部断面側面図である。
【図13】本発明に係る集塵機の内壁面補強構成例を示す図で、図13(a)は壁面の一部を示す図、図13(b)は(a)のA−A断面矢視図、図13(c)は(a)のB−B断面図である。
【図14】本発明に係る集塵機の吸気口と当板部分の構成例を示す図で、図14(a)は側面図、図14(b)は当板とリブ板の側面図、図14(b)は当板とリブ板の正面図である。
【図15】本発明に係る集塵機の他の構成例を示す縦断面図である。
【図16】本発明に係る集塵機の筒状フィルタの清掃時の状態を示す縦断面図である。
【図17】本発明に係る集塵機の筒状フィルタを取り外した状態を示す縦断面図である。
【図18】本発明に係る集塵機と従来の集塵機の性能評価を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
10 集塵機
11 筐体
12 仕切り板
13 上部室
14 下部室
15 吸引口
16 羽根車
17 排気口
18 蓋板
19 モータ
20 回転軸
22 開閉扉
23 引出し
24 昇降機構
25 筒状フィルタ
26 シール部材
28 ファン部
29 吸気口
30 キャスター
31 可撓性ダクト
32 ボリュート型排気通路
33 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状筐体内を仕切板を介して上下2つの室に仕切り、一方の室の側壁に吸気口を設けると共に内部に筒状フィルタを配置し、他方の室の側壁に排気口を設けると共に内部にファンの羽根車と該羽根車の外周部に位置しその吐出口が前記排気口に連通するボリュート型排気通路を設け、前記ファンの駆動により前記吸気口を通して吸気された空気が前記筒状フィルタの外周側から内周側に通り前記仕切板に設けた吸引口から前記ファンの羽根車の吸気部に吸引され、該羽根車の排気部から前記ボリュート型排気通路を通って前記排気口から排気されるように構成された集塵機において、
前記筒状筐体を横断面矩形状にすると共に前記排気口を複数とし、前記ボリュート型排気通路を前記排気口と同数とし、該ボリュート型排気通路の吐出口をそれぞれ前記排気口に接続したことを特徴とする集塵機。
【請求項2】
請求項1に記載の集塵機において、
前記複数のボリュート型排気通路の中心を前記ファンの羽根車の回転中心と略一致させたことを特徴とする集塵機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の集塵機において、
前記筐体内の前記吸気口に対向し所定間隔離れた位置に該筐体内壁に取付けたリブ板に支持された当板を配置したことを特徴とする集塵機。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の集塵機において、
前記ファンの羽根車を前記仕切板で仕切られた筐体の上部室に配置すると共に前記筒状フィルタを下部室に配置し、前記筐体底側部に開閉扉を設け、該開閉扉を開いた状態で前記筒状フィルタを下部室に出し入れできるように構成したことを特徴とする集塵機。
【請求項5】
請求項4に記載の集塵機において、
前記下部室の前記筒状フィルタを収納した状態で筒状フィルタを押し上げその上端を前記仕切板の前記吸引口の外周近傍に密接させる昇降機構を設けたことを特徴とする集塵機。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の集塵機において、
前記ファンは前記仕切板で仕切られた筐体の上部室に配置すると共に前記筒状フィルタを下部室に配置し、該下部室の底部に引出しを配置すると共に前記筒状フィルタを該引出し上に配置し、前記筐体底側部に開閉扉を設け、該開閉扉を開いた状態で前記引出しを前記筐体外側に引き出せるように構成したことを特徴とする集塵機。
【請求項7】
請求項6に記載の集塵機において、
前記筒状フィルタを前記引出し上に配置し、該引出しを前記下部室に収納した状態で、前記筒状フィルタを押し上げその上端を前記仕切板の前記吸引口の外周近傍に密接させる昇降機構を設けたことを特徴とする集塵機。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の集塵機において、
前記ファンの羽根車を前記仕切板で仕切られた筐体の下部室に配置すると共に前記筒状フィルタを上部室に配置し、前記筐体に開閉扉を設け、該開閉扉を開いた状態で前記筒状フィルタを下部室に出し入れできるように構成したことを特徴とする集塵機。
【請求項9】
請求項8に記載の集塵機において、
前記上部室に前記筒状フィルタを収納した状態で筒状フィルタ上端を押圧しその下端を前記仕切板の前記吸引口の外周近傍に密接させる押圧機構を設けたことを特徴とする集塵機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−130603(P2007−130603A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−327921(P2005−327921)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(505420688)荏原機電株式会社 (8)
【出願人】(591082328)橋本産業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】