説明

集塵設備

【課題】各種構造物からなる既存設備への追加設置が容易で、既存設備の稼動停止時間を最小に抑えて設置が行える集塵設備を提供する。
【解決手段】既設の排気ダクトを有する既存設備とこの既存設備に増設された新たな電気集塵装置からなる集塵設備において、前記既設の排気ダクトの近傍に設置され前記電気集塵装置を所定高さに載置する架構と、前記既設の排気ダクトの排気ガスを前記電気集塵装置に導入する流入ダクトと、前記電気集塵装置で浄化された排気ガスを前記既設の排気ダクトに戻す流出ダクトと、前記流入ダクトを前記既設の排気ダクトの上流側に連通する流入接続ダクトと、前記流出ダクトを前記既設の排気ダクトの下流側に連通する流出接続ダクトを設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存設備の集塵性能を高めるために新たな電気集塵装置を増設した電気集塵設備に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の集塵設備は、例えば火力発電所のボイラ排ガスや製鉄用各種炉の排ガス中のダストを除去するための集塵装置として知られる。
【0003】
従来、電気集塵装置の集塵性能を高めるために、固定配置された集塵電極の下流側に無端状の集塵電極をガスの流れ方向に直行する態様で追加設置した電気集塵装置が、例えば特許文献1、2に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭57−177550号公報
【特許文献2】特開2001−321693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、既存の電気集塵機のガス出口に追加的に取り付ける構成が示され、特許文献2には、前記無端状の集塵電極の他に鋼板等からなる集塵電極を追加配設した構成が示されている。
【0006】
しかしながら、前記構成はいずれも既存の電気集塵装置と同一ケース内に配置されるものであって、追加の改造作業が困難であるとともに、ケースを大型化する改造が必要となり、大規模改造には適してない。
【0007】
一般の既存の集塵設備では、図1に示すように、火力発電所のボイラ排ガスを例にとると、ボイラ1から流出した排ガスに含まれる窒素酸化物、ダスト、イオウ酸化物を除去するための脱硝装置2、電気集塵装置3、脱硫装置4などが大型の構造物として配列され、各構造物間を排ガスが流れる排気ダクト9で接続している。また、各構造物間には小型構造物7も配置され、全体として各構造物が密集して配置されている。したがって、集塵性能を高めるための大規模な改造で、新たな電気集塵装置を追加する場合は、大型の構造物の間への設置が困難であり、また、小型構造物があるために地面への設置が困難であった。
【0008】
本発明は、前記従来の問題点に鑑み、各種構造物からなる既存設備への追加設置が容易で、既存設備の稼動停止時間を最小に抑えて設置が行える電気集塵設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため本発明は、既設の排気ダクトを有する既存設備と増設された新たな電気集塵装置からなる電気集塵設備において、
前記既設の排気ダクトの近傍に設置され前記電気集塵装置を所定高さに載置する架構と、
前記既設の排気ダクトの排気ガスを前記電気集塵装置に導入する流入ダクトと、
前記電気集塵装置で浄化された排気ガスを前記既設の排気ダクトに戻す流出ダクトと、
前記両ダクトを前記既設の排気ダクトに連通する接続ダクトを設けたことを特徴とする。
【0010】
また、前記に記載の集塵設備において、前記接続ダクトは前記流入ダクトを前記既設の排気ダクトの上流側に連通する流入接続ダクトと、前記流出ダクトを前記既設の排気ダクトの下流側に連通する流出接続ダクトからなることを特徴とする。
【0011】
また、前記に記載の集塵設備において、前記電気集塵装置は移動式の集塵極を有する移動電極式電気集塵装置であり、前記架構上に搬入部材が積層される積層構造を有することを特徴とする。
【0012】
また、前記に記載の集塵設備において、前記流入ダクトおよび流出ダクトは前記既設の排気ダクトの上方に配置され、それぞれ前記流入接続ダクトと流出接続ダクトを介して前記既設の排気ダクトに上方から接続されたことを特徴とする。
【0013】
また、前記に記載の集塵設備において、前記架構は前記流入ダクトおよび流出ダクトと前記既設の排気ダクトとの取り合いが容易な高さに設定されたことを特徴とする。
【0014】
また、前記に記載の集塵設備において、前記既設の排気ダクトは、内部排気ガスが前記流入ダクトおよび流出ダクトを経由して前記電気集塵装置をバイパスするように、内部排気ガスの流通を阻止する閉止弁が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、既設の構造物からなる既存設備への電気集塵装置の追加設置が容易に行え、追加に際して既存設備の稼動停止時間を最小に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一般の集塵の既存設備全体の概略説明図。
【図2】本発明実施例の電気集塵設備全体の概略説明図。
【図3】同じく電気集塵装置の増設時の架構の設置工程の説明図。
【図4】同じく下段フレームの設置工程の説明図。
【図5】同じく本体フレームの設置工程の説明図。
【図6】同じくケーシングとローラ受け梁の設置工程の説明図。
【図7】同じく電極の設置工程の説明図。
【図8】同じく排気ダクトの設置工程の説明図。
【図9】同じく設置工程での設備とクレーンの関係を示す平面図。
【図10】同じく電気集塵装置の増設作業順序を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図2は本発明実施例として火力発電所のボイラ排ガス中のダストを除去するための集塵設備全体の概略説明図であり、図1と同等の構成を同一符号で示す。本実施例は、図1に示す既存の集塵設備に新たな電気集塵装置8を増設して構成された集塵設備である。新たな電気集塵装置としては集塵機能の高い移動電極式電気集塵装置を用い、構成は例えば特開2000−342994号公報に示される。
【0018】
図2において、既存設備が稼動状態で、新たな電気集塵装置8が既存の電気集塵装置3と脱硫装置4の間に配置される。既存の両装置3、4の間は既設の断面矩形の排気ダクト(煙道)9で連通接続される。しかし前記構成では、既存の小型構造物7等が配置されて障害となるため、既存の装置3、4の据付面に新たな電気集塵装置8を設置できない。本実施例では、前記既設の排気ダクト9の近傍に設置された所定高さに載置する架構20と、前記既設の排気ダクト9内の上流側(電気集塵装置3側)の排気ガスを前記電気集塵装置8に導入する流入ダクト8aと、前記電気集塵装置8で浄化された排気ガスを前記既設の排気ダクト9の下流側(脱硫装置4側)に戻す流出ダクト9bを備え、前記架構20の上に増設用の新たな電気集塵装置8を設置する。
【0019】
次に、図3〜図8および図10を用いて増設作業を説明する。前記各図において、図1、図2と同等の構成を同一符号で示す。
【0020】
図3で架構20において、地面に設置されている既存の小型構造物7を避けるために、小型構造物7の高さを超える高さHを有する。また架構20は、クレーン210によって吊り下げられた状態で大型構造物230を避けて一定距離おいた位置に搬入され、小型構造物7の上方を覆うような形で設置される。さらに、前記架構20は紙面に直角方向に延びる排気ダクト9(断面で示す)から横にずらした位置に配置される(図10、S10)。すなわち、架構20は既存の大型構造物230と既設の排気ダクト9の間に設置される。次いで、架構20の上面に作業フロア10が設置され、作業フロア10には雨水を流す配水管30が接続される(図10、S20)。220はクレーン210で搬入される他の搬入部材を示す。
【0021】
図4において、クレーン210によって下段フレーム40が搬入され、前記作業フロア10に設置される(図10、S30)。下段フレーム40内にはホッパー50が設置される(S40)。ホッパー50は電気集塵装置8で捕集された排ガス中のダスト(煤塵)の落下を受ける。これら下段フレーム40とホッパー50は電気集塵装置8の下部分を構成する。図5において、クレーン210によって前記下段フレーム40の上に、本体フレーム60が設置される(S50)。
【0022】
本体フレーム60には、電気集塵装置の主要な構成部材が設置される。図6において、クレーン210によってケーシング80が搬入されて前記本体フレームの周囲に固定される(S60)。続いて下部ローラ受け梁100と上部ローラ受け梁90が前記本体フレーム60に固定される(S70、S80)。70はケーシング80によって構成される煙道(ダクト)入口である。なお、この煙道入口70に対向した裏面に、煙道出口71(図6に図示せず)が設けられている。
【0023】
図7において、クレーン210によって放電極120が吊下げられてケーシング8内に上方から搬入され、本体フレーム60内部に吊下げ固定され(S90)。次いで、移動電極式の集塵極110がクレーンによって上方から搬入され、前記放電極120を囲むように取付けられる(S100)。前記の上下のローラ受け梁90、100には、それぞれ上部ローラ130と下部ローラ140が回転自在に取付けられ、前記集塵極110はこれらの上下のローラに掛けまわされ、ローラの駆動により周回移動して電気集塵の原理により排気ガス内のダストを捕集する。
【0024】
このように、電気集塵装置8はクレーン210によって搬入部材が架構20の上に積上げられた積層構造を有する。
【0025】
次に図8において、作業者の昇降用の階段150がクレーン210によって搬入され、この階段150が架構20、下段フレーム40および本体フレーム60にわたる側面に固定される。そして、ケーシング80の上方にステージ160が設置されて、上方が閉じられる(S110)。また、ケーシング80に形成された2個の煙道入口70に2個の断面矩形の流入煙道(流入ダクト)180の各一端が接続される(S120)。この一端の接続状態では流入ダクト180の各他端が既設の排気ダクト9の上流側の上方(真上)に位置している。
【0026】
前記2個の煙道入口70に対向した裏面に、2個の煙道(ダクト)出口71が設けられており、この接続状況を図9の平面図で説明する。図9は前記設置工程での設備とクレーン210の関係をも示している。煙道入口70に対向した裏面のケーシング80には、2個の煙道出口71が設けられ、この2個の煙道出口71には、2個の断面矩形の流出煙道(流出ダクト)181の各一端が接続される(S120)。この接続状態では、流出ダクト181は各他端が既設の排気ダクト9の下流側の上方(真上)に位置している。
【0027】
その後、既設の集塵設備の運転を停止し(S130)、次いで、この停止状態において既設の排気ダクト9の接続部分の改造を行う(S140)。すなわち、前記流入ダクト180の各他端が対向している既設の排気ダクト9の上流側上面に開口9aを設け、前記流出ダクト181の各他端が対向している既設の排気ダクト9の下流側上面に開口9bを設ける。次いで、前記開口9aには図8に示す高さhの接続煙道(流入接続ダクト)190を設置し、前記開口9bには図8に示す高さhの接続煙道(流出接続ダクト)191を設置する(S150)。また、既設の排気ダクト9の中央付近の内部に、既設の排気ダクト9の上端に排気ガスの流れを阻止する阻止弁9cを設ける。
【0028】
前記流入接続ダクト190に前記流入ダクト180の各他端を接続し、流入ダクト180を既設の排気ダクト9の上流側に連通させる。また、前記流出接続ダクト191の上端に前記流出ダクト181の各他端を接続し、流出ダクト181を既設の排気ダクト9の下流側に連通させる。
【0029】
前記の設置工程を経て増設の電気集塵装置8の本体が完成すると(S160)、本体の動作試験が実施される(S170)。動作試験は電気集塵装置8に電圧を印加し、所定の電圧−電流特性が得られることを確認すると、もし、スパーク電圧が低い場合は、電極間距離に不具合がないか等を調査し、対策を行い、所定の性能が得られることを確認する。
【0030】
前記試験及び機器調整が完了すると、既存の集塵設備と増設された電気集塵装置8の運転が開始される(S180)。
【0031】
この運転により既存の電気集塵装置3から出た排気ガスは、既設の排気ダクト9の上流側から前記流入ダクト180を経由して電気集塵装置8に流入し、前記電気集塵装置8内部で浄化された後、前記流出ダクト181を通じて既設の排気ダクト9の下流側に流出する。すなわち、既存の電気集塵装置3から出た排気ガスは、既存の脱硫装置4へ直接流れずに、増設の電気集塵装置8内部をバイパスして既存の脱硫装置4へ流れる。従って、排気ガスは既存の電気集塵装置3と増設の電気集塵装置8の2段階にダストが捕集され、高い集塵性能で除塵される。
【0032】
なお、前記既存の設備の停止時間は、既設の排気ダクト9の接続部分の改造から流入ダクトと流出ダクトの接続までの時間であるため、短い時間で済む。
【0033】
前記流入ダクト180と既設の排気ダクト9の取り合い間隔およびに前記流出ダクト181と既設の排気ダクト9の取り合い間隔には、それぞれ接続ダクト190と191が介在するが、組立て時に各間隔に寸法誤差が生じた場合は、接続ダクト190と191の高さ寸法hを変えて調整される。また、架構20の高さHは、増設される電気集塵装置8の高さ寸法に応じて、前記流入ダクト180と既設の排気ダクト9の取り合い間隔および前記流出ダクト181と既設の排気ダクト9の取り合い間隔がほぼ寸法hになるように(取り合いが容易になるように)高さ調整される。
【0034】
前記設置工程では、クレーン210によって各部材を上方に吊上げて必要な場所に移動して下降することで搬入される。従って、電気集塵装置の増設に際し、最初に搬入して設置された架構20の上に、構成部品を順に積上げる組立て作業に適しており、作業を容易に行うことができる。また、前記流入ダクト180および流出ダクト181は、既設の排気ダクト9の上方に位置するように搬入され、それぞれ流入接続ダクト190と流出接続ダクト191を介して既設の排気ダクト9に上方からアクセスして接続するようにしているので、クレーン210による組立作業が効率良くなされる。
【符号の説明】
【0035】
1〜7、9…既存設備、8…新たな電気集塵装置、10…作業フロア、20…架構、40…下段フレーム、60…本体フレーム、70…煙道入口、71…煙道出口、8a、180…流入ダクト、8b、181…流出ダクト、8c…閉止弁、110…移動式の集塵極、190…接続ダクト、流入接続ダクト、191…接続ダクト、流出接続ダクト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の排気ダクトを有する既存設備と増設された新たな電気集塵装置からなる集塵設備において、
前記既設の排気ダクトの近傍に設置され前記電気集塵装置を所定高さに載置する架構と、
前記既設の排気ダクトの排気ガスを前記電気集塵装置に導入する流入ダクトと、
前記電気集塵装置で浄化された排気ガスを前記既設の排気ダクトに戻す流出ダクトと、
前記両ダクトを前記既設の排気ダクトに連通する接続ダクトを設けたことを特徴とする集塵設備。
【請求項2】
請求項1に記載の集塵設備において、前記接続ダクトは前記流入ダクトを前記既設の排気ダクトの上流側に連通する流入接続ダクトと、前記流出ダクトを前記既設の排気ダクトの下流側に連通する流出接続ダクトからなることを特徴とする集塵設備。
【請求項3】
請求項1または2に記載の集塵設備において、前記電気集塵装置は移動式の集塵極を有する移動電極式電気集塵装置であり、前記架構上に搬入部材が積層される積層構造を有することを特徴とする集塵設備。
【請求項4】
請求項2または3に記載の集塵設備において、前記流入ダクトおよび流出ダクトは前記既設の排気ダクトの上方に配置され、それぞれ前記流入接続ダクトと流出接続ダクトを介して前記既設の排気ダクトに上方から接続されたことを特徴とする集塵設備。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の集塵設備において、前記架構は前記流入ダクトおよび流出ダクトと前記既設の排気ダクトとの取り合いが容易な高さに設定されたことを特徴とする集塵設備。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の集塵設備において、前記既設の排気ダクトは、内部排気ガスが前記流入ダクトおよび流出ダクトを経由して前記電気集塵装置をバイパスするように、内部排気ガスの流通を阻止する閉止弁が設けられたことを特徴とする集塵設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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