説明

集成材の異形柱と梁の剛接合構造

【課題】本発明は、木造建築物における軸組構法の集成材構造で、異形柱と梁の接合部の剛構造を提供すること。
【解決手段】複数の貫通孔を有するT字形柱1と、部材の両端部に縦スリットを施し、側面にはドリフトピン挿入穴を施した梁3Aと、複数のボルト孔とナットを有し、ドリフトピン孔を複数有する突起プレ−トを備えているL型接合金具4と、ボルト孔が施され、複数のドリフトピン孔を有する矩形状の鋼板片、および複数のリブとで形成されているT型接合金具5と、座金プレ−トで構成している接合構造において、前記T字形柱1に有するボルト貫通孔11と、前記該当金具に形成されているボルト孔9を当接し、通しボルト6を挿通し形成されている金具に梁3Aを当接して、前記L型接合金具の突起プレ−ト4cと、T型接合金具の矩形状の鋼板片5aが重合され、ドリフトピン7で結合する集成材の異形柱と梁の剛接合構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物の軸組構法における、集成材の異形柱と梁の接合部構造、および異形柱と梁の架構法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止など環境面で森林(若木の場合)でのCO2吸収効果が注目されて、森林保全によるCO2排出枠、および林業振興で地方再生も兼ねての林業活性化が叫ばれ、政府は木材利用を促進する方策として、昨年10月1日「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」を施行した。法律の基本的な方向は、公共建築物における木材の利用の促進の意義を踏まえ、非木造化を指向してきた過去の考え方を抜本的に転換し、公共建築物については可能な限り木造化を図る法律となっている。公共建築物には、国や地方が建設する学校、社会福祉施設、庁舎、公務員宿舎等が含まれている。しかし、公共建築や民間の非住宅を木造での大規模な構造にしたくとも、規模が違うため蓄積がある木造住宅の技術は転用できない。すなわち、構造計画やコストの面で木造化が困難な場合もあり、大規模な木造の技術が系統立っていないのが現状である。
【0003】
従来の木造住宅等の軸組構法は、まず、柱と梁で軸組を構成し、それに壁や床を取り付けて行く構法である。柱には「通し柱」と「管柱」があり、柱の構造的な役割は、通し柱、管柱ともに垂直荷重を支持し、耐力壁として外周に作用する圧縮力や引張力に抵抗し、また、風圧力(水平力)を受ける外壁面での変形を防ぐことである。
【0004】
従来、木造住宅等の軸組構法での通し柱は、柱の中間に梁を差し込むため、柱の断面欠損が大きくて、曲げ耐力は期待できずに引張力も不足する場合が多い。そこで、建築基準法関係告示第1460号で必要性能を確保するため、継手・仕口ではホゾや相欠きと組み合わせながらの補強・補助金物等が明記されている。
【0005】
近年、木造住宅等の軸組構法での柱の断面欠損を少なくする方法として、柱と梁の接合部を堅固確実に固定すると共に、金物との当接部を安定化することを目的とした梁受け金物が、実願2002−3529号公報(第1公知例)で開示されている。
【0006】
また、近年、住宅用の木質ラ−メン構法が注目され、車庫一体型の住宅や店舗兼用住宅、さらに、一般の住宅でも、大きなスパン、大きな開口のものが求められており、一般的な木質ラ−メン構法として、鋼板挿入式ドリフトピンの接合方法が、図6に示す方法で行われている。即ち、事前にスリット加工された集成材の柱14芯に、ドリフトピン孔10を有する鋼板15を挿入して、柱14の側面からドリフトピン7を差し込み、柱14に鋼板15を固定する。次に、柱14から突起している鋼板15に、集成材の梁16に加工されているスリット17を差し込み、梁の側面から、ドリフトピン7と呼ばれている丸鋼で連結して、柱14と梁16を一体化している。
【0007】
さらに、純ラ−メン構造として、集成材梁の、集成材柱との接合部に位置する端部を切り離し、この端部材を直交して組み立て、これを上下の集成材柱で挟み込んで集成材柱を貫通させ、双方をボルト接合することにより柱・梁の接合部を剛接合にする架構組み立てる構法が、特開平6−185115号公報(第2公知例)で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実願2002−3529号
【特許文献2】特開平6−185115号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、第1公知例の梁受け金物は、集成材の柱と梁の接合として、せん断力と軸力(引張・圧縮)を考慮して開発されたものである。また、近年、曲げ応力を考慮して開発された、代表的な図6の鋼板挿入のドリフトピンを使用している、鋼板挿入式ドリフトピンの接合方法においても、完全な剛にできない課題があり、半剛接合(ピンと剛の中間)の評価である。例えば、図6に示す、鋼板挿入式ドリフトピンの接合方法は、集成材をスリットして鋼板を挿入する方式である。力の伝達は、梁のモ−メント――ドリフトピンのせん断力――鋼板の曲げ――ドリフトピンのせん断力――柱のモ−メントとなり、曲げに対しては垂直鋼板のみで抵抗するシステムであり、曲げに重要なフランジ部が存在しない構法である。
【0010】
次に、第2公知例の純ラ−メン構造においては、純ラ−メン構造の架構の組み立てが可能と引用文献に記載されており、集成材梁1の端部に位置する端部材2を、挟む形状で、上下に分割された集成材柱3が当接し、端部材を梁成方向に貫通するボルト4を集成材上下の柱3,3間に軸方向に貫通させ、緊結することにより端部材2を集成材柱3,3間に剛接合に組み立てる方法であるが、組み立てが複雑で、製品および施行精度を必要とし、さらに、重機も必要で、組み立て時間等の施行性にも難点があり、高コストになる可能性がある。
【0011】
本発明の解決すべき課題は、大規模な木造建築物、すなわち、柱と柱の間隔(スパン)が長い、天井が高いといった公共建築物等の構造的特性に対して、高耐久架構技術に基づく、集成材を用いての純ラ−メン構造で、作業性を考慮して提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記課題を解決すべく検討した結果、集成材の特性を活かした、新しいモ−メント抵抗接合の形式、すなわち、集成材の外層面(一般的に、コストを考慮して強度的に重要な梁の外層面である梁の上層面と下層面には、高強度樹種の高価なベイマツ等、内層ラミナには低強度樹種の杉等が使用されている)を活用しての接合金具での技術的知見を得た。例えば、梁の外層面の位置に鋼板片を設けて、前記鋼板片で集成材梁を上下で挟む形状に形成し、梁の成(高さ)の中立軸からの遠端部で鋼板片での面積を加えることで、二次モ−メントを大きくして、剛構造にすることである。
【0013】
また、躯体構造がピン構造からラ−メン構造になることで、従来構法の場合では、正方形柱の径が大きくなり、デットスペ−スが発生する。そこで、本発明では、外周の柱を異形形状の柱としてデットスペ−スを極力少なくしている。例えば、外周で室内側に面する柱幅を小さくして、必要な断面積を確保して、外部面の柱幅を大きくしている。その要旨とするところは以下の通りである。
【0014】
(1)木造建築物の軸組構法における梁接合部の位置に、直交したボルトを挿通し、複数の貫通孔を有するT字形集成材柱と、部材の両端部に縦スリットを施し、側面にはドリフトピン挿入穴を施した集成材梁と、L字形状に折曲形成された鋼板片の垂直面に、複数のボルト孔とナットを有し、前記垂直面と水平面の幅中央部の位置から、ドリフトピン孔を複数有した突起プレ−トを備えているL型接合金具と、L字形状に曲げた鋼板片の短辺に、長尺ボルトを挿通するボルト孔が施され、長辺の幅中央の下部には、複数のドリフトピン孔を有する矩形状の鋼板片、および複数のリブを配置して形成されているT型接合金具と、長方形で複数のボルト孔を有する座金プレ−トの部品で構成してなる接合構造において、前記T字形集成材柱に有する複数のボルト貫通孔と、前記該当金具に形成されているボルト孔を当接し、通しボルトを挿通し形成されている金具に、前記集成材梁を当接して、前記L型接合金具の突起プレ−トと、T型接合金具の矩形状の鋼板片が重合され、ドリフトピンで結合されていることを特徴とする集成材の異形柱と梁の剛接合構造。
【0015】
(2)梁接合部の位置に直交したボルトを挿通し、複数の貫通孔を有するL字形集成材柱と、部材の両端部に縦スリットを施し、側面にはドリフトピン挿入穴を施した集成材梁と、L型接合金具と、T型接合金具と、長方形で複数のボルト孔を有する座金プレ−トの部品で構成してなる接合構造を特徴とする、請求項1に記載の集成材の異形柱と梁の剛接合構造。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る集成材の異形柱と梁の剛接合構造によれば、近年の木質ラ−メン構造の代表的な鋼板挿入式ドリフトピンの接合方法においても、半剛接合(ピンと剛の中間)での評価での設計である。本発明では、集成材柱と集成材梁の接合箇所において、集成材の特性(外層ラミナ)を活用しての、モ−メント・せん断力・軸力・を同時伝達することが可能な金具を用いることにより、公共建築物等の構造的特性に対応した高性能な純ラ−メン構造ができる。したがって、耐震性、耐久性を重要視した設計を合理的に行うことが可能で、粘り強い構造等の効果が得られ、最適な高耐久的な木造軸組の建築物ができる。
【0017】
本発明に係る集成材の異形柱と梁の剛接合構造によれば、近年の木質ラ−メン構造の代表的な、鋼板挿入式ドリフトピンの接合方法での断面性能は、フランジ部が付加されないため、梁の成(高さ)の中立軸からの遠端部の面積は微少である。したがって、断面係数が小さい。本発明では、梁の外層面の位置に鋼板片を有しており、梁の成(高さ)の中立軸からの遠端部の鋼板片での面積が生じ、有効な断面係数が発生する。すなわち、従来の半剛接合とは異なり、剛接合ができる。
【0018】
本発明に係る集成材の異形柱と梁の剛接合構造によれば、従来の柱は、X、Y方向と二方向ラ−メンの場合は、一般的に正方形でデットスペ−スを有する形状になるが、本発明では外周の柱に関して、コ−ナ−の柱はL字形、その他の柱はT字形にしている。すなわち、室内側の柱の角を窪ませて、デットスペ−スを極力少なくして居住空間を広くしている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る集成材の異形柱と梁の剛接合構造で第1の実施例を示す模式図である。
【図2】本発明に係る第1の実施例を示すT字形集成柱と梁とのスパン(張間)方向の接合部の分解斜視図であり、(a)はL型接合金具の模式図、(b)はT型接合金具の模式図、(c)は座金プレ−トの模式図である。
【図3】本発明に係る集成材の異形柱と梁の剛接合構造の実施例でT型接合金具の実施例を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)はA−A断面図、(c)はB−B断面図、(d)はC−C断面図である。
【図4】本発明に係る集成材の異形柱と梁の剛接合構造で第2の実施例を示す模式図である。
【図5】本発明に係る第2の実施例を示すL字形集成柱と梁とのスパン(張間)方向の接合部の分解斜視図であり、(a)はL型接合金具の模式図、(b)はT型接合金具の模式図、(c)は座金プレ−トの模式図である。
【図6】従来技術に係る木造建築物の軸組構法における、木質ラ−メン構法(一方向ラ−メン)の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づいて、本発明に係る集成材の異形柱と梁の剛接合構造の二つの実施形態例を説明する。第1の実施例は、主に桁行き方向の外周に位置する柱を、第2の実施例は、コ−ナ−に位置する柱の形態例を説明する。
(実施例1)
図1は、本発明に係る集成材の異形柱と梁の剛接合構造で第1の実施例を示す模式図、図2は第1の実施例のT字形集成柱と梁とのスパン(張間)方向の接合部の分解斜視図であり、(a)はL型接合金具の模式図、(b)はT型接合金具の模式図、(c)は座金プレ−トの模式図である。本発明の架構構法は、図1に示すように、接合金具の、L型接合金物4とT型接合金物5を重合して、T字形集成材柱1の凸面と、スパン(張間)方向の集成材梁3A、さらに、T字形集成材柱1と、桁行き方向の集成材梁3Bを組み合わせて、長尺ボルト6で緊結した剛構造接合に形成するものである。この例において、T字形集成材柱1,集成材梁3,スパン(張間)方向の集成材梁3A、桁行き方向の集成材梁3B、集成材梁の上層面3a、集成材梁の下層面3b、梁のスリット3c、L型接合金物4,垂直プレ−ト4a、水平プレ−ト4b、突起プレ−ト4c、ナット4d、T型接合金物5,矩形プレ−ト5a、アングル長辺5b、アングル短辺5c、リブ5d、長尺ボルト6,ドリフトピン7,座金プレ−ト8,ボルト孔9,ドリフトピン孔10,貫通孔11,ドリフトピン挿入穴12,および集成材柱のスリット口13から構成される。以下、これに沿って説明する。なお、記述では、図2のスパン(張間)方向について説明しているが、桁行き方向も同じ作業形態である。次に、各部材について説明する。
【0021】
まず、T字形集成材柱1、および集成材梁3Aについて説明する。T字形集成材柱1は、図2に示すように、複数のラミナ(ひき板)を積層接着して、断面形状がT字形(凸型)に形成されており、そのT字形集成材柱1の集成材梁3Aの接合部の位置に、長尺ボルト6を挿通するための直交した貫通孔11を有し、当接するT型接合金具5に付随しているリブ5dの位置に、リブ5dがT字形集成材柱1の内部に収納するようにスリット口13が施されている。次に、集成材梁3については、図2に示すように、一般的な長方形状での集成材梁3Aの両端部に、接合金具のプレ−トの挿入用の縦スリット加工3cが施され、前記梁の側面にはドリフトピン7挿通用に、複数のドリフトピン挿入穴12を有している。
【0022】
次に、L型接合金具4の構成について説明する。図2(a)に示すように、L型接合金具4は、鋼板片をL字形状に加工が施されている垂直プレ−ト4aと、水平プレ−ト4b、および、垂直プレ−ト4a面と、水平プレ−ト4b面の中央部から直角に延出している突起プレ−ト4cとで形成されている。なお、垂直プレ−ト4aの上部には、T型接合金具5との重合時に、T型接合金具のリブ5dが接触しないように部材の一部をカットしている。次いで、図2に示すように、垂直プレ−ト4aが、T字形集成材柱1の凸面に当接し、長尺ボルト6で緊結する際に固定するよう、ボルト孔9にナット4dを付着させている(部分拡大図参照)。また、突起プレ−ト4cには、T型接合金具5と重合して、集成材梁3Aを固定化するため、ドリフトピン7用のドリフトピン孔10が複数施されている。
【0023】
次いで、T型接合金具5の構成について説明する。T型接合金具5は、図3に示すように、アングル短辺5cには、長尺ボルト6を挿通するためのボルト孔9が形成され、アングル長辺5bの下部には、図3(d)に示すように、矩形プレ−ト5aと、複数のリブ5dが形成されている。前記矩形プレ−ト5aにはドリフトピン孔10が複数形成されて、前記ドリフトピン孔10は、L型接合金具4のドリフトピン孔10と、孔径、ピッチとも相似しており、また、集成材梁A3の側面のドリフトピン挿入穴12とも同じピッチで形成されている。なお、前記リブ5dの役目は、長尺ボルト6(引きボルト)の引張力負担時にアングル短辺5cが変形する(鋼板を折曲げ加工したアングルは、片方の辺に力が作用するとエッジ部で角度が変わる)そこで、アングル短辺5cの変形防止用にリブ5dを設けている。
【0024】
続いて、接合金具の接合形態について説明する。図2に示すように、T字形集成材柱1と集成材梁3Aは、まず、L型接合金具4を通じて接合される。すなわち、L型接合金具4をT字形集成材柱1に長尺ボルト6で緊結し、重合する突起プレ−ト4cと矩形プレ−ト5aをドリフトピン7で接続することにより、L型接合金具4とT型接合金具5とが合体する。次に、T字形集成材柱1に施されている貫通孔11を通じて、アングル短辺5cと座金プレ−ト8間を、長尺ボルト6で緊結することにより、T型接合金具5がT字形集成材柱1に固定される状態になり、集成材梁3Aの上層面3aと下層面3bが、アングル長辺5bと水平プレ−ト4b間で挟持される。力の伝達は、外周に作用する引張力に対しては、長尺ボルト6で、圧縮力に対しては柱・梁で負担する役割で構成され、また、せん断力に対しては、突起プレ−ト4cと矩形プレ−ト5aで、モ−メントに対しては、L型接合金具4とT型接合金具5が合体したプレ−トと、アングル形状の面(フランジ部)で、集成材外層面の面圧応力を負担する。
【0025】
次に、集成材梁3と接合金具の接続について説明する。図2に示すように、集成材梁3Aのスリット3c部を、T字形集成材柱1に固定されている突起プレ−ト4cに差し込み、L型接合金具の水平プレ−ト4bの上面に、下層面3bを載置する。その際、水平プレ−ト4bは、建て方(組み立て)時の集成材梁3Aの荷重の支えとなる。次に、T型接合金具の矩形プレ−ト5aを上部やや斜めから差し込み、L型接合金具の突起プレ−ト4cとT型接合金具の矩形プレ−ト5aを重合(突起プレ−ト4cのドリフトピン孔10と、矩形プレ−ト5aのドリフトピン孔10と、さらに、集成材梁3の側面のドリフトピン挿入穴12のピッチは合致している)し、集成材梁3側面のドリフトピン挿入穴12より、ドリフトピン7を打ち込むことにより梁が固定化される。
【0026】
前記では、接続の工法においてのドリフトピン7に関し、集成材梁3Aのスリット3c間で、サンドイッチ形状となったL型接合金具の突起プレ−ト4cとT型接合金具の矩形プレ−ト5aの、ドリフトピン7での接続状況を説明したが、本発明ではこれに限ることなく、ドリフトピン7と同程度の機能が発揮できるものであれば、公知の何れの方法でも良い。例えば、ボルト等を挙げることができる。
【0027】
次いで、高強度樹種(外層ラミナ)により構成されている梁の外層部と、接合金具との接続であるが、図2に示すように、集成材梁3Aの下層面3bには、L型接合金具の水平プレ−ト4bが、上層面3aには、T型接合金具のアングル長辺5bが当接して挟持する仕組みになっている。また、横(水平)方向からは、集成材梁3A側面に有するドリフトピン挿入孔12から、矩形プレ−ト5aと、突起プレ−ト4cを合致させたドリフトピン孔10に、ドリフトピン7を差し込み連結し固定する。すなわち、合体した接合金物から集成材が抜け出さないように、集成材の上下と横と四方から金具で固持する。すなわち、集成材の外層部で、強度的に重要な該当箇所の高強度樹種(ベイマツ、ヒノキ等)を効果的に活かすことができるシステム構造となっている。
【0028】
施行例を作業手順により説明する。工場で貫通孔等が加工されたT字形集成材柱1と、スリット加工等が施された集成材梁3Aが現場に搬入されて、建て方作業の前に、T字形集成材柱1とL型接合金具4の一体化を実施する。まず、地上でT字形集成材柱1を枕木等(図面を省略した、養生材兼作業台)の上に水平に並べて、T字形集成材柱1に有する貫通孔11と、L型接合金具の垂直プレ−ト4aに有するボルト孔9を合致させ、長尺ボルト6を挿通し、座金プレ−ト8と組み合わせて緊結を行い、T字形集成材柱1と、L型接合金具4を一体化する。なお、T字形集成材柱1に、L型接合金具4を取り付けるのは、工場での作業が望ましいが、現場での立地条件や、養生・運搬費・工期等を熟慮した上での低コストの選択となる。
【0029】
続いて、図2に示すように、まず、建て方作業にてT字形集成材柱1を垂直に建てて、水平材である集成材梁3Aのスリット3cを、T字形集成材柱1より突起している突起プレ−ト4cに差し込み、集成材梁の下層面3bを、垂直プレ−ト4bの上面に仮に設置する。次に、T型接合金具の矩形プレ−ト5aを上部右やや斜めから差し込み、L型接合金具の突起プレ−ト4cとT型接合金具の矩形プレ−ト5aを重合し、集成材梁3Aの側面から、ドリフトピン挿入穴12に、ドリフトピン7を打ち込み、集成材梁3Aの固定化を図る。さらに、アングル短辺5cに有するボルト孔9と、貫通孔11に長尺ボルト6を挿通し、座金プレ−ト8と組み合わせてナットで緊結を行い、T字形集成材柱1と、T型接合金具5を固持し、T字形集成材柱1と集成材梁3Aの一体化を図って、接合部の剛性を確保している。
【0030】
上述したT字形集成材柱1のサイズは、設計時の諸条件により決められるが、外部に面する幅600〜1500mm程度、内部に面する幅300〜600mm程度、厚み(凸部)450〜900mm程度、長さは4000〜12000mm程度で、集成材梁3のサイズは、幅150〜300mm程度、高さは300〜900mm程度、長さは5000〜12000mm程度である。また、接続金具類の材質は、一般構造用圧延鋼材(SS400)を代表として示したが、本発明ではこれに限ることなく、機能的に満足すべき強度が得られることができれば、公知された材質で良い。例えば、鋳物、アルキャスト等を挙げることができる。なお、当該金具のサイズは、設計時の諸条件により決められるが、プレ−トの厚は4.5〜9.0mm程度、幅は150〜300mm程度、高さは300〜900mm程度、長さは300〜750mm程度である。
【0031】
(実施例2)
図4は、本発明に係る集成材の異形柱と梁の剛接合構造で第2の実施例を示す模式図、図5は第2の実施例のL字形集成柱と梁とのスパン(張間)方向の接合部の分解斜視図であり、(a)はL型接合金具の模式図、(b)はT型接合金具の模式図、(c)は座金プレ−トの模式図である。この例において、L字形集成材柱2,集成材梁3,スパン(張間)方向の集成材梁3A、桁行き方向の集成材梁3B、集成材梁の上層面3a、集成材梁の下層面3b、梁のスリット3c、L型接合金物4,垂直プレ−ト4a、水平プレ−ト4b、突起プレ−ト4c、ナット4d、T型接合金物5,矩形プレ−ト5a、アングル長辺5b、アングル短辺5c、リブ5d、長尺ボルト6,ドリフトピン7,座金プレ−ト8,ボルト孔9,ドリフトピン孔10,貫通孔11,ドリフトピン挿入穴12,および集成材柱のスリット口13から構成される。以下、これに沿って説明する。なお、記述では、図5のスパン(張間)方向について説明しているが、桁行き方向も同じ作業形態である。次に、各部材について説明する。
【0032】
まず、L字形集成材柱2、および集成材梁3Aについて説明する。L字形集成材柱2は、図5に示すように、複数のラミナ(ひき板)を積層接着して、断面形状がL字形に形成されており、そのL字形集成材柱2の集成材梁3Aの接合部の位置に、長尺ボルト6を挿通するための直交した貫通孔11を有し、当接するT型接合金具5に付随しているリブ5dの位置に、リブ5dがT字形集成材柱2の内部に収納するようにスリット口13が施されている。次に、集成材梁3については、図5に示すように、一般的な長方形状での集成材梁3Aの両端部に、接合金具のプレ−トの挿入用の縦スリット加工3cが施され、前記梁の側面にはドリフトピン7挿通用に、複数のドリフトピン挿入穴12を有している。
【0033】
次に、L型接合金具4の構成について説明する。図5(a)に示すように、L型接合金具4は、鋼板片をL字形状に加工が施されている垂直プレ−ト4aと、水平プレ−ト4b、および、垂直プレ−ト4a面と、水平プレ−ト4b面の中央部から直角に延出している突起プレ−ト4cとで形成されている。なお、垂直プレ−ト4aの上部には、T型接合金具5との重合時に、T型接合金具のリブ5dが接触しないように部材の一部をカットしている。次いで、図5に示すように、垂直プレ−ト4aがT字形集成材柱1の凸面に当接し、長尺ボルト6で緊結する際に固定するよう、ボルト孔9にナット4dを付着させている(部分拡大図参照)。また、突起プレ−ト4cには、T型接合金具5と重合して、集成材梁3Aを固定化するため、ドリフトピン7用のドリフトピン孔10が複数施されている。
【0034】
次いで、T型接合金具5の構成について説明する。T型接合金具5は、図3に示すように、アングル短辺5cには、長尺ボルト6を挿通するためのボルト孔9が形成され、アングル長辺5bの下部には、図3(d)に示すように、矩形プレ−ト5aと、複数のリブ5dが形成されている。前記矩形プレ−ト5aにはドリフトピン孔10が複数形成されて、前記ドリフトピン孔10は、L型接合金具4のドリフトピン孔10と、孔径、ピッチとも相似しており、また、集成材梁A3の側面のドリフトピン挿入穴12とも同じピッチで形成されている。なお、前記リブ5dの役目は、長尺ボルト6(引きボルト)の引張力負担時にアングル短辺5cが変形する(鋼板を折曲げ加工したアングルは、片方の辺に力が作用するとエッジ部で角度が変わる)そこで、アングル短辺5cの変形防止用にリブ5dを設けている。
【0035】
続いて、接合金具の接合形態について説明する。図5に示すように、L字形集成材柱2と集成材梁3Aは、まず、L型接合金具4を通じて接合される。すなわち、L型接合金具4を、L字形集成材柱2に長尺ボルト6で緊結し、重合する突起プレ−ト4cと矩形プレ−ト5aをドリフトピン7で接続することにより、L型接合金具4とT型接合金具5とが合体する。次に、L字形集成材柱2に施されている貫通孔11を通じて、アングル短辺5cと座金プレ−ト8間を、長尺ボルト6で緊結することにより、T型接合金具5がL字形集成材柱2に固定される状態になり、集成材梁3Aの上層面3aと下層面3bが、アングル長辺5bと水平プレ−ト4b間で挟持される。力の伝達は、外周に作用する引張力に対しては、長尺ボルト6で、圧縮力に対しては柱・梁で負担する役割で構成され、また、せん断力に対しては、突起プレ−ト4cと矩形プレ−ト5aで、モ−メントに対しては、L型接合金具4とT型接合金具5が合体したプレ−トと、アングル形状の面(フランジ部)で、集成材外層面の面圧応力を負担する。
【0036】
次に、集成材梁3と接合金具の接続について説明する。図5に示すように、集成材梁3Aのスリット3c部を、L字形集成材柱2に固定されている突起プレ−ト4cに差し込み、L型接合金具の水平プレ−ト4bの上面に、下層面3bを載置する。その際、水平プレ−ト4bは、建て方(組み立て)時の集成材梁3Aの荷重の支えとなる。次に、T型接合金具の矩形プレ−ト5aを上部やや斜めから差し込み、L型接合金具の突起プレ−ト4cとT型接合金具の矩形プレ−ト5aを重合(突起プレ−ト4cのドリフトピン孔10と、矩形プレ−ト5aのドリフトピン孔10と、さらに、集成材梁3の側面のドリフトピン挿入穴12のピッチは合致している)し、集成材梁3側面のドリフトピン挿入穴12より、ドリフトピン7を打ち込むことにより梁が固定化される。
【0037】
前記では、接続の工法においてのドリフトピン7に関し、集成材梁3Aのスリット3c間で、サンドイッチ形状となったL型接合金具の突起プレ−ト4cとT型接合金具の矩形プレ−ト5aの、ドリフトピン7での接続状況を説明したが、本発明ではこれに限ることなく、ドリフトピン7と同程度の機能が発揮できるものであれば、公知の何れの方法でも良い。例えば、ボルト等を挙げることができる。
【0038】
次いで、高強度樹種(外層ラミナ)により構成されている梁の外層部と、接合金具との接続であるが、図5に示すように、集成材梁3Aの下層面3bには、L型接合金具の水平プレ−ト4bが、上層面3aには、T型接合金具のアングル長辺5bが当接して挟持する仕組みになっている。また、横(水平)方向からは、集成材梁3A側面に有するドリフトピン挿入孔12から、矩形プレ−ト5aと、突起プレ−ト4cを合致させたドリフトピン孔10に、ドリフトピン7を差し込み連結し固定する。すなわち、合体した接合金物から集成材が抜け出さないように、集成材の上下と横と四方から金具で固持する。すなわち、集成材の外層部で、強度的に重要な該当箇所の高強度樹種(ベイマツ、ヒノキ等)を効果的に活かすことができるシステム構造となっている。
【0039】
施行例を作業手順により説明する。工場で貫通孔等が加工されたL字形集成材柱2と、スリット加工等が施された集成材梁3Aが現場に搬入されて、建て方作業の前に、L字形集成材柱2とL型接合金具4の一体化を実施する。まず、地上でL字形集成材柱2を枕木等(図面を省略した、養生材兼作業台)の上に水平に並べて、L字形集成材柱2に有する貫通孔11と、L型接合金具の垂直プレ−ト4aに有するボルト孔9を合致させ、長尺ボルト6を挿通し、座金プレ−ト8と組み合わせて緊結を行い、L字形集成材柱2と、L型接合金具4を一体化する。なお、T字形集成材柱1に、L型接合金具4を取り付けるのは、工場での作業が望ましいが、現場での立地条件や、養生・運搬費・工期等を熟慮した上での低コストの選択となる。
【0040】
続いて、図5に示すように、まず、建て方作業にてL字形集成材柱2を垂直に建てて、水平材である集成材梁3Aのスリット3cを、L字形集成材柱2より突起している突起プレ−ト4cに差し込み、集成材梁の下層面3bを、垂直プレ−ト4bの上面に仮に設置する。次に、T型接合金具の矩形プレ−ト5aを上部右やや斜めから差し込み、L型接合金具の突起プレ−ト4cとT型接合金具の矩形プレ−ト5aを重合し、集成材梁3Aの側面から、ドリフトピン挿入穴12に、ドリフトピン7を打ち込み、集成材梁3Aの固定化を図る。さらに、アングル短辺5cに有するボルト孔9と、貫通孔11に長尺ボルト6を挿通し、座金プレ−ト8と組み合わせてナットで緊結を行い、L字形集成材柱2と、T型接合金具5を固持し、L字形集成材柱2と集成材梁3Aの一体化を図って、接合部の剛性を確保している。
【0041】
上述したL字形集成材柱2のサイズは、設計時の諸条件により決められるが、外部に面する片幅600〜1000mm程度、内部に面する幅300〜600mm程度、長さは4000〜12000mm程度で、集成材梁3のサイズは、幅150〜300mm程度、高さは300〜900mm程度、長さは5000〜12000mm程度である。また、接続金具類の材質は、一般構造用圧延鋼材(SS400)を代表として示したが、本発明ではこれに限ることなく、機能的に満足すべき強度が得られることができれば、公知された材質で良い。例えば、鋳物、アルキャスト等を挙げることができる。なお、当該金具のサイズは、設計時の諸条件により決められるが、プレ−トの厚は4.5〜9.0mm程度、幅は150〜300mm程度、高さは300〜900mm程度、長さは300〜750mm程度である。
【0042】
以上説明したように、集成材の異形柱と梁の剛接合構造の本発明に係るによれば、集成材の特性(外層ラミナ)を活かして、大規模な木造建築物の公共建築物等の構造的特性に対応した、純ラ−メン構造を提供することで、耐震性、耐久性を重要視した構造設計を合理的に行うことができ、粘り強い構造等の効果が得られる。したがって、大規模な木造の技術が系統立っていない現状に貢献することも可能であり、建設業界およびCO2絡みの環境面での社会に与える効用は極めて大きい。
【符号の説明】
【0043】
1 T字形集成材柱
2 L字形集成材柱
3 集成材梁
3A スパン(張間)方向の集成材梁
3B 桁行き方向の集成材梁
3a 集成材梁の上層面
3b 集成材梁の下層面
3c 梁のスリット
4 L型接合金具
4a 垂直プレ−ト
4b 水平プレ−ト
4c 突起プレ−ト
4d ナット
5 T型接合金具
5a 矩形プレ−ト
5b アングル長辺
5c アングル短辺
5d リブ
6 長尺ボルト
7 ドリフトピン
8 座金プレ−ト
9 ボルト孔
10 ドリフトピン孔
11 貫通孔
12 ドリフトピン挿入穴
13 集成材柱のスリット口
14 従来の柱
15 従来の鋼板
16 従来の梁
17 従来の梁のスリット








【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造建築物の軸組構法における梁接合部の位置に、直交したボルトを挿通し、複数の貫通孔を有するT字形集成材柱と、部材の両端部に縦スリットを施し、側面にはドリフトピン挿入穴を施した集成材梁と、L字形状に折曲形成された鋼板片の垂直面に、複数のボルト孔とナットを有し、前記垂直面と水平面の幅中央部の位置から、ドリフトピン孔を複数有した突起プレ−トを備えているL型接合金具と、L字形状に曲げた鋼板片の短辺に、長尺ボルトを挿通するボルト孔が施され、長辺の幅中央の下部には、複数のドリフトピン孔を有する矩形状の鋼板片、および複数のリブを配置して形成されているT型接合金具と、長方形で複数のボルト孔を有する座金プレ−トの部品で構成してなる接合構造において、前記T字形集成材柱に有する複数のボルト貫通孔と、前記該当金具に形成されているボルト孔を当接し、通しボルトを挿通し形成されている金具に、前記集成材梁を当接して、前記L型接合金具の突起プレ−トと、T型接合金具の矩形状の鋼板片が重合され、ドリフトピンで結合されていることを特徴とする集成材の異形柱と梁の剛接合構造。
【請求項2】
梁接合部の位置に直交したボルトを挿通し、複数の貫通孔を有するL字形集成材柱と、部材の両端部に縦スリットを施し、側面にはドリフトピン挿入穴を施した集成材梁と、L型接合金具と、T型接合金具と、長方形で複数のボルト孔を有する座金プレ−トの部品で構成してなる接合構造を特徴とする、請求項1に記載の集成材の異形柱と梁の剛接合構造。

























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−149464(P2012−149464A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10348(P2011−10348)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(506200083)
【Fターム(参考)】