説明

集束イオンビーム装置

【課題】複雑な調整機構を用いることなく安定したビームの照射を図ること。
【解決手段】針状のチップ1と、チップ1にガスを供給するイオン源用ガスノズル2とイオン源用ガス供給源3からなるガス供給部と、チップ1との間で電圧を印加し、チップ1の表面に吸着したガスをイオン化してイオンを引き出す引出電極4と、イオンを試料13に向けて加速させるカソード電極5からなるイオン銃部19を備え、イオン銃部19とレンズ系の間に配置された第二のアパーチャ10と、試料13にイオンビーム11を集束させる集束レンズ電極6と対物レンズ電極8からなるレンズ系を備えている集束イオンビーム装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電界電離型イオン源を備えた集束イオンビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集束イオンビーム装置のイオン源として液体金属ガリウムを用いられている。また、近年では、微細なチップにイオン源ガスを供給して、チップ先端に形成された強力な電界により、チップに吸着したイオン源ガス種をイオン化し、イオンビームを引き出す電界電離型イオン源を用いた集束イオンビームも開発されている。
【0003】
従来の液体金属ガリウムを用いたイオン源では、イオン源から放出されるイオンビームの開き角度は20度程度であった。一方、電界電離型イオン源では、イオンビームはチップ先端の数個の原子から放出されるため、イオンビームの開き角度は数度程度である。電界電離型イオン源を用いる場合、イオンビーム開き角度が小さいため、イオン源から試料表面に到達するイオンビームを引き出すためにイオン鏡筒内で光軸に対して、角度、位置の正確な調整が必要であった。
【0004】
チップ自体の方向を調整する調整機構を備えた電界電離型イオン源が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
このように構成された装置によれば、イオンビームの開き角度の小さい電界電離型イオン源でもイオンビーム引き出しの調整を正確な測定を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2009−517846号公報(主に図17)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような調整機構は複雑な構造であり、調整機構を備えた装置では高価なものになってしまう。また、この機構ではチップが振動の影響を受けて安定したビームを照射することができない。
【0008】
この発明は、上記の事情を考慮してなされたもので、その目的は、複雑な構造を用いることなく安定したビームを照射可能な集束イオンビーム装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明に係る集束イオンビーム装置は、針状のチップと、チップにガスを供給するガス供給部と、チップとの間で電圧を印加し、チップ表面に吸着したガスをイオン化してイオンを引き出す引出電極と、イオンを試料に向けて加速させるカソード電極と、を有する電界電離型イオン銃部と、電界電離型イオン銃部から放出されたイオンビームの一部を通過させる開口部を有するアパーチャと、試料にイオンビームを集束させるレンズ系と、を有する。これにより電界電離型イオン銃部から放出されたイオンビームの光軸中心付近のイオンビームのみを開口部から通過させることができる。従って、集束レンズにはイオンビームの光軸中心付近のイオンビームのみを入射することができるので、イオンビームの外周成分が中心成分に混ざることがないために、試料に形状の整った良好なビームプロファイルを持つビームを照射することができる。
【0010】
この発明に係る集束イオンビーム装置においては、レンズ系は、アパーチャよりも試料側に配置する。これより、イオンビームの余計な成分をレンズ系に入射することを軽減できる。イオン発生室内において、チップに到達することなくイオン化される不純物ガスが存在する場合、イオン化された不純物ガスがイオンビームに混在し、イオンビームの余計な成分として電流量を変化させるためイオンビームが不安定になってしまうことがある。レンズ系に入社するイオンビームをアパーチャによって制限することでイオンビーム電流の変動を軽減することができる。
【0011】
また、アパーチャに電流計を接続しても良い。これによりアパーチャに入射するイオンビーム電流量を測定することができる。
【0012】
この発明に係る集束イオンビーム装置においては、電界電離型イオン銃部から放出されたイオンビームをガンアライメント電極で偏向することができる。これによりチップ自体の方向を機械的に調整するような複雑で高価な機能を必要とせず、また外部からの振動に対しても強い装置を実現することができる。
【0013】
この発明に係る集束イオンビーム装置においては、レンズ系は、ガンアライメント電極よりも試料側に配置する。これによりイオンビームを光軸に平行に調整することができるので、レンズ等光学系に斜めに入射することにより発生する収差の小さいイオンビームを試料に照射することができる。ここで光軸とはレンズの中心を貫く軸である。
【0014】
また、ガンアライメント電極に走査信号を入力することで、アパーチャ上にイオンビームを走査照射することができる。これにより二次荷電粒子像を観察することで、アパーチャの位置を確認することができる。
【0015】
この発明に係る集束イオンビーム装置においては、電界電離型イオン銃部は、レンズ系に対して、移動可能な移動機構を有する。これによりイオン銃部をレンズ系に対して相対的に移動し、レンズ系に入射するイオンビームの位置を調整することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る集束イオンビーム装置によれば、複雑な調整機構を用いることなく安定したビームを試料に照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る集束イオンビーム装置の構成図である。
【図2】本発明に係る集束イオンビーム装置の構成図である。
【図3】本発明に係る集束イオンビーム装置のイオン銃部の模式図である。
【図4】本発明に係る集束イオンビーム装置のチップ先端の模式図である。
【図5】本発明に係る集束イオンビーム装置の模式図である。
【図6】本発明に係る集束イオンビーム装置のアパーチャの構成図である。
【図7】従来の集束イオンビーム装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る集束イオンビーム装置の実施形態について説明する。
本実施形態の集束イオンビーム装置は、図1に示すように、針状のチップ1と、チップ1にガスを供給するイオン源用ガスノズル2とイオン源用ガス供給源3からなるガス供給部と、チップ1との間で電圧を印加し、チップ1の表面に吸着したガスをイオン化してイオンを引き出す引出電極4と、イオンを試料13に向けて加速させるカソード電極5からなるイオン銃部19を備えている。また針状のチップ1はチップ1を支持するフィラメント(図示せず)に電流を流すことにより加熱する機構を備えている。そして、イオン銃部19とレンズ系の間に配置された第二のアパーチャ10と、試料13にイオンビーム11を集束させる集束レンズ電極6と対物レンズ電極8からなるレンズ系を備えている。これによりイオン銃部19から放出されたイオンビーム11を制限することができる。また、集束レンズ電極6と対物レンズ電極8の間に開口部7aを有する第一のアパーチャ7を備えている。また、第一のアパーチャ7は開口径の異なる開口部7aを備えている(図示せず)。異なる大きさの開口径を選択し、ビーム軸の設置することで、通過するイオンビーム11のビーム量を調整することができる。そして、イオン銃部19を装置の外側からレンズ系に対して相対的に移動可能な調整機構20を備える。
【0019】
また、図2に示すように、イオン銃部19より試料13側に位置し、イオン銃部19から放出されたイオンビーム11の照射方向を調整するガンアライメント電極9を有している。そして、試料室15の内部は真空状態になっており、試料13を載置し移動可能な試料ステージ12と試料13にデポジションやエッチングガスを供給するガス銃18と、試料13から発生する二次荷電粒子を検出する検出器14を備えている。ここで、図示していないが、試料室15とイオン銃19の真空を仕切るバルブを備えている。また、集束イオンビーム装置を制御する制御部16を備え、検出器14で検出した検出信号とイオンビームの走査信号より観察像を形成する画像形成部(図示せず)を制御部16内に有しており、形成した観察像を表示部17に表示する。
【0020】
(1)電界電離型イオン源
電界電離型イオン源は、図3に示すように、イオン発生室21と、チップ1と、引出電極4と、冷却装置24とを備えている。
【0021】
イオン発生室21の壁部に冷却装置24が配設されており、冷却装置24のイオン発生室21に臨む面に針状のチップ1が装着されている。冷却装置24は、内部に収容された液体窒素、液体ヘリウム等の冷媒によってチップ1を冷却するものである。また冷却装置24としてGM型、パルスチューブ型等のクローズドサイクル式冷凍機、ガスフロー型の冷凍機を使用しても良い。さらに温調機能を備えてイオン種に応じて最適な温度に調整可能とする。そして、イオン発生室21の開口端近傍に、チップ1の先端1aと対向する位置に開口部を有する引出電極4が配設されている。
【0022】
イオン発生室21は、図示略の排気装置を用いて内部が所望の高真空状態に保持されるようになっている。図示していないが、試料室15とイオン銃20の真空度の差を作るためのオリフィスを複数個備えている。このオリフィスにより、試料室へのイオン化ガスの流入、また試料室に導入するガスのイオン銃室への流入を防いでいる。イオン発生室21には、イオン源用ガスノズル2を介してイオン源用ガス供給源3が接続されており、イオン発生室21内に微量のガス(例えば、Arガス)を供給するようになっている。
【0023】
なお、イオン源用ガス供給源3から供給されるガスは、Arガスに限られるものではなく、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、水素(H2)、酸素(O2)、窒素(N2)等のガスであってもよい。また、イオン源用ガス供給源3から複数種のガスを供給可能に構成し、用途に応じてガス種を切り替えたり、1種類以上を混合したりすることができるようにしてもよい。
【0024】
チップ1は、タングステンやモリブデンからなる針状の基材に、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、金等の貴金属を被覆したものからなる部材であり、その先端1aは原子レベルで尖鋭化されたピラミッド状になっている。別にチップ1は、タングステンやモリブデンからなる針状の基材を図示しない窒素ガスや酸素ガスを導入することにより、その先端1aを原子レベルで尖鋭化したものを使用しても良い。またチップ1は、イオン源の動作時には冷却装置24によって100K程度以下の低温に保持される。チップ1と引出電極4との間には、電源27によって引き出し電圧が印加されるようになっている。
【0025】
チップ1と引出電極4との間に電圧が印加されると、鋭く尖った先端1aにおいて非常に大きな電界が形成されるとともに、分極してチップ1に引き寄せられたガス分子25が、先端1aのうちでも電界の高い位置で電子をトンネリングにより失ってガスイオンとなる。そして、このガスイオンが正電位に保持されているチップ1と反発して引出電極4側へ飛び出し、引出電極4の開口部からレンズ系へ射出されたイオン11aがイオンビーム11を構成する。ここで、引出電極4とチップ1の先端の中心位置は10ミクロンメートル以内であることが好ましい。またチップ1と引出電極4の間に、チップ1に対して負電位を与える抑制電極を設けても良い。
【0026】
チップ1の先端1aは極めて尖鋭な形状であり、ガスイオンはこの先端1a上方の限られた領域でイオン化されるため、イオンビーム11のエネルギー分布幅は極めて狭く、例えば、プラズマ型ガスイオン源や液体金属イオン源と比較して、ビーム径が小さくかつ高輝度のイオンビームを得ることができる。
【0027】
なお、チップ1への印加電圧が大きすぎると、ガスイオンとともにチップ1の構成元素(タングステンや白金)が引出電極4側へ飛散するため、動作時(イオンビーム放射時)にチップ1に印加する電圧は、チップ1自身の構成元素が飛び出さない程度の電圧に維持される。
【0028】
一方、このようにチップ1の構成元素を操作できることを利用して、先端1aの形状を調整することができる。例えば、先端1aの最先端に位置する元素を故意に取り除いてガスをイオン化する領域を広げ、イオンビーム径を大きくすることができる。
【0029】
またチップ1は、加熱することで表面の貴金属元素を飛び出させることなく再配置させることができるため、使用により鈍った先端1aの尖鋭形状を回復することもできる。
【0030】
(2)イオン銃部
イオン銃部19は、上記電界電離型イオン源と引出電極4を通過したイオン11aを試料13に向けて加速させるカソード電極5とを備えている。そして、イオン銃部19は調整機構20と接続されている。調整機構20は真空外部からイオン銃部19をレンズ系に対して相対的に移動する。これによりレンズ系に入射するイオンビーム11の位置を調整することができる。
【0031】
(3)レンズ系
レンズ系は、チップ1側から試料13側に向けて順に、イオンビーム11を集束する集束レンズ電極6と、イオンビーム11を絞り込む第一のアパーチャ7と、イオンビーム11の光軸を調整するアライナ(図示せず)と、イオンビーム11の非点を調整するスティグマ(図示せず)と、イオンビーム11を試料13に対して集束する対物レンズ電極8と、試料上でイオンビーム11を走査する偏向器(図示せず)とを備えて構成される。
【0032】
このような構成の集束イオンビーム装置では、ソースサイズ1nm以下、イオンビームのエネルギー広がりも1eV以下にできるため、ビーム径を1nm以下に絞ることができる。図示していないがイオンの原子番号を選別するためのExB等のマスフィルターを備えていても良い。
【0033】
(4)イオンビームの性能向上
電界電離型イオン源では、図4に示すように、イオン11aは、チップ先端1aの微細構造、つまり先端の凸部1bを反映した方向に放出される。図4のように凸部1bが複数存在するとイオン11aは複数の方向に放出される。またイオン11aの各方向でのビームの広がり角は数度ときわめて狭い。
【0034】
図7は従来の集束イオンビームの模式図である。イオン11aの放射方向は光軸40と異なっている。チップ1から放出されたイオン11aは集束レンズ電界6aに入射され、その後アライナ51によって照射方向を調整する。また調整機構20により集束レンズ中心を通るようにイオン11aを調整することが可能である。しかし、イオン11aの放射方向が集束イオンビーム光学系の中心軸である光軸40と異なっているために、イオン11aは集束レンズ電界6aに対し、斜めに入射することになる。レンズに斜めに入射すると収差が発生し、試料13上に収束するビーム形状を悪化させてしまう。また、チップ1から複数の方向にイオン11aが放出されると、外周方向のイオン11aはレンズの中心ではなく外側を通ることになる。外側を通ったイオン11aは集束レンズにより強く曲げられ、中心を通ったイオン11aと混ざり合ってしまう。そのため、この外周成分は中心成分に対するバックグランドの余計な成分となり、イオン11aの試料13上でビームの分布、つまりビームプロファイルが悪化してしまう。以上から、レンズ系のレンズ中心に、光軸に平行に、一つの方向のみのイオン11aを入射しなければならない。
【0035】
図5は本発明に係る集束イオンビーム装置の模式図であり、集束レンズ電界6aよりもチップ1側のグランド部にガンアライメント電極9、第二のアパーチャ10を備える。チップ1からイオン11aが光軸40とは異なる方向に放出されてもガンアライメント電極9により光軸40と略平行に集束レンズ電界6aにイオン11aを入射することができる。また、第二のアパーチャ10により一つの方向に放出されたイオン11aのみを選択し集束レンズ電界6aの中心に入射することができる。以上により試料13表面の正確な位置に集束したイオンビーム11を照射することができる。
【0036】
また、第二のアパーチャ10は図6に示すように、径の異なる複数の開口部10aを有する。これによりイオンビーム11の照射軸に配置する開口部10aの径を変えることが可能であり、通過するイオンビーム11の電流量を調整することができる。
【0037】
さらに調整機構20はイオン銃部19をレンズ系に対して相対的に移動することが可能であり、イオン銃部19から放出されたイオンビーム11の照射位置を調整する。これによれば、イオンビーム11の照射位置を調整し、集束レンズ電界6aのレンズ中心に入射することができる。
【0038】
ガンアライメント電極9、第二のアパーチャ10はチップ1に対し、この順で配置することが好ましい。その理由はガンアライメント電極9がイオン源と遠くなると、調整機構20の移動距離が大きくなることと、偏向器に対してビームが軸外を通るので収差が大きくなり、ビーム径が悪化するためである。
【0039】
本発明では調整機構20による平行移動と、ガンアライメント電極9による方向の調整を行ったが、他の構成として、イオン源直下に二段のアライメント電極を設け、ビームをチルト、シフトし、平行移動と方向調整を行っても良い。
【0040】
またガンアライメント電極9には走査信号をいれ、アパーチャ上をスキャンできるようにすることでイオン源の位置探しを行っても良い。
【0041】
第二のアパーチャ10は電気的に絶縁し、電流を測定可能とし、イオン源エミッション電流のモニターとして使用することも可能である。このモニター機能を利用し、引き出し電圧やガス流量を調整し、エミッション電流を一定に保つことも可能である。
【0042】
(5)ガス銃
ガス銃18は、試料13表面にデポジション膜の原料ガス(例えば、フェナントレン、ナフタレンなどのカーボン系ガス、プラチナやタングステンなどの金属を含有する金属化合物ガスなど)を原料容器からノズルを通して供給する構成になっている。
【0043】
また、エッチング加工を行う場合は、エッチングガス(例えば、フッ化キセノン、塩素、ヨウ素、三フッ化塩素、一酸化フッ素、水など)を原料容器からノズルを通して供給することができる。
【0044】
<実施例1>
本実施形態のビーム調整方法を説明する。第二のアパーチャ10で径が一番大きい開口部10aをイオンビーム11の照射軸に配置する。チップ1からイオン銃部19からイオンビームを照射した状態で二次電子像を見ながら、調整機構20を操作してイオンビームが試料13に多く到達するイオン銃部19のレンズ系に対する位置を探す。試料13にイオンビームが多く到達するイオン銃部19の位置において、対物レンズ電極8の印加電圧を変化させ、電圧が変化しても二次電子像が動かないようにガンアライメント電極9の印加電圧を調整する。
【0045】
次に集束レンズ電極6の印加電圧を変化させ、電圧が変化しても二次電子像が動かないように調整機構20を操作してイオン銃部19の位置を調整する。
【0046】
次に第二のアパーチャ10で径の小さい開口部10aをイオンビーム11の照射軸に配置する。再度調整が必要な場合、上記の調整プロセスを再び行う。これによりチップ1の方向が試料13の表面に対してずれていても、集束レンズの中心付近にイオンビーム11を照射し、また余計な成分をアパーチャにより制限することで、試料13に形状の整ったビームプロファイルを有するイオンビーム11を照射することができる。
【0047】
<実施例2>
本実施形態の観察、加工方法を説明する。冷却装置24によって冷却されたチップ1にイオン源用ガスノズル2を介してヘリウムガスを供給し、チップ1にヘリウムガスを吸着させる。チップ1と引出電極4の間に電圧を供給して吸着したヘリウムガスをイオン化して、引出電極4の開口部からレンズ系に向けてイオン11aを射出する。ガンアライメント電極9で照射軸を偏向されたイオンビーム11のビーム中心部分は第二のアパーチャ10の開口部を通過して集束レンズの中心部に入射される。レンズ系で集束されたイオンビーム11は試料13の表面に照射される。試料13から発生した二次電子を検出器14で検出する。ここで検出器14は二次電子を検出する場合は二次電子検出器を用い、二次イオンを検出する場合は二次イオン検出器を用いることが好ましい。さらに反射イオンを検出する場合は反射イオン検出器を用いることが可能である。検出器14の検出信号とイオンビーム11を走査電極(図示せず)に入力する走査信号から制御部16内の画像形成部で二次電子像を形成する。これにより試料13表面を観察する。
【0048】
ガス銃18からエッチングガスを試料13表面に供給し、イオンビーム11を走査照射する。イオンビーム11が照射された領域において試料13がエッチングされ、局所的に加工することができる。
【0049】
また、ガス銃18からデポジション膜の原料ガスを試料13表面に供給し、イオンビーム11を走査照射する。イオンビーム11が照射された領域においてデポジション膜が形成され、局所的に成膜することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…チップ
2…イオン源用ガスノズル
3…イオン源用ガス供給源
4…引出電極
5…カソード電極
6…集束レンズ電極
7…第一のアパーチャ
7a…開口部
8…対物レンズ電極
9…ガンアライメント
10…第二のアパーチャ
10a…開口部
11…イオンビーム
12…試料ステージ
13…試料
14…検出器
15…試料室
16…制御部
17…表示部
18…ガス銃
19…イオン銃部
20…調整機構
21…イオン発生室
24…冷却装置
25…ガス分子
27…電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針状のチップと、
前記チップにガスを供給するガス供給部と、
前記チップとの間で電圧を印加し、前記チップ表面に吸着した前記ガスをイオン化してイオンを引き出す引出電極と、
前記イオンを試料に向けて加速させるカソード電極と、
を有する電界電離型イオン銃部と、
前記電界電離型イオン銃部から放出されたイオンビームの一部を通過させる開口部を有するアパーチャと、
前記試料に前記イオンビームを集束させるレンズ系と、
を有する集束イオンビーム装置。
【請求項2】
前記レンズ系は、前記アパーチャよりも前記試料側に配置する請求項1に記載の集束イオンビーム装置。
【請求項3】
前記アパーチャは、電気的に絶縁し、前記電界電離型イオン銃部から放出されたイオンビームの電流量を測定する機能を有する請求項1または2に記載の集束イオンビーム装置。
【請求項4】
前記電界電離型イオン銃部から放出されたイオンビームの照射方向を調整するガンアライメント電極を有する請求項1から3のいずれか一つに記載の集束イオンビーム装置。
【請求項5】
前記レンズ系は、前記ガンアライメント電極よりも前記試料側に配置する請求項4に記載の集束イオンビーム装置。
【請求項6】
前記電界電離型イオン銃部は、前記レンズ系に対して移動可能な移動機構を有する請求項1から5のいずれか一つに記載の集束イオンビーム装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−171008(P2011−171008A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31602(P2010−31602)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【Fターム(参考)】