集水セグメント及び集水トンネル構築方法

【課題】水流入を防止しつつ容易に集水トンネルを構築できるとともにトンネル構築後におけるセグメント通水部分の目詰まりが生じ難い集水セグメント及びこのセグメントを用いる集水トンネル構築方法を提供する。
【解決手段】地中に非開削工法により集水トンネルTを構築するための集水セグメント1。セグメント1は、基体11と、基体の通水スリット111sの目詰まり抑制のために基体外面側に配置された石粒層10と、石粒層10を基体11に固定するとともにセグメント1を通る基体11内側への通水を阻止するように石粒層10及び基体11に充填された水分解性樹脂15とを含む。この集水セグメント1を用いて非開削工法(例えばシールド工法)により集水トンネル前駆体T’を構築し、前駆体T’のセグメント1における水分解性樹脂15を水分解させて集水トンネルTを得る。
【解決手段】地中に非開削工法により集水トンネルTを構築するための集水セグメント1。セグメント1は、基体11と、基体の通水スリット111sの目詰まり抑制のために基体外面側に配置された石粒層10と、石粒層10を基体11に固定するとともにセグメント1を通る基体11内側への通水を阻止するように石粒層10及び基体11に充填された水分解性樹脂15とを含む。この集水セグメント1を用いて非開削工法(例えばシールド工法)により集水トンネル前駆体T’を構築し、前駆体T’のセグメント1における水分解性樹脂15を水分解させて集水トンネルTを得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水を水資源として集水するための集水トンネルの構築に用いる集水セグメント及び該集水セグメントを用いる集水トンネル構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水を飲料水や工業用水として利用するために地下水を水資源として集水することが行われている。
地下水を水資源として集水する方法としては、例えば図6に示すように、地表から地中の集水領域へ向け溝状に開削し、その開削底部に集水管を敷設し、その後それら集水管を敷設した開削領域へ開削土砂を埋め戻し、該集水管に地下水を流入させて集水するのである。このように集められる水は、例えば、適当な位置に該集水管に連通する立坑を設け、この立坑へ流入させ、そこから揚水ポンプで汲み上げて用いるのである。
【0003】
集水管は、管内へ集水するための通水部分(通水孔、通水スリット等)を有するものであるが、通水部分が地中で目詰まりすることを抑制するため、図7に示すように、集水管の周囲に石粒層を形成したうえで、開削土砂を埋め戻すことが行われている。日本水道協会 水道施設設計指針2000年度版 第98頁 図−2.10.1に、この状態に集水管を設ける例が示されている。
【0004】
同指針の第98頁 図−2.10.1には、集水管として、図8に示すように、フレームFに線状部材mを螺旋状に巻き設け、隣り合う線状部材m間に通水スリットwsを提供しているタイプの集水管(集水スクリーン管)を用いた場合の石粒層の例が示されている。該石粒層は、集水管径が1mの場合の例であり、大砂利層(大石粒層:粒径40mm〜50mm)、中砂利層(中石粒層:粒径30mm〜40mm)、小砂利層(小石粒層:粒径20mm〜30mm)を積層したものである。
【0005】
同指針に基づいて、図7に例示されるように、集水管周囲に砂利層(石粒層)を形成すれば、集水管の通水部分の目詰まりを長期にわたり抑制することができることは一般に認められているところである。
【0006】
また、同指針の第97頁の「2.10.2 位置及び構造」の第3項には、「集水開口部からの水流入速度は、砂の掃流限界速度(すなわち水流により砂が動き始める限界の水流速度)以下を標準とする」と記載されているとともに、第99頁の参考表2.10.1に「土の分類と掃流限界速度」が記載されている。従って、このことからすると、一般的に言えば、集水管の集水開口部(図8の集水管で言えば通水スリットws)の目詰まりを起こしやすい細砂等の砂の掃流限界速度より低速で集水開口部へ水が流入するように集水管周囲の石粒層を設けるとよいと言える。このことは「サンドコントロール」などと称されている目詰まり抑制手法である。
【0007】
なお、集水管の集水開口部の寸法(前記スリットwsで言えばその寸法)は、砂の掃流限界速度(例えば、特に目詰まりを起こしやすい砂の掃流限界速度)Vと、所望の単位時間あたり集水量Qと、集水管の開口面積等の関数として把握できる集水面積Aとからなる式Q=A×Vから割り出すことができる寸法ということができる。
【0008】
集水管としては上記のほか、鉄筋コンクリート有効管も利用できるが、その開口率は、管の強度等の観点から低くならざるを得ず、砂の掃流限界速度を考慮した場合には集水量が、管全体の大きさの割りには少なくなるのに対し、図8に例示するようなタイプの集水管(集水スクリーン管)によると、開口率を高くでき、砂の掃流限界速度を考慮した場合でも、管全体の大きさの割りには大きい集水量を得ることができる。
【0009】
ところが、以上説明した集水方法によると、集水管設置のために地盤を地表から開削しなければならず、すなわち、開削工法によらなければならず、その工事は大がかりとなり、集水工事に高コストがかかる。
さらに、集水管設置のために地盤を地表から開削するので、その開削工事で地中の帯水層が破壊され、長期にわたり安定して集水することが困難になる恐れがある。
また、集水管設置のために地盤を地表から大がかりに開削するので、それだけ自然が大きく破壊され、破壊された自然の復元に長い年月を要したり、自然の復元が困難になったりするので、環境負荷が大きすぎる。
【0010】
このような問題を解消する集水方法として、地盤を地表から開削しないで、地中の集水領域(代表的には地中の帯水層)へ集水トンネルを構築し、該集水トンネルを通じて集水する方法、すなわち、非開削工法により集水トンネルを構築して集水する方法が考えられる。
【0011】
集水トンネルを非開削工法により構築するためのセグメントや該セグメントを利用した非開削工法による集水トンネルの構築に関して、幾つかの提案がなされている(例えば、特開平11−280392号公報、特開2003−268814号公報)。
【0012】
【特許文献1】特開平11−280392号公報
【特許文献2】特開2003−268814号公報
【非特許文献1】日本水道協会発行 水道施設設計指針2000年度版 第97〜100頁「2.10 集水埋渠」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、集水トンネルを構築する場合においても、集水トンネルを構成しているセグメントの通水部分(通水孔、通水スリット等)は、トンネル内への集水のために目詰まりを抑制しなければならない。
【0014】
この点、前記の特開平11−280392号公報、特開2003−268814号公報には、セグメントの目詰まりを抑制する手段が開示されているものの、それらは、日本水道協会の水道施設設計指針に示されるように砂利層(石粒層)によるものではない。
【0015】
既述のとおり、日本水道協会の水道施設設計指針に基づいて、図7に例示されるように、集水管周囲に砂利層(石粒層)を形成すれば、集水管の通水部分の目詰まりを長期にわたり抑制することができることは一般に認められているところである。
【0016】
しかし、セグメントを利用して非開削工法にて集水トンネルを構築する場合において、各セグメントの外側に目詰まり防止用の砂利層(石粒層)を設置することは、砂利層を構成すべき砂利(石粒群)に重力による流動性が生じる等により、極めて困難であり、場合によっては不可能である。
【0017】
そこで本発明は、非開削工法により地中に集水トンネルを構築するための集水セグメントにして、構築すべき該トンネルの周囲方向に順次接続されるとともに該トンネル奥行き方向に順次接続されるべき集水セグメントであって、地下水の集水セグメント内側への流入を抑制しつつ容易に集水トンネルを構築できるとともに、集水トンネル構築後における各セグメントにおける通水部分の目詰まりが生じ難い集水セグメントを提供することを第1の課題とする。
【0018】
また本発明は、地中の集水領域に、地下水流入を抑制しつつ容易に集水トンネルを構築でき、また、構築後における通水部分の目詰まりが生じ難い集水トンネルを構築することができる集水トンネル構築方法を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は前記第1の課題を解決するため、
非開削工法により地中に集水トンネルを構築するための集水セグメントであって、構築すべき該トンネルの周囲方向に順次接続されるとともに該トンネル奥行き方向に順次接続されるべき集水セグメントであり、
並行に配列された複数本の線状部材を有し、隣り合う線状部材の間に通水スリットを提供しているセグメント基体と、
該セグメント基体の隣り合う線状部材間の通水スリットの目詰まり抑制のために該セグメント基体の外面側に配置された石粒層と、
該石粒層を該セグメント基体に固定するとともに該セグメント基体内側への通水を阻止するように該石粒層及び該セグメント基体に充填された水分解性樹脂とを含んでいる集水セグメントを提供する。
【0020】
ここで、「非開削工法による集水トンネル構築」とは、「地盤を地表から開削し、その開削により開放された地中領域に集水トンネルを構築する開削工法」によらない集水トンネル構築であり、例えばシールド工法による集水トンネル構築を挙げることができる。
非開削工法としては、このほか推進工法等も例示できる。
【0021】
また本発明は前記第2の課題を解決するため、
地中の集水領域に集水トンネルを構築する方法であって、
本発明に係る集水セグメントを用いて非開削工法により該集水セグメントがトンネル周囲方向に接続されるとともにトンネル奥行き方向に接続された集水トンネル前駆体を構築する工程と、
該集水トンネル前駆体の集水セグメントにおける前記水分解性樹脂を水分解させて該集水セグメントを通るセグメント基体内側への通水が許される状態の集水トンネルを得る工程とを含む集水トンネル構築方法を提供する。
【0022】
ここで、「非開削工法による集水トンネル前駆体の構築」とは、「地盤を地表から開削し、その開削により開放された地中領域に集水トンネル前駆体を構築する開削工法」によらない集水トンネル前駆体の構築であり、例えばシールド工法による集水トンネル前駆体の構築を挙げることができる。
非開削工法としては、このほか推進工法等も例示できる。
【0023】
本発明に係る集水セグメントによると、セグメント基体の外面側に、該セグメント基体を構成している隣り合う線状部材間の通水スリットの目詰まり抑制のための石粒層が配置されているが、該石粒層は、該石粒層及び該セグメント基体に充填された水分解性樹脂によりセグメント基体に固定されており、これにより本発明に係る集水セグメントは全体的に一体化されており、それだけ取り扱い易い。
そして、該水分解性樹脂は、該セグメント基体内側への通水を阻止するように石粒層及びセグメント基体に充填されている。
【0024】
これらにより、本発明に係る集水セグメントによると、これを用いる非開削工法による集水トンネルの構築は、該集水セグメントが石粒層を有しているにも拘らず全体が一体化されていて取り扱い易い状態で、さらに地下水の集水セグメント内側への流入を抑制しつつ行うことができる。そして、集水トンネルを構成するセグメント基体の外側に目詰まり抑制のための石粒層が所望どおり配置された状態が得られる。
【0025】
また、本発明に係る集水セグメントによると、これを用いた集水トンネルの構築において、最終的に、地下水により、又は該地下水と未だ水分解性樹脂が分解していない状態の集水トンネル前駆体ともいうべきものへ供給してもよい水などにより該樹脂を水分解させることで、集水セグメントを通るセグメント基体の内側への通水が許される状態の集水トンネルを容易に得ることができる。さらに、各集水セグメントにおける通水部分(石粒の間隙やセグメント基体の隣り合う線状部材間隙、特にセグメント基体の隣り合う線状部材間隙)の目詰まりを石粒層により長期にわたり抑制できる。
【0026】
本発明に係る集水トンネル構築方法は本発明に係る集水セグメントを用いて集水トンネルを構築するので、地中の集水領域に、地下水流入を抑制しつつ容易に集水トンネルを構築でき、また、構築後における通水部分の目詰まりが生じ難い集水トンネルを構築することができる。
【0027】
また、本発明に係る集水セグメント及び集水トンネル構築方法によると、集水管設置のために地盤を地表から大がかりに開削する必要がないので、集水工事をそれだけ安価に行うことができ、帯水層の破壊も抑制でき、さらに、環境負荷を低減することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように本発明によると、非開削工法により地中に集水トンネルを構築するための集水セグメントにして、構築すべき該トンネルの周囲方向に順次接続されるとともに該トンネル奥行き方向に順次接続されるべき集水セグメントであって、地下水の集水セグメント内側への流入を抑制しつつ、それだけ容易に集水トンネルを構築できるとともに、集水トンネル構築後における各セグメントにおける通水部分の目詰まりが生じ難い集水セグメントを提供することができる。
【0029】
また本発明によると、地中の集水領域に、地下水流入を抑制しつつ、それだけ容易に集水トンネルを構築でき、また、構築後における目詰まりが生じ難い集水トンネルを構築することができる集水トンネル構築方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の好ましい実施形態の集水セグメントは、非開削工法により地中に集水トンネルを構築するための集水セグメントであって、構築すべき該トンネルの周囲方向に順次接続されるとともに該トンネル奥行き方向に順次接続されるべき集水セグメントである。
【0031】
この集水セグメントは、基本的に、
並行に配列された複数本の線状部材を有し、隣り合う線状部材の間に通水スリットを提供しているセグメント基体と、
該セグメント基体の隣り合う線状部材間の通水スリットの目詰まり抑制のために該セグメント基体の外面側に配置された石粒層と、
該石粒層を該セグメント基体に固定するとともに該セグメント基体内側への通水を阻止するように該石粒層及び該セグメント基体に充填された水分解性樹脂とを含んでいる。
【0032】
この集水セグメントにおいては、石粒層及びセグメント基体に水分解性樹脂が充填されているのであるが、その樹脂充填は、必ず石粒層及びセグメント基体のそれぞれの全体にわたって充填されていなければならない、というものではない。石粒層、セグメント基体のそれぞれにおいて、水分解性樹脂が到達している部分と到達していない部分とがあっても、全体として、石粒層をセグメント基体に固定するとともに集水セグメントを通るセグメント基体内側への通水が阻止されるように該石粒層及び該セグメント基体に充填されていればよい。
【0033】
いずれにしても該石粒層は、地中に既存の水浄化能のあるバクテリアが棲みついて該石粒層を通過する地下水を浄化する層を兼ねるものであることが好ましい。
【0034】
また、石粒層は、一般的に言えば、集水セグメントを利用して構築される集水トンネルにおいて、セグメント基体の通水スリットの目詰まりを起こしやすい砂の掃流限界速度より低速で該通水スリットへ水が流入するように、換言すればサンドコントロールできるように、構築される集水トンネル周囲に位置することになる地盤の状態(該地盤における石粒等の粒径分布等)を考慮して石粒層を設けるとよい。
【0035】
セグメント基体に固定される石粒層の例として、それぞれが予め定めた粒径範囲の石粒を主体とする複数の石粒の層が前記セグメント基体から外側へ向かって積層されたものであって、該各石粒の層の主体をなす石粒の粒径範囲は、他の石粒の層の主体をなす石粒の粒径範囲とは異なっている石粒層を挙げることができる。
【0036】
このような石粒層の例として、予め定めた第1の粒径範囲の石粒を主体とする大石粒層、該第1の粒径範囲より小粒径の第2の粒径範囲の石粒を主体とする中石粒層及び該第2の粒径範囲より小粒径の第3の粒径範囲の石粒を主体とする小石粒層がこの順序で前記セグメント基体から外側へ向かって積層されたものを挙げることができる。
【0037】
このような石粒層を採用する場合の具体例として、大石粒層は粒径が40mmより大きく50mm以下の石粒を主体としたもの、中石粒層は粒径が30mmより大きく40mm以下の石粒を主体としたもの、小石粒層は粒径が20mm以上30mm以下の石粒を主体としたものを挙げることができる。
【0038】
上記の粒径が40mmより大きく50mm以下の大石粒層の厚みは採用する石粒径に応じて概ね120mm〜150mm程度の範囲のものとすることができる。粒径が30mmより大きく40mm以下の中石粒層の厚みは採用する石粒径に応じて概ね90mm〜120mm程度の範囲のものとすることができる。粒径が20mmより大きく30mm以下の小石粒層の厚みは採用する石粒径に応じて概ね60mm〜90mm程度の範囲のものとすることができる。
【0039】
また、前記石粒層は、予め定めた粒径範囲の石粒を主体とする単層の石粒層(砂利層)であってもよい。かかる単層或いは単一の石粒層(砂利層)は、集水トンネルを設ける地中の帯水層における砂利の粒度分布に基づいて、サンドコントロールを図るうえで適切に選択された粒径分布をもつ砂利の単一の層とすることができる。
【0040】
前記セグメント基体の線状部材の代表的なものとして、該線状部材長手方向を横切る方向の断面形状が3角形状の部材であり、該3角形状の一つの頂点が該セグメント基体内側に向けられるとともに、該頂点に対する底辺が該セグメント基体外側に向けられているものを挙げることができる。
【0041】
このような断面形状の線状部材は隣り合うもの同士の間隙がセグメント基体の外面側から内面側へ次第に広がることになり、目詰まりが発生しにくい。
このような断面形状3角形状の隣り合う線状部材のセグメント基体外面側での間隙は、(a) 前記石粒層における石粒径、(b) セグメント基体の開口率を大きくして大きい集水量を得る、(c) セグメント基体の通水スリットからの水流入速度の最適化などの観点から、概ね0.5mm〜20mm程度を例示できる。
【0042】
なお、セグメント基体は長寿命化及び強度確保の点から腐食し難く、強度もある金属製であることが好ましい。例えば、ステンレススチール製のものを挙げることができる。
【0043】
前記水分解性樹脂としては、酢酸ビルニを重合して得られるポリ酢酸ビニルを鹸化させた水酸基を持つ水溶性のビニル樹脂を例示できる。
【0044】
本発明の好ましい実施形態に係る集水トンネル構築方法は以上説明したような集水セグメントを用いる非開削工法による集水トンネル構築方法である。
【0045】
この集水トンネル構築方法には、
非開削工法により集水セグメントがトンネル周囲方向に接続されるとともにトンネル奥行き方向に接続された集水トンネル前駆体を構築する工程と、
該集水トンネル前駆体の集水セグメントにおける水分解性樹脂を水分解させて該集水セグメントを通るセグメント基体内側への通水が許される状態の集水トンネルを得る工程とが含まれる。
【0046】
集水トンネル前駆体を構築する工程の例として、集水セグメントの内面側に補強用セグメントを取り外し可能に固定し、該補強用セグメントを固定した集水セグメントをシールド工法によりトンネル周囲方向に接続するとともにトンネル奥行き方向に接続し、該補強用セグメントを固定した集水セグメントの該接続後に該各集水セグメントから該補強用セグメントを取り外して集水トンネル前駆体を得る場合を挙げることができる。
【0047】
以下、図面を参照して本発明に係る集水セグメントの例及び該集水セグメントを用いる集水トンネルの構築例について説明する。
図1は集水セグメントの1例の斜視図である。図2(A)はセグメント基体の斜視図であり、図2(B)は同セグメント基体における線状部材等の一部の拡大図である。図3は図1の集水セグメントを利用した集水トンネル構築を示す図である。図4は集水トンネル構築に際して集水セグメントに内側からシールド工法用の補強セグメントを当てがう様子を概略的に示す図である。図5は図1の集水セグメントにより形成される集水トンネルの一部の斜視図である。
【0048】
図1の集水セグメント1は、一般的に言えば、全体として見ると、円筒を予め定めた中心角度間隔で分割したものの一つに相当する形態を呈しているものである。本例の集水セグメント1は、概ね、円筒を60度の中心角度間隔で分割したものの一つに相当する形態を呈している。また、集水セグメント1の各部サイズは、この集水セグメント1を用いて構築される、後述する集水トンネルTの内径がほぼ1.2m程度のものになるサイズである。なお、集水トンネルTの内径は1.2mに限定されることはなく、それより小さいものでも大きいものでもよく、大きいものでは10m程度或いはそれ以上のものもあり得る。
【0049】
集水セグメント1はセグメント基体11と基体11の凸曲面である外面側に配置された石粒層10とを含んでいる。石粒層10は基体11から外側へ向けて大石粒層12、中石粒層13及び小石粒層14を積層したものである。
【0050】
セグメント基体11は、本例ではステンレススチールで強固に形成されている。
さらに説明すると、セグメント基体11は、図2(A)に示すように、一対の湾曲した端部材113に複数本の棒部材112を所定間隔で平行に渡し設け、さらに該棒部材112の内側に湾曲棒状の複数本の補強部材114を固設した骨格の該棒部材112に複数本の線状部材111を平行に配列固定したものである。
【0051】
線状部材111は、図2(B)に示すように、長手方向に垂直な断面形状が2等辺3角形状の部材であり、該3角形状の一つの頂点pがセグメント基体内側に向けられるとともに、該頂点pに対する底辺bsがセグメント基体外側に向けられている部材である。
【0052】
各隣り合う線状部材111の間には通水スリット111sが形成されている。
それには限定されないが、ここでは、通水スリット111sの基体外面側の幅g1は5.0mであり、基体内面側の幅g2は9mmであり、線状部材断面の3角形底辺bsは4.0mmであり、厚さ(3角形の高さ)hは8mmである。幅g2=9mmは3角形が2等辺3角形であるから、線状部材111の配列ピッチに相当する。
このように通水スリット111sの幅はセグメント基体11の外面側から内面側へ次第に拡大しており、通水スリット111sが目詰まりし難くなっている。
【0053】
石粒層10はセグメント基体11の通水スリット111sの目詰まりを抑制するためのものである。石粒層10を構成している大石粒層12は、粒径が40mmより大きく50mm程度以下の石粒を主体に形成すればよく(この範囲外の粒径のものが少しぐらい混じっていても許される)、本例では粒径50mm程度の石粒を主体に形成してある。
【0054】
中石粒層13は、粒径が30mmより大きく40mm程度以下の石粒を主体に形成すればよく(この範囲外の粒径のものが少しぐらい混じっていても許される)、本例では粒径40mm程度の石粒を主体に形成してある。
小石粒層14は、粒径が20mm程度以上30mm程度以下の石粒を主体に形成すればよく(この範囲外の粒径のものが少しぐらい混じっていても許される)、本例では粒径30mm程度の石粒を主体に形成してある。
【0055】
大石粒層12の厚さt1は150mm、中石粒層13の厚さt2は120mm、小石粒層14の厚さt3は90mmであり、石粒層10全体の厚さは360mmである。
この石粒層10は、後述するように集水セグメント1を接続してなる集水トンネルが構築されると、地中に既存の水浄化能のあるバクテリアが棲みついて該石粒層10を通過する地下水を浄化する層を兼ねるものである。
【0056】
また、石粒層10は、集水セグメント1を利用して構築される集水トンネルにおいて、セグメント基体11の通水スリット111sの目詰まりを起こしやすい砂の掃流限界速度より低速で該通水スリットへ水が流入するようにしたものでもある。
【0057】
石粒層10及びセグメント基体11には、石粒層10をセグメント基体11に固定するとともに集水セグメント1を通るセグメント基体11内側への通水を阻止するように水分解性樹脂15が充填されている。
【0058】
水分解性樹脂15は、水分解性を有し、樹脂成分の配合割合によって分解速度を制御できる樹脂〔ここでは日本合成化学工業株式会社製の酢酸ビルニを重合して得られるポリ酢酸ビニルを鹸化させた水酸基を持つ水溶性のビニル樹脂(商品名:ゴーセノール)〕からなっている。
【0059】
なお、石粒層10及びセグメント基体11への水分解性樹脂15の充填は、該樹脂が到達している部分と到達していない部分とが生じる状態で充填されていても構わない。全体として、石粒層10をセグメント基体11に固定するとともに集水セグメント1を通るセグメント基体11内側への通水が阻止されるように石粒層10及びセグメント基体11に充填されていればよい。
【0060】
以上説明した集水セグメン11を用いて、図3に例示するようにして、それ自体従来から知られているシールド工法によるトンネル掘削機Mを用いて地中に集水トンネルTを形成することができる。
【0061】
図3に示す例では、地表Sから地中へ立坑VWを形成し、該立坑VWから、集水セグメント1を用いて、さらに言えば、ここでは図4に示すように、集水セグメント1のセグメント基体11の内面側にシールド工法用に準備した補強セグメント100を当接固定した状態とし、このようにセグメント100を固定した集水セグメントを用いて、シールド工法によるトンネル掘削機Mにて地中の帯水層WLに集水トンネルTを構築している。トンネルTは、図5にも示すように、集水セグメント1がトンネルの周囲方向に順次接続されるとともに該トンネル奥行き方向に順次接続されて構築される。
【0062】
集水トンネルTの構築についてさらに説明すると、該トンネルは、シールド工法によるトンネル掘削機Mを用いて、セグメント100を取り付けたセグメント1をトンネル周囲方向に接続するとともにトンネル奥行き方向に接続し、そのように接続された各集水セグメント1からセグメント100を取り外して集水トンネル前駆体T’を構築する工程と、集水トンネル前駆体T’の集水セグメント1における前記水分解性樹脂15を水分解させて集水セグメント1を通るセグメント基体11内側への通水が許される状態の集水トンネルTを得る工程を経て構築する。
【0063】
補強セグメント100の集水セグメント1への脱離可能な取付けは、例えば、セグメント100を集水セグメント1の補強部材114等へボルト留めする等により行える。
なお、集水セグメント1がそれ自体でシールド工法における反力を支え得る強度を有するものであれば、補強セグメント100は省略することも可能である。
【0064】
集水セグメント1は、セグメント基体11の外面側に、セグメント基体11を構成している隣り合う線状部材111間の通水スリット111sの目詰まり抑制のための石粒層10が配置されているが、石粒層10は、石粒層10及びセグメント基体11に充填された水分解性樹脂15によりセグメント基体11に固定されており、これにより集水セグメント1は全体的に一体化されており、取り扱い易くなっている。
そして、水分解性樹脂15は、セグメント基体11内側への通水を阻止するように石粒層10及びセグメント基体11に充填されている。
【0065】
これらにより、集水トンネルTの構築は、集水セグメント1が石粒層10を有しているにも拘らず全体が一体化されていて取り扱い易い状態で、さらに地下水の集水セグメント1内側への流入を防止しつつ容易に行うことができる。そして、集水トンネルTを構成するセグメント基体11の外側に目詰まり抑制のための石粒層10が所望どおり配置された状態が簡単容易に得られる。
【0066】
また、集水トンネルTの構築において、最終的に、地下水により、又は該地下水と未だ水分解性樹脂15が分解していない状態の集水トンネル前駆体T’へ供給してもよい水などにより該樹脂15を水分解させることで、容易に集水セグメント1を通るセグメント基体11内側への通水が許される状態の集水トンネルTを得ることができる。さらに、各集水セグメント1における通水部分(石粒の間隙やセグメント基体11の通水スリット111s、特にセグメント基体11の通水スリット111s)の目詰まりを石粒層10により長期にわたり、抑制できる。
【0067】
石粒層10及びセグメント基体11への前記水分解性樹脂15の充填状態及び該樹脂の水分解速度は、上記集水トンネル前駆体T’の構築を妨げる該前駆体T’内への地下水の流入を阻止できる程度のものであるとともに、集水トンネル前駆体T’の構築後は、所望の時間で該樹脂15を水分解させて集水トンネルTを得ることができる程度のものとしておけばよい。
【0068】
集水セグメント1及びこれを用いる集水トンネル構築によると、集水管設置のために地盤を地表から大がかりに開削する必要がないので、集水工事をそれだけ安価に行うことができ、帯水層WLの破壊も抑制でき、さらに、環境負荷を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、地盤を開削することなく、集水トンネルを容易に、そして目詰まりが抑制される状態で形成できる集水セグメントの提供及び該集水セグメントを用いる集水トンネルの構築に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る集水セグメントの1例の斜視図である。
【図2】図2(A)は図1に示す集水セグメントにおけるセグメント基体の斜視図であり、図2(B)は同セグメント基体の線状部材等の一部の拡大図である。
【図3】図1の集水セグメントを利用した集水トンネル構築を示す図である。
【図4】集水セグメントに内側からシールド工法用セグメントを当てがう様子を概略的に示す図である。
【図5】図1の集水セグメントにより形成される集水トンネルの一部の斜視図である。
【図6】集水管設置のために地盤を開削している従来の様子を示す図である。
【図7】図6に示す地盤開削を経て設置された集水管とその周囲の断面図である。
【図8】従来の集水管例の斜視図である。
【符号の説明】
【0071】
1 集水セグメント
11 セグメント基体
111 線状部材
111s 通水スリット
p 線状部材111の3角形状断面における三角形頂点
bs 三角形頂点pに対する三角形底辺
h 線状部材厚さ(高さ)
g1 通水スリット111sのセグメント基体外面側の幅
g2 通水スリット111sのセグメント基体内面側の幅
112 棒部材
113 端部材
114 補強部材
10 石粒層
12 大石粒層
13 中石粒層
14 小石粒層
15 水分解性樹脂
S 地表
VW 立坑
WL 帯水層
M トンネル掘削機
T 集水トンネル
T’集水トンネル前駆体
100 セグメント
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水を水資源として集水するための集水トンネルの構築に用いる集水セグメント及び該集水セグメントを用いる集水トンネル構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水を飲料水や工業用水として利用するために地下水を水資源として集水することが行われている。
地下水を水資源として集水する方法としては、例えば図6に示すように、地表から地中の集水領域へ向け溝状に開削し、その開削底部に集水管を敷設し、その後それら集水管を敷設した開削領域へ開削土砂を埋め戻し、該集水管に地下水を流入させて集水するのである。このように集められる水は、例えば、適当な位置に該集水管に連通する立坑を設け、この立坑へ流入させ、そこから揚水ポンプで汲み上げて用いるのである。
【0003】
集水管は、管内へ集水するための通水部分(通水孔、通水スリット等)を有するものであるが、通水部分が地中で目詰まりすることを抑制するため、図7に示すように、集水管の周囲に石粒層を形成したうえで、開削土砂を埋め戻すことが行われている。日本水道協会 水道施設設計指針2000年度版 第98頁 図−2.10.1に、この状態に集水管を設ける例が示されている。
【0004】
同指針の第98頁 図−2.10.1には、集水管として、図8に示すように、フレームFに線状部材mを螺旋状に巻き設け、隣り合う線状部材m間に通水スリットwsを提供しているタイプの集水管(集水スクリーン管)を用いた場合の石粒層の例が示されている。該石粒層は、集水管径が1mの場合の例であり、大砂利層(大石粒層:粒径40mm〜50mm)、中砂利層(中石粒層:粒径30mm〜40mm)、小砂利層(小石粒層:粒径20mm〜30mm)を積層したものである。
【0005】
同指針に基づいて、図7に例示されるように、集水管周囲に砂利層(石粒層)を形成すれば、集水管の通水部分の目詰まりを長期にわたり抑制することができることは一般に認められているところである。
【0006】
また、同指針の第97頁の「2.10.2 位置及び構造」の第3項には、「集水開口部からの水流入速度は、砂の掃流限界速度(すなわち水流により砂が動き始める限界の水流速度)以下を標準とする」と記載されているとともに、第99頁の参考表2.10.1に「土の分類と掃流限界速度」が記載されている。従って、このことからすると、一般的に言えば、集水管の集水開口部(図8の集水管で言えば通水スリットws)の目詰まりを起こしやすい細砂等の砂の掃流限界速度より低速で集水開口部へ水が流入するように集水管周囲の石粒層を設けるとよいと言える。このことは「サンドコントロール」などと称されている目詰まり抑制手法である。
【0007】
なお、集水管の集水開口部の寸法(前記スリットwsで言えばその寸法)は、砂の掃流限界速度(例えば、特に目詰まりを起こしやすい砂の掃流限界速度)Vと、所望の単位時間あたり集水量Qと、集水管の開口面積等の関数として把握できる集水面積Aとからなる式Q=A×Vから割り出すことができる寸法ということができる。
【0008】
集水管としては上記のほか、鉄筋コンクリート有効管も利用できるが、その開口率は、管の強度等の観点から低くならざるを得ず、砂の掃流限界速度を考慮した場合には集水量が、管全体の大きさの割りには少なくなるのに対し、図8に例示するようなタイプの集水管(集水スクリーン管)によると、開口率を高くでき、砂の掃流限界速度を考慮した場合でも、管全体の大きさの割りには大きい集水量を得ることができる。
【0009】
ところが、以上説明した集水方法によると、集水管設置のために地盤を地表から開削しなければならず、すなわち、開削工法によらなければならず、その工事は大がかりとなり、集水工事に高コストがかかる。
さらに、集水管設置のために地盤を地表から開削するので、その開削工事で地中の帯水層が破壊され、長期にわたり安定して集水することが困難になる恐れがある。
また、集水管設置のために地盤を地表から大がかりに開削するので、それだけ自然が大きく破壊され、破壊された自然の復元に長い年月を要したり、自然の復元が困難になったりするので、環境負荷が大きすぎる。
【0010】
このような問題を解消する集水方法として、地盤を地表から開削しないで、地中の集水領域(代表的には地中の帯水層)へ集水トンネルを構築し、該集水トンネルを通じて集水する方法、すなわち、非開削工法により集水トンネルを構築して集水する方法が考えられる。
【0011】
集水トンネルを非開削工法により構築するためのセグメントや該セグメントを利用した非開削工法による集水トンネルの構築に関して、幾つかの提案がなされている(例えば、特開平11−280392号公報、特開2003−268814号公報)。
【0012】
【特許文献1】特開平11−280392号公報
【特許文献2】特開2003−268814号公報
【非特許文献1】日本水道協会発行 水道施設設計指針2000年度版 第97〜100頁「2.10 集水埋渠」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、集水トンネルを構築する場合においても、集水トンネルを構成しているセグメントの通水部分(通水孔、通水スリット等)は、トンネル内への集水のために目詰まりを抑制しなければならない。
【0014】
この点、前記の特開平11−280392号公報、特開2003−268814号公報には、セグメントの目詰まりを抑制する手段が開示されているものの、それらは、日本水道協会の水道施設設計指針に示されるように砂利層(石粒層)によるものではない。
【0015】
既述のとおり、日本水道協会の水道施設設計指針に基づいて、図7に例示されるように、集水管周囲に砂利層(石粒層)を形成すれば、集水管の通水部分の目詰まりを長期にわたり抑制することができることは一般に認められているところである。
【0016】
しかし、セグメントを利用して非開削工法にて集水トンネルを構築する場合において、各セグメントの外側に目詰まり防止用の砂利層(石粒層)を設置することは、砂利層を構成すべき砂利(石粒群)に重力による流動性が生じる等により、極めて困難であり、場合によっては不可能である。
【0017】
そこで本発明は、非開削工法により地中に集水トンネルを構築するための集水セグメントにして、構築すべき該トンネルの周囲方向に順次接続されるとともに該トンネル奥行き方向に順次接続されるべき集水セグメントであって、地下水の集水セグメント内側への流入を抑制しつつ容易に集水トンネルを構築できるとともに、集水トンネル構築後における各セグメントにおける通水部分の目詰まりが生じ難い集水セグメントを提供することを第1の課題とする。
【0018】
また本発明は、地中の集水領域に、地下水流入を抑制しつつ容易に集水トンネルを構築でき、また、構築後における通水部分の目詰まりが生じ難い集水トンネルを構築することができる集水トンネル構築方法を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は前記第1の課題を解決するため、
非開削工法により地中に集水トンネルを構築するための集水セグメントであって、構築すべき該トンネルの周囲方向に順次接続されるとともに該トンネル奥行き方向に順次接続されるべき集水セグメントであり、
並行に配列された複数本の線状部材を有し、隣り合う線状部材の間に通水スリットを提供しているセグメント基体と、
該セグメント基体の隣り合う線状部材間の通水スリットの目詰まり抑制のために該セグメント基体の外面側に配置された石粒層と、
該石粒層を該セグメント基体に固定するとともに該セグメント基体内側への通水を阻止するように該石粒層及び該セグメント基体に充填された水分解性樹脂とを含んでいる集水セグメントを提供する。
【0020】
ここで、「非開削工法による集水トンネル構築」とは、「地盤を地表から開削し、その開削により開放された地中領域に集水トンネルを構築する開削工法」によらない集水トンネル構築であり、例えばシールド工法による集水トンネル構築を挙げることができる。
非開削工法としては、このほか推進工法等も例示できる。
【0021】
また本発明は前記第2の課題を解決するため、
地中の集水領域に集水トンネルを構築する方法であって、
本発明に係る集水セグメントを用いて非開削工法により該集水セグメントがトンネル周囲方向に接続されるとともにトンネル奥行き方向に接続された集水トンネル前駆体を構築する工程と、
該集水トンネル前駆体の集水セグメントにおける前記水分解性樹脂を水分解させて該集水セグメントを通るセグメント基体内側への通水が許される状態の集水トンネルを得る工程とを含む集水トンネル構築方法を提供する。
【0022】
ここで、「非開削工法による集水トンネル前駆体の構築」とは、「地盤を地表から開削し、その開削により開放された地中領域に集水トンネル前駆体を構築する開削工法」によらない集水トンネル前駆体の構築であり、例えばシールド工法による集水トンネル前駆体の構築を挙げることができる。
非開削工法としては、このほか推進工法等も例示できる。
【0023】
本発明に係る集水セグメントによると、セグメント基体の外面側に、該セグメント基体を構成している隣り合う線状部材間の通水スリットの目詰まり抑制のための石粒層が配置されているが、該石粒層は、該石粒層及び該セグメント基体に充填された水分解性樹脂によりセグメント基体に固定されており、これにより本発明に係る集水セグメントは全体的に一体化されており、それだけ取り扱い易い。
そして、該水分解性樹脂は、該セグメント基体内側への通水を阻止するように石粒層及びセグメント基体に充填されている。
【0024】
これらにより、本発明に係る集水セグメントによると、これを用いる非開削工法による集水トンネルの構築は、該集水セグメントが石粒層を有しているにも拘らず全体が一体化されていて取り扱い易い状態で、さらに地下水の集水セグメント内側への流入を抑制しつつ行うことができる。そして、集水トンネルを構成するセグメント基体の外側に目詰まり抑制のための石粒層が所望どおり配置された状態が得られる。
【0025】
また、本発明に係る集水セグメントによると、これを用いた集水トンネルの構築において、最終的に、地下水により、又は該地下水と未だ水分解性樹脂が分解していない状態の集水トンネル前駆体ともいうべきものへ供給してもよい水などにより該樹脂を水分解させることで、集水セグメントを通るセグメント基体の内側への通水が許される状態の集水トンネルを容易に得ることができる。さらに、各集水セグメントにおける通水部分(石粒の間隙やセグメント基体の隣り合う線状部材間隙、特にセグメント基体の隣り合う線状部材間隙)の目詰まりを石粒層により長期にわたり抑制できる。
【0026】
本発明に係る集水トンネル構築方法は本発明に係る集水セグメントを用いて集水トンネルを構築するので、地中の集水領域に、地下水流入を抑制しつつ容易に集水トンネルを構築でき、また、構築後における通水部分の目詰まりが生じ難い集水トンネルを構築することができる。
【0027】
また、本発明に係る集水セグメント及び集水トンネル構築方法によると、集水管設置のために地盤を地表から大がかりに開削する必要がないので、集水工事をそれだけ安価に行うことができ、帯水層の破壊も抑制でき、さらに、環境負荷を低減することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように本発明によると、非開削工法により地中に集水トンネルを構築するための集水セグメントにして、構築すべき該トンネルの周囲方向に順次接続されるとともに該トンネル奥行き方向に順次接続されるべき集水セグメントであって、地下水の集水セグメント内側への流入を抑制しつつ、それだけ容易に集水トンネルを構築できるとともに、集水トンネル構築後における各セグメントにおける通水部分の目詰まりが生じ難い集水セグメントを提供することができる。
【0029】
また本発明によると、地中の集水領域に、地下水流入を抑制しつつ、それだけ容易に集水トンネルを構築でき、また、構築後における目詰まりが生じ難い集水トンネルを構築することができる集水トンネル構築方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の好ましい実施形態の集水セグメントは、非開削工法により地中に集水トンネルを構築するための集水セグメントであって、構築すべき該トンネルの周囲方向に順次接続されるとともに該トンネル奥行き方向に順次接続されるべき集水セグメントである。
【0031】
この集水セグメントは、基本的に、
並行に配列された複数本の線状部材を有し、隣り合う線状部材の間に通水スリットを提供しているセグメント基体と、
該セグメント基体の隣り合う線状部材間の通水スリットの目詰まり抑制のために該セグメント基体の外面側に配置された石粒層と、
該石粒層を該セグメント基体に固定するとともに該セグメント基体内側への通水を阻止するように該石粒層及び該セグメント基体に充填された水分解性樹脂とを含んでいる。
【0032】
この集水セグメントにおいては、石粒層及びセグメント基体に水分解性樹脂が充填されているのであるが、その樹脂充填は、必ず石粒層及びセグメント基体のそれぞれの全体にわたって充填されていなければならない、というものではない。石粒層、セグメント基体のそれぞれにおいて、水分解性樹脂が到達している部分と到達していない部分とがあっても、全体として、石粒層をセグメント基体に固定するとともに集水セグメントを通るセグメント基体内側への通水が阻止されるように該石粒層及び該セグメント基体に充填されていればよい。
【0033】
いずれにしても該石粒層は、地中に既存の水浄化能のあるバクテリアが棲みついて該石粒層を通過する地下水を浄化する層を兼ねるものであることが好ましい。
【0034】
また、石粒層は、一般的に言えば、集水セグメントを利用して構築される集水トンネルにおいて、セグメント基体の通水スリットの目詰まりを起こしやすい砂の掃流限界速度より低速で該通水スリットへ水が流入するように、換言すればサンドコントロールできるように、構築される集水トンネル周囲に位置することになる地盤の状態(該地盤における石粒等の粒径分布等)を考慮して石粒層を設けるとよい。
【0035】
セグメント基体に固定される石粒層の例として、それぞれが予め定めた粒径範囲の石粒を主体とする複数の石粒の層が前記セグメント基体から外側へ向かって積層されたものであって、該各石粒の層の主体をなす石粒の粒径範囲は、他の石粒の層の主体をなす石粒の粒径範囲とは異なっている石粒層を挙げることができる。
【0036】
このような石粒層の例として、予め定めた第1の粒径範囲の石粒を主体とする大石粒層、該第1の粒径範囲より小粒径の第2の粒径範囲の石粒を主体とする中石粒層及び該第2の粒径範囲より小粒径の第3の粒径範囲の石粒を主体とする小石粒層がこの順序で前記セグメント基体から外側へ向かって積層されたものを挙げることができる。
【0037】
このような石粒層を採用する場合の具体例として、大石粒層は粒径が40mmより大きく50mm以下の石粒を主体としたもの、中石粒層は粒径が30mmより大きく40mm以下の石粒を主体としたもの、小石粒層は粒径が20mm以上30mm以下の石粒を主体としたものを挙げることができる。
【0038】
上記の粒径が40mmより大きく50mm以下の大石粒層の厚みは採用する石粒径に応じて概ね120mm〜150mm程度の範囲のものとすることができる。粒径が30mmより大きく40mm以下の中石粒層の厚みは採用する石粒径に応じて概ね90mm〜120mm程度の範囲のものとすることができる。粒径が20mmより大きく30mm以下の小石粒層の厚みは採用する石粒径に応じて概ね60mm〜90mm程度の範囲のものとすることができる。
【0039】
また、前記石粒層は、予め定めた粒径範囲の石粒を主体とする単層の石粒層(砂利層)であってもよい。かかる単層或いは単一の石粒層(砂利層)は、集水トンネルを設ける地中の帯水層における砂利の粒度分布に基づいて、サンドコントロールを図るうえで適切に選択された粒径分布をもつ砂利の単一の層とすることができる。
【0040】
前記セグメント基体の線状部材の代表的なものとして、該線状部材長手方向を横切る方向の断面形状が3角形状の部材であり、該3角形状の一つの頂点が該セグメント基体内側に向けられるとともに、該頂点に対する底辺が該セグメント基体外側に向けられているものを挙げることができる。
【0041】
このような断面形状の線状部材は隣り合うもの同士の間隙がセグメント基体の外面側から内面側へ次第に広がることになり、目詰まりが発生しにくい。
このような断面形状3角形状の隣り合う線状部材のセグメント基体外面側での間隙は、(a) 前記石粒層における石粒径、(b) セグメント基体の開口率を大きくして大きい集水量を得る、(c) セグメント基体の通水スリットからの水流入速度の最適化などの観点から、概ね0.5mm〜20mm程度を例示できる。
【0042】
なお、セグメント基体は長寿命化及び強度確保の点から腐食し難く、強度もある金属製であることが好ましい。例えば、ステンレススチール製のものを挙げることができる。
【0043】
前記水分解性樹脂としては、酢酸ビルニを重合して得られるポリ酢酸ビニルを鹸化させた水酸基を持つ水溶性のビニル樹脂を例示できる。
【0044】
本発明の好ましい実施形態に係る集水トンネル構築方法は以上説明したような集水セグメントを用いる非開削工法による集水トンネル構築方法である。
【0045】
この集水トンネル構築方法には、
非開削工法により集水セグメントがトンネル周囲方向に接続されるとともにトンネル奥行き方向に接続された集水トンネル前駆体を構築する工程と、
該集水トンネル前駆体の集水セグメントにおける水分解性樹脂を水分解させて該集水セグメントを通るセグメント基体内側への通水が許される状態の集水トンネルを得る工程とが含まれる。
【0046】
集水トンネル前駆体を構築する工程の例として、集水セグメントの内面側に補強用セグメントを取り外し可能に固定し、該補強用セグメントを固定した集水セグメントをシールド工法によりトンネル周囲方向に接続するとともにトンネル奥行き方向に接続し、該補強用セグメントを固定した集水セグメントの該接続後に該各集水セグメントから該補強用セグメントを取り外して集水トンネル前駆体を得る場合を挙げることができる。
【0047】
以下、図面を参照して本発明に係る集水セグメントの例及び該集水セグメントを用いる集水トンネルの構築例について説明する。
図1は集水セグメントの1例の斜視図である。図2(A)はセグメント基体の斜視図であり、図2(B)は同セグメント基体における線状部材等の一部の拡大図である。図3は図1の集水セグメントを利用した集水トンネル構築を示す図である。図4は集水トンネル構築に際して集水セグメントに内側からシールド工法用の補強セグメントを当てがう様子を概略的に示す図である。図5は図1の集水セグメントにより形成される集水トンネルの一部の斜視図である。
【0048】
図1の集水セグメント1は、一般的に言えば、全体として見ると、円筒を予め定めた中心角度間隔で分割したものの一つに相当する形態を呈しているものである。本例の集水セグメント1は、概ね、円筒を60度の中心角度間隔で分割したものの一つに相当する形態を呈している。また、集水セグメント1の各部サイズは、この集水セグメント1を用いて構築される、後述する集水トンネルTの内径がほぼ1.2m程度のものになるサイズである。なお、集水トンネルTの内径は1.2mに限定されることはなく、それより小さいものでも大きいものでもよく、大きいものでは10m程度或いはそれ以上のものもあり得る。
【0049】
集水セグメント1はセグメント基体11と基体11の凸曲面である外面側に配置された石粒層10とを含んでいる。石粒層10は基体11から外側へ向けて大石粒層12、中石粒層13及び小石粒層14を積層したものである。
【0050】
セグメント基体11は、本例ではステンレススチールで強固に形成されている。
さらに説明すると、セグメント基体11は、図2(A)に示すように、一対の湾曲した端部材113に複数本の棒部材112を所定間隔で平行に渡し設け、さらに該棒部材112の内側に湾曲棒状の複数本の補強部材114を固設した骨格の該棒部材112に複数本の線状部材111を平行に配列固定したものである。
【0051】
線状部材111は、図2(B)に示すように、長手方向に垂直な断面形状が2等辺3角形状の部材であり、該3角形状の一つの頂点pがセグメント基体内側に向けられるとともに、該頂点pに対する底辺bsがセグメント基体外側に向けられている部材である。
【0052】
各隣り合う線状部材111の間には通水スリット111sが形成されている。
それには限定されないが、ここでは、通水スリット111sの基体外面側の幅g1は5.0mであり、基体内面側の幅g2は9mmであり、線状部材断面の3角形底辺bsは4.0mmであり、厚さ(3角形の高さ)hは8mmである。幅g2=9mmは3角形が2等辺3角形であるから、線状部材111の配列ピッチに相当する。
このように通水スリット111sの幅はセグメント基体11の外面側から内面側へ次第に拡大しており、通水スリット111sが目詰まりし難くなっている。
【0053】
石粒層10はセグメント基体11の通水スリット111sの目詰まりを抑制するためのものである。石粒層10を構成している大石粒層12は、粒径が40mmより大きく50mm程度以下の石粒を主体に形成すればよく(この範囲外の粒径のものが少しぐらい混じっていても許される)、本例では粒径50mm程度の石粒を主体に形成してある。
【0054】
中石粒層13は、粒径が30mmより大きく40mm程度以下の石粒を主体に形成すればよく(この範囲外の粒径のものが少しぐらい混じっていても許される)、本例では粒径40mm程度の石粒を主体に形成してある。
小石粒層14は、粒径が20mm程度以上30mm程度以下の石粒を主体に形成すればよく(この範囲外の粒径のものが少しぐらい混じっていても許される)、本例では粒径30mm程度の石粒を主体に形成してある。
【0055】
大石粒層12の厚さt1は150mm、中石粒層13の厚さt2は120mm、小石粒層14の厚さt3は90mmであり、石粒層10全体の厚さは360mmである。
この石粒層10は、後述するように集水セグメント1を接続してなる集水トンネルが構築されると、地中に既存の水浄化能のあるバクテリアが棲みついて該石粒層10を通過する地下水を浄化する層を兼ねるものである。
【0056】
また、石粒層10は、集水セグメント1を利用して構築される集水トンネルにおいて、セグメント基体11の通水スリット111sの目詰まりを起こしやすい砂の掃流限界速度より低速で該通水スリットへ水が流入するようにしたものでもある。
【0057】
石粒層10及びセグメント基体11には、石粒層10をセグメント基体11に固定するとともに集水セグメント1を通るセグメント基体11内側への通水を阻止するように水分解性樹脂15が充填されている。
【0058】
水分解性樹脂15は、水分解性を有し、樹脂成分の配合割合によって分解速度を制御できる樹脂〔ここでは日本合成化学工業株式会社製の酢酸ビルニを重合して得られるポリ酢酸ビニルを鹸化させた水酸基を持つ水溶性のビニル樹脂(商品名:ゴーセノール)〕からなっている。
【0059】
なお、石粒層10及びセグメント基体11への水分解性樹脂15の充填は、該樹脂が到達している部分と到達していない部分とが生じる状態で充填されていても構わない。全体として、石粒層10をセグメント基体11に固定するとともに集水セグメント1を通るセグメント基体11内側への通水が阻止されるように石粒層10及びセグメント基体11に充填されていればよい。
【0060】
以上説明した集水セグメン11を用いて、図3に例示するようにして、それ自体従来から知られているシールド工法によるトンネル掘削機Mを用いて地中に集水トンネルTを形成することができる。
【0061】
図3に示す例では、地表Sから地中へ立坑VWを形成し、該立坑VWから、集水セグメント1を用いて、さらに言えば、ここでは図4に示すように、集水セグメント1のセグメント基体11の内面側にシールド工法用に準備した補強セグメント100を当接固定した状態とし、このようにセグメント100を固定した集水セグメントを用いて、シールド工法によるトンネル掘削機Mにて地中の帯水層WLに集水トンネルTを構築している。トンネルTは、図5にも示すように、集水セグメント1がトンネルの周囲方向に順次接続されるとともに該トンネル奥行き方向に順次接続されて構築される。
【0062】
集水トンネルTの構築についてさらに説明すると、該トンネルは、シールド工法によるトンネル掘削機Mを用いて、セグメント100を取り付けたセグメント1をトンネル周囲方向に接続するとともにトンネル奥行き方向に接続し、そのように接続された各集水セグメント1からセグメント100を取り外して集水トンネル前駆体T’を構築する工程と、集水トンネル前駆体T’の集水セグメント1における前記水分解性樹脂15を水分解させて集水セグメント1を通るセグメント基体11内側への通水が許される状態の集水トンネルTを得る工程を経て構築する。
【0063】
補強セグメント100の集水セグメント1への脱離可能な取付けは、例えば、セグメント100を集水セグメント1の補強部材114等へボルト留めする等により行える。
なお、集水セグメント1がそれ自体でシールド工法における反力を支え得る強度を有するものであれば、補強セグメント100は省略することも可能である。
【0064】
集水セグメント1は、セグメント基体11の外面側に、セグメント基体11を構成している隣り合う線状部材111間の通水スリット111sの目詰まり抑制のための石粒層10が配置されているが、石粒層10は、石粒層10及びセグメント基体11に充填された水分解性樹脂15によりセグメント基体11に固定されており、これにより集水セグメント1は全体的に一体化されており、取り扱い易くなっている。
そして、水分解性樹脂15は、セグメント基体11内側への通水を阻止するように石粒層10及びセグメント基体11に充填されている。
【0065】
これらにより、集水トンネルTの構築は、集水セグメント1が石粒層10を有しているにも拘らず全体が一体化されていて取り扱い易い状態で、さらに地下水の集水セグメント1内側への流入を防止しつつ容易に行うことができる。そして、集水トンネルTを構成するセグメント基体11の外側に目詰まり抑制のための石粒層10が所望どおり配置された状態が簡単容易に得られる。
【0066】
また、集水トンネルTの構築において、最終的に、地下水により、又は該地下水と未だ水分解性樹脂15が分解していない状態の集水トンネル前駆体T’へ供給してもよい水などにより該樹脂15を水分解させることで、容易に集水セグメント1を通るセグメント基体11内側への通水が許される状態の集水トンネルTを得ることができる。さらに、各集水セグメント1における通水部分(石粒の間隙やセグメント基体11の通水スリット111s、特にセグメント基体11の通水スリット111s)の目詰まりを石粒層10により長期にわたり、抑制できる。
【0067】
石粒層10及びセグメント基体11への前記水分解性樹脂15の充填状態及び該樹脂の水分解速度は、上記集水トンネル前駆体T’の構築を妨げる該前駆体T’内への地下水の流入を阻止できる程度のものであるとともに、集水トンネル前駆体T’の構築後は、所望の時間で該樹脂15を水分解させて集水トンネルTを得ることができる程度のものとしておけばよい。
【0068】
集水セグメント1及びこれを用いる集水トンネル構築によると、集水管設置のために地盤を地表から大がかりに開削する必要がないので、集水工事をそれだけ安価に行うことができ、帯水層WLの破壊も抑制でき、さらに、環境負荷を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、地盤を開削することなく、集水トンネルを容易に、そして目詰まりが抑制される状態で形成できる集水セグメントの提供及び該集水セグメントを用いる集水トンネルの構築に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る集水セグメントの1例の斜視図である。
【図2】図2(A)は図1に示す集水セグメントにおけるセグメント基体の斜視図であり、図2(B)は同セグメント基体の線状部材等の一部の拡大図である。
【図3】図1の集水セグメントを利用した集水トンネル構築を示す図である。
【図4】集水セグメントに内側からシールド工法用セグメントを当てがう様子を概略的に示す図である。
【図5】図1の集水セグメントにより形成される集水トンネルの一部の斜視図である。
【図6】集水管設置のために地盤を開削している従来の様子を示す図である。
【図7】図6に示す地盤開削を経て設置された集水管とその周囲の断面図である。
【図8】従来の集水管例の斜視図である。
【符号の説明】
【0071】
1 集水セグメント
11 セグメント基体
111 線状部材
111s 通水スリット
p 線状部材111の3角形状断面における三角形頂点
bs 三角形頂点pに対する三角形底辺
h 線状部材厚さ(高さ)
g1 通水スリット111sのセグメント基体外面側の幅
g2 通水スリット111sのセグメント基体内面側の幅
112 棒部材
113 端部材
114 補強部材
10 石粒層
12 大石粒層
13 中石粒層
14 小石粒層
15 水分解性樹脂
S 地表
VW 立坑
WL 帯水層
M トンネル掘削機
T 集水トンネル
T’集水トンネル前駆体
100 セグメント
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非開削工法により地中に集水トンネルを構築するための集水セグメントであって、構築すべき該トンネルの周囲方向に順次接続されるとともに該トンネル奥行き方向に順次接続されるべき集水セグメントであり、
並行に配列された複数本の線状部材を有し、隣り合う線状部材の間に通水スリットを提供しているセグメント基体と、
該セグメント基体の隣り合う線状部材間の通水スリットの目詰まり抑制のために該セグメント基体の外面側に配置された石粒層と、
該石粒層を該セグメント基体に固定するとともに該セグメント基体内側への通水を阻止するように該石粒層及び該セグメント基体に充填された水分解性樹脂とを含んでいることを特徴とする集水セグメント
【請求項2】
前記石粒層は、それぞれが予め定めた粒径範囲の石粒を主体とする複数の石粒の層が前記セグメント基体から外側へ向かって積層されたものであり、該各石粒の層の主体をなす石粒の粒径範囲は、他の石粒の層の主体をなす石粒の粒径範囲とは異なっている請求項1記載の集水セグメント。
【請求項3】
前記石粒層は、予め定めた第1の粒径範囲の石粒を主体とする大石粒層、該第1の粒径範囲より小粒径の第2の粒径範囲の石粒を主体とする中石粒層及び該第2の粒径範囲より小粒径の第3の粒径範囲の石粒を主体とする小石粒層がこの順序で前記セグメント基体から外側へ向かって積層されたものである請求項1記載の集水セグメント。
【請求項4】
前記石粒層は、予め定めた粒径範囲の石粒を主体とする単層の石粒層である請求項1記載の集水セグメント。
【請求項5】
前記石粒層は、地中に既存の水浄化能のあるバクテリアが棲みついて該石粒層を通過する地下水を浄化する層を兼ねている請求項1から4のいずれか一項に記載の集水セグメント。
【請求項6】
前記セグメント基体の線状部材は、該線状部材長手方向を横切る方向の断面形状が3角形状の部材であり、該3角形状の一つの頂点が該セグメント基体内側に向けられるとともに、該頂点に対する底辺が該セグメント基体外側に向けられている請求項1から5のいずれか一項に記載の集水セグメント。
【請求項7】
前記セグメント基体の隣り合う線状部材のセグメント基体外面側での間隙は0.5mm〜20mmの範囲の間隙である請求項6記載の集水セグメント。
【請求項8】
前記水分解性樹脂は酢酸ビルニを重合して得られるポリ酢酸ビニルを鹸化させた水酸基を持つ水溶性のビニル樹脂である請求項1から7のいずれか一項に記載の集水セグメント。
【請求項9】
地中の集水領域に集水トンネルを構築する方法であって、
請求項1から8のいずれか一項に記載の集水セグメントを用いて非開削工法により該集水セグメントがトンネル周囲方向に接続されるとともにトンネル奥行き方向に接続された集水トンネル前駆体を構築する工程と、
該集水トンネル前駆体の集水セグメントにおける前記水分解性樹脂を水分解させて該集水セグメントを通るセグメント基体内側への通水が許される状態の集水トンネルを得る工程とを含むことを特徴とする集水トンネル構築方法。
【請求項10】
前記集水トンネル前駆体を構築する工程では、前記集水セグメントの内面側に補強用セグメントを取り外し可能に固定し、該補強用セグメントを固定した集水セグメントをシールド工法によりトンネル周囲方向に接続するとともにトンネル奥行き方向に接続し、該補強用セグメントを固定した集水セグメントの該接続後に該各集水セグメントから該補強用セグメントを取り外して集水トンネル前駆体を得る請求項9記載の集水トンネル構築方法。
【請求項1】
非開削工法により地中に集水トンネルを構築するための集水セグメントであって、構築すべき該トンネルの周囲方向に順次接続されるとともに該トンネル奥行き方向に順次接続されるべき集水セグメントであり、
並行に配列された複数本の線状部材を有し、隣り合う線状部材の間に通水スリットを提供しているセグメント基体と、
該セグメント基体の隣り合う線状部材間の通水スリットの目詰まり抑制のために該セグメント基体の外面側に配置された石粒層と、
該石粒層を該セグメント基体に固定するとともに該セグメント基体内側への通水を阻止するように該石粒層及び該セグメント基体に充填された水分解性樹脂とを含んでいることを特徴とする集水セグメント
【請求項2】
前記石粒層は、それぞれが予め定めた粒径範囲の石粒を主体とする複数の石粒の層が前記セグメント基体から外側へ向かって積層されたものであり、該各石粒の層の主体をなす石粒の粒径範囲は、他の石粒の層の主体をなす石粒の粒径範囲とは異なっている請求項1記載の集水セグメント。
【請求項3】
前記石粒層は、予め定めた第1の粒径範囲の石粒を主体とする大石粒層、該第1の粒径範囲より小粒径の第2の粒径範囲の石粒を主体とする中石粒層及び該第2の粒径範囲より小粒径の第3の粒径範囲の石粒を主体とする小石粒層がこの順序で前記セグメント基体から外側へ向かって積層されたものである請求項1記載の集水セグメント。
【請求項4】
前記石粒層は、予め定めた粒径範囲の石粒を主体とする単層の石粒層である請求項1記載の集水セグメント。
【請求項5】
前記石粒層は、地中に既存の水浄化能のあるバクテリアが棲みついて該石粒層を通過する地下水を浄化する層を兼ねている請求項1から4のいずれか一項に記載の集水セグメント。
【請求項6】
前記セグメント基体の線状部材は、該線状部材長手方向を横切る方向の断面形状が3角形状の部材であり、該3角形状の一つの頂点が該セグメント基体内側に向けられるとともに、該頂点に対する底辺が該セグメント基体外側に向けられている請求項1から5のいずれか一項に記載の集水セグメント。
【請求項7】
前記セグメント基体の隣り合う線状部材のセグメント基体外面側での間隙は0.5mm〜20mmの範囲の間隙である請求項6記載の集水セグメント。
【請求項8】
前記水分解性樹脂は酢酸ビルニを重合して得られるポリ酢酸ビニルを鹸化させた水酸基を持つ水溶性のビニル樹脂である請求項1から7のいずれか一項に記載の集水セグメント。
【請求項9】
地中の集水領域に集水トンネルを構築する方法であって、
請求項1から8のいずれか一項に記載の集水セグメントを用いて非開削工法により該集水セグメントがトンネル周囲方向に接続されるとともにトンネル奥行き方向に接続された集水トンネル前駆体を構築する工程と、
該集水トンネル前駆体の集水セグメントにおける前記水分解性樹脂を水分解させて該集水セグメントを通るセグメント基体内側への通水が許される状態の集水トンネルを得る工程とを含むことを特徴とする集水トンネル構築方法。
【請求項10】
前記集水トンネル前駆体を構築する工程では、前記集水セグメントの内面側に補強用セグメントを取り外し可能に固定し、該補強用セグメントを固定した集水セグメントをシールド工法によりトンネル周囲方向に接続するとともにトンネル奥行き方向に接続し、該補強用セグメントを固定した集水セグメントの該接続後に該各集水セグメントから該補強用セグメントを取り外して集水トンネル前駆体を得る請求項9記載の集水トンネル構築方法。
【図1】


【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】




【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【公開番号】特開2009−228351(P2009−228351A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77069(P2008−77069)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(591214804)株式会社松村組 (14)
【出願人】(594082604)真柄建設株式会社 (8)
【出願人】(594186555)馬淵建設株式会社 (7)
【出願人】(304038149)村本建設株式会社 (11)
【出願人】(504151734)株式会社森本組 (6)
【出願人】(000164885)栗本化成工業株式会社 (32)
【出願人】(391053364)株式会社ナガオカ (5)
【出願人】(592195676)株式会社ベストエンジニアリング (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(591214804)株式会社松村組 (14)
【出願人】(594082604)真柄建設株式会社 (8)
【出願人】(594186555)馬淵建設株式会社 (7)
【出願人】(304038149)村本建設株式会社 (11)
【出願人】(504151734)株式会社森本組 (6)
【出願人】(000164885)栗本化成工業株式会社 (32)
【出願人】(391053364)株式会社ナガオカ (5)
【出願人】(592195676)株式会社ベストエンジニアリング (3)
【Fターム(参考)】
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