説明

集積されたエミッションサイトを有するタンパク質インプリントポリマー

本発明は、タンパク質またはポリペプチドアナライトの存在を検出するための集積されたエミッションサイトを有するタンパク質またはポリペプチドインプリントポリマー(PIPIES)であって、アナライトに特異的な鋳型サイトを含むものを提供する。鋳型サイトに、またはその付近に、レポーター分子が選択的に配置される。PIPIESの調製のための方法およびアナライトの検出のためのその使用がさらに開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2004年1月7日に出願された米国仮出願第60/534,735号に対する優先権を主張するものであり、当該仮出願の開示内容は、本明細書中に引用により組み込まれる。
本仕事は、ナショナル・サイエンス・ファウンデーションからの承諾番号CHE-0078101およびCHE-0315129により資金調達された。当該機関が本発明の所定の権利を有する。
本発明は概して、アナライトの検出の分野およびより詳細には、サンプル中のタンパク質の検出に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アメリカは、化学物質の検出および定量に、毎年数十億ドルを費やしている。これらの測定の殆どは、充分にアウトフィットされた研究所において行われ、熟練者、多量の高価な試薬および長い分析時間を必要とする。また、クリニカルポイント-オブ-ケア試験における使用またはフィールド展開の需要は、小さな、集積された分析プラットフォームを必要とする。多くのこれらの必要性により、化学センサーの開発が刺激されてきた [1]。同様に、サンプル中の「全てのもの」を同時に測定することに関して益々増している必要性[2]により、化学的および生化学的センサーアレイ法[4-10]に依る人工的な「鼻」や「舌」の開発[3]が押し進められてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、現在用いられている手段および方法の不都合を克服する新規手段の開発が必要とされている。1サンプル中の複数のアナライトの同時定量を可能とする検出法は、安価で、組立および操作がより簡単で、迅速で、精密かつ信頼性があり、および/または適当な検出限度を提供し、選択性は、アナライト検出の分野において歓迎される進歩であろう。
概して、検出のために試みられている手段は、「バイオセンサー」の使用である。一般的なバイオセンサーでは、固定化されたバイオ認識エレメント(例えば、抗体、アプタマー、DNAオリゴヌクレオチド、酵素、レクチン、シグナリングタンパク質、輸送タンパク質)が、標的アナライトを選択的に認識するのに役立ち、結合またはコンバーション(当該アナライトが基質である場合)の現象は、サンプル内のアナライト濃度に関連する光学的、質量的、熱的および/または電子化学的応答を導く。
【0004】
バイオセンサーの開発は単純であるように思われるかもしれないが、分析的に有用なバイオセンサーを開発することに伴う多くの基本的な事柄がある。例えば、伝統的な方法は、標的アナライトを選択的に認識することができる適当なバイオ認識エレメントを同定することに依存する。適当な検出/形質導入法を用い、かつ、その本来の活性/アフィニティおよび選択性を保持するように、バイオ認識エレメントを固定化する[11-13]。バイオ認識エレメント−これは、伝導的な設計におけるバイオセンサーの心臓である−は、長時間安定を維持することを必要とし、標的アナライトがバイオ認識エレメントに接近させられることを必要とし、そして、アナライト-バイオ認識エレメントの会合/相互作用が、可逆的または少なくとも容易に解離され/次に続く各測定をリセットすることを必要とする。前記欠点は、アナライトの検出におけるバイオセンサーの適用を制限してきた。
【0005】
過去十年間に渡り、官能性モノマーのテンプレートに対する架橋結合による、合成ポリマー内での特異的結合ドメインの導入が、かなりの注目を引きつけてきた [14、15]。分子インプリンティングは、テンプレート(擬似標的アナライトまたは実際の標的アナライト)の周りに重合可能な官能性モノマーを配置し、この後、重合およびテンプレート除去を行うことを含む。配置は典型的には、(i)非共有相互作用(例えば、H-結合、イオン対相互作用)または(ii)可逆性共有相互作用により達成される。テンプレートを除去した後、これらの分子的にインプリントされたポリマー(MIP)は、特定の化学種(即ち、テンプレートまたはテンプレートアナログ)を認識および結合することができる。
【0006】
MIP-に基づく物質の潜在的な利益には、以下のものが含まれる。:バイオ認識エレメントに匹敵する特異性;過激な化学的および物理的条件下での強さおよび安定性;および、適当なバイオ認識エレメントを欠くアナライトのための認識部位を設計し得ること。MIPは、(完全な列挙ではないが)タンパク質、アミノ酸誘導体、糖およびその誘導体、ビタミン、ヌクレオチド塩基、殺虫剤、医薬、および多環芳香族炭化水素に関して開発されている。しかし、Lam[16]によれば、MIPに基づくバイオ擬態センサーの開発における主要な問題の一つは、シグナル導入である。
【0007】
当該導入形態としてルミネセンスを利用するMIPに基づくセンサーに関していくつかの報告がある。例えば、Powellグループ[17a]は、トランス-4-[p-(N,N-ジメチルアミノ)ストリル]-N-ビニルベンジルピリミジニウムクロライド(フルオロフォア)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートおよびイニシエーター、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を用いることにより、cAMPインプリント有機ポリマーを形成した。これらのMIPは、1ミリモルのcAMPの存在下で蛍光の20%の変化を示し、かつ、それらはcGMPよりも cAMPに関して選択的であった。Murrayグループ[17b]は、Eu(R)3(NO3)3(R=ピナコリルメチルホスホネート又はジビニルメチルベンゾエート)(フルオロフォア)、スチレンおよびAIBNを用いることにより、ソマン(Soman)-インプリント有機ポリマーを調製した。これらのMIPは、1000兆当たり750部を下るソマンを検出することができ、有機リン殺虫剤からの干渉は最少限度であった。当該センサー応答時間は8分であった。Takeuchiグループ[17c]は、9-エチルアデニン(9-EA)の検出のための蛍光に基づくMIPセンサーを報告した。このセンサーは、5,10,15-トリス(4-イソプロピルフェニル)-20-(4-メタアクリロイルオキシフェニル)ポルフィリン亜鉛(II)(フルオロフォア)およびメタクリル酸を用いて9-EAを鋳造することに基づくものであった。CH2Cl2中で、これらのポリマーは7.5×105M-1の9-EA結合アフィニティを示し、アデニン、4-アミノピリジンおよび2-アミノピリジンよりも選択的であり、250ミクロモルの9-EAの存在下で40%の蛍光の変化を生じた。Wangグループ[17d]は、ダンシル化ジメチルアクリル酸モノマー(フルオロフォア)、エチレングリコールジメチルアクリレート、およびAIBNを用いた、L-トリプトファンを検出するための蛍光に基づくMIPセンサーを報告した。操作において、著者等は、ダンシルエミッションを消滅させる可動性のクエンチャー、4-ニトロベンズアルデヒド(4-NB)を、MIPへとロードした。L-トリプトファンの添加時、4-NBのいくらかが遊離し、ダンシル基をアクセスすることから遮断され、ダンシル蛍光が増加した。10ミリモルのL-トリプトファンを添加した際の蛍光の変化は45%であった。等量のD-トリプトファン、L-フェニルアラニンおよびL-アラニンの存在により、蛍光の32%、27%および<9%の変化が生じた。Lamグループ[16]は、光誘導性電子トランスファー(PET)法を用いて、鋳型ゾル-ゲル誘導性キセロゲル内に、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)の検出のための蛍光に基づくMIPを形成した。この仕事において、著者等は、3-[N,N-ビス(9-アントリルメチル)アミノ]プロピルトリエトキシシラン(フルオロフォア)をテトラエトキシシラン(TEOS)およびフェニルトリメトキシシラン(PtrMES)と、2,4-Dを鋳型として用いてコポリマー化した。このように形成されたMIPは、pHと共に蛍光の変化を示し(見かけのpKa 7.2付近)、750ミクロモルの2,4-Dの存在下で、蛍光の15%の低下を生じた。安息香酸および酢酸を同様の濃度で用いた試験は、有意な干渉を生じなかった。
【0008】
ごく最近、Edmistonおよび共働者[17e]は、犠牲スペーサー(SS)スキーム[18]を用いることにより、殺虫剤1,1-ビス(4-クロロフェニル)2,2,2-トリクロロエタン(DDT)の検出のための蛍光に基づくキセロゲルMIPを作成するための方法を報告し、その中で彼らは、3-イソシアナトプロピルトリエチオキシシランを4,4'-エチリデンビスフェノールと反応させて、SSを形成した。彼らは次いで、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)をフルオロフォア4-クロロ-7-ニトロベンゾフラザン(NBD)と反応させること(NBDをAPTESアミンに結合すること、NBD-APTES)により、蛍光モノマーを調製した。インプリントされたキセロゲルを次いで、NBD-APTES、SSおよびビス(トリメトキシシリル)ベンゼンと混合した後、典型的な酸加水分解プロトコルにより形成した。一度キセノゲルが形成されるや、著者等は、希釈したLiAlH4でSSカルバメート結合を切断し、鋳型サイト内にアミン残基を形成し、SSをキセロゲルから遊離させた。当該センサーはDDTに反応し(NBD蛍光の3%の変化)、鋳型キセロゲルは潜在的な干渉物質(例えば、アントラセン(A)、2,2-ビス(4-クロロフェニル)-1,1-ジクロロエチレン(p,p-DDE)、1-(2-クロロフェニル)-1-(4-クロロフェニル)-2,2-ジクロロエタン(o,p-DDD)、2,2-ビス(4-クロロフェニル)-1,1-ジクロロエタン(p,p-DDD)、ジフェニルメタン(DPM)、4,4'-ジブロモビフェニル(DBBP)、4.4'-ビス(クロロメチル)-1,1'-ビフェニル(BCP))よりもDDTに関して選択性を示した。DDTの検出限度は、10億当たり一桁のレベルであった。
【0009】
しかし、ルミネセンスに基づくMIPセンサーに関する全ての従来の研究では、アナライトの結合が生じるときに、ルミネスセントレポーター分子が現にアナライトのすぐ近くに接近していることを確認する方法が開発されていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明は、分子的にインプリントされたポリマー、およびタンパク質およびポリペプチドの選択的検出のためにこれを用いる方法を提供する。分子的にインプリントされたポリマーを作製する方法は、レポーター分子が鋳型サイトにまたはその付近に選択的にインプリントされていることを意味する集積エミッションサイトを有する、タンパク質またはポリペプチド鋳型ポリマー(PIPIES)を作成することを含む。試験サンプル中のタンパク質またはポリペプチドの存在を検出するために、試験サンプルをPIPIESに曝し、標的タンパク質またはポリペプチドが存在する場合、これをPIPIESに会合/反応させる。当該センサーの反応は、光増幅チューブ、電荷転送素子(CTD)、または相補型金属酸化膜半導体 (CMOS)等のいずれかのフォトニック検出装置を用いて検出することができる。
【0011】
本発明のPIPIESは、まず、標的タンパク質の周囲にポリマープラットフォームを形成することにより作成される。タンパク質分子を次いでポリマープラットフォームから除去し、鋳型サイトを作成する。鋳型サイトを次いで、1個以上のレポーター分子で以下のように選択的に標識する。レポーター分子を活性化可能な化学的残基に共有結合して、活性化可能なレポーターを作成する。レポーター分子は、直接または、化学的部分であるつなぎ鎖および/またはリンカー基を介在させることにより、活性化可能な化学的残基に結合されてよい。レポーター分子および活性化可能な化学的残基の組合せ(つなぎ鎖および/またはリンカー基はあってもなくてもよい)を、活性化可能なレポーター(AR)と呼ぶ。
【0012】
活性化可能なレポーターまたは活性化可能なレポーター(複数)を、次いで標的タンパク質(またはポリペプチド)分子に結合して、非共有結合により結合された標的タンパク質-AR複合体を作成する。これらの複合体は1個より多いレポーター分子を有していてよい。レポーター分子は一般に、タンパク質およびポリペプチドに、疎水性および水素結合を含む非共有結合により結合することは公知である。標的タンパク質分子はレポーター分子(単数または複数)を鋳型サイトに輸送する輸送タンパク質としての役割を果たす。ポリマーマトリックス内の鋳型サイトを次いで、標的タンパク質-AR複合体に曝す。光反応可能な化学的残基の場合におけるフォトンによるなどのARの活性化に際し、化学反応が、ARにおける活性化可能な残基とポリマーマトリックス内部の鋳型サイトの間で起こり、AR上の活性化可能な残基と鋳型サイトの間に1個以上の共有結合が形成される。これにより、鋳型サイトに、またはその付近に、1個以上のレポーター分子が取り付けられる。
【0013】
いかなる特定の理論により拘束されることも意図しないが、レポーター分子を囲んで当接するミクロ環境(本明細書中、レポーターのサイボタクティック領域と呼ぶ)の物理化学的特性(例えば、誘電率、屈折率、動態等)の変化が、レポーター分子に関するアブソーバンス(absorbance)、エキサイテーション(excitation)およびエミッション(emission)スペクトル、エキサイトされた状態のルミネセンス・ライフタイム(excited-state luminescence lifetime)および/またはルミネセンス・ポラライゼーション(luminescence polarization)の変化を生じると考えられる。結果として、レポーター分子および鋳型サイトが、レポーター分子のサイボタクティック領域の一部ないし全てを共有する場合、レポーターアブソーバンス/ルミネセンス特性(即ち、分析シグナル)の大きな変化が現れると考えられる。ゆえに、アナライト分子が鋳型サイトに結合し、それにより鋳型サイトの物理化学的特性が変化すると、当該結合が、鋳型サイトのレポーター分子により同時に探知される。
【0014】
ARの鋳型サイトへの結合の後、輸送タンパク質(またはポリペプチド)を洗浄ステップにより除去する。水溶液を用いるのが最も便利だが、有機溶媒または混合物などの他の溶媒も用いることができる。レポーター(単数または複数)を鋳型サイトに、またはその付近に取り付けられたポリマープラットフォームを本明細書中ではPIPIESと呼ぶ。ポリマーがキセロゲルである場合、本発明の材料は、集積されたエミッションサイトを有するタンパク質インプリントキセロゲルまたはPIXIESである。
【0015】
出願明細書の中ではタンパク質という文言を本発明を記載するのに用いるが、これはポリペプチドをも含むことを意図する。PIPIESは、PIPIESをサンプルに曝すことにより、サンプル中の標的タンパク質の存在を検出するために用いることができる。標的タンパク質がサンプル中に存在する場合、標的タンパク質は鋳型サイトに選択的に結合する。標的タンパク質(即ちアナライト)の鋳型サイトへの結合により、レポーター分子(1個または複数)を囲むサイボタクティック領域に変化が生じる。レポーター分子の局所ミクロ環境におけるそのような変化は、レポーター分子(1個または複数)に関するアブソーバンス、エキサイテーションおよびエミッションスペクトル、エキサイトされた状態のルミネセンス・ライフタイムおよび/またはポラライゼーションの変化を生じ得、結合タンパク質の存在は、そのような変化を測定することにより測定される。
【0016】
本発明は、タンパク質結合サイトを塞ぐことなく、当該サイトの近くにレポーター分子を選択的に取り付けるための手段を提供する。つまり、ポリマーマトリックスにおいて、過半数(>50%)のレポーター分子が鋳型サイトに、またはその近くに存在する。一態様では、実質的に全部のレポーター分子が鋳型サイトに、またはその付近に存在する。「実質上全て」なる文言は、レポーターの少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約98%または99%が鋳型サイトに、またはその付近に存在することを意味する。言い換えれば、本態様において、10%未満、好ましくは5%未満、より好ましくは2%または1%未満のレポーターがポリマーマトリックスに存在し、鋳型サイトと会合していない。それゆえ、他の方法と異なり、本発明のポリマープラットフォームのバルク(即ち、ポリマーの非鋳型領域)はレポーターを実質的に含まない。つまり、ポリマープラットフォームにランダムに分布しており、鋳型サイトに対して遠位のレポーターからのバックグラウンドシグナルが最小限に抑えられるかまたは除去される。
【0017】
つまり、本発明は、タンパク質の検出のためのMIPに基づくセンサーを開発する2つの難問を克服するものである。まず、タンパク質選択的ポリマーに基づくMIPが形成される。第二に、レポーター分子が鋳型サイトに、またはその付近に取り付けられて、結果的に起こるタンパク質鋳型サイト結合現象を変換する。我々は、我々の新規なセンサー材料を、集積されたエミッションサイトを有するタンパク質インプリントポリマー(PIPIES)と名付ける。本発明の方法を、図1〜3に説明する。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、所定の標的タンパク質のためのポリマーを分子的にインプリンティングし、次いで、1個以上のレポーター分子を、タンパク質検出のための鋳型サイトに、またはその付近に部位選択的に取り付けるための方法および組成物を提供する(図1)。PIPIESに基づくセンサーを用いることによるタンパク質の検出および定量のための方法も提供する。説明目的のために、概して、タンパク質の検出に対して言及するが、タンパク質およびポリペプチド両方が包含されることが意図される。概して、ポリペプチドは約50〜500のアミノ酸から成り、タンパク質は500より多くのアミノ酸から成ると考えられる。本発明の方法を用いることにより、未知のポリペプチドまたはタンパク質に関するセンサーを、利用可能な生物学的認識エレメントがなくても、開発することができる。
【0019】
MIPは、有機および/または無機プレカーサーに基づく分子インプリンティングの分野で公知のあらゆる方法を用いることにより作成することができる。多くの異なるタイプのポリマーシステムを本発明の方法に用いることができる。説明の例として、ゾル-ゲルにより誘導されるキセロゲルを用いることができる。しかし、このアプローチは、エアロゲルまたは天然または合成ポリマーシステムに基づく他のMIPに容易に適合することができる。しかし、ゾル-ゲル誘導性のキセロゲルおよびエアロゲルが、これらの材料の物理化学的特性は、プレカーサーの選択、プレカーサーのモル比およびプロセシングプロトコルにより調整し得るので[参考文献18および19を参照されたい]、特に有用である。
【0020】
概して、本発明の方法に用いられるポリマーは、標的タンパク質-活性化可能なレポーター分子複合体が、その成分モノマーの少なくともいくつかに対して、重合前に、化学的に結合され得るか、またはさもなくば、相互作用し得るようなものであるべきである。そのようなポリマーは、当該分野で周知である。適当な重合プレカーサーの例には、図3に示すような(EtO)3-Si-R'-Si-(EtO)3および(EtO)3-Si-R''基が含まれるが、これに限定されない。
【0021】
本発明の方法に従い、標的タンパク質を1個以上の重合可能なプレカーサー(例えば、有機モノマー、イニシエーター、テトラアルコキシシラン、有機変性シラン、触媒(酸または塩基等))と混合する。任意に、添加物(例えば、有機、無機ポリマー、バイオポリマー、界面活性剤)を用いて、タンパク質の変性を低下または防止することができる。重合化を、マトリックス内にタンパク質を隔離するように進行させて、マトリックスをインプリントする。タンパク質をドープした混合物を次いで、モノリス(典型的には1mm厚より厚いと考えられるもの)に形成するか、またはフィルムなどの基体(典型的には1mm厚と同じかまたはそれより薄いと考えられるもの)に堆積する。タンパク質を次いで鋳型マトリックスから(水性バッファー洗浄を用いることにより)除去する。次に、レポーター分子を鋳型サイト内部に共有結合させる。このステップは、活性化可能なレポーターを用いることにより行う。活性化可能なレポーターは、(a)レポーター、(b)活性化可能な化学的残基、および任意に(c)レポーターおよび活性化可能な化学的残基間のつなぎ鎖/リンカーを含む。
【0022】
有用なポリマープレカーサーには、アルコキシドおよび有機変性シラン(図3におけるR又はR'基を有する種)が含まれる。これらを1個以上のテトラアルコキシシラン(テトラメチルオルトシラン、TMOSまたはテトラエチルオルトシラン、TEOS)、エタノールまたは他の適当な共溶媒および酸または塩基触媒(例えば、HCl、NaOH)と混合する。典型的なRおよびR'基には、以下のものが含まれる。R=n-アルキル、-(CH2)3-CHO、-(CH2)3-NH2、-フェニル、-フェニル-NH2、-(CH2)2-ピリジル、-シクロアミノプロピル、-CH2-NH-フェニル、-(CH2)3-N(C2H4-OH)2(CH2)3-N-(R'')3、ジヒドロイミダゾール、ウレイドプロピルおよびEDTA;R'=-(CH2)3-NH-(CH2)3-、-(CH2)3-NH-C2H4-NH(CH2)3-、フェニル、およびビフェニル-。これらのプレカーサーの厳密なモル比、プレカーサーの形態、触媒および添加物は、作成中の所望のキセロゲルに依存する。
【0023】
レポーターは、概して、紫外線、可視光線、および/または赤外線において吸光または発光するルミノフォアまたはクロモフォアである。本発明のプロセスにおいて用いることができるレポーターの無制限の例には、フルオレセイン、BODIPY、ローダミンの様な有機または無機種、トリス(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)ルテニウム(II)([Ru(dpp)3]2などの有機金属錯体およびルミネセントナノ粒子(即ち、クアンタムドット (quantum dots))が含まれる。その物理化学的環境に反応する非ルミネセント色素分子もレポーター分子として用いることができる〔例えば、4-ニトロアニリンおよび2,6-ジフェニル-4-(2,4,6-トリフェニル-1-ピリジニオ)フェノレート(レイチャードの色素30)、2,6-ジクロロ-4-(2,4,6-トリフェニル-1-ピリジニオ)フェノレート(レイチャードの色素33)およびN,N-ジエチル-4-ニトロアニリン〕。
【0024】
レポーター分子および活性化可能な残基の組合せ(つなぎ鎖はあってもなくてもよい)が、活性化可能なレポーター(AR)である。活性化可能な残基は、その後活性化されて、ポリマー塩基とのインサーション反応または他の共有結合を経ることができる化学基である。フォトンの吸収により活性化され得る基、求核基と結合を形成し得る反応中間体を(通常<360nmで)照射した際に生じるアリールアジド等;UV光分解した際に反応性ニトレンを生じ、それにより、単純なアリールアジドまたはベンゾフェノン誘導体よりも多くのC-Hインサーション生成物を産生し、共有結合付加化合物を生じるまで、<360nmにて電磁気照射で反応性を喪失することなく反復励起され得る、フッ素化アリールアジドを用いることができる。化学的に反応する官能基の他の例には、(a)アミンに関しては、イソチオシアネート、スクシンイミジルエステル、カルボキシルエステル、テトラフルオロフェニルエステル、カルボニルアジド、スルホニルクロライド、アリール化剤およびアルデヒド;(b)チオールに関しては、ヨードアセトアミド、マレイミド、アルキルハロゲン化物、アリール化剤、およびジスルフィド;(c)アルコールに関しては、ジクロロトリアジン、N-メチルイサトイン無水物、アミノフェニルボロン酸、アシルアジドから調製されるイソシアネートおよびアシルニトリル;および(d)カルボン酸に関しては、ヒドラジン、ヒドロキシルアミンアミン、カルボジイミド、エステル化試薬、ジアゾアルカン、アルキルハロゲン化物、およびトリフルオロメタンスルホネートが含まれる。これらの基は、リンカー基としても機能することができる。
【0025】
(本明細書中、つなぎ鎖または化学的つなぎ鎖とも呼ぶ)連結部分は、ケミカルサイエンスにおいて、残基間に間隔を空けるのに用いられているあらゆる可能な天然または合成基の一つであり得る。連結部分の一般的な例は、メチレン鎖、エーテル鎖、ポリジメチルシロキサン鎖、ポリスチレン鎖、アミノ酸鎖、およびいずれかの他の有機/無機オリゴマーである。特定のタイプのレポーター分子と活性化可能な残基の間の結合を形成するのに用いることができる化学基の特定の例には、限定するものではないが、以下のものが含まれる。アミン残基を結合するためには、イソチオシアネート、スクシンイミジルエステル、カルボキシルエステル、テトラフルオロフェニルエステル、カルボニルアジド、スルホニルクロライド、アリール化剤およびアルデヒドを用いることができ;チオール残基を結合するためには、ヨードアセトアミド、マレイミド、アルキルハロゲン化物、アリール化剤、およびジスルフィドを用いることができ;アルコール残基を結合するためには、ジクロロトリアジン、N-メチルイサトイン無水物、アミノフェニルボロン酸、アシルアジドから調製されるイソシアネートおよびアシルニトリルを用いることができ;およびカルボン酸を結合するためには、ヒドラジン、ヒドロキシルアミンアミン、カルボジイミド、エステル化試薬、ジアゾアルカン、アルキルハロゲン化物、およびトリフルオロメタンスルホネートを用いることができる。
【0026】
タンパク質鋳型サイトにまたはその付近に部位選択的にレポーターを取り付けるために、タンパク質をARと混合する(図1)。タンパク質および活性化可能なレポーターは、本明細書においてタンパク質-AR複合体と呼ぶ複合体を溶液中に形成する。
タンパク質鋳型ポリマー物質をタンパク質-ARレポーター複合体に曝し、接近可能な鋳型タンパク質サイトを当該複合体で満たす。このステップでは、標的タンパク質は、鋳型サイトがレポーター分子のサイボタクティック領域内部に存在するように、AR分子またはAR分子(複数)を選択的に輸送する。タンパク質-ARをロードしたMIPを次いで適当な手段(例えばUV光での照射)により活性化する。結果として、1個以上のレポーター分子が鋳型サイトに、またはその付近に共有結合される。インサーション反応によりポリマープラットフォームへの結合を形成する、光活性化される残基の場合、鋳型ポリマーを適当な波長の電磁気照射で照射し、例えば鋳型サイトへの高効率のC-Hインサーションを経るニトレンを作成する。他のインサーション/結合形成反応は、合成化学の分野における当業者の予測可能な範囲内にある。無制限の例には、照射に際して反応性中間体を作成するアリールアジド、UV光分解に際して反応性ニトレンを作成するフッ素化アリールアジド、共有付加化合物を作成するまで、電磁気ラジエーションで継続的にエキサイト/イルミネイトされ得るベンゾフェノン誘導体、マレイミドとスルフヒドリル、カルボジイミドとアミン/カルボキシレート、NHS-エステルとアミン、ヒドラジドとカルボヒドレート(酸化される)、PFP-エステルとアミン、ヒドロキシメチルホスフィンとアミン、ソレランとチミン(光活性インターカレーター)、イミドエステルとアミン、ピリジルシスルフィドとスルフヒドリル、イソシアネートとヒドロキシル(非水性)、およびビニルスルホンとスルフヒドリル、アミンまたはヒドロキシルが含まれる。
【0027】
タンパク質鋳型物質を次いで溶液(水性バッファー)などでリンスし、あらゆるタンパク質または未反応のレポーターを除去する。洗浄はまた、ARが反応した可能性のあるあらゆるタンパク質も除去する。残されるポリマープラットフォームが、集積されたエミッションサイトを有するタンパク質インプリントポリマー物質である。
この方法は、あらゆるMIPに基づくタンパク質検出法に適用可能である。PIXIES法は、本明細書中に詳細に記載するが、他のインプリントされた物質に対する適用が、当該分野における専門家に認識されるであろう。
【0028】
他の態様では、タンパク質またはペプチドアナライトの存在を検出するための分子的にインプリントされたポリマーであって、露出反応基を有する少なくとも1個の鋳型サイトを、当該サイトが、当該タンパク質またはポリペプチドアナライトを選択的に結合することができるような配置で含み、レポーター分子が当該鋳型サイトに、またはその付近に取り付けられているものが提供される。「鋳型サイトに、またはその付近に」より、タンパク質が鋳型サイトに結合する場合に、レポーター分子に関するアブソーバンス、エキサイテーションおよびエミッションスペクトル、エキサイトされた状態のルミネセンス・ライフタイムおよび/またはルミネセンス・ポラライゼーションの変化がもたらされるように、鋳型サイトがレポーターのサイボタクティック領域内に存在することを意味する。
【0029】
レポーター分子を鋳型サイトに、またはその付近に選択的に配置することにより、レポーター分子がポリマーマトリックス全体にランダムに分散しているのみの場合に観察されるものと比較して、バックグラウンドノイズが低下する。本発明では、レポーター分子がランダムに分散される可能性はあるが、さらにレポーター分子が鋳型サイトに部位選択的に配置されている場合には、シグナル対バックグラウンド比の改善が認められる。一態様では、過半数(>50%)のレポーター分子が鋳型サイトに、またはその近くに存在する。より好ましい態様では、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%および99%のレポーター分子が、鋳型サイトに、またはその付近に存在する。
【0030】
更なる態様では、本発明により、タンパク質を検出するための方法が提供される。当該方法は、タンパク質に選択的に結合し得るタンパク質鋳型ポリマーを、前記態様に従い提供することを含む。タンパク質鋳型ポリマーに関するアブソーバンス/エミッションが未知である場合、これは測定できる。このPIXIESを次いで試験または未知サンプルに曝す。鋳型ポリマーに関するアブソーバンス/エミッションを再び測定する。タンパク質鋳型ポリマーに関するアブソーバンス/エミッションの変化は、サンプル中のタンパク質のレベルに対応する。適当な検量曲線を用いて、サンプル中のタンパク質濃度を決定する。
【0031】
本発明のPIPIESは、再利用することができる。(例えば試験サンプルからの)アナライトの結合は可逆的であり、アナライトは、溶媒(水性または有機性または混合物)で洗浄することにより除去することができる。PIPIESを次いで再び、アナライトの検出のために用いることができる。
本発明の態様では、複数の調整可能なセンサーを、各標的タンパク質のために設計および開発することができる。この方法により、単一アナライト/単一センサースキーマに伴う基本的な問題を回避する。ここで、PIXIESライブラリーの同時スクリーニングを行って(参考、表1)、PIXIESの分析パーフォーマンスを最も効果的にし、PIXIESのセットであって、当該セット内で反応特性が所定のアナライトに関して最大の相違を示すものを同定することができる。
【0032】
さらに他の態様では、複数のPIXIESに基づくセンサーエレメントをLED、他の適当な光源またはセンサーアレイを作成するための基体の表面に形成することができる。LEDの表面におけるセンサーの作成およびアナライトの検出は、出典明示により本明細書に組み込まれる米国特許第6,492,182号、第6,582,966号および第6,589,438号に記載されている。各センサーエレメントは、特定の標的タンパク質に関する個別のPIXIESに基づくセンサーとして役立ち得る。
【0033】
さらに、多様化された、マルチモデルのセンサーエレメントのアレイであって、複数のセンサーを各標的タンパク質に関して開発したものを構築することができる。操作において、LEDを光源として用いて、LED表面上のセンサーエレメント内のレポーター分子を同時にエキサイトし、次いで、全センサーエレメントからの標的アナライト依存性のエミッションをアレイディテクター(例えば、CTDまたはCMOS)により検出することができる。各PIXIESエレメントからのエミッションを次いで、適当な検量ステップの後、サンプル中の特定のアナライトに関するアナライト濃度と関連付ける。
【0034】
単一のPIXIESセンサーエレメントからのアブソーバンス/エミッションの検出のためには、PMT、光ダイオードまたは他の適当な光ディテクターを用いることができる。マルチプルPIXIESセンサーエレメントのためには、電荷結合素子 (CCD)またはCMOSに基づく画像ディテクター等の画像化装置を用いることができる。アレイディテクターを用いて、複数のPIXIESに基づくセンサーエレメントを、同時に評価することができる。
他の態様では、ピンプリンティング法または他のアレイ作成スキーマを用いて、同時マルチアナライト検出のためのセンサーアレイを開発することができる。これにより、光源または適当な基質の表面における複数の光センサーエレメントのインプリンティングが可能となる。
以下の記載により、本発明の特定の実施例を提供する。当業者には、本発明の範囲内のものであることが意図される、これらの態様に対する通常の変更が可能であることが明らかであろう。
【実施例】
【0035】
[実施例1]
本実施例(図1)により、一般的なPIPIESの調製を記載する。反応1は、リンカー基(LG)を有するレポーター分子(RM)、リンカー基(LG'、LG'')を有する任意のつなぎ鎖、およびリンカー基(LG''')を有する活性化可能な基(AG)から活性化可能なレポーター(AR)分子を作成するプロセスを示す。反応2は、タンパク質テンプレート(PT、標的アナライト)-AR複合体(PT-(AR)n)を作成するプロセスを示す。AR対PT化学量はn対1であり、nは整数であり得る。一態様では、nは1〜10である。反応3は、タンパク質インプリントポリマー(PIP)を、プレカーサー(PR)、任意の添加物(ADD)およびタンパク質テンプレート(PT)から作成するプロセスを説明する。反応4は、タンパク質テンプレート(PT、標的アナライト)-AR複合体(PT-(AR)n)を用いることにより、PIPをPIPIESへ変換するプロセスを示す。
【0036】
[実施例2]
本実施例は、オブアルブミンに特異的なPIXIESの調製を記載する。ARを図2に示すように調製した。つなぎ鎖により連結された活性化可能なアリールアジド基を有するレポーター分子(RM)を調製する。暗中で、フッ素化アリールアジドに結合されるアミン反応性スクシンイミジルエステルをアミン含有ルミノフォア(BODIPY 505/515)と反応させて、ルミノフォアタグ付アリールアジド(化合物1)を作成した。化合物1はARであり、これを用いて、以下に記載するように、キセロゲル内部のタンパク質鋳型サイト内に1個以上のレポーター分子を取り付けた。
【0037】
1等量の標的タンパク質(オブアルブミン)を250-1000等量のアルコキシドと混合することにより、タンパク質鋳型キセロゲルを作成した(図3)。密封容器中でゾルを加水分解させた後、薄いフィルム(プロフィロメトリーにより測定して500-800nm)を、融合シリカ基体の上にスパンキャストし、キセロゲルを作成した(48時間、暗中、室温)。オブアルブミンを鋳型キセロゲルから、水性バッファー洗浄(リン酸緩衝塩水、pH7.0、0.01M、15mM NaCl)を用いることにより除去した。
【0038】
キセロゲル内部のオブアルブミン鋳型サイトにルミネセントレポーター分子を取り付けるために、オブアルブミンと化合物1の1:1混合物をリン酸緩衝塩水(pH7.0、0.01M、15mM NaCl)中で調製した。これらの条件下、定常状態の蛍光アンイソトロピー測定は、>98%の化合物1がオブアルブミン結合したことを示した。オブアルブミンと1の相互作用はユニークではなく、有機および無機「リガンド」のタンパク質への結合に関して大量の文献が存在する。つまり、標的タンパク質(オブアルブミン)を本質的に用いて、レポーター分子(図1および2のRM)を鋳型サイトに選択的に輸送した。我々は次いで、オブアルブミン鋳型キセロゲルフィルムをオブアルブミン-1溶液に浸し、全ての接近可能なオブアルブミン鋳型サイトを満たした。15分後、フィルムをオブアルブミン-1溶液から取り出した。フィルムを1000Wのキセノンアークランプからのフィルター経由アウトプット(λ<360nm)で照射した。いかなる特定の理論により拘束されることを意図するものではないが、光照射によりアリールニトリンが作成され、これがキセロゲル超構造への高効率のC-Hインサーションを被ると考えられる。10分間照射後、オブアルブミン鋳型キセロゲルフィルムを水性バッファー(リン酸緩衝円錐、pH7.0、0.01M、15mM NaCl)でリンスし、あらゆるオブアルブミンおよび未反応の1を鋳型キセロゲルから遊離させた。洗浄ステップにより、1が反応した可能性のあるあらゆるオブアルブミンをも除去した。
【0039】
[実施例3]
この実施例は、実施例2にて記載したように調製したPIXIESを用いることによるオブアルブミンの検出を記載する。図4に、一連(n=10)のオブアルブミン鋳型PIXIESフィルムからの反応特性をまとめる。これらの特定のPIXIESに基づくフィルムのモル組成は、55%テトラエチルオルトシラン(TEOS)、2%アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、3%オクチルトリメトキシシラン(OTS)および40%ビス(2-ヒドロキシ-エチル)アミノプロピルトリエトキシシラン(HAPTS)であった。オブアルブミン:アルコキシドSiのモル比は1:750であり、BODIPY 505/515をルミネセントレポーター分子(図2のRM)として用いた。図4に示すように、オブアルブミンをこれらのオブアルブミン鋳型PIXIESに添加すると、ルミネセンスは増す。
【0040】
[実施例4]
この実施例は、オブアルブミンに関するPIXIESの選択性を記載する。オブアルブミンに関するオブアルブミン鋳型PIXIES選択性の初期試験として、15ミクロモルのオブアルブミン溶液を15倍モル過剰のフェニル-SO2Clと反応させ、オブアルブミン表面の全ての接近可能な一級アミンをブロックした。次いでオブアルブミンスルホアミドに対するPIXIESの反応を再測定した。試験した濃度範囲に渡り(2.5mMまで)、観察可能な反応はなかった(図4)。
【0041】
第二の実験で、ヒト血清アルブミン(HSA)を代替干渉物として用いることにより、オブアルブミン鋳型PIXIES選択性を試験した。これらの試験の結果(図4)も、オブアルブミン鋳型PIXIESがHSAよりもオブアルブミンに関して選択的であることを示した(表1もご参考のこと)。
第三の実験で、一連の同一のオブアルブミン鋳型PIXIESを用いて、これらをオブアルブミン、オブアルブミンスルホンアミドおよびHSAと混合物中でインキュベートして、サンプルのオブアルブミン含量にのみ相当する反応を観察した。
第四の実験で、オブアルブミン鋳型PIXIESセンサーを用いた一連の連続フロー実験を、オブアルブミンのプラグを注入後、純粋なバッファーを注入することにより行った。625±1-mn厚のPIXIESフィルムに関する反応時間(最大のシグナル変化の90%に達する時間)は、45sのオーダーであり、反応は8%の範囲内で可逆的である(25サイクル)。
【0042】
[実施例5]
本実施例により、別個のプレカーサーおよびキセロゲル組成を用いることにより調製された一連のPIXIES-に基づくセンサーフィルムにおけるScatchard分析[20]を記載する。これらの実験の結果を表1にまとめる。これらの実験の結果は、別個のキセロゲル組成物を用いてPIXIES反応および選択性を調整できることを示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1に示す平衡結合データは、一アナライトに関して他よりも、反応における実質的な差を検出することができ、それゆえ調整可能なセンサーを各アナライトに関して設計できることを示す。これをさらに以下に記載する。
【0045】
[実施例6]
この実施例(図5)は、独立センサーエレメント(左)から、リダンダントセンサーの組(中央)、多様化されたマルチモデルセンサーアレイ法(右)へのPIPIESに基づくセンシングプラットフォームの推移を記載する。検量曲線を、各アレイに関して下に描写する。異なるサークルは、異なるPR、ADD、AR、TおよびPTに基づく別個のセンサーエレメントを示す(図1−3)。当該方法を用いて、他からの一タンパク質に関する選択性を改善するために、または、一サンプル中での同時マルチタンパク質検出および定量のために用いることができる、適合されたPIPIESに基づくセンサープラットフォームを設計および開発することができる。発明のこの側面を、以下により詳細に記載する。
【0046】
[実施例7]
本実施例では、アレイフォーマットにおけるPIXIES法の適用可能性を、ケラチノサイト成長因子(KGF)の検出に関して示す。ここで、5つの(5)同一のPIXIESに基づくセンサーエレメントを、KGFのためのアレイフォーマットにおいて調製した。これらの結果を図6にまとめる。図6の左側部分に、LEDの表面にプリントされた100ミクロメーターの直径のPIXIESに基づくセンサーエレメントの一連のCCD画像であって、CCDにより検出されたものを、添加されたKGFのファンクションとしてを示す。PIXIESからのエミッションは、KGF濃度が増すに従い増加する。高濃度のBSA(1ミクロモル)または化学的に変性されたKGF(即ち2Mの尿素で処理したKGF)を用いた対照実験も示す。当該シグナルはブランクと同義である。図6の右側は、ネイティブなKGFおよび化学的に変性されたKGFの存在下でのKGF鋳型PIXIESに関する検量曲線を示す。選択性は明らかであり、PIXIESの検出ポテンシャルを示す。
【0047】
[実施例8]
本実施例では、オブアルブミン、HSAおよびBSAに関して設計され、各PIXIESが異なるキセロゲル処方に基づく一連の5つの(5)複製PIXIESに基づくセンサーエレメントからの反応を示す。結果を図7に示す。特に、処方F1は15%TEOS、5%OTSおよび75%HAPTSであり、処方F2は8%TEOS、14%APTES、7%OTSおよび71%HAPTSであり、処方F3は8%TEOS、14%APTES、7%OTSおよび71%HAPTSであり、3重量%のPEG(2000)を塗布したものであり、処方F4は、28%TEOS、4%APTES、7%OTSおよび61%HAPTSであり、および処方F5は、8%TEOS、14%APTES、7%OTSおよび71%HAPTSと1.5モル%のグリセロールである。かかる複数のセンサーを協調使用することにより、所定のタンパク質に関する総合的な検出の正確さ、精度、および動的範囲を数倍改善することができる。誤ったポジティブおよびネガティブも、マルチプル協調可能センサーおよびリダンダント検出スキーマを用いることによりより容易に検出される。
【0048】
[実施例9]
本実施例では、別個のタンパク質の検出に対する本方法の適用可能性を示す。一連のタンパク質鋳型キセロゲルを調製し、タンパク質を実施例1および2のごとく検出した。結果を表2にまとめる。
【0049】
【表2】

【0050】
これらの結果は、PIXIES法が、低ピコモル(pM)の検出限度を有する独立したセンサーエレメントであって、問題のタンパク質(複数)が高い一連の相同性を有する場合に、一タンパク質に関して他のタンパク質よりも選択的なセンサーエレメントを作成できることを示す。例として、インターロイキン-1α(IL-1α)およびインターロイキン-1β(IL-1β)およびトランスフォーミング成長因子-α(TGF-α)およびトランスフォーミング成長因子-β(TGF-β)に関して設計されたPIXIESに関する結果を表2に示す。各センサーに関する選択性ファクターは、少なくとも36倍である。
【0051】
[実施例10]
本実施例では、リシンの検出のための、多様化されたPIXIESに基づくセンサーアレイの開発を示す。完全なリシンに関して設計された5×5アレイのPIXIESに基づくセンサーエレメントに関する、エピ蛍光顕微鏡からの未処理の、偽色CCD画像を示す(図8)。各縦列は、所定のキセロゲル処方ケミストリー(Fx)に基づく5つの(5)複製センサーエレメントから成る。このケースにおけるARは図2に示すものであり、RM=ダンシルであり、つなぎ鎖は-(CH2)3-である。Faの処方は15%TMOS、75%OTSおよび5%HAPTSであり、処方Fbは18%TEOS、3%APTES、8%OTSおよび71%HAPTSであり、処方Fbは8%TMOS、14%APTES、7%OTSおよび71%HAPTSで、12重量%のPEG(2000)を塗布したものであり、処方Fdは25%TMOS、7%APTES、18%OTSおよび25%HAPTSであり、および処方Feは、20%TEOS、10%APTES、45%OTSおよび25%HAPTSと3モル%プロピレングリコールである。かかるマルチプルセンサーを協調使用することにより、リシンに関する全般的な検出の正確さ、精度および動的範囲が、1オーダーを越すマグニチュードまで改善され、動的範囲は有意に拡張される。
【0052】
[実施例11]
本実施例では、標準的な酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)の完全なリシンに関する選択性を、各々10、100、512および1024のセンサーエレメントから成る4つの(4)多様化されたPIXIESに基づくセンサーアレイからの選択性と比較する。各センサーエレメントは、異なるキセロゲル処方(図3および実施例3−10をご参照)から誘導した。選択性ファクターは、10pg/mLの完全なリシン(AおよびB鎖)に対するELISAまたは表示されたセンサーアレイからの反応を、ELISAまたは同じアレイを10pg/mLの指定のタンパク質(リシンAのみ、リシンBのみ、HSAおよびBSA)でチャレンジした場合にELISAまたは同じアレイに関して認められた集合的反応で割った比を示す。ELISAと比較して、多くのセンサーエレメントを有するPIXIESに基づくプラットフォームに関して認められる選択性の、(2オーダーのマグニチュードを越える)非常な増加は、注目に値する。
【0053】
[実施例12]
本実施例では、異なるタンパク質の同時マルチモデル検出へのPIXIES法の適用可能性を示す。ここでは、5×5アレイのPIXIESに基づくセンサーエレメント(図10)であって、各PIXIESに基づくセンサーエレメントが異なるタンパク質ターゲットに関して設計されたものを3つの異なるタンパク質混合物でチャレンジする。図10Aでは、HSA、BSA、オブアルブミン、KGF、IL-1およびTGFを含む混合物からの反応を示す。図10Bでは、KGF、カルモジュリン、ブタの血清アルブミン、RANTESおよびEGFの混合物からの反応を示す。図10Cには、HSA、RANTES、EGF、IL-1およびTGFの混合物からの反応を示す。これらの結果により、1サンプル中の同時性マルチタンパク質検出が立証される。
特定の態様を本記載において示したが、通常の変更が、本発明の要旨から離れることなく、当業者になされ得ることが、当業者には明らかであろう。
【0054】
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【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、PIPIESを作成するための全プロセスを図示したものである。
【図2】図2は、後に光活性化され得る活性化可能なレポーター(AR)分子の作成を図示したものである。
【図3】図3は、集積されたエミッションサイトを有するタンパク質インプリントキセロゲル(PIXIES)を調製するための反応列を図示したものである。
【図4】図4は、オブアルブミン選択的PIXIESに関する検量曲線を図示したものである。
【図5】図5は、独立センサーエレメント(左)から、リダンダントセンサーの組(中央)、多様化マルチモデルセンサーアレイ法(右)への推移を図示したものである。
【図6】図6は、ケラチノサイト成長因子(KGF)のために設計された、5の(5)複製PIXIESに基づくセンサーエレメント(直径100マイクロメーター)からの反応を図示したものである。ネイティブのKGFおよび変性されたKGFに対して反応しているこれらKGF反応性PIXIESに関する分析的検量曲線も示す。
【図7】図7は、オブアルブミン、ヒト血清アルブミン(HSA)またはウシ血清アルブミン(BSA)から各々鋳造された種々のキセロゲルプレカーサー処方(Fx)から誘導された5つの(5)異なるPIXIESに基づくセンサーエレメントからの反応結果(タンパク質濃度=0.lマイクロモル)を図示したものである。
【図8】図8は、完全なリシン(AおよびB鎖)に関して設計された多様化されたPIXIESに基づくセンサーアレイの一部を図示したものである。異なるキセロゲルプレカーサー処方(Fx)から誘導された5つ(5)の異なるPIXIES(横列)に基づくセンサーエレメントの5つの(5)複製物(縦列)からの反応を示す。
【図9】図9は、標準酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)から得られた選択性を、各センサーエレメントが異なるキセロゲルプレカーサー処方から誘導された、10、100、512、および1024のエレメントを有する4つの(4)多様化されたPIXIESに基づくセンサーアレイとの比較で、図示したものである。
【図10】図10は、25の異なるタンパク質の検出のために設計された5×5アレイのPIXIESに基づくセンサーエレメントの一部を図示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質またはペプチドから成る群から選択されるアナライトの存在を検出するための分子的にインプリントされたポリマーであって、
複数の鋳型サイトであって、各鋳型サイトが前記アナライトに特異的である、鋳型サイト;および
1個以上のレポーター分子であって、前記特異的ポリペプチドまたはタンパク質の前記鋳型サイトへの結合に際して、当該レポーターに関するアブソーバンスおよび/またはエミッションの変化が認められるように、前記鋳型サイトにまたはその付近に選択的に取り付けられたレポーター分子、
を含むポリマーマトリックスを含む分子インプリントポリマー。
【請求項2】
実質的に全ての前記レポーター分子が、前記鋳型サイトにまたはその付近に存在する、請求項1に記載の分子インプリントポリマー。
【請求項3】
前記ポリマーがキセロゲルまたはエアロゲルである、請求項1に記載の分子インプリントポリマー。
【請求項4】
前記レポーターが、ルミノフォアまたはクロモフォアから成る群から選択される、請求項1に記載の分子インプリントポリマー。
【請求項5】
前記ルミノフォアが、フルオレセイン、BODIPY、ローダミン、トリス(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)ルテニウム(II)([Ru(dpp)3]2+およびクアンタムドットから成る群から選択される、請求項1に記載の分子インプリントポリマー。
【請求項6】
前記クロモフォアが、4-ニトロアニリン;2,6-ジフェニル-4-(2,4,6-トリフェニル-1-ピリジニオ)フェノレート;2.6-ジクロロ-4-(2,4,6-トリフェニル-1-ピリジニオ)フェノレート;およびN,N-ジエチル-4-ニトロアニリンから成る群から選択される、請求項4に記載の分子インプリントポリマー。
【請求項7】
前記鋳型サイトが、ケラチノサイト成長因子、オブアルブミン、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミンおよびこれらの組合せに関して特異的である、請求項1に記載の分子インプリントポリマー。
【請求項8】
前記レポーター分子が、化学的つなぎ鎖により前記鋳型サイトにまたはその付近に取り付けられている、請求項1に記載の分子インプリントポリマー。
【請求項9】
タンパク質およびポリペプチドから成る群から選択されるアナライトを選択的に検出するための分子インプリントポリマーを調製する方法であって、
a)未重合のポリマー成分を、アナライト分子の存在下に重合させ、鋳型サイトを有するポリマーマトリックスを作成するステップ、ここで、各鋳型サイトは、それに結合された一アナライト分子を有する、
b)前記アナライト分子を前記鋳型サイトから放し、これにより、前記アナライトに特異的な鋳型サイトを作成するステップ、
c)一活性化可能な化学的残基が一レポーター分子に共有結合している、アナライト-活性化可能なレポーター複合体を、別個に調製するステップ、
d)前記鋳型サイトを、前記アナライト-活性化可能なレポーター複合体と、接触させるステップ、
e)前記アナライト-活性化可能なレポーター複合体を活性化し、アナライト-活性化レポーター複合体を作成し、次いでこれにより、前記アナライト-活性化レポーター複合体の前記レポーター部分の前記鋳型サイトへの結合をもたらすステップ、
f)前記アナライト分子を前記アナライト-活性化レポーター複合体から放し、これにより、前記アナライトに関して特異的な鋳型サイトおよび当該サイトにまたはその付近に結合されたレポーター分子を有する分子インプリントポリマーを得るステップ、
を含む方法。
【請求項10】
前記ポリマーがキセロゲルまたはエアロゲルである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
アナライト-活性化可能なレポーター複合体を調製する前記ステップが、1個のレポーター分子を1個の活性化可能な化学的残基に共有結合して、一個の活性化可能なレポーターを形成するステップ、次いで、1個以上の活性化可能なレポーターを1個のアナライト分子に結合して、1個以上のレポーター分子を有するアナライト-活性化可能なレポーター複合体を作成するステップ、を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記レポーター分子が、化学的つなぎ鎖により前記活性化可能な化学的残基に共有結合される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記活性化可能な化学的残基が光活性化可能な化学的残基である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記光活性化可能な化学的残基が、アリールアジド、フッ素化アリールアジドおよびベンゾフェノン誘導体から成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記活性化可能な化学的残基が、イソチオシアネート、スクシンイミジルエステル、カルボキシルエステル、テトラフルオロフェニルエステル、カルボニルアジド、スルホニルクロライド、アリール化剤、アルデヒド、ヨードアセトアミド、マレイミド、アルキルハロゲン化物、アリール化剤、ジスルフィド、ジクロロトリアジン、N-メチルイサトイン無水物、アミノフェニルボロン酸、アシルアジドから調製されたイソシアネート、アシルニトリル、ヒドラジン、ヒドロキシルアミンアミン、カルボジイミド、エステル化試薬、ジアゾアルカン、アルキルハロゲン化物、およびトリフルオロメタンスルホネートから成る群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記つなぎ鎖が、メチレン鎖、エーテル鎖、ポリジメチルシロキサン鎖、ポリスチレン鎖またはアミノ酸鎖および有機または無機オリゴマーからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記レポーターが、ルミノフォアまたはクロモフォアである、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記ルミノフォアが、フルオレセイン、BODIPY、ローダミン、トリス(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)ルテニウム(II)([Ru(dpp)3]2+およびクアンタムドットから成る群から選択される、請求項17に記載の分子インプリントポリマー。
【請求項19】
前記クロモフォアが、4-ニトロアニリン;2,6-ジフェニル-4-(2,4,6-トリフェニル-1-ピリジニオ)フェノレート;2.6-ジクロロ-4-(2,4,6-トリフェニル-1-ピリジニオ)フェノレート;およびN,N-ジエチル-4-ニトロアニリンから成る群から選択される、請求項17に記載の分子インプリントポリマー。
【請求項20】
試験サンプル中のアナライトの存在を検出するための方法であって、
a)前記試験サンプルを、請求項1に記載の分子インプリントポリマーと接触させるステップ、および、
b)前記試験サンプルに曝した際の前記レポーター分子からのアブソーバンスまたはエミッションの変化を検出するステップ
を含み、前記レポーター分子からの前記アブソーバンスまたはエミッションの変化が前記試験サンプル中の前記アナライトの存在を示す、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−520700(P2007−520700A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549462(P2006−549462)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/000632
【国際公開番号】WO2005/068980
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(506194117)ザ リサーチ ファウンデイション オブ ステイト ユニバーシティー オブ ニューヨーク (11)
【Fターム(参考)】