説明

集積包装用ポリエチレン系熱収縮性多層フィルム

【課題】結束力が高く、自動包装機適性に優れ、薄くても十分な強度を有し、収縮包装後も透明性光沢性に優れ、また低温ヒートシール性、低温収縮性、耐熱性によってスリーブ包装に特に適する集積包装用ポリエチレン系の熱収縮性フィルムを提供する。
【解決手段】ポリエチレン系多層フィルムを二軸延伸によりMD及びTD共に延伸倍率3.0倍以上で延伸した後、熱ロール処理により60〜100℃の温度でMDに1.1〜3.0倍に延伸して得られる集積包装用ポリエチレン系熱収縮性多層フィルム。望ましくは、前記フィルムは少なくとも3層以上の多層であり、両表層のポリエチレン系樹脂の平均密度(a)と芯層のポリエチレン系樹脂の平均密度(b)が(a)≦(b)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶、瓶、ペットボトルなどの集積包装に適した機械適性、ヒートシール性及び包装仕上がり性のよい集積包装用ポリエチレン系熱収縮性多層フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から被包装物を熱収縮性フィルムで収縮包装することは、被包装物の保護、不規則な形状の被包装物も美しく包装できること、複数の被包装物を強固に結束できること、及び自動包装に適していることなどの理由から広く利用されている。これらの収縮包装に使用される熱収縮性フィルムは、被包装物の形状、出荷形態、包装速度、包装機械等に応じて選択され、例えばスリーブ収縮包装、オーバーラップ収縮包装、ストレッチ収縮包装等があり、包装方式によって要求される特性も異なっている。特に缶ビール、缶ジュース、瓶詰め、清涼飲料水などの集積包装には、内容物が重量物であるために包装物が破れないように耐引裂性や耐衝撃性が要求され、更にシール部の破れが無い程度の十分なシール適性等が要求される。
【0003】
スリーブ包装の場合、これら要求特性を満足すべく、ポリエチレンを主原料としたインフレーション法で製造されたフィルムが従来から広く用いられている。インフレーション法で製造されたフィルムは、原料の融点以上の温度で延伸されるため、低温シール性には優れるが、透明性や光沢性に劣り、柔らかくて伸び易く、耐熱性と収縮性に乏しい。そのため、十分な結束力と強度を得るため50μm以上の厚みのフィルムが多く、包装後は多量のゴミとなっている。
【0004】
二軸延伸されスリーブ包装にも適するフィルムとして、特許第1106837号公報にはポリプロピレンを主原料としてチューブラー延伸後にMDに再延伸を行った熱収縮性フィルムの製造方法が提案されている。しかしながら、該公報で得られたフィルムは、ポリプロピレン系単層フィルムであるため、例えば図1に示すような包装形態で仮包装すると、底面のシールができず、小さな傷などからフィルムが容易に裂けて集積包装が解けてしまうことがあった。また、チューブラー延伸の延伸倍率が小さいため、透明性や光沢性が十分ではなく、低温収縮性に劣るため収縮包装後にシワが多く、高温で収縮させると被包装物のラベルが溶けるなどの問題があった。
【0005】
一方、オーバーラップ包装の場合、ポリプロピレン等を主原料としてチューブラー延伸法、テンター同時二軸延伸法やテンター逐次二軸延伸法等の原料の融点より低い温度で延伸する方法で製造されたフィルムが一般的に用いられ、被包装物をよりタイトに収縮包装できるようにMDとTDの収縮率がバランスしていて、厚みも50μm以下と薄く、透明光沢性にも優れている。オーバーラップ包装の場合、単一の被包装物を収縮包装することがほとんどであり、被包装物の保護等を目的に使用することが多い。前述したようにポリプロピレン系を主原料とするフィルムは、耐引き裂き性、低温収縮性に劣るため、集積包装、特に重量物の集積包装には適用されていないのが実状である。このような問題を解決すべく、特許第3068920号公報にはポリエチレンを主原料に用いたチューブラー延伸で製造された熱収縮性フィルムが提案されている。しかしながら、該公報で得られたフィルムは、溶断シールするとピンホールの発生が多く、収縮包装後にシール部から破れる問題があった。更に、オーバーラップ包装は収縮前の仮包装袋の大きさが被包装物の大きさよりも大きく、即ち余裕率が20〜30%程度になる包装形態であるため、これらのオーバーラップ包装用フィルムで集積包装を行うと、収縮力が減じられてしまい、結束力が小さくなってしまう欠点があった。
【0006】
また、上述したようなオーバーラップ包装用ポリエチレン系熱収縮性フィルムで前記図1の包装形態で包装を行うと、MDの収縮力が不足して十分な結束力が得られず、反対にTDの収縮が大きくなりすぎて被包装物を十分に覆うことができない、或いは収縮後に印刷柄がTDに大きく歪むことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第1106837号公報
【特許文献2】特許第3068920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、結束力が高く、自動包装機適性に優れ、薄くても十分な強度を有し、収縮包装後も透明性光沢性に優れ、また低温ヒートシール性、低温収縮性、耐熱性によってスリーブ包装に特に適し、厚みが薄いために廃棄されるフィルムの量が減量できる集積包装用ポリエチレン系の熱収縮性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、フィルムの原料と層構成、及び延伸加工条件を特定することによって、このような要求特性を満足するフィルムが得られることを見出した。
即ち、本発明は、
(1)ポリエチレン系多層フィルムを二軸延伸によりMD及びTD共に延伸倍率3.0倍以上で延伸した後、熱ロール処理により60〜100℃の温度でMDに1.1〜3.0倍に延伸して得られる集積包装用ポリエチレン系熱収縮性多層フィルム、
(2) 前記ポリエチレン系多層フィルムが、少なくとも3層以上の多層であり、両表層のポリエチレン系樹脂の平均密度(a)と芯層のポリエチレン系樹脂の平均密度(b)が(a)≦(b)であることを特徴とする前記(1)記載の集積包装用ポリエチレン系熱収縮性多層フィルム、
(3) 前記ポリエチレン系多層フィルムが、少なくとも片方の表層が密度0.900〜0.920g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンからなり、芯層が密度0.915〜0.925g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン50〜100重量%と、密度0.930〜0.965g/cm3の高密度ポリエチレン0〜50重量%との組成物からなることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の集積包装用ポリエチレン系熱収縮性多層フィルム、
(4) 前記芯層に用いる高密度ポリエチレンが、メタロセン系触媒で重合して製造された、密度0.930〜0.950g/cm3の高密度ポリエチレンであることを特徴とする前記(1)〜(3)に記載の集積包装用ポリエチレン系熱収縮性多層フィルム、
(5) フィルム全体の厚みが40μm以下であることを特徴とする前記(1)〜(4)に記載の集積包装用ポリエチレン系熱収縮性多層フィルム、
(6) フィルムのヘーズが8%以下、グロスが100%以上であり、80℃の熱収縮率のMDが5〜20%且つTDが5%未満であり、80〜100℃のヒートシール強度が1N/cm以上であることを特徴とする前記(3)〜(5)のいずれか一つに記載の集積包装用ポリエチレン系熱収縮性多層フィルム、
(7)120℃の熱収縮率のMDとTDが共に50%以上であることを特徴とする前記(3)〜(6)のいずれか一つに記載の集積包装用ポリエチレン系熱収縮性多層フィルム、
(8)引張破断伸度がMDとTD共に300%以下であることを特徴とする前記(3)〜(7)のいずれか一つに記載の集積包装用ポリエチレン系熱収縮性多層フィルム、
(9)スリーブ方式の集積包装に用いることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の集積包装用ポリエチレン系熱収縮性多層フィルム、
に係るものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の集積包装用ポリエチレン系熱収縮フィルムは、自動包装機適性に優れ、集積包装において商品を十分な力で結束することができるため、荷崩れを起こさない。また、従来からスリーブ集積包装に使用されてきているインフレーション法で製造されたフィルムよりも、収縮包装後の透明性光沢性が良好であるためにディスプレイ効果が高いものである。また低温ヒートシール性、低温収縮性、耐熱性があるため、スリーブ包装にも適する。さらに、薄くても十分な強度を有するためフィルムを薄くすることができ、その結果、包装後に廃棄されるフィルムの量を減量することもできるため、環境に対する負荷が軽減されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、スリーブ包装の形態の1例である。
【図2】図2は、本発明のポリエチレン系熱収縮性多層フィルムの製造工程の1例であるチューブラー延伸工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を以下説明する。
本発明は、まず未延伸のポリオレフィン系多層フィルムについて二軸延伸を行う。二軸延伸のMDおよびTDの延伸倍率はそれぞれ3.0倍以上、好ましくは3.5倍以上、更に好ましくは4.0倍以上がよい。MD、TDそれぞれの延伸倍率が3.0倍未満であると、良好な透明性と光沢性、フィルム強度、及び十分な収縮性が得られない。特に、MDの収縮性については再延伸で再度付与することができるが、TDの収縮性については、延伸倍率が3.0倍未満になると幅方向の収縮が不足して、包装品にシワが残るなど十分な仕上がりが得られない。例えば、図1に示すようなスリーブ包装では、被包装物の幅よりフィルム幅を大きく包装するため、スリーブ箇所にフィルムが収縮せずに余り、大変見栄えが悪くなってしまう。
【0013】
次いで二軸延伸後のフィルムについて、MDに再延伸を行う。この再延伸は、熱ロールを用いて、原料の融点以下の温度である60〜100℃の温度範囲でMDに1.1〜3.0倍に延伸することによって、低温収縮性、特にMDの収縮性に優れ、集積包装における結束力に優れたフィルムが得られる。
【0014】
再延伸を行う温度は60〜100℃が好ましく、70〜90℃が更に好ましい。60℃未満の温度では熱ロール等のモーター負荷上昇で再延伸が困難となり、100℃を超える温度では、特に芯層の融点に近い温度で再延伸するとMDの収縮性が十分得られず、収縮力も小さくなるため十分な結束力が得られなくなってしまう。また、100℃を超える温度で緊張熱処理や弛緩処理の後MDに延伸を行っても、二軸延伸で付与したMDとTDの延伸配向が完全に緩和してしまって、耐引き裂き性などの強度が著しく低下してしまうとともに、TDの収縮がなくなって結束力が不足する。
【0015】
再延伸の倍率は、1.1〜3.0倍が好ましく、1.2〜2.0倍が更に好ましい。再延伸の倍率が1.1倍未満の場合集積包装時の結束力が不足する。再延伸倍率が3.0倍を超える場合は、熱ロール上のフィルム切れ防止やロールモーター負荷上昇を防止するために熱ロール温度を高く設定しなければならず、本発明の効果を失ってしまう。
【0016】
本発明に用いる原料は、ポリエチレン系の原料であれば耐引き裂き性等十分な強度を有し、再延伸によってMDの収縮性と結束力に優れる集積包装用フィルムを得ることができる。
【0017】
特にスリーブ包装を行う場合は、低温シール性と耐熱性の両立が必要であり、ポリエチレン系フィルムの層構成を特定するとこれらの要求特性を満足するフィルムが得られる。即ち、少なくとも3層以上の多層であり、両表層のポリエチレン系樹脂の平均密度(a)と芯層のポリエチレン系樹脂の平均密度(b)が(a)≦(b)であることを特徴とする集積包装用熱収縮性フィルムである。
図1のような包装形態の場合、収縮トンネル内で、先に底面がシールされ、その後フィルムが収縮することが望ましいため、表層のポリエチレン系樹脂の平均密度が芯層のポリエチレン系樹脂の平均密度よりも低い、或いは表層のポリエチレン系樹脂の融点が芯層のポリエチレン系樹脂の融点よりも低いことが必要である。表層のポリエチレン系樹脂の平均密度が芯層のポリエチレン系樹脂の平均密度よりも高くなると、底面がシールされないまま収縮してしまうため、特に軽量の被包装物の場合には底面のフィルムの重なりがなくなって、収縮包装できなくなるからである。
【0018】
更に、特定のポリエチレン系樹脂を用いると、低温シール性と耐熱性が両立すると供に、低温収縮性と仕上がり性を満足するフィルムが得られやすい。即ち、少なくとも片方の表層が密度0.900〜0.920g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンからなり、芯層が密度0.915〜0.925g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン50〜100重量%と、密度0.930〜0.965g/cm3の高密度ポリエチレン0〜50重量%との組成物からなることを特徴とする集積包装用熱収縮性フィルムである。
【0019】
表層の樹脂は、低温シール性を得る目的では高圧法低密度ポリエチレンでも良いが、フィルムの強度や透明性から直鎖状低密度ポリエチレンが好ましく、更には低温シール性やホットタック性、耐ブロッキング性等が両立するメタロセン系触媒の直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、密度0.900〜0.920g/cm3が好ましく、更には密度0.905〜0.915g/cm3がより好ましい。密度0.900g/cm3未満では、原料ペレットやフィルム状態でのブロッキングが著しくなって製造工程におけるトラブルの要因となりやすく、0.920g/cm3超では、スリーブ集積包装の際にフィルムのシール温度域が収縮温度域よりも高温側になって、シールができていないまま収縮するため集積包装ができなくなってしまうことがある。
【0020】
芯層の樹脂は直鎖状低密度ポリエチレン、もしくは直鎖状低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンの混合物が好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンの密度は0.915〜0.925g/cm3が好ましい。密度0.915g/cm3未満ではフィルム全体の耐熱性が不足するため、収縮包装の際の収縮トンネル内でフィルムが白化や溶融穴開き状態になりやすく、密度0.925g/cm3超では低温収縮性も得られにくくなって仕上がり性が低下する。高密度ポリエチレンの密度は0.930〜0.965g/cm3が好ましく、更には0.930〜0.950g/cm3がより好ましい。高密度ポリエチレンは耐熱性に向上やフィルムの伸び抑制するために混合するが、密度0.930g/cm3未満では耐熱性向上や伸び抑制の効果が得られにくく、密度0.965g/cm3超ではフィルムの耐引裂性の低下や収縮温度域が高温側になりすぎてしまう。
【0021】
直鎖状低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンを混合する場合、直鎖状低密度ポリエチレン50〜100重量%と高密度ポリエチレン0〜50重量%の混合物が好ましい。高密度ポリエチレンが50wt%超混合されるとフィルムの耐引裂性が著しく低下し、収縮温度域が高温側になりすぎて美麗な収縮包装体が得られにくくなる。
【0022】
更に、高密度ポリエチレンがメタロセン系触媒で重合して製造された密度0.930〜0.950g/cm3の場合、従来のチーグラー系やフィリップス系触媒で重合された高密度ポリエチレンを用いた場合に比べて、引裂強度や衝撃強度等が高く、重量のある内容物の包装に適するため、更に好ましい。
【0023】
尚、これらのポリエチレン系樹脂には必要に応じて滑剤、アンチブロッキング剤、粘着性付与剤、帯電防止剤、防曇剤等の添加剤を必要に応じて加えてもなんらさしつかえない。
【0024】
本発明における二軸延伸法とロール再延伸法について、以下に詳細に説明するが、フィルムを製造する際の二軸延伸は公知の方法で行うことができ、本報ではチューブラー延伸法にて具体的に説明する。
【0025】
直鎖状低密度ポリエチレンが両表層、直鎖状低密度ポリエチレン、若しくは直鎖状低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンの混合物が芯層となるように3台の押出機により溶融混練し、三層環状ダイより管状に共押出し、延伸することなく一旦急冷固化してチューブ状未延伸フィルムを作製する。得られたチューブ状未延伸フィルムを例えば図2で示すようなチューブラー延伸装置に供給し、高度な配向が可能な温度範囲、例えば芯層の融点以下10℃、好ましくは融点以下15℃よりも低い温度で、2つのニップロール間の周速比でMDに延伸すると同時に、チューブ内部にガス圧を適用して膨脹させてTDに延伸することにより同時二軸配向を起こさせる。延伸倍率は、優れた強度、収縮率などの物性を得るためにはMDとTD共に3.0倍以上、好ましくは4.0倍以上、更に好ましくは4.5倍以上に延伸するのが好適である。
【0026】
チューブラー延伸工程の後に、60〜100℃の加温ロールと20〜40℃の冷却ロール間にてMDに1.1〜3.0倍に延伸し、その後アニーリングを行う。加温ロールと冷却ロールの組み合わせは1対に限らず、2対以上になってもよい。製品厚みは、チューブラー延伸やロール再延伸の延伸倍率を考慮して、チューブ状未延伸フィルムの厚みで調整され、厚み40μm以下にする。本発明の効果を十分に得るには10μm以上40μm以下、更に好ましくは15μm以上35μm以下が好ましい。
【0027】
本発明のフィルムは、ヘーズが8%以下、グロスが100%以上であり、80℃の熱収縮率のMDが5〜20%且つTDが5%未満であり、80〜100℃のヒートシール強度が1N/cm以上であることが特徴である。原料の融点よりも低い温度で延伸されるため良好な透明性及び光沢性が得られ、従来のインフレーション法で製造されたフィルムより優位となる。
【0028】
熱収縮率は、芯層原料の密度や融点、チューブラー延伸やロール再延伸の温度と延伸倍率によって調整されるが、MD再延伸温度を60〜100℃でMD延伸倍率を1.1〜3.0倍にすることによって、80℃の熱収縮率のMDが5〜15%且つTDが5%未満のアンバランスなフィルムが得られ、MDに結束性とタイト感がある収縮が可能となり、同時にTDに過剰収縮がないため、集積包装、特にスリーブ包装に好適なフィルムが得られるようになる。更に、例えば図1に示すようなスリーブ包装では、スリーブ箇所にフィルムが収縮せずに余り、大変見栄えが悪くなってしまうため、120℃の熱収縮率のMDとTDが共に50%以上であることが好ましい。
【0029】
ヒートシール温度は、主として表層の原料の密度や融点によって調整され、80〜100℃のいずれかの温度以上でヒートシール強度が1N/cm以上になることが必要である。前述したように図1に示したスリーブ包装を行う場合、収縮前に底面のシール強度が十分になった状態で収縮が開始するので、綺麗な収縮包装品が得られるようになる。反対に100℃を超えた温度でヒートシール強度が1N/cm以上になるような場合は、底面のシールが完成しない状態でフィルムが大きく収縮するため、底面の2枚のフィルムが離れて収縮包装ができない、或いは、底面のシール強度が不十分な状態となって、包装品を持ち上げた際に底面から被包装物が落下する、などの不具合が発生する。
【0030】
更に本発明のフィルムは、引張破断伸度がMDとTD共に300%以下であることが特徴である。例えば、2リットルの飲料ペットボトル6本をスリーブ包装した後、フィルムに指をかけてこれを持ち上げようとした場合、フィルムが伸びてペットボトル同士に隙間ができ、フィルム内部からペットボトルが抜け出てしまうことある。この現象を防止するため、包装に用いるフィルムは、MDとTDの引張破断伸度が共に300%以下でなければならない。
【実施例】
【0031】
以下に、本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明及び実施例における機械的性質及び物理的性質は以下の方法によって測定した。
【0032】
<ヘーズ> JIS K 7105に準拠して、フィルムの透明性について測定した。
【0033】
<グロス> JIS K 7105に準拠して、フィルムの光沢性について測定した。
【0034】
<収縮率> JIS Z1709に準拠して、フィルムのMD及びTDについて測定した。
【0035】
<ヒートシール強度> 二枚に重ねたフィルムを、温度80℃、90℃、100℃にそれぞれ温調された上下2つの幅10mmの金属製ダイで、圧力1kgf/cm2、シール時間1.0秒でシールする。その後、フィルムを15mm幅に切り出して、シール部を剥離するように引っ張り試験機つかみ器具に装着し、シール強度をJIS Z 1707に準拠して測定した。
【0036】
<引張破断伸度> JIS Z 1707に準拠して、フィルムのMD及びTDについて測定した。
【0037】
<2%モジュラスの値> JIS K 7127に準拠し、測定のつかみ間隔を100mmとして、フィルムのMD及びTDについて測定し、伸度2%の時の値を算出した。
【0038】
<スリーブ包装時のヒートシール性> シールの状態を目視で評価。更に1.5mの高さから包装体を落下させた後のシール部の状態を評価した。
○:全面的にシールされていて、シール部での破袋無し。
△:一部シールされていない箇所があるが、シール部での破袋無し。
×:シール部での破袋有り。
【0039】
<スリーブ包装時の耐熱性> 加熱時にフィルムが溶融のため白化しているかどうかを目視で判断した。
○:白化無し。
△:全体的に白く曇ったように見える。
×:局部的に著しく白化が有り、フィルム強度が劣化若しくは穴が開いている。
【0040】
<スリーブ包装時の仕上がり> 包装後のスリーブ面の仕上がり状態を目視で評価した。
○:良好
△:スリーブ面以外の箇所に細かなシワが見られる。
×:スリーブ面に皺やめくれが有る。
【0041】
<スリーブ包装時の結束力> 包装後の被包装物の結束状態で評価した。
○:良好。
△:ゆるみ小。
×:ゆるみ大。
【0042】
また、実施例及び比較例に用いた原料種は、次の通りである。
LL1:メタロセン系触媒で重合された、C6コモノマーを有する直鎖状低密度ポリエチレンであり、密度は0.913g/cm3
LL2:チーグラー系触媒で重合された、C6コモノマーを有する直鎖状低密度ポリエチレンであり、密度0.920g/cm3
LL3:チーグラー系触媒で重合された、C8コモノマーを有する直鎖状低密度ポリエチレンであり、密度0.920g/cm3
LL4:メタロセン系触媒で重合された、C6コモノマーを有する直鎖状低密度ポリエチレンであり、密度0.905g/cm3
LL5:メタロセン系触媒で重合された、C6コモノマーを有する直鎖状低密度ポリエチレンであり、密度0.805g/cm3
LL6:チーグラー系触媒で重合された、C6コモノマーを有する直鎖状低密度ポリエチレンであり、密度0.925g/cm3
LL7:チーグラー系触媒で重合された、C6コモノマーを有する直鎖状低密度ポリエチレンであり、密度0.930g/cm3
HD1:メタロセン系触媒で重合された高密度ポリエチレンであり、密度0.945g/cm3
HD2:チーグラー系触媒で重合された高密度ポリエチレンであり、密度0.965g/cm3
HD3:メタロセン系触媒で重合された高密度ポリエチレンであり、密度0.935g/cm3
【0043】
<実施例1>
表1に示すように、密度0.805g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を両表層とし、密度0.920g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を芯層として3台の押出機(芯層用、最内層用、最外層用)でそれぞれ170℃〜240℃にて溶融混練し、全層の厚みに対する芯層の厚みの割合が80%になるように各押出機の押出量を設定し、240℃に保った3層環状ダイスより下向きに共押出した。形成された3層構成チューブ状溶融樹脂を、内側は冷却水が循環している円筒状冷却マンドレルの外表面を摺動させながら、外側は水槽を通すことにより冷却して引き取り、未延伸フィルムを得た。最終的に得られるフィルムの厚みは25μmになるように、押出機のスクリュー回転数及び引き取り速度を調整することにより行った。このチューブ状未延伸フィルムを図2に示したチューブラー二軸延伸装置に導き、95〜105℃でMD4.5倍にTD4.0倍に延伸した後、40℃以下まで冷却し、2つに折りたたんだ。次いでこの延伸フィルムを上下段1枚に切り開いて上限段の熱ロール装置に導き、100℃加温ロールと30℃の冷却ロールの2つのロール間で3.0倍に延伸を行った後、更に30〜70℃に適宜調整された熱ロールで数%程度の弛緩処理を施して、上下段それぞれで1本のロールに巻取った。延伸中の延伸バブルの安定性は良好で、延伸点の上下動や延伸チューブの揺動もなく、又、ネッキングなどの不均一延伸状態も観察されなかった。得られた延伸フィルムの特性は表1に示したように、優れた透明性と光沢性、低温収縮性を有し、特に70℃でもヒートシール強度が1N/cm以上で、極めて低温シール性に優れるものであった。このフィルムで、集積用スリーブ包装機にて500ml飲料缶6本を図1に示した包装形態で集積包装した結果、底シールが低温ででき、破袋やフィルムの白化もなく、収縮トンネル温度も比較的低温側で十分な収縮仕上り状態であった。収縮包装品を上から手で押さえて前後左右に揺らしても6本の缶に隙間ができることはなかった。
【0044】
<実施例2>
表1に示すように、密度0.925g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を両表層とし、密度0.920g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を芯層として3台の押出機(芯層用、最内層用、最外層用)でそれぞれ170℃〜240℃にて溶融混練し、全層の厚みに対する芯層の厚みの割合が80%になるように各押出機の押出量を設定し、240℃に保った3層環状ダイスより下向きに共押出した。形成された3層構成チューブ状溶融樹脂を、内側は冷却水が循環している円筒状冷却マンドレルの外表面を摺動させながら、外側は水槽を通すことにより冷却して引き取り、未延伸フィルムを得た。最終的に得られるフィルムの厚みは25μmになるように、押出機のスクリュー回転数及び引き取り速度を調整することにより行った。このチューブ状未延伸フィルムを図2に示したチューブラー二軸延伸装置に導き、95〜105℃でMD4.5倍にTD4.0倍に延伸した後、40℃以下まで冷却し、2つに折りたたんだ。次いでこの延伸フィルムを熱ロール装置に導き、75℃加温ロールと30℃の冷却ロールの2つのロール間で1.2倍に延伸を行った後、更に30〜70℃に適宜調整された熱ロールで数%程度の弛緩処理を施して、上下段1枚に切り開いてそれぞれ1本のロールに巻取った。延伸中の延伸バブルの安定性は良好で、延伸点の上下動や延伸チューブの揺動もなく、又、ネッキングなどの不均一延伸状態も観察されなかった。得られた延伸フィルムの特性は表1に示したように、優れた透明性と光沢性を有するものであった。このフィルムで、集積用スリーブ包装機にて350ml飲料缶6本を図1に示した包装形態で集積包装した結果、収縮トンネル内の底シールと収縮状態を観察すると、収縮しながら底シールされる状況であったが、破袋や白化などなく、十分に仕上がった。
【0045】
<実施例3>
表1に示す樹脂構成にて実施例2と同様の方法で熱収縮性フィルムを作製した。優れた透明性と光沢性を有したものであった。このフィルムで、集積用スリーブ包装機にて500ml飲料缶6本を図1に示した包装形態で集積包装した結果、底シールが低温ででき、破袋やフィルムの白化もなく、収縮トンネル温度はやや高温側であったがフィルムの白化等なく、十分な仕上り状態であった。収縮包装品を上から手で押さえて前後左右に揺らしても6本の缶に隙間ができることはなかった。
【0046】
<実施例4>
表1に示す樹脂構成にて実施例2と同様の方法で熱収縮性フィルムを作製した。このフィルムで、集積用スリーブ包装機にて500ml飲料缶6本を図1に示した包装形態で集積包装した結果、低温シール性であり、特に低温収縮性に優れているため収縮トンネルの低温域で良好な仕上がり状態が得られた。
【0047】
<実施例5>
表1に示す樹脂構成にて実施例2と同様の方法で熱収縮性フィルムを作製した。このフィルムで、集積用スリーブ包装機にてティッシュケース5箱を積み重ねた状態で集積包装した結果、底シールが低温ででき、破袋やフィルムの白化もなく、収縮トンネル温度はやや高温側であったがフィルムの白化等なく、十分な仕上り状態であった。
【0048】
<実施例6>
表1に示す樹脂構成にて実施例2と同様の方法で熱収縮性フィルムを作製した。得られた延伸フィルムは透明性、低温シール性、低温収縮性、耐熱性に優れたものであった。このフィルムで、集積用スリーブ包装機にて2000ml飲料ペットボトル6本を図1に示した包装形態で集積包装する際に収縮トンネル内を観察すると、底面がシールされた後に収縮が開始する状態であった。シール部の破袋やフィルムの白化もなく、スリーブ面の仕上がりが綺麗になる十分な収縮トンネル温度範囲を有していて、収縮包装品を上から手で押さえて前後左右に揺らしても6本のペットボトルに隙間ができることがなく、スリーブ面上部のフィルムに指をかけて持ち上げてもフィルムが伸びるようなことがなかった。また、集積包装品を4個ずつパレットに段積みして輸送後、フィルムにスリキズが入った状態で、再度持ち上げてもキズからフィルムが破れるようなことはなかった。
【0049】
<実施例7>
実施例2と同様の方法で、表1に示す樹脂構成、厚み、延伸倍率にて熱収縮性フィルムを作製した。得られた延伸フィルムは透明性、低温シール性、低温収縮性、耐熱性に優れたものであった。このフィルムで、集積用スリーブ包装機にて500ml飲料缶6本を図1に示した包装形態で集積包装した結果、シール部の破袋やフィルムの白化もなく、スリーブ面の仕上がりが綺麗になる十分な収縮トンネル温度範囲を有していた。収縮包装品のスリーブ面上部のフィルムに指をかけて持ち上げてもフィルムが伸びるようなことがなく、更に1.5mの高さから数回落下させてもフィルムが破れることなく、6本の缶に隙間もできなかった。また、集積包装品を4個ダンボール入れて輸送後、フィルムにスリキズが入った状態で、再度持ち上げてもキズからフィルムが破れるようなことはなかった。
【0050】
<実施例8>
実施例1と同様の方法で、表1に示す樹脂構成、厚み、延伸倍率にて熱収縮性フィルムを作製した。得られた延伸フィルムの特性は表1に示したように、優れた透明性と光沢性、低温収縮性を有し、特に80℃でもヒートシール強度が1N/cm以上で、極めて低温シール性に優れるものであった。このフィルムで、集積用スリーブ包装機にて500ml飲料缶6本を図1に示した包装形態で集積包装する際に収縮トンネル内を観察すると、底面がシールされた後に収縮が開始する状態であった。シール部の破袋やフィルムの白化もなく、スリーブ面の仕上がりが綺麗になる十分な収縮トンネル温度範囲を有していて、収縮包装品を上から手で押さえて前後左右に揺らしても6本の缶に隙間ができることがなく、スリーブ面上部のフィルムに指をかけて持ち上げてもフィルムが伸びるようなことがなかった。また、集積包装品を4個ダンボール入れて輸送後、フィルムにスリキズが入った状態で、再度持ち上げてもキズからフィルムが破れるようなことはなかった。
【0051】
<実施例9>
表1に示すような樹脂構成の未延伸フィルムを実施例1と同様にして得た。この未延伸フィルムを図2に示したチューブラー二軸延伸装置に導き、95〜105℃でMD3.3倍にTD3.0倍に延伸した後、実施例2と同様に再延伸等を行って、延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの特性は表1に示したように、優れた透明性と光沢性、低温収縮性を有したものであった。このフィルムで、集積用スリーブ包装機にて500ml飲料缶6本を図1に示した包装形態で集積包装する際に収縮トンネル内を観察すると、底面がシールされた後に収縮が開始する状態であった。シール部の破袋がなく、スリーブ面の仕上がりが綺麗になる十分な収縮トンネル温度範囲を有していて、特に収縮トンネルを高温にしてもフィルムが白化するようなことはなかった。収縮包装品を上から手で押さえて前後左右に揺らしても6本の缶に隙間ができることがなく、スリーブ面上部のフィルムに指をかけて持ち上げてもフィルムが伸びるようなことがなかった。
【0052】
<実施例10>
実施例2と同様の方法で、表1に示す樹脂構成、厚み、延伸倍率にて熱収縮性フィルムを作製した。得られた延伸フィルムの特性は表1に示したように、優れた透明性と光沢性、低温収縮性を有したものであった。このフィルムで、集積用スリーブ包装機にてティッシュケース5箱を図1に示した包装形態で集積包装する際に収縮トンネル内を観察すると、底面がシールされた後に収縮が開始する状態であった。シール部の破袋がなく、スリーブ面の仕上がりが綺麗になる十分な収縮トンネル温度範囲を有していて、特に収縮トンネルを高温にしてもフィルムが白化するようなことはなかった。収縮包装品を上から手で押さえて前後左右に揺らしても5箱の重ねた面が大きくずれることがなかった。また、集積包装品を8個ずつダンボール詰めして輸送後、フィルムにスリキズが入った状態で、再度持ち上げてもキズからフィルムが破れるようなことはなかった。
【0053】
【表1】

【0054】
<比較例1>
表2に示すような樹脂構成の未延伸フィルムを実施例1と同様にして得た。この未延伸フィルムを図2に示したチューブラー二軸延伸装置に導き、95〜105℃でMD2.7倍にTD2.5倍に延伸した後、実施例2と同様に再延伸等を行って、延伸フィルムを得た。延伸中の延伸バブルの安定性は良好で、延伸点の上下動や延伸チューブの揺動もなく、又、ネッキングなどの不均一延伸状態も観察されなかった。得られた延伸フィルムの特性は表2に示したように、優れた透明性と光沢性を有するものであったが、TDの120℃の収縮率が小さいものであった。このフィルムで、集積用スリーブ包装機にて350ml飲料缶6本を図1に示した包装形態で集積包装した結果、シールは十分にできていたが、収縮が不十分で全体にシワが多く、特にスリーブ箇所にフィルムが収縮せずに余った状態になった。収縮包装品を上から手で押さえて前後左右に揺らすと、徐々に6本の缶に隙間ができ、タイト感がなくなってしまった。
【0055】
<比較例2>
表2に示すような樹脂構成の未延伸フィルムを実施例1と同様にして得た。このチューブ状未延伸フィルムを図2に示したチューブラー二軸延伸装置に導き、95〜105℃でMD4.5倍にTD4.0倍に延伸した後、40℃以下まで冷却し、2つに折りたたんだ。次いでこの延伸フィルムを上下段1枚に切り開いて上限段の熱ロール装置に導き、芯層の樹脂の融点より5℃低い115℃の加温ロールと30℃の冷却ロールの2つのロール間で1.2倍に延伸を行った後、更に30〜70℃に適宜調整された熱ロールで数%程度の弛緩処理を施して、上下段それぞれで1本のロールに巻取った。延伸中の延伸バブルの安定性は良好であったが、熱処理ロールでフィルム両端部の収縮が著しく、最終製品の取り幅が狭くなった。得られた延伸フィルムの特性は表2に示したように、透明性と光沢性に欠け、120℃の収縮率が小さいものであった。このフィルムで、集積用スリーブ包装機にて350ml飲料缶6本を図1に示した包装形態で集積包装した結果、シールは十分にできていたが、収縮が不十分で全体にシワが多く、タイト感がない仕上がり状態になってしまった。スリーブ面上部のフィルムに指をかけて持ち上げると、フィルムが伸びて、その間から飲料缶が抜け落ちてしまった。
【0056】
<比較例3>
表2に示すような樹脂構成の未延伸フィルムを実施例1と同様にして得た。このチューブ状未延伸フィルムを図2に示したチューブラー二軸延伸装置に導き、95〜105℃でMD4.5倍にTD4.0倍に延伸した後、40℃以下まで冷却し、2つに折りたたんだ。次いでこの延伸フィルムを上下段1枚に切り開いて上限段の熱ロール装置に導き、芯層の樹脂の融点より5℃低い115℃の加温ロールと30℃の冷却ロールの2つのロール間で緊張熱処理を行い、次いで75℃加温ロールと30℃の冷却ロールの2つのロール間で1.2倍に延伸を行った後、更に30〜70℃に適宜調整された熱ロールで数%程度の弛緩処理を施して、上下段それぞれで1本のロールに巻取った。得られた延伸フィルムの特性は表2に示したように、透明性と光沢性に欠け、120℃の収縮率が小さいものであった。このフィルムで、集積用スリーブ包装機にて350ml飲料缶6本を図1に示した包装形態で集積包装した結果、シールは十分にできていたが、収縮が不十分で全体にシワが多く、タイト感がない仕上がり状態になってしまった。スリーブ面上部のフィルムに指をかけて持ち上げると、フィルムがMDに裂けてしまい、飲料缶が抜け落ちてしまった。
【0057】
<比較例4>
表2に示すような樹脂構成の未延伸フィルムを実施例1と同様にして得た。このチューブ状未延伸フィルムを図2に示したチューブラー二軸延伸装置に導き、95〜105℃でMD4.5倍にTD4.0倍に延伸した後、40℃以下まで冷却し、2つに折りたたんだ。次いでこの延伸フィルムを上下段1枚に切り開いて上限段の熱ロール装置に導き、再延伸を行わずに30〜85℃に適宜調整された熱ロールで数%程度の弛緩処理を施して、上下段それぞれで1本のロールに巻取った。得られた延伸フィルムの特性は表2に示したように、透明性と光沢性は良好であったが、80℃の収縮率がMDとTD共に大きいものであった。このフィルムで、集積用スリーブ包装機にて350ml飲料缶6本を図1に示した包装形態で集積包装した結果、シールは十分にできていたが、幅方向の収縮が大きくなりすぎて飲料缶6本を全て覆うことができなかった。このフィルムに印刷を施し、フィルム幅を大きくして同様のスリーブ包装を行うと、飲料缶6本を全て覆うことはできるようになったが、印刷した図柄が大きく歪んでしまった。
【0058】
<比較例5>
表2に示すような樹脂構成の未延伸フィルムを実施例1と同様にして得た。このチューブ状未延伸フィルムを図2に示したチューブラー二軸延伸装置に導き、95〜105℃でMD4.5倍にTD4.0倍に延伸した後、40℃以下まで冷却し、2つに折りたたんだ。次いでこの延伸フィルムを熱ロール装置に導き、100℃の加温ロールと30℃の冷却ロールの2つのロール間で3.5倍に延伸を行うべく徐々に倍率を上げると、加温ロール及び冷却ロールの駆動モーターの負荷電流が徐々に上昇し、3.5倍まで延伸することができなかった。
【0059】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の集積包装用ポリエチレン系熱収縮性多層フィルムは、スリーブ収縮包装、オーバーラップ収縮包装といった集積包装に用いることができる。特に缶ビール、缶ジュース、瓶詰め、清涼飲料水などの重量物のスリーブ包装にも好適に用いうるものである。
【符号の説明】
【0061】
1 スリーブ形態包装時のフィルム
2 スリーブ形態包装時の被包装物(飲料缶等)
3 スリーブ形態包装時のフィルム幅
4 チューブラー延伸装置のニップロール
5 チューブラー延伸装置の予熱ヒーター
6 チューブラー延伸装置の主熱ヒーター
7 チューブラー延伸装置の冷却エアーリング
8 チューブラー延伸時のフィルム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系多層フィルムを二軸延伸によりMD及びTD共に延伸倍率3.0倍以上で延伸した後、熱ロール処理により60〜100℃の温度でMDに1.1〜3.0倍に延伸して得られる集積包装用ポリエチレン系熱収縮性多層フィルム。
【請求項2】
前記ポリエチレン系多層フィルムが、少なくとも3層以上の多層であり、両表層のポリエチレン系樹脂の平均密度(a)と芯層のポリエチレン系樹脂の平均密度(b)が(a)≦(b)であることを特徴とする請求項1記載の集積包装用ポリエチレン系熱収縮性多層フィルム。
【請求項3】
前記ポリエチレン系多層フィルムが、少なくとも片方の表層が密度0.900〜0.920g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンからなり、芯層が密度0.915〜0.925g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン50〜100重量%と、密度0.930〜0.965g/cm3の高密度ポリエチレン0〜50重量%との組成物からなることを特徴とする請求項1または2に記載の集積包装用ポリエチレン系熱収縮性多層フィルム。
【請求項4】
前記芯層に用いる高密度ポリエチレンが、メタロセン系触媒で重合して製造された、密度0.930〜0.950g/cm3の高密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1〜3に記載の集積包装用ポリエチレン系熱収縮性多層フィルム。
【請求項5】
フィルム全体の厚みが40μm以下であることを特徴とする請求項1〜4に記載の集積包装用ポリエチレン系熱収縮性多層フィルム。
【請求項6】
フィルムのヘーズが8%以下、グロスが100%以上であり、80℃の熱収縮率のMDが5〜20%且つTDが5%未満であり、80〜100℃のヒートシール強度が1N/cm以上であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の集積包装用ポリエチレン系熱収縮性多層フィルム。
【請求項7】
120℃の熱収縮率のMDとTDが共に50%以上であることを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の集積包装用ポリエチレン系熱収縮性多層フィルム。
【請求項8】
引張破断伸度がMDとTD共に300%以下であることを特徴とする請求項3〜7のいずれか一項に記載の集積包装用ポリエチレン系熱収縮性多層フィルム。
【請求項9】
スリーブ方式の集積包装に用いることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の集積包装用ポリエチレン系熱収縮性多層フィルム。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−116033(P2011−116033A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275512(P2009−275512)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000142252)株式会社興人 (182)
【Fターム(参考)】