説明

集積化したマイクロウェルアレイを用いた単離技術

【課題】生物学的材料を迅速に検出する。
【解決手段】(1)一端に試料液の供給部を有する流路に沿って多数のウェルを形成したマイクロウェルアレイの前記供給部に試料液を供給する工程、
(2)前記流路に前記供給部から試料液を流すことにより、前記ウェルを試料液で満たす工程、
(3)前記ウェル中に存在する生物学的材料を検出する工程
を含むことを特徴とする、試料液中に存在する生物学的材料を検出する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品検査、臨床検査、水質検査におけるハイスループットスクリーニングに関し、詳しくは集積化したマイクロウェルアレイを用いた試料中の微小材料の単離技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の細胞単離技術として、セルソーター、マイクロピペット、希釈、スピンコートを用いる方法が知られている。また、周期的配置のマイクロウェルアレイにより、ペプチドを結合したビーズをポアソン分布で単離する方法が知られている(非特許文献1)
さらに、特許文献1は、マイクロウェルアレイチップを使用してリンパ球を検出する技術を開示している。
【0003】
しかし、これらの方法では、検体中に存在する多数の細胞、微生物などを効率的に分離、計測することはできなかった。
【特許文献1】特許第3723882号
【非特許文献1】J.Biomol.Screen.(1998) vol.3, pp55-62
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、食品や、血液などの生体サンプル、環境中に含まれる細菌、ウイルス、細胞などの生物学的材料を迅速に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の生物学的材料を簡便かつ迅速に単離、測定する方法を提供する。
1. (1)一端に試料液の供給部を有する流路に沿って多数のウェルを形成したマイクロウェルアレイの前記供給部に試料液を供給する工程、
(2)前記流路に前記供給部から試料液を流すことにより、前記ウェルを試料液で満たす工程、
(3)前記ウェル中に存在する生物学的材料を検出する工程
を含むことを特徴とする、試料液中に存在する生物学的材料を検出する方法。
2. 前記生物学的材料が、細菌、細胞、真菌、胞子、ウイルス、蛋白質または核酸である、項1に記載の方法
3. 前記供給部から前記排出部へ、遠心力、毛細管力または重力落差法により試料液を流すことを特徴とする項1または2に記載の方法。
4. 各ウェル中の生物学的材料の数が1個もしくは0個である、項1〜3のいずれかに記載の方法。
5. 生物学的材料が細菌、細胞、真菌、胞子、ウイルスまたは核酸であり、PCR法を用いて生物学的材料の検出を行う、項1〜4のいずれかに記載の方法。
6. マイクロウェルアレイであって、中心側から周辺側に形成された流路、該流路に沿って形成された多数のウェル、流路の中心側端部に形成された試料液の供給部を有し、前記流路およびウェルがマイクロアレイ本体の内部に形成され、かつ、前記流路は試料液供給部から周辺側に向けて流れる方向が連続的または非連続的に変化する、マイクロウェルアレイ。
7. 前記供給部および流路が複数形成されている、項6に記載のマイクロウェルアレイ。
8. 流路の周辺側端部に試料液の排出部が形成されている、項6または7に記載のマイクロウェルアレイ。
9. ディスク状の形状を有する、項6〜8のいずれかに記載のマイクロウェルアレイ。
10. 前記流路が渦巻状の形状を有する項6〜9のいずれかに記載のマイクロウェルアレイ。
【発明の効果】
【0006】
マイクロウェルアレイに分画化するだけで大量の細胞等の生物学的材料を同時に単離できるため、高価な装置が不要で、操作が容易であり、非常に迅速に定量的もしくは定性的評価行うことが出来る。
【0007】
また、遠心力などを利用して微小流路内を流すだけで細胞を単離出来る方法は、周期型マイクロウェルアレイのように最後に蓋をする必要がなく、リークやコンタミ、気泡の混入の恐れがなく実用性が高い。
【0008】
本発明によれば、細胞や細菌・ウイルス含有試料やDNA・タンパク質等を含む溶液を、マイクロウェルのアレイを用いて大多数に区画化して分配することにより、一細胞ごと、一分子ごとの情報を個別に得、分類あるいは、定量的もしくは定性的評価を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書において、生物学的材料としては、細胞(動物、植物)、微生物(細菌、真菌(酵母を含む)、胞子など)、ウイルス、蛋白質、核酸(特にDNA) などが挙げられる。具体的には、食品中に含まれる微生物(大腸菌、食中毒菌など)、臨床検査(血液、血清、血漿、尿、唾液などに含まれる抗原、抗体、ウイルス、病原性の細菌や真菌、白血球、赤血球、蛋白質、マーカーなど)、水質検査(地下水、河川、湖沼、上水道、下水道、工場廃水、家庭排水など)などに適用できる。
【0010】
本発明では、試料中に存在する生物学的材料を簡便かつ迅速に単離する手段として、
(i) 微量の生物学的材料の溶液ないし懸濁液をマイクロウェルアレイ上に流しながら細かく分画化することにより、ポアソン分布に基づいて、細菌が各分画中に分配される方法を利用する。特に、細分化の程度に伴って、生物学的材料、例えば細菌や細胞、ウイルス、蛋白質、核酸が重複して分配される分画の割合が減少するため、生物学的材料の有無に関する情報を量子化することができる。
(ii) (i)に基づいて生物学的材料を単離した後、生物学的材料が存在するマイクロウェル数を計測することにより、元の試料中に存在した生物学的材料の数を計数する、などの方法が挙げられる。
【0011】
生物学的材料がDNAまたはRNAを有する場合、試料中に存在する生物学的材料を簡便かつ迅速に単離する手段として、生物学的材料の懸濁液と標的生物学的材料同定用のPCR溶液またはRT−PCR溶液をマイクロウェルアレイで細分化することにより、ポアソン分布に基づいて、生物学的材料が各分画中に分配される方法を利用する。特に、細分化に伴って、生物学的材料が重複して分配される分画の割合が減少するため、生物学的材料の有無に関する情報を量子化できる。リアルタイムPCRによる標的DNAの検出により生物学的材料を含有するマイクロウェルを計数することにより、元の試料溶液中の生物学的材料(特に、細菌、細胞、ウイルス)の数を計数する。
【0012】
一つの流路に形成されるウェルの数は、10個以上、好ましくは100個以上、より好ましくは300個以上、特に500個以上である。一つの流路に形成されるウェルの上限は特に限定されないが、通常10000個程度またはそれ以下で十分である。
【0013】
本発明の流路は、試料液が流れる方向の異なるように形成される。試料液の流れる方向を変化させるために、流路は液の流れる方向が異なる複数のセグメントを有していてもよい。この場合、試料液の流れる方向は非連続的に変化する。隣接するセグメントは連続的に試料液の流れる方向を変えてもよく、各セグメント内は同一の方向に試料液が流れ、セグメント間に試料液の流れる方向を変えるための接続部が設けられていてもよい。遠心力により試料液を流すためには、隣接する流路のセグメントは、角度θをつけるのが好ましい。或いは、流路を渦巻状に形成した場合には、液の流れる方向は連続的に変化する(セグメントは存在しない)。渦巻状に形成する場合、同心円状に複数の流路を形成してもよく、1つの流路のみを形成してもよい。
【0014】
本発明の流路とウェルは、試料液が乾燥しないように、マイクロウェルアレイ本体の内部に形成され(アレイ本体で覆われ)ており、流路およびウェルへの試料液の供給は、外部とつながっている試料液の供給部から行われる。該供給部はマイクロウェルアレイの中心側にあるのが、遠心力により試料液を流路内で流すのに好ましい。流路の周辺側端部には、試料液を外部に排出するための排出部を設けるのが好ましい。
【0015】
流路に生物学的材料の溶液ないし懸濁液を流すために、遠心力、毛細管力、重力などを用いることができ、好ましくは、遠心力が用いられる。遠心力としては、例えば500〜7,000rpmで、1秒間〜3分間行えば、ウェルを生物学的材料の溶液ないし懸濁液で満たすことができる。
【0016】
本発明において、試料液の供給部には、一つの流路に形成されたウェルの10%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、特に90%以上が生物学的材料の溶液ないし懸濁液で満たされる量を供給するのが望ましい。試料液がウェルの総体積よりも過剰である場合、流路の他端に試料液の排出部を設け、この排出部に過剰な試料液をためることができる。あるいは、排出部からは過剰な試料液が流出するように構成しても良い。
【0017】
一つのマイクロウェルアレイに一つの流路のみを有していても良く、複数の流路を一つのマイクロウェルアレイに形成してもよい。複数の独立した流路を有する場合、多数のサンプルを同時に分析したり、或いは、希釈倍率の異なる一連の試料液を調製して該アレイで分析することができる。複数の独立した流路は対称位置に形成されるのが、1つのアレイに出来るだけ多くの流路を形成するために好ましい。
【0018】
マイクロウェルアレイ本体の素材としては、ポリマー、セラミック、ガラス、金属などの任意の素材であっても良いが、好ましくはポリマー、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)などのシロキサン類が挙げられる。該素材は、流路およびウェルの状況を肉眼的或いは光学的に観察するために透明であるのが好ましい。
【0019】
マイクロウェルアレイは、種々の形状をとることができ、例えばディスク状、三角形、四角形(例えば正方形)、正六角形、正八角形などの形状が挙げられ、好ましくはディスク状の形状が挙げられる。ディスク状の形状は、特に遠心力により試料液を流路に沿って流すのに好ましい。
【0020】
本発明のマイクロウェルアレイは、例えば流路とウェルのパターンを有するシートもしくはプレートと試料液の供給部を有する平坦なシートもしくはプレートを貼り合わせることにより製造することができる。試料液の供給部は、流路とウェルのパターンを有するシートもしくはプレートに形成されてもよい。また、流路とウェルのパターンを有する2枚のシートもしくはプレートを貼り合わせることにより、マイクロウェルアレイとしてもよい。流路とウェルのパターンを有するシートは、金型でプレスしたり、金型にポリマー等の流動性の素材を流し込むことで形成してもよく、厚膜のリソグラフィーにより凸型のパターンを形成し、該パターン上に流動性の素材を流し込んで形成してもよく、シートもしくはプレートに直接、機械加工やフォトリソグラフィーを用いたエッチングにより形成してもよい。
【0021】
生物学的材料の検出方法としては、標識抗体を用いて免疫学的に測定する方法、必要に応じて細胞、細菌、ウイルスなどを破砕後にPCRを用いる方法などが挙げられる。PCR法は、常法に従い行うことができる。
【0022】
以下、本発明の1つの実施形態を図面に基づいて説明する。図1に、本発明で使用する多数のウェルを形成したマイクロウェルアレイ1が示されている。このコンパクトディスク(CD)型流体デバイス(マイクロウェルアレイ)中央に生物学的材料の溶液/懸濁液を注入するための試料液の供給部5が形成され、該供給部5から試料液排出部6をつなぐ流路3に多数のウェル4が形成されている。ウェルは生物学的材料溶液/懸濁液が流路を流れるときに、該溶液/懸濁液で満たされるように形成される。1つのウェルは非常に少量(1 pL〜10 nL)の溶液/懸濁液で満たされるため、生物学的材料溶液/懸濁液を十分に希釈しておけば、一つのウェルに1つ以下の生物学的材料が含まれるようにすることができる。流路とウェルのデザインとしては、図1Bに示されるタイプ1、タイプ2、複合タイプが挙げられる。生物学的材料の溶液/懸濁液を流路に流した後は、オイルを流し、各ウェルをオイルで覆い、ウェルの乾燥を防止するのが好ましい。ウェル中の生物学的材料の検出は、標的生物学的材料同定用のPCR溶液をウェルに導入し、PCRを行うこと、蛍光標識された抗体(一次抗体、二次抗体)をウェルに導入することなどにより行うことができる。
【0023】
本発明の好ましい1つの実施形態において、CD型流体デバイスは、図1に示されるように生物学的材料の供給部と排出部、流路および多数のウェルからなる材料分離ユニットを複数有していても良く、例えば渦巻状の流路を有する一つの材料分離ユニットから構成されていてもよい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を図面の基づきより詳細に説明する。
実施例1
[ビーズの単離]
まず、ビーズを用いて、マイクロウェルアレイ型流路により、懸濁液の各粒子を単離出来るかについて検討した。
【0025】
マイクロウェルアレイ型流路の作製
流路の鋳型として、流路の逆転写パターンを作製した。シリコンウエハー上に、厚膜フォトレジスト(SU-8 50)をスピンコートし、65℃で5分、95℃で15分加熱後、流路と同等のパターンを描画したフォトマスクを介してUVを照射し、流路に該当する部分のみ光硬化させた。再度、65℃で2分、95℃で4分加熱後、現像液に浸し、流路の逆転写パターン以外の未重合の余分なレジストを除去した。エアーガンによる風乾後、この鋳型構造へpoly(dimethylsiloxane) (PDMS)のプレポリマー(ダウコーニング製シルガード184)を流し込み、熱硬化させることによりマイクロウェルアレイ型流路を形成した。また、流路の蓋として、シリコンウエハーを鋳型として同様の操作を行うことで、平滑なPDMSシートを作製した。試料液の供給部や排出部のみ貫通孔を形成した後、マイクロウェルアレイ型流路を有するPDMSシートと平滑なPDMSシートを、酸素プラズマ処理により貼り合わせ、閉じた流路構造を形成した。
【0026】
図1に示すとおり、マイクロウェルアレイ型流路はPDMSを用いて作製されており、直径10 cm、厚さ3 mmのディスク上に、幅200μm、深さ32μmの流路を複数、ディスクの中心から円周方向へ向けてジグザグに形成した。各流路には、幅400μm、長さ300μmのマイクロウェルを、流路の円周側の側面に房状に並んで、150μm程度の間隔で連続的に配置させた。各流路の両端には、直径2 mmのリザーバーを設け、溶液の注入及びエアベントとして使用した。特に、ディスク中央側のリザーバーと流路の接合部は、逆テーパー形状を持たせることにより、遠心力による注入時に完全に溶液が流入できるように作製した。
【0027】
ビーズ懸濁液の調製
直径3μmのラテックスビーズ懸濁液PolybeadDyed Red(PolyScience, USA)を水で希釈し、血球計算板(エルマ販売(株)、東京)で、約20,000個/mLの濃度であることを確認した。
【0028】
遠心力による送液
上記マイクロウェルアレイ型流路のディスク中央側の各リザーバーへ、上記ビーズ懸濁液1μLを添加した。流路表面のぬれ性によっては、毛細管力により一部の溶液が自動的に流路中へ流入するが、溶液を完全に送液させ、さらに、マイクロウェル以外の流路部分の溶液を排出させるために、遠心力を用いた送液を行った。具体的には、ビーズ懸濁液添加後のディスクをスピンコーター(共和理研社製K-359 S-1、東京)に固定し、3,000 rpmで30秒間回転させた。これにより、リザーバー中に溶液は残留しておらず、全ての流路中に溶液が送液され、さらに、房状に並んだ各マイクロウェル中に微少量ずつ溶液が分注されていることを確認した。このとき、各リザーバー中に保持されている溶液の体積は、約3.4〜3.6 nLと微量であるため、空気に触れたままでは、蒸発により次第に失われてしまうことが判明した。そこで、各マイクロウェル中に分注された溶液の蒸発を防ぐ目的で、フロリナートFC-40(住友スリーエム(株)、東京)3μLを、ディスクの回転後ただちに各流路の一方のリザーバーへ注入した。この際、毛細管力によりフロリナートが流路内へ自動的に流入するが、あらかじめ注入されていたビーズ懸濁液を押し出さずに、各マイクロウェル中に残したまま、最後まで流れきることを確認した。
【0029】
マイクロウェルアレイ型流路を用いたビーズの単離の確認
ビーズ懸濁液を分注後、各マイクロウェル中に含有するビーズの数を、オリンパス(株)(東京)の生物顕微鏡BH-2を介して、浜松フォトニクス(株)(浜松市)の生物顕微鏡画像高品位質観察システムARGUS-20により計測した。その結果を、図2にまとめる。角形のマイクロウェルでは、流路の上流と下流において、ビーズの単離の効率が異なっていた。これは、細菌懸濁液を流している間、角形のマイクロウェルでは直方体の角の部分に細菌が滞り易いためと考えられる。このことから、デッドボリュームの生じやすい直方体ではなく、流線が滑らかな曲面を有する半円型マイクロウェルが有用であることが明らかとなった。また、ビーズが分配されたマイクロウェルから算出した元のビーズ懸濁液の濃度は、血球計測板の結果と同等であることが確認できた。これにより、マイクロウェルアレイ型流路に流すだけの簡便な操作で、95%の効率でビーズを同時に単離し、濃度を計測できることを確認した。
【0030】
実施例2
[細菌の単離]
ビーズ懸濁液による結果に基づき、細菌の単離と計量を検討した。
【0031】
マイクロウェルアレイ型流路の作製
上記で使用した半円型マイクロウェルを配置したPDMS製マイクロウェルアレイ型流路を作製した。
【0032】
細菌懸濁液の調製
細菌としては、大腸菌とサルモネラ菌の2種類について、それぞれ単離の検討を行った。
大腸菌株DH5αの培養は、LB培地(水に対し1% Tryptone、1% yeast extract、0.5% NaClを溶解し、pH 7.5に調製後、滅菌して使用)を用いて、37℃、約12時間行った。
サルモネラ菌Salmonella choleraesuisの培養は、0.5% NaClのNUTRIENT BROTH培地(水に対し0.5% Peptone、0.3% Beef extract、0.5% NaClに調製後、滅菌して使用)を用いて、37℃、約12時間行った。
これらの培養液のODはおよそ1程度であることを確認し、10,000倍に希釈して使用した。
【0033】
遠心力による送液
上記マイクロウェルアレイ型流路のディスク中央側の各リザーバーへ、上記の希釈した細菌培養液1μLを添加した。流路表面のぬれ性によっては、毛細管力により一部の溶液が自動的に流路中へ流入するが、溶液を完全に送液させ、さらに、マイクロウェル以外の流路部分の溶液を排出させるために、スピンコーターに固定し、3,000 rpmで30秒間回転させ遠心力により送液を行った。各マイクロウェル中に分注された溶液の蒸発を防ぐ目的で、フロリナートFC-40(住友スリーエム(株)、東京)3μLを、ディスクの回転後ただちに各流路の一方のリザーバーへ注入し、流路中の空気を排出させた。
【0034】
マイクロウェルアレイ型流路を用いた細菌の単離の確認
細菌を分注後、各マイクロウェル中に含有する細菌数を、生物顕微鏡により観察し計測した。その結果を、図3にまとめる。細菌が分配されたマイクロウェルの割合から算出した元のビーズ懸濁液の濃度は、大腸菌が1.1×109 cells/ml、サルモネラが1.0×109 cells/mlであった。これは、血球計測板の結果と同等であることが確認できたことから、マイクロウェルアレイ型流路により迅速に、細菌懸濁液の濃度を計測できることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0035】
食品中の菌検査の公定法では、数日の時間を必要とするが、本発明の方法によれば、細菌数の迅速な定量が可能である。食品以外にも血液等の感染症診断や、バイオテロを含む環境評価への応用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】マイクロウェルアレイ型流路のデザイン1、デザイン2を示す。
【図2】マイクロウェルアレイ型流路を用いたポアソン分布に基づくビーズの単離とマイクロウェルの形状の影響。
【図3】大腸菌及びサルモネラ菌のマイクロウェルアレイ型流路による単離
【符号の説明】
【0037】
1 マイクロウェルアレイ
2 マイクロウェルアレイ本体
3 流路
3a セグメント
3b 接続部
4 ウェル
5 試料液の供給部
6 試料液の排出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)一端に試料液の供給部を有する流路に沿って多数のウェルを形成したマイクロウェルアレイの前記供給部に試料液を供給する工程、
(2)前記流路に前記供給部から試料液を流すことにより、前記ウェルを試料液で満たす工程、
(3)前記ウェル中に存在する生物学的材料を検出する工程
を含むことを特徴とする、試料液中に存在する生物学的材料を検出する方法。
【請求項2】
前記生物学的材料が、細菌、細胞、真菌、胞子、ウイルス、蛋白質または核酸である、請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記供給部から前記排出部へ、遠心力、毛細管力または重力落差法により試料液を流すことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
各ウェル中の生物学的材料の数が1個もしくは0個である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
生物学的材料が細菌、細胞、真菌、胞子、ウイルスまたは核酸であり、PCR法を用いて生物学的材料の検出を行う、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
マイクロウェルアレイであって、中心側から周辺側に形成された流路、該流路に沿って形成された多数のウェル、流路の中心側端部に形成された試料液の供給部を有し、前記流路およびウェルがマイクロアレイ本体の内部に形成され、かつ、前記流路は試料液供給部から周辺側に向けて流れる方向が連続的または非連続的に変化する、マイクロウェルアレイ。
【請求項7】
前記供給部および流路が複数形成されている、請求項6に記載のマイクロウェルアレイ。
【請求項8】
流路の周辺側端部に試料液の排出部が形成されている、請求項6または7に記載のマイクロウェルアレイ。
【請求項9】
ディスク状の形状を有する、請求項6〜8のいずれかに記載のマイクロウェルアレイ。
【請求項10】
前記流路が渦巻状の形状を有する請求項6〜9のいずれかに記載のマイクロウェルアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−185423(P2008−185423A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18479(P2007−18479)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(598123138)学校法人 創価大学 (49)
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)
【Fターム(参考)】