説明

集積回路

【目的】 P型基板上に集積された集積回路であって、特に、高い電圧を制御する小電流の出力段の保護に有効な静電気保護回路を含む集積回路を提供することを目的とする。
【構成】 集積回路には出力回路の数にかかわらず1つの静電気保護回路を設ける。静電気保護回路は電源線と接地線との間に接続された逆バイアスダイオードを含む。この逆バイアスダイオードの降伏電圧は電源回路のPチャネルMOSトランジスタのドレイン・ソース間耐圧よりも低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、P型基板上に集積された集積回路に関し、特に、静電気保護回路を含む集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路(IC)の微細化とともに静電気などの外部ノイズに対する耐性(静電破壊耐性)が劣化する。よってこれに対応したICの設計が必要とされている。例えば、LCD、有機EL及びPDPなどに使用されているICのうち、高い電圧が与えられる部分に用いられるICのトランジスタやダイオードは、高い耐圧を維持できるような構造が与えられている。また、ESD保護素子なども同様に、高い耐圧を維持できるような構造が与えられて、高電圧領域で動作するのである。しかしながら、ICに静電気パルスの如き、非常に高い電圧の外部ノイズが印加された場合にあっては、上記した如き、IC内の高耐圧トランジスタや高耐圧ダイオードなどは大なる発熱を生じて静電気破壊し易いのである。
【0003】
ところで、上記した高耐圧のICであっても、ドライバ用のICなどでは、比較的大なる電流を制御する目的で大なる面積を有するトランジスタが一般的に使用されている。故に、高い電圧の外部ノイズが印加された場合にあっても、電流が分散して発熱が抑制されるため、静電破壊が生じることは少ない。一方で、それ以外のICにあっては、小さい電流を制御するためにトランジスタの面積がドライバ用ICのそれほどは大きくない。また、チップのサイズを小さくするためにトランジスタの面積がなるべく小さくなるように形成されることが一般的である。故に、このようなICでは高い電圧の外部ノイズが印加された場合にあっては、電流を十分に逃し切ることができず、IC内の出力回路のトランジスタやダイオードなどで静電破壊が生じ易くなるのである。
【0004】
例えば、図1に示すように、GND線111及びVDD線112の間に互いに直列につながれた第1ダイオード113及び第2ダイオード114を含む出力回路を有するICがある。第1ダイオード113は、GND線111及びOUT線110にそれぞれアノード及びカソードを接続している。また、第2ダイオード114は、OUT線110及びVDD線112にそれぞれアノード及びカソードを接続している。かかるICにおいて、例えば、GND線111に対して負の極性の外部ノイズがOUT線110に印加された場合には、順バイアスとなる第1ダイオード113によって電流がGND線111にバイパスされる。また、VDD線112に対して正の極性の外部ノイズがOUT線110に印加された場合には、順バイアスとなる第2ダイオード114によって電流はVDD線112にバイパスされるのである。また、GND線111に対する正の極性の外部ノイズがOUT線110に印加された場合には、逆バイアスとなる第1ダイオード113に降伏電圧以上の電圧がかかると、第1ダイオード113が降伏して電流がGND線111にバイパスされるようになる。また、VDD線112に対する負の極性の外部ノイズがOUT線110に印加された場合にも、逆バイアスとなる第2ダイオード114に降伏電圧以上の電圧がかかることで、電流がVDD線112にバイパスされるようになるのである。
【0005】
ところで、上記した出力回路は、その前段にある制御回路からの出力をOUT線110に出力するための直列につながれた2つのMOSトランジスタ115及び116を含む。NチャネルMOSトランジスタ115はGND線111及びOUT線110にそれぞれソース及びドレインを接続されている。PチャネルMOSトランジスタ116はOUT線110及びVDD線112にそれぞれドレイン及びソースを接続されている。また、2つのMOSトランジスタ115及び116のゲートは制御回路と接続されている。なお、図1に示す如く、第1ダイオード113は独立して形成されている場合だけでなく、NチャネルMOSトランジスタ115の一部に(例えば、P基板をアノード、Nドレインをカソードとして)含まれていることもある。また、第2ダイオード114についても独立して形成されている場合だけでなく、PチャネルMOSトランジスタ116の一部に(例えば、Pドレインをアノード、N−WELL(N−SUB端子)をカソードとして)含まれることもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1の如く、2つのダイオード113及び114と、2つのMOSトランジスタ115及び116とを有する集積回路において、VDD線112に対して負の極性の外部ノイズ、例えば静電気などがOUT線110に与えられた場合の耐性(静電破壊耐性)を高めるような静電気保護回路が望まれる。
【0007】
ここで、P型基板に集積された集積回路において、第2ダイオード114は、P型基板の一部にN型WELLを形成して、このN型WELLの表面近傍に更にP+領域及びN+領域を形成してこれを端子とする構造を有している。つまりP+領域及びN型WELLの接触によってPNダイオードを構成しているのである。P+領域及びN+領域はそれぞれOUT線110及びVDD線112に接続されている(後述する図3を併せて参照されたい)。つまり、VDD線112に対して負の極性の外部ノイズがOUT線110に印加された場合にあっては、第2ダイオード114及びPチャネルMOSトランジスタ116に逆方向バイアスがかかるのである。この逆方向バイアスが第2ダイオード114内のPN接合部の降伏電圧、すなわち逆方向耐圧を越えると、第2ダイオード114には急激に逆方向電流が流れはじめるのである。ところが、第2ダイオード114内のN型WELLの部分が高い抵抗を有しているため、第2ダイオード114の電圧降下は大となる。そのためOUT線110及びVDD線112に接続されているPチャネルMOSトランジスタ116のドレイン・ソース間には高い電圧が印加されて、その許容範囲を超えた場合にあってはPチャネルMOSトランジスタ116は完全破壊してしまうのである。かかる場合において、第2ダイオード114のN型WELL/P+領域の接触面積を拡大しても、N型WELLの抵抗が大であるため、十分に第2ダイオード114の全体の抵抗を下げることは困難である。また、PチャネルMOSトランジスタ116に同一構造を有するゲートオフPチャネルMOSトランジスタを保護ダイオードとして接続して電流をバイパスしたとしても、ゲートオフPチャネルMOSトランジスタはP型基板上のN型WELL内に形成されなければならず、上記したと同様に直列抵抗が大となって、十分に電流をバイパスするためにはそのトランジスタ幅”W”を大としなければならない。特に、OUT線を複数有する集積回路においては、各出力線毎にトランジスタやダイオードなどの面積を大きくすることが必要となるため、集積回路全体の面積が非常に大きくなってしまうため好ましくない。
【0008】
本発明は、上記した如き状況に鑑みてなされたものであって、P型基板上に集積された集積回路であって、特に、高い電圧を制御する小電流の出力段の保護に有効な静電気保護回路を含む集積回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による集積回路は、P型基板の上に形成され且つ電源線と接地線との間で互いに直列に接続されたPチャネルMOSトランジスタ及びNチャネルMOSトランジスタを含み、前記PチャネルMOSトランジスタ及び前記NチャネルMOSトランジスタの接続点の電位を出力線に出力する出力回路と、前記電源線と前記接地線との間に接続された逆バイアスダイオードからなる静電気保護回路と、を含み、前記逆バイアスダイオードの降伏電圧が前記PチャネルMOSトランジスタのドレイン・ソース間耐圧よりも低いことを特徴とする。
【0010】
かかる集積回路にあっては、静電気保護回路を集積回路の1カ所に設けるだけで静電気破壊に対する耐性を向上せしめることが出来る。つまり、出力線毎に静電気をバイパスするための面積の大なるトランジスタなどを形成する必要がないため、集積回路のチップサイズを大幅に増加させることがない。また複雑な集積回路の製造工程を追加することもなく、プロセスコストを上昇させることもないのである。
【0011】
更に、本発明による集積回路は、P型基板の上に形成され且つ電源線と接地線との間で互いに直列に接続された2つのダイオードを含み、前記2つのダイオードの接続点の電位を出力線に出力する出力回路と、前記電源線と前記接地線との間に接続された逆バイアスダイオードからなる静電気保護回路と、を含み、前記逆バイアスダイオードの降伏電圧が前記2つのダイオードのうちの前記信号線及び前記電源線の間に設けられたダイオードの逆方向耐圧よりも低いことを特徴とする。
【0012】
かかる集積回路にあっても、上記したと同様に、静電気保護回路を集積回路の1カ所に設けるだけで静電気破壊に対する耐性を向上せしめることが出来るのである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
【実施例1】
【0014】
図2及び図3に示すように、本発明の第1の実施例による集積回路は、GND(接地)線1に接続されたP型基板5の上に、VDD(電源)線2に接続された出力回路10、制御回路20、その他(内部)回路30、及び、静電気保護回路40を集積した集積回路である。
【0015】
出力回路10は、集積回路の外部と接続するためのOUT(信号出力)線3を含み、直列に接続されたNチャネルMOSトランジスタ11及びPチャネルMOSトランジスタ12、及び、直列に接続された第1のダイオード14及び第2のダイオード15を含んでいる。なお、ここでは出力回路10は1個のみを図示しているが、制御回路20に複数の出力回路10が接続されて設けられていても良い。なお、第1ダイオード14は独立して形成されている場合だけでなく、NチャネルMOSトランジスタ11の一部に(例えば、P基板をアノード、Nドレインをカソードとして)含まれることもある。また、第2ダイオード15も独立には存在せず、PチャネルMOSトランジスタ12の一部に(Pドレインをアノード、N−WELL(N−SUB端子)をカソードとして)含まれることもある。
【0016】
特に図3を参照して、NチャネルMOSトランジスタ11は、GND線1に接続されたP型基板5の一部に、P型WELL11aを設けて、P型WELL11aの表面近傍において互いに対向するように2つのN+領域11b1及び11b2を設けて形成されている。ソース電極としてのN+領域11b1はGND線1に接続されており、ドレイン電極としてのN+領域11b2はOUT線3に接続されている。なお、図3では、ゲート電極はP型WELL11aの上に設けられているが図示していない。図2を併せて参照すると、後述するように、ゲート電極はPチャネルMOSトランジスタ12のゲート電極と接続されて、制御回路20と接続されている。
【0017】
更に、図3を参照して、PチャネルMOSトランジスタ12は、GND線1に接続されたP型基板5の一部に、N型WELL12aを設けて、N型WELL12aの表面近傍に2つのP+領域12b1及び12b2を対向するようにして設けて形成されている。ドレイン電極としてのP+領域12b1はOUT線3に接続され、ソース電極としてのP+領域12b2はVDD線2に接続されている。なお、N型WELL12aに設けられたサブ端子線12cはVDD線2に接続されていることが好ましい。なお、図3では、ゲート電極はN型WELL12aの上に設けられているが図示していない。図2を併せて参照すると、このゲート電極はNチャネルMOSトランジスタ11のゲート電極と接続されて、制御回路20と接続されている。なお、PチャネルMOSトランジスタ12は、制御回路20内のPチャネルMOSトランジスタの保護のため、制御回路20内のPチャネルMOSトランジスタと同じ若しくは低いドレイン・ソース間耐圧を有している。
【0018】
更に、図3を参照して、第1のダイオード14は、GND線1に接続されたP型基板5の一部に、P型WELL14aを設けて、P型WELL14aの表面近傍に互いに対向するようにP+領域14b1、及び、N+領域14b2を設けて形成されている。P+領域14b1、及び、N+領域14b2はそれぞれGND線1及びOUT線3に電気的に接続されており、GND線1にP側を、OUT線3にN側を向けたダイオードを形成しているのである。つまり、第1のダイオード14は、アノードとしてのP型WELL14aとカソードとしてのN+領域14b2とを接触させたPNダイオードなのである。
【0019】
更に、図3を参照して、第2のダイオード15は、GND線1に接続されたP型基板5の一部に、N型WELL15aを設けて、N型WELL15aの表面近傍にP+領域15b1、及び、N+領域15b2を互いに対向するようにして設けて形成されている。P+領域15b1、及び、N+領域15b2はそれぞれOUT線3及びVDD線2に電気的に接続されている。つまり、OUT線3にP側を、VDD線2側にN側を向けてダイオードを形成しているのである。つまり、第2のダイオード15は、アノードとしてのP+領域15b1とカソードとしてのN型WELL15aとを接触させたPNダイオードなのである。
【0020】
制御回路20及びその他(内部)回路30はGND線1及びVDD線2の間で動作するP型基板5の上に集積された回路からなるが、公知のいかなる回路であってもよいのでここでは詳述しない。
【0021】
静電気保護回路40は、逆バイアスダイオードとして働く少なくとも1つのPチャネルMOSトランジスタ41を含んでいる。PチャネルMOSトランジスタ41は、GND線1に接続されたP型基板5の一部に、N型WELL41aを設けて、N型WELL41aの表面近傍において互いに対向する2つのP+領域41b1及び41b2を設けて形成されている。ドレイン電極としてのP+領域41b1はGND線1に接続され、ソース電極としてのP+領域41b2はVDD線2に接続されている。なお、N型WELL41aに設けられたサブ端子線41cはVDD線2に接続されていることが好ましい。また、図3には図示していないが、ゲート電極はN型WELL41aの上にある。ゲート電極は、図2に示す如く、VDD線2に接続しておくことが好ましい。後述するように、PチャネルMOSトランジスタ41は、PチャネルMOSトランジスタ12を流れようとする外部ノイズ電流をバイパスするために、ドレイン・ソース間耐圧をPチャネルMOSトランジスタ12のドレイン・ソース間耐圧よりも低く設定される。第1のダイオード14の順方向における電圧降下を考慮して、好ましくは、PチャネルMOSトランジスタ12よりも1V以上低いドレイン・ソース間耐圧を有していることが好ましい。
【0022】
図4に示すように、PチャネルMOSトランジスタ12は、P型シリコンからなるP型基板5の一部にN型WELL12aを形成して、この表面から例えばP型不純物をイオン注入などによって打ち込んで、2つの互いに対向するP+領域12b1及び12b2を形成している。ドレイン電極としてのP+領域12b1、及び、ソース電極としてのP+領域12b2の周囲には、不純物濃度をより低下せしめた低濃度ドレイン領域12b1’及び低濃度ソース領域12b2’がそれぞれ形成されている。低濃度ドレイン領域12b1’及び低濃度ソース領域12b2’の上にはゲート酸化膜51を挟んで、例えば、ポリシリコンなどからなるゲート電極52を設け、更にこれらの上から絶縁膜53が形成されている。
【0023】
ここで、ゲート電極54において、N型WELL12aの表面に沿って平行な部分を有効ゲート部として、この長さをゲート長さLg54とする。また、N型WELL12aの表面に沿った方向における低濃度ドレイン領域12b1’及び低濃度ソース領域12b2’の最も近接する位置での距離を低濃度ドレイン・ソース間距離Lds55とする。更に、P+領域12b1から有効ゲート部の端部までの距離を低濃度ドレイン領域長さLld56、P+領域12b2から有効ゲート部の端部までの距離を低濃度ソース領域長さLls57と定義する。
【0024】
ところで、上記した如く、静電気保護回路40のPチャネルMOSトランジスタ41は、出力回路10のPチャネルMOSトランジスタ12よりもドレイン・ソース間耐圧が低いが、PチャネルMOSトランジスタのドレイン・ソース間耐圧を変化させるためのいくつかの方法をここに列挙するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
まず、PチャネルMOSトランジスタのゲート長さLgをより短くすることでドレイン・ソース間耐圧を下げることが出来る。すなわち、静電気保護回路40のPチャネルMOSトランジスタ41のゲート長さLg54を、出力回路10のPチャネルMOSトランジスタ12のゲート長さLg54よりも短くすればよい。かかる場合、ドレイン・ソース間の電圧勾配がより大となるため、ゲート電位がオープン又はソースと同電位であっても、ソースからドレイン方向への電流の流れをより低い電圧で生じせしめることが出来るのである。例えば、PチャネルMOSトランジスタ12のゲート長さLg54を1.2μmとすると、PチャネルMOSトランジスタ41のゲート長さLgを1.0μmとすることでドレイン・ソース間耐圧を1V以上下げることが出来るのである。好ましくは、PチャネルMOSトランジスタ41のゲート長さLgは0.8μmである。また、低濃度ドレイン・ソース間距離Lds55をより短くしてもドレイン・ソース間の電圧勾配をより大とできるので、ドレイン・ソース間耐圧を下げることが出来るのである。
【0026】
同様に、ドレイン・ソース間の電圧勾配をより大とするため、PチャネルMOSトランジスタ41において、低濃度ドレイン領域長さLldを短くしても良い。例えば、PチャネルMOSトランジスタ12の低濃度ドレイン領域長さLld56を0.8μmとすると、PチャネルMOSトランジスタ41の低濃度ドレイン領域長さLldを0.6μmとすることでドレイン・ソース間耐圧を1V程度以上下げることが出来るのである。好ましくは、PチャネルMOSトランジスタ41の低濃度ドレイン領域長さLldは0.4μmである。
【0027】
更に、ドレイン・ソース間の電圧勾配をより大とするため、PチャネルMOSトランジスタ41において、低濃度ソース領域長さLlsを短くしても良い。例えば、PチャネルMOSトランジスタ12の低濃度ソース領域長さLls57を0.4μmとすると、PチャネルMOSトランジスタ41の低濃度ソース領域長さLlsを0.2μmとすることでドレイン・ソース間耐圧を1V程度以上下げることが出来るのである。
【0028】
更に、PチャネルMOSトランジスタ41において、PチャネルMOSトランジスタ12よりも高い不純物密度の低濃度ドレイン領域12b1’や低濃度ソース領域12b2’を形成してもドレイン・ソース間の電圧勾配を大とすることが出来て、ドレイン・ソース間耐圧を低下させることができるのである。
【0029】
次に、上記した構成の集積回路の電流の流れについて説明する。特にVDD線2に対して、出力線3に負の極性の外部ノイズ(静電気パルス)が印加された場合について説明する。
【0030】
図5において、VDD線2に対する負の極性の外部ノイズがOUT線3に印加された場合において、2通りの電流通路によって電流がバイパスされ得る。第1の電流通路A1は、第2ダイオード15の逆バイアスとなるようなVDD線2からOUT線3への電流通路である。第2の電流通路A2は、第1ダイオード14の順バイアスとなるような、VDD線2から静電気保護回路41を通ってGND線1を通じて第1ダイオード14を通り、OUT線3への電流通路である。上記2通りの電流通路A1及びA2のうち動作開始電圧がより低い電流通路を電流が流れるわけである。
【0031】
詳細には、OUT線3に負電位が印加されると、VDD線2とOUT線3との間の電位差が第2ダイオード15の逆バイアスを与えるとともに、PチャネルMOSトランジスタ12のドレイン・ソース間にもこれが与えられる。一方、OUT線3の電位はGND線1の電位よりも低いので、第1ダイオード14が順方向バイアスされる。第1ダイオード14の順方向電圧降下とGND線1を電流が流れる時の配線抵抗による電圧降下と逆バイアスダイオードとしてのPチャネルMOSトランジスタ41の降伏電圧の和がPチャネルMOSトランジスタ12の降伏電圧よりも小さければ第2の電流通路に静電気パルス電流が流れる。これによって、PチャネルMOSトランジスタ12のドレイン・ソース間にはPチャネルMOSトランジスタ12が破壊してしまう程度の電圧が印加されないため破壊を免れるのである。
【0032】
なお、一般的に、P型基板上に集積された集積回路においては、NチャネルMOSトランジスタ11は、P基板に接続されたP型WELL構造を有する。故に、PチャネルMOSトランジスタ41が降伏してNチャネルMOSトランジスタ11のドレイン・サブ間に順方向電流が流れたとしても、PN接合の順方向に電流が流れる場合にあっては、PN接合面全体で電流を流すので局所的な発熱が生じない。よって、NチャネルMOSトランジスタ11は破壊しないのである。
【0033】
また、制御回路20に複数の出力回路10を接続する場合がある。かかる場合、特に、複数の出力回路10からのノイズ電流の流路となる静電気保護回路40のPチャネルMOSトランジスタ41において十分な電流を流すことができるようにPチャネルMOSトランジスタ41のN型WELL41a、P+領域41b1及び41b2の面積を十分に取ることが好ましい。しかしながら、すべての出力回路10のOUT線3に同時にノイズが与えられる場合は稀であって、必ずしも出力回路10の総数だけの電流容量をPチャネルMOSトランジスタ41に与える必要はない。つまり、出力回路10のPチャネルMOSトランジスタ12のドレイン・ソース間の静電破壊耐圧を上げるべく、各出力回路10のPチャネルMOSトランジスタ12の面積を個別に大とするよりも、集積回路全体の面積を効率的に小とすることが出来るのである。
【0034】
ところで、図6に示すように、実施例1の変形例として、PチャネルMOSトランジスタ41はアノード側及びカソード側をそれぞれGND線1及びVDD線2に接続した逆バイアスダイオードとしてのPNダイオード42であっても良い。かかる場合、PNダイオード42の逆方向耐圧がPチャネルMOSトランジスタ12のドレイン・ソース間耐圧よりも1V以上小であれば、上記した実施例と同様の機能が得られるのである。詳細については、上記した実施例と共通するので省略する。
【0035】
更に、図7及び図8に示すように、実施例1の他の変形例として、図2及び図6に示した集積回路の出力回路10のPチャネルMOSトランジスタ12のドレイン電極としてのP+領域12b1と、OUT線3との間に数オーム程度の抵抗器43を入れてもよい。すなわち、PチャネルMOSトランジスタ12に直列に抵抗器43を挿入することで、PチャネルMOSトランジスタ12に印加される電圧を下げることが出来るのである。結果として、後述するように、PチャネルMOSトランジスタ12のドレイン・ソース間が永久破壊するときに与えられるVDD線2及びOUT線3の間の電圧をより大とすることが出来るのである。なお、抵抗器43の抵抗値が大に過ぎると、トランジスタのオン抵抗が上昇してドライバー回路の設計が複雑となってしまうため好ましくない。抵抗器43は、好ましくは、シリサイドPOLY抵抗、NON−シリサイドPOLY抵抗、シリサイドブロックなどからなる。
【0036】
次に、本発明の上記した実施例による集積回路のTLP(Transmission Line Pulse)試験によって得られた電流I−電圧V特性について説明する。
【0037】
まず、比較例として、図9において、図1に示した従来の集積回路におけるTLP線図を示す。上記した如く、第2ダイオード114内のN型WELLの部分が高い抵抗を有しているため第2ダイオード114の電圧降下は大となり、故に、ゆるやかなTLP線図が得られる。詳細には、曲線120はPチャネルMOSトランジスタ116の単体のTLP線図(ドレイン電流Id−ドレイン電圧Vd)であるが、つまりPチャネルMOSトランジスタ116のドレイン・ソース間は約30Vで降伏して電流が流れ始め、約33Vが印加されると約0.6Aの電流が流れるのである。そしてこの電圧値を超えた電圧が印加されると、PチャネルMOSトランジスタ116は永久破壊されてしまう。ところで、図1に示した集積回路において、PチャネルMOSトランジスタ116に約33Vが印加されるときにはこれに並列に接続された第2ダイオード114にも同様に約33Vが印加される。曲線121は第2ダイオード114のTLP線図であるが、この電圧で第2ダイオード114には約0.3Aの電流が流れ得る。つまり、OUT線110には、第2ダイオード114及びPチャネルMOSトランジスタ116の両方を流れる電流の和として最大0.9Aの電流が流れ得る。曲線122はこの集積回路のTLP線図であるが、0.9A以上の放電電流が流れたときにはPチャネルMOSトランジスタ116が永久破壊されてしまうのである。
【0038】
さて、図2の本発明の実施例による集積回路において、PチャネルMOSトランジスタ12はPチャネルMOSトランジスタ116と同じMOSトランジスタであるとする。すなわち、PチャネルMOSトランジスタ12のドレイン・ソース間に33Vが印加されたときに0.6Aの電流が流れるとともに、これ以上の電圧が印加されると永久破壊してしまうのである。図5を参照すると、第1の電流通路A1、すなわち、第2ダイオード15の逆バイアスとなるようなVDD線2からOUT線3への電流通路だけでは、第2ダイオード15及びPチャネルMOSトランジスタ12に33Vを印加することができて、それぞれ0.3A及び0.6Aの電流が流れる。つまり集積回路の全体として0.9Aが放電パルス電流の最大許容電流値となる。詳細については、図9及び上記記載を参照されたい。
【0039】
ここで、図5を参照すると、第2の電流通路A2、すなわち、第1ダイオード14の順バイアスとなるような、VDD線2から静電気保護回路40を通ってGND線1を通じて第1ダイオード14を通り、OUT線3への電流通路に放電パルス電流が流れる場合について考える。図10に示す如く、曲線60、61、62及び63はそれぞれPチャネルMOSトランジスタ12、第1ダイオード14、PチャネルMOSトランジスタ41及び第2の電流通路A2全体のTLP線図である。上記したと同様に、PチャネルMOSトランジスタ12は約33V、0.6Aで永久破壊する(図10の60’参照)。GND線1とVDD線2との間に33Vを印加した時には、第2の電流通路A2には、3.8Aの放電パルス電流が流れるのである。故に、最大許容電流値は PチャネルMOSトランジスタ12の許容最大電流値0.6Aと合算して4.4Aとなるのである。すなわち、4.4A/0.9A=4.9倍だけ静電破壊への耐性を向上することができたのである。
【0040】
次に、実施例1の他の変形例として、図7に示す如く、PチャネルMOSトランジスタ12のドレイン電極としてのP+領域12b1とOUT線3との間に5オームの抵抗器43を入れた場合について考える。図11に示す如く、曲線60、61、62及び63はそれぞれPチャネルMOSトランジスタ12、第1ダイオード14、PチャネルMOSトランジスタ41及び第2の電流通路A2全体のTLP線図である。PチャネルMOSトランジスタ12の永久破壊電圧は抵抗器43における電圧降下を生じるので、約36Vまで上昇する(図10の60’参照)。曲線63より36Vが印加されたときには集積回路にはさらに5.0A足した5.6Aを流すことが出来るのである。つまり、PチャネルMOSトランジスタ12に抵抗器43を接続することで、本発明の第1の実施例による集積回路の耐性をさらに高めることが出来るのである(4.4Aから5.6Aへ改善)。
【実施例2】
【0041】
図12に示すように、本発明の第2の実施例による集積回路は、出力回路10にPチャネルMOSトランジスタ12を含まない点を除いて、実施例1と同様である。なお、PチャネルMOSトランジスタ41は、制御回路20内において使用されているPチャネルMOSトランジスタの保護のため、制御回路20内のPチャネルMOSトランジスタよりも1V以上低いドレイン・ソース間耐圧を有している必要がある。
【0042】
本発明の第2の実施例においても、OUT線3に静電気の如き外部ノイズが印加された場合の動作は同様である。OUT線3にVDD線2に対する負の極性の外部ノイズが印加された場合、逆方向耐圧に関して、VDD線2とOUT線3との電位差がそのまま第2ダイオード15にかかり、その電圧が第2ダイオード15の逆方向永久破壊耐圧よりも大であると第2ダイオード15が破壊されてしまう。つまり、P型基板にN型WELLを形成してなる第2ダイオード15は、P型基板にP型WELLを形成してなるので、例えば第1ダイオード14などと比較すると一般的にその破壊耐性が低いのである。また、第2ダイオード15が永久破壊しない場合でも、制御回路20や、その他内部回路30に大きな電圧がかかり、それらの回路内の素子が破壊されることもある。しかしながら、実施例1と同様に、第2ダイオード15の逆方向耐圧よりも1V以上低いドレイン・ソース間耐圧を有するPチャネルMOSトランジスタ41を含む静電気保護回路40を設けることで第2ダイオード15が破壊される前に外部ノイズ電流がバイパスされるのである。詳細については、実施例1と同様であるので省略する。
【0043】
また、図13に示すように、静電気保護回路40は実施例1と同様にPNダイオード42であっても良い。PNダイオード42は、第2ダイオード15の逆方向耐圧よりも1V以上低い逆方向耐圧を有することで、第2ダイオード15が破壊されるより先にPNダイオード42が降伏して、ノイズ電流がPNダイオード42によってバイパスされるのである。詳細については、これも実施例1と同様であるので省略する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】従来の集積回路の回路図である。
【図2】本発明の第1の実施例による集積回路の回路図である。
【図3】本発明の第1の実施例による集積回路の構造を示す図である。
【図4】本発明による集積回路に含まれるPチャネルMOSトランジスタの断面図である。
【図5】本発明の第1の実施例による集積回路の回路図である。
【図6】本発明の第1の実施例の変形例による集積回路の回路図である。
【図7】本発明の第1の実施例の変形例による集積回路の回路図である。
【図8】本発明の第1の実施例の変形例による集積回路の回路図である。
【図9】図1の回路でのTLP線図である。
【図10】図5の回路でのTLP線図である。
【図11】図7の回路でのTLP線図である。
【図12】本発明の第2の実施例による集積回路の回路図である。
【図13】本発明の第2の実施例の変形例による集積回路の回路図である。
【符号の説明】
【0045】
1 GND(接地)線
2 VDD(電源)線
3 OUT(信号出力)線
5 P型基板
10 出力回路
11 NチャネルMOSトランジスタ
12 PチャネルMOSトランジスタ
14 第1のダイオード
15 第2のダイオード
20 制御回路
30 その他回路
40 静電気保護回路
41 保護PチャネルMOSトランジスタ
42 保護PNダイオード
51 ゲート酸化膜
52 ゲート電極
53 絶縁膜
54 ゲート長さLg
55 低濃度ドレイン・ソース間距離Lds
56 低濃度ドレイン領域長さLld
57 低濃度ソース領域長さLls
110 OUT線
111 GND線
112 VDD線
113 第1ダイオード
114 第2ダイオード
115 NチャネルMOSトランジスタ
116 PチャネルMOSトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
P型基板の上に形成され且つ電源線と接地線との間で互いに直列に接続されたPチャネルMOSトランジスタ及びNチャネルMOSトランジスタを含み、前記PチャネルMOSトランジスタ及び前記NチャネルMOSトランジスタの接続点の電位を出力線に出力する出力回路と、前記電源線と前記接地線との間に接続された逆バイアスダイオードからなる静電気保護回路と、を含み、前記逆バイアスダイオードの降伏電圧が前記PチャネルMOSトランジスタのドレイン・ソース間耐圧よりも低いことを特徴とする集積回路。
【請求項2】
前記PチャネルMOSトランジスタはそれぞれ前記出力線及び前記電源線に接続されたドレイン電極及びソース電極を有し、前記NチャネルMOSトランジスタはそれぞれ前記出力線及び前記接地線に接続されたドレイン電極及びソース電極を有することを特徴とする請求項1記載の集積回路。
【請求項3】
前記PチャネルMOSトランジスタは、前記ドレイン電極及び前記出力線の間に抵抗器を含むことを特徴とする請求項2記載の集積回路。
【請求項4】
前記逆バイアスダイオードはそれぞれ前記出力線及び前記電源線に接続されたドレイン電極及びソース電極を有するPチャネルMOSトランジスタからなる保護PチャネルMOSトランジスタであって、前記降伏電圧はドレイン・ソース間耐圧であることを特徴とする請求項1乃至3のうちの1に記載の集積回路。
【請求項5】
前記保護PチャネルMOSトランジスタは、前記電源線に接続されたゲート電極及びサブ電極を含むことを特徴とする請求項4記載の集積回路。
【請求項6】
前記保護PチャネルMOSトランジスタは、前記出力回路の前記PチャネルMOSトランジスタよりも短いゲート長を有することを特徴とする請求項4記載の集積回路。
【請求項7】
前記保護PチャネルMOSトランジスタは、前記出力回路の前記PチャネルMOSトランジスタよりも短い前記低濃度ドレイン領域及び前記低濃度ソース領域間の距離を有することを特徴とする請求項4記載の集積回路。
【請求項8】
前記保護PチャネルMOSトランジスタは、前記出力回路の前記PチャネルMOSトランジスタよりも短い長さの低濃度ドレイン領域を有することを特徴とする請求項4記載の集積回路。
【請求項9】
前記保護PチャネルMOSトランジスタトランジスタは、前記出力回路の前記PチャネルMOSトランジスタトランジスタよりも高い不純物密度の低濃度ドレイン領域を有することを特徴とする請求項4記載の集積回路。
【請求項10】
前記保護PチャネルMOSトランジスタトランジスタは、前記出力回路の前記PチャネルMOSトランジスタトランジスタよりも短い長さの低濃度ソース領域を有することを特徴とする請求項4記載の集積回路。
【請求項11】
前記保護PチャネルMOSトランジスタは、前記出力回路の前記PチャネルMOSトランジスタよりも高い不純物密度の低濃度ソース領域を有することを特徴とする請求項4記載の集積回路。
【請求項12】
前記逆バイアスダイオードは、アノード及びカソードをそれぞれ前記接地線及び前記電源線に接続したPNダイオードであることを特徴とする請求項1記載の集積回路。
【請求項13】
前記抵抗器は、シリサイドPOLY抵抗であることを特徴とする請求項3記載の集積回路。
【請求項14】
前記抵抗器は、NON−シリサイドPOLY抵抗であることを特徴とする請求項3記載の集積回路。
【請求項15】
前記抵抗器は、シリサイドブロックであることを特徴とする請求項3記載の集積回路。
【請求項16】
前記抵抗器は、約5オームの抵抗値を有することを特徴とする請求項13乃至15のうちの1に記載の集積回路。
【請求項17】
前記逆バイアスダイオードの降伏電圧が前記PチャネルMOSトランジスタのドレイン・ソース間耐圧よりも1V以上小であることを特徴とする請求項1乃至16のうちの1に記載の集積回路。
【請求項18】
P型基板の上に形成され且つ電源線と接地線との間で互いに直列に接続された2つのダイオードを含み、前記2つのダイオードの接続点の電位を出力線に出力する出力回路と、前記電源線と前記接地線との間に接続された逆バイアスダイオードからなる静電気保護回路と、を含み、前記逆バイアスダイオードの降伏電圧が前記2つのダイオードのうちの前記信号線及び前記電源線の間に設けられたダイオードの逆方向耐圧よりも低いことを特徴とする集積回路。
【請求項19】
それぞれ前記出力線及び前記接地線に接続されたドレイン電極及びソース電極を有するNチャネルMOSトランジスタを含むことを特徴とする請求項18記載の集積回路。
【請求項20】
前記逆バイアスダイオードはそれぞれ前記出力線及び前記電源線に接続されたドレイン電極及びソース電極を有するPチャネルMOSトランジスタからなる保護PチャネルMOSトランジスタであって、前記降伏電圧はドレイン・ソース間耐圧であることを特徴とする請求項18記載の集積回路。
【請求項21】
前記保護Pチャネルトランジスタは、前記電源線に接続されたゲート電極及びサブ電極を含むことを特徴とする請求項20記載の集積回路。
【請求項22】
前記逆バイアスダイオードは、アノード及びカソードをそれぞれ前記接地線及び前記電源線に接続したPNダイオードであることを特徴とする請求項18記載の集積回路。
【請求項23】
前記逆バイアスダイオードの降伏電圧が前記PチャネルMOSトランジスタのドレイン・ソース間耐圧よりも1V以上小であることを特徴とする請求項18乃至22のうちの1に記載の集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−332144(P2006−332144A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150351(P2005−150351)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(503213291)パイオニア・マイクロ・テクノロジー株式会社 (25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】