集積型光デバイスおよびそれを用いた光通信ネットワーク
【目的】集積型光デバイス及び光通信ネットワークである。
【構成】半導体基板10上に、第1のコア層12を含む光導波路と第2のコア層15を含む光導波路を積層した二重光導波路構造を有する。導波型光デバイスは導波方向に複数領域1、2、3に分割されている。領域1、2、3のうち少なくとも1つの領域1、3は、二重光導波路構造の光分布を制御する屈折率変調層20を有する。複数領域1、2、3それぞれにおいて、キャリアを注入する電極18、19を有する。キャリア非注入時には、入射光がそのまま出力されるフェイルセイフ機能を持ち得る。
【構成】半導体基板10上に、第1のコア層12を含む光導波路と第2のコア層15を含む光導波路を積層した二重光導波路構造を有する。導波型光デバイスは導波方向に複数領域1、2、3に分割されている。領域1、2、3のうち少なくとも1つの領域1、3は、二重光導波路構造の光分布を制御する屈折率変調層20を有する。複数領域1、2、3それぞれにおいて、キャリアを注入する電極18、19を有する。キャリア非注入時には、入射光がそのまま出力されるフェイルセイフ機能を持ち得る。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光通信などに用いられる集積型光デバイス、特に集積型光カップラ及び半導体光増幅器、更にはこのデバイスを用いた光通信ネットワークに関する。
【0002】
【従来の技術】光通信、特に、光ローカルエリアネットワークに用いられる光デバイスのうち、光増幅器の重要度が近年急激に増している。光増幅器は、大きく分けてファイバ増幅器と半導体増幅器に分けられ、用途によって使い分けが行われている。
【0003】半導体増幅器(以下LDAとも言う)の場合、半導体レーザと同等の構造を有しているため、集積化に優れていることが大きな長所である。LDAを中心に集積化した例として、K.Y.LIOUらによる“MonolithicallyIntegrated GaInAsP/InP Optical Amplifier with Low Loss Y−braching Waveguides and Monitoring Photodetector”(Conference on Laser and ElectroOptics ’90,講演番号CDF7)に開示されたものがある。図14はこの模式図である。
【0004】InP基板800上に光アンプ部801、Y分岐部802、PIN受光部803を集積化した構造になっている。層構成は、活性層(波長1.3μm)の下に光ガイド層(波長1.1μm)を有する構造となっており、活性層は光アンプ部801と受光部803で共通である。Y分岐部802は活性層を除去した構造になっており、光アンプ部801および受光部803の端面は無反射コーティングされている。各部の導波路の導波損失および結合損失がきわめて小さいこと、およびY分岐部802で2方向に分岐しそれぞれでモニタできることが特長となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この構成には大きな欠点がある。すなわち信号光が必ずLDAを通過するため、LDAにトラブルが生じた場合、信号光に大きなダメージを与えることになる。半導体光アンプはLD以上にキャリア注入量が高く、内部劣化の確率はLD以上に大きいと考えられ、劣化に対するフェイルセイフ機能は不可欠である。そのためには、LDAの前後に通常の光スイッチを設けることが考えられる。たとえば、特公平4−64044では、レンズやプリズムなどの光学部品を外付けして用いているが、この手法では、外付けにせざるを得ないため、必然的に大型化すると共に価格も上昇し、集積化の長所が失われる。即ち、LDA特有の長所が失われる。
【0006】本発明は、以上の課題に鑑みて考案されたもので、その目的は、集積型光デバイス、特にnormally openの半導体光スイッチを集積化することでLDAにフェイルセイフの機能を持たせた構成を有する集積型光カップラ及び半導体光増幅器、更にはこのデバイスを用いた光通信ネットワークを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の骨子は、半導体基板上に、少なくとも第1クラッド層、第1コア層、第2クラッド層、第3クラッド層、第2コア層および第4クラッド層を積層した構造を有する導波型光デバイスであり、導波方向に複数領域に分割されているとともに、該領域のうち少なくとも1つの領域では前記第2クラッド層および第3クラッド層の間に屈折率変調層を有し、前記複数領域それぞれにおいて前記第1コア層あるいは前記第2コア層にキャリアを注入する機構を有することを特徴とする集積型光デバイスである。
【0008】具体的には、該屈折率変調層がグレーティングで形成されていたり、第1コア層あるいは第2コア層あるいはその両方の構造が単一あるいは複数の量子井戸からなっていたり、入射光に対し前記第1コア層および第2コア層が、透明媒質あるいは利得媒質であったりする。
【0009】また、本発明の骨子は、半導体基板上に、少なくとも第1導電型の第1クラッド層、第1導電型の第1コア層、第1導電型の第2クラッド層、第2コア層および第2導電型の第3クラッド層を積層した構造を有する導電型光デバイスであって、導波方向に複数領域に分割されているとともに、該分割領域のうち少なくとも1つの領域では前記第2クラッド層中あるいは第3クラッド層中あるいはその両方に周期的電流狭窄層を有することを特徴とする集積型光デバイスである。
【0010】この時、周期的電流狭窄層は近接する前記クラッド層と同一の屈折率を有する物質からなり、かつその導電型が前記クラッド層のそれと異なっていたり、前記第1コア層あるいは第2コア層あるいはその両方の構造が単一あるいは複数の量子井戸からなっていたり、入射光に対し前記第1コア層および第2コア層が、透明媒質あるいは利得媒質であったりする。
【0011】また、本発明の骨子は、半導体基板上に、第1光導波路と第2光導波路を積層した二重光導波路構造を有する導波型光デバイスであって、導波方向に複数領域に分割されているとともに、該領域のうち少なくとも1つの領域は、前記二重光導波路構造の光分布を制御する屈折率変調手段を有し、前記複数領域それぞれにおいてキャリアを注入する手段を有することを特徴とする集積型光デバイスである。
【0012】また、具体的な応用としては、この集積光デバイスが複数の端局を有するバス型の光伝送路上に配置されていることを特徴とする光通信ネットワークや、この集積光デバイスが複数の端局を有するスター型の光伝送路上に配置されていることを特徴とする光通信ネットワークがある。
【0013】
【作用】2本の導波路を近接させた構造の光デバイスは方向性結合器として一般的によく知られている。このとき、各々の伝搬定数をβ1およびβ2とするとΔβ=β2−β1および導波路間隔dや結合長Lによってパワー分岐比が決まり、カプラやスイッチの機能をもたせることができる。さらに、2導波路間に伝搬定数を変調する層すなわち屈折率変調層(態様は、代表的には、以下に述べる2つがある)を導入することで、設計の自由度や製作上の許容度を上げたり、新たな機能、例えば光フィルタリング機能を付加することができる。
【0014】一方、導波路のコア層にキャリアを注入することで、コアの材料で決まる波長域の利得媒質として光アンプあるいは半導体レーザとして使用することができるだけでなく、コア層の屈折率が低下するため、光の強度分布を変化させることができる。
【0015】この時、コアにキャリアを注入する際、キャリア密度が周期的に異なるように設定することで、上記2つの作用(光増幅および光強度分布変化)を同時に満足させることもできる。たとえば、第1のコア層および第2のコア層で方向性結合器を形成し、一方、たとえば、第1コア層にのみ周期的にキャリアを注入する場合を考える。1×1018cm-3程度キャリア注入すると屈折率は10-3オーダで低下する(Casey and Panish; Heterostructure Lasers (Academic Press, 1978)参照)。従って、周期的にキャリアを注入することは、屈折率可変グレーティングを形成することと等価である。
【0016】また、第1のコア層および第2のコア層で方向性結合器を形成し(この場合は、屈折率可変グレーティングが形成されている)、一方、たとえば、第1コア層にのみキャリアを注入してもよい。
【0017】以上の両方の場合において、グレーティングベクトルをKとするとBragg条件(位相整合条件)は、β2=β1+K ・・・・・(1)
となる。ここでΔ=β2−(β1+K) ・・・・・(2)
とすると、パワー移行率ηは η=1/(1+(Δ/κ)2)・(sinβcz)2 ・・・・・(3)
となる。ここでκは2導波路間の結合効率、zは進行方向の座標であり、βc=(κ2+Δ2)1/2 ・・・・・(4)
である。
【0018】これより最大パワー移行率ηmaxは ηmax=1/(1+(Δ/κ)2) ・・・・・(5)
であり、最大完全結合長LはL=π/2βc ・・・・・(6)
で表わせる。
【0019】屈折率可変グレーティングが形成されている場合、導波路1および2の実効屈折率をn1およびn2とすると、1×1018cm-3程度キャリア注入すると屈折率は10-3オーダで低下する。この結果、伝搬定数は低下し、κは上昇する。
【0020】導波路1のみにキャリア注入を行ったときの導波路1の伝搬定数および導波路2との結合効率をβ1,injおよびκinjとすると、β1,inj=β1−Δβ1となる(Δβ1>0)
となり、この時、キャリア注入時のΔをΔinjで表すと(2)式よりΔinj=Δ+Δβ1となり、パワー移行率はηintは(3)式よりηint=1/(1+(Δ/κinj+Δβ1,inj/κinj)2)・(sinβc,injz)2となる。
【0021】従って、キャリア注入時にκは上昇することからも ≫1・・・・・キャリア非注入時 Δ/κ: ・・・・・(7)
≪1・・・・・キャリア注入時となるように層構成の設定が可能である。こうして、キャリア注入時にηintが大きくなってパワーの移行が起こり、非注入時にはパワー移行が起こらない様にできる。
【0022】この時、グレーティングがない場合にはκ≪1となるので Δ/κ ≫1・・・・・常時 ・・・・・(8)
となり、パワー移行が起こらない。
【0023】特に光アンプのように高注入のデバイスの場合、屈折率のキャリア注入効果は大きいため設計上有利となる。
【0024】一方、周期的にキャリアを注入する場合、キャリア非注入時にはK=0なのでΔc=β2−β1 非注入時Δinj=β2,inj−(β1,inj+K) 注入時=Δc−K。
【0025】キャリア非注入時のκをκ≪1と選ぶことにより ≫1・・・キャリア非注入時 Δ/κ : ・・・(7′)
≪1・・・キャリア注入時となる。こうして、キャリア注入時にパワーの移行が起こり、非注入時にはパワー移行が起こらない様にできる。
【0026】また、周期的電流狭窄層がないときには、常時 Δ/κ ≫1 ・・・(8′)
となるように層構成の設定が可能であり、パワー移行が起こらない様にできる。
【0027】特にLDAのように高注入のデバイスの場合、屈折率のキャリア注入効果は大きいため設計上有利となる。
【0028】尚、キャリア注入量によって屈折率が異なるので、実効的なグレーティングピッチは変化する。この結果、フィルタリング効果が現れるが、フィルタ帯域はグレーティング形状を制御することで目的に応じて広くも狭くも設定できるので場合に応じて設計すればよい。
【0029】
【実施例1】図1は本発明の第1の実施例の断面図である。光の進行方向に対して、3個の領域が直列につながれた構成になっている。領域1および3はカプラ領域、領域2は利得領域ないし光増幅部である。領域1および3では(7)式が、領域2では(8)式が成り立つように層構成を設計した。
【0030】たとえば、図1において、10はn型GaAs基板、11はn型第1クラッド層(Al0.5Ga0.5As、厚さ1.5μm)、12はn型第1コア層(Al0.08Ga0.92As、厚さ0.1μm)、13はn型第2クラッド層(Al0.5Ga0.5As、厚さ0.5μm)、14はn型第3クラッド層(Al0.3Ga0.7As、厚さ0.5μm)、15はアンドープ第2コア層(Al0.08Ga0.92As、厚さ0.05μm)、16はp型第4クラッド層(Al0.5Ga0.5As、厚さ1.5μm)、17はコンタクト層(GaAs)である。18および19は正電極および負電極であり、20は屈折率を変調するためのグレーティングである。本実施例の場合、導波光の波長を860nmとして、グレーティング20は、ピッチ8.5μm、深さ1.2nmのサインカーブに設定した。
【0031】領域1および3のデバイス長は(4)式で決まる完全結合長(本実施例では500μm)とし、領域2(増幅部)のデバイス長は600μmとした。また、入出力端面には、無反射(AR)コート22を施している。21は先球ファイバである。
【0032】動作原理について図2を用いて説明する。例えば、波長860nmの光を第1コア層12のみに導波させる場合を考える。
【0033】1)全領域にキャリアを注入しない時図2において、屈折率の変化はないので光導波路25に入力された光26は第2導波路24の導波モードとは全くカップルしない。従って、領域2および領域3を通過し、外部へ出力される。
【0034】2)全領域にキャリアを注入したとき図3において、第1導波路25に導波された光31は、グレーティング20によって変調を受けると共に、第2導波路24とカップリングする。注入されたキャリア密度に対して移行率100%となるように設定されているので、完全結合長だけ導波すると移行率100%で導波路24へ移る(電界分布を32で示した)。領域2は利得領域になっているため光増幅のみが行われ、光強度が大きくなる(電界分布を33で示した)。次に、導波光34が進行する領域3では、領域1と同様に導波路24から導波路25に移行し、無反射端面22を介して外部へ出力される。領域2では、キャリア注入に関係なく、カップルしないので、所望の光増幅をするためにキャリア注入量やデバイス長を選ぶことができる。
【0035】
【実施例2】第1実施例では光アンプ部のコア15はバルクのAlGaAsを用いたが、量子井戸層(QW)を用いてもよい。図6はこの場合の層構成の一例の各層のAl含有率を示す。第2コア層をAl0.2Ga0.8As(障壁層)・GaAs(井戸層)の5対からなる多重量子井戸構造15aとしている。この結果、利得スペクトルは第1実施例に比べ狭帯域化できるとともに、利得の大きさをも大きくすることができる。図11は、キャリアの注入レベルを同等にしたときのバルクの利得スペクトル701および多重量子井戸の利得スペクトル702を模式的に表したものである。
【0036】
【実施例3】図5は本発明の第3実施例の断面図である。光の進行方向に対して、同じく、3個の領域が直列につながれた構成になっている。領域1および3は光カプラ部、領域2は光増幅部である。領域1および3では(7´)式が、領域2では(8´)式が成り立つように層構成を設計した。
【0037】たとえば、図5において、100はn型GaAs基板、101はn型第1クラッド層(Al0.5Ga0.5As、厚さ1.5μm)、102はn型第1コア層(Al0.08Ga0.92As、厚さ0.1μm)、103はn型第2クラッド層(Al0.5Ga0.5As、厚さ0.5μm)、104はアンドープ第2コア層(Al0.08Ga0.92As、厚さ0.05μm)、105はp型第3クラッド層(Al0.5Ga0.5As、厚さ1.5μm)、106はコンタクト層(GaAs)である。107および108は正電極および負電極であり、109は屈折率を変調するための周期的電流狭窄層である。本実施例の場合、導波光の波長を860nmとして、周期的電流狭窄層109のグレーティングはピッチ8.5μm、デューティ50%の矩形状に設定した。
【0038】領域1および3のデバイス長は(4)式で決まる完全結合長(本実施例では500μm)とし、領域2(増幅部)のデバイス長は600μmとした。また、先球光ファイバ110に対向した入出力端面には、無反射(AR)コート111を施している。
【0039】次に第3実施例の製作方法について簡単に説明する。
【0040】たとえば、通常の有機金属気相成長法(MOCVD法)や分子線エピタキシャル成長法(MBE法)を用いて、まず、(100)n型GaAs基板100上に第1クラッド層101から第2コア層104まで成長する。第2コア層104を成長したあと、p型Al0.5Ga0.5As層(厚さ0.3μm、キャリア濃度p〜3×1017cm-3)、n型Al0.5Ga0.5As層(厚さ0.5μm、キャリア濃度n〜3×1017cm-3)を形成した後、前述したようにピッチ8.5μmのグレーティングパターンを、その深さがp型Al0.5Ga0.5As層に達するようにエッチングする。この後、引続き、MOCVDでp型Al0.5Ga0.5As層(厚さ0.7μm、キャリア濃度p〜3×1017cm-3)を成長する。
【0041】キャリア濃度を〜3×1017cm-3に設定したのは、キャリア非注入時にこの領域で屈折率差が生じないようにするためである。この結果、周期的電流狭窄層109が作製される。この後、コンタクト層106を成長する。
【0042】横モードの制御のために、埋め込み構造等をつくり付け、電極107、108を形成することで本実施例は完成する。図8は図5の断面の模式図であり、図中、401はAl0.5Ga0.5As高抵抗埋め込み層である。この横モードの制御のための構造は他の実施例についても同じである。
【0043】次に第3実施例の動作原理について図6を用いて説明する。例えば、波長860nmの光を第1コア層102のみに導波させる場合を考える。
【0044】1)全領域にキャリアを注入しない時図6において、前述のように周期的電流狭窄層109付近では屈折率の変化はないので光導波路205に入力された光201は導波路204の導波モードとは全くカップルしない。従って、領域2および領域3を通過し、外部へ出力される(フェイルセイフ機能)。
【0045】2)全領域に独立にキャリアを注入した時正電極107から注入されたキャリアは、周期的電流狭窄層109によってキャリア分布が変調され、第2コア層104中に、キャリア分布ができ、これに対応した等価的屈折率分布が形成される。
【0046】従って、導波路205に導波された光301は、図7に示す様に、周期的電流狭窄層109によって導波路204とカップリングする。注入されたキャリア密度に対して移行率100%となるように設定されているので、完全結合長だけ導波すると移行率100%で導波路204へ移る(電界分布を302で示した)。第2コア層104を通過したキャリアは第1コア層102にも流れ込むが、キャリアの拡散効果やキャリアの注入効率が低い(第1コア層102にはpn接合はないため)ために第1コア層102では屈折率は変調されない。
【0047】領域2は利得領域になっているため光増幅のみが行われ、光強度が大きくなる(電界分布を303で示した)。次に、導波光304が進行する領域3では、領域1と同様に導波路204から導波路205に移行し、無反射端面111を介して外部へ出力される。領域2はキャリア注入に関係なく、カップルしないので所望の光増幅をするためにキャリア注入量やデバイス長を選ぶことができる。
【0048】本実施例ではn基板を用いたがキャリアによって拡散長が異なるのでp基板を用いた方が有利なこともある。
【0049】
【実施例4】図9は本発明の第4の実施例の模式図である。周期的電流狭窄層109´が第2クラッド層103´中に設定されている点が、第3の実施例とは異なっている。
【0050】この結果、1)キャリア注入時に第2コア層104におけるキャリア分布が、同じグレーティングパターンを用いても第3実施例とは異なる、すなわち実効的なグレーティングが異なること、2)周期的電流狭窄層109´の位置によっては第1コア層102にもキャリア分布を誘起すること、3)製作上、再成長で利得層104を形成するため第3実施例よりも高度な製作技術を必要とすること、などの結果をもたらす。
【0051】2)を積極的に利用し、第1コア層102を利得媒質にすることでよりカップリングを大きくすることができるが、非キャリア注入時には損失媒質になる可能性がある。動作原理は第3実施例と同じである。
【0052】
【実施例5】第3、第4実施例では、光アンプ部のコア層104はバルクのAlGaAsを用いたが量子井戸層(QW)を用いてもよい。図10はこの場合の層構成の一例の各層のAl含有率を示す。第2コア層をAl0.2Ga0.8As(障壁層)・GaAs(井戸層)の5対からなる多重量子井戸構造104aとしている。この結果、利得スペクトルは第3、第4実施例に比べ狭帯域化できるとともに、利得の大きさも大きくすることができる。図11は、キャリア注入レベルを同等にしたときのバルクの利得スペクトル701および多重量子井戸の利得スペクトル702を模式的に表したものである。
【0053】また、第2コア層として歪量子井戸層を用いることで、TEモードおよびTMモードに等しい利得を与える(偏波無依存LDA)ことも可能である。
【0054】次に、本発明の装置を光通信ネットワークへ適用した実施例について説明する。伝送路形態がバス型、スター型あるいはループ型の光通信ネットワークにおいて、光を分岐して情報を取り出す際、分岐方法および分岐数に応じた光増幅器が必要になる。
【0055】
【実施例6】図12は本発明の装置を光ブースタアンプとして使用する場合の適用例である。400はバスライン、401および402は光リピータ、403〜406は光ノード、407〜410は能動型光スイッチである。光リピータ401および402が本発明の装置を含んでおり、分岐毎にロスするパワーを補うために用いられている。通常は光リピータ401、402と光スイッチ407〜410は連動しており、分岐数に応じた増幅を光リピータ401あるいは402で行い、増幅が行われているときはスイッチは常にノード側に開いている。
【0056】なんらかの理由で光アンプにトラブルが生じた場合には、光アンプの供給電源が切れると同時に、能動型光スイッチもクローズし、バスライン400上の光信号は損失を受けることなく通過する。すなわち、フェイルセーフ機能が働く。
【0057】
【実施例7】図13は本発明の装置をブースタアンプ+スイッチとして使用する場合の適用例である。500は光伝送路、501は本実施例の装置を含む光アンプ/光スイッチ、502はスター型光スイッチ、503〜507は光ノードである。
【0058】ブースタアンプとしての機能は第6実施例の場合と同じである。各端局が発信するときは、光アンプ/光スイッチ501の電流を切ることで単なる透過デバイスとなる。したがって、たとえば、送信、受信を交互に行うピンポン通信のネットワークを容易に組むことができる。
【0059】
【発明の効果】本発明の効果は以下の通りである。
【0060】1)光スイッチ、光アンプ、光変調器、光合流分岐器がモノリシックに集積化さ れうるため、小型かつ高機能になりうる。
2)光アンプ等の能動デバイスが故障した場合のフェイルセーフが自動的に行われる。
3)他デバイスとの集積化が容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置の第1実施例の模式的断面図。
【図2】第1実施例の動作原理を説明する模式図。
【図3】第1実施例の動作原理を説明する模式図。
【図4】本発明の装置の第2実施例の層構成を説明する図。
【図5】本発明の装置の第3実施例の模式的断面図。
【図6】第3実施例の動作原理を説明する模式図。
【図7】第3実施例の動作原理を説明する模式図。
【図8】第3実施例の横断面図。
【図9】本発明の装置の第4実施例の模式的断面図。
【図10】本発明の装置の第5実施例の層構成を説明する図。
【図11】第2及び第5実施例の利得スペクトルの模式図。
【図12】本発明の装置を適用した光通信システムの実施例を示す図。
【図13】本発明の装置を適用した光通信システムの実施例を示す図。
【図14】従来例を示す斜視図。
【符号の説明】
10、100 基板
11、101 第1クラッド層
12、102 第1コア層
13、103、103´ 第2クラッド層
14、105 第3クラッド層
15、15a、104、104a 第2コア層
16 第4クラッド層
17、106 コンタクト層
18、107 正電極
19、108 負電極
20 グレーティング
21、110 先球光ファイバ
22、111 無反射膜
24、25、204、205 光導波路
109、109´ 周期的電流狭窄層
350 高抵抗埋め込み層
400 光バスライン
401、402 光リピータ
403〜406、503〜507 光ノード
407〜410 能動型光スイッチ
500 光伝送路
501 光アンプ/光スイッチ
502 スターカプラ
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光通信などに用いられる集積型光デバイス、特に集積型光カップラ及び半導体光増幅器、更にはこのデバイスを用いた光通信ネットワークに関する。
【0002】
【従来の技術】光通信、特に、光ローカルエリアネットワークに用いられる光デバイスのうち、光増幅器の重要度が近年急激に増している。光増幅器は、大きく分けてファイバ増幅器と半導体増幅器に分けられ、用途によって使い分けが行われている。
【0003】半導体増幅器(以下LDAとも言う)の場合、半導体レーザと同等の構造を有しているため、集積化に優れていることが大きな長所である。LDAを中心に集積化した例として、K.Y.LIOUらによる“MonolithicallyIntegrated GaInAsP/InP Optical Amplifier with Low Loss Y−braching Waveguides and Monitoring Photodetector”(Conference on Laser and ElectroOptics ’90,講演番号CDF7)に開示されたものがある。図14はこの模式図である。
【0004】InP基板800上に光アンプ部801、Y分岐部802、PIN受光部803を集積化した構造になっている。層構成は、活性層(波長1.3μm)の下に光ガイド層(波長1.1μm)を有する構造となっており、活性層は光アンプ部801と受光部803で共通である。Y分岐部802は活性層を除去した構造になっており、光アンプ部801および受光部803の端面は無反射コーティングされている。各部の導波路の導波損失および結合損失がきわめて小さいこと、およびY分岐部802で2方向に分岐しそれぞれでモニタできることが特長となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この構成には大きな欠点がある。すなわち信号光が必ずLDAを通過するため、LDAにトラブルが生じた場合、信号光に大きなダメージを与えることになる。半導体光アンプはLD以上にキャリア注入量が高く、内部劣化の確率はLD以上に大きいと考えられ、劣化に対するフェイルセイフ機能は不可欠である。そのためには、LDAの前後に通常の光スイッチを設けることが考えられる。たとえば、特公平4−64044では、レンズやプリズムなどの光学部品を外付けして用いているが、この手法では、外付けにせざるを得ないため、必然的に大型化すると共に価格も上昇し、集積化の長所が失われる。即ち、LDA特有の長所が失われる。
【0006】本発明は、以上の課題に鑑みて考案されたもので、その目的は、集積型光デバイス、特にnormally openの半導体光スイッチを集積化することでLDAにフェイルセイフの機能を持たせた構成を有する集積型光カップラ及び半導体光増幅器、更にはこのデバイスを用いた光通信ネットワークを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の骨子は、半導体基板上に、少なくとも第1クラッド層、第1コア層、第2クラッド層、第3クラッド層、第2コア層および第4クラッド層を積層した構造を有する導波型光デバイスであり、導波方向に複数領域に分割されているとともに、該領域のうち少なくとも1つの領域では前記第2クラッド層および第3クラッド層の間に屈折率変調層を有し、前記複数領域それぞれにおいて前記第1コア層あるいは前記第2コア層にキャリアを注入する機構を有することを特徴とする集積型光デバイスである。
【0008】具体的には、該屈折率変調層がグレーティングで形成されていたり、第1コア層あるいは第2コア層あるいはその両方の構造が単一あるいは複数の量子井戸からなっていたり、入射光に対し前記第1コア層および第2コア層が、透明媒質あるいは利得媒質であったりする。
【0009】また、本発明の骨子は、半導体基板上に、少なくとも第1導電型の第1クラッド層、第1導電型の第1コア層、第1導電型の第2クラッド層、第2コア層および第2導電型の第3クラッド層を積層した構造を有する導電型光デバイスであって、導波方向に複数領域に分割されているとともに、該分割領域のうち少なくとも1つの領域では前記第2クラッド層中あるいは第3クラッド層中あるいはその両方に周期的電流狭窄層を有することを特徴とする集積型光デバイスである。
【0010】この時、周期的電流狭窄層は近接する前記クラッド層と同一の屈折率を有する物質からなり、かつその導電型が前記クラッド層のそれと異なっていたり、前記第1コア層あるいは第2コア層あるいはその両方の構造が単一あるいは複数の量子井戸からなっていたり、入射光に対し前記第1コア層および第2コア層が、透明媒質あるいは利得媒質であったりする。
【0011】また、本発明の骨子は、半導体基板上に、第1光導波路と第2光導波路を積層した二重光導波路構造を有する導波型光デバイスであって、導波方向に複数領域に分割されているとともに、該領域のうち少なくとも1つの領域は、前記二重光導波路構造の光分布を制御する屈折率変調手段を有し、前記複数領域それぞれにおいてキャリアを注入する手段を有することを特徴とする集積型光デバイスである。
【0012】また、具体的な応用としては、この集積光デバイスが複数の端局を有するバス型の光伝送路上に配置されていることを特徴とする光通信ネットワークや、この集積光デバイスが複数の端局を有するスター型の光伝送路上に配置されていることを特徴とする光通信ネットワークがある。
【0013】
【作用】2本の導波路を近接させた構造の光デバイスは方向性結合器として一般的によく知られている。このとき、各々の伝搬定数をβ1およびβ2とするとΔβ=β2−β1および導波路間隔dや結合長Lによってパワー分岐比が決まり、カプラやスイッチの機能をもたせることができる。さらに、2導波路間に伝搬定数を変調する層すなわち屈折率変調層(態様は、代表的には、以下に述べる2つがある)を導入することで、設計の自由度や製作上の許容度を上げたり、新たな機能、例えば光フィルタリング機能を付加することができる。
【0014】一方、導波路のコア層にキャリアを注入することで、コアの材料で決まる波長域の利得媒質として光アンプあるいは半導体レーザとして使用することができるだけでなく、コア層の屈折率が低下するため、光の強度分布を変化させることができる。
【0015】この時、コアにキャリアを注入する際、キャリア密度が周期的に異なるように設定することで、上記2つの作用(光増幅および光強度分布変化)を同時に満足させることもできる。たとえば、第1のコア層および第2のコア層で方向性結合器を形成し、一方、たとえば、第1コア層にのみ周期的にキャリアを注入する場合を考える。1×1018cm-3程度キャリア注入すると屈折率は10-3オーダで低下する(Casey and Panish; Heterostructure Lasers (Academic Press, 1978)参照)。従って、周期的にキャリアを注入することは、屈折率可変グレーティングを形成することと等価である。
【0016】また、第1のコア層および第2のコア層で方向性結合器を形成し(この場合は、屈折率可変グレーティングが形成されている)、一方、たとえば、第1コア層にのみキャリアを注入してもよい。
【0017】以上の両方の場合において、グレーティングベクトルをKとするとBragg条件(位相整合条件)は、β2=β1+K ・・・・・(1)
となる。ここでΔ=β2−(β1+K) ・・・・・(2)
とすると、パワー移行率ηは η=1/(1+(Δ/κ)2)・(sinβcz)2 ・・・・・(3)
となる。ここでκは2導波路間の結合効率、zは進行方向の座標であり、βc=(κ2+Δ2)1/2 ・・・・・(4)
である。
【0018】これより最大パワー移行率ηmaxは ηmax=1/(1+(Δ/κ)2) ・・・・・(5)
であり、最大完全結合長LはL=π/2βc ・・・・・(6)
で表わせる。
【0019】屈折率可変グレーティングが形成されている場合、導波路1および2の実効屈折率をn1およびn2とすると、1×1018cm-3程度キャリア注入すると屈折率は10-3オーダで低下する。この結果、伝搬定数は低下し、κは上昇する。
【0020】導波路1のみにキャリア注入を行ったときの導波路1の伝搬定数および導波路2との結合効率をβ1,injおよびκinjとすると、β1,inj=β1−Δβ1となる(Δβ1>0)
となり、この時、キャリア注入時のΔをΔinjで表すと(2)式よりΔinj=Δ+Δβ1となり、パワー移行率はηintは(3)式よりηint=1/(1+(Δ/κinj+Δβ1,inj/κinj)2)・(sinβc,injz)2となる。
【0021】従って、キャリア注入時にκは上昇することからも ≫1・・・・・キャリア非注入時 Δ/κ: ・・・・・(7)
≪1・・・・・キャリア注入時となるように層構成の設定が可能である。こうして、キャリア注入時にηintが大きくなってパワーの移行が起こり、非注入時にはパワー移行が起こらない様にできる。
【0022】この時、グレーティングがない場合にはκ≪1となるので Δ/κ ≫1・・・・・常時 ・・・・・(8)
となり、パワー移行が起こらない。
【0023】特に光アンプのように高注入のデバイスの場合、屈折率のキャリア注入効果は大きいため設計上有利となる。
【0024】一方、周期的にキャリアを注入する場合、キャリア非注入時にはK=0なのでΔc=β2−β1 非注入時Δinj=β2,inj−(β1,inj+K) 注入時=Δc−K。
【0025】キャリア非注入時のκをκ≪1と選ぶことにより ≫1・・・キャリア非注入時 Δ/κ : ・・・(7′)
≪1・・・キャリア注入時となる。こうして、キャリア注入時にパワーの移行が起こり、非注入時にはパワー移行が起こらない様にできる。
【0026】また、周期的電流狭窄層がないときには、常時 Δ/κ ≫1 ・・・(8′)
となるように層構成の設定が可能であり、パワー移行が起こらない様にできる。
【0027】特にLDAのように高注入のデバイスの場合、屈折率のキャリア注入効果は大きいため設計上有利となる。
【0028】尚、キャリア注入量によって屈折率が異なるので、実効的なグレーティングピッチは変化する。この結果、フィルタリング効果が現れるが、フィルタ帯域はグレーティング形状を制御することで目的に応じて広くも狭くも設定できるので場合に応じて設計すればよい。
【0029】
【実施例1】図1は本発明の第1の実施例の断面図である。光の進行方向に対して、3個の領域が直列につながれた構成になっている。領域1および3はカプラ領域、領域2は利得領域ないし光増幅部である。領域1および3では(7)式が、領域2では(8)式が成り立つように層構成を設計した。
【0030】たとえば、図1において、10はn型GaAs基板、11はn型第1クラッド層(Al0.5Ga0.5As、厚さ1.5μm)、12はn型第1コア層(Al0.08Ga0.92As、厚さ0.1μm)、13はn型第2クラッド層(Al0.5Ga0.5As、厚さ0.5μm)、14はn型第3クラッド層(Al0.3Ga0.7As、厚さ0.5μm)、15はアンドープ第2コア層(Al0.08Ga0.92As、厚さ0.05μm)、16はp型第4クラッド層(Al0.5Ga0.5As、厚さ1.5μm)、17はコンタクト層(GaAs)である。18および19は正電極および負電極であり、20は屈折率を変調するためのグレーティングである。本実施例の場合、導波光の波長を860nmとして、グレーティング20は、ピッチ8.5μm、深さ1.2nmのサインカーブに設定した。
【0031】領域1および3のデバイス長は(4)式で決まる完全結合長(本実施例では500μm)とし、領域2(増幅部)のデバイス長は600μmとした。また、入出力端面には、無反射(AR)コート22を施している。21は先球ファイバである。
【0032】動作原理について図2を用いて説明する。例えば、波長860nmの光を第1コア層12のみに導波させる場合を考える。
【0033】1)全領域にキャリアを注入しない時図2において、屈折率の変化はないので光導波路25に入力された光26は第2導波路24の導波モードとは全くカップルしない。従って、領域2および領域3を通過し、外部へ出力される。
【0034】2)全領域にキャリアを注入したとき図3において、第1導波路25に導波された光31は、グレーティング20によって変調を受けると共に、第2導波路24とカップリングする。注入されたキャリア密度に対して移行率100%となるように設定されているので、完全結合長だけ導波すると移行率100%で導波路24へ移る(電界分布を32で示した)。領域2は利得領域になっているため光増幅のみが行われ、光強度が大きくなる(電界分布を33で示した)。次に、導波光34が進行する領域3では、領域1と同様に導波路24から導波路25に移行し、無反射端面22を介して外部へ出力される。領域2では、キャリア注入に関係なく、カップルしないので、所望の光増幅をするためにキャリア注入量やデバイス長を選ぶことができる。
【0035】
【実施例2】第1実施例では光アンプ部のコア15はバルクのAlGaAsを用いたが、量子井戸層(QW)を用いてもよい。図6はこの場合の層構成の一例の各層のAl含有率を示す。第2コア層をAl0.2Ga0.8As(障壁層)・GaAs(井戸層)の5対からなる多重量子井戸構造15aとしている。この結果、利得スペクトルは第1実施例に比べ狭帯域化できるとともに、利得の大きさをも大きくすることができる。図11は、キャリアの注入レベルを同等にしたときのバルクの利得スペクトル701および多重量子井戸の利得スペクトル702を模式的に表したものである。
【0036】
【実施例3】図5は本発明の第3実施例の断面図である。光の進行方向に対して、同じく、3個の領域が直列につながれた構成になっている。領域1および3は光カプラ部、領域2は光増幅部である。領域1および3では(7´)式が、領域2では(8´)式が成り立つように層構成を設計した。
【0037】たとえば、図5において、100はn型GaAs基板、101はn型第1クラッド層(Al0.5Ga0.5As、厚さ1.5μm)、102はn型第1コア層(Al0.08Ga0.92As、厚さ0.1μm)、103はn型第2クラッド層(Al0.5Ga0.5As、厚さ0.5μm)、104はアンドープ第2コア層(Al0.08Ga0.92As、厚さ0.05μm)、105はp型第3クラッド層(Al0.5Ga0.5As、厚さ1.5μm)、106はコンタクト層(GaAs)である。107および108は正電極および負電極であり、109は屈折率を変調するための周期的電流狭窄層である。本実施例の場合、導波光の波長を860nmとして、周期的電流狭窄層109のグレーティングはピッチ8.5μm、デューティ50%の矩形状に設定した。
【0038】領域1および3のデバイス長は(4)式で決まる完全結合長(本実施例では500μm)とし、領域2(増幅部)のデバイス長は600μmとした。また、先球光ファイバ110に対向した入出力端面には、無反射(AR)コート111を施している。
【0039】次に第3実施例の製作方法について簡単に説明する。
【0040】たとえば、通常の有機金属気相成長法(MOCVD法)や分子線エピタキシャル成長法(MBE法)を用いて、まず、(100)n型GaAs基板100上に第1クラッド層101から第2コア層104まで成長する。第2コア層104を成長したあと、p型Al0.5Ga0.5As層(厚さ0.3μm、キャリア濃度p〜3×1017cm-3)、n型Al0.5Ga0.5As層(厚さ0.5μm、キャリア濃度n〜3×1017cm-3)を形成した後、前述したようにピッチ8.5μmのグレーティングパターンを、その深さがp型Al0.5Ga0.5As層に達するようにエッチングする。この後、引続き、MOCVDでp型Al0.5Ga0.5As層(厚さ0.7μm、キャリア濃度p〜3×1017cm-3)を成長する。
【0041】キャリア濃度を〜3×1017cm-3に設定したのは、キャリア非注入時にこの領域で屈折率差が生じないようにするためである。この結果、周期的電流狭窄層109が作製される。この後、コンタクト層106を成長する。
【0042】横モードの制御のために、埋め込み構造等をつくり付け、電極107、108を形成することで本実施例は完成する。図8は図5の断面の模式図であり、図中、401はAl0.5Ga0.5As高抵抗埋め込み層である。この横モードの制御のための構造は他の実施例についても同じである。
【0043】次に第3実施例の動作原理について図6を用いて説明する。例えば、波長860nmの光を第1コア層102のみに導波させる場合を考える。
【0044】1)全領域にキャリアを注入しない時図6において、前述のように周期的電流狭窄層109付近では屈折率の変化はないので光導波路205に入力された光201は導波路204の導波モードとは全くカップルしない。従って、領域2および領域3を通過し、外部へ出力される(フェイルセイフ機能)。
【0045】2)全領域に独立にキャリアを注入した時正電極107から注入されたキャリアは、周期的電流狭窄層109によってキャリア分布が変調され、第2コア層104中に、キャリア分布ができ、これに対応した等価的屈折率分布が形成される。
【0046】従って、導波路205に導波された光301は、図7に示す様に、周期的電流狭窄層109によって導波路204とカップリングする。注入されたキャリア密度に対して移行率100%となるように設定されているので、完全結合長だけ導波すると移行率100%で導波路204へ移る(電界分布を302で示した)。第2コア層104を通過したキャリアは第1コア層102にも流れ込むが、キャリアの拡散効果やキャリアの注入効率が低い(第1コア層102にはpn接合はないため)ために第1コア層102では屈折率は変調されない。
【0047】領域2は利得領域になっているため光増幅のみが行われ、光強度が大きくなる(電界分布を303で示した)。次に、導波光304が進行する領域3では、領域1と同様に導波路204から導波路205に移行し、無反射端面111を介して外部へ出力される。領域2はキャリア注入に関係なく、カップルしないので所望の光増幅をするためにキャリア注入量やデバイス長を選ぶことができる。
【0048】本実施例ではn基板を用いたがキャリアによって拡散長が異なるのでp基板を用いた方が有利なこともある。
【0049】
【実施例4】図9は本発明の第4の実施例の模式図である。周期的電流狭窄層109´が第2クラッド層103´中に設定されている点が、第3の実施例とは異なっている。
【0050】この結果、1)キャリア注入時に第2コア層104におけるキャリア分布が、同じグレーティングパターンを用いても第3実施例とは異なる、すなわち実効的なグレーティングが異なること、2)周期的電流狭窄層109´の位置によっては第1コア層102にもキャリア分布を誘起すること、3)製作上、再成長で利得層104を形成するため第3実施例よりも高度な製作技術を必要とすること、などの結果をもたらす。
【0051】2)を積極的に利用し、第1コア層102を利得媒質にすることでよりカップリングを大きくすることができるが、非キャリア注入時には損失媒質になる可能性がある。動作原理は第3実施例と同じである。
【0052】
【実施例5】第3、第4実施例では、光アンプ部のコア層104はバルクのAlGaAsを用いたが量子井戸層(QW)を用いてもよい。図10はこの場合の層構成の一例の各層のAl含有率を示す。第2コア層をAl0.2Ga0.8As(障壁層)・GaAs(井戸層)の5対からなる多重量子井戸構造104aとしている。この結果、利得スペクトルは第3、第4実施例に比べ狭帯域化できるとともに、利得の大きさも大きくすることができる。図11は、キャリア注入レベルを同等にしたときのバルクの利得スペクトル701および多重量子井戸の利得スペクトル702を模式的に表したものである。
【0053】また、第2コア層として歪量子井戸層を用いることで、TEモードおよびTMモードに等しい利得を与える(偏波無依存LDA)ことも可能である。
【0054】次に、本発明の装置を光通信ネットワークへ適用した実施例について説明する。伝送路形態がバス型、スター型あるいはループ型の光通信ネットワークにおいて、光を分岐して情報を取り出す際、分岐方法および分岐数に応じた光増幅器が必要になる。
【0055】
【実施例6】図12は本発明の装置を光ブースタアンプとして使用する場合の適用例である。400はバスライン、401および402は光リピータ、403〜406は光ノード、407〜410は能動型光スイッチである。光リピータ401および402が本発明の装置を含んでおり、分岐毎にロスするパワーを補うために用いられている。通常は光リピータ401、402と光スイッチ407〜410は連動しており、分岐数に応じた増幅を光リピータ401あるいは402で行い、増幅が行われているときはスイッチは常にノード側に開いている。
【0056】なんらかの理由で光アンプにトラブルが生じた場合には、光アンプの供給電源が切れると同時に、能動型光スイッチもクローズし、バスライン400上の光信号は損失を受けることなく通過する。すなわち、フェイルセーフ機能が働く。
【0057】
【実施例7】図13は本発明の装置をブースタアンプ+スイッチとして使用する場合の適用例である。500は光伝送路、501は本実施例の装置を含む光アンプ/光スイッチ、502はスター型光スイッチ、503〜507は光ノードである。
【0058】ブースタアンプとしての機能は第6実施例の場合と同じである。各端局が発信するときは、光アンプ/光スイッチ501の電流を切ることで単なる透過デバイスとなる。したがって、たとえば、送信、受信を交互に行うピンポン通信のネットワークを容易に組むことができる。
【0059】
【発明の効果】本発明の効果は以下の通りである。
【0060】1)光スイッチ、光アンプ、光変調器、光合流分岐器がモノリシックに集積化さ れうるため、小型かつ高機能になりうる。
2)光アンプ等の能動デバイスが故障した場合のフェイルセーフが自動的に行われる。
3)他デバイスとの集積化が容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の装置の第1実施例の模式的断面図。
【図2】第1実施例の動作原理を説明する模式図。
【図3】第1実施例の動作原理を説明する模式図。
【図4】本発明の装置の第2実施例の層構成を説明する図。
【図5】本発明の装置の第3実施例の模式的断面図。
【図6】第3実施例の動作原理を説明する模式図。
【図7】第3実施例の動作原理を説明する模式図。
【図8】第3実施例の横断面図。
【図9】本発明の装置の第4実施例の模式的断面図。
【図10】本発明の装置の第5実施例の層構成を説明する図。
【図11】第2及び第5実施例の利得スペクトルの模式図。
【図12】本発明の装置を適用した光通信システムの実施例を示す図。
【図13】本発明の装置を適用した光通信システムの実施例を示す図。
【図14】従来例を示す斜視図。
【符号の説明】
10、100 基板
11、101 第1クラッド層
12、102 第1コア層
13、103、103´ 第2クラッド層
14、105 第3クラッド層
15、15a、104、104a 第2コア層
16 第4クラッド層
17、106 コンタクト層
18、107 正電極
19、108 負電極
20 グレーティング
21、110 先球光ファイバ
22、111 無反射膜
24、25、204、205 光導波路
109、109´ 周期的電流狭窄層
350 高抵抗埋め込み層
400 光バスライン
401、402 光リピータ
403〜406、503〜507 光ノード
407〜410 能動型光スイッチ
500 光伝送路
501 光アンプ/光スイッチ
502 スターカプラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】 半導体基板上に、少なくとも第1クラッド層、第1コア層、第2クラッド層、第3クラッド層、第2コア層および第4クラッド層を積層した二重光導波路構造を有する導波型光デバイスであって、導波方向に複数領域に分割されているとともに、該領域のうち少なくとも1つの領域では前記第2クラッド層および第3クラッド層の間に屈折率変調層を有し、前記複数領域それぞれにおいて前記第1コア層あるいは前記第2コア層にキャリアを注入する手段を有することを特徴とする集積型光デバイス。
【請求項2】 前記屈折率変調層がグレーティングで形成されていることを特徴とする請求項1記載の集積型光デバイス。
【請求項3】 前記第1コア層あるいは第2コア層あるいはその両方の構造が単一あるいは複数の量子井戸からなることを特徴とする請求項1または2記載の集積型光デバイス。
【請求項4】 入射光に対し前記第1コア層が透明媒質であることを特徴とする請求項1または2記載の集積型光デバイス。
【請求項5】 入射光に対し前記第2コア層が利得媒質であることを特徴とする請求項1または2記載の集積型光デバイス。
【請求項6】 請求項1記載の集積型光デバイスが複数の端局を有するバス型の光伝送路上に配置され、キャリア非注入時には、入射光がそのまま出力されるフェイルセイフ機能によりネットワークに支障をきたさないことを特徴とする光通信ネットワーク。
【請求項7】 請求項1記載の集積型光デバイスが複数の端局を有するスター型の光伝送路上に配置され、キャリア非注入時には、入射光がそのまま出力されるフェイルセイフ機能によりネットワークに支障をきたさないことを特徴とする光通信ネットワーク。
【請求項8】 半導体基板上に、少なくとも第1導電型の第1クラッド層、第1導電型の第1コア層、第1導電型の第2クラッド層、第2コア層および第2導電型の第3クラッド層を積層した二重光導波路構造を有する導波型光デバイスであって、導波方向に複数領域に分割されているとともに、該分割領域のうち少なくとも1つの領域では前記第2クラッド層中あるいは第3クラッド層中あるいはその両方に周期的屈折率変調層を有し、該周期的屈折率変調層によって前記二重導波路の光分布を制御することを特徴とする集積型光デバイス。
【請求項9】 前記周期的屈折率変調層が、それに近接する前記クラッド層と同一の屈折率を有する物質からなり、かつその導電型が前記クラッド層のそれと異なる領域と同じ領域とを周期的に有し、該複数領域に独立にキャリアを注入する手段を有することを特徴とする請求項8記載の集積型光デバイス。
【請求項10】 前記第1コア層あるいは第2コア層あるいはその両方の構造が単一あるいは複数の量子井戸からなることを特徴とする請求項8または9記載の集積型光デバイス。
【請求項11】 入射光に対し前記第1コア層が透明媒質であることを特徴とする請求項8または9記載の集積型光デバイス。
【請求項12】 入射光に対し前記第2コア層が利得媒質であることを特徴とする請求項8または9記載の集積型光デバイス。
【請求項13】 請求項8記載の集積光デバイスが複数の端局を有するバス型の光伝送路上に配置され、キャリア非注入時には、入射光がそのまま出力されるフェイルセイフ機能によりネットワークに支障をきたさないことを特徴とする光通信ネットワーク。
【請求項14】 請求項8記載の集積光デバイスが複数の端局を有するスター型の光伝送路上に配置され、キャリア非注入時には、入射光がそのまま出力されるフェイルセイフ機能によりネットワークに支障をきたさないことを特徴とする光通信ネットワーク
【請求項15】 半導体基板上に、第1光導波路と第2光導波路を積層した二重光導波路構造を有する導波型光デバイスであって、導波方向に複数領域に分割されているとともに、該領域のうち少なくとも1つの領域は、前記二重光導波路構造の光分布を制御する屈折率変調層を有し、前記複数領域それぞれにおいてキャリアを注入する手段を有することを特徴とする集積型光デバイス。
【請求項1】 半導体基板上に、少なくとも第1クラッド層、第1コア層、第2クラッド層、第3クラッド層、第2コア層および第4クラッド層を積層した二重光導波路構造を有する導波型光デバイスであって、導波方向に複数領域に分割されているとともに、該領域のうち少なくとも1つの領域では前記第2クラッド層および第3クラッド層の間に屈折率変調層を有し、前記複数領域それぞれにおいて前記第1コア層あるいは前記第2コア層にキャリアを注入する手段を有することを特徴とする集積型光デバイス。
【請求項2】 前記屈折率変調層がグレーティングで形成されていることを特徴とする請求項1記載の集積型光デバイス。
【請求項3】 前記第1コア層あるいは第2コア層あるいはその両方の構造が単一あるいは複数の量子井戸からなることを特徴とする請求項1または2記載の集積型光デバイス。
【請求項4】 入射光に対し前記第1コア層が透明媒質であることを特徴とする請求項1または2記載の集積型光デバイス。
【請求項5】 入射光に対し前記第2コア層が利得媒質であることを特徴とする請求項1または2記載の集積型光デバイス。
【請求項6】 請求項1記載の集積型光デバイスが複数の端局を有するバス型の光伝送路上に配置され、キャリア非注入時には、入射光がそのまま出力されるフェイルセイフ機能によりネットワークに支障をきたさないことを特徴とする光通信ネットワーク。
【請求項7】 請求項1記載の集積型光デバイスが複数の端局を有するスター型の光伝送路上に配置され、キャリア非注入時には、入射光がそのまま出力されるフェイルセイフ機能によりネットワークに支障をきたさないことを特徴とする光通信ネットワーク。
【請求項8】 半導体基板上に、少なくとも第1導電型の第1クラッド層、第1導電型の第1コア層、第1導電型の第2クラッド層、第2コア層および第2導電型の第3クラッド層を積層した二重光導波路構造を有する導波型光デバイスであって、導波方向に複数領域に分割されているとともに、該分割領域のうち少なくとも1つの領域では前記第2クラッド層中あるいは第3クラッド層中あるいはその両方に周期的屈折率変調層を有し、該周期的屈折率変調層によって前記二重導波路の光分布を制御することを特徴とする集積型光デバイス。
【請求項9】 前記周期的屈折率変調層が、それに近接する前記クラッド層と同一の屈折率を有する物質からなり、かつその導電型が前記クラッド層のそれと異なる領域と同じ領域とを周期的に有し、該複数領域に独立にキャリアを注入する手段を有することを特徴とする請求項8記載の集積型光デバイス。
【請求項10】 前記第1コア層あるいは第2コア層あるいはその両方の構造が単一あるいは複数の量子井戸からなることを特徴とする請求項8または9記載の集積型光デバイス。
【請求項11】 入射光に対し前記第1コア層が透明媒質であることを特徴とする請求項8または9記載の集積型光デバイス。
【請求項12】 入射光に対し前記第2コア層が利得媒質であることを特徴とする請求項8または9記載の集積型光デバイス。
【請求項13】 請求項8記載の集積光デバイスが複数の端局を有するバス型の光伝送路上に配置され、キャリア非注入時には、入射光がそのまま出力されるフェイルセイフ機能によりネットワークに支障をきたさないことを特徴とする光通信ネットワーク。
【請求項14】 請求項8記載の集積光デバイスが複数の端局を有するスター型の光伝送路上に配置され、キャリア非注入時には、入射光がそのまま出力されるフェイルセイフ機能によりネットワークに支障をきたさないことを特徴とする光通信ネットワーク
【請求項15】 半導体基板上に、第1光導波路と第2光導波路を積層した二重光導波路構造を有する導波型光デバイスであって、導波方向に複数領域に分割されているとともに、該領域のうち少なくとも1つの領域は、前記二重光導波路構造の光分布を制御する屈折率変調層を有し、前記複数領域それぞれにおいてキャリアを注入する手段を有することを特徴とする集積型光デバイス。
【図2】
【図4】
【図1】
【図3】
【図6】
【図11】
【図5】
【図7】
【図9】
【図8】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図4】
【図1】
【図3】
【図6】
【図11】
【図5】
【図7】
【図9】
【図8】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開平6−265958
【公開日】平成6年(1994)9月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−80170
【出願日】平成5年(1993)3月15日
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【公開日】平成6年(1994)9月22日
【国際特許分類】
【出願日】平成5年(1993)3月15日
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
[ Back to top ]