説明

集積型半導体装置

【課題】 従来に比べて小型で、素子機能部間で、高い周波数の信号を高精度に伝送することができる集積型半導体装置を提供する。
【解決手段】 サファイア単結晶基板10と、サファイア単結晶基板10の一方主面10Aに第1素子機能部22を備え、他方主面10Bに第2素子機能部32を備え、第1素子機能部22が光を発光し、第2素子機能部32がサファイア単結晶基板10を透過した光を受光することで、高い周波数の信号を精度良く伝送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積型半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子として機能する素子機能部が複数個電気的に接続された集積型半導体装置は、様々な技術分野で利用されている。これら素子機能部を備える複数の半導体チップをなるべく小さな空間に集め、半導体装置全体のサイズを小さくするための集積化技術も、従来から積極的に開発されている。下記特許文献1には、このような集積化技術の一例が開示されている。図4は、特許文献1に記載の集積型半導体装置の概略断面図である。
【0003】
特許文献1に記載の集積型半導体装置では、インターポーザと呼ばれる中間基板100の一方主面100Aに、素子機能部を備える半導体チップ110Aが実装され、中間基板100の他方主面100Bに半導体チップ110Bが実装されている。特許文献1に記載の中間基板100は、一方主面100Aから他方主面100Bまで貫通するビア導体140と、ビア導体140の一方主面100A側の端面に形成された電極パッド142Aと、ビア導体140の他方主面100B側の端面に形成された電極パッド142Bとを有している。半導体チップ110Aは表面に電極パッド112Aを備え、半田ボール150を介してこの電極パッド112Aがビア導体140に電気的に接続されている。半導体チップ110Bも表面に電極パッド142Bを備え、半田ボール150を介して電極パッド142Bがビア導体140も電気的に接続されている。特許文献1に示す例ではこのように、半導体チップ100Aと半導体チップ100Bとが、中間基板100の一方主面100Aと他方主面100Bとにそれぞれ実装され、各半導体チップが、ビア導体140を介して電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−203318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の集積型半導体装置のように、中間基板100に設けたビア導体140を介して、複数の半導体チップを電気的に接続する場合には、半導体チップ110Aの電極112Aと、半導体チップ100Bの電極112Bとに対応するよう、複雑に曲折したビア導体140を形成する必要があり、中間基板100の形成に多大なコストが生じるといった課題があった。また、半導体チップ110Aと半導体チップ110Bとの間で高周波信号を伝送する場合に、半田ボール150やビア導体140における抵抗損失やインピーダンス不整合の問題が生じ、半導体チップ間で伝送させる信号の周波数を十分高くすることができないといった課題もあった。また、半導体チップ110Aおよび110B自体の小型化や、接合のための半田ボール150の小型化には限界があり、半導体装置全体の小型化に限界があるといった課題があった。本発明は、かかる課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、サファイア単結晶基板と、前記サファイア単結晶基板の一方主面に形成された化合物半導体層と、前記サファイア単結晶基板の他方主面に接合された半導体基板と、前記化合物半導体層に形成された、半導体素子として機能する第1素子機能部と、前記半導体基板に形成された、半導体素子として機能する第2素子機能部とを備え、前記第1素子機能部は、光を発光し、前記第2素子機能部は、前記サファイア単結晶基板を透過した前記光を受光することを特徴とする集積型半導体装置を提供する。
【0007】
また、本発明は、サファイア単結晶基板と、前記サファイア単結晶基板の一方主面にエピタキシャル成長された化合物半導体層と、前記サファイア単結晶基板の他方主面に接合された半導体基板と、前記化合物半導体層に形成された、半導体素子として機能する第1素子機能部と、前記半導体基板に形成された、半導体素子として機能する第2素子機能部とを備え、前記第2素子機能部は、光を発光し、前記第1素子機能部は、前記サファイア単結晶基板を透過した前記光を受光することを特徴とする集積型半導体装置を併せて提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の集積型半導体装置は、従来に比べて小型で、素子機能部間で、高い周波数の信号を高精度に伝送することができる。また、本発明の集積型半導体装置は、低いコストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の集積型半導体装置の一実施形態について説明する概略断面図である。
【図2】(a)〜(e)は、それぞれ図1に示す集積型半導体装置の製造方法の一実施形態について説明する概略断面図である。
【図3】本発明の集積型半導体装置の他の実施形態について説明する概略断面図である。
【図4】従来の集積型半導体装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の集積型半導体装置の一実施形態である集積型半導体装置1(以下、半導体装置1とする)について説明する概略断面図である。
【0011】
半導体装置1は、サファイア単結晶基板10と、サファイア単結晶基板10の一方主面10Aに配置された第1素子機能部22と、同じく一方主面10Aに配置された第3素子機能部24と、サファイア単結晶基板10の他方主面10Bに配置された第2素子機能部32と、同じく他方主面10Bに配置された第4素子機能部34と、を備えて構成されている。第1素子機能部22と第3素子機能部24はいずれも、サファイア単結晶基板10の一方主面10Aに形成された化合物半導体層20に形成されている。また、第2素子機能部32と第4素子機能部34はいずれも、サファイア単結晶基板10の他方主面10Bに接合された半導体基板30に形成されている。半導体装置1では、第1素子機能部22が光40を発光し、第2素子機能部32が、サファイア単結晶基板10を透過した発光40を受光する。サファイア単結晶基板の厚さは、例えば0.01mmから5mmであり、半導体層20の厚さは例えば0.01mmから0.5mmであり、半導体基板30の厚さは0.01mmから0.5mmである。
【0012】
本実施形態の半導体装置1では、化合物半導体層20は、III−V族化合物半導体を主成分としている。より具体的には、化合物半導体層20は例えば、サファイア単結晶基板10の一方主面10Aにエピタキシャル成長された、AlGa1−x−yInN(0≦x,y,x+y≦1)で表される窒化物系半導体を主成分とする化合物半導体層からなる。III−V族化合物半導体、その中でも特にAlGa1−x−yInN(0≦x,y,x+y≦1)で表される窒化物系半導体等は、サファイア単結晶と近い格子定数を有しており、サファイア単結晶基板10の一方主面10Aには、結晶欠陥等が少なく結晶性が高い化合物半導体層20をエピタキシャル成長させることができる。第1素子機能部22と第3素子機能部24は、エピタキシャル成長された結晶性が高い化合物半導体層20に形成されている。第1素子機能部22は、公知の半導体素子製造プロセスを経て化合物半導体層20に形成されたLED素子構造52を有している。また、第3素子機能部24は、公知の半導体素子製造プロセスを経て化合物半導体層20に形成された、電気信号を処理可能な、いわゆるCMOS素子機能等を有して構成された電子デバイス素子構造62を有している。第3素子機能部24は第1素子機能部22と配線部29を介して電気的に接続されている。第3素子機能部24の電子デバイス構造62は、配線部29を介して第1素子機能部22のLED素子構造52に電気信号を送信し、LED素子構造52が、送信された電気信号に応じた光を発光する。
【0013】
III−V族化合物半導体、特にAlGa1−x−yInN(0≦x,y,x+y≦1)で表される窒化物系半導体は、広いバンドギャップと直接遷移型のバンド構造を有しており、電子デバイス素子として用いた場合、高周波信号の処理能力が高く、また高い出力で電気信号を送信することができる。また、III−V族化合物半導体、特にAlGa1−x−yInN(0≦x,y,x+y≦1)で表される窒化物系半導体は、上記物理的特徴から、LED素子として用いた場合、入力された電気信号に対する応答性に優れ、入力された電気信号に応じた高強度の光を発光することができる。また、Al、Ga、In、N、等の各種元素の含有割合を調整することで、バンドギャップの大きさや発光波長などの種々の特性を、広い範囲にわたって細かく調整することができる。
【0014】
半導体基板30は、厚さが0.01mm〜0.5mmと比較的薄い、シリコン単結晶基板である。半導体基板30は例えば、サファイア単結晶基板10の他方主面10Bに、シリコン単結晶基板が公知の接合技術を用いて接合されて構成されている。接合技術としては、接合する対象面の表面を活性化して接合する方法、および静電気力を利用して接合する方法等が挙げられる。表面を活性化する方法としては、サファイア単結晶基板10の他方主面10Bと、半導体基板30の接合する対象面を、例えば真空中でイオンビームを照射して表面をエッチングして活性化する方法や、化学溶液で接合する対象面の表面をエッチングして活性化する方法などが挙げられる。表面を活性化させる接合方法は、原子間力などを利用したいわゆる固相接合であり、サファイア単結晶基板10と半導体基板30とが直接的に接合される。このような表面を活性化して行う接合では、接合部分が例えば100℃以下と比較的低温であっても、サファイア単結晶基板10と半導体基板30とを十分に強い強度で接合することができる。
【0015】
第2素子機能部32と第4素子機能部34とは、サファイア単結晶基板に接合された半導体基板30に形成されており、例えば厚さが数百μm以上のシリコン単結晶基板の表面部分を加工して形成した素子機能部に比べて、高い電気信号処理性能を有している。これは、比較的厚さの薄い半導体基板30に形成された第2素子機能部32および第4素子機能部34は、絶縁体であるサファイア単結晶基板10に接合されているので、素子機能部とそのほかの部分との浮遊容量が小さく、電気信号の機能素子部以外の領域への漏洩も小さく、また、素子機能部へのノイズ信号の侵入も少ない等の理由からである。
【0016】
第2素子機能部32は、公知の半導体素子製造プロセスを経て形成された、半導体基板30に形成されたPD素子構造62を有している。また、第4素子機能部24は、公知の半導体素子製造プロセスを経て半導体基板30に形成された、電気信号を処理可能な電子デバイス素子構造64を有している。第4素子機能部34は、第2素子機能部32と配線部39を介して電気的に接続されている。PD素子構造62を有する第2素子機能部32は、このPD素子構造62が、第1素子機能部22のLED素子構造52から発光された光を受光し、この受光した光に応じた電気信号を生成して、第4素子機能部34の電子デバイス構造64に送信する。
【0017】
サファイア単結晶基板10は光透過性に優れており、第1素子機能部22のLED素子構造52から発した光は、サファイア単結晶基板10内を良好に透過し透過の際の光量損失も小さい。また、半導体装置1では、サファイア単結晶基板10と半導体基板30とが、例えば金属や接着材などの接合層を介することなく、固相接合によって直接接合されている。半導体装置1では、サファイア単結晶基板10と半導体基板30との界面部分に、透過率を低減させる層がなく、第1素子機能部22が発光した光は、半導体基板30に形成された第2素子機能部32に良好に入射する。
【0018】
また、サファイア単結晶基板10は、一方主面10Aに凹凸部分11Aを有し、他方主面10Bに凹凸部分11Bを有している。第1素子機能部22のLED素子構造52は、一方主面10Aの凹凸部分11Aに対応する領域に設けられており、第2素子機能部32のPD素子構造62は、他方主面10Bの凹凸部分11Bに対応する領域に設けられている。凹凸部分11Aおよび凹凸部分11Bは、一方主面10Aに垂直な平面視で、いわゆるフォトニック結晶構造に対応する形状に形成されており、第1素子機能部22から発光される光の波長オーダーの周期で、凹部と凸部とが規則的に配列されている。
【0019】
第1素子機能部22のLED素子構造52から発する光は指向性のない光であるが、LED素子構造52から発した光の多くは、このLED素子構造52に対応する位置にある凹凸部分11Aに入射する。この凹凸部分11Aに入射した光は、この凹凸部分11Aによって光の進行方向が整えられて、一方主面11Aから他方主面11Bに向かう方向に集光され、一方主面10Aから他方主面10Bに進行する光40となる。このように、凹凸部分11Aに対応する領域に第1素子機能部22が配置されていることで、第1素子機能部22が発した光を、第2素子機能部22に向かって効率的に進行させることができる。
【0020】
また、サファイア単結晶基板10と半導体基板30との界面では、サファイア単結晶基板10と半導体基板30との屈折率の相違によって、サファイア単結晶基板10から半導体基板30に向かう光が界面で反射されやすい。しかしながら半導体装置1では、他方主面10Bの凹凸部分11Bによって、この界面での反射が抑制されて、サファイア単結晶10の側から半導体基板30の側へ、光が出射され易くなっている。半導体装置1では、第1素子機能部22から発光された光40は、凹凸部分11Aと凹凸部分11Bとを介して、第1素子機能部22から第2素子機能部32に効率的に進行し、第2素子機能部32のPD素子構造62によって効率的に受光される。第2素子機能部32のPD素子構造62は、第3素子機能部24から送信された電気信号に対応する光32を、十分に強い光量で受光することができる。
【0021】
サファイア単結晶基板10に直接接合された半導体基板30に形成された第2素子機能部32および第4素子機能部34は、上述のように高い電気信号処理性能を有している。第2素子機能部32は、受光した光40に対応する高精度の電気信号を生成して第4素子機能部へ送り、第4素子機能部34の電子デバイス構造64は、この電気信号を高速かつ高精度に信号処理することができる。
【0022】
半導体装置1は、化合物半導体層20に形成された第1素子機能部22が発した光を、半導体基板30に形成された第2素子機能部32によって受光する構成とすることで、サファイア単結晶基板10の一方主面10Aに配置した素子機能部と、他方主面10Bに配置した素子機能部との間で、光信号を介した情報やり取りを実施することが可能となっている。このように半導体装置1は、サファイア単結晶基板10に貫通孔およびビアホール配線を形成することなく、同一のサファイア単結晶基板10の表裏(一方主面10Aおよび他方主面10B)に配置した素子機能部間で、情報のやり取りを行うことができる。半導体装置1は、ビアホール形成等の煩雑な製造工程を経ることなく、比較的低いコストで作製することができる。また、一方主面10Aから他方主面10Bへ、導体で形成された電気配線を通じて信号を送る場合に生じる、電極パッドやビア導体における抵抗損失やインピーダンス不整合による信号の劣化が発生せず、素子機能部間で、高い周波数の信号を高精度に伝送することができる。
【0023】
また、本実施形態の半導体装置1では、化合物半導体層20に形成された、高い信号処理性能を有する第3素子機能部24と、半導体基板30に形成された、高い信号処理性能を有する第4素子機能部34とを、同一のサファイア単結晶基板10の表裏(一方主面10Aおよび他方主面10B)に集積させて配置しており、比較的小型でありながら、高い情報処理精度を有している。
【0024】
半導体装置1は、例えば以下のような手順で作製することができる。図2(a)〜(e)は、半導体装置1の製造方法の一実施形態について説明する概略断面図である。まず、サファイア単結晶基板を準備し、このサファイア単結晶基板の一方主面と他方主面それぞれの所定箇所にエッチング処理を施して、この所定箇所に凹凸部分を形成する。これにより、図2(a)に示すような、一方主面10Aに凹凸部分11Aを有するとともに、他方主面10Bに凹凸部分11Bを有する、サファイア単結晶基板10を得る。凹凸部分11Aおよび凹凸部分11Bを形成するためのエッチングは、ウエットエッチングやドライエッチング、ブラスト法による加工など、公知の手法を用いればよい。
【0025】
次に、図2(b)に示すように、サファイア単結晶基板10の一方主面10Aの側に、MOVPE法、HVPE法、MOCVD法等の公知の手法を用い、バッファ層、クラッド層、導電層など、材料比率が異なる複数のエピタキシャル層を積層し、化合物半導体層20を形成する。本実施形態のように、AlGa1−x−yInN(0≦x,y,x+y≦1)で表される窒化物系半導体をエピタキシャル成長させる場合、サファイア単結晶基板10の温度は約1000℃〜2000℃程度に設定される。AlGa1−x−yInN(0≦x,y,x+y≦1)で表される窒化物系半導体は、いわゆる横方向成長しやすく、凹凸部分11Aにおける凹部分が空間として残留して、この凹部分の開口を閉塞するように化合物半導体層20が形成される。
【0026】
次に、図2(c)に示すように、エピタキシャル成長によって形成した化合物半導体層20に、フォトリソグラフィーやエッチングなどの各種半導体形成プロセスを施し、LED素子構造52を有する第1素子機能部22、および電子デバイス構造54を有する第3素子機能部24を形成する。第1素子機能部22と第3素子機能部24とは、化合物半導体層20に形成した配線部29を介して電気的に接続されている。この配線部29は、化合物半導体層20自体からなるものでよく、また別途形成した金属層やボンディングワイヤで構成された導体配線からなるものでもよい。配線部29以外の領域は、抵抗率を上げるドーパントを注入するか、部分的に酸化する等の処理を施し、不要領域に電気が漏洩しない構成としている。なお、配線部29以外の領域を、例えばエッチングによって除去してもよい。
【0027】
次に、図2(d)に示すように、サファイア単結晶基板10の他方主面10Bに、半導体基板30を接合する。上述のように、サファイア単結晶基板10の他方主面10Bと半導体基板30とは、表面を活性化させて行う、原子間力などを利用したいわゆる固相接合を用いればよい。このような表面を活性化して行う固相接合では、接合部分が例えば100℃以下と比較的低温であっても、サファイア単結晶基板10と半導体基板30とを十分に強い強度で接合することができる。
【0028】
次に、図2(e)に示すように、半導体基板30に、フォトリソグラフィーやエッチングなどの各種半導体形成プロセスを施し、PD素子構造62を有する第2素子機能部32、および電子デバイス構造64を有する第4素子機能部34を形成する。これら各種プロセスは、約0℃〜約400℃以下の温度範囲で行うことができる。このような温度範囲でプロセスを行っても、化合物半導体層20に与える影響は少なく、結晶構造の劣化による信号処理機能の低下等は発生し難い。第2素子機能部32と第4素子機能部34とは、半導体基板30に形成した配線部39を介して電気的に接続されている。この配線部39は、半導体基板30自体からなるものでよく、また別途形成した金属層やボンディングワイヤで構成された導体配線からなるものでもよい。配線部分以外の領域は、抵抗率を上げるドーパントを注入するか、部分的に酸化する等の処理を施し、不要領域に電気が漏洩しない構成としている。なお、配線部以外の領域を、例えばエッチングによって除去してもよい。半導体層装置1は、このようなプロセスを経て作製することができる。
【0029】
なお、上記例では、サファイア単結晶基板10の他方主面10Bに半導体基板30を接合した後に、この半導体基板30に半導体素子製造プロセスを施して、第2素子機能部32と第4素子機能部34とを作製する例について説明したが、本発明の集積型半導体装置の製造方法については特に限定されない。例えば、予め半導体素子製造プロセスによって第2素子機能部32と第4素子機能部34とが形成された半導体基板30を、上述の固相接合法等を用い、サファイア単結晶基板10の他方主面10Bに接合してもよい。
【0030】
図3は、本発明の集積型半導体装置の他の実施形態である集積型半導体装置2(以下、半導体装置2とする)について説明する概略断面図である。図1では、第1の半導体装置1と同様の構成について、半導体装置1と同じ符号を付している。
【0031】
半導体装置2は、半導体基板30に形成された第2素子機能部32が光を発光し、化合物半導体層20に形成された第1素子機能部22が光を受光する点で、第1実施形態と異なっている。詳しくは、半導体装置2は、サファイア単結晶基板10と、サファイア単結晶基板10の一方主面10Aに配置された第1素子機能部22と、同じく一方主面10Aに配置された第3素子機能部24と、サファイア単結晶基板10の他方主面10Bに配置された第2素子機能部32と、同じく他方主面10Bに配置された第4素子機能部34と、を備えて構成されている。第1素子機能部22と第3素子機能部24はいずれも、サファイア単結晶基板10の一方主面10Aに形成された化合物半導体層20に形成されている。また、第2素子機能部32と第4素子機能部34はいずれも、サファイア単結晶基板10の他方主面10Bに接合された半導体基板30に形成されている。第2素子機能部32は、公知の半導体素子製造プロセスを経て半導体基板30に形成されたLED素子構造82を有しており、第1素子機能部22は、公知の半導体素子製造プロセスを経て化合物半導体層20に形成されたPD素子構造72を有している。また、第3素子機能部24は、公知の半導体素子製造プロセスを経て形成された、電気信号を処理可能な電子デバイス素子構造74を有し、第4素子機能部34は、公知の半導体素子製造プロセスを経て形成された、電気信号を処理可能な電子デバイス素子構造84を有している。
【0032】
第4素子機能部34は第2素子機能部32に配線部39を介して電気的に接続されており、第4素子機能部34の電子デバイス構造84は、第2素子機能部32のLED素子構造82に電気信号を送信し、このLED素子構造82が、送信された電気信号に応じた光を発光する。また、第3素子機能部74は第1素子機能部22と配線部29を介して電気的に接続されており、第1素子機能部22のPD素子構造72が、サファイア単結晶基板10を透過した光40を受光する。第1素子機能部32のPD素子構造72は、この受光した光に応じた電気信号を生成して、第4素子機能部34の電子デバイス構造74に送信する。
【0033】
本実施形態の半導体装置2でも、半導体基板30に形成された第2素子機能部32から発光した光を、化合物半導体層40に形成された第1素子機能部32によって受光する構成とすることで、サファイア単結晶基板10の一方主面10Aに配置した素子機能部と、他方主面10Bに配置した素子機能部との間で、光信号を介した情報やり取りを実施することが可能となっている。半導体装置2でも、サファイア単結晶基板10に貫通孔およびビアホール配線を形成することなく、同一のサファイア単結晶基板10の表裏(一方主面10Aおよび他方主面10B)に配置した素子機能部間で、情報のやり取りを行うことができる。半導体装置2は、半導体1と同様の製造工程を経て作製することが可能であり、製造コストも半導体装置1と同様、比較的低くなっている。また、一方主面10Aから他方主面10Bへ、導体で形成された電気配線を通じて信号を送る場合に比べ、電極パッドやビア導体における抵抗損失やインピーダンス不整合による信号の劣化が生じ難く、素子機能部間で、高い周波数の信号を高精度に伝送することができる。
【0034】
本実施形態の半導体装置2も、化合物半導体層に形成された、高い信号処理性能を有する第3素子機能部24と、半導体基板に形成された、高い信号処理性能を有する第4素子機能部34とを、同一のサファイア単結晶基板10の表裏(一方主面10Aおよび他方主面10B)に集積して配置しており、比較的小型でありながら、素子機能部間で、高い周波数の信号を高精度に伝送することができる。
【0035】
以上、本発明の集積型半導体装置の実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されない。半導体基板の材質、化合物半導体層の材質、素子機能部が有する素子構造や、集積型半導体装置の製造方法など、本発明の実施形態は特に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0036】
1、2 半導体装置
10 サファイア単結晶基板
10A 一方主面
10B 他方主面
20 化合物半導体層
22 第1素子機能部
24 第3素子機能部
29、39 配線部
30 半導体基板
32 第2素子機能部
34 第4素子機能部
40 光
52、82 LED素子構造
54、64、74、84 電子デバイス素子構造
62、72 PD素子構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サファイア単結晶基板と、
前記サファイア単結晶基板の一方主面に形成された化合物半導体層と、
前記サファイア単結晶基板の他方主面に接合された半導体基板と、
前記化合物半導体層に形成された、半導体素子として機能する第1素子機能部と、
前記半導体基板に形成された、半導体素子として機能する第2素子機能部と
を備え、
前記第1素子機能部は、光を発光し、前記第2素子機能部は、前記サファイア単結晶基板を透過した前記光を受光することを特徴とする集積型半導体装置。
【請求項2】
前記第1素子機能部は、LED素子構造を有することを特徴とする請求項1記載の集積型半導体装置。
【請求項3】
前記化合物半導体層は、III−V族化合物半導体を主成分とすることを特徴とする請求項2記載の集積型半導体装置。
【請求項4】
前記化合物半導体層は、AlGa1−x−yInN(0≦x,y,x+y≦1)で表される窒化物系半導体を主成分とすることを特徴とする請求項3記載の集積型半導体装置。
【請求項5】
前記第2素子機能部は、PD素子構造を有し、受光した前記光に応じた電気信号を生成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の集積型半導体装置。
【請求項6】
前記半導体基板は、シリコン単結晶基板であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の集積型半導体装置。
【請求項7】
前記サファイア単結晶基板は、前記一方主面に凹凸部分を有し、
前記第1素子機能部は、前記一方主面の前記凹凸部分に対応する領域に形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の集積型半導体装置。
【請求項8】
前記サファイア単結晶基板は、前記他方主面に凹凸部分を有し、
前記第2素子機能部は、前記他方主面の前記凹凸部分に対応する領域に形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の集積型半導体装置。
【請求項9】
前記化合物半導体層に形成された、前記第1素子機能部に電気的に接続された第3素子機能部を有し、
前記第3素子機能部は、前記第1素子機能部に電気信号を送信し、前記第1素子機能部は、前記電気信号に応じた前記光を発光することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の集積型半導体装置。
【請求項10】
前記半導体基板に形成された、前記第2素子機能部に電気的に接続された第4素子機能部を有し、
前記第2素子機能部は、受光した前記光に応じた電気信号を生成して前記第4素子機能部に送信し、前記第4素子機能部は、前記第2素子機能部から送信された電気信号を受信することを特徴とする請求項9記載の集積型半導体装置。
【請求項11】
サファイア単結晶基板と、
前記サファイア単結晶基板の一方主面にエピタキシャル成長された化合物半導体層と、
前記サファイア単結晶基板の他方主面に接合された半導体基板と、
前記化合物半導体層に形成された、半導体素子として機能する第1素子機能部と、
前記半導体基板に形成された、半導体素子として機能する第2素子機能部と
を備え、
前記第2素子機能部は、光を発光し、前記第1素子機能部は、前記サファイア単結晶基板を透過した前記光を受光することを特徴とする集積型半導体装置。
【請求項12】
前記第2素子機能部は、LED素子構造を有することを特徴とする請求項11記載の集積型半導体装置。
【請求項13】
前記第1素子機能部は、PD素子構造を有し、受光した前記光に応じた電気信号を生成することを特徴とする請求項11または12に記載の集積型半導体装置。
【請求項14】
前記サファイア単結晶基板は、前記一方主面に凹凸部分を有し、
前記第1素子機能部は、前記一方主面の前記凹凸部分に対応する領域に形成されていることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の集積型半導体装置。
【請求項15】
前記サファイア単結晶基板は、前記他方主面に凹凸部分を有し、
前記第2素子機能部は、前記他方主面の前記凹凸部分に対応する領域に形成されていることを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の集積型半導体装置。
【請求項16】
前記化合物半導体層に形成された、前記第1素子機能部に電気的に接続された第3素子機能部を有し、
前記第1素子機能部は、受光した前記光に応じた電気信号を生成して前記第3素子機能部に送信し、前記第3素子機能部は、前記第1素子機能部から送信された電気信号を受信することを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の集積型半導体装置。
【請求項17】
前記半導体基板に形成された、前記第2素子機能部に電気的に接続された第4素子機能部を有し、
前記第4素子機能部は、前記第2素子機能部に電気信号を送信し、前記第2素子機能部は、前記電気信号に応じた前記光を発光することを特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載の集積型半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−98327(P2013−98327A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239319(P2011−239319)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】