説明

集電体用三次元網状アルミニウム多孔体及びその製造方法

【課題】二次電池や非水電解液を用いたキャパシタ等の電極集電体として用いられる三次元網状アルミニウム多孔体の端部にタブリードを取り付けるための圧縮部を形成した二次電池等用の電極集電体およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】端部にタブリードを接続するための厚み方向に圧縮された圧縮部33を有する集電体用三次元網状アルミニウム多孔体であって、前記圧縮部33がアルミニウム多孔体の厚み方向の中央部に形成されていることを特徴とする集電体用三次元網状アルミニウム多孔体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池や非水電解液を用いたキャパシタ(以下、単に「キャパシタ」ともいう)等の電極集電体として用いられる三次元網状アルミニウム多孔体のおよびその製造方法に関する。
【0002】
三次元網目構造を有する金属多孔体は、各種フィルタ、触媒担体、電池用電極など多方面に用いられている。例えば三次元網目状ニッケル多孔体(以下「ニッケル多孔体」という)からなるセルメット(住友電気工業(株)製:登録商標)がニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池等の電池の電極材料として使用されている。セルメットは連通気孔を有する金属多孔体であり、金属不織布など他の多孔体に比べて気孔率が高い(90%以上)という特徴がある。これは発泡ウレタン等の連通気孔を有する多孔体樹脂の骨格表面にニッケル層を形成した後、熱処理して発泡樹脂成形体を分解し、さらにニッケルを還元処理することで得られる。ニッケル層の形成は、発泡樹脂成形体の骨格表面にカーボン粉末等を塗布して導電化処理した後、電気めっきによってニッケルを析出させることで行われる。
【0003】
一方、ニッケルと同様にアルミニウムも導電性、耐腐食性、軽量などの優れた特徴があり、電池用途では例えば、リチウム電池の正極として、アルミニウム箔の表面にコバルト酸リチウム等の活物質を塗布したものが使用されている。そして正極の容量を向上するためには、アルミニウムの表面積を大きくした三次元網目状アルミニウム多孔体(以下「アルミニウム多孔体」という)を用い、アルミニウム内部にも活物質を充填することが考えられる。このようにすると電極を厚くしても活物質を利用でき、単位面積当たりの活物質利用率が向上するからである。
【0004】
アルミニウム多孔体の製造方法として、特許文献1には、内部連通空間を有する三次元網状のプラスチック基体にアークイオンプレーティング法によりアルミニウムの蒸着処理を施して、2〜20μmの金属アルミニウム層を形成する方法が記載されている。
この方法によれば、2〜20μmの厚さのアルミニウム多孔体が得られるとされているが、気相法によるため大面積での製造は困難であり、基体の厚さや気孔率によっては内部まで均一な層の形成が難しい。またアルミニウム層の形成速度が遅い、設備が高価などにより製造コストが増大するなどの問題点がある。さらに、厚膜を形成する場合には、膜に亀裂が生じたりアルミニウムの脱落が生じたりするおそれがある。
【0005】
また、特許文献2には、三次元網目状構造を有する発泡樹脂成形体の骨格にアルミニウムの融点以下で共晶合金を形成する金属(銅等)による皮膜を形成した後、アルミニウムペーストを塗布し、非酸化性雰囲気下で550℃以上750℃以下の温度で熱処理をすることで有機成分(発泡樹脂)の消失及びアルミニウム粉末の焼結を行い、金属多孔体を得る方法が記載されている。
しかしながら、この方法によればアルミニウムと共晶合金を形成する層が出来てしまい、純度の高いアルミニウム層が形成できない。
【0006】
他の方法としては、アルミニウムめっきを三次元網目状構造を有する発泡樹脂成形体に施すことが考えられる。アルミニウムの電気めっき方法自体は知られているが、アルミニウムのめっきは、アルミニウムの酸素に対する親和力が大きく、電位が水素より低いために水溶液系のめっき浴で電気めっきを行うことが困難である。このため、従来よりアルミニウムの電気めっきは非水溶液系のめっき浴で検討が行われている。例えば、金属表面の酸化防止などの目的でアルミニウムをめっきする技術として、特許文献3にはオニウムハロゲン化物とアルミニウムハロゲン化物とを混合溶融した低融点組成物をめっき浴として用い、浴中の水分量を2wt%以下に維持しながら陰極にアルミニウムを析出させることを特徴とする電気アルミニウムめっき方法が開示されている。
しかしながら、アルミニウムの電気めっきについては金属表面へのめっきが可能であるのみで、樹脂成形体表面への電気めっき、とりわけ三次元網目構造を有する樹脂多孔体の表面に電気めっきする方法は知られていなかった。
【0007】
本発明者等は三次元網目構造を有するウレタン樹脂多孔質体の表面にアルミニウムの電気めっきを施す方法について鋭意検討したところ、少なくとも表面が導電化されたウレタン樹脂多孔質体に、アルミニウムを溶融塩浴中でめっきすることによりめっきが可能であることを見出して、アルミニウム多孔体の製造方法を完成した。この製造方法によると、骨格の芯としてウレタン樹脂多孔質体を有するアルミニウム構造体が得られる。各種フィルタや触媒担体などの用途によっては、このまま樹脂と金属の複合体として使用しても良いが、使用環境の制約などから、樹脂が無い金属構造体として用いる場合には樹脂を除去してアルミニウム多孔体とする必要がある。
樹脂の除去は、有機溶媒、溶融塩、又は超臨界水による分解(溶解)、加熱分解等任意の方法で行うことができる。
ここで、高温での加熱分解等の方法は簡便であるが、アルミニウムの酸化を伴う。アルミニウムはニッケル等と異なり、一旦酸化すると還元処理が困難であるため、たとえば電池等の電極材料として使用する場合には、酸化により導電性が失われることから用いることが出来ない。そこで、本発明者等はアルミニウムの酸化が起こらないようにして樹脂を除去する方法として、多孔質樹脂成形体の表面にアルミニウム層を形成してなるアルミニウム構造体を溶融塩に浸漬した状態で、該アルミニウム層に負電位を印加しながらアルミニウムの融点以下の温度に加熱して多孔質樹脂成形体を熱分解して除去することによってアルミニウム多孔体を製造する方法を完成した。
【0008】
ところで、通常三次元網状金属多孔体を二次電池の電極集電体として用いるに際しては金属多孔体に外部引き出し用のタブリードを溶着する必要がある。金属多孔体を使用する電極の場合、強固な金属部が存在しないため、リード片を直接溶接することが出来ない。このため、例えば、現在ニッケル水素電池(Ni-MH電池:Nickel metal hydride battery)の正極集電体に用いられるニッケル多孔体は、集電体として加工される際に端部を圧縮し、ニッケル多孔体を箔状とすることでタブリードの溶接することが行われている(特許文献4)。リチウム電池用正極集電体として期待されるアルミ多孔体についてもニッケル多孔体と同様の方法を用いてタブリード溶接を行うことが考えられる。しかしながら、アルミ多孔体についてこの方法を用いて溶接を行ったところ、圧縮部と未圧縮部との境界で破断するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3413662号公報
【特許文献2】特開平8−170126号公報
【特許文献3】特許第3202072号公報
【特許文献4】特開昭56−86459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者等はニッケル多孔体及びアルミニウム多孔体のそれぞれについてその端部を圧縮し、圧縮部と未圧縮部の境界を観察した。その結果、圧縮面の上部ではどちらの多孔体の骨格も破断が生じていることを確認した。図1(a)はその圧縮工程を模式的に示したものであり、これは圧縮の際に、ほぼ多孔体の厚み分ほど圧縮するため、圧縮面上部付近の骨格の歪量が大きすぎるため、図1(b)に示すように圧縮面の上部で多孔体の骨格の破断が生じていると考えられる。そして、ニッケル多孔体とアルミニウム多孔体とで同様の現象が確認されているが、ニッケル多孔体については溶接自体は可能であるのに対し、アルミニウム多孔体では圧縮部が破断して溶接ができなくなることから、アルミニウム多孔体はニッケル多孔体に比べて材料そのものの強度(ニッケルの強度はアルミの約5倍である)が劣ることが破断の原因であると考えられる。
そこで、本発明者等は鋭意検討を進めた結果、アルミニウム多孔体の端部を圧縮する際に、圧縮面上部付近の骨格の歪量を小さくすることにより上記の問題が解決できることを見出して本発明を完成した。
本発明は、二次電池の電極集電体として用いられるアルミニウム多孔体にタブリード溶接用の端部圧縮部を形成するに際し、圧縮部の骨格の歪み量を小さくした電極集電体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の構成は以下の通りである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電極集電体は端部圧縮部にタブリードを溶接する際に応力が加わっても端部圧縮部が破断することなく、タブリードを良好に溶接することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来のニッケル多孔体におけるタブリード溶接用のニッケル多孔体の端部加工方法を示す図である。
【図2】本発明の集電体用アルミニウム多孔体の端部圧縮部を形成する方法の例を示す図である。
【図3】本発明の集電体用アルミニウム多孔体の端部圧縮部を形成する方法の他の例を示す図である。
【図4】本発明の集電体用アルミニウム多孔体の端部圧縮部を形成する方法の他の例を示す図である。
【図5】本発明の集電体用アルミニウム多孔体の端部圧縮部を形成する方法の他の例を示す図である。
【図6】本発明の集電体用アルミニウム多孔体の端部圧縮部を形成する方法の他の例を示す図である。
【図7】端部圧縮部にタブリードを溶着した集電体用アルミニウム多孔体を示す図である。
【図8】本発明によるアルミニウム構造体の製造工程を示すフロー図である。
【図9】本発明によるアルミニウム構造体の製造工程を説明する断面模式図である。
【図10】ウレタン樹脂多孔体の構造を示す表面拡大写真である。
【図11】導電性塗料による樹脂多孔体表面の連続導電化工程の一例を説明する図である。
【図12】溶融塩めっきによるアルミニウム連続めっき工程の一例を説明する図である。
【図13】アルミニウム多孔体をリチウム電池に適用した構造例を示す模式図である。
【図14】アルミニウム多孔体をキャパシタに適用した構造例を示す模式図である。
【図15】アルミニウム多孔体を溶融塩電池に適用した構造例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明に係るアルミニウム多孔体の製造方法について述べる。以下ではウレタン樹脂多孔体の表面にアルミニウム膜を形成する方法としてアルミめっき法を適用する例を代表例として適宜図を参照して説明する。以下で参照する図面で同じ番号が付されている部分は同一またはそれに相当する部分である。なお、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0014】
(アルミニウム構造体の製造工程)
図8は、アルミニウム構造体の製造工程を示すフロー図である。また図9は、フロー図に対応して樹脂多孔体を芯材としてアルミニウムめっき膜を形成する様子を模式的に示したものである。両図を参照して製造工程全体の流れを説明する。まず基体樹脂多孔体の準備101を行う。図9(a)は、基体樹脂多孔体の例として、連通気孔を有する樹脂多孔体の表面を拡大視した拡大模式図である。樹脂多孔体1を骨格として気孔が形成されている。次に樹脂多孔体表面の導電化102を行う。この工程により、図9(b)に示すように樹脂多孔体1の表面には薄く導電体による導電層2が形成される。
続いて溶融塩中でのアルミニウムめっき103を行い、導電層が形成された樹脂多孔体の表面にアルミニウムめっき層3を形成する(図9(c))。これで、基体樹脂多孔体を基材として表面にアルミニウムめっき層3が形成されたアルミニウム構造体が得られる。基体樹脂多孔体について基体樹脂多孔体の除去104を行う。
発泡樹脂多孔体1を分解等して消失させることにより金属層のみが残ったアルミニウム構造体(多孔体)を得ることができる(図9(d))。以下各工程について順を追って説明する。
【0015】
(樹脂多孔体の準備)
(多孔質樹脂成形体の準備)
三次元網目構造を有し連通気孔を有する多孔質樹脂成形体を準備する。多孔質樹脂成形体の素材は任意の樹脂を選択できる。ポリウレタン、メラミン、ポリプロピレン、ポリエチレン等の発泡樹脂成形体が素材として例示できる。発泡樹脂成形体と表記したが、連続した気孔(連通気孔)を有するものであれば任意の形状の樹脂成形体を選択できる。例えば繊維状の樹脂を絡めて不織布のような形状を有するものも発泡樹脂成形体に代えて使用可能である。発泡樹脂成形体の気孔率は80%〜98%、気孔径は50μm〜500μmとするのが好ましい。発泡ウレタン及び発泡メラミンは気孔率が高く、また気孔の連通性があるとともに熱分解性にも優れているため発泡樹脂成形体として好ましく使用できる。
発泡ウレタンは気孔の均一性や入手の容易さ等の点で好ましく、発泡ウレタンは気孔径の小さなものが得られる点で好ましい。
【0016】
多孔質樹脂成形体には発泡体製造過程での製泡剤や未反応モノマーなどの残留物があることが多く、洗浄処理を行うことが後の工程のために好ましい。多孔質樹脂成形体の例として、発泡ウレタンを前処理として洗浄処理したものを図10に示す。樹脂成形体が骨格として三次元的に網目を構成することで、全体として連続した気孔を構成している。発泡ウレタンの骨格はその延在方向に垂直な断面において略三角形状をなしている。ここで気孔率は、次式で定義される。
気孔率=(1−(多孔質材の重量[g]/(多孔質材の体積[cm]×素材密度))
)×100[%]
また、気孔径は、樹脂成形体表面を顕微鏡写真等で拡大し、1インチ(25.4mm)あたりの気孔数をセル数として計数して、平均孔径=25.4mm/セル数として平均的な値を求める。
【0017】
(樹脂多孔体表面の導電化)
電解めっきを行うために、発泡樹脂の表面をあらかじめ導電化処理する。樹脂多孔体の表面に導電性を有する層を設けることができる処理である限り特に制限はなく、ニッケル等の導電性金属の無電解めっき、アルミニウム等の蒸着及びスパッタ、又はカーボン等の導電性粒子を含有した導電性塗料の塗布等任意の方法を選択できる。
導電化処理の例として、アルミニウムのスパッタリング処理によって導電化処理する方法、及び導電性粒子としてカーボンを用いて発泡樹脂の表面を導電化処理する方法について以下述べる。
【0018】
−アルミニウムのスパッタリング−
アルミニウムを用いたスパッタリング処理としては、アルミニウムをターゲットとする限り限定的でなく、常法に従って行えばよい。例えば、基板ホルダーに発泡状樹脂を取り付けた後、不活性ガスを導入しながら、ホルダーとターゲット(アルミニウム)との間に直流電圧を印加することにより、イオン化した不活性ガスをアルミニウムに衝突させて、はじき飛ばされたアルミニウム粒子を発泡状樹脂表面に堆積することによってアルミニウムのスパッタ膜を形成する。なお、スバッタリング処理は発泡状樹脂が溶解しない温度下で行うことが好ましく、具体的には、100〜200℃程度、好ましくは120〜180℃程度で行えばよい。
【0019】
−カーボン塗布−
導電性塗料としてのカーボン塗料を準備する。導電性塗料としての懸濁液は、好ましくは、カーボン粒子、粘結剤、分散剤および分散媒を含む。導電性粒子の塗布を均一に行うには、懸濁液が均一な懸濁状態を維持している必要がある。このため、懸濁液は、20℃〜40℃に維持されていることが好ましい。その理由は、懸濁液の温度が20℃未満になった場合、均一な懸濁状態が崩れ、樹脂多孔体の網状構造をなす骨格の表面に粘結剤のみが集中して層を形成するからである。この場合、塗布されたカーボン粒子の層は剥離し易く、強固に密着した金属めっきを形成し難い。一方、懸濁液の温度が40℃を越えた場合は、分散剤の蒸発量が大きく、塗布処理時間の経過とともに懸濁液が濃縮されてカーボンの塗布量が変動しやすい。また、カーボン粒子の粒径は、0.01〜5μmで、好ましくは0.01〜0.5μmである。粒径が大きいと樹脂多孔体の空孔を詰まらせたり、平滑なめっきを阻害する要因となり、小さすぎると十分な導電性を確保することが難しくなる。
【0020】
樹脂多孔体へのカーボン粒子の塗布は、上記懸濁液に対象となる樹脂多孔体を浸漬し、絞りと乾燥を行うことで可能である。図11は実用上の製造工程の一例として、骨格となる帯状の樹脂多孔体を導電化する処理装置の構成例を模式的に示す図である。図示の如くこの装置は、帯状樹脂11を供給するサプライボビン12と、導電性塗料の懸濁液14を収容した槽15と、槽15の上方に配置された1対の絞りロール17と、走行する帯状樹脂11の側方に対向して設けられた複数の熱風ノズル16と、処理後の帯状樹脂11を巻き取る巻取りボビン18とを備えている。また、帯状樹脂11を案内するためのデフレクタロール13が適宜配置されている。以上のように構成された装置において、三次元網状構造を有する帯状樹脂1は、サプライボビン12から巻き戻され、デフレクタロール13により案内されて、槽15内の懸濁液内に浸漬される。槽15内で懸濁液14に浸漬された帯状樹脂11は、上方に向きを変え、懸濁液14の液面上方の絞りロール17の間を走行する。このとき、絞りロール17の間隔は、帯状樹脂11の厚さよりも小さくなっており、帯状樹脂11は圧縮される。従って、帯状樹脂11に含浸された過剰な懸濁液は、絞り出されて槽15内に戻る。
【0021】
続いて、帯状樹脂11は、再び走行方向を変える。ここで、複数のノズルから構成された熱風ノズル16が噴射する熱風により懸濁液の分散媒等が除去され、充分に乾燥された上で帯状樹脂11は巻取りボビン18に巻き取られる。尚、熱風ノズル16の噴出する熱風の温度は40℃から80℃の範囲であることが好ましい。以上のような装置を用いると、自動的かつ連続的に導電化処理を実施することができ、目詰まりのない網目構造を有し、且つ、均一な導電層を具備した骨格が形成されるので、次工程の金属めっきを円滑に行うことができる。
【0022】
(アルミニウム層の形成:溶融塩めっき)
次に溶融塩中で電解めっきを行い、樹脂多孔体表面にアルミニウムめっき層を形成する。
溶融塩浴中でアルミニウムのめっきを行うことにより特に三次元網目構造を有する樹脂多孔体のように複雑な骨格構造の表面に均一に厚いアルミニウム層を形成することができる。
表面が導電化された樹脂多孔体を陰極とし、アルミニウムを陽極として溶融塩中で直流電流を印加する。
また、溶融塩としては、有機系ハロゲン化物とアルミニウムハロゲン化物の共晶塩である有機溶融塩、アルカリ金属のハロゲン化物とアルミニウムハロゲン化物の共晶塩である無機溶融塩を使用することができる。比較的低温で溶融する有機溶融塩浴を使用すると、基材である樹脂多孔体を分解することなくめっきができ好ましい。有機系ハロゲン化物としてはイミダゾリウム塩、ピリジニウム塩等が使用でき、具体的には1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(EMIC)、ブチルピリジニウムクロライド(BPC)が好ましい。
溶融塩中に水分や酸素が混入すると溶融塩が劣化するため、めっきは窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で、かつ密閉した環境下で行うことが好ましい。
【0023】
溶融塩浴としては窒素を含有した溶融塩浴が好ましく、中でもイミダゾリウム塩浴が好ましく用いられる。溶融塩として高温で溶融する塩を使用した場合は、めっき層の成長よりも樹脂が溶融塩中に溶解や分解する方が早くなり、樹脂多孔体表面にめっき層を形成することができない。イミダゾリウム塩浴は、比較的低温であっても樹脂に影響を与えず使用可能である。イミダゾリウム塩として、1,3位にアルキル基を持つイミダゾリウムカチオンを含む塩が好ましく用いられ、特に塩化アルミニウム−1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(AlCl−EMIC)系溶融塩が、安定性が高く分解し難いことから最も好ましく用いられる。発泡ウレタン樹脂や発泡メラミン樹脂などへのめっきが可能であり、溶融塩浴の温度は10℃から100℃、好ましくは25℃から45℃である。低温になる程めっき可能な電流密度範囲が狭くなり、多孔体表面全体へのめっきが難しくなる。100℃を超える高温では基材樹脂の形状が損なわれる不具合が生じやすい。
【0024】
金属表面への溶融塩アルミニウムめっきにおいて、めっき表面の平滑性向上の目的でAlCl−EMICにキシレン、ベンゼン、トルエン、1,10−フェナントロリンなどの添加剤を加えることが報告されている。本発明者らは特に三次元網目構造を備えた樹脂多孔体上にアルミニウムめっきを施す場合に、1,10−フェナントロリンの添加によりアルミニウム多孔体の形成に特有の効果が得られることを見出した。すなわち、多孔体を形成するアルミニウム骨格が折れにくいという第1の特徴と、多孔体の表面部と内部とのめっき厚さの差が小さい均一なめっきが可能であるという第2の特徴が得られるのである。
【0025】
以上の、折れにくい、めっき厚が内外で均一という2つの特徴により、完成したアルミニウム多孔体をプレスする場合などに、骨格全体が折れにくく均等にプレスされた多孔体を得ることができる。アルミニウム多孔体を電池等の電極材料として用いる場合に、電極に電極活物質を充填してプレスにより密度を上げることが行われ、活物質の充填工程やプレス時に骨格が折れやすいため、このような用途では極めて有効である。
【0026】
上記のことから、溶融塩浴に有機溶媒を添加することが好ましく、特に1,10−フェナントロリンが好ましく用いられる。めっき浴への添加量は、0.25〜7g/Lが好ましい。0.25g/L以下では平滑性に乏しいめっきで脆く、また表層と内部の厚み差を小さくする効果が得られ難い。また7g/L以上ではめっき効率が低下し所定のめっき厚を得ることが困難になる。
【0027】
図12は前述の帯状樹脂に対してアルミニウムめっき処理を連続的に行うための装置の構成を模式的に示す図である。表面が導電化された帯状樹脂22が、図の左から右に送られる構成を示す。第1のめっき槽21aは、円筒状電極24と容器内壁に設けられたアルミニウムからなる陽極25およびめっき浴23から構成される。帯状樹脂22は円筒状電極24に沿ってめっき浴23の中を通過することにより、樹脂多孔体全体に均一に電流が流れやすく、均一なめっきを得ることが出来る。めっき槽21bは、さらにめっきを厚く均一に付けるための槽であり複数の槽で繰り返しめっきされるように構成されている。表面が導電化された帯状樹脂22を送りローラと槽外給電陰極を兼ねた電極ローラ26により順次送りながら、めっき浴28に通過させることでめっきを行う。複数の槽内には樹脂多孔体の両面にめっき浴28を介して設けられたアルミニウムからなる陽極27があり、樹脂多孔体の両面により均一なめっきを付けることができる。めっきされたアルミ多孔体に窒素ブローでめっき液を十分除去した後、水洗しアルミ多孔体を得られる。
【0028】
一方、樹脂が溶解等しない範囲で溶融塩として無機塩浴を用いることもできる。無機塩浴とは、代表的にはAlCl−XCl(X:アルカリ金属)の2成分系あるいは多成分系の塩である。このような無機塩浴はイミダゾリウム塩浴のような有機塩浴に比べて一般に溶融温度は高いが、水分や酸素など環境条件の制約が少なく、全体に低コストでの実用化が可能とできる。樹脂が発泡メラミン樹脂である場合は、発泡ウレタン樹脂に比べて高温での使用が可能であり、60℃〜150℃での無機塩浴が用いられる。
【0029】
以上の工程により骨格の芯として樹脂成形体を有するアルミニウム構造体(アルミニウム多孔体)が得られる。各種フィルタや触媒担体などの用途によっては、このまま樹脂と金属の複合体として使用しても良い。また使用環境の制約などから、樹脂が無い金属構造体として用いる場合には樹脂を除去しても良い。樹脂の除去は、有機溶媒、溶融塩、又は超臨界水による分解(溶解)、加熱分解等任意の方法で行うことができる。ここで、高温での加熱分解等の方法は簡便であるが、アルミニウムの酸化を伴う。アルミニウムはニッケル等と異なり、一旦酸化すると還元処理が困難であるため、たとえば電池等の電極材料として使用する場合には、酸化により導電性が失われることから用いることが出来ない。
このため、アルミニウムの酸化が起こらないように、以下に説明する溶融塩中での熱分解により樹脂を除去する方法が好ましく用いられる。
【0030】
(樹脂の除去:溶融塩中熱分解)
溶融塩中での熱分解は以下の方法で行う。表面にアルミニウムめっき層を形成した樹脂成形体を溶融塩に浸漬し、アルミニウム層に負電位を印加しながら加熱して発泡樹脂成形体を分解する。溶融塩に浸漬した状態で負電位を印加すると、アルミニウムを酸化させることなく発泡樹脂成形体を分解することができる。加熱温度は発泡樹脂成形体の種類に合わせて適宜選択できるが、アルミニウムを溶融させないためにはアルミニウムの融点(660℃)以下の温度で処理する必要がある。好ましい温度範囲は500℃以上600℃以下である。また印加する負電位の量は、アルミニウムの還元電位よりマイナス側で、かつ溶融塩中のカチオンの還元電位よりプラス側とする。
【0031】
樹脂の熱分解に使用する溶融塩としては、アルミニウムの電極電位が卑となるようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物の塩が使用できる。具体的には塩化リチウム(LiCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化アルミニウム(AlCl)からなる群より選択される1種以上を含むと好ましい。このような方法によって連通気孔を有し、表面の酸化層が薄く酸素量の少ないアルミニウム多孔体を得ることができる。
【0032】
上記のようにして得られた三次元網状アルミニウム多孔体(以下「アルミニウム多孔体」という)は種々の用途に使用することができるが、以下にその好適な用途について述べる。
【0033】
・電池用集電体(リチウム電池(LIB)、キャパシタ、溶融塩電池)
アルミニウム多孔体は、3次元多孔構造(高比表面積)を有するため、電池材料を保持する構造となっており、厚くて容量の大きい電極を形成することができ、電極面積を低減して低コスト化できる。また、余分なバインダーや導電助剤の使用量を低減することができ、電池を高容量化することができる。
アルミニウム多孔体は電池材料との接触がよく、電池を高出力化することができ、また、電池材料の脱落を防ぎ、電池やキャパシタが長寿命化できることから、LIB、キャパシタ、溶融塩電池などの電極集電体用途に使用することができる。
【0034】
・触媒用坦体(工業用脱臭触媒、センサ感知触媒)
アルミニウム多孔体は、3次元多孔構造(高比表面積)を有するために触媒の坦持面積や気体との接触面積が増加し、触媒坦体効果が大きくなることから、工業用脱臭触媒、センサ感知触媒などの触媒用坦体用途に使用することができる。
【0035】
・暖房機器(灯油の気化・霧化)
アルミニウム多孔体は、3次元多孔構造(高比表面積)を有しており、これをヒータとして利用した場合、効率よく灯油を昇温し気化することができるため、灯油の気化器や霧化器などの暖房機器用途として使用することができる。
【0036】
・各種フィルタ(オイルミストコレクタ、グリスフィルタ)
アルミニウム多孔体は、3次元多孔構造(高比表面積)を有するためにオイルミストやグリスとの接触面積が大きく効率よくオイルやグリスを捕集することができることから、オイルミストコレクタやグリスフィルタなどの各種フィルタ用途に使用することができる。
【0037】
・放射能汚染水濾過フィルタ
アルミニウムは放射能を遮断する性質があるため、放射能漏れを防止する材質として使用されている。現在、原子力発電所から発生する汚染水からの放射能除去が課題となっているが、放射能漏れ防止材として使用されているアルミ箔では水を透過しないため、汚染水の放射能除去はできない。これに対してアルミニウム多孔体は3次元多孔構造(高比表面積)を有するために水を透過させることができ、放射能汚染水の浄化フィルタとして使用することができる。さらに、ポアフロン(登録商標:ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔体)とアルミニウム多孔体との2重構造の膜にすることで不純物の濾過を強化することが出来る。
【0038】
・サイレンサー(エンジン、空気機器の消音、風切り音低減;パンタグラフ吸音)
アルミニウム多孔体は、3次元多孔構造(高比表面積)を有するために吸音効果が大きく、また、材質がアルミニウムであり軽量のため、エンジンや空気機器の消音器用途やパンタグラフの吸音材などの風切り音低減用途に使用することができる。
【0039】
・電磁波遮蔽(シールドルーム、各種シールド)
アルミニウム多孔体は、連通気孔構造(高通気性)を有しているために、シート状の電磁遮蔽材に比べて通気性に優れ、また、孔径を自由に選定できるために多様な周波数帯域に対応できることから、シールドルームや各種電磁波シールドなどの電磁波遮蔽用途に使用することができる。
【0040】
・放熱・熱交換(熱交換器、ヒートシンク)
アルミニウム多孔体は、3次元多孔構造(比表面積が大きい)を有し、また、材質がアルミニウムであり高熱伝導率であるために放熱効果が大きいことから熱交換器、ヒートシンクなどの放熱・熱交換用途に使用することができる。
【0041】
・燃料電池
現在、固体高分子形燃料電池のガス拡散兼集電体やセパレータにはカーボンペーパーが主に使用されているが、これは材料コストが高く、また、複雑な流路形成が必要なことから製作コストも高くなるという問題がある。これに対して、アルミニウム多孔体は、3次元多孔構造、低抵抗、表面の不働態膜の特徴を有するために、複雑な流路を形成しなくても、燃料電池内の高電位、酸性雰囲気において、ガス拡散層兼集電体及びセパレータとして使用することができ、その結果、低コスト化が図れるため、固体高分子形燃料電池のガス拡散層兼集電体及びセパレータなどの燃料電池用途に使用することができる。
【0042】
・水耕栽培用支持体
水耕栽培において発育促進に遠赤外線で支持体を暖める方式が採られている。現在、水耕栽培用支持体としてはロックウールなどが主として使用されているが、ロックウールの熱伝導率が悪く熱交換の効率が悪い。これに対して、アルミニウム多孔体は3次元多孔構造(高比表面積)を有するために水耕用栽培支持体として使用でき、さらに、材質がアルミニウムであり熱伝導率が良いことから、効率よく支持体を暖めることができるので水耕栽培用支持体として使用することができる。さらに、アルミニウム多孔体を使用した場合、支持体を暖める方式に誘導加熱方式が使用でき、遠赤外線方式に比べて支持体を効率良く暖めることができる水耕栽培用支持体として使用することができる。
【0043】
・建築資材
建築資材には、軽量化を狙って従来閉気孔のアルミニウム多孔体が用いられることがある。アルミニウム多孔体は3次元多孔構造(高気孔率)を有するため閉気孔のアルミ多孔体よりもさらに軽量化することができる。また、連通気孔であるため空間に樹脂などその他材料を充填することができ、断熱性や遮音性、調湿性といった機能を持つ材料と組み合わせることにより、従来の閉気孔のアルミニウム多孔体では不可能であった機能を有する複合材料とすることができる。
【0044】
・電磁誘導加熱
調理器具用途においておいしさを追求すると土鍋が好ましいと言われている。一方、IH加熱は細やかな熱制御が可能である。両者の特徴を活かして、IH加熱可能な土鍋が求められている。従来は、土鍋の底に磁性材料を配置する、特殊な土を使用するなどの方法が提案されているが、いずれも熱伝導が不十分で、IH加熱の特徴を生かし切れていない。これに対し、アルミニウム多孔体を芯材に用い、これに土を練り込んで、不活性ガス雰囲気で焼結することにより土鍋を形成すると、芯材となるアルミニウム多孔体が発熱するため、均一な加熱が可能である。ニッケル多孔体、アルミニウム多孔体のどちらも有効であるが、軽量化を考慮するとアルミニウム多孔体の方が好ましい。
【0045】
以上、アルミニウム多孔体の種々の用途について述べたが、以下では、上記した用途の内、特にリチウム電池、キャパシタ、溶融塩電池において用いられる集電体としての用途について詳細に述べる。
【0046】
(アルミニウム多孔体の端部の加工)
本発明においてはアルミニウム多孔体端部の圧縮を次の(1)〜(3)の方法によって行う。これにより機械的強度が弱いアルミニウム多孔体においても、タブリード溶接が可能なほどの強度が得られる。
(1)アルミニウム多孔体の端部を圧縮用治具によって両面から圧縮する方法
図2に示すように、アルミニウム多孔体端部を圧縮用治具32、32′によって厚み方向に両面から圧縮する。このような押圧方法を採用することで、多孔体の骨格に対する歪量を小さくし、破断していない多孔体骨格数を増やすことができるため多孔体の圧縮部と未圧縮部の境界の強度を強化することができる。
例えば図1に示すように、一方の面からの圧縮を行った場合の厚み方向の変形量をLとした場合に比べると、図2に示す本発明の押圧方法によるアルミニウム多孔体の表面及び裏面におけるそれぞれの変形量は1/2Lとなり、多孔体の骨格の歪み量は1/2となり破断していない骨格数を増やすことができ、多孔体の圧縮部と未圧縮部の境界の強度を強化することが可能となる。
(2)アルミニウム多孔体の端部を端部にRをつけた圧縮用治具によって片面から圧縮する方法
圧縮用冶具にRをつけることで、図3に示すように圧縮部と未圧縮部との境界近傍をなだらかに繋ぐことでき、境界近傍の歪量を小さくすることができる。これにより破断していない多孔体骨格数を増やすことができ、多孔体の圧縮部と未圧縮部の境界の強度を強化することが可能となる。Rの曲率半径は圧縮用治具の角部が丸みを帯びていれば特に制限はないが、曲率半径が0.1mm〜5.0mmであることが好ましく、より好ましくは曲率半径が0.2mm〜3.0mmである。
(3)アルミニウム多孔体の端部を端部にRをつけた圧縮用治具によって両面から圧縮する方法
この方法は図4に示されるように、上記(1)の方法と(2)の方法を組み合わせたものであり、破断していない多孔体骨格数をより増加させることができ、多孔体の圧縮部と未圧縮部の境界の強度をより強化することが可能となる。
【0047】
圧縮用治具としては回転ローラを用いることができる。
図5において、2枚分の幅を有するアルミニウム多孔体34の中央部を圧縮用治具として端部にRを付けた回転ローラ35によって圧縮して圧縮部33を形成する。圧縮後に圧縮部33の中央部を切断して端部に圧縮部を有する2枚の電極集電体を得る。
図6は端部にRを付けた一組の回転ローラによってアルミニウム多孔体の中央部を両面から圧縮する例を示した図であり、圧縮した部分を面方向の中心線に沿って切断することにより二つのシート状の集電体を得ることができる。
また、複数個組の回転ローラを用いてアルミニウム多孔体の中央部に複数本の帯状の圧縮部を形成し、この帯状の圧縮部のそれぞれを面方向の中心線に沿って切断することにより複数個の集電体を得ることができる。
【0048】
(電極周縁部へのタブリードの接合)
前記のようにして得た集電体の端部圧縮部にタブリードを接合する。タブリードとしては電極の電気抵抗を低減するために金属箔を用いて、電極の周縁部の少なくとも一方の側の表面に金属箔を接合することが好ましい。また、電気抵抗を低減するために接合方法としては溶接を用いることが好ましい。金属箔を溶接する幅は、あまり太いと電池内に無駄なスペースが増えて電池の容量密度が低下するため、10mm以下が好ましい。あまり細いと溶接が困難になると共に集電効果も下がるため、1mm以上が好ましい。
溶接方法は抵抗溶接や超音波溶接などの方法が使用できるが、超音波溶接の方が、接着面積が広いため好ましい。
得られた集電体の概略図を図7(a)及び図7(b)に示す。アルミニウム多孔体34の圧縮部33にはタブリード37が溶接される。図7(b)は図4(a)のA−A断面図である。
【0049】
(金属箔)
金属箔の材質としては、電気抵抗や電解液に対する耐性を考慮するとアルミニウムが好ましい。また、不純物があると電池及びキャパシタ内で溶出・反応したりするため、純度99.99%以上のアルミニウム箔を用いることが好ましい。また、溶接部分の厚さが電極自体の厚さより薄いことが好ましい。
アルミ箔の厚さは20〜500μmとすることが好ましい。
また、金属箔の溶接は集電体に活物質を充填する前・後どちらで行なってもかまわないが、充填前に行なう方が活物質の脱落を抑えられる。特に超音波溶接の場合は充填前に溶接する方が好ましい。また、溶接した部分に活性炭ペーストがついてもよいが、工程途中で剥離する可能性もあるため、充填できないようにマスキングしておくことが好ましい。
【0050】
(電極の作製)
活性炭ペーストを調厚された集電体に充填する。集電体の片側からペーストを吹き付けたり、ペーストに集電体を浸漬したり、あるいは印刷機やロールコーターを用いることでも充填できる。次に、乾燥機で溶媒を除去する。乾燥温度は80℃以上が好ましいが、温度が高すぎると集電体の酸化や増粘剤、バインダーの分解が起きる可能性があるため、250℃以下が好ましい。
乾燥後に、プレス機により厚さ方向に圧縮して電極を得る。プレス機としては平板プレスやローラープレスを用いることができる。平板プレスは集電体の伸びを抑制するためには好ましいが量産に不向きなため、連続処理可能なローラープレスを用いることもできる。ローラープレスを用いる場合は表面にエンボス加工をするなど、伸びを抑制する工夫をしてもよい。
【0051】
(リチウム電池)
次にアルミニウム多孔体を用いた電池用電極材料及び電池について説明する。例えばリチウム電池の正極に使用する場合は、活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)、マンガン酸リチウム(LiMn)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)等を使用する。活物質は導電助剤及びバインダーと組み合わせて使用する。従来のリチウム電池用正極材料は、アルミニウム箔の表面に活物質を塗布している。単位面積当たりの電池容量を向上するために、活物質の塗布厚みを厚くしている。また活物質を有効に利用するためにはアルミニウム箔と活物質とが電気的に接触している必要があるので活物質は導電助剤と混合して用いられている。これに対し、本発明のアルミニウム多孔体は気孔率が高く単位面積当たりの表面積が大きい。よって多孔体の表面に薄く活物質を担持させても活物質を有効に利用でき、電池の容量を向上できるとともに、導電助剤の混合量を少なくすることができる。リチウム電池は、上記の正極材料を正極とし、負極には黒鉛、チタン酸リチウム(LiTi12)、Si等の合金系、あるいはリチウム金属等が使用される。電解質には有機電解液あるいは固体電解質を使用する。このようなリチウム電池は、小さい電極面積でも容量を向上できるため、従来のリチウム電池よりも電池のエネルギー密度を高くすることができる。
【0052】
(リチウム電池用電極)
リチウム電池に使用される電解質には、非水電解液と固体電解質がある。
図13は、固体電解質を使用した全固体リチウム電池の縦断面図である。この全固体リチウム電池60は、正極61、負極62、および、両電極間に配置される固体電解質層(SE層)63を備える。正極61は、正極層(正極体)64と正極集電体65とからなり、負極62は、負極層66と負極集電体67とからなる。
電解質として、固体電解質以外に、後述する非水電解液が用いられる。この場合、両極間には、セパレータ(多孔質ポリマーフィルム等)が配置され、非水電解液は両極およびセパレータ中に含浸される。
【0053】
(アルミニウム多孔体に充填する活物質)
アルミニウム多孔体をリチウム電池の正極に使用する場合は、活物質としてリチウムを脱挿入できる材料を使用することができ、このような材料をアルミニウム多孔体に充填することでリチウム二次電池に適した電極を得ることができる。正極活物質の材料としては、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、ニッケルコバルト酸リチウム(LiCo0.3Ni0.7)、マンガン酸リチウム(LiMn)、チタン酸リチウム(LiTi12)、リチウムマンガン酸化合物(LiMMn2−y);M=Cr、Co、Ni)、リチウム酸等を使用する。活物質は導電助剤及びバインダーと組み合わせて使用する。従来のリチウムリン酸鉄及びその化合物(LiFePO、LiFe0.5Mn0.5PO)であるオリビン化合物などの遷移金属酸化物が挙げられる。また、これらの材料の中に含まれる遷移金属元素を、別の遷移金属元素に一部置換してもよい。
【0054】
更に他の正極活物質の材料としては例えば、TiS、V、FeS、FeS、LiMSx(MはMo、Ti、Cu、Ni、Feなどの遷移金属元素、又はSb、Sn、Pb)などの硫化物系カルコゲン化物、TiO、Cr、V、MnOなどの金属酸化物を骨格としたリチウム金属が挙げられる。ここで、上記したチタン酸リチウム((LiTi12)は負極活物質として使用することも可能である。
【0055】
(リチウム電池に使用される電解液)
非水電解液としては、極性非プロトン性有機溶媒で使用され、具体的にはエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及びスルホラン等が使用される。支持塩としては4フッ化ホウ酸リチウム、6フッ化リン酸リチウム、およびイミド塩等が使用されている。
(アルミニウム多孔体に充填する固体電解質)
活物質の他に、さらに、固体電解質を加えて充填してもよい。アルミニウム多孔体に活物質と固体電解質とを充填することで、全固体リチウム電池の電極に適したものとすることができる。ただし、アルミニウム多孔体に充填する材料のうち活物質の割合は、放電容量を確保する観点から、50質量%以上、より好ましくは70質量%以上とすることが好ましい。
【0056】
上記固体電解質には、リチウムイオン伝導度の高い硫化物系固体電解質を使用することが好ましく、このような硫化物系固体電解質としては、リチウム、リン、及び硫黄を含む硫化物系固体電解質が挙げられる。硫化物系固体電解質は、さらに、O、Al、B、Si、Geなどの元素を含有してもよい。
【0057】
このような硫化物系固体電解質は、公知の方法により得ることができる。例えば、出発原料として硫化リチウム(LiS)及び五硫化二リン(P)を用意し、LiSとP2S5とをモル比で50:50〜80:20程度の割合で混合し、これを熔融して急冷する方法(溶融急冷法)や、これをメカニカルミリングする方法(ノカニカルミリング法)が挙げられる。
【0058】
上記方法により得られる硫化物系固体電解質は、非晶質である。この非晶質の状態のまま利用することもできるが、これを加熱処理して結晶性の硫化物系固体電解質としてもよい。結晶化することで、リチウムイオン伝導度の向上が期待できる。
【0059】
(アルミニウム多孔体への活物質の充填)
活物質(活物質と固体電解質)の充填は、例えば、浸漬充填法や塗工法などの公知の方法を用いることができる。塗工法としては、例えば、ロール塗工法、アプリケーター塗工法、静電塗工法、粉体塗工法、スプレー塗工法、スプレーコーター塗工法、バーコーター塗工法、ロールコーター塗工法、ディップコーター塗工法、ドクターブレード塗工法、ワイヤーバー塗工法、ナイフコーター塗工法、ブレード塗工法、及びスクリーン印刷法などが挙げられる。
【0060】
活物質(活物質と固体電解質)を充填するときは、例えば、必要に応じて導電助剤やバインダーを加え、これに有機溶剤を混合して正極合剤スラリーを作製し、これを上記方法を用いてアルミニウム多孔体に充填する。活物質(活物質と固体電解質)の充填は、アルミニウム多孔体の酸化を防止するため、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック(AB)やケッチェンブラック(KB)といったカーボンブラックなどを用いることができ、また、バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などを用いることができる。
【0061】
なお、正極合剤スラリーを作製する際に用いる有機溶剤としては、アルミニウム多孔体に充填する材料(即ち、活物質、導電助剤、バインダー、及び必要に応じて固体電解質)に対して悪影響を及ぼさないものであれば、適宜選択することができる。このような有機溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコール、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0062】
なお、従来のイオン電池用正極材料は、アルミニウム箔の表面に活物質を塗布している。単位面積当たりの電池容量を向上するために、活物質の塗布厚みを厚くしている。また活物質を有効に利用するためにはアルミニウム箔と活物質とが電気的に接触している必要があるので活物質は導電助剤と混合して用いられている。これに対し、アルミニウム多孔体は気孔率が高く単位面積当たりの表面積が大きい。よって多孔体の表面に薄く活物質を担持させても活物質を有効に利用でき、電池の容量を向上できるとともに、導電助剤の混合量を少なくすることができる。リチウム電池は、上記の正極材料を正極とし、負極には黒鉛、電解質には有機電解液を使用する。このようなリチウム電池は、小さい電極面積でも容量を向上できるため、従来のリチウム電池よりも電池のエネルギー密度を高くすることができる。
【0063】
(キャパシタ用電極)
図14はキャパシタ用電極材料を用いたキャパシタの一例を示す断面模式図である。セパレータ142で仕切られた有機電解液143中に、アルミニウム多孔体に電極活物質を担持した電極材料を分極性電極141として配置している。電極材料141はリード線144に接続しており、これら全体がケース145中に収納されている。アルミニウム多孔体を集電体として使用することで、集電体の表面積が大きくなり、活物質としての活性炭を薄く塗布しても高出力、高容量化可能なキャパシタを得ることができる。
【0064】
キャパシタ用の電極を製造するには、集電体に活物質として活性炭を使用する。活性炭は導電助剤やバインダーと組み合わせて使用する。導電助剤としては黒鉛、カーボンナノチューブ等が使用できる。またバインダーとしてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム等を使用できる。
活性炭ペーストを充填する。キャパシタの容量を大きくするためには主成分である活性炭の量が多い方が良く、乾燥後(溶媒除去後)の組成比で活性炭が90%以上あることが好ましい。また導電助剤やバインダーは必要ではあるが容量低下の要因であり、バインダーは更に内部抵抗を増大させる要因となるためできる限り少ない方がよい。導電助剤は10質量%以下、バインダーは10質量%以下が好ましい。
【0065】
活性炭は表面積が大きい方がキャパシタの容量が大きくなるため、比表面積が2000m2/g以上あることが好ましい。また、導電助剤としてはケッチェンブラックやアセチレンブラック、炭素繊維やこれらの複合材料が使用できる。また、バインダーとしてはポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガムなどが使用できる。溶媒はバインダーの種類によって水や有機溶媒を適当に選択すればよい。有機溶媒ではN−メチル−2−ピロリドンが使用される場合が多い。また、溶媒に水を使う場合、充填性を高めるために界面活性剤を使用しても良い。
【0066】
上記活性炭を主成分とする電極材料を混合して攪拌することにより活性炭ペーストが得られる。かかる活性炭ペーストを上記集電体に充填して乾燥させ、必要に応じてローラープレス等により調厚することによりキャパシタ用電極が得られる。
【0067】
(キャパシタの作製)
上記のようにして得られた電極を適当な大きさに打ち抜いて2枚用意し、セパレータを挟んで対向させる。そして、必要なスペーサを用いてセルケースに収納し、電解液を含浸させる。最後に絶縁ガスケットを介してケースに蓋をして封口することにより非水電解液を用いるキャパシタを作製することができる。非水系の材料を使用する場合は、キャパシタ内の水分を限りなく少なくするため、キャパシタの作製は水分の少ない環境下で行い、封止は減圧環境下で行う。なお、本発明の集電体、電極を用いていればキャパシタとしては特に限定されず、これ以外の方法により作製されるものでも構わない。
また、負極は特に限定されず従来の負極用電極を使用可能であるが、アルミ箔を集電体に用いた従来の電極では容量が小さいため、前述の発泡状ニッケルのような多孔体に活物質を充填した電極が好ましい。
【0068】
電解液は水系・非水系ともに使用できるが、非水系の方が電圧を高く設定できるため好ましい。水系では電解質として水酸化カリウムなどが使用できる。非水系としては、イオン液体がカチオンとアニオンの組み合わせで多数有る。カチオンとしては低級脂肪族4級アンモニウム、低級脂肪族4級ホスホニウム及びイミダゾリニウム等が使用され、アニオンとしては、金属塩化物イオン、金属フッ化物イオン、及びビス(フルオロスルフォニル)イミド等のイミド化合物などが知られている。また、極性非プロトン性有機溶媒でがあり、具体的にはエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及びスルホラン等が使用される。非水電解液中の支持塩としては4フッ化ホウ酸リチウム、6フッ化リン酸リチウム、およびイミド塩等が使用されている。
【0069】
(溶融塩電池用電極)
アルミニウム多孔体は、溶融塩電池用の電極材料として使用することもできる。アルミニウム多孔体を正極材料として使用する場合は、活物質として亜クロム酸ナトリウム(NaCrO)、二硫化チタン(TiS)等、電解質となる溶融塩のカチオンをインターカレーションすることができる金属化合物を使用する。活物質は導電助剤及びバインダーと組み合わせて使用する。導電助剤としてはアセチレンブラック等が使用できる。またバインダーとしてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を使用できる。活物質としてクロム酸ナトリウムを使用し、導電助剤としてアセチレンブラックを使用する場合には、PTFEはこの両者をより強固に固着することができ好ましい。
【0070】
アルミニウム多孔体は、溶融塩電池用の負極材料として用いることもできる。アルミニウム多孔体を負極材料として使用する場合は、活物質としてナトリウム単体やナトリウムと他の金属との合金、カーボン等を使用できる。ナトリウムの融点は約98℃であり、また温度が上がるにつれて金属が軟化するため、ナトリウムと他の金属(Si、Sn、In等)とを合金化すると好ましい。このなかでも特にナトリウムとSnとを合金化したものは扱いやすいため好ましい。ナトリウム又はナトリウム合金は、アルミニウム多孔体の表面に電解メッキ、溶融メッキ等の方法で担持させることができる。また、アルミニウム多孔体にナトリウムと合金化させる金属(Si等)をメッキ等の方法で付着させた後、溶融塩電池中で充電することでナトリウム合金とすることもできる。
【0071】
図15は上記の電池用電極材料を用いた溶融塩電池の一例を示す断面模式図である。溶融塩電池は、アルミニウム多孔体のアルミ骨格部の表面に正極用活物質を担持した正極121と、アルミニウム多孔体のアルミ骨格部の表面に負極用活物質を担持した負極122と、電解質である溶融塩を含浸させたセパレータ123とをケース127内に収納したものである。ケース127の上面と負極との間には、押え板124と押え板を押圧するバネ125とからなる押圧部材126が配置されている。押圧部材を設けることで、正極121、負極122、セパレータ123の体積変化があった場合でも均等押圧してそれぞれの部材を接触させることができる。正極121の集電体(アルミニウム多孔体)、負極122の集電体(アルミニウム多孔体)はそれぞれ、正極端子128、負極端子129に、リード線130で接続されている。
【0072】
電解質としての溶融塩としては、動作温度で溶融する各種の無機塩又は有機塩を使用することができる。溶融塩のカチオンとしては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)及びセシウム(Cs)等のアルカリ金属、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)等のアルカリ土類金属から選択した1種以上を用いることができる。
【0073】
溶融塩の融点を低下させるために、2種以上の塩を混合して使用することが好ましい。
例えばカリウムビス(フルオロスルフォニル)アミド<K-N(SOF);KFSA>とナトリウムビス(フルオロスルフォニル)アミド<Na-N(SOF);NaFSA>とを組み合わせて使用すると、電池の動作温度を90℃以下とすることができる。
【0074】
溶融塩はセパレータに含浸させて使用する。セパレータは正極と負極とが接触するのを防ぐためのものであり、ガラス不織布や、多孔質樹脂多孔体等を使用できる。上記の正極、負極、溶融塩を含浸させたセパレータを積層してケース内に収納し、電池として使用する。
【実施例】
【0075】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0076】
[実施例1]
(導電層の形成)
ウレタン樹脂多孔体として、気孔率95%、1インチ当たりの気孔数(セル数)約50個、気孔径約550μm、厚さ1mmのウレタン発泡体を準備し、これを100mm×30mm角に切断した。このポリウレタンフォームの表面にスパッタリングによりアルミニウムを目付量10g/mで成膜して導電層を形成した。
【0077】
(溶融塩めっき)
表面に導電層を形成したウレタン発泡体をワークとして、給電機能を有する治具にセットした後、アルゴン雰囲気かつ低水分(露点−30℃以下)としたグローブボックス内に入れ、温度40℃の溶融塩アルミめっき浴(33mol%EMIC−67mol%AlCl)に浸漬した。ワークをセットした治具を整流器の陰極側に接続し、対極のアルミニウム板(純度99.99%)を陽極側に接続した。電流密度3.6A/dmの直流電流を90分間印加してめっきすることにより、ウレタン発泡体表面に150g/mの重量のアルミニウムめっき層が形成されたアルミニウム構造体を得た。攪拌はテフロン(登録商標)製の回転子を用いてスターラーにて行った。ここで、電流密度はウレタン発泡体の見かけの面積で計算した値である。
【0078】
(発泡樹脂成形体の分解)
前記アルミニウム構造体を温度500℃のLiCl−KCl共晶溶融塩に浸漬し、−1Vの負電位を30分間印加した。溶融塩中にポリウレタンの分解反応による気泡が発生した。その後大気中で室温まで冷却した後、水洗して溶融塩を除去し、樹脂が除去されたアルミニウム多孔体を得た。得られたアルミニウム多孔体は連通気孔を有し、気孔率が芯材としたウレタン発泡体と同様に高いものであった。
【0079】
(アルミニウム多孔体の端部の加工)
得られたアルミニウム多孔体をローラープレスにより厚さ1.0mmに調厚し、1.5cm角に切断した。
溶接の準備として、圧縮用治具として幅5mmのSUSブロック(棒)とハンマーを用いて、アルミニウム多孔体の1辺の端から5mm部分を両側からSUSブロックで挟み、SUSブロックをハンマーで叩いて圧縮して厚み100μmの圧縮部を形成した。
その後、以下の条件でタブリードをスポット溶接によって溶接した。
<溶接条件>
溶接装置: パナソニック社製 Hi−Max100、型番YG−101UD
(最大250Vまで印加可能)
容量100Ws、0.6kVA
電極 : 2mmφの銅電極
荷重 : 8kgf
電圧 : 140V
<タブリード>
材質 : アルミニウム
寸法 : 幅5mm、長さ7cm、厚み100μm
表面状態: ベーマイト加工
得られたアルミニウム多孔体を観察すると図1に示すように端部はアルミニウム多孔体の両面から圧縮された状態であった。
図6に得られたアルミニウム多孔体の概略図を図6(a)に示す。アルミニウム多孔体34の圧縮部33にはタブリード37が溶接される。図6(b)は図6(a)のA−A断面図である。
また、圧縮部と未圧縮部との境界線部分における骨格の破断数をカウントすると1.4個/mmであった。
【0080】
[実施例2]
実施例1において、SUSブロックの端部に曲率半径0.5mmのRを付けたSUSブロックを用い、アルミニウム多孔体を基台上に載置しアルミニウム多孔体の1辺の端から5mm部分に前記SUSブロックを介してハンマーで叩いた以外は実施例1と同様にして端部圧縮部にタブリードをスポット溶接したアルミニウム多孔体を得た。圧縮部と未圧縮部との境界線部分における骨格の破断数をカウントすると1.5個/mmであった。
【0081】
[実施例3]
実施例1において、SUSブロックの端部に曲率半径0.5mmのRを付けたSUSブロックを用いたこと以外は、アルミニウム多孔体を基台上に載置しアルミニウム多孔体の1辺の端から5mm部分に前記SUSブロックを介してハンマーで叩いた以外は実施例1と同様にして端部圧縮部にタブリードをスポット溶接したアルミニウム多孔体を得た。圧縮部と未圧縮部との境界線部分における骨格の破断数をカウントすると1.0個/mmであった。
【0082】
[比較例1]
実施例2において、SUSブロックの端部にRを付けないSUSブロックを用いたこと以外は、アルミニウム多孔体を基台上に載置しアルミニウム多孔体の1辺の端から5mm部分に前記SUSブロックを介してハンマーで叩いた以外は実施例1と同様にして端部圧縮部にタブリードをスポット溶接したアルミニウム多孔体を得た。圧縮部と未圧縮部との境界線部分における骨格の破断数をカウントすると3.8個/mmであった。
【0083】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の集電体用アルミニウム多孔体はタブリード溶接用の端部圧縮部の骨格の破断数が少ないためタブリードを溶接する際に応力が加わっても端部圧縮部が破断することなく、タブリードを良好に溶接することができるので、二次電池等の電極集電体として好適に使用できる。
【符号の説明】
【0085】
1 樹脂多孔体
2 導電層
3 アルミニウムめっき層
11 帯状樹脂
12 サプライボビン
13 デフレクタロール
14 導電性塗料の懸濁液
15 槽
16 熱風ノズル
17 絞りロール
18 巻取りボビン
21a,21b めっき槽
22 帯状樹脂
23,28 めっき浴
24 円筒状電極
25,27 正電極
26 電極ローラ
31 ニッケル多孔体
32、32′ 圧縮用治具
33 圧縮部
34 アルミニウム多孔体
35 回転ローラ
36 ローラ回転軸
37 タブリード
38 絶縁・封止用テープ
41 巻き出しローラ
42 圧縮ローラ
43 圧縮溶接ローラ
44 充填ローラ
45 乾燥機
46 圧縮ローラ
47 切断ローラ
48 巻取りローラ
49 リード供給ローラ
50 スラリー供給ノズル
51 スラリー
60 リチウム電池
61 正極
62 負極
63 固体電解質層(SE層)
64 正極層(正極体)
65 正極集電体
66 負極層
67 負極集電体
121 正極
122 負極
123 セパレータ
124 押さえ板
125 バネ
126 押圧部材
127 ケース
128 正極端子
129 負極端子
130 リード線
141 分極性電極
142 セパレータ
143 有機電解液
144 リード線
145 ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部にタブリードを接続するための厚み方向に圧縮された圧縮部を有する集電体用三次元網状アルミニウム多孔体であって、前記圧縮部分がアルミニウム多孔体の厚み方向の中央部に形成されていることを特徴とする集電体用三次元網状アルミニウム多孔体。
【請求項2】
前記圧縮部分における圧縮部と未圧縮部との境界部分の表面の断面が曲線状であることを特徴とする請求項1に記載の集電体用三次元網状アルミニウム多孔体。
【請求項3】
端部にタブリードを接続するための厚み方向に圧縮された圧縮部を有する集電体用三次元網状アルミニウム多孔体であって、前記圧縮部分がアルミニウム多孔体の厚み方向の一方の側にあり、前記圧縮部における圧縮部と未圧縮部の境界部分の表面の断面が曲線状であることを特徴とする集電体用三次元網状アルミニウム多孔体。
【請求項4】
三次元網状アルミニウム多孔体の端部を厚み方向に圧縮してタブリードを接続するための圧縮部を形成することにより集電体用三次元網状アルミニウム多孔体を製造する方法であって、該アルミニウム多孔体の端部の表裏両面を圧縮用治具で押圧することによりアルミニウム多孔体の厚み方向の中央部に圧縮部を形成することを特徴とする集電体用三次元網状アルミニウム多孔体の製造方法。
【請求項5】
三次元網状アルミニウム多孔体の端部を厚み方向に圧縮してタブリードを接続するための圧縮部を形成することにより集電体用三次元網状アルミニウム多孔体を製造する方法であって、該アルミニウム多孔体の中央部の表裏両面を圧縮用治具で押圧することによりアルミニウム多孔体の厚み方向の中央部に一本の帯状の圧縮部を形成し、次いで前記帯状の圧縮部を面方向の中心線に沿って切断することを特徴とする集電体用三次元網状アルミニウム多孔体の製造方法。
【請求項6】
三次元網状アルミニウム多孔体の端部を厚み方向に圧縮してタブリードを接続するための圧縮部を形成することにより集電体用三次元網状アルミニウム多孔体を製造する方法であって、該アルミニウム多孔体の中央部において間隔をあけて表裏両面の複数箇所を圧縮用治具で押圧することによりアルミニウム多孔体の厚み方向の中央部に複数本の帯状の圧縮部を形成し、次いで前記帯状の圧縮部を面方向の中心線に沿って切断することを特徴とする集電体用三次元網状アルミニウム多孔体の製造方法。
【請求項7】
前記圧縮用治具の、三次元網状アルミニウム多孔体の圧縮部と未圧縮部の境界部分を押圧によって形成する角部の表面の断面形状が曲線状であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の集電体用三次元網状アルミニウム多孔体の製造方法。
【請求項8】
三次元網状アルミニウム多孔体の端部を厚み方向に圧縮してタブリードを接続するための圧縮部を形成して集電体用三次元網状アルミニウム多孔体を製造する方法であって、前記圧縮用治具は三次元網状アルミニウム多孔体の圧縮部と未圧縮部の境界部分を形成する角部の表面の断面形状が曲線状であり、この圧縮用治具によってアルミニウム多孔体の端部の一方の側の面を圧縮用治具で押圧することによりアルミニウム多孔体の厚み方向の他方の側に圧縮部を形成することを特徴とする集電体用三次元網状アルミニウム多孔体の製造方法。
【請求項9】
三次元網状アルミニウム多孔体の端部を厚み方向に圧縮してタブリードを接続するための圧縮部を形成して集電体用三次元網状アルミニウム多孔体を製造する方法であって、前記圧縮用治具は三次元網状アルミニウム多孔体の圧縮部と未圧縮部の境界部分を形成する角部の表面の断面形状が曲線状であり、この圧縮用治具によってアルミニウム多孔体の中央部の一方の側の面を圧縮用治具で押圧することによりアルミニウム多孔体の厚み方向の他方の側に一本の帯状の圧縮部を形成し、次いで前記帯状の圧縮部を面方向の中心線に沿って切断することを特徴とする集電体用三次元網状アルミニウム多孔体の製造方法。
【請求項10】
三次元網状アルミニウム多孔体の端部を厚み方向に圧縮してタブリードを接続するための圧縮部を形成することにより集電体用三次元網状アルミニウム多孔体を製造する方法であって、前記圧縮用治具は三次元網状アルミニウム多孔体の圧縮部と未圧縮部の境界部分を形成する角部の表面の断面形状が曲線状であり、該アルミニウム多孔体の中央部において間隔をあけて表裏両面の複数箇所を前記圧縮用治具で押圧することによりアルミニウム多孔体の厚み方向の中央部に複数本の帯状の圧縮部を形成し、次いで前記帯状の圧縮部を面方向の中心線に沿って切断することを特徴とする集電体用三次元網状アルミニウム多孔体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−186134(P2012−186134A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111049(P2011−111049)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】