説明

集電装置の空力騒音抑制構造、集電装置の揚力調整装置、集電装置の揚力制御装置及びカルマン渦低減構造

【課題】装着が容易で簡単な構造によってカルマン渦の強度を弱め集電舟からの空力音を低減することができるとともに、集電舟に作用する揚力を簡単に調整し揚力を簡単に制御することができる集電装置の空力騒音抑制構造、集電装置の揚力調整装置、集電装置の揚力制御装置及びカルマン渦低減構造を提供する。
【解決手段】集電舟7がA方向に移動して縦渦発生部9のデルタ翼部9aから強い縦渦F12が発生すると、縦渦誘導部10の切欠部10aによってこの縦渦F12が集電舟7の下面7eに導かれる。このため、下側の剥離せん断層から発生するカルマン渦F11と縦渦誘導部10から導かれる縦渦F12とが干渉して、この干渉作用によって下側の剥離せん断層から発生するカルマン渦F11の強度が弱められる。その結果、上側の剥離せん断層から発生するカルマン渦F11の成長が妨げられて、カルマン渦F11の強度が弱まり空力音の発生が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、集電装置から発生する空力騒音を抑制する集電装置の空力騒音抑制構造、集電装置に作用する揚力を調整する集電装置の揚力調整装置、集電装置に作用する揚力を制御する集電装置の揚力制御装置、及び流れ場に存在する物体によって発生するカルマン渦を低減するカルマン渦低減構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の集電装置は、沿線騒音低減の点から集電舟から発生する空力音が小さいことと、集電性能の点から常に安定した揚力が作用し、風向やすり板の摩耗による形状の変化に対して揚力が敏感に変化しないことの2点が重要視されている。集電舟のような鈍頭な断面形状を有する柱状部材から生じる空力音の主たる原因として、部材背後に生じるカルマン渦からの圧力変動であることが知られている。このカルマン渦は、強い渦が物体後流のスパン方向に位相が揃って放出されることで、大きな圧力変動が生じ、それが遠方へ伝搬して強い空力音となる。このようなカルマン渦が原因で生じる空力音は特にエオルス音と呼ばれ、カルマン渦の放出周期に応じた狭帯域音を生ずる。エオルス音の低減にはカルマン渦自体を発生しないようにしたり、発生したカルマン渦の強度を弱めたり、構造を崩すといった対策が有効である。
【0003】
エオルス音を低減する方法としては、流れの剥離そのものを抑制する方法と、カルマン渦のスパン方向の構造を崩す方法の2つの方法が主として提案されている。流れの剥離そのものを抑制する方法としては、カルマン渦が流れの剥離によって生ずるため、断面形状を流線形化するなどして物体表面からの流れの剥離そのものを抑制することで、カルマン渦の発生自体を低減する方法がある。流線形化は空力音低減には最も基本的な方法であるが、集電舟については揚力特性との兼ね合いで実現が難しい。カルマン渦のスパン方向の構造を崩す方法としては、カルマン渦の生成を許容し、カルマン渦のスパン方向の構造を崩すことで、スパン方向に位相の揃った強い渦を生成させる方法がある。具体的には、集電舟に貫通孔を設けて物体背後の渦を吹き飛ばす方法と、スパン方向に集電舟の断面形状を変化させ、カルマン渦のスパン方向の構造を崩す方法とが提案されている。
【0004】
翼のような流線形物体については、流れが翼表面を沿って流れるときには強い負圧が生じ、物体上下面の圧力の均衡が崩れて揚力が生じる。しかし、翼のような流線形物体の場合、風向や形状の僅かな変化に対して揚力の大きさが敏感に変化してしまう。そのため、集電舟への適用を考えた場合には、様々な条件下での体向流にさらされるうえ、すり板摩耗による形状変化が生じるといった集電舟特有の制約条件により、断面形状の流線形化には適していない。そこで、集電舟の揚力特性の安定化のため、集電舟は矩形に近い鈍頭の形状断面を採用し、流れを物体表面で剥離させて物体表面での強い負圧の生成を回避し、揚力の安定化を図っている。一方、流れの剥離を生じるので、空力音は大きくなってしまう。また、最適化手法を用いて揚力特性と空力音を両立するような断面形状の平滑化が提案されている。
【0005】
従来の集電装置の空力騒音抑制構造(以下、従来技術1という)は、集電舟の前方の空気を取り入れる前側通気孔と、この通気孔から取り入れた空気を集電舟の後方に排出する後側通気孔と、前側通気孔と後側通気孔とを接続する空気管路などを備えている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術1では、後側通気孔から集電舟の後方に向かって空気を噴射し、この集電舟の後方に発生するカルマン渦を吹き消して、集電舟の長さ方向におけるカルマン渦の構造を崩壊させ、カルマン渦に起因するエオルス音を低減させている。
【0006】
従来の集電装置の空力騒音抑制構造(以下、従来技術2という)は、所定の曲線で定義された形状を配置した流れ場のシミュレーションを実行し、目的関数が最小になるような形状に集電舟を形成している(例えば、特許文献2参照)。この従来技術2では、例えば、進行方向前端が丸くなり進行方向後端が絞り込んだ全体にずんぐりした形状に集電舟を形成して、この集電舟の後方に発生するカルマン渦のこの集電舟の長さ方向における構造が発達するのを阻害している。
【0007】
従来の集電装置の空力騒音抑制構造(以下、従来技術3という)は、一定の制約条件下における集電舟の断面形状の初期プロファイルを設定するとともに、模型のプロファイルをこの初期プロファイルに対応するように設定し、この模型が流体から受ける物理量を測定している(例えば、特許文献3参照)。この従来技術3では、模型が流体から受ける物理量の測定値から目的関数を算出し、この目的関数が最小又は最大になるまで集電舟の断面形状のプロファイルを変更して、揚力特性と空力音の低減とを両立可能な集電舟の断面形状を最適化している。
【0008】
従来の集電装置の空力騒音抑制構造(以下、従来技術4という)は、集電舟の前縁の上下から突出及び没入可能な可動式ラフネスと、すり板とトロリ線との間の接触力に応じて可動式ラフネスを駆動する駆動源などを備えている(例えば、特許文献4参照)。この従来技術4では、接触力が所定の上限値を超えたときには下側の可動式ラフネスを駆動源が突出させ、この接触力が所定の下限値を下回ったときには上側の可動式ラフネスを駆動源が突出させて、集電舟に作用する揚力を調整している。
【0009】
従来の集電装置の空力騒音抑制構造(以下、従来技術5という)は、デルタ翼型の集電舟の先端部に、すり板から発生するカルマン渦的な渦(以下、剥離渦という)を低減するための縦渦を発生する突起物を備えている(例えば、特許文献5参照)。この従来技術5では、突起物から発生する縦渦を集電舟の上方に導き、すり板の後方に発生する剥離渦をこの縦渦によって低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005-137038号公報
【0011】
【特許文献2】特開2005-020834号公報
【0012】
【特許文献3】特開2009-145259号公報
【0013】
【特許文献4】特開2008-245490号公報
【0014】
【特許文献5】特開平07-147703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来技術1は、集電舟を貫通する貫通孔をこの集電舟に形成し、前後の貫通孔を配管で接続する必要がある。このため、従来技術1では、集電舟の構造が複雑になって実施が困難であるという問題点がある。従来技術2は、最適三次元形状に集電舟を形成する必要がある。このため、従来技術2では、集電舟の形状が複雑化してこの集電舟の重量が増加するために、トロリ線に対するすり板の追従性能が低下してしまう問題点がある。従来技術3は、揚力特性を安定化しつつ集電舟の形状を平滑化し流れの剥離を抑えている。しかし、従来技術3では、集電舟の断面形状が流線形になるため加工が困難になり製造コストが高くなってしまう問題点がある。従来技術4は、可動式ラフネスによって揚力を調整し境界層の乱流繊維により気流の剥離を抑制している。しかし、従来技術4では、集電舟への駆動源などの組み込みが困難であり、集電舟の構造が複雑になって実施が困難であるという問題点がある。従来技術5は、突起部から発生する縦渦によってすり板から発生する剥離渦を低減している。しかし、従来技術5では、突起物によって縦渦を集電舟の後方に導くことができず、集電舟から発生する剥離渦を低減することができない問題点がある。
【0016】
この発明の課題は、装着が容易で簡単な構造によってカルマン渦の強度を弱め集電舟からの空力音を低減することができるとともに、集電舟に作用する揚力を簡単に調整し揚力を簡単に制御することができる集電装置の空力騒音抑制構造、集電装置の揚力調整装置、集電装置の揚力制御装置及びカルマン渦低減構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、図2及び図4に示すように、集電装置(3)から発生する空力騒音を抑制する集電装置の空力騒音抑制構造であって、前記集電装置の進行方向後側に発生するカルマン渦(F11)による空力騒音を抑制するために、この集電装置の集電舟の下側の剥離せん断層を発生源とするカルマン渦を低減させる縦渦(F12)を発生させる縦渦発生部(9)を備えることを特徴とする集電装置の空力騒音抑制構造(8)である。
【0018】
請求項2の発明は、請求項1に記載の集電装置の空力騒音抑制構造において、図5〜図10に示すように、前記縦渦発生部は、前記集電装置の集電舟(7)の下方に配置されていることを特徴とする集電装置の空力騒音抑制構造である。
【0019】
請求項3の発明は、請求項2に記載の集電装置の空力騒音抑制構造において、図5、図6、図9及び図10に示すように、前記縦渦発生部は、前記集電装置の集電舟の長さ方向に所定の間隔をあけて、平面形状が略三角形のデルタ翼部(9a;9c)を備えることを特徴とする集電装置の空力騒音抑制構造である。
【0020】
請求項4の発明は、請求項2に記載の集電装置の空力騒音抑制構造において、図7及び図8に示すように、前記縦渦発生部は、前記集電装置の集電舟の長さ方向に所定の間隔をあけて、外観形状が略三角錐のデルタ翼部(9b)を備えることを特徴とする集電装置の空力騒音抑制構造である。
【0021】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の集電装置の空力騒音抑制構造において、図5〜図10に示すように、前記縦渦発生部は、前記集電装置の集電舟の進行方向前側及び進行方向後側に対称に配置されていることを特徴とする集電装置の空力騒音抑制構造である。
【0022】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の集電装置の空力騒音抑制構造において、図5及び図6に示すように、前記縦渦発生部が発生する前記縦渦を前記集電装置の集電舟の下方に導く縦渦誘導部(10)を備えることを特徴とする集電装置の空力騒音抑制構造である。
【0023】
請求項7の発明は、請求項6に記載の集電装置の空力騒音抑制構造において、前記縦渦誘導部は、前記集電装置の集電舟の長さ方向に所定の間隔をあけて、平面形状が略三角形の切欠部(10a)を備えることを特徴とする集電装置の空力騒音抑制構造である。
【0024】
請求項8の発明は、請求項6又は請求項7に記載の集電装置の空力騒音抑制構造において、前記縦渦誘導部は、前記集電装置の集電舟の進行方向前側及び進行方向後側に対称に配置されていることを特徴とする集電装置の空力騒音抑制構造である。
【0025】
請求項9の発明は、図12に示すように、集電装置(3)に作用する揚力(±L)を調整する集電装置の揚力調整装置であって、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の集電装置の空力騒音抑制構造(8)と、前記空力騒音抑制構造の縦渦発生部(9)の突出量(δ)を可変する突出量可変部(15)とを備える集電装置の揚力調整装置(14)である。
【0026】
請求項10の発明は、請求項9に記載の集電装置の揚力調整装置において、前記突出量可変部は、前記集電装置の集電舟を上昇させる方向の揚力(+L)を増加させるときには前記縦渦発生部の突出量を減少させ、前記集電装置の集電舟を下降させる方向の揚力(−L)を増加させるときには前記縦渦発生部の突出量を増加させることを特徴とする集電装置の揚力調整装置である。
【0027】
請求項11の発明は、図13に示すように、集電装置(3)に作用する揚力(±L)を調整する集電装置の揚力調整装置であって、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の集電装置の空力騒音抑制構造(8)と、前記空力騒音抑制構造の縦渦発生部の迎角(θ)を変更する迎角変更部(16)とを備える集電装置の揚力調整装置(14)である。
【0028】
請求項12の発明は、請求項11に記載の集電装置の揚力調整装置において、前記迎角変更部は、前記集電装置の集電舟を上昇させる方向の揚力(+L)を増加させるときには前記縦渦発生部の迎角を増加させ、前記集電装置の集電舟を下降させる方向の揚力(−L)を増加させるときには前記縦渦発生部の迎角を減少させることを特徴とする集電装置の揚力調整装置である。
【0029】
請求項13の発明は、図14に示すように、集電装置(3)に作用する揚力(±L)を制御する集電装置の揚力制御装置であって、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の集電装置の空力騒音抑制構造(8)と、前記集電装置のすり板(7a)とこのすり板が接触する電車線(1a)との間に作用する接触力(C)を測定する接触力測定部(18)と、前記空力騒音抑制構造の縦渦発生部(9)の突出量(δ)を可変する突出量可変部(19)と、前記接触力測定部の測定結果に基づいて前記突出量可変部を動作制御する制御部(20)とを備える集電装置の揚力制御装置(17)である。
【0030】
請求項14の発明は、請求項13に記載の集電装置の揚力制御装置において、前記制御部は、前記接触力が所定値を越えるときには前記縦渦発生部の突出量が増加するように前記突出量可変部を動作制御し、前記接触力が所定値を下回るときには前記縦渦発生部の突出量が減少するように前記突出量可変部を動作制御することを特徴とする集電装置の揚力制御装置である。
【0031】
請求項15の発明は、図15に示すように、集電装置(3)に作用する揚力(±L)を制御する集電装置の揚力制御装置であって、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の集電装置の空力騒音抑制構造(8)と、前記集電装置のすり板(7a)とこのすり板が接触する電車線(1a)との間に作用する接触力(C)を測定する接触力測定部(18)と、前記空力騒音抑制構造の縦渦発生部(9)の迎角(θ)を変更する迎角変更部(21)と、前記接触力測定部の測定結果に基づいて前記迎角変更部を動作制御する制御部(22)とを備える集電装置の揚力制御装置(17)である。
【0032】
請求項16の発明は、請求項15に記載の集電装置の揚力制御装置において、前記制御部は、前記接触力が所定値を越えるときには前記縦渦発生部の迎角が減少するように前記迎角変更部を動作制御し、前記接触力が所定値を下回るときには前記縦渦発生部の迎角が増加するように前記迎角変更部を動作制御することを特徴とする集電装置の揚力制御装置である。
【0033】
請求項17の発明は、図16に示すように、集電装置(3)に作用する揚力(±L)を制御する集電装置の揚力制御装置であって、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の集電装置の空力騒音抑制構造(8)と、前記集電装置のすり板(7a)とこのすり板が接触する電車線(1a)との間に作用する接触力(C)に応じて、前記空力騒音抑制構造の縦渦発生部(9)の突出量(δ)を可変する突出量可変部(23)を備えることを特徴とする集電装置の揚力制御装置(17)である。
【0034】
請求項18の発明は、請求項17に記載の集電装置の揚力制御装置において、前記突出量可変部は、前記接触力が所定値を越えるときには前記縦渦発生部の突出量を増加させ、前記接触力が所定値を下回るときには前記縦渦発生部の突出量を減少させることを特徴とする集電装置の揚力制御装置である。
【0035】
請求項19の発明は、図17に示すように、集電装置(3)に作用する揚力(±L)を制御する集電装置の揚力制御装置であって、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の集電装置の空力騒音抑制構造(8)と、前記集電装置のすり板(7a)とこのすり板が接触する電車線(1a)との間に作用する接触力(C)に応じて、前記空力騒音抑制構造の縦渦発生部(9)の迎角(θ)を変更する迎角変更部(24)を備えることを特徴とする集電装置の揚力制御装置(17)である。
【0036】
請求項20の発明は、請求項19に記載の集電装置の揚力制御装置において、前記迎角変更部は、前記接触力が所定値を越えるときには前記縦渦発生部の迎角を減少させ、前記接触力が所定値を下回るときには前記縦渦発生部の迎角を増加させることを特徴とする集電装置の揚力制御装置である。
【0037】
請求項21の発明は、図18〜図20に示すように、流れ場に存在する物体(25)によって発生するカルマン渦(F21)を低減するカルマン渦低減構造であって、前記カルマン渦を低減させる縦渦(F22)を発生させる縦渦発生部(27)を備え、前記縦渦発生部は、前記物体の長さ方向に所定の間隔をあけて、この物体の表面から突出するデルタ翼部(27a;27c)を備えることを特徴とするカルマン渦低減構造(26)である。
【0038】
請求項22の発明は、請求項21に記載のカルマン渦低減構造において、図18及び図20に示すように、前記デルタ翼部は、平面形状が略三角形であることを特徴とするカルマン渦低減構造である。
【0039】
請求項23の発明は、請求項21に記載のカルマン渦低減構造において、図19に示すように、前記デルタ翼部は、外観形状が略三角錐であることを特徴とするカルマン渦低減構造である。
【0040】
請求項24の発明は、請求項21から請求項23までのいずれか1項に記載のカルマン渦低減構造において、図18〜図20に示すように、前記縦渦発生部は、前記物体の前後に対称に配置されていることを特徴とするカルマン渦低減構造である。
【0041】
請求項25の発明は、請求項21から請求項24までのいずれか1項に記載のカルマン渦低減構造において、図18に示すように、前記縦渦発生部が発生する前記縦渦を前記物体の側面(25c)に導く縦渦誘導部(28)を備えることを特徴とするカルマン渦低減構造である。
【0042】
請求項26の発明は、請求項25に記載のカルマン渦低減構造において、前記縦渦発生部は、前記物体の長さ方向に所定の間隔をあけて、平面形状が略三角形の切欠部(28a)を備えることを特徴とするカルマン渦低減構造である。
【0043】
請求項27の発明は、請求項25又は請求項26に記載のカルマン渦低減構造において、前記縦渦誘導部は、前記物体の前後に対称に配置されていることを特徴とするカルマン渦低減構造である。
【発明の効果】
【0044】
この発明によると、装着が容易で簡単な構造によってカルマン渦の強度を弱め集電舟からの空力音を低減することができるとともに、集電舟に作用する揚力を簡単に調整し揚力を簡単に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明の第1実施形態に係る集電装置の空力騒音低減構造を備える集電装置を概略的に示す斜視図である。
【図2】この発明の第1実施形態に係る集電装置の空力騒音低減構造を備える集電装置を概略的に示す側面図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係る集電装置の空力騒音低減構造を備える集電装置を概略的に示す平面図である。
【図4】この発明の第1実施形態に係る集電装置の空力騒音抑制構造の作用を説明するための概念図である。
【図5】この発明の第1実施形態に係る集電装置の空力騒音抑制構造を概略的に示す斜視図であり、(A)は集電舟のすり板側を上向きにした状態を示す斜視図であり、(B)は集電舟のすり板側を下向きにした状態を示す斜視図である。
【図6】この発明の第1実施形態に係る集電装置の空力騒音抑制構造を概略的に示す外観図であり、(A)は平面図であり、(B)は底面図である。
【図7】この発明の第2実施形態に係る集電装置の空力騒音抑制構造を概略的に示す斜視図であり、(A)は集電舟のすり板側を上向きにした状態を示す斜視図であり、(B)は集電舟のすり板側を下向きにした状態を示す斜視図である。
【図8】この発明の第2実施形態に係る集電装置の空力騒音抑制構造を概略的に示す外観図であり、(A)は平面図であり、(B)は底面図である。
【図9】この発明の第3実施形態に係る集電装置の空力騒音抑制構造を概略的に示す斜視図であり、(A)は集電舟のすり板側を上向きにした状態を示す斜視図であり、(B)は集電舟のすり板側を下向きにした状態を示す斜視図である。
【図10】この発明の第3実施形態に係る集電装置の空力騒音抑制構造を概略的に示す外観図であり、(A)は平面図であり、(B)は底面図である。
【図11】この発明の第4実施形態に係る集電装置の揚力調整装置を備える集電装置を風洞試験装置の風洞測定部に設置した状態を概略的に示す外観図であり、(A)は平面図であり、(B)は側面図である。
【図12】この発明の第4実施形態に係る集電装置の揚力調整装置を概略的に示す縦断面図であり、(A)は空力騒音抑制構造の縦渦発生部の突出量を小さくしたときの縦断面図であり、(B)は空力騒音抑制構造の縦渦発生部の突出量を大きくしたときの縦断面図である。
【図13】この発明の第5実施形態に係る集電装置の揚力調整装置を概略的に示す縦断面図であり、(A)は空力騒音抑制構造の縦渦発生部の迎角を大きくしたときの縦断面図であり、(B)は空力騒音抑制構造の縦渦発生部の迎角を小さくしたときの縦断面図であり、(C)は(A)のXIII-XIIIC線で切断した状態を示す断面図である。
【図14】この発明の第6実施形態に係る集電装置の揚力制御装置を概略的に示す構成図であり、(A)は縦渦発生部の突出量を増加させた状態を示し、(B)は縦渦発生部の突出量を減少させた状態を示す。
【図15】この発明の第7実施形態に係る集電装置の揚力制御装置を概略的に示す構成図であり、(A)は縦渦発生部の迎角を減少させた状態を示し、(B)は縦渦発生部の迎角を増加させた状態を示す。
【図16】この発明の第8実施形態に係る集電装置の揚力制御装置を概略的に示す構成図であり、(A)は縦渦発生部の突出量を増加させた状態を示し、(B)は縦渦発生部の突出量を減少させた状態を示す。
【図17】この発明の第9実施形態に係る集電装置の揚力制御装置を概略的に示す構成図であり、(A)は縦渦発生部の迎角を減少させた状態を示し、(B)は縦渦発生部の迎角を増加させた状態を示す。
【図18】この発明の第10実施形態に係るカルマン渦低減構造を概略的に示す外観図であり、(A)は平面図であり、(B)は側面図であり、(C)は斜視図である。
【図19】この発明の第11実施形態に係るカルマン渦低減構造を概略的に示す外観図であり、(A)は平面図であり、(B)は側面図であり、(C)は斜視図である。
【図20】この発明の第12実施形態に係るカルマン渦低減構造を概略的に示す外観図であり、(A)は平面図であり、(B)は側面図であり、(C)は斜視図である。
【図21】実施例1〜3及び比較例に係る集電舟の縦断面図である。
【図22】実施例1〜3及び比較例に係る集電舟の風洞試験の実施状況を示す写真である。
【図23】実施例1に係る集電舟を風洞試験装置の風洞測定部に設置した状態を示す写真であり、(A)は集電舟の下面側から撮影した写真であり、(B)は集電舟の上面側から撮影した写真である。
【図24】実施例1に係る集電舟の外観形状と空力音の測定結果とを示す図であり、(A)は集電舟の外観を撮影した写真であり、(B)は集電舟の底面図であり、(C)は空力音の測定結果を示すグラフである。
【図25】実施例2に係る集電舟の外観形状と空力音の測定結果とを示す図であり、(A)は集電舟の外観を撮影した写真であり、(B)は集電舟の正面図であり、(C)は空力音の測定結果を示すグラフである。
【図26】実施例3に係る集電舟の外観形状と空力音の測定結果とを示す図であり、(A)は集電舟の外観を撮影した写真であり、(B)は集電舟の底面図であり、(C)は空力音の測定結果を示すグラフである。
【図27】実施例1〜3及び比較例に係る集電舟の空力音の測定結果を比較して示すグラフであり、(A)は空力音の1/3オクターブバンドの分析結果(風速40m/s)を示すグラフであり、(B)はエオルス音ピークバンド(100Hzバンド)の騒音レベルを示すグラフであり、(C)は騒音レベルのオーバーオール値(OA値)を示すグラフである。
【図28】実施例1及び比較例に係る集電舟のカルマン渦の発生状況(風速5m/s)を可視化して示す写真であり、(A)は比較例の可視化結果であり、(B)は実施例1の可視化結果である。
【図29】実施例1〜3及び比較例に係る集電舟に作用する揚力の迎角依存性(風速40m/s)を比較して示すグラフである。
【図30】実施例3〜5及び比較例に係る集電舟の外観形状と空力音の測定結果とを示す図であり、(A)は実施例3の集電舟の底面図であり、(B)は実施例4の集電舟の底面図であり、(C)は実施例5の集電舟の底面図であり、(D)は空力音の測定結果を示すグラフである。
【図31】実施例3〜5及び比較例に係る集電舟の空力音の測定結果を比較して示すグラフであり、(A)はエオルス音ピークバンド(100Hzバンド)の騒音レベルを示すグラフであり、(B)は騒音レベルのオーバーオール値(OA値)を示すグラフである。
【図32】実施例6,7及び比較例に係る集電舟のデルタ翼部の外観形状と空力音の測定結果とを示す図であり、(A)は実施例6の集電舟の底面図であり、(B)は実施例7の集電舟の底面図であり、(C)は空力音の測定結果を示すグラフである。
【図33】実施例6,7及び比較例に係る集電舟の空力音の測定結果を比較して示すグラフであり、(A)はエオルス音ピークバンド(100Hzバンド)の騒音レベルを示すグラフであり、(B)は騒音レベルのオーバーオール値(OA値)を示すグラフである。
【図34】実施例8,9及び比較例に係る集電舟のデルタ翼部の外観形状と空力音の測定結果とを示す図であり、(A)は実施例8の集電舟の底面図であり、(B)は実施例9の集電舟の底面図であり、(C)は空力音の測定結果を示すグラフである。
【図35】実施例8,9及び比較例に係る集電舟の空力音の測定結果を比較して示すグラフであり、(A)はエオルス音ピークバンド(100Hzバンド)の騒音レベルを示すグラフであり、(B)は騒音レベルのオーバーオール値(OA値)を示すグラフである。
【図36】実施例8,9及び比較例に係る集電舟のデルタ翼部の突出量による揚力変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1〜図3に示す架線1は、線路上空に架設される架空電車線であり、所定の間隔をあけて支持点で支持されている。トロリ線1aは、集電装置3が接触移動する電線であり、集電装置3が摺動することによって、図2に示す車両2に負荷電流を供給する。車両2は、電車又は電気機関車などの電気車であり、例えば高速で走行する新幹線(登録商標)などの鉄道車両である。車体2aは、乗客又は貨物を積載し輸送するための構造物である。
【0047】
集電装置3は、トロリ線1aから電力を車両2に導くための装置である。集電装置3は、図2に示す台枠4と、碍子(がいし)5と、図1及び図2に示す枠組6と、図1〜図3に示す集電舟(舟体)7と、空力騒音抑制構造8などを備えている。図2に示す台枠4は、枠組6を支持して車体2aの屋根上に設置される部材であり碍子5上に設置されている。碍子5は、車体2aと台枠4との間を電気的に絶縁する部材である。図1及び図2に示す枠組6は、集電舟7を支持する部材であり、集電舟7を支持した状態で上下方向に動作可能なリンク機構である。枠組6は、台枠4に取り付けられて上昇力を付与する主ばね(押上げ用ばね)によって上方に押上げられている。枠組6は、舟支え部6aと、上枠6bと、下枠6cと、屈曲部(関節部)6dなどを備えている。舟支え部6aは、集電舟7を支持する部分である。舟支え部6aは、集電舟7を架線1に対して水平に押上げる機構部である。上枠6bは、舟支え部6aに回転自在に連結される部材であり、下枠6cは図示しない主軸に固定される部材であり、屈曲部6dは上枠6bと下枠6cとが回転自在に連結される中間ヒンジとして機能する部分である。集電装置3は、車両2の進行方向(図中A方向)に対して非対称であり、一方向又は両方向に使用可能なシングルアーム型パンタグラフである。図1及び図2に示す集電装置3は、車両2の進行方向後側に屈曲部6dが位置する反なびき方向ではなく、車両2の進行方向前側に屈曲部6dが位置するなびき方向に移動している。
【0048】
図1〜図3に示す集電舟7は、すり板7aが取り付けられ支持される部材である。集電舟7は、一般にトロリ線1aと直交する方向(まくらぎ方向)に伸びた細長い金属製の柱状部材である。集電舟7は、図1〜図3に示すすり板7aと、図2に示すすり板支持部7bと、図1〜図3に示すホーン7cなどを備えている。集電舟7は、例えば、すり板7aが複数に分割された多分割すり板体であり、すり板7aを多数のすり板片に分割することによって、トロリ線1aと接触して加振されるすり板7aの質量を低減し、トロリ線1aに対する追従性能を向上させた新幹線用(高速用)パンタグラフの集電舟である。集電舟7は、図2に示すように、この集電舟7の中心軸に対して前後対称であり、前後がいずれも同一形状に形成されており、トロリ線1aと間隔をあけて対向する水平な上面7dと、舟支え部6aに支持されてこの上面7dと平行な下面7eと、上面7dの上縁に接続する垂直面とこの垂直面の下縁部で接続し下面7eに向かって後方に傾斜する傾斜面とを有する端面7fなどを備えている。
【0049】
図1〜図3に示すすり板7aは、トロリ線1aと摺動する部材である。すり板7aは、車両2の進行方向と直交する方向に伸びた金属製又は炭素製の板状部材である。すり板7aは、集電舟7とは別個に製造される別部品であり、集電舟7の上面7dに形成された凹部に収容されており、この集電舟7と一体に取り付けられている。図3に示すすり板7aの中央部は、車両2が本線走行時に主にトロリ線1aと摺動する主すり板として機能し、すり板7aの両端部は主すり板に比べて摺動頻度が低い補助すり板として機能する。すり板7aには、トロリ線1aと接触移動(摺動)して大電流が流れるため、一定の機械的強度、導電性及び耐摩耗性などが要求される。
【0050】
図2に示すすり板支持部7bは、すり板7aを弾性支持する部分である。すり板支持部7bは、すり板7aと集電舟7との間に配置されている。すり板支持部7bは、すり板7aと集電舟7とが相対変位可能なように集電舟7にすり板7aを支持するばねなどの弾性体であり、すり板7aとトロリ線1aとの間に作用する接触力Cが予め定められた標準値である時に中立位置になるようにばね定数などが設定されている。すり板支持部7bは、集電舟7に作用する接触力Cが標準値よりも大きくなると縮み、集電舟7に作用する接触力Cが標準値よりも小さくなると伸びる。
【0051】
図1〜図3に示すホーン7cは、車両2が分岐器を通過するときに、この分岐器の上方で交差する2本のトロリ線1aのうち車両2の進行方向とは異なる方向のトロリ線1aへの割込みを防止するための部材である。ホーン7cは、集電舟7の長さ方向の両端部から突出しており、先端部が湾曲して形成された金属製の部材である。
【0052】
図4〜図6に示す空力騒音抑制構造8は、図1〜図3に示す集電装置3から発生する空力騒音を抑制する構造である。空力騒音抑制構造8は、図4に示すように、集電舟7の付近に縦渦F12を発生させ、この集電舟7からのカルマン渦F11とこの縦渦F12とを干渉させることによって、カルマン渦F11の強度を弱めてこのカルマン渦F11に起因するエオルス音を低減する。ここで、カルマン渦F11とは、物体の表面で剥離した流れが物体の背後に交互に回り込むときに生じる渦(横渦)であり、エオルス音とはこのカルマン渦F11が原因となって生ずる空力音である。空力騒音抑制構造8は、例えば、ボルトなどの固定部材によってこの集電舟7の下面7eに着脱自在に装着されている。空力騒音抑制構造8は、例えば、プラスチックなどの合成樹脂又はアルミニウムなどの軽量金属などによって形成されており、表面に絶縁性塗料などを塗布して絶縁処理がされている。空力騒音抑制構造8は、図5及び図6に示すように、三角形状の凸部と三角形状の凹部とを互い違いに連続して、この集電舟7の長さ方向に形成している。空力騒音抑制構造8は、例えば、平面形状が略長方形の板状部材の両縁部を鋭角な三角形状の凹凸部に形成することによって、全体を鋸刃状(ぎざぎざ)に形成しており、図4〜図6に示すように気流F1の流れる方向に対して略直交するように集電舟7の下面7eに配置されている。空力騒音抑制構造8は、縦渦発生部9と縦渦誘導部10などを備えている。
【0053】
図4〜図6に示す縦渦発生部9は、集電装置3の進行方向後側に発生するカルマン渦F11による空力騒音を抑制するために、この集電装置3の集電舟7の下側の剥離せん断層を発生源とするカルマン渦F11を低減させる縦渦F12を発生させる部分である。縦渦発生部9は、集電装置3の集電舟7の下方に配置されており、この集電舟7の進行方向前側及び進行方向後側に、この集電舟7の下面7eの中心線に対して対称に配置されている。縦渦発生部9の厚さは、縦渦F12の強さなどがある厚みで極値を持つため最適値があり、厚すぎると翼ではなく柱になるため縦渦F12が発生しないが、流れを仕切り上下に圧力差を生じることが本質であるため無限に薄くしても縦渦F12が発生する。このため、縦渦発生部9の厚さは、縦渦F12の発生の有無からは下限値を設定できないが、加工性や強度を考慮するとあまり薄くすることができず、上限値がデルタ翼の突出量程度に設定することが好ましく、例えば0.1mm以上10mm以下の範囲内に設定することが好ましい。縦渦発生部9は、デルタ翼部9aなどを備えている。
【0054】
デルタ翼部9aは、縦渦F12を発生する部分である。デルタ翼部9aは、図5及び図6に示すように、集電舟7の長さ方向に所定の間隔をあけて形成されており、図5(B)及び図6(B)に示すように集電舟7の下面7eの一方の縁部と他方の縁部から外側に突出して形成された凸部である。デルタ翼部9aは、図4〜図6に示すように、上方に投影したときの形状がΔ形であるデルタ翼(三角翼)に近似したデルタ翼板であり、平面形状が略三角形に形成されている。デルタ翼部9aは、先端部が鋭角に形成されており、上面、下面及び左右の側面がいずれも平坦に形成されている。
【0055】
図5及び図6に示す縦渦誘導部10は、縦渦発生部9が発生する縦渦F12を集電舟7の下方に導く部分である。縦渦誘導部10は、縦渦発生部9と同様に、集電装置3の下方に配置されており、集電舟7の進行方向前側及び進行方向後側に、この集電舟7の下面7eの中心線に対して対称に配置されている。縦渦誘導部10は、図5(B)及び図6(B)に示すように、縦渦発生部9と一体に形成されており、切欠部10aなどを備えている。
【0056】
切欠部10aは、デルタ翼部9aが発生する縦渦F12を集電舟7の下面7eに誘導する部分である。切欠部10aは、集電舟7の長さ方向に所定の間隔をあけて形成され、デルタ翼部9aと互い違いに配置されており、集電舟7の下面7eの一方の縁部と他方の縁部とから切り込まれた凹部である。切欠部10aは、デルタ翼部9aと同様に平面形状が略三角形に形成されている。切欠部10aは、デルタ翼部9aの先端部と同じ角度で先端部が鋭角に形成されており、デルタ翼部9aの左右の側面とそれぞれ連続する左右の側面がいずれも平坦に形成されている。
【0057】
次に、この発明の第1実施形態に係る集電装置の空力騒音抑制構造の作用について説明する。
図1〜図6に示す空力騒音抑制構造8を集電装置3が備えていない場合には、図2に示す車両2がA方向に走行すると、図4に示すように集電舟7の表面で気流F1が剥離して、この集電舟7の進行方向後側に気流F1が交互に回り込む。このため、上下の剥離せん断層から発生する渦の相互作用によってカルマン渦F11が発生し、このカルマン渦F11によって空力音が発生する。例えば、上側の渦が生成するとこの渦の圧力変動によって下側の剥離せん断層が刺激されて新しい渦が生じ、上側の渦が流下した後に下側の渦が成長して、今度は上下の渦の役割が逆転して同様の事象が生じる。このように渦が互いに影響を与えながら交互に生成することによって、エオルス音に起因する空力音が発生する。
【0058】
一方、図1〜図6に示す空力騒音抑制構造8を集電装置3が備えている場合には、図2に示す車両2がA方向に走行すると、図4に示すように縦渦発生部9のデルタ翼部9aから強い縦渦F12が発生する。図5(B)及び図6(B)に示す縦渦誘導部10の切欠部10aによって、デルタ翼部9aから発生する縦渦F12が集電舟7の下面7eに導かれる。このため、図4に示すように、下側の剥離せん断層を発生源とするカルマン渦F11と縦渦誘導部10から導かれる縦渦F12とが干渉して、下側の剥離せん断層を発生源とするカルマン渦F11の強度がこの干渉作用によって弱められる。その結果、図1から図6に示すように、集電舟7の下側のみに空力音の低減対策が施されていても、上側の剥離せん断層を発生源とするカルマン渦F11の成長が妨げられて、上下の渦の相互作用が弱まり、カルマン渦F11の強度が弱まって空力音が抑制される。
【0059】
この発明の第1実施形態に係る集電装置の空力騒音抑制構造には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、集電装置3の進行方向後側に発生するカルマン渦F11による空力騒音を抑制するために、この集電装置3の集電舟7の下側の剥離せん断層を発生源とするカルマン渦F11を低減させる縦渦F12を縦渦発生部9が発生させる。このため、縦渦F12とカルマン渦F11との干渉作用によってこのカルマン渦F11の発生を抑制して、このカルマン渦F11に起因するエオルス音を低減することができる。
【0060】
(2) この第1実施形態では、集電装置3の集電舟7の下方に縦渦発生部9が配置されている。例えば、集電装置3の集電舟7の上側にはトロリ線1aと摺動するすり板7aが存在するため、この集電舟7の上側に縦渦発生部9を設置することができない。また、縦渦発生部9をすり板7aの一部として製作した場合には、すり板7aと縦渦発生部9との間に発生するアークによって縦渦発生部9が損傷してしまう。この第1実施形態では、集電舟7の構造を大規模に変更せずに、この集電舟7の下方に縦渦発生部9を取り付けるだけで、すり板7aの摩耗による形状変化による影響を考慮することなく、空力音を簡単に低減することができる。
【0061】
(3) この第1実施形態では、集電装置3の集電舟7の長さ方向に所定の間隔をあけて、平面形状が略三角形のデルタ翼部9aを縦渦発生部9が備えている。このため、集電舟7の下面7eにおける気流F1の剥離を緩和することができるとともに、デルタ翼部9aの翼前縁から強い縦渦F12を発生させることによって、集電舟7の周囲に縦渦F12を誘起させることができる。その結果、集電舟7の後流のカルマン渦F11と縦渦F12とを干渉させるとともに、このカルマン渦F11の発生源となる剥離せん断層とこの縦渦F12とを干渉させて、このカルマン渦F11の生成の抑制及び構造の崩壊を促し、空力音の低減を図ることができる。また、薄い板状部材によってデルタ翼部9aを簡単に製作することができるため、集電舟7の構造が複雑化するのを防ぐことができるとともに、重量やコストの増加も防ぐことができる。その結果、縦渦発生部9を集電舟7に簡単に装着することができるとともに、トロリ線1aに対するすり板7aの追従性に影響を与えず、空力音を容易に低減することができる。さらに、現状の集電舟7の形状や開発ノウハウをそのまま使用することができるため、集電舟7の開発コストを低減することができる。
【0062】
(4) この第1実施形態では、集電舟7の進行方向前側及び進行方向後側に縦渦発生部9が対称に配置されている。このため、縦渦発生部9の後側から集電舟7の後方に効率的に縦渦F12が抜けて、この縦渦F12をカルマン渦F11と干渉させて集電舟7から発生する空力音を低減することができる。また、車両2がA方向に走行する場合だけではなく、このA方向とは反対方向にこの車両2が走行する場合であっても、集電舟7から発生する空力音を低減することができる。特に、進行方向が変化する鉄道車両の場合には、上下線のいずれを走行しても空力音を低減することができる。
【0063】
(5) この第1実施形態では、縦渦発生部9が発生する縦渦F12を集電舟7の下方に縦渦誘導部10が導く。このため、縦渦発生部9が発生する縦渦F12を集電舟7の下面7e側に効率的に導き、この縦渦F12を効率的に生成することができるとともに、この縦渦F12の成長を促進することができる。その結果、下側の剥離せん断層から発生するカルマン渦F11を低減し、この下側のカルマン渦F11による圧力変動によって生じる上側の剥離せん断層から発生するカルマン渦F11も低減することができる。
【0064】
(6) この第1実施形態では、集電装置3の集電舟7の長さ方向に所定の間隔をあけて、平面形状が略三角形の切欠部10aを縦渦誘導部10が備えている。このため、デルタ翼部9aの翼前縁から発生する強い縦渦F12を集電舟7の下面7eに簡単に誘導し、この集電舟7の下側の剥離せん断層から発生するカルマン渦F11と縦渦誘導部10から導かれる縦渦F12とを干渉させて、エオルス音の発生を低減することができる。
【0065】
(7) この第1実施形態では、集電舟7の進行方向前側及び進行方向後側に縦渦誘導部10が対称に配置されている。このため、縦渦誘導部10の後側から集電舟7の後方に効率的に縦渦F12が抜けて、この縦渦F12をカルマン渦F11と干渉させて集電舟7から発生する空力音を低減することができる。また、車両2がA方向に走行する場合だけではなく、このA方向とは反対方向にこの車両2が走行する場合であっても、集電舟7から発生する空力音を低減することができる。
【0066】
(第2実施形態)
以下では、図1〜図6に示す部分と同一の部分については同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
図7及び図8に示す空力騒音抑制構造8は、集電舟7の端面7fに着脱自在に装着されており、図1〜図6に示す空力騒音抑制構造8と同様に、表面が絶縁処理された合成樹脂又は軽量金属などによって形成されている。空力騒音抑制構造8は、外観形状が略三角錐の三次元形状の部材を気流F1の流れる方向に対して略直交するように、所定の間隔をあけて複数並べて集電舟7の端面7fに配置している。空力騒音抑制構造8は、図5及び図6に示す縦渦誘導部10が省略されており、図7及び図8に示す縦渦発生部9がデルタ翼部9bなどを備えている。
【0067】
デルタ翼部9bは、図5及び図6に示すデルタ翼部9aと同様に縦渦F12を発生する部分である。デルタ翼部9bは、図7及び図8に示すように、集電舟7の長さ方向に所定の間隔をあけて形成されており、集電舟7の進行方向前側の端面7fと進行方向後側の端面7fから突出して形成された凸部である。デルタ翼部9bは、外観形状が略三角錐に形成されており、水平面で切断したときの断面形状が正三角形である三次元的な渦発生装置(ボルテックス・ジェネレータ(Vortex Generator))として機能する。デルタ翼部9bは、集電舟7の下面7eと同一面(同一高さ)であり外観が正三角形の平坦な底面9dと、集電舟7の端面7fと接合し外観が二等辺三角形の平坦な背面9eと、外観が三角形の平坦な左右の側面9fなどを備えている。デルタ翼部9bは、先端部が鋭角に形成されており、デルタ翼部9bの上端部は端面7fの垂直面と傾斜面との境界線と一致するように配置されている。
【0068】
この発明の第2実施形態に係る集電装置の空力騒音抑制構造には、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第2実施形態では、集電装置3の集電舟7の長さ方向に所定の間隔をあけて、外観形状が略三角錐のデルタ翼部9bを縦渦発生部9が備えている。このため、よどみ点からの流れが効率よくデルタ翼部9bの翼端部に導かれて強い縦渦F12を誘起させることができる。
【0069】
(第3実施形態)
図9及び図10に示す空力騒音抑制構造8は、図1〜図6に示す空力騒音抑制構造8と同様に、集電舟7の下面7eに着脱自在に装着されており、表面が絶縁処理された合成樹脂又は軽量金属などによって形成されている。空力騒音抑制構造8は、図9及び図10に示すように、三角形状の凸部と台形状の凹部とを互い違いに連続して、この集電舟7の長さ方向に形成している。空力騒音抑制構造8は、例えば、平面形状が略長方形の板状部材の両縁部を所定の間隔をあけて鋭角な三角形状の凸部に形成することによって、全体を鋸刃状(ぎざぎざ)に形成しており、気流F1の流れる方向に対して略直交するように集電舟7の下面7eに配置されている。空力騒音抑制構造8は、図5及び図6に示す縦渦誘導部10が省略されており、図9及び図10に示す縦渦発生部9がデルタ翼部9cなどを備えている。
【0070】
デルタ翼部9cは、図5〜図8に示すデルタ翼部9a,9bと同様に縦渦F12を発生する部分である。デルタ翼部9cは、図9及び図10に示すように、集電舟7の長さ方向に所定の間隔をあけて形成されており、集電舟7の下面7eの一方の縁部と他方の縁部から外側に突出して形成された凸部である。デルタ翼部9cは、図5及び図8に示すデルタ翼部9aと同様のデルタ翼板であり、平面形状が略三角形に形成されている。デルタ翼部9cは、図9及び図10に示すように、先端部が鋭角に形成されており、上面、下面及び左右の側面がいずれも平坦に形成されている。この第3実施形態には、第1実施形態と同様の効果がある。
【0071】
(第4実施形態)
図11及び図12に示す集電装置3は、風洞試験装置11によって種々の試験が実施される試験対象物(供試体)である。集電装置3は、例えば、図1〜図3に示すような実際の鉄道車両の集電装置又はこの集電装置を模擬(縮小)した模型集電装置である。風洞試験装置11は、集電装置3が気流F1を受けるときに、この気流F1によって生ずるこの集電装置3の挙動を測定する装置である。風洞試験装置11は、例えば、図11及び図12に示すように、風洞測定部12内の集電装置3に空気を流し、この空気の流れによってこの集電装置3から発生する揚力又は空力騒音などを測定する開放胴型風洞試験装置である。風洞試験装置11は、風洞測定部12と風洞13などを備えている。
【0072】
風洞測定部12は、集電装置3を設置する部分である。風洞測定部12は、風洞13のノズル13aと吸込口13bとの間に配置されており、集電装置3を支持する支持台12aを備えている。風洞13は、空気力学的な諸問題を実験的に調査するために人工的な空気の流れを作る装置である。風洞13は、一定の性状の風を人工的に送風する図示しない送風機、ダクト及び整流装置などを備えているとともに、ノズル13aと、吸込口13bなどを備えている。ノズル13aは、空気を噴出して風洞測定部12に一様な流れを作りこの風洞測定部12に空気を吹き出す部分である。吸込口13bは、風洞測定部12から空気を回収する部分である。
【0073】
揚力調整装置14は、集電装置3に作用する揚力±Lを調整する装置である。揚力調整装置14は、例えば、集電装置3の集電舟7の開発の最終段階においてこの集電舟7に作用する揚力±Lを調整するために使用される。揚力調整装置14は、図1〜図10に示す空力騒音抑制構造8と、図12に示す突出量可変部15などを備えている。揚力調整装置14は、空力騒音抑制構造8の縦渦発生部9の突出量δを突出量可変部15によって可変することによって集電舟7に作用する揚力を調整する。揚力調整装置14は、集電舟7を上昇させる方向の揚力+Lを増加させたいときには、突出量可変部15によって縦渦発生部9の突出量δを小さく調整し、集電舟7を下降させる方向の揚力−Lを増加させたいときには、突出量可変部15によって縦渦発生部9の突出量δを大きく調整する。以下では、図9及び図10に示すデルタ翼部9cを備える縦渦発生部9の突出量δを揚力調整装置14によって調整する場合を例に挙げて説明する。
【0074】
図12に示す突出量可変部15は、空力騒音抑制構造8の縦渦発生部9の突出量δを調整する部分である。突出量可変部15は、図12(A)に示すように、集電舟7を上昇させる方向の揚力+Lを増加させるときには縦渦発生部9の突出量δを減少させ、図12(B)に示すようにこの集電舟7を下降させる方向の揚力−Lを増加させるときにはこの縦渦発生部9の突出量δを増加させる。突出量可変部15は、手動操作によって縦渦発生部9を突出又は引き込むことによって、この縦渦発生部9の前後方向の位置を調整してこの縦渦発生部9の突出量δを可変する。突出量可変部15は、ガイド部15a,15bと、固定部15cと、スライド部15dなどを備えている。
【0075】
ガイド部15aは、縦渦発生部9の上面をスライド自在にガイドする部分である。ガイド部15aは、縦渦発生部9の上面が摺動可能なように平坦面に形成されており、集電舟7と一体に水平に形成されている。ガイド部15aは、このガイド部15aを貫通する雌ねじ部15eなどを備えている。ガイド部15bは、ガイド部15aとの間に縦渦発生部9を挟み込むようにこの縦渦発生部9の下面をスライド自在にガイドする部分である。ガイド部15bは、縦渦発生部9の下面が摺動可能なように平坦面に形成されており、ガイド部15aと同様に集電舟7と一体に水平に形成されている。ガイド部15bは、このガイド部15aを貫通する貫通孔15fなどを備えており、この貫通孔15fは固定部15cのボルト頭部の外径よりも内径が僅かに大きく形成されている。固定部15cは、縦渦発生部9を所定の位置に固定する部分である。固定部15cは、縦渦発生部9の突出量δが所定量になるように、この縦渦発生部9を集電舟7に固定する。固定部15cは、例えば、ガイド部15bの貫通孔15fに挿入されてガイド部15aの雌ねじ部15eと噛み合う雄ねじ部を有する六角穴付きボルトなどである。固定部15cは、ボルト頭部の座面をスライド部15dの下面に密着させることによって、この縦渦発生部9を所定の位置に固定する。固定部15cは、集電舟7の下面7eから突出して空力騒音の発生源となるのを防ぐために、縦渦発生部9を完全に固定したときにボルト頭部の上面がこの集電舟7の下面7eと同一高さ(面一)となる。スライド部15dは、縦渦発生部9と一体となってスライドする部分である。スライド部15dは、このスライド部15dを貫通しこのスライド部15dの進退方向に形成された長孔15gを備えており、この長孔15gは固定部15cの雄ねじ部の外径よりも幅が僅かに大きく形成されている。
【0076】
次に、この発明の第4実施形態に係る集電装置の揚力調整装置の使用方法について説明する。
図12(A)に示すように、集電舟7を上昇させる方向に作用する揚力+Lを増加させて、この集電舟7を下降させる方向に作用する揚力−Lを低下させるときには、固定部15cを緩めてスライド部15dをスライド可能な状態にする。次に、縦渦発生部9の突出量δを可変して、集電舟7の端面7fからこの縦渦発生部9を例えば突出量δ=δ1だけ突出させた後に、固定部15cを締め付けてこの縦渦発生部9を所定位置に固定する。一方、図12(B)に示すように、集電舟7を下降させる方向に作用する揚力−Lを増加させて、この集電舟7を上昇させる方向に作用する揚力+Lを低下させるときには、固定部15cを緩めてスライド部15dをスライド可能な状態にする。次に、縦渦発生部9の突出量δを可変して、集電舟7の端面7fからこの縦渦発生部9を例えば突出量δ=δ22>δ1)だけ突出させた後に、固定部15cを締め付けてこの縦渦発生部9を所定位置に固定する。
【0077】
次に、この発明の第4実施形態に係る集電装置の揚力調整装置の作用を説明する。
図11に示すように、風洞試験装置11の風洞測定部12内に集電装置3を設置して図中矢印方向に気流F1を流すと、集電舟7を上昇させる方向の揚力+Lや集電舟7を下降させる方向の揚力−Lが集電装置3に作用する。例えば、集電装置3全体として組み上げた状態で風洞試験を実施する場合には、集電舟7単体で風洞試験を実施する場合に比べて、枠組6などの他の部品と干渉して流れ場が変化する。その結果、集電装置3に作用する揚力±Lを適正値に調整するために、縦渦発生部9の突出量δを調整する必要がある。例えば、図12(A)に示す集電舟7を上昇させる方向の揚力+Lを増加させる必要があるときには、突出量可変部15によって縦渦発生部9の突出量δが小さくなるように調整される。その結果、集電舟7を下降させる方向の揚力−Lが低下して、集電装置3に作用する揚力±Lが適正値に設定される。一方、図12(B)に示すように、集電舟7を下降させる方向の揚力−Lを増加させる必要があるときには、突出量可変部15によって縦渦発生部9の突出量δが大きくなるように調整される。その結果、集電舟7を上昇させる方向の揚力+Lが低下して、集電装置3に作用する揚力±Lが適正値に設定される。
【0078】
この発明の第4実施形態に係る集電装置の揚力調整装置には、第1実施形態〜第3実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第4実施形態では、空力騒音抑制構造8の縦渦発生部9の突出量δを突出量可変部15が可変する。このため、例えば、集電舟7の開発の最終段階においてこの集電舟7に作用する揚力±Lを縦渦発生部9の突出量δを可変するだけで簡単に調整することができる。また、従来の揚力調整装置ではこの装置自体から空力騒音が発生していたが、この実施形態では縦渦発生部9が空力音の低減効果を発揮するため、空力音を増加させずに揚力を調整することができる。
【0079】
(2) この第4実施形態では、集電舟7を上昇させる方向の揚力+Lを増加させるときには縦渦発生部9の突出量δを突出量可変部15が減少させ、この集電舟7を下降させる方向の揚力−Lを増加させるときにはこの縦渦発生部9の突出量δをこの突出量可変部15が増加させる。このため、縦渦発生部9の突出量δを可変するだけで揚力特性を短時間で調整することができる。
【0080】
(第5実施形態)
図13に示す揚力調整装置14は、図1〜図10に示す空力騒音抑制構造8と、迎角変更部16などを備えている。揚力調整装置14は、空力騒音抑制構造8の縦渦発生部9の迎角θを迎角変更部16によって変更することによって集電舟7に作用する揚力を調整する。ここで、迎角θとは、縦渦発生部9の前後方向(幅方向)と気流F1の方向とのなす角である。図16に示すように、迎角θは、正の値(縦渦発生部9の前方から後方に向かって気流が斜め下方向)であるときには、この集電舟7を上昇させる方向を正とする揚力+Lがこの集電舟7に作用する。一方、迎角θは、負の値(縦渦発生部9の前方から後方に向かって気流が斜め上方向)であるときには、この集電舟7を下降させる方向を負とする揚力−Lがこの集電舟7に作用する。揚力調整装置14は、図13(A)に示すように、集電舟7を上昇させる方向の揚力+Lを増加させたいときには、迎角変更部16によって縦渦発生部9の迎角θを大きく調整する。一方、揚力調整装置14は、図13(B)に示すように、集電舟7を下降させる方向の揚力−Lを増加させたいときには、迎角変更部16によって縦渦発生部9の迎角θを小さく調整する。以下では、図9及び図10に示すデルタ翼部9cを備える縦渦発生部9の迎角θを揚力調整装置14によって調整する場合を例に挙げて説明する。
【0081】
迎角変更部16は、空力騒音抑制構造8の縦渦発生部9の迎角θを調整する部分である。迎角変更部16は、図13(A)に示すように、集電舟7を上昇させる方向の揚力+Lを増加させるときには、縦渦発生部9の迎角θを増加させ、図13(B)に示すようにこの集電舟7を下降させる方向の揚力−Lを増加させるときにはこの縦渦発生部9の迎角θを減少させる。迎角変更部16は、手動操作によって縦渦発生部9の角度を調整してこの縦渦発生部9の迎角θを可変する。迎角変更部16は、図13(C)に示すように、軸部16aと、支持部16bと、固定部16cなどを備えている。
【0082】
図13(C)に示す軸部16aは、縦渦発生部9と一体となって回転する部分である。軸部16aは、縦渦発生部9の両端部のこの縦渦発生部9の後端部寄りに、この縦渦発生部9から突出してこの縦渦発生部9と一体に形成されている。軸部16aは、端面に所定の深さの雌ねじ部16dを備えている。支持部16bは、軸部16aを回転自在に支持する部分である。支持部16bは、軸部16aの外周面を回転自在に支持する軸受部(ヒンジ部)であり、集電舟7の端面7fの傾斜面にこの端面7fと一体に形成されている。支持部16bは、固定部16cのボルト頭部の外径よりも内径が僅かに大きい凹部16eと、この凹部16eの中心に形成されてこの支持部16bを貫通する貫通孔16fなどを備えている。固定部16cは、縦渦発生部9を所定の傾斜角度に固定する部分である。固定部16cは、縦渦発生部9の迎角θが所定角度になるように、この縦渦発生部9を集電舟7に固定する。固定部16cは、例えば、軸部16aの雌ねじ部16dと噛み合う雄ねじ部を有する六角穴付きボルトなどである。固定部16cは、ボルト頭部の座面を支持部16bの凹部16eの底面に密着させることによって、一対の支持部16bの間に軸部16aの両端部を挟み込み、この縦渦発生部9を所定の傾斜角度に固定する。固定部16cは、支持部16bの表面から突出して空力騒音の発生源となるのを防ぐために、縦渦発生部9を完全に固定したときにボルト頭部の上面がこの支持部16bの表面と同一高さ(面一)となる。
【0083】
次に、この発明の第5実施形態に係る集電装置の揚力調整装置の使用方法について説明する。
図13(A)に示すように、集電舟7を上昇させる方向に作用する揚力+Lを増加させるときには、固定部16cを緩めて軸部16aを回転中心として縦渦発生部9を回転可能な状態にする。次に、縦渦発生部9の前縁部が上方に傾斜するようにこの縦渦発生部9の迎角θを可変して、この縦渦発生部9を例えば迎角θ=+θ1だけ上向きに回転させた後に、固定部16cを締め付けてこの縦渦発生部9を所定の傾斜角度に固定する。一方、図13(B)に示すように、集電舟7を下降させる方向に作用する揚力−Lを増加させるときには、固定部16cを緩めて軸部16aを回転中心として縦渦発生部9を回転可能な状態にする。次に、縦渦発生部9の前縁部が下方に傾斜するようにこの縦渦発生部9の迎角θを可変して、この縦渦発生部9を例えば迎角−θ=−θ2だけ下向きに回転させた後に、固定部16cを締め付けてこの縦渦発生部9を所定の傾斜角度に固定する。
【0084】
次に、この発明の第5実施形態に係る集電装置の揚力調整装置の作用を説明する。
例えば、図13(A)に示すように、集電舟7を上昇させる方向の揚力+Lを増加させる必要があるときには、迎角変更部16によって縦渦発生部9が上向きになるように迎角θが調整される。その結果、集電舟7を上昇させる方向の揚力+Lが増加して、集電装置3に作用する揚力±Lが適正値に設定される。一方、図13(B)に示すように、集電舟7を下降させる方向の揚力−Lを増加させる必要があるときには、迎角変更部16によって縦渦発生部9が下向きになるように迎角θが調整される。その結果、集電舟7を下降させる方向の揚力−Lが増加して、集電装置3に作用する揚力±Lが適正値に設定される。
【0085】
この発明の第5実施形態に係る集電装置の揚力調整装置には、第1実施形態〜第3実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第5実施形態では、空力騒音抑制構造8の縦渦発生部9の迎角θを迎角変更部16が変更する。このため、例えば、集電舟7の開発の最終段階においてこの集電舟7に作用する揚力±Lを縦渦発生部9の迎角θを変更するだけで簡単に調整することができる。また、従来の揚力調整装置ではこの装置自体から空力騒音が発生していたが、この実施形態では縦渦発生部9が空力音の低減効果を発揮するため、空力音を増加させずに揚力を調整することができる。
【0086】
(2) この第5実施形態では、集電舟7を上昇させる方向の揚力+Lを増加させるときには縦渦発生部9の迎角θを迎角変更部16が増加させ、この集電舟7を下降させる方向の揚力−Lを増加させるときにはこの縦渦発生部9の迎角θを迎角変更部16が減少させる。このため、縦渦発生部9の迎角θを可変するだけで揚力特性を短時間で調整することができる。
【0087】
(第6実施形態)
図14に示す揚力制御装置17は、集電装置3に作用する揚力±Lを制御する装置である。揚力制御装置17は、図2に示す車両2が軌道上を走行するときに集電装置3の集電舟7に作用する揚力±Lを自動的に調整する。揚力制御装置17は、図1〜図10に示す空力騒音抑制構造8と、接触力測定部18と、突出量可変部19と、制御部20などを備えている。揚力制御装置17は、すり板7aに作用する接触力Cを接触力測定部18によって測定し、この接触力Cの大きさに応じて縦渦発生部9の突出量δを突出量可変部19によって可変して、集電舟7に作用する揚力±Lを制御する。揚力制御装置17は、図14(A)に示すように、集電舟7に作用する接触力Cが標準値よりも大きくなったときには、縦渦発生部9の突出量δが大きくなるように突出量可変部19を動作制御し、集電舟7を下降させる方向の揚力−Lを大きくして接触力Cを低下させる。一方、揚力制御装置17は、図14(B)に示すように、集電舟7に作用する接触力Cが標準値よりも小さくなったときには、縦渦発生部9の突出量δが小さくなるように突出量可変部19を動作制御し、集電舟7を上昇させる方向の揚力+Lを大きくして接触力Cを増加させる。以下では、図9及び図10に示すデルタ翼部9cを備える縦渦発生部9の突出量δを突出量可変部19によって可変する場合を例に挙げて説明する。
【0088】
図14に示す接触力測定部18は、集電装置3のすり板7aとこのすり板7aが接触するトロリ線1aとの間に作用する接触力Cを測定する部分である。接触力測定部18は、例えば、集電舟7の撓み又はすり板支持部7bの撓みを検出することによって、接触力Cを検出する歪みセンサ又はロードセルなどの接触力センサである。接触力測定部18は、すり板7a及びすり板支持部7bを通じて集電舟7に作用する接触力Cの大きさに応じた接触力測定信号(歪み検出信号)を制御部20に出力する。
【0089】
突出量可変部19は、空力騒音抑制構造8の縦渦発生部9の突出量δを可変する部分である。突出量可変部19は、ガイド部15aとガイド部15bとの間で縦渦発生部9を進退自在に駆動してこの縦渦発生部9の突出量δを可変する。突出量可変部19は、空気又は油などの作動流体の流体圧によって駆動力を発生する流体圧シリンダ19aと、この流体圧シリンダ19a内の流体圧の変化によって伸縮するピストンロッド19bと、このピストンロッド19bの進出時には流体圧シリンダ19aのシリンダ室に流体を供給し、このピストンロッド19bの後退時には流体圧シリンダ19aのシリンダ室から流体を排出させる流体圧回路19cなどを備える突出装置である。突出量可変部19は、流体圧シリンダ19aのピストンロッド19bの先端部が縦渦発生部9の後端部に回転自在に連結しており、このピストンロッド19bを伸縮させることによってこの縦渦発生部9を進退させる。
【0090】
制御部20は、接触力測定部18の測定結果に基づいて突出量可変部19を動作制御する部分である。制御部20は、接触力測定部18が出力する接触力測定信号に基づいて接触力Cを演算し、この接触力Cが所定値(しきい値)を超えているか否かを判断する。制御部20は、図14(A)に示すように、接触力Cが所定値(しきい値)を超えているときには縦渦発生部9の突出量δが増加するように突出量可変部19を動作制御し、図14(B)に示すように接触力Cが所定値を下回るときには縦渦発生部9の突出量δが減少するように突出量可変部19を動作制御する。
【0091】
次に、この発明の第6実施形態に係る集電装置の揚力制御装置の作用を説明する。
図2に示すように、車両2がA方向に走行すると集電舟7に揚力±Lが作用するため、図14に示すようにトロリ線1aとすり板7aとの間の接触力Cが変動する。例えば、集電舟7を下降させる方向の揚力−Lが増加すると、図14(B)に示すように集電舟7とすり板7aとの間の相対変位が大きくなって接触力Cが低下する。このため、トロリ線1aからすり板7aが離れる離線が発生し、トロリ線1aとすり板7aとの間にアークが発生する。一方、集電舟7を上昇させる方向の揚力+Lが増加すると、図14(A)に示すように集電舟7とすり板7aとの間の相対変位が小さくなって接触力Cが増加する。このため、トロリ線1aとすり板7aとの間に発生する摩擦抵抗が過大になって、トロリ線1aやすり板7aが摩耗する。図2に示す車両2がA方向に走行して、図14に示すようにすり板7a及びすり板支持部7bを通じて接触力測定部18に接触力Cが伝達する。このため、集電舟7の撓み量又はすり板支持部7bの撓み量を接触力測定部18が測定し、この接触力Cに応じた接触力測定信号を制御部20に出力する。接触力測定信号が制御部20に入力するとこの接触力測定信号に基づいて制御部20が接触力Cを演算し、この接触力Cが所定値を超えているか否かを制御部20が判断する。
【0092】
接触力Cが所定値を超えると制御部20が判断したときには、縦渦発生部9の突出量δが増加するように突出量可変部19を制御部20が動作制御する。このため、図14(A)に示すように、流体圧シリンダ19aのシリンダ室に流体圧回路19cによって作動流体が供給されてピストンロッド19bが伸長して、このピストンロッド19bが縦渦発生部9を突出する方向に駆動する。その結果、集電舟7を上昇させる方向の揚力+Lが減少し、この集電舟7を下降させる方向の揚力−Lが増加して接触力Cが低下する。一方、接触力Cが所定値を下回ると制御部20が判断したときには、縦渦発生部9の突出量δが減少するように突出量可変部19を制御部20が動作制御する。このため、図14(B)に示すように、流体圧シリンダ19aのシリンダ室から流体圧回路19cによって作動流体が排出されてピストンロッド19bが縮小して、このピストンロッド19bが縦渦発生部9を引き込まれる方向に駆動する。その結果、集電舟7を下降させる方向の揚力−Lが減少し、この集電舟7を上昇させる方向の揚力+Lが増加して接触力Cが増加する。
【0093】
この発明の第6実施形態に係る集電装置の揚力制御装置には、第1実施形態〜第3実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第6実施形態では、トロリ線1aとすり板7aとの間に作用する接触力Cを測定する接触力測定部18の測定結果に基づいて、縦渦発生部9の突出量δを可変する突出量可変部19を制御部20が動作制御する。このため、集電装置3に作用する揚力±Lを縦渦発生部9の突出量δを可変するだけで簡単に制御することができる。その結果、トロリ線1aからのすり板7aの離線を抑制することができるとともに、トロリ線1a及びすり板7aの摩耗を抑制することができる。また、従来の揚力制御装置ではこの装置自体から空力騒音が発生していたが、この実施形態では縦渦発生部9が空力音の低減効果を発揮するため、空力音を増加させずに揚力を調整することができる。
【0094】
(2) この第6実施形態では、接触力Cが所定値を越えるときには縦渦発生部9の突出量δが増加するように突出量可変部19を制御部20が動作制御し、接触力Cが所定値を下回るときには縦渦発生部9の突出量δが減少するように突出量可変部19を制御部20が動作制御する。このため、揚力±Lを制御することによって接触力Cが変動するのを抑制し、この接触力Cを略一定に維持することができる。
【0095】
(第7実施形態)
図15に示す揚力制御装置17は、図1〜図10に示す空力騒音抑制構造8と、接触力測定部18と、迎角変更部21と、制御部22などを備えている。揚力制御装置17は、すり板7aに作用する接触力Cを接触力測定部18によって測定し、この接触力Cの大きさに応じて縦渦発生部9の迎角θを迎角変更部21によって変更して、集電舟7に作用する揚力±Lを制御する。揚力制御装置17は、図15(A)に示すように、集電舟7に作用する接触力Cが標準値よりも大きくなったときには、縦渦発生部9の迎角θが小さくなるように突出量可変部19を動作制御し、集電舟7を下降させる方向の揚力−Lを大きくして接触力Cを低下させる。一方、揚力制御装置17は、図15(B)に示すように、集電舟7に作用する接触力Cが標準値よりも小さくなったときには、縦渦発生部9の迎角θが大きくなるように突出量可変部19を動作制御し、集電舟7を上昇させる方向の揚力+Lを大きくして接触力Cを増加させる。以下では、図9及び図10に示すデルタ翼部9cを備える縦渦発生部9の迎角θを迎角変更部21によって可変する場合を例に挙げて説明する。
【0096】
迎角変更部21は、空力騒音抑制構造8の縦渦発生部9の迎角θを可変する部分である。迎角変更部21は軸部16aを回転中心として縦渦発生部9を回転自在に駆動してこの縦渦発生部9の迎角θを変更する。迎角変更部21は、縦渦発生部9を回転させるための駆動力を発生する電動機21aと、縦渦発生部9が上向き及び下向きに回転するように電動機21aを正転及び逆転させるための駆動電流を供給する電気回路21bと、電動機21aの駆動軸と一体となって回転する駆動ギヤ21cと、軸部16aと一体となって回転し駆動ギヤ21cと噛み合う従動ギヤ21dなどを備える迎角変更装置である。迎角変更部21は、電動機21aが正転又は逆転するときに発生する回転力を、駆動ギヤ21cを通じて従動ギヤ21dに伝達し、この回転力によって縦渦発生部9を昇降させる。
【0097】
制御部22は、接触力測定部18の測定結果に基づいて迎角変更部21を動作制御する部分である。制御部22は、制御部20と同様に、接触力測定部18が出力する接触力測定信号に基づいて接触力Cを演算し、この接触力Cが所定値(しきい値)を超えているか否かを判断する。制御部22は、図15(A)に示すように、接触力Cが所定値(しきい値)を超えているときには縦渦発生部9の迎角θが減少するように迎角変更部21を動作制御し、図15(B)に示すように接触力Cが所定値を下回るときには縦渦発生部9の迎角θが増加するように迎角変更部21を動作制御する。
【0098】
次に、この発明の第7実施形態に係る集電装置の揚力制御装置の作用を説明する。
図2に示す車両2がA方向に走行すると、図15に示す接触力Cに応じた接触力測定信号を制御部22に出力し、この接触力測定信号に基づいて制御部22が接触力Cを演算し、この接触力Cが所定値を超えているか否かを制御部22が判断する。接触力Cが所定値を超えると制御部22が判断したときには、図15(A)に示すように縦渦発生部9の迎角θが減少するように迎角変更部21を制御部22が動作制御する。このため、電動機21aに電気回路21bから駆動電流が供給されてこの電動機21aが正転し、駆動ギヤ21cから従動ギヤ21dに回転力が伝達されて、縦渦発生部9が下向き(迎角−θが大きくなる方向)に駆動する。その結果、集電舟7を上昇させる方向の揚力+Lが減少し、集電舟7を下降させる方向の揚力−Lが増加して接触力Cが低下する。一方、接触力Cが所定値を下回ると制御部20が判断したときには、図15(B)に示すように縦渦発生部9の迎角θが増加するように迎角変更部21を制御部22が動作制御する。このため、電動機21aに電気回路21bから駆動電流が供給されてこの電動機21aが逆転し、駆動ギヤ21cから従動ギヤ21dに回転力が伝達されて、縦渦発生部9が上向き(迎角+θが大きくなる方向)に駆動する。その結果、集電舟7を下降させる方向の揚力−Lが減少し、集電舟7を上昇させる方向の揚力+Lが増加して接触力Cが増加する。
【0099】
この発明の第7実施形態に係る集電装置の揚力制御装置には、第1実施形態〜第3実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第7実施形態では、すり板7aとトロリ線1aとの間に作用する接触力Cを測定する接触力測定部18の測定結果に基づいて、縦渦発生部9の迎角θを変更する迎角変更部21を制御部22が動作制御する。このため、集電装置3に作用する揚力±Lを縦渦発生部9の迎角を変更するだけで簡単に制御することができる。その結果、トロリ線1aからのすり板7aの離線を抑制することができるとともに、トロリ線1a及びすり板7aの摩耗を抑制することができる。また、従来の揚力制御装置ではこの装置自体から空力騒音が発生していたが、この実施形態では縦渦発生部9が空力音の低減効果を発揮するため、空力音を増加させずに揚力を調整することができる。
【0100】
(2) この第7実施形態では、接触力Cが所定値を越えるときには縦渦発生部9の迎角θが減少するように迎角変更部21を制御部22が動作制御し、接触力Cが所定値を下回るときには縦渦発生部9の迎角θが増加するように迎角変更部21を制御部22が動作制御する。このため、揚力±Lを制御することによって接触力Cが変動するのを抑制し、この接触力Cを略一定に維持することができる。
【0101】
(第8実施形態)
図16に示す揚力制御装置17は、集電装置3に作用する揚力±Lを制御する装置である。揚力制御装置17は、図2に示す車両2が軌道上を走行するときに集電装置3の集電舟7に作用する揚力±Lを機械的に調整する。揚力制御装置17は、図14に示す制御部20が省略されており、図1〜図10に示す空力騒音抑制構造8と、突出量可変部23などを備えている。揚力制御装置17は、すり板7aに作用する接触力Cの大きさに応じて縦渦発生部9の突出量δを突出量可変部23によって可変して、集電舟7に作用する揚力±Lを制御する。以下では、図9及び図10に示すデルタ翼部9cを備える縦渦発生部9の突出量δを突出量可変部23によって可変する場合を例に挙げて説明する。
【0102】
突出量可変部23は、空力騒音抑制構造8の縦渦発生部9の突出量δを接触力Cに応じて可変する部分である。突出量可変部23は、集電舟7の昇降動作に連動して縦渦発生部9を進退動作させており、この集電舟7の昇降動作を縦渦発生部9の進退動作に変換する動作変換部として機能する。突出量可変部23は、例えば、集電舟7が上下方向に変位したときにこの変位量と同じ変位量で縦渦発生部9を進退させる。突出量可変部23は、ラック23a,23bと、ピニオン23cなどを備えている。ラック23a,23bは、ピニオン23cと噛み合う歯である。ラック23aは、すり板7aと一体となって昇降するように、すり板7aの下面に上端部が連結されており、所定の方向に昇降自在にガイドされている。ラック23bは、縦渦発生部9と一体となって進退するように、縦渦発生部9の後縁部に一端部が連結されており、ラック23aの昇降方向と直交する方向に進退自在にガイドされている。ピニオン23cは、ラック23a,23bと噛み合って回転する歯車であり、集電舟7に回転自在に支持されている。突出量可変部23は、図16(A)に示すように、すり板7aと集電舟7との間の相対変位が小さくなったときには縦渦発生部9の突出量δを増加させ、図16(B)に示すようにすり板7aと集電舟7との間の相対変位が大きくなったときには縦渦発生部9の突出量δを減少させる。
【0103】
次に、この発明の第8実施形態に係る集電装置の揚力制御装置の作用を説明する。
図16(A)に示すように、集電舟7を上昇させる方向の揚力+Lが増加して接触力Cが増加すると、集電舟7とすり板7aとの間の相対変位が小さくなって、ピニオン23cが集電舟7と一体となって上昇する。このため、ラック23a,23bと噛み合いながらピニオン23cがB1方向に回転して、ラック23bと一体となって縦渦発生部9が突出し、この縦渦発生部9の突出量δが大きくなる。その結果、集電舟7を上昇させる方向の揚力+が減少し、この集電舟7を下降させる方向の揚力−Lが増加して接触力Cが低下する。一方、図16(B)に示すように、集電舟7を下降させる方向の揚力−Lが増加して接触力Cが減少すると、集電舟7とすり板7aとの間の相対変位が大きくなって、ピニオン23cが集電舟7と一体となって下降する。このため、ラック23a,23bと噛み合いながらピニオン23cがB1方向とは逆方向のB2方向に回転して、ラック23bと一体となって縦渦発生部9が引き込まれ、この縦渦発生部9の突出量δが小さくなる。その結果、集電舟7を下降させる方向の揚力−Lが低下し、この集電舟7を上昇させる方向の揚力+が増加して接触力Cが増加する。
【0104】
この発明の第8実施形態に係る集電装置の揚力制御装置には、第1実施形態〜第3実施形態及び第6実施形態の効果に加えて、図14に示す制御部20などが不要になって揚力制御装置17の全体の構造が簡単になり、集電舟7に作用する揚力±Lをより一層に簡単に制御することができる。
【0105】
(第9実施形態)
図17に示す揚力制御装置17は、図15に示す制御部22などが省略されており、図1〜図10に示す空力騒音抑制構造8と、迎角変更部24などを備えている。揚力制御装置17は、すり板7aに作用する接触力Cの大きさに応じて縦渦発生部9の迎角θを迎角変更部24によって変更して、集電舟7に作用する揚力±Lを制御する。以下では、図9及び図10に示すデルタ翼部9cを備える縦渦発生部9の迎角θを迎角変更部24によって変更する場合を例に挙げて説明する。
【0106】
迎角変更部24は、空力騒音抑制構造8の縦渦発生部9の迎角θを接触力Cに応じて変更する部分である。迎角変更部24は、集電舟7の昇降動作に連動して縦渦発生部9を回転動作させており、この集電舟7の昇降動作を縦渦発生部9の回転動作に変換する動作変換部として機能する。迎角変更部24は、例えば、集電舟7が上下方向に変位したときにこの変位量に応じて縦渦発生部9を回転させる。迎角変更部24は、ラック24aとピニオン24b,24cなどを備えている。ラック24aは、ピニオン24bと噛み合う歯である。ラック24aは、図16に示すラック23aと同様に、すり板7aと一体となって昇降するように、すり板7aの下面に上端部が連結されており、所定の方向に昇降自在にガイドされている。ピニオン24bは、ラック24aと噛み合って回転する歯車であり、集電舟7と一体となって昇降可能なように、この集電舟7に回転自在に支持されている。ピニオン24cは、ピニオン24bと噛み合う歯車であり、縦渦発生部9の軸部16aに取り付けられており、この軸部16aを回転中心として縦渦発生部9と一体となって回転する。迎角変更部24は、図17(A)に示すように、すり板7aと集電舟7との間の相対変位が小さくなったときには縦渦発生部9の前縁部を下方に傾斜させ、図17(B)に示すようにすり板7aと集電舟7との間の相対変位が大きくなったときには縦渦発生部9の前縁部を上方に傾斜させる。
【0107】
次に、この発明の第9実施形態に係る集電装置の揚力制御装置の作用を説明する。
図17(A)に示すように、集電舟7を上昇させる方向の揚力+Lが増加して接触力Cが増加すると、集電舟7とすり板7aとの間の相対変位が小さくなって、ピニオン24b,24cが集電舟7と一体となって上昇する。このため、ラック24aと噛み合いながらピニオン24bがB1方向に回転するとともに、このピニオン24bと噛み合いながら軸部16aを回転中心としてピニオン24cがB1方向とは逆方向のB2方向に回転し、縦渦発生部9の前縁部が上方に傾斜してこの縦渦発生部9の迎角θが減少する。その結果、集電舟7を上昇させる方向の揚力+が減少し、この集電舟7を下降させる方向の揚力−Lが増加して接触力Cが低下する。一方、図17(B)に示すように、集電舟7を下降させる方向の揚力−Lが増加して接触力Cが減少すると、集電舟7とすり板7aとの間の相対変位が大きくなって、ピニオン24b,24cが集電舟7と一体となって下降する。このため、ラック24aと噛み合いながらピニオン24bがB2方向に回転するとともに、このピニオン24bと噛み合いながら軸部16aを回転中心としてピニオン24cがB1方向に回転し、縦渦発生部9の前縁部が下方に傾斜してこの縦渦発生部9の迎角θが増加する。その結果、集電舟7を下降させる方向の揚力−Lが低下し、この集電舟7を上昇させる方向の揚力+が増加して接触力Cが低下する。
【0108】
この発明の第9実施形態に係る集電装置の揚力制御装置には、第1実施形態〜第3実施形態及び第7実施形態の効果に加えて、図15に示す制御部22などが不要になって揚力制御装置17の全体の構造が簡単になり、集電舟7に作用する揚力±Lをより一層に簡単に制御することができる。
【0109】
(第10実施形態)
図18に示す物体25は、流れ場に存在する部材である。物体25は、気体又は液体などの流体F2が流れる箇所にこの流体F2の流れを遮るように、水平方向、垂直方向又は斜め方向に配置されている。物体25は、中心軸に対して垂直な平面で切断したときの断面形状が略四角形の中実又は中空の角柱部材である。物体25は、上流側に位置して流体F2を受ける前面25aと、下流側に位置しこの前面25aとは反対側の後面25bと、流体F2の流れる方向に対して平行な側面25c,25dなどを備えている。物体25は、例えば、流体F2の速度を測定するピトー管、流体F2の温度又は圧力などの物性を測定するセンサ類を被覆する被覆管、鉄道の架線などの電車線、この電車線を支持する架線金具、住宅又は公園などの屋外に設置される手すり、電線、ケーブル、信号機、街灯、標識又は看板などを支持する支柱、鉄道の電車線を支持する電車線構造物、鉄塔、電柱、煙突、配管、整流フィン、橋桁、橋脚などである。
【0110】
カルマン渦低減構造26は、流れ場に存在する物体25によって発生するカルマン渦F21を低減する構造である。カルマン渦低減構造26は、物体25の付近に縦渦F22を発生させ、この物体25からのカルマン渦F21とこの縦渦F22とを干渉させることによって、カルマン渦F21の強度を弱める。カルマン渦低減構造26は、図1〜図10に示す空力騒音抑制構造8と同一構造であり、流体F2の流れる方向に対して交差するようにボルトなどの固定部材によってこの物体25の側面25cに着脱自在に装着されている。カルマン渦低減構造26は、縦渦発生部27と縦渦誘導部28などを備えている。
【0111】
縦渦発生部27は、カルマン渦F21を低減させる縦渦F22を発生させる部分である。縦渦発生部27は、図5及び図6に示す縦渦発生部9と同一構造であり、図18に示すように物体25の側面25cに配置されており、この物体25の前後に対称に配置されている。縦渦発生部27は、デルタ翼部27aなどを備えている。デルタ翼部27aは、図5及び図6に示すデルタ翼部9aと同一構造であり、図18に示すように物体25の長さ方向に所定の間隔をあけて、この物体25の表面から突出しており、平面形状が略三角形に形成されている。
【0112】
縦渦誘導部28は、縦渦発生部27が発生する縦渦F22を物体25の外周面に導く部分である。縦渦誘導部28は、図5及び図6に示す縦渦誘導部10と同一構造であり、図18に示すように物体25の側面25cに配置されており、この物体25の前後に対称に配置されている。縦渦誘導部28は、縦渦発生部27と一体に形成されており、切欠部28aなどを備えている。切欠部28aは、図5及び図6に示す切欠部10aと同一構造であり、図18に示すように物体25の長さ方向に所定の間隔をあけて形成されており、平面形状が略三角形に形成されている。
【0113】
次に、この発明の第10実施形態に係るカルマン渦低減構造の作用を説明する。
図18に示すカルマン渦低減構造26を物体25が備えていない場合には、流体F2が矢印方向に流れると物体25の表面で流体F2が剥離して、この物体25の下流側に流体F2が交互に回り込む。このため、側面25c,25d側の剥離せん断層から発生する渦の相互作用によってカルマン渦F21が発生し、このカルマン渦F21に起因する騒音や振動が発生する。一方、図18に示すカルマン渦低減構造26を物体25が備えている場合には、縦渦発生部27のデルタ翼部27aから強い縦渦F22が発生し、縦渦誘導部28の切欠部28aによってこの縦渦F22が物体25の側面25cに導かれる。このため、側面25c側の剥離せん断層を発生源とするカルマン渦F21と縦渦誘導部10から導かれる縦渦F22とが干渉して、側面25c側の剥離せん断層を発生源とするカルマン渦F21の強度がこの干渉作用によって弱められる。その結果、側面25d側の剥離せん断層を発生源とするカルマン渦F21の成長が妨げられて左右の渦の相互作用が弱まりカルマン渦F21の強度が弱まる。
【0114】
この発明の第10実施形態に係るカルマン渦低減構造には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第10実施形態では、カルマン渦F21を低減させる縦渦F22を縦渦発生部27が発生させ、物体25の長さ方向に所定の間隔をあけて、この物体25の表面から突出するデルタ翼部27aをこの縦渦発生部27が備えている。このため、縦渦F22とカルマン渦F21との干渉作用によってこのカルマン渦F21の発生を抑制して、このカルマン渦F21に起因する騒音や振動を低減することができる。
【0115】
(2) この第10実施形態では、デルタ翼部27aの平面形状が略三角形である。このため、デルタ翼部27aの翼前縁から強い縦渦F22を発生させることによって、物体25の周囲に縦渦F22を誘起させることができる。その結果、物体25の後流のカルマン渦F21と縦渦F22とを干渉させることによって、このカルマン渦F21の強度を弱めて騒音や振動が発生するのを低減することができる。さらに、薄い板状部材によってデルタ翼部27aを簡単に製作することができるため、物体25の構造が複雑化するのを防ぐことができるとともに重量やコストの増加も防ぐことができる。
【0116】
(3) この第10実施形態では、物体25の前後に縦渦発生部27が対称に配置されている。このため、縦渦発生部27の後側から物体25の後方に効率的に縦渦F22が抜けて、この縦渦F22をカルマン渦F21と干渉させて騒音や振動の発生を抑えることができる。
【0117】
(4) この第10実施形態では、縦渦発生部27が発生する縦渦F22を物体25の側面25cに縦渦誘導部28が導く。このため、縦渦発生部27が発生する縦渦F22を物体25の側面25c側に効率的に導き、この縦渦F22を効率的に生成することができるとともに、この縦渦F22の成長を促進することができる。その結果 物体25の側面25c側の剥離せん断層から発生するカルマン渦F21を低減し、この側面25c側のカルマン渦F21による圧力変動によって生じる側面25d側の剥離せん断層から発生するカルマン渦F21も低減することができる。
【0118】
(5) この第10実施形態では、物体25の長さ方向に所定の間隔をあけて、平面形状が略三角形の切欠部28aを縦渦発生部27が備えている。このため、デルタ翼部29aの翼前縁から発生する強い縦渦F22を物体25の側面25cに簡単に誘導し、この側面25c側の剥離せん断層から発生するカルマン渦F21と縦渦誘導部28から導かれる縦渦F22とを干渉させて、騒音や振動を低減することができる。
【0119】
(6) この第10実施形態では、物体25の前後に縦渦誘導部28が対称に配置されている。このため、縦渦発生部27の後側から物体25の後方に効率的に縦渦F22が抜けて、この縦渦F22をカルマン渦F21と干渉させて騒音や振動の発生を抑えることができる。
【0120】
(第11実施形態)
図19に示すデルタ翼部27bは、図7及び図8に示すデルタ翼部9bと同一構造であり、物体25の長さ方向に所定の間隔をあけて形成されており、外観形状が略三角錐に形成されている。この第11実施形態には、第10実施形態の効果に加えて、よどみ点からの流れが効率よくデルタ翼部27bの翼端部に導かれて強い縦渦F22を誘起させることができる。
【0121】
(第12実施形態)
図20に示すデルタ翼部27cは、図9及び図10に示すデルタ翼部9cと同一構造であり、物体25の長さ方向に所定の間隔をあけて形成されており、平面形状が略三角形に形成されている。この第12実施形態には、第10実施形態と同様の効果がある。
【実施例】
【0122】
次に、この発明の実施例について説明する。
(空力音の測定結果)
図21に示す比較例は、図5〜図10に示すデルタ翼部9a〜9cを備えていない集電舟である。比較例は、断面形状が中心線に対して前後で非対称であり、下面の幅が60mmであり、スパン長さが600mmである。比較例は、実際の鉄道車両の集電装置の集電舟を模擬した形状であり、実際の集電舟よりも長さが短く形成されている。
【0123】
図24(A)(B)に示す実施例1は、図5及び図6に示す第1実施形態と同一構造のデルタ翼部9aを備える集電舟である。実施例1は、図24(A)に示すように、厚さ0.6mmの平板の両縁部に一辺が20mmの正三角形を20mmピッチで隙間なく並べて形成し、この正三角形を引込めることで気流の流れ方向にオフセットさせて先端部を約8.7mm突出させている。実施例1は、実施例3の隣り合う三角形状の突出部の間に切り込みを入れた平板を、図21に示す比較例の集電舟の下面に取り付けて製作した。
【0124】
図25(A)(B)に示す実施例2は、図7及び図8に示す第2実施形態と同一構造のデルタ翼部9bを備える集電舟である。実施例2は、図25(A)に示すように、厚さ0.6mmの平板の両縁部に一辺が10mmの正三角形を2・mmピッチで形成し、図21に示す比較例の集電舟の下面にこの平板を取り付けた後に、図25(B)に示すようにこの平板の正三角形の突出部の上面に連続するように、三次元的なボルテックス・ジェネレータとして三角錐状の突出部を粘土によって造形して製作した。
【0125】
図26(A)(B)に示す実施例3は、図9及び図10に示す第3実施形態と同一構造のデルタ翼部9cを備える集電舟である。実施例3は、図26(B)に示すように、厚さ0.6mmの平板の両縁部に一辺が10mmの正三角形を2・mmピッチで並べて形成し、図21に示す比較例の集電舟の下面にこの平板を取り付けて製作した。実施例3は、実施例1とは異なり気流の流れ方向にオフセットさせずに先端部が約8.7mm突出させている。
【0126】
図24(A)(B)〜図26(A)(B)に示す実施例1〜3及び比較例に係る集電舟を、図23に示すようにこれらの集電舟の長さ方向が上下方向と一致するように、図24に示すようにこれらの集電舟を風洞試験装置の風洞測定部に垂直に設置した。次に、図22に示す風洞試験装置の風洞測定部に気流を流し、実施例1〜3及び比較例に係る集電舟から2m離して設置したマイクロホンによってこれらの集電舟から発生する空力音を測定した。風洞試験装置は、風洞測定部が開放型である公益財団法人鉄道総合技術研究所の小型低騒音風洞(開放型)を使用した。
【0127】
図24(C)〜図26(C)及び図27(A)に示す縦軸は、A特性による騒音レベル(dB(A))であり、横軸は1/3オクターブバンド中心周波数(Hz)である。ここで、A特性とは、人間の聴覚の周波数特性を反映させた形で音圧レベルを測定し評価するために用いられる聴感補正特性である。図27(A)に示すように、実施例1〜3は4kHz以上の周波数帯においてデルタ翼部9a〜9cから空力音が発生しているが、図27(B)に示すように比較例に比べて100Hz付近のエオルス音を中心に騒音レベルが大幅に低減しており、図27(C)に示すように比較例に比べてオーバーオール値も4.2〜4.8dB(A)程度低減していることが確認された。
【0128】
実施例1は、図27(B)に示すように、実施例3及び比較例に比べてエオルス音の低減量が実施例2に次いで大きく、図27(C)に示すように、オーバーオール値が実施例2,3及び比較例に比べて最も小さく、空力音の低減効果が確認された。このため、切り込みを形成した平板を集電舟の下面に取り付けるだけで簡単に実施できる対策であり、実現性が高く空力音の低減効果が最も大きいことが確認された。また、実施例1は、図28(B)に示すように、図28(A)に示す比較例に比べてカルマン渦の領域が小さくなっており、カルマン渦の強度が弱まっていることが確認された。
【0129】
実施例2は、図27(A)に示すように、500〜2kHzの周波数帯において三次元形状から生じたと考えられる空力音の増加が認められた。しかし、実施例2は、図27(B)に示すように、エオルス音の低減量が実施例1,3及び比較例に比べて最も大きく、図27(C)に示すようにオーバーオール値が実施例1,3と同程度であり、空力音の低減効果が実施例1,3とほぼ同等であることが確認された。
【0130】
実施例3は、図27(B)に示すように、エオルス音のピークバンドレベルが実施例1,2に比べて大きいが比較例に比べて小さく、図27(C)に示すようにオーバーオール値が実施例1,2と遜色なく、空力音の低減効果が大きいことが確認された。このため、実施例1と同様に切り込みを形成した平板を集電舟の下面に取り付けるだけで簡単に実施できる対策であり、実現性が高いことが確認された。以上より、図27に示すように、オーバーオール値で評価すると実施例1,3,2の順に空力音低減効果が大きいことが確認された。
【0131】
(揚力の比較結果)
図29に示す縦軸は、揚力(N)であり、横軸は集電舟の迎角(deg)である。図29に示すように、実施例1〜3は比較例に比べて揚力の値が小さくなっており、図5〜図10に示すデルタ翼部9a〜9cによって生ずる縦渦による負圧によって集電舟7の下面7eが引き寄せられる影響や、デルタ翼部9a〜9cの上面でよどみ圧を受けて翼が下方に押し下げられる影響であると考えられる。一方、揚力の迎角依存性(揚力グラフの傾き)は、デルタ翼部9a〜9cを備えていない比較例とほとんど変わらず揚力の迎角依存性に変化がない。このため、実施例1〜3は、揚力の迎角依存性を維持したまま空力音の低減が可能であることが確認された。なお、揚力値の低減量自体は、例えば、図1及び図2に示す集電舟7の上面7d側や枠組6の形状を改良することによって調整可能であり、問題にはならないと考えられる。
【0132】
(下流側のデルタ翼部による影響)
図30(A)に示す実施例3は、デルタ翼部を上流側及び下流側に対称に設置した板厚が0.6mmの集電舟である。実施例4は、図26(A)(B)に示す実施例3のデルタ翼部を上流側のみに設置した板厚が0.6mmの集電舟である。実施例5は、図26(A)(B)に示す実施例3のデルタ翼部を上流側及び下流側に非対称に設置した板厚が0.6mmの集電舟である。下流側のデルタ翼部の有無及び配置が空力音の低減効果に与える影響を風洞試験によって確認した。その結果、図30(D)に示すように、実施例3〜6は比較例に比べて空力音の低減効果が大きいことが確認された。また、図31に示すように、実施例3,5,4の順にエオルス音ピークレベル及びオーバーオール値が大きくなることが確認された。このため、図30(A)に示す実施例3のようにデルタ翼部を前後に対称に設置した場合に、空力音の低減効果が最も大きくなることが確認された。下流側にもデルタ翼部を設置したほうが空力音の低減効果が大きくなるという事柄は、双方向に走行する鉄道車両にとって有利であると考えられる。なお、デルタ翼部を前後に対称に設置した場合に空力音の低減効果が大きくなる理由は、縦渦が下流側の下面角部から効率よく後流へ抜け、カルマン渦と干渉するようになるためであると考えられる。
【0133】
(デルタ翼部の翼厚の影響)
図32(A)に示す実施例6は、図24(A)(B)に示す実施例1のデルタ翼部を上流側のみに設置した板厚0.6mmの集電舟である。図32(B)に示す実施例7は、図24(A)(B)に示す実施例1のデルタ翼部を上流側のみに設置した板厚1.6mmの集電舟であり、実施例6とデルタ翼部の形状が同じであるが板厚が厚く形成されている。翼厚の変化が空力音の低減効果に与える影響を風洞試験によって確認した。その結果、図32(C)に示すように、実施例6,7は比較例に比べて空力音が低減されていることが確認された。また、図33(A)に示すように、翼厚が厚い実施例7は翼厚が薄い実施例6に比べてエオルス音の低減量が大きいが、図32(C)に示すように翼厚が厚い実施例7は翼厚が薄い実施例6に比べてデルタ翼部自体から生ずる空力音が大きいことが確認された。図33(B)に示すように、オーバーオール値についてはエオルス音の低減と空力音の増加との相乗効果によって実施例6,7の両者とも値がほぼ同程度となっている。このため、デルタ翼部の厚みが増加するほどエオルス音が低減するが、デルタ翼部自身から発生する空力音が増加することが確認された。その結果、例えば、図5〜図10に示すデルタ翼部9a〜9cの厚みを変化させることによって、エオルス音の低減分と、デルタ翼部9a〜9cから発生する空力音の増加分とを調整して、オーバーオール値が最も低減する最適な厚みを選定可能であることが確認された。
【0134】
(デルタ翼部の突出量の影響)
図34(A)に示す実施例8は、図32(B)に示す実施例7と同一形状であり、一辺20mmのデルタ翼部の突出量を大きくし、デルタ翼部の三角形状の突出部を完全に突き出した板厚が1.6mmの集電舟である。図34(B)に示す実施例9は、実施例8のデルタ翼部の突出量の1/2であり板厚が1.6mmの集電舟である。図36に示す縦軸は、揚力平均値(N)であり、横軸は実施例8,9及び比較例である。デルタ翼部の突出量が空力音の低減効果に与える影響を風洞試験によって確認した。その結果、図34(C)に示すように、実施例8,9は比較例に比べて空力音が低減されていることが確認された。また、図35(A)に示すように、突出量が大きい実施例8は突出量が小さい実施例9に比べてエオルス音の低減量が小さく、図35(B)に示すようにデルタ翼部自体から生ずる空力音が大きいことが確認された。このため、図5〜図10及び図12に示すように、デルタ翼部9a〜9cを最適な突出量に選定することによって、空力音の低減効果が最も大きくなるデルタ翼部9a〜9cの形状に調整可能であることが確認された。さらに、図36に示すように、実施例8,9は比較例に比べてデルタ翼部を付与することによって揚力が低下しており、デルタ翼部の突出量が大きくなるほど揚力が減少することが確認された。このため、例えば、集電舟の開発の最終段階においてデルタ翼部の突出量を調整して、集電舟に作用する揚力を調整可能であることが確認された。以上より、図5〜図10に示すデルタ翼部9a〜9bによって揚力を調整及び制御する場合には、空力音の低減効果を図りながら揚力を調整及び制御可能であることが確認された。
【0135】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、空力騒音抑制構造8を集電装置3に適用し、カルマン渦低減構造26を流れ場に適用した場合を例に挙げて説明したが、集電装置に限定するものではない。例えば、カルマン渦F11,F21に起因する空力音、作用力変動又は圧力変動などが問題となる鉄道車両、自動車、航空機、船舶又はプラントなどについてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、集電舟7及び物体25の断面形状が四角形である場合を例に挙げて説明したが、断面形状が円形、楕円形、多角形又は前後非対称な形状である場合についてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、デルタ翼部9a〜9c,27a〜27c及び切欠部10aのそれぞれの寸法及び設置間隔が同一である場合を例に挙げて説明したが、寸法、設置個数及び設置間隔を限定するものではない。例えば、デルタ翼部9a〜9c,27a〜27c及び切欠部10aのそれぞれについて寸法が異なるものを不等間隔で並べて配置したり、種々の寸法、設置個数及び設置間隔に設定したりすることもできる。
【0136】
(2) この第1実施形態〜第3実施形態では、空力騒音抑制構造8が1枚の板状部材によって構成する場合を例に挙げて説明したが、前後に分割可能な複数枚の板状部材によって構成することもできる。また、この第1実施形態〜第5実施形態では、集電舟7の端面7fの一部が傾斜面である場合を例に挙げて説明したが、この端面7fの全部を垂直面である場合についても、この発明を適用することができる。また、この第1実施形態〜第9実施形態では、車両2がA方向に移動する場合を例に挙げて説明したが、車両2がA方向とは逆方向に移動する場合についてもこの発明を適用することができる。さらに、この第1実施形態〜第9実施形態では、集電装置3としてシングルアーム型パンタグラフを例に挙げて説明したが、翼型パンタグラフや菱型パンタグラフなどの他の形式のパンタグラフについてもこの発明を適用することができる。
【0137】
(3) この第3実施形態では、デルタ翼部9cが三次元形状の三角錐である場合を例に挙げて説明したが、円錐、丸み又は厚みが三次元的に変化する形状などである場合についても、この発明を適用することができる。また、この第4実施形態及び第5実施形態では、風洞試験装置11の風洞測定部12内において揚力調整装置14によって集電舟7に作用する揚力±Lを調整する場合を例に挙げて説明したが、実際の車両2を使用して試験する現車試験で揚力調整装置14によって集電舟7に作用する揚力±Lを調整することもできる。さらに、この第4実施形態〜第9実施形態では、デルタ翼部9cの突出量δ又は迎角θを可変して、集電舟7に作用する揚力±Lを調整又は制御する場合を例に挙げて説明したが、デルタ翼部9a,9bの突出量δ又は迎角θを可変して、集電舟7に作用する揚力±Lを調整又は制御することもできる。
【0138】
(3) この第6実施形態では、流体圧アクチュエータによって縦渦発生部9を駆動する場合を例に挙げて説明したが、リニアモータ又は送りねじ機構などによって縦渦発生部9を駆動することもできる。また、この第6実施形態〜第9実施形態では、縦渦発生部9を集電舟7の進行方向前側のみに配置した場合を例に挙げて説明したが、この縦渦発生部9をこの集電舟7の進行方向後側にも配置することができる。この場合には、車両2の進行方向を検出してこの車両2の進行方向前側の縦渦発生部9の突出量δ又は迎角θを可変することができる。さらに、この第7実施形態では、電動歯車機構によって縦渦発生部9を駆動する場合を例に挙げて説明したが、流体圧アクチュエータによってこの縦渦発生部9を駆動することもできる。
【0139】
(4) この第8実施形態では、すり板7aと集電舟7との間の相対変位量と縦渦発生部9の移動量とが1対1である場合を例に挙げて説明したが、歯数の異なる複数枚のギヤを噛み合わせることによって、相対変位量と移動量との比を変更することもできる。また、この第10実施形態では、物体25の長さ方向を垂直方向に一致させて配置した場合を例に挙げて説明したが、この物体25の長さ方向を水平方向又は斜め方向に配置した場合についても、この発明を適用することができる。さらに、この第10実施形態では、物体25の一方の側面25cにカルマン渦低減構造26を配置した場合を例に挙げて説明したが、この物体25の他方の側面25dにもカルマン渦低減構造26を配置することもできる。
【符号の説明】
【0140】
1 架線
1a トロリ線(電車線)
2 車両
2a 車体
3 集電装置
6 枠組
6a 舟支え部
7 集電舟
7a すり板
7b すり板支持部
7e 下面
7f 端面
8 空力騒音抑制構造
9 縦渦発生部
9a〜9c デルタ翼部
10 縦渦誘導部
10a 切欠部
11 風洞試験装置
12 風洞測定部
14 揚力調整装置
15 突出量可変部
16 迎角変更部
17 揚力制御装置
18 接触力測定部
19 突出量可変部
20 制御部
21 迎角変更部
22 制御部
23 突出量可変部
24 迎角変更部
25 物体
25a 前面
25b 後面
25c,25d 側面
26 カルマン渦低減構造
27 縦渦発生部
27a〜27c デルタ翼部
28 縦渦誘導部
28a 切欠部
1 気流
11,F21 カルマン渦
12,F22 縦渦
2 流体
δ,δ1,δ2 突出量
±L 揚力
θ,+θ1,−θ2 迎角
C 接触力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電装置から発生する空力騒音を抑制する集電装置の空力騒音抑制構造であって、
前記集電装置の進行方向後側に発生するカルマン渦による空力騒音を抑制するために、この集電装置の集電舟の下側の剥離せん断層を発生源とするカルマン渦を低減させる縦渦を発生させる縦渦発生部を備えること、
を特徴とする集電装置の空力騒音抑制構造。
【請求項2】
請求項1に記載の集電装置の空力騒音抑制構造において、
前記縦渦発生部は、前記集電装置の集電舟の下方に配置されていること、
を特徴とする集電装置の空力騒音抑制構造。
【請求項3】
請求項2に記載の集電装置の空力騒音抑制構造において、
前記縦渦発生部は、前記集電装置の集電舟の長さ方向に所定の間隔をあけて、平面形状が略三角形のデルタ翼部を備えること、
を特徴とする集電装置の空力騒音抑制構造。
【請求項4】
請求項2に記載の集電装置の空力騒音抑制構造において、
前記縦渦発生部は、前記集電装置の集電舟の長さ方向に所定の間隔をあけて、外観形状が略三角錐のデルタ翼部を備えること、
を特徴とする集電装置の空力騒音抑制構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の集電装置の空力騒音抑制構造において、
前記縦渦発生部は、前記集電装置の集電舟の進行方向前側及び進行方向後側に対称に配置されていること、
を特徴とする集電装置の空力騒音抑制構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の集電装置の空力騒音抑制構造において、
前記縦渦発生部が発生する前記縦渦を前記集電装置の集電舟の下方に導く縦渦誘導部を備えること、
を特徴とする集電装置の空力騒音抑制構造。
【請求項7】
請求項6に記載の集電装置の空力騒音抑制構造において、
前記縦渦誘導部は、前記集電装置の集電舟の長さ方向に所定の間隔をあけて、平面形状が略三角形の切欠部を備えること、
を特徴とする集電装置の空力騒音抑制構造。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の集電装置の空力騒音抑制構造において、
前記縦渦誘導部は、前記集電装置の集電舟の進行方向前側及び進行方向後側に対称に配置されていること、
を特徴とする集電装置の空力騒音抑制構造。
【請求項9】
集電装置に作用する揚力を調整する集電装置の揚力調整装置であって、
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の集電装置の空力騒音抑制構造と、
前記空力騒音抑制構造の縦渦発生部の突出量を可変する突出量可変部と、
を備える集電装置の揚力調整装置。
【請求項10】
請求項9に記載の集電装置の揚力調整装置において、
前記突出量可変部は、前記集電装置の集電舟を上昇させる方向の揚力を増加させるときには前記縦渦発生部の突出量を減少させ、前記集電装置の集電舟を下降させる方向の揚力を増加させるときには前記縦渦発生部の突出量を増加させること、
を特徴とする集電装置の揚力調整装置。
【請求項11】
集電装置に作用する揚力を調整する集電装置の揚力調整装置であって、
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の集電装置の空力騒音抑制構造と、
前記空力騒音抑制構造の縦渦発生部の迎角を変更する迎角変更部と、
を備える集電装置の揚力調整装置。
【請求項12】
請求項11に記載の集電装置の揚力調整装置において、
前記迎角変更部は、前記集電装置の集電舟を上昇させる方向の揚力を増加させるときには前記縦渦発生部の迎角を増加させ、前記集電装置の集電舟を下降させる方向の揚力を増加させるときには前記縦渦発生部の迎角を減少させること、
を特徴とする集電装置の揚力調整装置。
【請求項13】
集電装置に作用する揚力を制御する集電装置の揚力制御装置であって、
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の集電装置の空力騒音抑制構造と、
前記集電装置のすり板とこのすり板が接触する電車線との間に作用する接触力を測定する接触力測定部と、
前記空力騒音抑制構造の縦渦発生部の突出量を可変する突出量可変部と、
前記接触力測定部の測定結果に基づいて前記突出量可変部を動作制御する制御部と、
を備える集電装置の揚力制御装置。
【請求項14】
請求項13に記載の集電装置の揚力制御装置において、
前記制御部は、前記接触力が所定値を越えるときには前記縦渦発生部の突出量が増加するように前記突出量可変部を動作制御し、前記接触力が所定値を下回るときには前記縦渦発生部の突出量が減少するように前記突出量可変部を動作制御すること、
を特徴とする集電装置の揚力制御装置。
【請求項15】
集電装置に作用する揚力を制御する集電装置の揚力制御装置であって、
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の集電装置の空力騒音抑制構造と、
前記集電装置のすり板とこのすり板が接触する電車線との間に作用する接触力を測定する接触力測定部と、
前記空力騒音抑制構造の縦渦発生部の迎角を変更する迎角変更部と、
前記接触力測定部の測定結果に基づいて前記迎角変更部を動作制御する制御部と、
を備える集電装置の揚力制御装置。
【請求項16】
請求項15に記載の集電装置の揚力制御装置において、
前記制御部は、前記接触力が所定値を越えるときには前記縦渦発生部の迎角が減少するように前記迎角変更部を動作制御し、前記接触力が所定値を下回るときには前記縦渦発生部の迎角が増加するように前記迎角変更部を動作制御すること、
を特徴とする集電装置の揚力制御装置。
【請求項17】
集電装置に作用する揚力を制御する集電装置の揚力制御装置であって、
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の集電装置の空力騒音抑制構造と、
前記集電装置のすり板とこのすり板が接触する電車線との間に作用する接触力に応じて、前記空力騒音抑制構造の縦渦発生部の突出量を可変する突出量可変部を備えること、
を特徴とする集電装置の揚力制御装置。
【請求項18】
請求項17に記載の集電装置の揚力制御装置において、
前記突出量可変部は、前記接触力が所定値を越えるときには前記縦渦発生部の突出量を増加させ、前記接触力が所定値を下回るときには前記縦渦発生部の突出量を減少させること、
を特徴とする集電装置の揚力制御装置。
【請求項19】
集電装置に作用する揚力を制御する集電装置の揚力制御装置であって、
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の集電装置の空力騒音抑制構造と、
前記集電装置のすり板とこのすり板が接触する電車線との間に作用する接触力に応じて、前記空力騒音抑制構造の縦渦発生部の迎角を変更する迎角変更部を備えること、
を特徴とする集電装置の揚力制御装置。
【請求項20】
請求項19に記載の集電装置の揚力制御装置において、
前記迎角変更部は、前記接触力が所定値を越えるときには前記縦渦発生部の迎角を減少させ、前記接触力が所定値を下回るときには前記縦渦発生部の迎角を増加させること、
を特徴とする集電装置の揚力制御装置。
【請求項21】
流れ場に存在する物体によって発生するカルマン渦を低減するカルマン渦低減構造であって、
前記カルマン渦を低減させる縦渦を発生させる縦渦発生部を備え、
前記縦渦発生部は、前記物体の長さ方向に所定の間隔をあけて、この物体の表面から突出するデルタ翼部を備えること、
を特徴とするカルマン渦低減構造。
【請求項22】
請求項21に記載のカルマン渦低減構造において、
前記デルタ翼部は、平面形状が略三角形であること、
を特徴とするカルマン渦低減構造。
【請求項23】
請求項21に記載のカルマン渦低減構造において、
前記デルタ翼部は、外観形状が略三角錐であること、
を特徴とするカルマン渦低減構造。
【請求項24】
請求項21から請求項23までのいずれか1項に記載のカルマン渦低減構造において、
前記縦渦発生部は、前記物体の前後に対称に配置されていること、
を特徴とするカルマン渦低減構造。
【請求項25】
請求項21から請求項24までのいずれか1項に記載のカルマン渦低減構造において、
前記縦渦発生部が発生する前記縦渦を前記物体の側面に導く縦渦誘導部を備えること、
を特徴とするカルマン渦低減構造。
【請求項26】
請求項25に記載のカルマン渦低減構造において、
前記縦渦発生部は、前記物体の長さ方向に所定の間隔をあけて、平面形状が略三角形の切欠部を備えること、
を特徴とするカルマン渦低減構造。
【請求項27】
請求項25又は請求項26に記載のカルマン渦低減構造において、
前記縦渦誘導部は、前記物体の前後に対称に配置されていること、
を特徴とするカルマン渦低減構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2013−115896(P2013−115896A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259071(P2011−259071)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】