説明

雌型端子金具

【目的】 弾性接触片の変形を防止して、弾性接触片が弾性を失うことがない雌型端子金具を提供する。
【構成】 本発明の雌型端子金具15は、突出部11が弾性接触片19の撓みを規制した状態で第1辺部19aが上り辺部21aに密着状態で当接するように上り辺部21aを形成したことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、筒体状の電気接続部の内部に弾性接触片が形成された雌型端子金具に関する。
【0002】
【従来の技術】図3は従来の雌型端子金具1を示す。同図において、雌型端子金具1は、雄型端子金具4が前方側の開口5から挿入される筒体状の電気接触部7と、この電気接触部7の開口5から内部に向けて延設された弾性接触片9と、電気接触部7の内壁に形成され、弾性接触片9の撓み量を規制する突出部11とからなり、電気接触部7の後方側には、ワイヤーハーネスが加締め接続される絶縁体加締め部と、導電体が加締め接続される導電体加締め部とが形成されている(いずれも図示を省略した)。
【0003】上記弾性接触片9は、電気接触部7への雄型端子金具4の未挿入時にには、図4(a)に示すように、突出部11から離間している。この状態から、雄型端子金具4を電気接触部7内に挿入すると、図4(b)に示すように弾性接触片9が撓んで突出部11の外周に接近する。この状態では、弾性接触片9と突出部11の外周との間には若干の隙間が生じており、弾性接触片9が雄型端子金具4をその弾性力で電気接触部7の内壁に向けて押圧している。なお、弾性接触片9が撓み過ぎた場合には、弾性接触片9が突出11の外周に当接して、過剰変位が防止されるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、雌型端子金具1の電気接触部7内には、雄型端子金具4以外に、雌型端子金具1の通電を検査するためにテスター等のプローブ13や、コネクタの端子収容室内から雌型端子金具1を抜き出すための抜き治具等を挿入することがある。このような場合、テスター等のプローブや抜き治具13が、図4(c)に示すように弾性接触片9の屈曲部周辺に当接すると、突出部11との間に隙間Sが存在しているために弾性接触片9が変形する。この場合には弾性接触片9が塑性変形して、弾性を失ういわゆるへたりが生じる。
【0005】弾性接触片9が弾性を失うと、雄型端子金具4を電気接触部7へ向けて押圧し、雄型端子金具3を保持することが出来なくなるので、雄型端子金具4との間に隙間が生じて、通電不良が生じるという問題がある。
【0006】本発明は、上記事情を考慮し、弾性接触片の変形を防止して、弾性接触片が弾性を失うことがない雌型端子金具を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため本発明は、突出部が弾性接触片の撓みを規制した状態で弾性接触片の第1辺部が突出部の上り辺部に密着状態で当接するように突出部の上り辺部を形成したことを特徴としている。
【0008】
【作用】本発明によれば、筒体部内に、テスターのプローブや引き抜き治具を挿入し、弾性接触片の第1辺部を突出部の上り辺部に向けて押圧すると、第1辺部は、上り辺部に密着状態で当接する。これにより、プローブや引き抜き治具から付与された押圧力を、突出部と共に受けるので、弾性接触片が塑性変形してへたりが生じることがない。これにより、弾性接触片が弾性力を失うことがないので、筒体部内で雄型端子金具を確実に保持することが出来、導通不良が発生しない。
【0009】
【実施例】以下、本発明に係る雌型端子金具の一実施例を、図面を用いて説明する。
【0010】図1及び図2は本実施例の雌型端子金具15を示す。同図において、本実施例の雌型端子金具15の弾性接触片19は、雄型端子金具4の開口側から電気接触部17内に向けて折り返えされて第1辺部19aと第2辺部19bとからなる山形形状に形成されている。そして、端子金具4の開口側が固定端とされ、電気接触部17の奥方に位置する先端部が自由端とされて弾性を有している。
【0011】一方、電気接触部17に形成された突出部21は、頂部が電気接触部17の内部に位置し、第1辺部19aと第2辺部19bにそれぞれ対応した上り辺部21aと下り辺部21bにより形成された山形形状で、電気接触部17を構成する側壁の一部を内側に打ち出して形成されている。
【0012】また、雄型端子金具4を電気接触部17内に挿入しない状態では、図2(a)に示すように、弾性接触片19の第1辺部19aと第2辺部19bは、突出部21の上り辺部21aと下り辺部21bからそれぞれ離間している。
【0013】このような雌型端子金具15の電気接触部17内に雄型端子金具4を正規の状態で挿入すると、図2R>2(b)に示すように、弾性接触片19が撓んで突出部21に接近する。この状態では、弾性接触片19と突出部21の外周との間には若干の隙間が生じており、弾性接触片19が雄型端子金具4を電気接触部17の内壁に向けて押圧し、保持している。
【0014】また、雌型端子金具15の電気接触部17内に、傾斜した状態で雄型端子金具4を挿入したり、導通検査のためにテスターのプローブ13を挿入すると、図2(c)に示すように、弾性接触片19が撓んで、上り辺部21aと第1辺部19aとの間に隙間が生じないで、突出部11に密着状態で当接して重なり合う。この状態では、雄型端子金具4やプローブ13からの押圧力を、突出部21と共に受けるので、弾性接触片19にへたりが生じることがない。よって、雄型端子金具4と電気接触部17との間に隙間が生じないので、導通不良が生じることがない。
【0015】雄型端子金具4を電気接触部17内から引き抜くと、図2(a)に示すように弾性接触片19が元の形状に復帰する。
【0016】上記実施例は電気接触部と一体にした折り返し弾性接触片について述べたが、弾性接触片を別部材とした構成でも良い。
【0017】なお、弾性接触片19の第2辺部19bは雄型端子金具4等の挿入にあたり、突出部21の下り辺部21bに当接させても、させなくとも本願の作用効果に影響はない。
【0018】又、上記実施例は、へたり防止用突出部21の上り辺部21aに弾性接触片19の第1辺部19aを密着重合させたが、前記上り辺部21a或は第1辺部19aの少なくとも一方の対向側に突出部を形成し、突出部との間の隙間を少なくしても良い。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように本発明に係る雌型端子金具は、突出部が弾性接触片の撓みを規制した状態で第1辺部が上り辺部に密着状態で当接するように上り辺部を形成したので、弾性接触片の変形を防止することが出来、弾性接触片が弾性を失うことがない。よって、雄型端子金具との隙間が無くなり、導通不良が発生しない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る雌型端子金具を示す斜視図である。
【図2】雌型端子金具の内部を示し、(a)は雄型端子金具が電気接触部内に挿入されていない状態を示す断面図、(b)は雄型端子金具が電気接触部内に挿入された状態を示す断面図、(c)はテスター等のプローブを電気接触部内に挿入した状態を示す断面図である。
【図3】従来の雌型端子金具を示す斜視図である。
【図4】従来の雌型端子金具の内部を示し、(a)は雄型端子金具が電気接触部内に挿入されていない状態を示す断面図、(b)は雄型端子金具が電気接触部内に挿入された状態を示す断面図、(c)はテスターのプローブを電気接触部内に挿入した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
4 雄型端子金具
15 雌型端子金具
17 電気接触部
19 弾性接触片
19a 第1辺部
19b 第2辺部
21 突出部
21a 上り辺部
21b 下り辺部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 雄型端子金具が一方の開口から挿入される筒体部と、この筒体部内に設けられた第1辺部を有する弾性接触片と、前記弾性接触片の撓み量を規制すると共に上り辺部が形成された突出部とを有する雌型端子金具において、前記突出部が前記弾性接触片の撓みを規制した状態で前記弾性接触片の第1辺部が前記突出部の上り辺部に密着状態で当接するように前記突出部の上り辺部を形成したことを特徴とする雌型端子金具。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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