説明

雌牛の発情管理装置

【課題】雌牛の発情時期における雄牛の乗駕回数を検出して計数表示することにより、飼育者が雌牛に付き添って観察する手間を省き、誰でも発情時期を正確に把握できる雌牛の発情管理装置を提供する。
【解決手段】雌牛Fの腰角部位に装着される装着部材1に乗駕時における雄牛の密着圧力を検出する圧力検出部5を取り付ける。この圧力検出部5にその検出した回数を計数し表示する計数表示部6を送信波を介して接続する。
【効果】本装置を装着した発情雌牛Fに雄牛が乗駕すると、雄牛の密着圧力が圧力検出部5により検出され、その検出信号は計数表示部6に送信されて表示される。この表示された検出回数、すなわち乗駕回数を知ることで発情時期を正確に把握することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、雌牛の発情時期を把握するために用いられる装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、繁殖牛の飼育におけるタイミングの良い種付けのためには、雌牛の発情時期(末期)を正確に把握しなければならない。しかし、雌牛の発情時期を正確に把握するのに適切な客観的方法は未だ開発されていない。強いて言えば、経験豊かな飼育者が雌牛に常時付き添って、接食行動の異常などを観察することにより、雌牛の発情時期を把握する方法が一部で行われている程度である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、雌牛の接食行動の異常などを観察する従来の方法では、飼育者に豊かな経験と勘が要求されるため、経験の浅い飼育者にとっては発情時期を正確に把握することが難しい。また、従来の方法では、飼育者が日夜雌牛に付き添って観察しなければならないので、多大な手間と時間を要し、実際には採用し難いという問題がある。本発明は上記の問題点に鑑み、経験豊かな飼育者が日夜雌牛に付き添って観察することなく、経験の浅い飼育者でも発情時期を正確に把握できる雌牛の発情管理装置を提供することを目的とする。これは、雌牛が発情時期にのみ雄牛に乗駕を許し、交尾のために不動の姿勢をとるという知見に着目して開発されたものであり、雄牛の乗駕の回数を検出して雌牛の発情時期を把握できるものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】このため本発明の構成は、雌牛の腰角部位に装着される装着部材と、該装着部材に取り付けられ前記雌牛に対する雄牛の乗駕時の密着圧力を検出して信号を発する圧力検出部と、該圧力検出部に電気的に接続され該圧力検出部の発した検出信号の回数を計数して表示する計数表示部を備えてなることを特徴とする。
【0005】上記装置は、雌牛の装着部位に対応可能な形状を有し、伸縮自在で所要の強度を有するものとする。また圧力検出部としては、金属や半導体の歪み抵抗、静電容量、リアクタンス等から電気信号を取り出す電源内蔵型のものが使用される。圧力検出部からの検出信号は、牛の飼育場所によっては有線方式でも可能だが、主に、無線通信により計数表示部に送られるように構成し、この計数表示部には、A/D変換回路、カウンタ回路、メモリ回路、表示回路などが適宜組み込まれる。
【0006】本発明の発情管理装置は、雌牛の尾根部付近を含む腰角部位に装着固定して使用される。本装置が装着された発情雌牛に雄牛が乗駕すると、雌牛に対する雄牛の密着圧力が圧力検出部により検出される。圧力検出部の検出信号は計数表示部に送られ、その検出回数すなわち雄牛の乗駕回数が計数され表示される。このように雄牛の乗駕回数を知ることにより、雌牛の発情時期が正確に把握されることとなる。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。図1は本発明の一実施例に係る雌牛の発情管理装置を示す斜視図、図2は図1R>1の本発明装置が装着される雌牛の腰角部位を示す側面図、図3は他の実施例に係る雌牛の発情管理装置を示す正面図、図4は図3の本発明装置が装着される雌牛の腰角部位を示す側面図である。
【0008】
【実施例1】図1において、1は雌牛Fの腰角部位の尾根部Tに装着される筒状の装着部材で、装着部材1の構成は、裏面に接着面を備えて所要の弾性力を有する半円筒状樹脂部分2と、該半円筒状樹脂部分2の直径方向両側に着脱自在に取り付けられ、雌牛Fの尾根部T下面側に粘着固定される布製粘着テープ部分3からなっている。この装着部材1全体としての寸法形状は、雌牛Fの尾根部Tに密着固定可能な大きさの内面形状に設定され、半筒形状樹脂部分2の軸線方向両側の縁部には湾曲自在な弾性部材4(例えばゼンマイ等に用いられる弾力性の強い鋼材)が固着されている。
【0009】5は上記半円筒状樹脂部分2の中間部分に取り付けられた薄型の圧力検出部である。圧力検出部5は設定値以上の密着圧力を検出して、無線通信により信号を遣り取りする送受信部を付帯し、この圧力検出部5の平面形状は矩形状に形成されている。圧力検出部5上面の中央箇所には受圧部位を有し、この受圧部位には、乗駕時における雌牛Fに対する雄牛の密着圧力が作用するようになっている。6は圧力検出部5に超音波やミリ波を介して無線方式に接続された計数表示部で、牛の飼育場に臨む飼牛管理室に設置されている。計数表示部6は、圧力検出部5からの信号を無線通信により遣り取りする送受信部を付帯し、圧力検出部5より発せられる検出信号の回数を即刻表示できるようになっている。
【0010】上記構成の発情管理装置の使用に際しては、まず飼育場に入れられた雌牛Fの尾根部Tに本装置を装着固定する。このあと本装置を装着固定した状態で、発情時期にある雌牛Fの後部に雄牛が乗駕すると、雄牛は両前肢で雌牛Fの腰角部位を強く抱き締めるので、雄牛の密着圧力が圧力検出部5の受圧部位に作用して検出される。圧力検出部5で検出された圧力信号は飼牛管理室の計数表示部6に逐次送られる。その結果、計数表示部6には、圧力検出部5により検出された圧力信号の回数、すなわち雄牛の乗駕回数が計数され表示される。したがって、飼い主は飼育場の中に入ることなく雄牛の乗駕回数を把握することができ、雌牛Fの発情時期を正確に管理して人工受精による種付けをタイミング良く行うことができる。
【0011】
【実施例2】図3は本発明の他の実施例であって、その特徴は、圧力検出部5が取り付けられた装着部材21を雌牛Fの腰角部位に接着固定したことにある。装着部材21は、裏面に接着面を有する伸縮自在な平面略ハート状の繊維部分22と、繊維部分22の下側縁部に突設した互いに平行な一対の棒状延出部分23と、この一対の棒状延出部分23に掛け渡たされ中央にファスナー等のチャック部24を有する掛渡し部分25とからなる。
【0012】平面略略ハート状の繊維部分22は、図4に示すように、粘着剤を介して雌牛Fの仙骨後部相当の後躯に粘着固定されるようになっている。また、掛渡し部分25と一対の棒状延出部分23とで形成される空間部分は、雌牛Fの尾根部Tに装着固定可能な逆U字状の孔26に形成され、チャック部24を閉じることにより、逆U字状の孔26に雌牛Fの尾根部Tが確実に装着固定されるようになっている。尚、前記圧力検出部5には計数表示部6が電気的に接続されており、圧力検出部5による圧力信号の検出回数、すなわち雄牛の乗駕回数が計数表示部6にて表示されることは実施例1と同様である。
【0013】ところで、本発明は上記2つの実施例に限定されるものではない。例えば、圧力検出部5の取り付け位置は、乗駕時に雄牛の密着圧力を検出できれば、図4R>4の符号Sで例示する雌牛Fの腰角部位でもよい。また、チャック部24に代えて紐やホックによる他の装着固定手段も考えられる。
【0014】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、雌牛に取付けた圧力検出部の検出信号により乗駕回数を表示できるので、従来のように経験豊かな飼育者が日夜雌牛に付き添って観察する必要がなく、表示された乗駕回数を把握することにより、誰でも雌牛の発情時期を容易に判別でき、以て繁殖牛飼育における種付けの時機を正確に管理することができる。特に圧力検出部からの検出信号を無線信号により計数表示部に送るようにしたものでは、飼い主は雌牛の傍に近寄ることなく乗駕回数を簡単に把握でき、その都度飼育場の中に入る必要がないという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る雌牛の発情管理装置を示す斜視図である。
【図2】図1の本発明装置が装着される雌牛の腰角部位を示す側面図である。
【図3】他の実施例に係る雌牛の発情管理装置を示す正面図である。
【図4】図3の本発明装置が装着される雌牛の腰角部位を示す側面図である。
【符号の説明】
1 装着部材
2 樹脂部分
3 粘着テープ部分
4 弾性部材
5 圧力検出部
6 計数表示部
21 装着部材
22 ハート状繊維部分
23 棒状延出部分
24 チャック部
25 掛渡し部分
26 逆U字状の孔
F 雌牛
T 尾根部

【特許請求の範囲】
【請求項1】雌牛の腰角部位に装着される装着部材と、該装着部材に取り付けられ前記雌牛に対する雄牛の乗駕時の密着圧力を検出して信号を発する圧力検出部と、該圧力検出部に電気的に接続され該圧力検出部の発した検出信号の回数を計数して表示する計数表示部を備えてなることを特徴とする雌牛の発情管理装置。
【請求項2】計数表示部は圧力検出部と無線の通信波を介して接続されていることを特徴とする請求項1記載の雌牛の発情管理装置。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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