説明

雌端子

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、雄端子が嵌装されることによって雄端子側との間で通電状態にされる雌端子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、図5に示すような雌端子100が知られている。この雌端子100は、筒状の雌端子本体101と、この雌端子本体101の内部に形成された接続片102とを備えて形成されている。上記接続片102は、雌端子本体101の入口側の端縁から外方に向かって延設された二点鎖線で示す突設片103が、雌端子本体101の接続室104内に向かって略180°折り返されることによって形成されている。
【0003】この接続片102は、中央部が接続室104の中心線に向かって弓なりに膨出されている。そして、二点鎖線で示す雄端子200が接続室104内に嵌装されると、接続片102の頂部102aが雄端子200によって押圧され、これによって接続片102は山高さが低くなるように弾性変形するとともに、接続片102は弾性力によって雄端子200を押圧し、これによって雄端子200の雌端子100に対する接続状態が安定するようになされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のような従来の雌端子100においては、雌端子100と雄端子200との接離を頻繁に行うと、接続片102の折返し部102bが度重なる屈伸運動によって疲労し、弾性力が損なわれたり、最悪の場合は折損する等の損傷現象が生じるという問題点を有している。
【0005】また、近年、端子の小型化が要望されているが、雌端子本体101が小型化することにより金属板の一部で形成されている接続片102は弾性力が弱くなって確実に雄端子200を保持し得なくなるという新たな問題点が提起されている。
【0006】本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、接続片の疲労等が起こり難く、かつ、小型化されても接続片が十分な弾性力を発揮し、これによって雄端子を確実に保持し得る雌端子を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1記載の雌端子は、内部に雌端子本体と一体に弾性変形可能に弓なりに形成された接続片を有し、相手側の雄端子が上記雌端子本体内に着脱自在に嵌装されることにより上記弓なりの接続片の山高さが低くなるように弾性変形し、その弾性力によって雄端子を雌端子内に保持するように構成された雌端子において、上記接続片は、雌端子本体の入口側の端縁から突設された突設片が雌端子本体内に向けて折り返されて形成され、この接続片の下部に接続片に近似した弓なり形状の弾性片が装着され、上記弾性片は、板状のばね材がU字状に折り曲げられて形成され、かつ、上記接続片に当接している端部と反対側の端部が上記雌端子本体から外部に突出した突出部を有し、この突出部により雌端子本体のハウジングに対する係止部を構成していることを特徴とするものである。
【0008】この雌端子によれば、雄端子を雌端子本体に嵌装し、雄端子の先端部が山部の頂部を通過した状態で接続片の撓みはなくなり、雄端子の雌端子本体内への侵入が完了した時点で雄端子は接続片の撓みによる弾性力を受け、これによって雄端子の雌端子に対する接続状態が安定する。
【0009】また、接続片の下部には弾性片が配置されており、接続片の撓みに応じて弾性片も弾性変形して撓み、これによって嵌装された雄端子には接続片に加えて弾性片の弾性力が加えられるため、雄端子の雌端子本体に対する接続状態はさらに安定したものになる。
【0010】そして、雌端子本体から外部に突出した弾性片の突出部を、雌端子が装着される雌端子ハウジングの適所に係止することにより、弾性片は、雌端子本体が雌端子ハウジングに取り付けられた状態で、移動しないように強固に固定される。
【0011】本発明の請求項2記載の雌端子は、請求項1記載の雌端子において、上記雌端子本体には、上記弾性片を装着位置に保持する弾性片保持手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】この雌端子によれば、接続片の撓みに応じて弾性片も撓み、この撓みに起因した弾性力によって弾性片が接続片から抜け出る方向に力を受けても、雌端子本体に設けられた弾性片保持手段に阻止されて弾性片が抜け出ることはない。
【0013】本発明の請求項3記載の雌端子は、請求項2記載の雌端子において、上記弾性片保持手段は、上記弾性片から幅方向に突出した係止突片と、この係止突片に対応して上記雌端子本体に穿設された係止孔とから構成されていることを特徴とするものである。
【0014】この雌端子によれば、弾性片の係止突片を、雌端子本体の係止孔に嵌入することによって、弾性突片の移動が阻止されるため、接続片の撓みに応じて弾性片も撓み、この撓みに起因した弾性力によって弾性片が接続片から抜け出る方向に力を受けても、弾性片が抜け出ることはない。
【0015】本発明の請求項4記載の雌端子は、請求項1乃至3のいずれかに記載の雌端子において、上記雌端子本体は、上記接続片の先端部に対応した内面が同先端部に向かうように突出した突出片を有していることを特徴とするものである。
【0016】この雌端子によれば、突出片を、接続片の先端部裏面が当る位置に設けておくことにより、雄端子の雌端子本体内への嵌装による接続片の曲折部の撓み量は、雌端子本体内に設けられた突出片に当止することによってそれ以上大きくならないように規制されるため、接続片の過度の撓みが防止され、これによって曲折部の疲労による弾性力の低下や接続片の折損が回避される。
【0017】特に、接続片が疲れ限度を越えて撓まないように突出片の高さ寸法を設定することにより、接続片の撓み回数が非常に多くなっても弾性力は低下しないため、接続片の撓み回数に拘らず接続片への疲労の蓄積は回避され、これによって雌端子の寿命をさらに延長させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】図1および図2は、本発明に係る雌端子1の一実施形態を示す一部切欠き斜視図であり、図1は、雄端子5が雌端子1に接続される直前の状態、図2は、雄端子5が雌端子1に接続された状態をそれぞれ示している。また、図3は、図1に示す雌端子1の側面視の断面図である。これらの図に示すように、雌端子1は、雌端子本体2と、この雌端子本体2内に設けられた接続片3と、この接続片3を雌端子本体2内で支持する弾性片4とを備えて構成されている。上記雌端子本体2および接続片3は、金属板をプレス処理によって雌端子本体2および接続片3の展開形状に切り抜き、得られた展開品を折り曲げることによって形成されている。
【0019】上記雌端子本体2は、外観形状が直方体状に形成され、端部に雄端子5を嵌装する嵌装口21を有しているとともに、雌端子本体2の内部である接続室22の奥部の両側壁23下部に幅方向一対の横長矩形状の貫通孔(係止孔)24が穿設されている。この貫通孔24は、接続室22内に装着された弾性片4の脱落を防止するためのものである。
【0020】また、雌端子本体2は、その底板25の一部であって、接続片3に対向した部分が下方に向かって切り起こされ、これによって底板25に開口25aが形成されている。また、接続室22の上記開口25aよりも奥部には、底板25に接続室22に向かって切り起こされたストッパー(突出片)26が設けられている。
【0021】上記接続片3は、雌端子本体2の嵌装口21の下方縁部が外方に向かって突設された二点鎖線で示す突設片30を、上記展開品の折り曲げ操作時に、接続室22の方向に略180°折り曲げることによって形成されている。このようにして形成された接続片3は、長手方向の中央部が弓なりに上方に膨出された山部31を有している。この山部31の頂部には電導性に優れた鉛等の金属からなるスポット接点33が形成され、このスポット接点33と接続室22の天井面との間の隙間寸法は、雄端子5の上下方向の厚み寸法よりも小さく寸法設定されている。
【0022】そして、雄端子5が接続室22内に嵌装された状態で、接続片3は、図2に示すように、曲折部32の曲折度合いがさらに大きくなるとともに、山部31の弓なり角度αが大きくなるように弾性変形し、この弾性変形による弾性力によって雄端子5は接続片3のスポット接点33と接続室22の天井面との間に押圧挟持された状態になり、これによって上記雄端子5の雌端子本体2への接続状態が安定するようになっている。
【0023】上記弾性片4は、板状のばね材がU字状に折り曲げられ、これによって下方に位置した下部片4aと上方側に位置した上部片4bとが形成されている。上記下部片4aの幅方向両側部には、上記一対の貫通孔24に嵌め込まれる嵌合片(係止突片)41を有しているとともに、上記上部片4bには上方に向けて膨出された山部42が形成されている。
【0024】また、上記各嵌合片41は、対応した上記各貫通孔24に摺接状態で嵌入し得るように寸法設定され、上記展開品の折り曲げ処理時に、各貫通孔24をそれぞれ対応した貫通孔24に外嵌させることによって弾性片4を接続室22内に取り付けるようにしている。
【0025】上記山部42は、中央部が上記接続片3の下面部に当接するように膨出され、これによって各中央部で接続片3と山部42とは積層状態になり、スポット接点33に下方に向かう外力が加わった状態で、接続片3および山部42の双方の頂部が下方に向かうように弾性変形し、これによって弾性力が生じるようになっている。
【0026】また、上記弾性片4の下部片4aは、嵌合片41より先端側が下方に向けて折り曲げられて形成したランス(突出部)43を有しており、このランス43は、上記雌端子本体2の底板25の開口25aから下方に向かって外部に突出されている。このランス43は、雌端子1が装着される図略の雌端子ハウジングの適所に係止するためのものであり、こうすることで弾性片4の位置固定状態を確固たるものにするとともに、雌端子本体2の雌端子ハウジングへの装着状態がさらに安定したものになるようにしている。
【0027】また、上記接続片3は、先端部が上記底板25に切り起こされたストッパー26の切り起こされた面に当接し得る長さに寸法設定されている。そして、接続片3のスポット接点33に上方から外力が加わった状態で接続片3の先端部がストッパー26の切り起こされた面に当止することにより、接続片の過度の撓みが防止され、これによって曲折部の疲労による弾性力の低下や接続片の折損が回避される。
【0028】特に、接続片3が疲れ限度を越えて撓まないようにすれば、接続片3の撓み回数が非常に多くなっても弾性力は低下しないため、接続片3の撓み回数に拘らず接続片3への疲労の蓄積は回避され、これによって雌端子1の寿命をさらに延長させることができる。
【0029】なお、ストッパー26の設置位置を、接続片3が弾性変形したとき山部31の先端がその上に乗る位置に設定してもよい。こうすることによって、雄端子5の雌端子本体2内への嵌装による接続片3の曲折部32の撓み量は、雌端子本体2内に設けられた突出片に当止することによってそれ以上大きくならないように規制されるため、接続片の過度の撓みが防止され、これによって曲折部の疲労による弾性力の低下や接続片の折損が回避される。
【0030】特に、接続片3が疲れ限度を越えて撓まないように高さ寸法を設定することにより、接続片3の撓み回数が非常に多くなっても弾性力は低下しないため、接続片3の撓み回数に拘らず接続片3への疲労の蓄積は回避され、これによって雌端子1の寿命をさらに延長させることができる。
【0031】図4は、本発明の作用を説明するための雌端子1の側面視の断面図であり、(イ)は、雄端子5が雌端子1に接続される直前の状態、(ロ)は、雄端子5が雌端子1に接続された状態をそれぞれ示している。雄端子5を雌端子1に接続するに際しては、まず、図4の(イ)に示すように、雄端子5の先端部を雌端子本体2の嵌装口21に対向させ、これを矢印で示すように嵌装口21の方向に移動させて接続室22内に圧入する。
【0032】そうすると、図4の(ロ)に示すように、雄端子5が接続片3および弾性片4の山部42を下方に向けて弾性変形させた状態で接続室22内に嵌装され、これによって雄端子5は、スポット接点33と第2コネクタ22の天井面との間に押圧挟持され、この押圧挟持によって雄端子5の雌端子1に対する接続状態が安定する。
【0033】そして、図4の(ロ)に示す状態では、接続片3の先端部がストッパー26に当接しているため、これに阻止されて接続片3の先端部はこれ以上下方に移動せず、これによって曲折部32の撓み状態を緩和することが可能であり、弾性限界を越えた撓みによって生じる弾性力の低下や、接続片3の折損が有効に防止される。
【0034】
【発明の効果】本発明の請求項1記載の雌端子によれば、内部に雌端子本体と一体に弾性変形可能に弓なりに形成された接続片が、雌端子本体の入口側の端縁から突設された突設片が雌端子本体内に向けて折り返されて形成されているため、雄端子を雌端子本体に嵌装し、雄端子の先端部が山部の頂部を通過した状態で接続片の撓みはなくなり、雄端子の雌端子本体内への侵入が完了した時点で雄端子は接続片の撓みによる弾性力を受け、これによって雄端子の雌端子に対する接続状態を安定させることができる。
【0035】そして、接続片の下部には板状のばね材がU字状に折り曲げられて形成された弾性片が配置されており、接続片の撓みに応じて弾性片も弾性変形して撓むため、嵌装された雄端子には接続片に加えて弾性片の弾性力が加えられ、これによって雄端子の雌端子本体に対する接続状態をさらに安定したものにすることができる。
【0036】従って、雌端子が小型化することにより雌端子本体と一体の接続片の弾性変形による弾性力が小さくなって雄端子を確実に保持し得ない状態になっても、弾性片を併用することによって接続片の付勢力の不足分を補うことが可能になり、これによって雌端子の小型化に十分対応することができる。
【0037】そして、弾性片の一方の端部を雌端子本体から外部に突出させたため、この外部に突出した弾性片の突出部を、雌端子が装着される図略の雌端子用のハウジングの適所に係止することにより、弾性片を移動しないように確実に固定することができる。
【0038】本発明の請求項2記載の雌端子によれば、雌端子本体に弾性片を装着位置に保持する弾性片保持手段を設けたため、接続片の撓みに応じて弾性片も撓み、この撓みに起因した弾性力によって弾性片が接続片から抜け出る方向に力を受けても弾性片保持手段に阻止され、これによって弾性片の接続片下部からの脱落を防止することができる。
【0039】本発明の請求項3記載の雌端子によれば、弾性片保持手段は、弾性片から幅方向に突出した係止突片と、この係止突片に対応して上記雌端子本体に穿設された係止孔とによって構成されているため、弾性片の係止突片を、雌端子本体の係止孔に嵌入することによって弾性突片の移動が阻止され、これによって接続片の撓みに応じて弾性片も撓み、この撓みに起因した弾性力によって弾性片が接続片から抜け出る方向に力を受けても弾性片の移動は阻止され、弾性片の接続片下部からの脱落を防止することができる。
【0040】本発明の請求項4記載の雌端子によれば、雌端子本体は、接続片の先端部に対応した内面が同先端部に向かうように突出した突出片を有しているため、雄端子の雌端子本体内への嵌装による接続片の曲折部の撓み量は、接続片の先端部が、雌端子本体内に設けられた突出片に当止することによってそれ以上大きくならないように規制され、接続片の過度の撓みが防止されることによって曲折部の疲労による弾性力の低下や接続片の折損を回避することができる。
【0041】特に、接続片が疲れ限度を越えて撓まないように変形規制部を寸法設定することにより、接続片の撓み回数が非常に多くなっても弾性力は低下しないため、接続片の撓み回数に拘らず接続片への疲労の蓄積は回避され、これによって雌端子の寿命をさらに延長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る雌端子の一実施形態を示す一部切欠き斜視図であり、雄端子が雌端子に接続される直前の状態を示している。
【図2】本発明に係る雌端子の一実施形態を示す一部切欠き斜視図であり、雄端子が雌端子に接続された状態を示している。
【図3】図1に示す雌端子の側面視の断面図である。
【図4】本発明の作用を説明するための雌端子の側面視の断面図であり、(イ)は、雄端子が雌端子に接続される直前の状態、(ロ)は、雄端子が雌端子に接続された状態をそれぞれ示している。
【図5】従来の雌端子を例示する側面視の断面図である。
【符号の説明】
1,1a 雌端子 2 雌端子本体
21 嵌装口 22 接続室
23 側壁 24,24a 貫通孔
26 ストッパー(突出片) 25 底板
3 接続片 30 突設片
31 山部 32 曲折部
33 スポット接点 4 弾性片
4a 下部片 4b 上部片
41 嵌合片 42 山部
43 ランス(突出部) 5 雄端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】 内部に雌端子本体と一体に弾性変形可能に弓なりに形成された接続片を有し、相手側の雄端子が上記雌端子本体内に着脱自在に嵌装されることにより上記弓なりの接続片の山高さが低くなるように弾性変形し、その弾性力によって雄端子を雌端子内に保持するように構成された雌端子において、上記接続片は、雌端子本体の入口側の端縁から突設された突設片が雌端子本体内に向けて折り返されて形成され、この接続片の下部に接続片に近似した弓なり形状の弾性片が装着され、上記弾性片は、板状のばね材がU字状に折り曲げられて形成され、かつ、上記接続片に当接している端部と反対側の端部が上記雌端子本体から外部に突出した突出部を有し、この突出部により雌端子本体のハウジングに対する係止部を構成していることを特徴とする雌端子。
【請求項2】 上記雌端子本体には、上記弾性片を装着位置に保持する弾性片保持手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載の雌端子。
【請求項3】 上記弾性片保持手段は、上記弾性片から幅方向に突出した係止突片と、この係止突片に対応して上記雌端子本体に穿設された係止孔とから構成されていることを特徴とする請求項2記載の雌端子。
【請求項4】 上記雌端子本体は、上記接続片の先端部に対応した内面が同先端部に向かうように突出した突出片を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の雌端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【特許番号】特許第3193652号(P3193652)
【登録日】平成13年5月25日(2001.5.25)
【発行日】平成13年7月30日(2001.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−348658
【出願日】平成8年12月26日(1996.12.26)
【公開番号】特開平10−189109
【公開日】平成10年7月21日(1998.7.21)
【審査請求日】平成11年3月5日(1999.3.5)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【参考文献】
【文献】特開 平7−220971(JP,A)
【文献】特開 平7−106011(JP,A)
【文献】実開 平1−115177(JP,U)