説明

雑穀類含有液状調味料の製造方法

【課題】保存後であっても薄黒く濁った状態になり難く色調が維持された雑穀類含有液状調味料の製造方法を提供する。
【解決手段】水分含量10〜40%の状態の原料雑穀類に有機酸水溶液による接液処理と、加熱調理とを施し、該調理済み雑穀類を含ませることを特徴とする雑穀類含有液状調味料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存後であっても薄黒く濁った状態になり難く色調が維持された雑穀類含有液状調味料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーやコンビニエンスストア等では、様々なつゆ類、タレ類、ドレッシング等の液状調味料が販売されている。消費者は、使用する用途に合わせて好みの味付けの液状調味料を選択して購入するが、その際、健康維持のため栄養成分などを考慮して購入する場合も多い。そのため、スーパーやコンビニエンスストア等において販売される液状調味料としては、より栄養価に優れバラエティーに富んだ液状調味料を提供することが望まれる。
【0003】
一方、あわ、きび、ひえ、アマランサス等の雑穀類には、食物繊維や、カルシウム、マグネシウム等のミネラルが多く含まれていて、近年、消費者の健康志向の中でヘルシーな食材として注目されている。例えば、特開2009−65932号公報(特許文献1)には、雑穀類を用いた麺が提案されている。しかしながら、雑穀類は、従来、液状調味料には十分に利用されているとは言い難い。
【0004】
【特許文献1】特開2009−65932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等は、栄養価に優れバラエティーに富んだ雑穀類含有液状調味料を製造するため、炊飯により加熱調理した雑穀類を配合した液状調味料を製造したところ、当該液状調味料は、製造後時間が経過すると、薄黒く濁った状態になるという問題が生じた。
【0006】
そこで、本発明は、保存後であっても薄黒く濁った状態になり難く色調が維持された雑穀類含有液状調味料の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、雑穀類含有液状調味料に特定の処理を施した処理済み雑穀類を含ませるならば、保存後であっても薄黒く濁った状態になり難く色調が維持された雑穀類含有液状調味料が得られることを見出し、遂に本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(1)水分含量10〜40%の状態の原料雑穀類に有機酸水溶液による接液処理と、加熱調理とを施し、該処理済み雑穀類を含ませる雑穀類含有液状調味料の製造方法、(2)前記原料雑穀類が、あわ、きび、ひえ、アマランサス及びキヌアから選ばれる一種又は二種以上である(1)記載の雑穀類含有液状調味料の製造方法、(3)前記有機酸溶液の有機酸濃度が0.5〜10%である(1)又は(2)に記載の雑穀類含有液状調味料の製造方法、である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の雑穀類含有液状調味料の製造方法によれば、食物繊維や、カルシウム、マグネシウム等のミネラルが多く含まれている栄養価に優れた雑穀類を含んでいるにも拘らず、保存後であっても薄黒く濁った状態になり難く色調が維持された雑穀類含有液状調味料が得られる。したがって、本発明によれば、このような雑穀類含有液状調味料の更なる需要拡大が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ意味する。
【0011】
本発明において液状調味料は、例えば、ソース類、タレ類、つゆ類の他、マヨネーズ、ドレッシング等の酸性液状調味料等が挙げられる。
【0012】
本発明の原料雑穀類としては、食用に供される雑穀類であれば特に限定されるものではなく、例えば、あわ、きび、ひえ、アマランサス、キヌア等が挙げられる。これらの雑穀類の中でも、色調が黄色い雑穀類、特に、黄色あわ及び/又は黄色きびを用いた液状調味料は、保存中に薄黒く濁った状態になる問題が生じやすいが、本発明によれば、このような色調が黄色い雑穀類を用いた液状調味料であっても薄黒く濁った状態になり難く、保存後においても雑穀類の黄色の色調が維持された液状調味料が得られ好ましい。また、原料雑穀類の形態としては特に制限は無く、粒状、あるいは、粉砕したものであってもよい。
【0013】
本発明の雑穀類含有液状調味料の製造方法は、水分含量10〜40%、好ましくは10〜30%の状態の原料雑穀類に有機酸水溶液による接液処理と、加熱調理とを施し、該処理済み雑穀類を含ませることを特徴とする。これにより、保存後であっても薄黒く濁った状態になり難く色調が維持された雑穀類含有液状調味料を得ることができる。
【0014】
ここで、本発明における原料雑穀類の水分含量は、常圧加熱乾燥法(105℃、16時間)に基づき測定した値をいう。一般的な雑穀類の水分含量は、乾物状態で10〜20%程度であり、炊飯等により加熱しながら吸水させて喫食状態とした状態の水分含量が45〜70%程度である。前記原料雑穀類の水分含量が10〜40%の状態とは、喫食可能なほど充分に吸水していない状態であることを意味する。
【0015】
本発明の有機酸水溶液による接液処理としては、10〜40%の状態の原料雑穀類に有機酸水溶液を接液させる処理であれば特に制限は無く、例えば、有機酸水溶液に原料雑穀類を浸漬する処理、あるいは原料雑穀類に有機酸水溶液を噴霧、滴下又は塗布する処理などが挙げられる。中でも接液処理が浸漬処理である場合は、原料雑穀類に有機酸水溶液を吸収させやすく、本発明の効果を奏し易く好ましい。また、原料雑穀類を有機酸水溶液で接液処理する時間としては、好ましくは5分〜96時間、より好ましくは10分〜24時間であると、原料雑穀類に有機酸水溶液を吸収させやすく、この場合、得られた雑穀類含有液状調味料において、保存中に薄黒く濁った状態になることを防止する効果がより得られ易く好ましい。
【0016】
前記有機酸水溶液による接液処理に用いる有機酸としては、食用として供されるものであればいずれのものでもよい。例えば、酢酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、グルコン酸、乳酸等が挙げられ、本発明では更に有機酸を含有した、例えば、食酢、柑橘果汁等の食材を用いてもよい。
【0017】
有機酸水溶液の有機酸濃度は、0.5〜10%であることが好ましく、1〜8%であることがより好ましい。有機酸濃度が前記範囲より低い場合は、保存中に雑穀類含有液状調味料が薄黒く濁った状態になることを防止する本発明の効果が得られ難い。一方、有機酸濃度が前記範囲より高い場合は、雑穀類の風味が悪くなる場合があり好ましくない。
【0018】
なお、前記本発明の有機酸水溶液には、本発明の効果を損なわない範囲で、有機酸や有機酸を含有した原料の他に、食塩、砂糖、動植物等のエキス類、澱粉、ガム質等の増粘材、調味料、香辛料、食用油脂等その他の原料、保存料等を含有していてもよい。
【0019】
雑穀類に有機酸水溶液による接液処理を施す際の雑穀類と有機酸水溶液の量としては、雑穀類に対し充分な量の有機酸水溶液を用いれば良く、具体的には、例えば、接液処理が浸漬処理である場合は、雑穀類1部に対し、好ましくは2部以上、より好ましくは3部以上の有機酸水溶液に浸漬することが好ましい。なお、有機酸水溶液の量があまり多すぎても有機酸水溶液のコストが増大したり浸漬する総量が増えて効率が悪いことから、接液処理を施す雑穀類1部に対して、好ましくは100部以下、より好ましくは50部以下の有機酸水溶液に浸漬することが好ましい。なお、本発明においては、液状調味料に雑穀類を配合する際に、接液処理後の雑穀類と有機酸水溶液を分離してから雑穀類のみを液状調味料に配合すると、本発明の効果を奏し易く好ましい。例えば、上述の浸漬後の雑穀類と有機酸水溶液の分離はザル等を用いて行い、この有機酸水溶液と分離した雑穀類を液状調味料に配合すればよい。
【0020】
一方、本発明の加熱調理としては、常法により、雑穀類が喫食可能となるように行えばよい。具体的には、炊飯、ボイル等により加水した状態で好ましくは60〜120℃程度に雑穀類を加熱して、水分含量が好ましくは45〜70%、より好ましくは50〜70%の喫食可能な状態にすればよい。
【0021】
本発明において、水分含量10〜40%、好ましくは10〜30%の状態の原料雑穀類に有機酸水溶液による接液処理と、加熱調理とを施す方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。
【0022】
まず、水分含量10〜40%の状態の原料雑穀類に有機酸水溶液による接液処理を行った後に加熱調理する方法が挙げられる。例えば、最初に、水浸漬、あるいは、水浸漬していない水分含量10〜40%の状態の原料雑穀類に対して、浸漬タンク等を用いて60℃未満の温度で、有機酸水溶液による浸漬処理を施す。次に、接液処理を施した雑穀類を、有機酸水溶液に浸漬したまま、あるいは、ザルを用いて有機酸溶液と雑穀類を分離した後にこの分離した雑穀類に加水して、二重釜、チューブ式殺菌機等で好ましくは60〜120℃に加熱して加熱調理すればよい。
【0023】
さらに、有機酸水溶液による雑穀類の接液処理を加熱調理と同時に行う方法が挙げられる。例えば、水浸漬、あるいは、水浸漬していない水分含量10〜40%の状態の原料雑穀類に、有機酸水溶液を加え、この雑穀類と有機酸水溶液との混合物を二重釜、チューブ式殺菌機等で好ましくは60〜120℃に加熱して加熱調理する方法等が挙げられる。
【0024】
また、液状調味料が有機酸を含有している場合は、当該有機酸を含む液状調味料により接液処理を行ってもよい。このような方法としては、例えば、水分含量10〜40%の状態の原料雑穀類を有機酸を含む液状調味料中に投入し60℃未満の温度で浸漬処理した後、液状調味料中に雑穀類を浸漬したまま二重釜、チューブ式殺菌機等で好ましくは60〜120℃に加熱して加熱調理する方法が挙げられる。
【0025】
雑穀類含有液状調味料における上述した雑穀類の含有量は、液状調味料を用いる用途等により適宜調節すればよいが、雑穀類の風味と調味料の風味バランスを考慮すると、雑穀類含有液状調味料全体に対して、乾物換算で、好ましくは1〜20%、より好ましくは1〜10%である。
【0026】
本発明の雑穀類含有液状調味料の製造方法は、上述のように水分含量10〜40%の状態で有機酸水溶液による接液処理と、加熱調理とを施し、当該処理済み雑穀類を含ませる他は、従来の一般的な液状調味料の製造方法に準じて製造することが出来る。また、得られた雑穀類含有液状調味料は、必要に応じて、プラスチック製の成形容器等に入れて容器詰めし、チルドあるいは常温で流通させる容器入り製品とすることができる。
【0027】
なお、本発明の雑穀類含有液状調味料には、上述した雑穀類の他に、本発明の効果を損なわない範囲で液状調味料に通常用いられている各種原料を適宜選択し含有させることができる。例えば、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、紅花油、大豆油、パーム油、ゴマ油、魚油、卵黄油等の動植物油及びこれらの精製油、並びにMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリドなどのように化学的あるいは酵素的処理を施して得られる油脂などの食用油脂、グルタミン酸ナトリウム、食塩、砂糖、みりん、醤油などの各種調味料、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、これらの澱粉をアルファ化、架橋などの処理を施した加工澱粉、並びに湿熱処理澱粉などの澱粉類、キサンタンガム、タマリンド種子ガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、グアーガムなどのガム質、卵黄、ホスホリパーゼA処理卵黄、全卵、卵白、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、オクテニルコハク酸化澱粉などの乳化材、動植物のエキス類、からし粉、胡椒、桂皮、八角、丁子などの香辛料、並びに各種蛋白質やこれらの分解物などが挙げられる。
【0028】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づき、更に説明する。
【実施例】
【0029】
[実施例1]
(1)有機酸水溶液による接液処理工程
まず、酢酸濃度4%の醸造酢25部と清水75部を攪拌タンクに投入して混合し、酢酸濃度1%の有機酸水溶液を調製した。次に、二重釜に、得られた有機酸水溶液25部と雑穀類1部(黄色あわ、ひえ、黄色きび、アマランサス各0.25部の混合物)を投入し、有機酸水溶液に雑穀類を浸漬した状態で品温80℃になるまで加熱した後、雑穀類をザルにあけて液切りをして冷却し、加熱調理済み雑穀類を得た。加熱調理前の雑穀類の水分含量はいずれも13%、色調は黄色であった。一方、加熱調理後の雑穀類の水分含量は、いずれも60%であった。また、雑穀類が有機酸水溶液で浸漬処理された時間は1時間であった。
【0030】
(2)液状調味料を製造する工程
下記配合割合でノンオイルタイプドレッシングを製造した。つまり、まず、撹拌タンクに醤油、食塩、砂糖、醸造酢(酢酸濃度4%)及び(1)において有機酸水溶液による接液処理と、加熱調理を施した雑穀類(黄色あわ、ひえ、黄色きび、アマランサスの混合物)を投入し、全体が略均一となるように攪拌混合することにより該処理済みの雑穀類を含むノンオイルタイプドレッシングを得た。その後、得られたノンオイルタイプドレッシングを1Lずつプラスチック製の容器に充填し容器入りのノンオイルタイプドレッシングを得た。なお、ドレッシング中の雑穀類の水分含量は60%以上であり、ドレッシング全体に対する雑穀類の含有量は乾物換算で3%であった。
【0031】
<ノンオイルタイプドレッシングの配合割合>
加熱調理済み雑穀類(水分含量60%) 4.5部
※(1)で有機酸水溶液による接液処理を施したもの
醤油 10部
食塩 3部
砂糖 5部
醸造酢 20部
清水 残余
合計 100部
【0032】
得られた容器入りノンオイルタイプドレッシングを10℃の冷蔵庫で24時間保存したところ、保存後のノンオイルタイプドレッシングは、雑穀類の黄色い色調が維持されたものであり、大変好ましかった。
【0033】
[比較例1]
(1)雑穀類を炊飯する工程
雑穀類1部(黄色あわ、ひえ、黄色きび、アマランサス各0.25部の混合物)及び清水6部を、炊飯釜に投入した後常法により100℃で加熱して炊飯し、水分含量60%の加熱調理済み雑穀類を得た。
【0034】
(2)液状調味料を製造する工程
(1)の加熱調理済み雑穀類を用いた以外は、実施例1と同様にしてノンオイルドレッシングを製した。つまり、撹拌タンクに、醤油、食塩、砂糖、醸造酢(酢酸濃度4%)及び(1)で得られた水分含量60%の雑穀類(黄色あわ、ひえ、黄色きび、アマランサスの混合物)及び清水を投入し、全体が略均一となるように攪拌混合することにより、加熱調理済みの雑穀類を含むノンオイルタイプドレッシングを得た。その後、得られたノンオイルタイプドレッシングを1Lずつプラスチック製の容器に充填し容器入りのノンオイルタイプドレッシングを得た。なお、本比較例において、(1)の加熱調理済み雑穀類の配合量は、ノンオイルタイプドレッシング全体に対する乾物換算した雑穀類の含有量が、実施例1と同じになるように調整した。
【0035】
得られた容器入りノンオイルタイプドレッシングを10℃の冷蔵庫で24時間保存して、保存後のドレッシングの色調について評価した。その結果、保存後のドレッシングは、薄黒く濁った状態であり好ましくなかった。
【0036】
以上の実施例1及び比較例1より、水分含量10〜40%の状態で有機酸水溶液により接液処理を施した雑穀類を用いた場合(実施例1)は、得られたノンオイルタイプドレッシングは、保存後であっても色調が維持されたものとなるのに対し、水分含量60%の状態で有機酸水溶液により接液処理を施した雑穀類を用いた場合(比較例1)は、保存中に薄黒く濁った状態になり好ましくないことが理解される。
【0037】
[実施例2]
(1)有機酸水溶液による接液処理工程
まず、雑穀類1部(黄色あわ、ひえ、黄色きび、アマランサス各0.25部の混合物)を、酢酸濃度4%の醸造酢25部を入れたタンクに投入して浸漬することにより接液処理を行った。接液処理前の雑穀類の水分含量はいずれも13%であり、色調は黄色であった。また、前記接液処理は品温20℃で15時間行なった。接液処理を終了後、雑穀類をザルにあけて液切りをした。浸漬処理後の雑穀類の水分含量は、いずれも25%であった。
【0038】
(2)液状調味料を製造する工程
下記配合割合で雑穀入りめんつゆを製造した。つまり、まず、二重釜にだし汁70部、醤油15部、みりん5部、砂糖5部及び(1)において有機酸水溶液による接液処理を施した雑穀類(黄色あわ、ひえ、黄色きび、アマランサスの混合物)5部を投入し全体が略均一となるように攪拌混合した。次に、得られた混合物の品温が75℃になるまで二重釜で加熱した後、冷却することにより加熱調理済みの雑穀類を含むめんつゆを得た。その後、得られた雑穀入りめんつゆを1Lずつプラスチック製の容器に充填し容器入りの雑穀入りめんつゆを得た。なお、めんつゆ中の雑穀類の水分含量は60%以上であり、めんつゆ全体に対する雑穀類の含有量は乾物換算で4%であった。
【0039】
得られた容器入りの雑穀入りめんつゆを10℃の冷蔵庫で24時間保存したところ、保存後の雑穀入りめんつゆは、雑穀類の黄色い色調が維持されたものであり、大変好ましかった。
【0040】
[比較例2]
実施例2において、雑穀類に有機酸水溶液による接液処理を施さなかった以外は同様にして雑穀入りめんつゆを製した。つまり、まず、雑穀類1部(黄色あわ、ひえ、黄色きび、アマランサス各0.25部の混合物)を清水25部を入れたタンクに投入して浸漬することにより接液処理を行った。前記接液処理は、品温20℃で15時間行なった。浸漬処理を終了後、雑穀類をザルにあけて液切りをした。次に、二重釜にだし汁、醤油、みりん、砂糖及び上記雑穀類(黄色あわ、ひえ、黄色きび、アマランサスの混合物)を投入し全体が略均一となるように攪拌混合した。さらに、得られた混合物の品温が75℃になるまで二重釜で加熱した後、冷却することにより加熱調理済みの雑穀類を含むめんつゆを得た。その後、得られた雑穀入りめんつゆを1Lずつプラスチック製の容器に充填し容器入りの雑穀入りめんつゆを得た。
【0041】
得られた容器入りの雑穀入りめんつゆを10℃の冷蔵庫で24時間保存して、保存後の雑穀入りめんつゆの色調について評価した。その結果、保存後の雑穀入りめんつゆは、薄黒く濁った状態であり好ましくなかった。
【0042】
以上の実施例2及び比較例2より、水分含量10〜40%の状態で有機酸水溶液により接液処理を施した雑穀類を用いた場合(実施例1)は、得られた雑穀入りめんつゆは、保存後であっても色調が維持されたものとなるのに対し、有機酸水溶液による接液処理を施していない雑穀類を用いた場合(比較例2)は、保存中に薄黒く濁った状態になり好ましくないことが理解される。
【0043】
[実施例3]
液状調味料中で、雑穀類の浸漬処理および加熱処理を同時に行うことにより、雑穀入りドレッシングを製した。つまり、まず、酢酸濃度4%の醸造酢5部とクエン酸0.6部と清水4.4部を攪拌タンクに投入して混合し、有機酸濃度8%の有機酸水溶液を調製した。次に、二重釜に醤油10部、食用油20部、食塩3部、砂糖5部、前記有機酸水溶液(酢酸濃度8%)10部、及び清水48部を投入し撹拌混合した後、さらに、黄色あわ、ひえ、黄色きび、アマランサス各1部を投入し、全体が略均一となるように攪拌混合し、得られた混合物の品温が80℃になるまで二重釜で加熱した後、冷却することにより加熱調理済みの雑穀類を含むドレッシングを得た。なお、用いた雑穀類の水分含量はいずれも13%であり、色調は黄色であった。その後、得られた雑穀入りドレッシングを1Lずつプラスチック製の容器に充填し容器入りの雑穀入りドレッシングを得た。得られたドレッシング中の雑穀類の水分含量は60%以上であり、ドレッシング全体に対する雑穀類の含有量は乾物換算で4%であった。
【0044】
得られた雑穀入りドレッシングを10℃の冷蔵庫で24時間保存したところ、保存後の雑穀入りドレッシングは、雑穀類の黄色い色調が維持されたものであり、大変好ましかった。
【0045】
[実施例4]
(1)有機酸水溶液による接液処理工程
まず、黄色あわ、黄色きび、キヌア各1部を、酢酸濃度4%の醸造酢100部に浸漬することにより接液処理を行った。浸漬処理前の雑穀類の水分含量はいずれも13%であり、色調は黄色であった。また、前記接液処理は品温20℃で5時間行った。接液処理を終了後、雑穀類をザルにあけて液切りをした。浸漬処理後の雑穀類の水分含量は、いずれも20%であった。
【0046】
(2)液状調味料を製造する工程
下記配合割合で雑穀入りパスタソースを製造した。つまり、まず、二重釜に食用油50部、醤油10部、食塩6部、グルタミン酸ナトリウム3部、醸造酢1部、清水19部及び(1)において有機酸水溶液による接液処理を施した雑穀類(黄色あわ、黄色きび、キヌアの混合物)11部を投入し全体が略均一となるように攪拌混合した。次に、得られた混合物の品温が70℃になるまで二重釜で加熱した後、冷却することにより加熱調理済みの雑穀類を含むパスタソースを得た。その後、得られた雑穀入りパスタソースを1Lずつプラスチック製の容器に充填し容器入りの雑穀入りパスタソースを得た。なお、ソース中の雑穀類の水分含量は60%以上であり、パスタソース全体に対する雑穀類の含有量は乾物換算で10%であった。
【0047】
得られた雑穀入りパスタソースを10℃の冷蔵庫で24時間保存したところ、保存後の雑穀入りパスタソースは、雑穀類の黄色い色調が維持されたものであり、大変好ましかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分含量10〜40%の状態の原料雑穀類に有機酸水溶液による接液処理と、加熱調理とを施し、該処理済み雑穀類を含ませることを特徴とする雑穀類含有液状調味料の製造方法。
【請求項2】
前記原料雑穀類が、あわ、きび、ひえ、アマランサス及びキヌアから選ばれる一種又は二種以上である請求項1記載の雑穀類含有液状調味料の製造方法。
【請求項3】
前記有機酸水溶液の有機酸濃度が0.5〜10%である請求項1又は2に記載の雑穀類含有液状調味料の製造方法。



【公開番号】特開2012−39938(P2012−39938A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183947(P2010−183947)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】