説明

雑草抑制材

【課題】ペーパースラッジ焼却灰を有効活用する技術を提供する。
【解決手段】ペーパースラッジ焼却灰を含む造粒固化体を含んでなる雑草抑制材。好ましくは、前記造粒固化体が、ペーパースラッジ焼却灰を含む焼却灰から水熱反応によって得られる、雑草抑制材。さらに、前記雑草抑制材を土壌表面および/または土壌中に敷設することを含む、雑草の生育を抑制する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は雑草を防除ないし抑制する技術に関する。特に本発明は、ペーパースラッジを原料とする雑草抑制材、および、それを用いた雑草の生育を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、製紙工場のパルプ製造工程、紙製造工程、古紙処理工程等から発生するペーパースラッジは、サーマルリサイクルされ、焼却処理により熱エネルギーが回収される。
しかし、ペーパースラッジを焼却した際に生じるペーパースラッジ焼却灰は、嵩高であるため輸送費がかかり、また、灰の形状が不均一であるためセメント原料などとしての用途が限定されることが多い。また、ペーパースラッジ焼却灰には、重金属類の有害物質が含まれる場合があり、直接埋立処分をすることが制限されている。ペーパースラッジ焼却灰を埋立処理する場合、有害物質の溶出を抑制するために薬剤(キレート)処理や溶融固化処理が必要になるが、薬剤処理には高価なキレート剤が必要であり、溶融固化処理では設備費や多くのエネルギーが必要となるため、焼却灰の処理費用が増大する。そして、近年では、埋立処分場を確保すること自体が困難になってきている。
【0003】
このような状況の中、ペーパースラッジ焼却灰を有効活用する技術が強く望まれている。例えば、特許文献1には、ペーパースラッジ焼却灰の水熱固化体を土壌改良剤として用いて土壌の水捌けを改善することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−313032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ペーパースラッジ焼却灰を有効活用する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、ペーパースラッジ焼却灰の利用法を鋭意検討したところ、本発明者は、ペーパースラッジ焼却灰を造粒固化して得られる造粒固化体が雑草の生育抑制に極めて有効であることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
これに限定されるものではないが、本発明は以下の発明を包含する。
(1) ペーパースラッジ焼却灰を含む造粒固化体を含んでなる雑草抑制材。
(2) 前記造粒固化体が、ペーパースラッジ焼却灰を含む焼却灰から水熱反応によって得られる、(1)に記載の雑草抑制材。
(3) (1)または(2)に記載の雑草抑制材を土壌表面および/または土壌中に敷設することを含む、雑草の生育を抑制する方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、雑草の生育を効果的に抑制することができる。本発明によって雑草の生育が効果的に抑制されるメカニズムの詳細は明らかでなく、本発明は以下の推測に拘束されるものではないが、高い吸水性を有する本発明の雑草抑制剤によって雑草の生育に必要な水分が雑草に行き渡らなくなり、その結果、雑草の生育を抑制できるものと推測される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、雑草の生育抑制試験の方法を示す模式図である。1が種子、2が造粒固化体、3が土壌である。
【図2】図2は、本発明の雑草抑制材を用いなかった場合の雑草の生育状況を示す写真である(比較例)。
【図3】図3は、本発明の雑草抑制材を用いた場合の雑草の生育状況を示す写真である。
【図4】図4は、本発明の雑草抑制材を用いた場合の雑草の生育状況を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ペーパースラッジ焼却灰
本発明においてペーパースラッジとは、パルプ製造工程、紙製造工程、古紙処理工程などから発生する廃棄物を意味する。ペーパースラッジには、顔料や填料として製紙に使用されるシリカ、炭酸カルシウム、硅砂、タルク、カオリンなどの無機物質に加え、パルプ、インク、製紙用薬品などの有機物質が含有される。
【0011】
本発明においてペーパースラッジ焼却灰とは、ペーパースラッジを焼却装置で焼却処理した際に発生する焼却灰のことである。本発明において焼却装置の形式などは特に限定されず、例えば、流動層ボイラーやストーカ焼却炉などの公知の焼却装置などを挙げることができる。この場合、助燃用とするため、重油や石炭などの燃料をペーパースラッジと共に混焼しても構わない。さらに、RDF(ごみ固形燃料)、RPF(産業系廃プラスチック・古紙類固形燃料)、その他一般可燃物もペーパースラッジと共に、ボイラーでの混焼は構わない。
【0012】
ペーパースラッジ焼却灰の造粒固化
本発明において造粒固化体は、ペーパースラッジ焼却灰を原料として種々の方法で調製することができ、公知の加圧成形法や造粒法を用いることができる。ペーパースラッジ焼却灰はそのままでは飛散しやすく、ハンドリングしにくい場合があるが、本発明によってペーパースラッジ焼却灰を造粒固化することによって、土壌への敷設などの施工時や輸送時などに取り扱いやすくなる。また、造粒固化することによって、ある程度の強度を有し、長期的に安定な雑草抑制剤を得ることができる。本発明においては、ペーパースラッジ焼却灰に加えて、石炭灰、バイオマス焼却灰をさらに混合し、造粒固化体の原料として使用してもよい。石炭灰、バイオマス灰の混合比率は、ペーパースラッジ焼却灰100重量部に対して0〜1000重量部が好ましく、10〜500重量部がより好ましく、10〜100重量部がさらに好ましい。
【0013】
ペーパースラッジ焼却灰の造粒固化には、生石灰、二水石膏などの石膏、セメントなどを固化剤として使用することができ、安定剤などの各種添加剤を用いてもよい。例えば、ペーパースラッジ焼却灰に水、固化剤を加え、必要により硬化促進剤、分散剤を加え、造粒機に供給し、本発明の造粒固化体を製造することができる。造粒工程は、例えば、常温〜98℃、望ましくは60〜95℃で行うことができる。造粒時間は特に制限されないが、例えば5〜60分間、好ましくは5〜30分間、より好ましくは5〜10分間程度とすることができる。ペーパースラッジ焼却灰に加える水は、焼却灰100重量部に対して60〜100重量部が好ましく、75〜95重量部がより好ましい。また、生石灰などの固化剤は、焼却灰100重量部に対して0〜30重量部程度用いることが好ましい。
【0014】
本発明において造粒固化体を製造する際に用いる造粒機としては、特に制限はなく、例えば、押出造粒機、転動造粒機、ロール成形機、打錠式造粒機、フレーカ式造粒機などを使用することができる。押出造粒機は、一定の穴径を備えたダイスから材料を強制的に圧縮押出するものである。転動造粒機は、回転体に供給された材料が回転運動により相互に付着成長しながら、比較的ソフトで形状の整った球状物を大量に作るのに適している。ロール成形機は、相対する一対の回転ロールに凹状のポケットが刻んであり、上部より材料を供給し形状一定の造粒物を作る装置である。打錠式造粒機は、円板上に放射線上に並んだ金型に材料が充填され、押棒により圧縮され、次いで造粒物が排出される、これを連続で行うものである。フレーカ式造粒機は、溶融物やスラリー状の材料を回転ドラムやスチームベルトに付着させ、冷却又は加熱することによりフレーク状に造粒するものである。粒子自体がソフトに成形でき、大量生産にも適するため、転動造粒機が好適である。
【0015】
ペーパースラッジ焼却灰を造粒した後、それを固化することによって、ある程度の強度を有する造粒固化体を得ることができる。例えば、上記のように造粒した造粒物を養生し、恒温槽やオートクレーブなどにおいて処理することにより造粒固化体を得ることができる。処理温度は特に制限されないが、40〜250℃が好ましく、70〜220℃がより好ましく、100〜200℃がさらに好ましい。処理温度も特に制限されないが、例えば、3〜24時間、望ましくは4〜15時間、より望ましくは4〜10時間である。
【0016】
硬化促進剤や分散剤の使用は必須ではないが、水和作用を促進して早期に強度を発現させる役割があり、ある程度の強度を有する造粒固化体を短い処理時間で得ることができる。硬化促進剤ないし分散剤としては、例えば、塩化カルシウム、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、炭酸ソーダ、炭酸カリウム、珪弗化亜鉛、珪弗化マグネシウム、珪弗化ソーダなどを挙げることができる。
【0017】
本発明においては、ペーパースラッジ焼却灰を原料とするため、固化剤として添加される生石灰などと水熱固化反応しやすく、強度が高く安定な粒状の水熱固化体を得ることができる。一般に、ペーパースラッジには木質系有機物(微細繊維、柔細胞、紙で使われる有機顔料・填料等)が含有されるため、ペーパースラッジ焼却灰にはシリカなどの無機材料中に適当な間隔を持って空隙部が存在するため、造粒固化しやすいものと考えられる。また、ペーパースラッジ焼却灰は、上記構造からも明らかなように細孔性と多孔性を有し、その造粒固化体は比較的高い吸水性や保水性を有している。さらに粒状の造粒固化体とすることにより表面積が大きくなる。本発明においては、これらの特性が本発明の雑草抑制効果に寄与しているものと考えられる。
【0018】
本発明において造粒固化体の大きさは特に制限されないが、1mm〜5cm程度の直径を有することが好ましく、1mm〜3cm程度の直径がより好ましい。直径の上限は、5cmが好ましく、3cmがより好ましいが、1cmとすることも可能であり、直径の下限は、1mmが好ましく、5mmとすることも可能である。本発明においては、雑草ないしその種子に水分が供給されないように、造粒固化体が細孔性および多孔性であり、吸水性や保水性を有することが必要である。粒子の表面積が大きい方が吸水性や保水性には有利であり、粒径が小さいほど粒子の表面積が大きくなる。また、粒子が球状に近い場合、小粒径だけでは施工上締め固めがしにくく、また逆に大粒径だけでも同様に締め固めがしにくいため、ある程度の幅の粒度分布を有する造粒固化体であると、粒径の大きなものの間隙に粒径の小さなものが充填されることにより締め固めしやすくなる。
また、本発明の造粒固化体は、全体の70重量%以上の粒子の直径が1mm〜3cmであることが好ましく、1mm〜2cmであることがより好ましく、1mm〜1cmであることがさらに好ましい。このような範囲であると、造粒固化体による雑草の発生抑制効果が特に大きくなる。
本発明の造粒固化体の水銀圧入法で測定した平均細孔半径は0.1μm以下であることが好ましい。また、造粒固化体の水銀圧入法で測定した累積細孔容積は0.4ml/g以上であることが好ましい。平均細孔半径が0.1μm以下であることにより、材料としての吸液力が向上し、土壌水分をより効果的に吸収することができると考えられる。また、累積細孔容積が0.4ml/g以上であることにより、材料としての水分保持能が向上し、土壌水分をより多く吸収することができると考えられる。平均細孔半径、累積細孔容積がこれらの範囲であれば、結果的に雑草の生育抑制の効果がより良好となる。
【0019】
雑草の生育抑制
本発明においては、ペーパースラッジ焼却灰の造粒固化体を用いて雑草の生育を抑制する。本発明の雑草抑制材は、土壌表面に敷設してもよく、土壌中に敷設してもよい。本発明の雑草抑制材を層状に敷設する場合、その厚さは、3〜30cm程度であることが好ましく、4〜15cm程度であることがより好ましく、5〜10cm程度あることがさらに好ましい。このような厚さで本発明の雑草抑制材を敷設することにより、雑草ないしその種子への水分移行を効果的に阻止することができ、雑草の生育を効果的に抑制することができる。
【0020】
本発明の雑草抑制剤の適用場所は特に制限されず、雑草の生長制御を必要とする場所に対して適用することができる。例えば、庭や広場、公園などの緑地の他、道路法面、中央分離帯、路肩、植栽帯、植樹桝、河川堤防法面などに好適に適用することができる。本発明の雑草抑制剤は、除草剤のように化学的に雑草の生育を抑制するものでないため、環境に与える影響が少なく、環境面でも好適である。
【0021】
本発明において雑草とは、ヒトの活動を妨げるあらゆる植物を意味し、人間の攪乱のあるところに生育できるが、作物のように栽培すなわち人間の積極的な保護を必要としない植物群をいう。
【実施例】
【0022】
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、本明細書において%および部は特に記載のない限り重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0023】
<実験1>
造粒固化体の製造
以下の手順により、ペーパースラッジ焼却灰の造粒固化体を得た。
・造粒固化体A: 製紙工場から排出されたペーパースラッジを、流動層式焼却炉を用い、酸素濃度7%、滞留時間2秒、約770℃の条件で焼却し、ペーパースラッジ焼却灰を得た。このペーパースラッジ焼却灰100重量部に対し、水24重量部、スラリー状消石灰(生石灰濃度14%スラリー)102.5重量部、石炭灰125重量部を、造粒機(北川鉄工所社製、商品名ペレガイヤ)で、温度50℃、時間300秒で混合し、粒状の造粒物を得た。この造粒物を2週間そのまま放置して自然養生した後、180℃で5時間水熱固化処理を行って、ペーパースラッジ焼却灰の水熱固化体を得た(直径は1mm〜5cmであり、1.18mm〜1.6cmの粒が全体重量の70重量%以上を占めていた)。
・造粒固化体B: 製紙工場から排出されたペーパースラッジを、流動層式焼却炉を用い、酸素濃度7%、滞留時間3秒、約850℃の条件で焼却し、ペーパースラッジ焼却灰を得た。このペーパースラッジ焼却灰730重量部に対し、石炭灰150重量部、水700重量部、二水石膏101重量部を、造粒機(クリハラ社製、商品名ELBAミキサー)で、温度50℃、時間265秒で混合し、この造粒物を2日間自然養生して、粒状の造粒固化体を得た(直径は1mm〜5cmであり、1.18mm〜1.6cmの粒が全体重量の70重量%以上を占めていた)。
【0024】
このようにして得られた造粒固化体AおよびBについて、その吸水性、元素組成および結晶組成を測定した。
・吸水性:造粒固化体の吸水性について、吸水倍率および点滴吸水度を測定した。吸水倍率とは、サンプルを水に1時間浸漬させ、サンプルの重量の何倍の水を吸収したかというものであり、長時間での吸水性を評価するものである。点滴吸水度は、サンプル表面に水を10μl載せ、水が内部に浸透するまでの時間であり、短時間での吸水性を評価するものである。
・元素組成:蛍光X線(OXFORD INSTRUMENTS社製、商品名ED2000)により元素分析を行った。
・結晶組成:X線回折(PANalytica社製、商品名X'Pert PRO)により結晶組成について分析した。
【0025】
【表1】

【0026】
雑草の生育抑制試験
上記造粒固化体の雑草抑制効果を評価した。ワグネルポット(直径16cm、高さ20cm)に、供試土壌として火山灰土壌(埴壌土)を入れ、その上に上記造粒固化体を約5cmの厚さで敷設した(図1)。供試雑草としてメヒシバを用い、ポット当たり0.15gのメヒシバ種子を、造粒固化体層の上下に0.075gずつに分けて播種した。播種後のワグネルポットをポットはガラス室内に設置し、適宜に灌水し、播種から1ヶ月後の雑草の生育状況を観察した。
【0027】
試験結果を表2および図2〜4に示す。表2および図2〜4から明らかなように、本発明の雑草抑制材によると効果的に雑草の生育を抑制することができた。本発明の造粒固化体Aを用いた場合、対照に比べて、雑草の発生本数を1/4以下まで抑制することができ、また、造粒固化体Bを用いた場合も雑草の発生本数を35%以上抑制できた。
【0028】
【表2】

【0029】
有害物質の溶出性試験
上記造粒固化体について有害物質の溶出性を評価した。環境省告示第46号付表に定める通りに溶出処理を行って、溶出量測定のための検液を作成した。試料(造粒固化体)を非金属製の2mmの目のふるいを通過させ、試料50gと溶媒(純水に塩酸を加え、水素イオン濃度指数が5.8以上6.3以下となるようにしたもの)500mlを混合し、調製した試料液を常温常圧で振とう機(振とう回数毎分約200回、振とう幅4cm以上5cm以下)を用いて、6時間連続して振とうした。得られた液を30分間静置後、毎分約3000回転で20分間遠心分離した後の上澄み液を孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過してろ液を取り、定量に必要な量を正確に計り取って、これを検液とした。
環境省告示第18号に準拠し、フッ素は水質環境基準告示付表6に記載のイオンクロマトグラフ法、ホウ素はJIS K0102 47.3に記載のICP発光分光法、全クロムはJIS K0102 65.2.4に記載のICP発光分光法、鉛はJIS K0102 54.3に記載のICP発光分光法にて測定した。
【0030】
以下の表から明らかなように、本発明の造粒固化体は土壌環境基準を満たしており、実用的に問題がないことが分かった。
【0031】
【表3】

<実験2>
造粒固化体の製造
以下の手順により、直径1mm〜5cmの造粒固化体を得た。
・造粒固化体C: 製紙工場から排出されたペーパースラッジを、流動層式焼却炉を用い、酸素濃度7%、滞留時間3秒、約850℃の条件で焼却し、ペーパースラッジ焼却灰を得た。このペーパースラッジ焼却灰100重量部に対し、水75重量部、二水石膏20重量部を、造粒機(北川鉄工所社製、商品名ペレガイヤ)で、温度50℃、時間300秒で混合し、粒状の造粒物を得た。この造粒物を2日間自然養生して、直径が1mm〜5cmである粒状の造粒固化体を得た(1.18mm〜1.0cmの粒子が全体重量の70重量%以上を占めていた)。
・造粒固化体D: 水の添加量を、ペーパースラッジ焼却灰100重量部に対し、80重量部とした以外は、造粒固化体Cと同様に製造を行って、直径が1mm〜5cmである粒状の造粒固化体を得た(5.0mm〜1.6cmの粒子が全体重量の70重量%以上を占めていた)。
・造粒固化体E: 水の添加量を、ペーパースラッジ焼却灰100重量部に対し、85重量部とした以外は、造粒固化体Cと同様に製造を行って、直径が1mm〜5cmである粒状の造粒固化体を得た(1.0cm〜5.0cmの粒子が全体重量の70重量%以上を占めていた)。
・造粒固化体F: 製紙工場から排出されたペーパースラッジを、流動層式焼却炉を用い、酸素濃度7%、滞留時間2秒、約770℃の条件で焼却し、ペーパースラッジ焼却灰を得た。このペーパースラッジ焼却灰100重量部に対し、水22重量部、スラリー状消石灰(生石灰濃度14%スラリー)102.5重量部を、造粒機(北川鉄工所社製、商品名ペレガイヤ)で、温度50℃、時間300秒で混合し、粒状の造粒物を得た。この造粒物を2週間そのまま放置して自然養生した後、180℃で5時間水熱固化処理を行って、直径が1mm〜5cmであるペーパースラッジ焼却灰の水熱固化体を得た(1.18mm〜1.0cmの粒が全体重量の70重量%以上を占めていた)。
・造粒固化体G: 製紙工場から排出されたペーパースラッジと、廃木屑を主体とする木質系廃棄物を、乾燥重量比1:1の比率で混合した。この混合物を、流動層式焼却炉を用い、酸素濃度7%、滞留時間3秒、約850℃の条件で焼却し、ペーパースラッジ焼却灰を得た。このペーパースラッジ焼却灰100重量部に対し、水55重量部、二水石膏20重量部を、造粒機(北川鉄工所社製、商品名ペレガイヤ)で、温度50℃、時間300秒で混合し、粒状の造粒物を得た。この造粒物を2日間自然養生して、直径が1mm〜5cmである粒状の造粒固化体を得た(1.18mm〜1.0cmの粒が全体重量の70重量%以上を占めていた)。
・市販固化体: 比較として、一般ゴミを原料として、これを燃焼後、再焼成(溶融)、造粒して得られる市販固化体を使用した(製品名:アークサンド、多機能エコソイル工法協会製:直径が1mm〜5cmであり、1.18mm〜1.0cmの粒子が全体重量の70重量%以上を占めていた)。
このようにして得られた造粒固化体及び市販固化体について、吸水性の測定、雑草の生育抑制試験、有害物質の溶出性試験を、実験1と同様にして行った。また、造粒固化体C、F、G、市販固化体については、水銀ポロシメーターを用いて水銀圧入法により、平均細孔半径と累積細孔容積を測定した。
【表4】

【表5】

試験結果を表4〜5に示す。表4から明らかなように、本発明の造粒固化体のいずれもが雑草の発生本数を効果的に抑制できた。特に、1.18mm〜1.0cmの粒子が全体重量の70重量%以上を占める造粒固化体C、F、Gは雑草抑制効果が大きく、対照(無処理)に比べて、雑草の発生本数を約1/8まで抑制することができた。
また、表4から明らかなように、ペーパースラッジ焼却灰を原料とする本発明の造粒固化体は、一般ゴミの焼却灰を原料とする造粒固化体と比較して、雑草の発生本数を効果的に抑制できた。ペーパースラッジ焼却灰を原料とする本発明の造粒固化体は、一般ゴミの焼却灰を原料とする市販の固化体と比較して平均細孔半径は小さく、累積細孔容積は大きくなっており、このような細孔特性の違いが雑草の発生抑制効果と関係していると推測された。
さらに、表5から明らかなように、本発明の造粒固化体は土壌環境基準を満たしており、実用的に問題がないことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペーパースラッジ焼却灰を含む造粒固化体を含んでなる雑草抑制材。
【請求項2】
前記造粒固化体が、ペーパースラッジ焼却灰を含む焼却灰から水熱反応によって得られる、請求項1に記載の雑草抑制材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の雑草抑制材を土壌表面および/または土壌中に敷設することを含む、雑草の生育を抑制する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−17323(P2012−17323A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127524(P2011−127524)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【出願人】(304036743)国立大学法人宇都宮大学 (209)
【Fターム(参考)】