説明

離型シートおよびその製造方法

【課題】製造が容易でかつ、粘着材料との離型性に優れた離型シートを提供する。
【解決手段】基材上に樹脂層を設けてなる離型シートであって、樹脂層が、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレン100質量部と、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、メラミン化合物から選ばれる少なくとも一つを含む架橋剤1〜50質量部とを含有することを特徴とする離型シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型シートおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、粘着シートは、半導体装置、精密機器など電子部品の製造工程において使用されている。このような粘着シートは、その表面を保護するために、使用するときまで離型シートが貼りあわされ積層されている。離型シートは、基材の表面に離型剤を塗布した離型層が設けられている。
離型シート用の離型剤としては、一般的にシリコーン系の離型剤が使用されている。しかし、シリコーン系の離型剤を用いた場合、シリコーン系離型剤の中に含まれる低分子量のシリコーン化合物が、粘着シートの粘着剤表面に移行し、残存することにより、粘着剤の粘着力の低下や電子部品がトラブルを起こすおそれがあった。
非シリコーン系の離型シートとして、特許文献1には、酸変性ポリオレフィンを用いた離型剤を塗布した離型シートが提案され、また特許文献2には、ポリブタジエンを含む剥離剤を塗布し、紫外線照射することにより離型剤層を形成した離型シートが提案されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1の離型シートは、様々な被着体に対して良好な離型性を示すものの、粘着剤に対してはやや剥離が重い傾向があり、粘着シートを剥離する際にハンドリングが悪い場合や、粘着シートを高速で剥離した際にジッピングを起こし、粘着シート表面の平滑性が損なわれる場合があった。
また、特許文献2の離型シートは、粘着剤に対して離型性が良好であるものの、紫外線照射により離型層を硬化させる必要があり、製造において特殊な設備や工程が必要であるだけでなく、基材と離型層との密着性に劣るために、基材と離型層の間にアンカーコート層を設ける必要があり、工程が増える分、コストアップになるという問題があった。また、離型層を設けるために、樹脂を有機溶剤に溶解させた液状物を使用しており、環境面からも好ましくなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−101680号公報
【特許文献2】特開2005−212121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これらの問題に鑑み、製造が容易でかつ、粘着材料との離型性に優れた離型シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンと、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、メラミン化合物から選ばれる少なくとも一つを含む架橋剤とを含有する樹脂層が、離型性に優れ、かつ基材との密着性も良好であり、この樹脂層を基材に積層することで離型シートとして有効であることを見出し、本発明に達した。
すなわち本発明の要旨は、次のとおりである。
(1)基材上に樹脂層を設けてなる離型シートであって、樹脂層が、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレン100質量部と、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、メラミン化合物から選ばれる少なくとも一つを含む架橋剤1〜50質量部とを含有することを特徴とする離型シート。
(2)粘着材料に対して使用され、樹脂層と粘着材料の剥離強度が、0.5N/cm以下であることを特徴とする(1)記載の離型シート。
(3)基材が樹脂材料、紙、合成紙、布、金属材料、ガラス材料のいずれかであることを特徴とする(1)または(2)に記載の離型シート。
(4)樹脂材料がポリエステル樹脂フィルムであることを特徴とする(3)記載の離型シート。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の離型シートの製造方法であって、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレン100質量部と、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、メラミン化合物から選ばれる少なくとも一つを含む架橋剤1〜50質量部とを含有し、水性媒体に分散された液状物を、基材上に塗布した後、乾燥することにより、樹脂層を形成することを特徴とする離型シートの製造方法。
(6)上記(4)記載の離型シートの製造方法であって、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレン100質量部と、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、メラミン化合物から選ばれる少なくとも一つを含む架橋剤1〜50質量部とを含有し、水性媒体に分散された液状物を、未延伸または一軸延伸ポリエステル樹脂フィルム上に塗布した後、乾燥、フィルムとともに配向延伸することにより、樹脂層を形成することを特徴とする離型シートの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の離型シートは、樹脂を水性媒体に分散させた液状物を基材に塗布、乾燥することによって容易に製造することができる。また本発明の離型シートを用いることにより、粘着材料の粘着剤表面を保護することができ、粘着材料の使用時において離型シートを剥離する際にも、簡単に粘着材料の品質を損なわずに剥離することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の離型シートは、基材と、この基材上に設けられた樹脂層とを有する。そして樹脂層は、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンと、架橋剤とを含有する。
【0009】
酸変性ポリブタジエンにおけるブタジエンの骨格は、1,2−ビニル型、1,4−トランス型、または1,4−シス型のいずれの構造を有するものでよく、これらの混合物であってもよく、その比率も特に限定されない。
【0010】
酸変性ポリブタジエンの酸変性成分としては、不飽和カルボン酸が使用でき、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸が好ましく、入手のし易さからマレイン酸、無水マレイン酸が特に好ましい。
酸変性ポリブタジエン中の不飽和カルボン酸の含有量は、架橋剤との反応の観点および後述する酸変性ポリブタジエンの水性分散体を得やすいという観点から、酸変性ポリブタジエンの酸価として1〜400mgKOH/gが好ましく、30〜300mgKOH/gがより好ましく、50〜300mgKOH/gがさらに好ましく、基材との密着性や離型性の観点から、70〜250mgKOH/gが特に好ましい。
酸変性ポリブタジエンの酸価が1mgKOH/g未満の場合、樹脂層は、基材との密着性が低下することにより、粘着剤表面に移行する可能性があるだけでなく、酸変性ポリブタジエンの水性分散体を得ることが困難になることがある。一方、酸価が400mgKOH/gを超える場合、粘着剤と強く密着することにより離型性が低下してしまう可能性がある。
また、不飽和カルボン酸成分は、酸変性ポリブタジエン中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)等が挙げられる。
【0011】
酸変性ポリブタジエンの数平均分子量は、200〜20000が好ましく、500〜10000がより好ましい。数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0012】
酸変性ポリブタジエンは、ポリブタジエンを不飽和カルボン酸変性して得られるが、市販のものを用いるのが簡便である。市販のものとしては、例えば、日本曹達社製マレイン化ブタジエン(BN−1010等)、JX日鉱日石エネルギー社製マレイン化ブタジエン(M−1000−20、M−1000−80、M−2000−20、M−2000−80等)、エボニック・デグサ社製マレイン化ブタジエン(polyvest OC800S等)を使用することができる。
【0013】
一方、酸変性ポリイソプレンにおけるイソプレンの骨格は、1,2−ビニル型、3,4−ビニル型、1,4−シス型、1,4−トランス型のいずれの構造を有するものでもよく、これらの混合物であってもよい。
【0014】
酸変性ポリイソプレンの酸変性成分としては、不飽和カルボン酸が使用でき、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸が好ましく、入手のし易さからマレイン酸、無水マレイン酸が特に好ましい。
酸変性ポリイソプレン中の不飽和カルボン酸の含有量は、架橋剤との反応の観点および後述する酸変性ポリイソプレンの水性分散体を得やすいという観点から、酸変性ポリイソプレンの酸価として1〜400mgKOH/gが好ましく、3〜300mgKOH/gがより好ましく、4〜200mgKOH/gがさらに好ましく、基材との密着性や離型性の観点から、5〜100mgKOH/gが特に好ましい。
酸変性ポリイソプレンの酸価が1mgKOH/g未満の場合、樹脂層は、基材との密着性が低下することにより、粘着剤表面に移行する可能性があるだけでなく、酸変性ポリイソプレンの水性分散体を得ることが困難になることがある。一方、酸価が400mgKOH/gを超える場合、粘着剤と強く密着することにより離型性が低下してしまう可能性がある。
また、不飽和カルボン酸成分は、酸変性ポリイソプレン中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)等が挙げられる。
【0015】
酸変性ポリイソプレンの数平均分子量は、200〜100000が好ましく、3000〜70000がより好ましく、10000〜50000がさらに好ましい。数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0016】
酸変性ポリイソプレンは、ポリイソプレンを不飽和カルボン酸変性して得られるが、市販のものを用いるのが簡便である。市販のものとしては、例えば、クラレ社製無水マレイン酸変性ポリイソプレン「LIR−403」、「LIR−410」などを使用することができる。
【0017】
本発明の離型シートの樹脂層は、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンと架橋剤を含有する。架橋剤としては、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンの酸変性成分と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物が用いられ、反応性の観点から、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、メラミン化合物から選ばれる少なくとも一つを含む架橋剤であることが必要である。
【0018】
オキサゾリン化合物は、分子中にオキサゾリン基を2つ以上有しているものであれば、特に限定されるものではない。例えば、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレン−ビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレン−ビス(2−オキサゾリン)、ビス(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィドなどのオキサゾリン基を有する化合物や、オキサゾリン基含有ポリマーが挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いやすさからオキサゾリン基含有ポリマーが好ましい。
オキサゾリン基含有ポリマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等の付加重合性オキサゾリンを重合させることにより得られる。必要に応じて他の単量体が共重合されていてもよい。オキサゾリン基含有ポリマーの重合方法は、特に限定されず、公知の種々の重合方法を採用することができる。オキサゾリン基含有ポリマーの市販品としては、日本触媒社製のエポクロスシリーズが挙げられる。具体的な商品名としては、例えば、水溶性タイプの「WS−500」、「WS−700」;エマルションタイプの「K−1010E」、「K−1020E」、「K−1030E」、「K−2010E」、「K−2020E」、「K−2030E」などが挙げられる。
【0019】
カルボジイミド化合物は、分子中に少なくとも2つ以上のカルボジイミド基を有しているものであれば特に限定されるものではない。例えば、p−フェニレン−ビス(2,6−キシリルカルボジイミド)、テトラメチレン−ビス(t−ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン−1,4−ビス(メチレン−t−ブチルカルボジイミド)などのカルボジイミド基を有する化合物や、カルボジイミド基を有する重合体であるポリカルボジイミドが挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、取り扱いやすさから、ポリカルボジイミドが好ましい。
ポリカルボジイミドの製法は、特に限定されるものではない。ポリカルボジイミドは、例えば、イソシアネート化合物の脱二酸化炭素を伴う縮合反応により製造することができる。イソシアネート化合物も限定されるものではなく、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、芳香族イソシアネートのいずれであっても構わない。イソシアネート化合物は、必要に応じて多官能液状ゴムやポリアルキレンジオールなどが共重合されていてもよい。ポリカルボジイミドの市販品としては、日清紡社製のカルボジライトシリーズが挙げられる。具体的な商品としては、例えば、水溶性タイプの「SV−02」、「V−02」、「V−02−L2」、「V−04」;エマルションタイプの「E−01」、「E−02」;有機溶液タイプの「V−01」、「V−03」、「V−07」、「V−09」;無溶剤タイプの「V−05」などが挙げられる。
【0020】
メラミン化合物とは、トリアジン環の3つの炭素原子にアミノ基がそれぞれ結合した、いわゆるメラミン[1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン]のアミノ基に種々の変性を施した化合物の総称であり、トリアジン環が複数縮合したものも含む。変性の種類としては、3つのアミノ基の水素原子のいくつかがアルキル化もしくはメチロール化されたものが広く使用される。一般にアルキル化されたものよりもメチロール化もしくは置換されていない水素原子の方が反応性が高く、用途に応じて適正な種類のメラミン化合物を選定することができる。この中で好ましいのは、トリアジン環の縮合数が平均3以下で、少なくとも1つ以上のアミノ基がメチロール置換されたものであり、これらは水性媒体への分散性と樹脂との反応性の点で優れている。
メラミン化合物の市販品としては、例えば、日本サイテックインダストリー社製のサイメルシリーズ、住友化学社製のスミマール、DIC社製のベッカミンなどが挙げられる。
【0021】
架橋剤の含有量は、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレン100質量部に対して、1〜50質量部であることが必要であり、2〜30質量部であることがより好ましく、3〜20質量部であることがさらに好ましい。架橋剤の含有量が1質量部未満では添加効果が乏しく、経時的に離型性が低下する場合があり、含有量が50質量部を超えると離型性が低下する場合がある。なお、架橋剤は、複数の種類を同時に用いることもでき、同時に用いた場合、架橋剤の合計量が上記の架橋剤の含有量の範囲を満たしていればよい。
【0022】
本発明の樹脂層を基材上に積層する方法は特に限定されないが、例えば、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンと、架橋剤と、媒体とを含む液状物を作成し、この液状物を基材に塗布して媒体を乾燥させる方法が樹脂層の厚みを均一にしやすく、大量生産が可能という点で好ましい。さらに、地球環境や作業者の健康を考慮するという点で、液状物として、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンと架橋剤が水性媒体に分散された水性分散体を用いることが好ましい。
【0023】
酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンを水性媒体に分散させ、水性分散体を得る方法は特に限定されないが、例えば、密閉可能な容器に酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレン、有機溶剤、水などの原料を投入し、槽内の温度を40〜150℃程度の温度に保ちつつ攪拌を行うことにより、水性分散体とする方法などが挙げられる。例えば、国際公開02/055598号パンフレットに記載された方法が挙げられ、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンを水性媒体中で塩基性化合物を用いて中和することにより、良好な水性分散体が得られる。
【0024】
上記塩基性化合物は、樹脂層形成後の塗膜の耐水性の点から、揮発性であることが好ましい。本発明において、「揮発性」とは常圧における沸点が250℃以下であることを指すものとする。沸点が250℃を超えると、樹脂塗膜から乾燥によって塩基性化合物を飛散させることが困難になり、塗膜の耐水性が低下する場合がある。
揮発性の塩基性化合物としては、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げることができる。
【0025】
本発明でいう水性媒体とは、水を主成分とする媒体であって、有機溶剤や水溶性の塩基性化合物を含有していてもよい。
有機溶剤としては、ジエチルケトン(3−ペンタノン)、メチルプロピルケトン(2−ペンタノン)、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)、2−ヘキサノン、5−メチル−2−ヘキサノン、2−へプタノン、3−へプタノン、4−へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、ベンゼン、ソルベッソ100、ソルベッソ150等の芳香族炭化水素類、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等の脂肪族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン等の含ハロゲン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、γ―ブチロラクトン、イソホロン等のエステル類、加えて後述の親水性の有機溶剤などが挙げられる。
【0026】
親水性の有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−tert−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセトニトリル等が挙げられ、水溶性の塩基性化合物の具体例としては、アンモニアを含む、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−ジエタノールアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン等の有機アミン化合物等を挙げることができる。
【0027】
水性分散体中の酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレン粒子の数平均粒子径(以下、mn)は、水性分散体の保存安定性、塗膜の透明性、30℃以下の低温での造膜性が向上する点から、いずれも0.5μm以下が好ましく、0.005〜0.3μmがより好ましく、0.01〜0.2μmがさらに好ましく、0.01〜0.1μmが特に好ましい。さらに、重量平均粒子径(以下、mw)に関しては、1μm以下が好ましく、0.01〜0.5μmがより好ましく、0.01〜0.2μmが特に好ましい。
【0028】
酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンと架橋剤を混合する方法は、各成分が液状媒体中に均一に混合される方法であれば、特に限定されない。例えば、酸変性ポリブタジエンおよび/または変性ポリイソプレンの分散液に、架橋剤の分散液または溶液を添加して混合する方法や、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンと架橋剤との混合物を液状化する方法が挙げられる。
本発明で使用される液状物における固形分の含有率は、積層条件、目的とする厚さや性能等により適宜選択することができ、特に限定されるものではない。しかし、液状物の粘度を適度に保ち、かつ良好な樹脂層を形成させるためには、固形分の含有率は1〜60質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
【0029】
さらに、液状物に、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、帯電防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤等の各種薬剤や、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料あるいは染料を添加してもよい。また、液状物の安定性を損なわない範囲で上記以外の有機もしくは無機の化合物を液状物に添加することもできる。
【0030】
本発明の離型用シートは、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンと架橋剤とを含有する液状物を、基材上に塗布したのち乾燥するという製造方法によって、工業的に簡便に得ることができる。
すなわち、上記のような液状物を用いて、公知の方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等により基材表面に均一に塗布し、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥処理又は乾燥のための加熱処理に供することにより、均一な樹脂層を基材に密着させて形成することができる。
基材上に樹脂層を形成した後、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンと架橋剤との反応を促進させるために、一定の温度にコントロールされた環境下でエージング処理をおこなってもよい。エージング温度は、基材へのダメージを軽減させる観点からは、比較的低いことが好ましく、反応を十分かつ速やかに進行させるという観点からは、高温で処理することが好ましい。エージングは20〜100℃でおこなうことが望ましく、30〜70℃でおこなうことがより好ましく、40〜60℃でおこなうことがさらに好ましい。
【0031】
離型シートの基材としては、樹脂材料、紙、合成紙、布、金属材料、ガラス材料等で形成されたものが挙げられる。基材の厚みは、特に限定されるものではないが、通常は1〜1000μmであればよく、1〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましく、25〜100μmが特に好ましい。
【0032】
基材に用いることができる樹脂材料としては、例えば熱可塑性樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル樹脂;ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリスチレン樹脂;ナイロン6、ポリ−m−キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)等のポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアクリルニトリル樹脂;ポリイミド樹脂;これらの樹脂の複層体(例えば、ナイロン6/MXD6ナイロン/ナイロン6、ナイロン6/エチレン−ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体等が挙げられる。樹脂材料は延伸処理されていてもよい。中でも、基材は、機械的特性および熱的特性に優れるポリエステル樹脂フィルムが好ましく、安価で入手が容易という点からポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0033】
熱可塑性樹脂フィルムに液状物を塗布する場合、二軸延伸されたフィルムに塗布後乾燥、熱処理してもよく、また、配向が完了する以前の未延伸フィルム、あるいは一軸延伸の終了したフィルムに液状物を塗布し、乾燥後加熱して延伸するか、あるいは加熱して乾燥と同時に延伸して、配向を完了させてもよい。後者の未延伸フィルム、あるいは一軸延伸終了後のフィルムに液状物を塗布後、乾燥、延伸配向する方法は、熱可塑性樹脂フィルムの製膜と同時に樹脂層を積層することができるため、コストの点から好ましく、また延伸工程において樹脂層に高温の熱がかかることにより酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンと架橋剤との反応を効率的に進められるという点からも好ましい。また、液状物として水性分散体を使用することが、製造工程内に防爆設備が不要であるなどの点からより好ましい。
【0034】
上記熱可塑性樹脂フィルムは、公知の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤などを含んでいてもよい。熱可塑性樹脂フィルムは、その他の材料と積層する場合の密着性を良くするために、表面に前処理としてコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、薬品処理、溶剤処理等を施したものでもよい。また、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよく、バリア層や易接着層、帯電防止層、紫外線吸収層などの他の層が積層されていてもよい。
【0035】
基材として用いることができる紙としては、和紙、クラフト紙、ライナー紙、アート紙、コート紙、カートン紙、グラシン紙、セミグラシン紙等を挙げることができる。紙には、目止め層などが設けてあってもよい。
基材として用いることができる合成紙は、その構造は特に限定されず、単層構造であっても多層構造であってもよい。多層構造としては、例えば基材層と表面層の2層構造、基材層の表裏面に表面層が存在する3層構造、基材層と表面層の間に他の樹脂フィルム層が存在する多層構造を例示することができる。各層は、無機や有機のフィラーを含有していてもよいし、含有していなくてもよい。微細なボイドを多数有する微多孔性合成紙も使用することができる。
基材として用いることができる布としては、上述した合成樹脂からなる繊維や、木綿、絹、麻などの天然繊維からなる不織布、織布、編布などが挙げられる。
基材として用いることができる金属材料としては、アルミ箔や銅箔などの金属箔や、アルミ板や銅板などの金属板などが挙げられる。
基材として用いることができるガラス材料としては、ガラス板やガラス繊維からなる布などが挙げられる。
【0036】
離型シートにおける樹脂層の厚みは、0.01〜5μmであることが好ましく、0.02〜1μmであることがより好ましく、0.03〜0.5μmであることがさらに好ましく、0.05〜0.3μmであることが特に好ましい。樹脂層の厚みが0.01μm未満では十分な離型性が得られず、厚みが5μmを超える場合はコストアップとなるだけでなく、離型性が低下したり、離型シートをロール状に巻いた場合にブロッキングする場合がある。
【0037】
本発明の離型シートは、様々な材料に対して良好な離型性を有することから、様々な材料に対して使用することができるが、特に粘着材料に対して好適に使用することができる。
粘着材料としては、基材に粘着剤が積層されたものが挙げられ、実務上は、粘着シート、接着シート、粘着テープ、接着テープなどの形態で使用される。粘着剤の成分や基材は特に限定されない。粘着剤としては、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤などが挙げられる。粘着剤には、ロジン系、クマロン−インデン系、テルペン系、石油系、スチレン系、フェノール系、キシレン系などの粘着付与剤が含まれていてもよい。基材としては、上述の紙、布、樹脂材料などが挙げられる。
本発明の離型シートを粘着材料に対して使用した場合、粘着材料を貼り付けて、放置した後の樹脂層と粘着材料との間の剥離強度を、0.5N/cm以下とすることができ、より好ましくは、0.4N/cm以下、さらに好ましくは0.3N/cm以下、最も好ましくは、0.2N/cm以下とすることができる。粘着材料との剥離強度が0.5N/cmを超える場合、粘着材料用の離型シートとして使用することが困難となることがある。
また本発明の離型シートを粘着材料に対して使用した場合、貼り付け後長時間経過した後も、樹脂層と粘着材料との剥離強度の変化を小さく抑えることができる。離型シートを貼り付けた粘着材料は、保管、流通の過程において、高温下に長時間曝される場合があり、経時で剥離強度変化が大きいと、離型シートとして使用することが困難になることがあり好ましくない。
【実施例】
【0038】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(1)樹脂の酸価
樹脂0.15gを20mlのテトラヒドロフランに溶解し、クレゾールレッドを指示薬としてKOH水溶液で滴定を行い、中和に消費されたKOHのmg数から樹脂中の酸価(mgKOH/g)を求めた。
(2)水性分散体の固形分濃度
水性分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、固形分濃度を求めた。
(3)水性分散体の平均粒子径
日機装株式会社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340、動的光散乱法)を用い、数平均粒子径(mn)および重量平均粒子径(mw)を求めた。ここで、粒子径算出に用いる樹脂の屈折率は1.50とした。
(4)樹脂層の厚み
得られた離型シートの全体の厚さを接触式膜厚計により測定し、その測定値から基材フィルムの厚さを減じて求めた。
(5)剥離強度(常温)
得られた離型シートの樹脂層側に、巾50mm、長さ150mmのポリエステル粘着テープ(日東電工社製、No.31B/アクリル系粘着剤)をゴムロールで圧着して、剥離強度測定用試料とした。この剥離強度測定用試料の、粘着テープと離型シートとの剥離強度を、25℃の恒温室で、引張試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機、2020型)にて測定した。剥離角度は180℃、剥離速度は300mm/分とした。
(6)剥離強度(常温−24時間経過後)
得られた離型シートの樹脂層側に、巾50mm、長さ150mmのポリエステル粘着テープ(日東電工社製、No.31B/アクリル系粘着剤)をゴムロールで圧着して、試料とした。試料を、金属板/ゴム板/試料/ゴム板/金属板の形で挟み、2kPa荷重、25℃の雰囲気で24時間放置し、剥離強度測定用試料を得た。この剥離強度測定用試料の、粘着テープと離型シートとの剥離強度を、25℃の恒温室で、引張試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機、2020型)にて測定した。剥離角度は180℃、剥離速度は300mm/分とした。
(7)剥離強度(70℃−24時間経過後)
得られた離型シートの樹脂層側に、巾50mm、長さ150mmのポリエステル粘着テープ(日東電工社製、No.31B/アクリル系粘着剤)をゴムロールで圧着して、試料とした。試料を、金属板/ゴム板/試料/ゴム板/金属板の形で挟み、2kPa荷重、70℃の雰囲気で24時間放置し、剥離強度測定用試料を得た。この剥離強度測定用試料の、粘着テープと離型シートとの剥離強度を、25℃の恒温室で、引張試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機、2020型)にて測定した。剥離角度は180℃、剥離速度は300mm/分とした。
【0039】
参考例1
(酸変性ポリブタジエン水性分散体T−1の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリブタジエン(エボニック・デグサ社製、polyvest OC800S、数平均分子量2400、酸価70〜90mgKOH/g)、60.0gのイソプロパノール(和光純薬社製、以下、IPA)、15gのトリエチルアミン(和光純薬社製、以下、TEA)および165gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ系は乳白色になった。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を80℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリブタジエン水性分散体T−1を得た。
【0040】
参考例2
(酸変性ポリイソプレン水性分散体T−2の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリイソプレン(クラレ社製、クラプレン LIR−403、数平均分子量34000、酸価9〜11mgKOH/g)、60.0gのIPA、15gのTEAおよび165gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌しながら、加熱し、系内温度を120℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリイソプレン水性分散体T−2を得た。
【0041】
参考例3
(酸変性ポリイソプレン水性分散体T−3の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリイソプレン(クラレ社製、クラプレン LIR−410、数平均分子量30000、酸価23〜30mgKOH/g)、60.0gのIPA、15gのTEAおよび165gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ系は乳白色になった。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリイソプレン水性分散体T−3を得た。
【0042】
参考例4
(酸変性ポリブタジエン水性分散体T−4の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリブタジエン(エボニック・デグサ社製、polyvest OC800S、数平均分子量2400、酸価70〜90mgKOH/g)、60.0gのIPA、9.0gのN,N−ジメチルエタノールアミン(和光純薬社製、以下、DMEA)および165gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ系は乳白色になった。そこでこの状態を保ちつつ、ヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を80℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。その後、水性分散体から、IPAを一部除去するために、ロータリーエバポレーターを用い、水を添加しながら、浴温80℃で溶媒留去した。その後、空冷にて室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリブタジエン水性分散体T−4を得た。
【0043】
参考例5
(酸変性ポリイソプレン水性分散体T−5の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリイソプレン(クラレ社製、クラプレン LIR−403、数平均分子量34000、酸価9〜11mgKOH/g)、60.0gのIPA、9.0gのDMEAおよび165gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌しながら、加熱し、系内温度を120℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。その後、水性分散体から、IPAを一部除去するために、ロータリーエバポレーターを用い、水を添加しながら、浴温80℃で溶媒留去した。その後、空冷にて室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリイソプレン水性分散体T−5を得た。
【0044】
参考例6
(酸変性ポリオレフィン水性分散体E−1の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂(アルケマ社製、ボンダイン LX−4110)、90.0gのIPA、3.0gのTEAおよび147.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込んだ。そして、撹拌翼の回転速度を300rpmとし、系内温度を140〜145℃に保って、30分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。さらに、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧ろ過(空気圧0.2MPa)した。これによって、乳白色の均一な酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1を得た。
【0045】
参考例1〜6で製造した水性分散体の組成、平均粒子径を表1に示した。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例1
酸変性ポリブタジエン水性分散体T−1と、オキサゾリン化合物の水性溶液(日本触媒社製、エポクロス WS−500、固形分濃度40質量%)とを、酸変性ポリブタジエン100質量部に対して、オキサゾリン化合物固形分の量が15質量となるように混合して、液状物を得た。この液状物を、二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(ユニチカ社製、エンブレット S−50、厚み50μm)のコロナ処理面に、マイヤーバーを用いて塗布した後、120℃で15秒間乾燥させることで、フィルム上に0.2μmの樹脂層を形成した離型シートを得た。
【0048】
実施例2
実施例1において、酸変性ポリブタジエン100質量部に対して、オキサゾリン化合物固形分の量が20質量部となるようにした以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。
【0049】
実施例3
実施例1において、酸変性ポリブタジエン100質量部に対して、オキサゾリン化合物固形分の量が1質量部となるようにした以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。
【0050】
実施例4
実施例1において、オキサゾリン化合物の水性溶液に代えて、カルボジイミド化合物の水分散体(日清紡社製、カルボジライト E−02、固形分濃度40質量%)を用い、酸変性ポリブタジエン100質量部に対して、カルボジイミド化合物固形分の量が20質量部となるようにした以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。
【0051】
実施例5
実施例4において、酸変性ポリブタジエン100質量部に対して、カルボジイミド化合物固形分の量が50質量部となるようにした以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。
【0052】
実施例6
実施例2において、オキサゾリン化合物の水性溶液に代えて、メラミン化合物含有溶液(DIC社製、ベッカミン J−101、固形分濃度71質量%)を用い、170℃で30秒間乾燥を行って、離型シートを得た。
【0053】
実施例7
実施例3において、酸変性ポリブタジエン水性分散体T−1に代えて、酸変性ポリイソプレン水性分散体T−2を用いた以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。
【0054】
実施例8
実施例7において、酸変性ポリイソプレン100質量部に対して、オキサゾリン化合物固形分の量が5質量部となるようにした以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。
【0055】
実施例9
実施例8において、酸変性ポリイソプレン水性分散体T−2に代えて、酸変性ポリイソプレン水性分散体T−3を用いた以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。
【0056】
実施例10
実施例9において、オキサゾリン化合物の水性溶液に代えて、カルボジイミド化合物の水分散体(日清紡社製、カルボジライト E−02、固形分濃度40質量%)を用い、酸変性ポリイソプレン100質量部に対して、カルボジイミド化合物固形分の量が10質量部となるようにした以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。
【0057】
実施例11
ポリエチレンテレフタレート樹脂(日本エステル社製、固有粘度0.6)をTダイを備えた押出機(75mm径、L/Dが45の緩圧縮タイプ単軸スクリュー)を用いて、シンリンダー温度260℃、Tダイ温度280℃でシート状に押出し、表面温度25℃に調節された冷却ロール上に密着させて急冷し、厚み500μmの未延伸フィルムとした。続いて、未延伸フィルムを90℃で縦方向に3.4倍延伸させた後、グラビアコート機を用いて、酸変性ポリブタジエン水性分散体T−4と、オキサゾリン化合物の水性溶液(日本触媒社製、エポクロス WS−700、固形分濃度25質量%)とを、酸変性ポリブタジエン100質量部に対して、オキサゾリン化合物固形分の量が20質量部となるように混合した液状物を、乾燥、延伸後の塗布量が0.1g/mになるように塗布し、次に温度90℃で2秒間予熱した後、240℃で横方向に3.5倍の倍率で延伸し、離型シートを得た。得られたポリエステルフィルムと樹脂層を合わせた厚みは50μmであり、樹脂層の厚みは、0.05μmであった。
【0058】
実施例12
実施例11おいて、オキサゾリン化合物の水性溶液に代えて、カルボジイミド化合物の水性分散体(日清紡社製、カルボジライト E−02、固形分濃度40質量%)を用い、酸変性ポリブタジエン100質量部に対して、カルボジイミド化合物固形分の量が20質量部となるようにした以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。
【0059】
実施例13
実施例11において、酸変性ポリブタジエン水性分散体T−4に代えて、酸変性ポリイソプレン水性分散体T−5を用いて、酸変性ポリイソプレン100質量部に対して、オキサゾリン化合物固形分の量が5質量部となるようにした以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。
【0060】
実施例14
実施例13において、酸変性ポリイソプレン100質量部に対して、オキサゾリン化合物固形分の量が1質量部とした以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。
【0061】
比較例1
実施例1において、酸変性ポリブタジエン水性分散体T−1に代えて、酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1を用いて、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、オキサゾリン化合物固形分の量が5質量部となるように変えた以外は同様の操作を行って離型シートを得た。
【0062】
比較例2
酸変性ポリブタジエン水性分散体T−1を、二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(ユニチカ社製、エンブレット S−50)のコロナ処理面に、マイヤーバーを用いて塗布した後、120℃で15秒間乾燥させることで、フィルム上に0.2μmの樹脂層を形成した離型シートを得た。
【0063】
比較例3
実施例2において、酸変性ポリブタジエン水性分散体T−1に代えて、酸変性ポリイソプレン水性分散体T−2を用いた以外は同様の操作を行って、離型シートを得た。
【0064】
比較例4
実施例1において、酸変性ポリブタジエン100質量部に対して、オキサゾリン化合物固形分の量が60質量部になるようにした以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。
【0065】
比較例5
実施例4において、酸変性ポリブタジエン100質量部に対して、カルボジイミド化合物固形分の量が60質量部になるようにした以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。
【0066】
比較例6
酸変性されていないポリブタジエン(日本曹達社製、B−1000)を、二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(ユニチカ社製、エンブレット S−50)のコロナ処理面に、0.2μmになるように樹脂層を形成した離型シートを得た。
【0067】
実施例、比較例で得られた離型シートについて、剥離強度を測定した結果を表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
実施例1〜14で得られた、酸変性ポリブタジエンまたは酸変性ポリイソプレン100質量部に対して架橋剤を1〜50質量部含有する樹脂層を形成した離型シートは、離型性に優れるものであった。なかでも、酸変性ポリイソプレンを使用したものは、高温で放置後も剥離強度に大きな変化が見られず、好ましいものであり、またこれと少量のオキサゾリン化合物とを組み合わせたものは優れた離型性を示し、特に好ましいものであった。
比較例1に示すように、酸変性ポリブタジエンや酸変性ポリイソプレン以外の樹脂を使用したものは剥離強度がやや大きく、粘着材料の離型シートとして使用するには不十分な離型性であった。比較例2、3に示すように、架橋剤を使用しない場合、特に経時的に離型性が変化しやすいものであった。さらに比較例4、5に示すように、本発明で規定する範囲を超える量の架橋剤を使用した場合、離型性が低いものであった。比較例6に示すように、酸変性されていないポリブタジエンを用いた場合、基材との密着性が非常に低いために、基材と樹脂層の間で剥離してしまい、樹脂層は粘着テープ側に全面的に移行し、離型シートとして使用することができないものであった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に樹脂層を設けてなる離型シートであって、樹脂層が、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレン100質量部と、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、メラミン化合物から選ばれる少なくとも一つを含む架橋剤1〜50質量部とを含有することを特徴とする離型シート。
【請求項2】
粘着材料に対して使用され、樹脂層と粘着材料の剥離強度が、0.5N/cm以下であることを特徴とする請求項1記載の離型シート。
【請求項3】
基材が樹脂材料、紙、合成紙、布、金属材料、ガラス材料のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載の離型シート。
【請求項4】
樹脂材料がポリエステル樹脂フィルムであることを特徴とする請求項3記載の離型シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の離型シートの製造方法であって、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレン100質量部と、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、メラミン化合物から選ばれる少なくとも一つを含む架橋剤1〜50質量部とを含有し、水性媒体に分散された液状物を、基材上に塗布した後、乾燥することにより、樹脂層を形成することを特徴とする離型シートの製造方法。
【請求項6】
請求項4記載の離型シートの製造方法であって、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレン100質量部と、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、メラミン化合物から選ばれる少なくとも一つを含む架橋剤1〜50質量部とを含有し、水性媒体に分散された液状物を、未延伸または一軸延伸ポリエステル樹脂フィルム上に塗布した後、乾燥、フィルムとともに配向延伸することにより、樹脂層を形成することを特徴とする離型シートの製造方法。



【公開番号】特開2012−152965(P2012−152965A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12443(P2011−12443)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】