説明

離型シートおよびその製造方法

【課題】粘着材料との離型性に優れ、また帯電防止性能にも優れ、かつ、製造が容易である離型シートを提供する。
【解決手段】基材上に機能層を設けてなる離型シートであって、機能層が、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレン100質量部と、酸化スズ系化合物10〜2000質量部とを含有することを特徴とする離型シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型シートに関するものであり、特に、粘着材料との離型性および帯電防止性に優れた離型シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、粘着シートなどの粘着材料は、多岐に渡る分野、用途、形式で広く使用されている。粘着シートは、その粘着剤層を保護するために、使用時まで離型シートが積層されている。離型シートは、基材上に離型剤を塗布した離型層が設けられている。
離型シート用の離型剤としては、シリコーン系の離型剤が多く使用されている。しかし、シリコーン系の離型剤は、離型性に大変優れるものの、シリコーン離型剤中に含まれる低分子量のシリコーン化合物が、粘着シートの粘着剤表面に移行することにより、粘着剤の粘着力が低下したり、またシリコーン化合物が移行した粘着シートを使用することによって被着体の電子部品がトラブルを起こすおそれがあることが指摘されている。
【0003】
さらに、離型シートには、粘着剤との離型性だけでなく、帯電防止性、透明性などの性能が求められることも多い。すなわち、粘着シートに積層されている離型シートを剥離した場合、剥離面に静電気が発生し、大気中のごみや塵、埃等の異物が、粘着シートの表面に付着しやすくなり、付着した異物が製品の欠陥となったり、粘着シートの粘着力が低下する問題がある。したがって、離型シートには、離型性以外にも、帯電防止性を併せ持つことが求められていた。
その要求に応える方法として、例えば、特許文献1には、予め帯電防止処理を施したフィルム上に離型剤を塗布して離型シートを得る方法や、特許文献2には、離型性と帯電防止機能を併せ持つ機能層を形成して離型シートを得る方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1の離型シートは、帯電防止層と離型層を別々の工程で形成するので、工程が増加し、コストアップとなるものであった。さらに、離型層を形成するためにシリコーン離型剤を使用するので、前述の低分子量シリコーン化合物の移行の問題も解決できていないものであった。
また、特許文献2の離型シートは、帯電防止性と離型性を一つの工程で付与することができ、コスト面で優れたものであったが、粘着剤に対してはやや剥離しにくい傾向があり、粘着シートに対して使用するには離型性の面で不充足感があり、また粘着シートの品質を損ねてしまう可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−1293号公報
【特許文献2】特開2010−158816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これらの問題に鑑み、粘着材料との離型性に優れ、また帯電防止性能にも優れ、かつ、製造が容易である離型シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、基材上に、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンと、酸化スズ系化合物とを含有する機能層を積層することにより、離型性と帯電防止性に優れた離型シートが得られることを見出し、本発明に達した。
すなわち本発明の要旨は、次のとおりである。
(1)基材上に機能層を設けてなる離型シートであって、機能層が、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレン100質量部と、酸化スズ系化合物10〜2000質量部とを含有することを特徴とする離型シート。
(2)粘着材料に対して使用され、機能層と粘着材料との剥離強度が、0.5N/cm以下であることを特徴とする(1)記載の離型シート。
(3)機能層の表面抵抗率が、1012Ω/□以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の離型シート。
(4)基材がポリエステル樹脂フィルムであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の離型シート。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の離型シートの製造方法であって、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレン100質量部と、酸化スズ系化合物10〜2000質量部とを含有する水性分散体を、基材上に塗布した後、乾燥することにより、機能層を形成することを特徴とする離型シートの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の離型シートは、樹脂と酸化スズ系化合物とを含有する水性分散体を、基材上に塗布した後、乾燥することにより容易に製造することができる。また本発明の離型シートを用いることにより、粘着材料の粘着剤表面を保護することができ、粘着材料の使用時において離型シートを剥離する際にも、簡単に粘着材料の品質を損なわずに剥離することができる。さらに、剥離の際に静電気が生じにくく、埃等が粘着材料に付着しにくいという効果も併せ持つ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の離型シートは、基材と、この基材上に設けられた機能層とを有する。そして機能層は、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンと、酸化スズ系化合物とを含有する。
本発明において、機能層を構成する酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンは、機能層に離型性を付与するだけでなく、酸化スズ系化合物を基材に固着させるためのバインダとしての機能も果たす。
【0009】
酸変性ポリブタジエンにおけるブタジエンの骨格は、1,2−ビニル型、1,4−トランス型、または1,4−シス型のいずれの構造を有するものでよく、これらの混合物であってもよく、その比率も特に限定されない。
【0010】
酸変性ポリブタジエンの酸変性成分としては、不飽和カルボン酸が使用でき、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸が好ましく、入手のし易さからマレイン酸、無水マレイン酸が特に好ましい。
酸変性ポリブタジエン中の不飽和カルボン酸の含有量は、基材への密着性が得られやすいという観点および後述する酸変性ポリブタジエンの水性分散体を得やすいという観点から、酸変性ポリブタジエンの酸価として1〜400mgKOH/gが好ましく、30〜300mgKOH/gがより好ましく、50〜300mgKOH/gがさらに好ましく、基材との密着性や離型性の観点から、70〜250mgKOH/gが特に好ましい。
酸変性ポリブタジエンの酸価が1mgKOH/g未満の場合、機能層は、基材との密着性が低下することにより、粘着剤表面に移行する可能性があるだけでなく、酸変性ポリブタジエンの水性分散体を得ることが困難になることがある。一方、酸価が400mgKOH/gを超える場合、粘着剤と強く密着することにより離型性が低下してしまう可能性がある。
また、不飽和カルボン酸成分は、酸変性ポリブタジエン中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)等が挙げられる。
【0011】
酸変性ポリブタジエンの数平均分子量は、200〜20000が好ましく、500〜10000がより好ましい。数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0012】
酸変性ポリブタジエンは、ポリブタジエンを不飽和カルボン酸変性して得られるが、市販のものを用いるのが簡便である。市販のものとしては、例えば、日本曹達社製マレイン化ブタジエン(BN−1010等)、JX日鉱日石エネルギー社製マレイン化ブタジエン(M−1000−20、M−1000−80、M−2000−20、M−2000−80等)、エボニック・デグサ社製マレイン化ブタジエン(polyvest OC800S、OC1200S等)を使用することができる。
【0013】
一方、酸変性ポリイソプレンにおけるイソプレンの骨格は、1,2−ビニル型、3,4−ビニル型、1,4−シス型、1,4−トランス型のいずれの構造を有するものでもよく、これらの混合物であってもよい。
【0014】
酸変性ポリイソプレンの酸変性成分としては、不飽和カルボン酸が使用でき、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸が好ましく、入手のし易さからマレイン酸、無水マレイン酸が特に好ましい。
酸変性ポリイソプレン中の不飽和カルボン酸の含有量は、基材との密着性の観点および後述する酸変性ポリイソプレンの水性分散体を得やすいという観点から、酸変性ポリイソプレンの酸価として1〜400mgKOH/gが好ましく、3〜300mgKOH/gがより好ましく、4〜200mgKOH/gがさらに好ましく、基材との密着性や離型性の観点から、5〜100mgKOH/gが特に好ましい。
酸変性ポリイソプレンの酸価が1mgKOH/g未満の場合、機能層は、基材との密着性が低下することにより、粘着剤表面に移行する可能性があるだけでなく、酸変性ポリイソプレンの水性分散体を得ることが困難になることがある。一方、酸価が400mgKOH/gを超える場合、粘着剤と強く密着することにより離型性が低下してしまう可能性がある。
また、不飽和カルボン酸成分は、酸変性ポリイソプレン中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)等が挙げられる。
【0015】
酸変性ポリイソプレンの数平均分子量は、200〜100000が好ましく、3000〜70000がより好ましく、10000〜50000がさらに好ましい。数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0016】
酸変性ポリイソプレンは、ポリイソプレンを不飽和カルボン酸変性して得られるが、市販のものを用いるのが簡便である。市販のものとしては、例えば、クラレ社製無水マレイン酸変性ポリイソプレン「LIR−403」、「LIR−410」などを使用することができる。
【0017】
本発明の離型シートの機能層は、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンと酸化スズ系化合物とを含有する。
酸化スズ系化合物としては、例えば、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、酸化スズドープインジウムなどが挙げられる。
【0018】
酸化スズ系化合物の粒子径は特に限定されるものではないが、超微粒子であることが好ましい。本発明において、超微粒子とは、数平均粒子径が200nm以下のものを意味する。酸化スズ系化合物の数平均粒子が200nmを超える場合、水性分散体としての安定性や機能層の透明性が低下する場合がある。酸化スズ系化合物の数平均粒子径は、動的光散乱法や電子顕微鏡によって測定される。
【0019】
酸化スズ系化合物の製造方法は特に限定されないが、たとえば、金属スズやスズ化合物を加水分解または熱加水分解する方法や、スズイオンを含む酸性溶液をアルカリ加水分解する方法、スズイオンを含む溶液をイオン交換膜やイオン交換樹脂によりイオン交換する方法など何れの方法も用いることができる。
また、酸化スズ系化合物は市販のものを使用することもできる。例えば、酸化スズ超微粒子水分散体としては、ユニチカ社製「AS11T」、アンチモンドープ酸化スズ系超微粒子水分散体としては、石原産業社製「SN−100D」、酸化スズドープインジウム超微粒子としては、シーアイ化成社製「ITO」などが挙げられる。
【0020】
酸化スズ系化合物の含有量は、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレン100質量部に対して、10〜2000質量部であることが必要であり、30〜1000質量部であることがより好ましく、50〜800質量部であることがさらに好ましい。酸変性ポリブタジエンや酸変性ポリイソプレンは離型性に優れる反面、樹脂が非常に柔らかく、べたつきやすいため、酸化スズ系化合物の含有量が少なすぎると、帯電防止性能が不十分となるだけでなく、離型性能が経時的に変化しやすいという問題が起こる場合がある。酸化スズ系化合物が多いほうが、帯電防止性能に優れるものの、多すぎると、離型性能が低下したり、基材との密着性が低下するという問題が起こる場合がある。
【0021】
本発明の離型シートの基材としては、樹脂材料、紙、合成紙、布、金属材料、ガラス材料等で形成されたものが挙げられる。基材の厚みは、特に限定されるものではないが、通常は1〜1000μmであればよく、1〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましく、12〜150μmが特に好ましい。
【0022】
基材に用いることができる樹脂材料としては、例えば熱可塑性樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル樹脂;ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリスチレン樹脂;ナイロン6、ポリ−m−キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)等のポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアクリルニトリル樹脂;ポリイミド樹脂;これらの樹脂の複層体(例えば、ナイロン6/MXD6ナイロン/ナイロン6、ナイロン6/エチレン−ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体等が挙げられる。樹脂材料は延伸処理されていてもよい。中でも、基材は、機械的特性および熱的特性に優れるポリエステル樹脂フィルムが好ましく、安価で入手が容易という点からポリエチレンテレフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0023】
上記熱可塑性樹脂フィルムは、公知の添加剤や安定剤、例えば可塑剤、滑剤、酸化防止剤などを含んでいてもよい。熱可塑性樹脂フィルムは、その他の材料と積層する場合の密着性を良くするために、表面に前処理としてコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、薬品処理、溶剤処理等を施したものでもよい。また、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよく、バリア層や易接着層、紫外線吸収層などの他の層が積層されていてもよい。
本発明の離型シートを構成する機能層は、帯電防止性能を有する酸化スズ系化合物を含有するが、離型シートを構成する基材にも、帯電防止剤を含有したり、帯電防止層を積層して、帯電防止性能を付与することが好ましい。
【0024】
基材として用いることができる紙としては、和紙、クラフト紙、ライナー紙、アート紙、コート紙、カートン紙、グラシン紙、セミグラシン紙等を挙げることができる。紙には、目止め層などが設けてあってもよい。
基材として用いることができる合成紙は、その構造は特に限定されず、単層構造であっても多層構造であってもよい。多層構造としては、例えば基材層と表面層の2層構造、基材層の表裏面に表面層が存在する3層構造、基材層と表面層の間に他の樹脂フィルム層が存在する多層構造を例示することができる。各層は、無機や有機のフィラーを含有していてもよいし、含有していなくてもよい。微細なボイドを多数有する微多孔性合成紙も使用することができる。
基材として用いることができる布としては、上述した合成樹脂からなる繊維や、木綿、絹、麻などの天然繊維からなる不織布、織布、編布などが挙げられる。
基材として用いることができる金属材料としては、アルミ箔や銅箔などの金属箔や、アルミ板や銅板などの金属板などが挙げられる。
基材として用いることができるガラス材料としては、ガラス板やガラス繊維からなる布などが挙げられる。
【0025】
離型シートにおける機能層の厚みは、0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがより好ましく、0.1〜0.5μmであることがさらに好ましく、0.1〜0.3μmであることが特に好ましい。機能層の厚みが0.01μm未満では十分な離型性が得られず、厚みが5μmを超える場合はコストアップとなるだけでなく、離型性が低下したり、離型シートをロール状に巻いた場合にブロッキングする場合がある。
【0026】
本発明の離型シートは、基材の一方の面に機能層が積層されていればよいが、必要に応じて基材の両面に機能層が積層されていてもよい。特に、基材の両面に、それぞれ離型性の異なる機能層を積層した離型シートは、粘着材料に貼り付け、粘着材料をロール状にした場合に、粘着材料によるブロッキングを防止することができ、また使用時に粘着材料を巻き出す際には、一方の面のみから粘着材料を巻き出すことができ、被着体に貼り付けた後、離型シートを剥離して使用することができるという利点が得られる。
【0027】
本発明の離型シートを粘着材料に対して使用した場合、粘着材料を貼り付けて、放置した後の機能層と粘着材料との間の剥離強度を、0.5N/cm以下とすることができ、より好ましくは0.4N/cm以下、さらに好ましくは0.3N/cm以下、最も好ましくは0.2N/cm以下とすることができる。粘着材料との剥離強度が0.5N/cmを超える場合、粘着材料用の離型シートとして使用することが困難となることがある。
【0028】
本発明において、機能層の表面抵抗率は、1012Ω/□以下であることが好ましく、1011Ω/□であることがより好ましく、1010Ω/□以下であることがさらに好ましい。機能層の表面抵抗率が、1012Ω/□を超える場合は、帯電防止性が十分でないため、静電気を帯びやすい。その結果、大気中の塵や埃が付着することにより、製品に欠陥が生じたり、粘着剤の粘着力が低下したりする可能性がある。
【0029】
本発明において、機能層を基材上に積層する方法は、特に限定されないが、例えば、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンと、酸化スズ系化合物と、媒体とを含む液状物を作成し、この液状物を基材に塗布して媒体を乾燥させる方法が機能層の厚みを均一にしやすく、大量生産が可能という点で好ましい。さらに、地球環境や作業者の健康を考慮するという点で、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンと酸化スズ系化合物が水性媒体に分散された水性分散体を使用することが好ましい。
【0030】
酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンを水性媒体に分散させ、水性分散体を得る方法は特に限定されないが、例えば、密閉可能な容器に酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレン、有機溶剤、水などの原料を投入し、槽内の温度を40〜150℃程度の温度に保ちつつ攪拌を行うことにより、水性分散体とする方法などが挙げられる。例えば、国際公開02/055598号パンフレットに記載された方法が挙げられ、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンを水性媒体中で塩基性化合物を用いて中和することにより、良好な水性分散体が得られる。
【0031】
上記塩基性化合物は、機能層形成後の塗膜の耐水性の点から、揮発性であることが好ましい。本発明において、「揮発性」とは常圧における沸点が250℃以下であることを指すものとする。沸点が250℃を超えると、樹脂塗膜から乾燥によって塩基性化合物を飛散させることが困難になり、塗膜の耐水性が低下する場合がある。
揮発性の塩基性化合物としては、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げることができる。
【0032】
本発明でいう水性媒体とは、水を主成分とする媒体であって、有機溶剤や水溶性の塩基性化合物を含有していてもよい。
有機溶剤としては、ジエチルケトン(3−ペンタノン)、メチルプロピルケトン(2−ペンタノン)、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)、2−ヘキサノン、5−メチル−2−ヘキサノン、2−へプタノン、3−へプタノン、4−へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、ベンゼン、ソルベッソ100、ソルベッソ150等の芳香族炭化水素類、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等の脂肪族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン等の含ハロゲン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、イソホロン等のエステル類、加えて後述の親水性の有機溶剤などが挙げられる。
【0033】
親水性の有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−tert−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセトニトリル等が挙げられ、水溶性の塩基性化合物の具体例としては、アンモニアを含む、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−ジエタノールアミン、3−メトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン等の有機アミン化合物等を挙げることができる。
【0034】
水性分散体中の酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレン粒子の数平均粒子径(以下、mn)は、水性分散体の保存安定性、塗膜の透明性、30℃以下の低温での造膜性が向上する点から、いずれも0.5μm以下が好ましく、0.005〜0.3μmがより好ましく、0.01〜0.2μmがさらに好ましく、0.01〜0.1μmが特に好ましい。さらに、重量平均粒子径(以下、mw)に関しては、1μm以下が好ましく、0.01〜0.5μmがより好ましく、0.01〜0.2μmが特に好ましい。
【0035】
酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンと酸化スズ系化合物を混合する方法は、各成分が液状媒体中に均一に混合される方法であれば、特に限定されない。例えば、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンの分散液に、酸化スズ系化合物の分散液を添加して混合する方法や、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレンと酸化スズ系化合物との混合物を同時に液状化する方法が挙げられる。
本発明で使用される液状物における固形分の含有率は、積層条件、目的とする厚さや性能等により適宜選択することができ、特に限定されるものではない。しかし、液状物の粘度を適度に保ち、かつ良好な機能層を形成させるためには、固形分の含有率は1〜50質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましい。
【0036】
さらに、液状物に、必要に応じて架橋剤、レベリング剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤等の各種薬剤や、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料あるいは染料を添加してもよい。また、液状物の安定性を損なわない範囲で上記以外の有機もしくは無機の化合物を液状物に添加することもできる。
【0037】
上記のような液状物を用いて基材に塗布する方法としては、公知の方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等により基材表面に均一に塗布する方法が挙げられ、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥処理又は乾燥のための加熱処理に供することにより、均一な機能層を基材に密着させて形成することができる。
【0038】
本発明の離型シートは、様々な材料に対して良好な離型性を有することから、様々な材料に対して使用することができるが、特に粘着材料に対して好適に使用することができる。
粘着材料としては、粘着シート、接着シート、粘着テープ、接着テープなどが挙げられ、基材に粘着剤が積層されたもの、または、粘着剤の樹脂成分そのものをシート状にしたものでもよい。粘着剤の成分や基材は特に限定されない。粘着剤としては、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤などが挙げられる。粘着剤には、ロジン系、クマロン−インデン系、テルペン系、石油系、スチレン系、フェノール系、キシレン系などの粘着付与剤が含まれていてもよい。基材としては、上述の紙、布、樹脂材料などが挙げられる。
粘着材料に対して、本発明の離型シートを用いる方法としては、特に限定されないが、具体的には、粘着剤を溶解した液状物などを離型シート上に塗布し、乾燥させて離型シート上に粘着材料を積層する方法や、基材上に粘着剤を塗布した粘着材料に対して離型シートを貼り合せる方法などが挙げられる。また、剥離力を調整した2種の離型シートを、粘着材料の両面にそれぞれ貼り合わせて、粘着材料の両面に対して使用することもできる。このように両面を保護した粘着材料は、使用する際に片側の離型シートを剥がして被着体に貼り合わせ、その後、もう片側の離型シートが剥離される。
【実施例】
【0039】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0040】
(1)樹脂の酸価
樹脂0.15gを20mlのテトラヒドロフランに溶解し、クレゾールレッドを指示薬としてKOH水溶液で滴定を行い、中和に消費されたKOHのmg数から樹脂中の酸価(mgKOH/g)を求めた。
【0041】
(2)水性分散体の固形分濃度
水性分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、固形分濃度を求めた。
【0042】
(3)水性分散体の平均粒子径
日機装社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340、動的光散乱法)を用い、数平均粒子径(mn)および重量平均粒子径(mw)を求めた。ここで、粒子径算出に用いる樹脂の屈折率は1.50とした。
【0043】
(4)機能層の厚み
得られた離型シートの全体の厚さを接触式膜厚計により測定し、その測定値から基材フィルムの厚さを減じて求めた。
【0044】
(5)剥離強度(常温)
得られた離型シートの樹脂層側に、巾50mm、長さ150mmのポリエステル粘着テープ(日東電工社製、No.31B/アクリル系粘着剤)をゴムロールで圧着して、剥離強度測定用試料とした。この剥離強度測定用試料の、粘着テープと離型シートとの剥離強度を、25℃の恒温室で、引張試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機、2020型)にて測定した。剥離角度は180℃、剥離速度は300mm/分とした。
【0045】
(6)剥離強度(常温−24時間経過後)
得られた離型シートの樹脂層側に、巾50mm、長さ150mmのポリエステル粘着テープ(日東電工社製、No.31B/アクリル系粘着剤)をゴムロールで圧着して、試料とした。試料を、金属板/ゴム板/試料/ゴム板/金属板の形で挟み、2kPa荷重、25℃の雰囲気で24時間放置し、剥離強度測定用試料を得た。この剥離強度測定用試料の、粘着テープと離型シートとの剥離強度を、25℃の恒温室で、引張試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機、2020型)にて測定した。剥離角度は180℃、剥離速度は300mm/分とした。
【0046】
(7)剥離強度(70℃−24時間経過後)
得られた離型シートの樹脂層側に、巾50mm、長さ150mmのポリエステル粘着テープ(日東電工社製、No.31B/アクリル系粘着剤)をゴムロールで圧着して、試料とした。試料を、金属板/ゴム板/試料/ゴム板/金属板の形で挟み、2kPa荷重、70℃の雰囲気で24時間放置し、剥離強度測定用試料を得た。この剥離強度測定用試料の、粘着テープと離型シートとの剥離強度を、25℃の恒温室で、引張試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機、2020型)にて測定した。剥離角度は180℃、剥離速度は300mm/分とした。
【0047】
(8)離型シートの帯電防止性
JIS−K6911に基づいて、アドバンテスト社製デジタル超高抵抗/微小電流計、R8340を用いて、離型シートの機能層の表面抵抗値を、温度23℃、湿度65%雰囲気下で測定した。
【0048】
参考例1
(酸変性ポリブタジエン水性分散体T−1の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリブタジエン(エボニック・デグサ社製、polyvest OC800S、数平均分子量2400、酸価70〜90mgKOH/g)、60.0gのイソプロパノール(和光純薬社製、以下、IPA)、15gのトリエチルアミン(和光純薬社製、以下、TEA)および165gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ系は乳白色になった。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を80℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリブタジエン水性分散体T−1を得た。
【0049】
参考例2
(酸変性ポリイソプレン水性分散体T−2の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリイソプレン(クラレ社製、クラプレン LIR−403、数平均分子量34000、酸価9〜11mgKOH/g)、60.0gのIPA、15gのTEAおよび165gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌しながら、加熱し、系内温度を120℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリイソプレン水性分散体T−2を得た。
【0050】
参考例3
(酸変性ポリイソプレン水性分散体T−3の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの酸変性ポリイソプレン(クラレ社製、クラプレン LIR−410、数平均分子量30000、酸価23〜30mgKOH/g)、60.0gのIPA、15gのTEAおよび165gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ系は乳白色になった。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を120℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一な酸変性ポリイソプレン水性分散体T−3を得た。
【0051】
参考例4
(酸変性ポリオレフィン水性分散体E−1の製造)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gの無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂(アルケマ社製、ボンダイン LX−4110)、90.0gのIPA、3.0gのTEAおよび147.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込んだ。そして、撹拌翼の回転速度を300rpmとし、系内温度を140〜145℃に保って、30分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度300rpmのまま撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。さらに、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧ろ過(空気圧0.2MPa)した。これによって、乳白色の均一な酸変性ポリオレフィン樹脂水性分散体E−1を得た。
【0052】
参考例1〜4で製造した水性分散体の組成、平均粒子径を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
実施例1
酸化スズ超微粒子分散体(ユニチカ社製 AS11T、固形分濃度11.5質量%、数平均粒子径9.8nm)に、IPAを得られる水性分散体の20質量%になるように加え、攪拌することで、透明な水性分散体を得た。これに、酸変性ポリブタジエン水性分散体T−1を、酸変性ポリブタジエン樹脂固形分100質量部に対して、酸化スズ超微粒子が800質量部となるように添加し、攪拌することによって、酸変性ポリブタジエンと酸化スズ超微粒子とを含有した水性分散体を得た。その固形分濃度は9.5質量%であった。
得られた水性分散体を、二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(ユニチカ社製 エンブレット S−50、厚さ50μm)のコロナ処理面に、マイヤーバーを用いて塗布した後、120℃で15秒間乾燥させることで、フィルム上に0.1μmの機能層を形成した離型シートを得た。
【0055】
実施例2
実施例1において、酸変性ポリブタジエン100質量部に対して、酸化スズ超微粒子が400質量部となるようにした以外は、同様の操作を行って、離型シートを得た。
【0056】
実施例3
実施例1において、酸変性ポリブタジエン水性分散体T−1に代えて、酸変性ポリイソプレン水性分散体T−2を用いた以外は、同様の操作を行って、離型シートを得た。
【0057】
実施例4
実施例3において、酸変性ポリイソプレン100質量部に対して、酸化スズ超微粒子が2000質量部となるようにした以外は、同様の操作を行って、離型シートを得た。
【0058】
実施例5
実施例3において、酸変性ポリイソプレン100質量部に対して、酸化スズ超微粒子が1500質量部となるようにした以外は、同様の操作を行って、離型シートを得た。
【0059】
実施例6
実施例3において、酸変性ポリイソプレン100質量部に対して、酸化スズ超微粒子が400質量部となるようにした以外は、同様の操作を行って、離型シートを得た。
【0060】
実施例7
実施例3において、酸変性ポリイソプレン100質量部に対して、酸化スズ超微粒子が100質量部となるようにした以外は、同様の操作を行って、離型シートを得た。
【0061】
実施例8
実施例3において、酸変性ポリイソプレン100質量部に対して、酸化スズ超微粒子が50質量部となるようにした以外は、同様の操作を行って、離型シートを得た。
【0062】
実施例9
実施例1において、酸変性ポリブタジエン水性分散体T−1に代えて、酸変性ポリイソプレン水性分散体T−3を用いた以外は、同様の操作を行って、離型シートを得た。
【0063】
実施例10
実施例9において、酸変性ポリイソプレン100質量部に対して、酸化スズ超微粒子が1500質量部となるようにした以外は、同様の操作を行って、離型シートを得た。
【0064】
実施例11
実施例2において、酸化スズ超微粒子分散体AS11Tに代えて、アンチモンドープ酸化スズ超微粒子分散体(石原産業社製 SN−100D、固形分濃度30.0質量%、数平均粒子径60nm)を用いた以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。
【0065】
実施例12
実施例3において、酸化スズ超微粒子分散体AS11Tに代えて、アンチモンドープ酸化スズ超微粒子分散体(石原産業社製 SN−100D、固形分濃度30.0質量%、数平均粒子径60nm)を用いた以外は、同様の操作を行って離型シートを得た。
【0066】
実施例13
実施例12において、酸変性ポリイソプレン100質量部に対して、アンチモンドープ酸化スズ超微粒子が10質量部となるようにした以外は、同様の操作を行って、離型シートを得た。
【0067】
比較例1
酸変性ポリブタジエン水性分散体T−1を、二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(ユニチカ社製 エンブレット S−50、厚さ50μm)のコロナ処理面に、マイヤーバーを用いて塗布した後、120℃で15秒間乾燥させることで、フィルム上に0.1μmの層を形成した積層フィルムを得た。
【0068】
比較例2
比較例1において、酸変性ポリブタジエン水性分散体T−1に代えて、酸変性ポリイソプレン水性分散体T−2を用いた以外は、同様の操作を行って、積層フィルムを得た。
【0069】
比較例3
実施例3において、酸変性ポリイソプレン100質量部に対して、酸化スズ超微粒子が5質量部となるようにした以外は、同様の操作を行って、離型シートを得た。
【0070】
比較例4
実施例3において、酸変性ポリイソプレン100質量部に対して、酸化スズ超微粒子が2100質量部となるようにした以外は、同様の操作を行って、離型シートを得た。
【0071】
比較例5
酸化スズ超微粒子分散体(ユニチカ社製 AS11T、固形分濃度11.5質量%、数平均粒子径9.8nm)に、IPAを得られる水性分散体の20質量%になるように加え、撹拌することで、透明な水性分散体を得た。
得られた水性分散体を、二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム(ユニチカ社製 エンブレット S−50、厚さ50μm)のコロナ処理面に、マイヤーバーを用いて塗布した後、120℃で15秒間乾燥させることで、フィルム上に0.1μmの層を形成した積層フィルムを得た。
【0072】
比較例6
実施例1において、酸変性ポリブタジエン水性分散体T−1に代えて、酸変性ポリオレフィン水性分散体E−1を用いた以外は、同様の操作を行って、積層フィルムを得た。
【0073】
比較例7
実施例1において、酸化スズ超微粒子AS11Tの代わりに、導電性カーボン分散液(ライオン社製 W―310A、固形分濃度17.5質量%)を添加した以外は、同様の操作を行って、積層フィルムを得た。
【0074】
実施例1〜13で得られた離型シートおよび比較例1〜7で得られた積層フィルムについての評価結果を表2に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
実施例1〜13で得られた、酸変性ポリブタジエンまたは酸変性ポリイソプレン100質量部と、酸化スズ系化合物10〜2000質量部とを含有する機能層を積層した離型シートは、離型性および帯電防止性に優れるものであった。
比較例1、2に示すように、酸変性ポリブタジエンや酸変性ポリイソプレンを含有するが、酸化スズ系化合物を含有しない層の場合、帯電防止性に劣るのみならず、離型性も経時的に変化するものであった。また、比較例3に示すように、酸化スズ系化合物の含有量が少なすぎる場合も、同じく帯電防止性能が十分でなく、かつ離型性能が経時的に変化するものであった。一方、比較例4に示すように、酸化スズ系化合物の含有量が多すぎる場合、帯電防止性がさらに向上しないばかりか、かえって離型性能が低下した。
比較例5に示すように、酸化スズ系化合物のみを含み、酸変性ポリブタジエンや酸変性ポリイソプレンを含まない層の場合、帯電防止性には優れるものの、離型性を有しないものであった。比較例6に示すように、酸変性ポリオレフィンと酸化スズ系化合物を含む層の場合、帯電防止性は有するものの、離型性に劣るものであった。比較例7に示すように、酸化スズ系化合物以外の帯電防止成分を用いた場合、基材との密着性が不十分であり、離型シートとして使用できないものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に機能層を設けてなる離型シートであって、機能層が、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレン100質量部と、酸化スズ系化合物10〜2000質量部とを含有することを特徴とする離型シート。
【請求項2】
粘着材料に対して使用され、機能層と粘着材料との剥離強度が、0.5N/cm以下であることを特徴とする請求項1記載の離型シート。
【請求項3】
機能層の表面抵抗率が、1012Ω/□以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の離型シート。
【請求項4】
基材がポリエステル樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の離型シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の離型シートの製造方法であって、酸変性ポリブタジエンおよび/または酸変性ポリイソプレン100質量部と、酸化スズ系化合物10〜2000質量部とを含有する水性分散体を、基材上に塗布した後、乾燥することにより、機能層を形成することを特徴とする離型シートの製造方法。



【公開番号】特開2012−171153(P2012−171153A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34069(P2011−34069)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】