説明

離型フィルムおよびそれを用いた積層体

【課題】本発明の目的は、有機溶剤を含有するシリコーン化合物のコーティング工程を必要としなくとも、離型性に優れ、かつ筆記性が改善された離型フィルムを提供する。
【解決手段】オレフィン系重合体93〜99.99重量%、ポリジメチルシロキサン0.01〜7重量%から構成される離型性樹脂組成物からなる離型フィルムの表面を、アクリルゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン系ゴム及びブチルゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴムと240時間以上接触することにより得られることを特徴とする筆記性が改良された離型フィルムを製造し、用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は離型性樹脂組成物を含む離型フィルムに関するものである。更に詳しくは、粘着剤などに対する優れた離型性を損なわず離型層表面の筆記性を改良した離型フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
離型フィルムは、未使用時の接着材料の接着面を保護するために接着面上に積層され、使用時には接着面を損傷することなく容易に剥離される剥離面を備えるフィルム状材料であり、粘着テープやラベルなどの台紙として広く使用されている。離型フィルムは通常、基材と、その基材の少なくとも一方の表面上に設けられた離型剤を含んでなる離型層とを備えている。基材には、紙、プラスチックフィルム等が使用され、離型剤には、シリコーン化合物、長鎖アルキル基含有化合物等が使用される。このような離型フィルムにおいて、離型剤が基材と十分密着していない場合、離型フィルムからテープやラベルを剥離した際にテープやラベルの粘着剤表面に離型剤が転写し、テープやラベルの粘着性を悪化させる場合がある。
【0003】
このため、離型フィルムの製造方法としては、基材にビニル基含有ポリジメチルシロキサンなどの離型剤をコーティングした後、離型剤を硬化させる方法が一般的である。しかしながら、本方法では離型剤を均一に塗布するため有機溶剤が大量に用いられることや、離型剤を硬化させる際基材が高温に晒されるため、ピンホールが発生するなどといった問題が生じていた。
【0004】
このため、コーティングする方法ではなく基材となるプラスチックに離型性を付与する方法が提案されている。
【0005】
そこで、本発明者は、コーティングする方法ではなく基材となるプラスチックに離型性を付与する方法として、オレフィン系重合体に特定のエポキシ当量を示すポリジメチルシロキサンを少量配合した樹脂組成物、および該オレフィン系重合体表面を酸化処理した離型フィルムを提案した(特許文献1参照)。
【0006】
この方法によれば、オレフィン系重合体とポリジメチルシロキサンの密着が良好であるものの、離型フィルム表面にマジックインキなどにより筆記することができず、梱包用テープなどに必要な筆記性を満足することができないといった問題が生じた。そのため、梱包に用いられる布粘着テープなどの基体として、該樹脂組成物からなる離型フィルムを使用することが困難であった。
【0007】
【特許文献1】特開2004−297398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような状況を鑑みなされたものであって、有機溶剤を含有するシリコーン化合物のコーティング工程を必要としなくとも、離型性に優れ、かつ筆記性が改善された離型フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、オレフィン系重合体とポリジメチルシロキサンからなる離型フィルム表面と特定のゴムとを一定時間以上接触することにより得られる離型フィルムが筆記性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、オレフィン系重合体93〜99.99重量%、ポリジメチルシロキサン0.01〜7重量%から構成される離型性樹脂組成物からなる離型フィルムの表面を、アクリルゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン系ゴム、ブチルゴムから選ばれる少なくとも1種のゴムと240時間以上接触させることにより得られることを特徴とする離型フィルムに関するものである。
【0011】
また、本発明は、該離型性樹脂組成物が、オレフィン系重合体93〜99.99重量%、ポリジメチルシロキサン0.01〜7重量%からなる組成物100重量部に対し、分子内に錫および/またはチタンを含む硬化触媒が0.001〜1重量部配合されてなることを特徴とする離型フィルムに関するものである。
【0012】
また、本発明は、離型フィルム表面が、コロナ放電処理、フレーム処理又はプラズマ処理から選ばれる少なくとも1種以上の処理方法により酸化されていることを特徴とする離型フィルムに関するものである。
【0013】
さらに、本発明は、該離型フィルム及び基材からなることを特徴とする積層体に関するものである。
【0014】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明を構成するオレフィン系重合体は、エチレン、プロピレン、1−ブテンなど炭素数2〜12のα−オレフィンの単独重合体もしくはビニル化合物との共重合体を示す。例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−へキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体等のエチレン系重合体、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体などのプロピレン系重合体、ポリ1−ブテン、ポリ1−ヘキセン、ポリ4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、これらオレフィン系重合体は、1種単独又は2種以上の組み合わせで用いてもよい。このようなオレフィン系重合体の中では、押出ラミネート成形に供した場合に基材との接着性に優れ、またフィルム成形性やコストパフォーマンスに優れるため、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−へキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体が特に好ましい。
【0016】
このようなオレフィン系重合体は、フィルム成形性や押出ラミネート成形に供した場合に基材との接着性に優れることから、JIS K6922−1(1997年)によるメルトマスフローレート(以下、MFRと記す)が0.1〜100g/10分の範囲にあることが好ましい。
【0017】
また、本発明を構成するオレフィン系重合体は、JIS K6922−1(1997年)で測定した密度が880〜970kg/mの範囲にあると離型性に優れるため好ましい。密度が低すぎると粘着剤塗布工程において離型フィルムの耐熱性が不足し、粘着剤と離型フィルムの接着強度が上昇することがある。一方、密度が高すぎるとフィルムの剛性が高くなり過ぎる場合がある。
【0018】
本発明を構成するポリジメチルシロキサンは、特に限定されるものではないが、押出成形性の点から、25℃における粘度が50cSt以上を示すものが好ましい。
【0019】
本発明にて用いられるポリジメチルシロキサンは、一部の側鎖および/または末端のメチル基が他の官能基で置換されたものでもよい。このような官能基は特に限定されるものではなく、ビニル基、水酸基、アルコキシ基、アミノ基、エポキシ基、ポリエーテル基、アラルキル基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基、フェニル基、水素などを例示することができる。このようなポリジメチルシロキサンの中で、下記構造式(1)で表され、Rが炭素数1以上30以下のアルキル基、フェニル基、炭素数3以上30以下のフルオロアルキル基、又は炭素数6以上30以下の脂肪酸アミド基、メタクリル基及びエポキシ基からなる群より選ばれる一種以上の官能基であると離型性に優れるため好ましく、なかでもメチル基、フェニル基、エポキシ基が最も好ましい。
【0020】
【化1】

(式中、mは10以上の整数、nは1以上の整数である。ここでRは炭素数1以上30以下のアルキル基、フェニル基、炭素数3以上30以下のフルオロアルキル基、又は炭素数6以上30以下の脂肪酸アミド基、メタクリル基及びエポキシ基からなる群より選ばれる一種以上の官能基であり、分子中にランダムに導入されていてもよい。)
炭素数1以上30以下のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等、炭素数3以上30以下のフルオロアルキル基としてはフルオロエチル基、フルオロブチル基等、炭素数6以上30以下の脂肪酸アミド基としてはステアリン酸アミド基、オレイン酸アミド基、パルミチン酸アミド基、エルカ酸アミド基等が挙げられる。
【0021】
また、Rがエポキシ基を含む構造の場合、ポリジメチルシロキサンのエポキシ当量が500g/mol以上50000g/mol以下を示すものであると離型性に優れるため好ましい。
【0022】
このようなポリジメチルシロキサンとしては、メチル基以外の官能基を有さない未変性ポリジメチルシロキサン(ストレートシリコーンオイルと称されることがある)、フェニル基変性ポリジメチルシロキサン、メタクリル変性ポリジメチルシロキサン、フルオロ基変性ポリジメチルシロキサン、長鎖アルキル基変性ポリジメチルシロキサン、高級脂肪酸エステル変性ポリジメチルシロキサン、脂肪酸アミド変性ポリジメチルシロキサン、エポキシ変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。これらのポリジメチルシロキサンは、1種を単独で用いても、また、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
このようなポリジメチルシロキサンは、例えば信越化学工業株式会社から商品名信越シリコーンKF−96、KF−50、KF−54、KF−1001、KF−102等が、東レダウコーニング株式会社から商品名SH200などが市販されている。
【0024】
本発明を構成する離型性樹脂組成物は、オレフィン系重合体およびポリジメチルシロキサンに対し、さらに分子内に錫および/またはチタンを含む硬化触媒を併用すると、オレフィン系重合体とポリジメチルシロキサンからなる2成分系の組成物に比べ、離型性が向上し、高価なポリジメチルシロキサンの配合量を低減することが可能となるため好ましい。その作用は明らかになっていないが、フィルム表面の酸化処理によりポリジメチルシロキサンに生成した官能基を反応させ架橋させる効果があると考えられる。
【0025】
本発明にて用いられる硬化触媒の具体例としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレエート、ジオクチル錫ジラウレート、オクチル酸錫などの有機錫化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタンなどのアルコキシチタン系化合物、テトライソプロピルチタネートやテトラノルマルブチルチタネートなどのチタネート化合物などの有機チタン化合物が挙げられる。この中で、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレエートなどのブチル錫系化合物、ジオクチル錫ジラウレート、オクチル酸錫などのオクチル錫系化合物が離型性改良効果が高いため好ましく、中でもジオクチル錫ジラウレートが押出加工性とのバランスに優れるため特に好ましい。
【0026】
本発明を構成する離型性樹脂組成物における配合は、オレフィン系重合体93〜99.99重量%、ポリジメチルシロキサン0.01〜7重量%、好ましくはオレフィン系重合体95〜99.99重量%、ポリジメチルシロキサン0.01〜5重量%、最も好ましくは、オレフィン系重合体96〜99.99重量%、ポリジメチルシロキサン0.01〜4重量%である。ポリジメチルシロキサンが0.01重量%未満の場合、離型フィルムの離型性が劣るため好ましくなく、ポリジメチルシロキサンが7重量%を超える場合は、押出成形に供した際に均一な押出が困難となる。
また、離型性樹脂組成物が分子内に錫および/またはチタンを含む硬化触媒を含む場合は、オレフィン系重合体及びポリジメチルシロキサンからなる組成物100重量部に対し、分子内に錫および/またはチタンを含む硬化触媒が0.001〜1重量部が離型性を改善する効果が高いため好ましく、最も好ましくは、分子内に錫および/またはチタンを含む硬化触媒が0.01〜0.5重量部である。
【0027】
また、本発明を構成する離型性樹脂組成物には、必要に応じて酸化防止剤、滑剤、中和剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ剤等、通常オレフィン系樹脂に使用される添加剤を離型性を損なわない範囲で添加したものであっても構わない。
【0028】
本発明の離型性樹脂組成物は、通常用いられる樹脂の混合装置により製造することができる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、回転ロールなどの溶融混練装置、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーなどが挙げられる。溶融混練装置を用いる場合、溶融温度はオレフィン系重合体の融点〜350℃程度が好ましい。
【0029】
本発明の離型フィルム表面は、テープやラベルの粘着剤表面への離型剤転写を抑制するため、酸化されているものが好ましい。さらに該酸化により剥離強度が低下し離型性を向上させることができる。
【0030】
離型フィルム表面を酸化する際の酸化処理方法としては、クロム酸処理、硫酸処理、空気酸化、オゾン処理、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理等が挙げられ、ポリオレフイン樹脂表面に酸化物を効果的に形成させるためコロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理が特に好ましい。
【0031】
コロナ放電処理は、プラスチックフィルムやシート表面の連続処理技術として広く使用されているものであり、コロナ放電処理機により発生したコロナ雰囲気にフィルムを通過させることにより行われる。コロナ放電密度として、1〜100W・分/mであることが粘着剤の再粘着性に優れ好ましい。
【0032】
フレーム処理は、天然ガスやプロパン等を燃焼させたときに生じる火炎にフィルム表面を接することで処理が行われる。
【0033】
プラズマ処理は、アルゴン、ヘリウム、ネオン、水素、酸素、空気等の単体又は混合気体をプラズマジェットで電子的に励起せしめた後、帯電粒子を除去し、電気的に中性とした励起不活性ガスをフィルム表面に吹き付けることにより行われる。
【0034】
本発明の離型フィルムは、インフレーション成形機やTダイキャスト成形機などの公知のフィルム成形装置により製造することができる。また、共押出インフレーション成形機や共押出Tダイキャスト成形機などにより、他の高分子材料との多層フィルムも製造することが可能である。他の高分子材料としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−へキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体等のエチレン系重合体、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体などのプロピレン系重合体、ポリ1−ブテン、ポリ1−ヘキセン、ポリ4−メチル−1−ペンテンなどのオレフィン系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物などが挙げられる。
【0035】
また、本発明の離型フィルムを他の基材と貼り合わせることにより積層体を製造することができる。このような積層体としては、基材の少なくとも片面にポリエチレン層を介して離型フィルムが積層されてなるものが最も好適な形態である。
【0036】
本発明の積層体を構成する基材としては合成高分子フィルム又はシート、織布、不織布、紙、金属箔等が挙げられる。合成高分子フィルム又はシートとして、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成高分子からなるフィルム又はシート等が挙げられる。更に、これら高分子フィルム又はシートは、その表面がアルミニウムやアルミナ、シリカなどにより蒸着されたものでもよく、また、表面がウレタン系インキ等を用い印刷されたものであってもよい。織布、不織布としては、ポリエステルやポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂製のもの、あるいはスフなどの天然材料を原料したものが挙げられる。紙としては、クラフト紙、クルパック紙、上質紙、グラシン紙、板紙等が挙げられる。この中で、紙、又は合成樹脂若しくは天然材料からなる織布若しくは不織布が、得られた積層体の易裁断性に優れるため好ましい。また、これらの基材の表面は、イソシアネート系化合物、ウレタン系化合物、ポリエチレンイミン系化合物などのアンカーコート剤が塗布されていてもよい。
【0037】
このような積層体は、カレンダー成形機、プレス成形機、押出ラミネート成形機等を用いて製造することが可能である。押出ラミネート成形においては、共押出ラミネート法、タンデムラミネート法が経済性の観点から最も好適である。
【0038】
本発明を離型フィルムの厚みは、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はなく、柔軟性に優れ、破損などの問題が小さいことから、それぞれ1μm〜5mmの厚みであることが好ましく、経済性の観点から、それぞれ1μm〜100μmの範囲が最も好適である。
【0039】
本発明の離型フィルムは、その表面をアクリルゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン系ゴム及びブチルゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴムと240時間以上接触させることにより、筆記性が改良されたものである。
【0040】
このようなアクリルゴムは、アクリル酸アルキルエステルモノマーまたはメタクリル酸アルキルエステルモノマーの単独重合体、又は、アクリル酸アルキルエステルモノマーおよび/又はメタクリル酸アルキルエステルモノマーとこれと共重合可能な他のビニルモノマーとの共重合体である。上記アクリル酸アルキルエステルモノマーおよび/又はメタクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が1〜12の1級又は2級アルコールと、アクリル酸又はメタクリル酸とのエステルが好適に用いられる。上記アクリル酸エステルモノマーおよび/又はメタクリル酸アルキルエステルモノマーと共重合可能な他のビニルモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、スチレン、アクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、n−メチロールアクリルアミド、グリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0041】
このようなアクリル酸アルキルエステルモノマーおよび/又はメタクリル酸アルキルエステルモノマーの重合体、および又はこれらと他のビニルモノマーとの共重合体は、過酸化物やイソシアネートなどにより架橋されていてもよい。
【0042】
このようなアクリルゴムとして、日本触媒(株)製の商品名アクリセット、日本合成化学(株)製の商品名コーポニールなどを例示することができ、その他にも東亞合成(株)からも市販されている。
【0043】
また、天然ゴムは、未加硫のものでも加硫したものでも構わない。
【0044】
ポリイソプレンゴムは、ジェイエスアール(株)などから市販されており、未加硫または加硫されたものであっても構わない。
【0045】
また、スチレン系ゴムとしては、スチレン−ブタジエンランダム共重合体ゴム、スチレン−イソプレンランダム共重合体ゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体ゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体ゴムを例示することができ、ジェイエスアール(株)などから市販されている。
【0046】
ブチルゴムは、耐熱性、耐オゾン性、耐老化性、電気絶縁性に優れ、具体的には非加硫ブチルゴム、加硫ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム等が挙げられ、ジェイエスアール(株)などから市販されている。
【0047】
これらのゴムには、いずれも粘着付与剤などが配合されていると筆記性の改良効果が高まるため好ましい。
【0048】
このようなゴムの形状は、特に限定されるものではないが、フィルム状、または基材上に塗布されたものなどが例示できる。基体上に塗布されたゴムとしては、アクリルゴムとして日東電工(株)製の商品名ポリエステルテープNo.31Bなどが例示され、スチレン系ゴムとしては、ニチバン(株)製の商品名布テープ102Nなどが例示される。
【0049】
本発明の離型フィルム表面と上記ゴムとの接触時間は、240時間以上である。接触時間が240時間未満では筆記性の改良効果が低いため好ましくない。
【0050】
離型フィルム表面と上記ゴムの接触方法は、特に限定されるものではないが、離型フィルム表面に溶融ゴムを塗布し巻き取る方法、離型フィルム表面とフィルム状のゴムを重ねあわせた後巻き取る方法、離型フィルム表面と基体上に塗布したゴムの表面を重ね併せた後巻き取る方法、基材と離型フィルムからなる積層体の基材表面にゴムを塗布した後巻き取ることにより離型フィルム表面とゴム表面を接触させる方法などが挙げられる。接触後、ゴムはフィルムから剥離される。
【0051】
本発明の離型フィルム表面と上記ゴムとの接触温度は、特に限定されるものではないが、0℃〜60℃の範囲にあると、離型性の変化がなく好ましい。
【0052】
本発明の離型フィルム表面と上記ゴムとの接触時間は240時間以上である。接触時間が240時間未満では筆記性の改良効果が低いため好ましくない。
【発明の効果】
【0053】
本発明の離型フィルム用樹脂組成物を用いてなる離型フィルムは、離型フィルム表面の筆記性が要求される梱包用テープなどの離型層として極めて有用である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0055】
以下に、物性、加工性の測定方法と評価方法を示す。
【0056】
(1)メルトマスフローレート(MFR)
JIS K6922−1(1997年)に準拠して測定した。
【0057】
(2)密度
JIS K6922−1(1997年)に準拠して測定した。
【0058】
(3)離型性
実施例により得られた積層体の離型フィルム側表面に巾50mm、長さ150mmのクラフト粘着テープ(ニチバン(株)製 商品名No.313)を貼付し、線圧5kg/cm、速度5m/分の条件でゴムロール間を通過させた後、40℃の雰囲気で20時間放置し、離型性測定用試料を得た。その後、クラフト粘着テープと離型フィルムとの剥離強度を引張試験機(島津製作所(株)社製、商品名オートグラフDCS−100)にて測定した。剥離速度は500mm/分である。
【0059】
(4)再粘着性
上記離型性試験により離型フィルム表面から剥離した巾50mmの布粘着テープを、アルミニウム板(東洋アルミニウム(株)製 商品名A1N30H−H18、厚み0.1mm)に5kg/cmの線圧で貼付した。23℃の雰囲気にて1日放置した後、クラフト粘着テープとアルミニウム板の接着強度を引張試験機(島津製作所製 オートグラフDCS−100)にて測定した。剥離速度は300mm/分である。粘着テープの粘着剤表面が離型フィルムにより汚染された場合、粘着テープの接着強度が低下し、粘着テープとしての性能を損なう。すなわち、接着強度が高いほど再粘着性に優れる。
【0060】
(5)筆記性
実施例により得られた積層体の表面を油性マジックで筆記した後、ティッシュペーパーでふき取り筆記跡の状態を目視により判定した。
○:ほぼ残る、×:全く残らない
実施例1
オレフィン系重合体として、MFRが3g/10分、密度が924kg/mである低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン205、以下LDPE−Aと記す場合がある)99重量%、ポリジメチルシロキサンとしてストレートシリコーンオイル(信越化学工業(株)製 商品名信越シリコーンKF−96、粘度10,000cSt、以下、B−1と記す場合がある)を1重量%になるよう配合し、ニ軸押出機(東洋精機製 ラボプラストミル)にて溶融混練し離型性樹脂組成物のペレットを得た。
【0061】
LDPE−A(東ソー(株)製 商品名ペトロセン205)のペレットを90mmφのスクリューを有する押出ラミネーターの押出機へ供給し、320℃の温度でTダイより押出し、基材として50W・分/mの条件でコロナ処理を施した上質紙(北越製紙(株)製 商品名キンマリSW 坪量50g/m)のコロナ処理面に、15μmの厚さになるようラミネートした。
【0062】
さらに、上記方法により得た離型性樹脂組成物を90mmφのスクリューを有する押出ラミネーターの押出機へ供給し、320℃の温度でTダイより押出し離型フィルムを形成し、該LDPE層上に20μmの厚さになるようラミネートした後、離型フィルム表面に15W・分/mの条件でコロナ処理を施した。
【0063】
離型フィルム側表面に基体に塗布されたスチレン系ゴム(ニチバン(株)製 商品名No.313)を貼付し離型フィルム表面とゴムを接触させた後、40℃の雰囲気で250時間放置した。その後、上記ゴムを剥離して離型フィルムを含む積層体を得た。
【0064】
得られた積層体の離型性、再粘着性、筆記性を測定し、その測定結果を表1に示した。
【0065】
【表1】

実施例2
離型性樹脂組成物として、LDPE−Aを99重量%、ポリジメチルシロキサン(B−1)を1重量%の代わりに、LDPE−Aを99.5重量%、ポリジメチルシロキサン(B−1)を0.5重量%とした以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果は表1に示した。
【0066】
実施例3
離型性樹脂組成物として、LDPE−Aを99重量%、ポリジメチルシロキサン(B−1)を1重量%の代わりに、LDPE−Aを99重量%、ポリジメチルシロキサンとして、エポキシ当量3,500g/mol、粘度17,000cStであるエポキシ変性ポリジメチルシロキサン(信越化学工業(株)製 商品名信越シリコーンKF−1001、以下、B−2と記す場合がある)を1重量%とした以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果は表1に示した。
【0067】
実施例4
離型性樹脂組成物として、LDPE−Aを99重量%、ポリジメチルシロキサン(B−1)を1重量%の代わりに、LDPE−Aを99.5重量%、ポリジメチルシロキサン(B−2)を0.5重量%とした以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果は表1に示した。
【0068】
実施例5
離型性樹脂組成物として、LDPE−Aを99重量%、ポリジメチルシロキサン(B−1)を1重量%の代わりに、LDPE−Aを97重量%、ポリジメチルシロキサン(B−2)を3重量%とした以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果は表1に示した。
【0069】
実施例6
離型性樹脂組成物として、LDPE−Aを99重量%、ポリジメチルシロキサン(B−1)を1重量%の代わりに、LDPE−Aを99重量%、ポリジメチルシロキサンとして、メチルフェニルシリコーンオイル(信越化学工業(株)製 商品名信越シリコーンKF−50、粘度3,000cSt、以下、B−3と記す場合がある)を1重量%とした以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果は表2に示した。
【0070】
【表2】

実施例7
離型性樹脂組成物として、LDPE−Aを99重量%、ポリジメチルシロキサン(B−1)を1重量%の代わりに、LDPE−Aを98.98重量%、ポリジメチルシロキサン(B−1)を1重量%、硬化触媒としてジラウリン酸ジオクチル錫を0.02重量%とした以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果は表2に示した。
【0071】
実施例8
離型性樹脂組成物として、LDPE−Aを99重量%、ポリジメチルシロキサン(B−1)を1重量%の代わりに、オレフィン系重合体として、MFRが7.5g/10分、密度が902kg/mであるエチレン・1−オクテン共重合体(ダウケミカル製 商品名アフィニティPT1450、以下LLDPEと記す場合がある)を99重量%、ポリジメチルシロキサン(B−1)を1重量%とした以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果は表2に示した。
【0072】
実施例9
スチレン系ゴムの代わりに、基体に塗布されたアクリルゴム(日東電工(株)製 商品名31B)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果は表2に示した。
【0073】
比較例1
離型フィルム表面にスチレン系ゴムを接触させなかったこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果を表3に示すが、筆記性に劣っていた。
【0074】
比較例2
離型フィルム表面とスチレン系ゴムの接触時間が170時間としたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果を表3に示すが、筆記性に劣っていた。
【0075】
比較例3
離型性樹脂組成物として、LDPE−Aを99重量%、ポリジメチルシロキサン(B−1)を1重量%の代わりに、LDPE−Aを100重量%とした以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果を表3に示すが、剥離強度が高すぎて剥離強度を測定することができず、離型性に劣っていた。
【0076】
比較例4
離型性樹脂組成物として、LDPE−Aを99重量%、ポリジメチルシロキサン(B−1)を1重量%の代わりに、LDPE−Aを92重量%、ポリジメチルシロキサン(B−1)を8重量%とした以外は、実施例1と同様にして積層体の製造を試みたが、押出不良のため積層体を得ることができなかった。
【0077】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系重合体93〜99.99重量%、ポリジメチルシロキサン0.01〜7重量%から構成される離型性樹脂組成物からなる離型フィルムの表面を、アクリルゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン系ゴム及びブチルゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種のゴムと240時間以上接触させることにより得られることを特徴とする離型フィルム。
【請求項2】
離型性樹脂組成物が、オレフィン系重合体93〜99.99重量%、ポリジメチルシロキサン0.01〜7重量%からなる組成物100重量部に対し、分子内に錫および/またはチタンを含む硬化触媒が0.001〜1重量部配合されてなることを特徴とする請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
ポリジメチルシロキサンが下記構造式(1)で表されるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の離型フィルム。
【化1】

(式中、mは10以上の整数、nは1以上の整数である。ここでRは炭素数1以上30以下のアルキル基、フェニル基、炭素数3以上30以下のフルオロアルキル基、又は炭素数6以上30以下の脂肪酸アミド基、メタクリル基及びエポキシ基からなる群より選ばれる一種以上の官能基であり、分子中にランダムに導入されていてもよい。)
【請求項4】
ポリジメチルシロキサンが、官能基当量が500g/mol以上50000g/mol以下であるエポキシ基を有するポリジメチルシロキサンであることを特徴とする請求項1または2に記載の離型フィルム。
【請求項5】
離型フィルム表面が、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理から選ばれる少なくとも1種以上の処理方法により酸化されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の離型フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の離型フィルム及び基材からなることを特徴とする積層体。
【請求項7】
基材の少なくとも片面にポリエチレン層を介して離型フィルムが積層されてなることを特徴とする請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
基材が紙、又は天然材料若しくは合成樹脂からなる織布若しくは不織布から選ばれる1種以上である請求項7に記載の積層体。

【公開番号】特開2009−40895(P2009−40895A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207777(P2007−207777)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】