説明

離型フィルムの製造方法

【課題】離型性に優れた離型フィルムを、損傷を抑制しながら効率良く製造することのできる離型フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリエステル系樹脂を含有するフィルムの表面を摩擦処理ロールで摩擦処理する工程を有する離型フィルムの製造方法であって、前記摩擦処理ロールの表面の素材は、引張強度が1.0〜5.0g/dである繊維からなる織物であり、前記摩擦処理を、下記式(1)で表される仕事エネルギー量En(KJ)が50〜500KJとなるように行う離型フィルムの製造方法。
[数1]


式(1)中、Arは摩擦処理装置が摩擦処理する面積(m)を表し、Jは摩擦処理するための単位時間あたりの仕事量(KJ/分)を表し、Wは摩擦処理されるフィルムの巾(m)を表し、LSは摩擦処理されるフィルムのライン速度(m/分)を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型性に優れた離型フィルムを、損傷を抑制しながら効率良く製造することのできる離型フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板、フレキシブルプリント基板、多層プリント配線板等の製造工程においては、プリプレグ又は耐熱フィルムを介して銅張積層板又は銅箔を熱プレスする際に離型フィルムが使用されている。また、フレキシブルプリント基板の製造工程においては、銅回路を形成したフレキシブルプリント基板本体に、熱硬化型接着剤又は熱硬化型接着シートによってカバーレイフィルムを熱プレス接着する際にも、カバーレイフィルムと熱プレス板とが接着するのを防止するために離型フィルムが広く使用されている。
【0003】
離型フィルムに対しては、例えば、熱プレス成形に耐え得る耐熱性、プリント配線基板及び熱プレス板に対する離型性、廃棄処理の容易性等の性能が求められる。また、熱プレス成形時の製品歩留り向上のため、銅回路に対する非汚染性も重要である。
【0004】
従来、離型フィルムとしては、フッ素系フィルム、シリコーン塗布ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が用いられてきた(例えば、特許文献1)。
しかしながら、フッ素系フィルムは、耐熱性、離型性、非汚染性に優れているが、高価であるうえ、廃棄処理において焼却する際に燃焼しにくく、有毒ガスを発生する。また、シリコーン塗布ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリメチルペンテンフィルムは、シリコーン又は構成成分中の低分子量体が移行することによってプリント配線基板とりわけ銅回路の汚染を引き起こし、品質を損なうおそれがある。また、ポリプロピレンフィルムは耐熱性に劣り、離型性も不充分である。
【0005】
また、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂からなる離型フィルムも検討されているが、このような離型フィルムは、耐熱性、廃棄処理の容易性、非汚染性には優れているが離型性の面では改善の余地がある。
【0006】
これに対し、本願出願人は、非汚染性に優れ、かつ、離型性にも優れた離型フィルムとして、ポリエステル系樹脂と所定量のポリプロピレンとからなる離型フィルムを発明し、特許文献2に開示している。ここで、特許文献2に記載されているような離型フィルムの離型性を更に飛躍的に向上させるためには、特許文献2にも記載されているように、離型フィルムに熱処理を施すことが有効である。
しかしながら、このような熱処理は高温で行われ、また、長時間を必要とすることから、コストの増大を招くことが問題である。また、離型性を向上させるために離型フィルムに摩擦処理を施すことも検討されているが、このような摩擦処理は摩擦処理ロールを高速で回転させながら高圧で行われることから、離型フィルムの表面にシワ、傷等の損傷を生じさせ、例えば、基板表面の凹凸に対する離型フィルムの追従性が低下する等の不具合が生じる。従って、コストを抑制し、かつ、離型フィルムに生じる損傷を抑制しながら、離型性を更に向上させた離型フィルムを製造することのできる新たな方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−283862号公報
【特許文献2】特開2009−132806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、離型性に優れた離型フィルムを、損傷を抑制しながら効率良く製造することのできる離型フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリエステル系樹脂を含有するフィルムの表面を摩擦処理ロールで摩擦処理する工程を有する離型フィルムの製造方法であって、前記摩擦処理ロールの表面の素材は、引張強度が1.0〜5.0g/dである繊維からなる織物であり、前記摩擦処理を、下記式(1)で表される仕事エネルギー量En(KJ)が50〜500KJとなるように行う離型フィルムの製造方法である。
【数1】

式(1)中、Arは摩擦処理装置が摩擦処理する面積(m)を表し、Jは摩擦処理するための単位時間あたりの仕事量(KJ/分)を表し、Wは摩擦処理されるフィルムの巾(m)を表し、LSは摩擦処理されるフィルムのライン速度(m/分)を表す。以下、本発明を詳述する。
【0010】
本発明者らは、ポリエステル系樹脂を含有するフィルムの表面を摩擦処理ロールで摩擦処理する工程を有する離型フィルムの製造方法において、摩擦処理ロールの表面の素材として所定の物性を満たす繊維からなる織物を使用し、かつ、所定の範囲を満たす仕事エネルギー量となるように摩擦処理を行うことにより、離型性に優れた離型フィルムを、損傷を抑制しながら効率良く製造することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明の離型フィルムの製造方法は、ポリエステル系樹脂を含有するフィルムの表面を摩擦処理ロールで摩擦処理する工程を有する。摩擦処理を行うことで、離型性に優れた離型フィルムを製造することができる。
上記摩擦処理する工程において、上記摩擦処理ロールの表面の素材は、引張強度が1.0〜5.0g/dである繊維からなる織物である。このような織物を上記摩擦処理ロールの表面の素材に用いることで、摩擦処理を行うことによって離型フィルムに生じるシワ、傷等の損傷を抑制することができる。
【0012】
上記繊維の引張強度が1.0g/d未満であると、上記摩擦処理する工程において繊維が伸び切れ、得られる離型フィルムに繊維が付着してしまう。上記繊維の引張強度が5.0g/dを超えると、得られる離型フィルムに生じるシワ、傷等の損傷を抑制することが困難である。上記繊維の引張強度の好ましい上限は3.0g/dである。
なお、本明細書中、繊維の引張強度とは、JIS−L−1095に準拠する方法により求められる繊維一本の引張強度を意味する。
【0013】
上記引張強度が1.0〜5.0g/dである繊維は、更に、伸度の好ましい下限が1%、好ましい上限が30%である。上記繊維の伸度が1%未満であると、上記摩擦処理する工程において繊維が伸び切れ、得られる離型フィルムに繊維が付着することがある。上記繊維の伸度が30%を超えると、得られる離型フィルムに生じるシワ、傷等の損傷を抑制することが困難となることがある。上記繊維の伸度のより好ましい上限は29%である。
なお、本明細書中、繊維の伸度とは、JIS−L−1095に準拠する方法により求められる繊維一本の引張伸度を意味する。
【0014】
上記引張強度が1.0〜5.0g/dである繊維として、具体的には、例えば、PET−A、レイヨン、綿、ウール、アセテート等が挙げられる。なかでも、得られる離型フィルムに生じるシワ、傷等の損傷をより抑制することができ、離型フィルムに付着する繊維を低減できることから、レイヨン、ウールが好ましい。
【0015】
上記摩擦処理ロールの表面の素材は、引張強度が1.0〜5.0g/dである繊維からなる織物であれば特に限定されないが、該摩擦処理ロールの表面の素材として用いられる織物は、摩擦係数の好ましい下限が0.1、好ましい上限が0.8である。上記織物の摩擦係数が0.1未満であると、得られる離型フィルムに充分な離型性を付与することができないことがある。上記織物の摩擦係数が0.8を超えると、得られる離型フィルムに生じるシワ、傷等の損傷を抑制することが困難となることがある。上記織物の摩擦係数のより好ましい下限は0.3、より好ましい上限は0.7である。
なお、本明細書中、織物の摩擦係数とは、JIS−K−7125に準拠する方法により求められる2mmのポリカーボネート板に対しての織物の摩擦係数を意味する。
【0016】
また、上記摩擦処理ロールの表面の素材として用いられる織物は、弾性率の好ましい下限が0.1MPa、好ましい上限が4.0MPaである。上記織物の弾性率が0.1MPa未満であると、得られる離型フィルムに充分な離型性を付与することができないことがある。上記織物の弾性率が4.0MPaを超えると、得られる離型フィルムに生じるシワ、傷等の損傷を抑制することが困難となることがある。上記織物の弾性率のより好ましい下限は0.7MPa、より好ましい上限は3.9MPaである。
なお、本明細書中、織物の弾性率とは、JIS−K−7127に準拠する方法により求められる織物の硬さを意味する。
【0017】
また、上記摩擦処理ロールの表面の素材として用いられる織物は、引張強度の好ましい下限が1.5N/10mm、好ましい上限が2.5N/10mmである。上記織物の引張強度が1.5N/10mm未満であると、上記摩擦処理する工程において繊維が伸び切れ、得られる離型フィルムに繊維が付着することがある。上記織物の引張強度が2.5N/10mmを超えると、得られる離型フィルムに生じるシワ、傷等の損傷を抑制することが困難となることがある。上記織物の引張強度のより好ましい下限は1.6N/10mm、より好ましい上限は2.3N/10mm、更に好ましい上限は1.8N/10mmである。
なお、本明細書中、織物の引張強度とは、JIS−K−7127に準拠する方法により求められる織物の引張強度を意味する。
【0018】
上記摩擦処理する工程においては、上記摩擦処理を、下記式(1)で表される仕事エネルギー量En(KJ)が50〜500KJとなるように行う。
【数2】

式(1)中、Arは摩擦処理装置が摩擦処理する面積(m)を表し、Jは摩擦処理するための単位時間あたりの仕事量(KJ/分)を表し、Wは摩擦処理されるフィルムの巾(m)を表し、LSは摩擦処理されるフィルムのライン速度(m/分)を表す。このような仕事エネルギー量となるように上記摩擦処理を行うことで、極めて高い離型性を有する離型フィルムを製造することができ、また、熱処理等の他の工程を行わなくても離型性に優れた離型フィルムを製造することができることから、離型フィルムの製造効率が向上する。
【0019】
上記仕事エネルギー量が50KJ未満であると、熱処理等の他の工程を行わなければ、極めて高い離型性を有する離型フィルムを製造することができない。上記仕事エネルギー量が500KJを超えると、得られる離型フィルムに生じるシワ、傷等の損傷を抑制することが困難である。上記仕事エネルギー量の好ましい上限は300KJである。
【0020】
なお、上記式(1)において、上記摩擦処理装置が摩擦処理する面積Ar(m)は、摩擦処理装置が摩擦処理するフィルムの面積である。
また、上記摩擦処理するための単位時間あたりの仕事量J(KJ/分)は、単位時間あたりの摩擦処理装置とフィルムとの間の圧力と摩擦処理した回数とを掛け算することにより求められる。
また、上記摩擦処理されるフィルムの巾W(m)は、摩擦処理装置が摩擦処理するフィルムの巾である。
更に、上記摩擦処理されるフィルムのライン速度LS(m/分)は、フィルムが摩擦処理装置を通過する速度である。
【0021】
上記摩擦処理する工程において用いられる摩擦処理装置は、上記摩擦処理ロールの表面の素材として上記引張強度が1.0〜5.0g/dである繊維からなる織物を用いた場合に、上記式(1)で表される仕事エネルギー量となるように上記摩擦処理を行うことができれば特に限定されない。このような摩擦処理装置として、具体的には、例えば、研磨処理装置(型式YCM−150M、山縣機械社製)等が挙げられる。
【0022】
上記摩擦処理する工程においては、上記摩擦処理をポリエステル系樹脂を含有するフィルムの表面に対して行う。
上記ポリエステル系樹脂を用いることで、優れた機械的性能、とりわけ、通常熱プレス成形を行う170℃程度の温度域において優れた機械的性能を発現する離型フィルムを製造することができる。また、上記ポリエステル系樹脂を用いることで、得られる離型フィルムを焼却処理する際の環境負荷が軽減され、経済的にも有利である。
【0023】
上記ポリエステル系樹脂は特に限定されないが、結晶性芳香族ポリエステル樹脂が好ましい。
上記結晶性芳香族ポリエステル樹脂は特に限定されないが、例えば、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、低分子量脂肪族ジオールとを反応させて得られる結晶性芳香族ポリエステル樹脂等が挙げられる。
また、上記結晶性芳香族ポリエステル樹脂として、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、低分子量脂肪族ジオール及び高分子量ジオールとを反応させて得られる結晶性芳香族ポリエステル樹脂(以下、「ポリエーテル骨格を主鎖中に有する結晶性芳香族ポリエステル樹脂」ともいう)、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、低分子量脂肪族ジオールとを反応させて得られる結晶性芳香族ポリエステル樹脂をカプロラクトンモノマーに溶解させた後、カプロラクトンを開環重合させて得られる結晶性芳香族ポリエステル樹脂(以下、「ポリカプロラクトン骨格を主鎖中に有する結晶性芳香族ポリエステル樹脂」ともいう)等も挙げられる。
【0024】
なかでも、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、低分子量脂肪族ジオールとを反応させて得られる結晶性芳香族ポリエステル樹脂を用いた場合に比べて、耐熱性を維持しながら、柔軟性及び離型性に優れた離型フィルムを製造することができることから、ポリエーテル骨格を主鎖中に有する結晶性芳香族ポリエステル樹脂、ポリカプロラクトン骨格を主鎖中に有する結晶性芳香族ポリエステル樹脂が好ましい。
【0025】
上記芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、オルトフタル酸ジメチル、ナフタリンジカルボン酸ジメチル、パラフェニレンジカルボン酸ジメチル等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0026】
上記低分子量脂肪族ジオールとして、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0027】
上記高分子量ジオールとして、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【0028】
上記結晶性芳香族ポリエステル樹脂として、より具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、テレフタル酸ブタンジオール−ポリテトラメチレングリコール共重合体、テレフタル酸ブタンジオール−ポリカプロラクトン共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。なかでも、非汚染性及び結晶性に特に優れた離型フィルムを製造することができることから、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
【0029】
上記結晶性芳香族ポリエステル樹脂は、示差走査熱量計を用いて測定した融点が200℃以上であることが好ましい。
通常、熱プレス成形は200℃未満で行われることから、このような融点の高い樹脂を用いることで、熱プレス成形時にも溶融することがなく離型性を有する離型フィルムを製造することができ、このような離型フィルムは熱プレス成形時の破壊が抑制される。なお、示差走査熱量計として、例えば、DSC 2920(TAインスツルメント社製)等が挙げられる。
【0030】
上記結晶性芳香族ポリエステル樹脂の示差走査熱量計を用いて測定した融点が200℃未満であると、得られる離型フィルムは耐熱性が低下し、熱プレス成形時に溶融することがある。上記結晶性芳香族ポリエステル樹脂は、示差走査熱量計を用いて測定した融点が220℃以上であることがより好ましい。
【0031】
上記示差走査熱量計を用いて測定した融点が200℃以上である結晶性芳香族ポリエステル樹脂は特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、テレフタル酸ブタンジオール−ポリテトラメチレングリコール共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。これらのなかでは、非汚染性及び結晶性に優れた離型フィルムを製造することができることから、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
【0032】
上記ポリエステル系樹脂を含有するフィルムは、安定剤を含有してもよい。上記安定剤は特に限定されず、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、熱安定剤等が挙げられる。
上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は特に限定されず、例えば、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニロキシ〕−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が挙げられる。
上記熱安定剤は特に限定されず、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、2−t−ブチル−α−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−クメニルビス(p−ノニルフェニル)ホスファイト、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスチリルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0033】
上記ポリエステル系樹脂を含有するフィルムはまた、本発明の効果を損なわない範囲で、繊維、無機充填剤、難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、無機物、高級脂肪酸塩等の添加剤を含有してもよい。
【0034】
上記繊維は、無機繊維であってもよく、有機繊維であってもよい。上記無機繊維は特に限定されず、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、アモルファス繊維、シリコン−チタン−炭素系繊維等が挙げられる。上記有機繊維は特に限定されず、例えば、アラミド繊維等が挙げられる。
【0035】
上記無機充填剤は特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、マイカ、タルク等が挙げられる。
上記難燃剤は特に限定されず、例えば、ヘキサブロモシクロドデカン、トリス−(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、ペンタブロモフェニルアリルエーテル等が挙げられる。
【0036】
上記紫外線吸収剤は特に限定されず、例えば、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン等が挙げられる。
上記帯電防止剤は特に限定されず、例えば、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アルキルアミン、アルキルアリルスルホネート、アルキルスルファネート等が挙げられる。
【0037】
上記無機物は特に限定されず、例えば、硫酸バリウム、アルミナ、酸化珪素等が挙げられる。
上記高級脂肪酸塩は特に限定されず、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸バリウム、パルミチン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0038】
上記ポリエステル系樹脂を含有するフィルムは、該フィルムの性質を改質するために、熱可塑性樹脂及びゴム成分を含有してもよい。
上記熱可塑性樹脂は特に限定されず、例えば、ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエステル等が挙げられる。
上記ゴム成分は特に限定されず、例えば、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体(EPM、EPDM)、ポリクロロプレン、ブチルゴム、アクリルゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0039】
上記ポリエステル系樹脂を含有するフィルムはまた、アスペクト比の大きい無機化合物を含有してもよい。
上記アスペクト比の大きい無機化合物を含有することにより、高温での離型性が向上した離型フィルムを製造することができ、更に、離型フィルムに含まれる添加剤、低分子量物等が離型フィルム表面へブリードアウトすることを抑制することができ、熱プレス成形時のクリーン性が向上する。
上記アスペクト比の大きい無機化合物は特に限定されず、例えば、クレイ等の層状ケイ酸塩、ハイドロタルサイト等の層状複水和物等が挙げられる。
【0040】
本発明の離型フィルムの製造方法は、上述したような摩擦処理する工程を有していれば、単層のフィルムを製造する方法であってもよく、複数層のフィルムを製造する方法であってもよい。即ち、本発明の離型フィルムの製造方法によって、少なくとも一方の表面が摩擦処理された単層フィルムを製造してもよく、また、少なくとも一方の側の表層として摩擦処理された上記ポリエチレン系樹脂を含有するフィルムを有する複数層のフィルムを製造してもよい。
【0041】
本発明の離型フィルムの製造方法によって複数層のフィルムを製造する場合、該複数層のフィルムは、中間層を有していてもよい。
上記中間層は、示差走査熱量計を用いて測定した融点が60℃以上130℃未満であるポリオレフィン系樹脂を含有することが好ましい。
離型フィルムには、プリント配線基板、フレキシブルプリント基板等の基板表面の凹凸に対する追従性も必要とされている。対形状追従性の低い離型フィルムを用いると、熱プレス成形時にボイドが発生したり、基板の電極部にカバーレイフィルムの接着剤が流れ出し、電極部のめっき処理の障害となったりする。これに対し、上記ポリオレフィン系樹脂を用いることで、得られる中間層は接着剤が溶融を開始する温度付近で軟化を開始することから、例えば100μm以下等の微細な銅回路ピッチを有するフレキシブルプリント基板に対しても充分な追従性を有する離型フィルムを製造することができる。
【0042】
上記ポリオレフィン系樹脂の示差走査熱量計を用いて測定した融点が60℃未満であると、離型フィルムの保管中、雰囲気温度が50〜60℃となる場合に上記中間層から樹脂が溶融して染み出し、ブロッキングを起こすことがある。上記ポリオレフィン系樹脂の示差走査熱量計を用いて測定した融点が130℃以上であると、基板表面の凹凸に対する追従性が充分に向上した離型フィルムを製造することができないことがある。上記ポリオレフィン系樹脂の示差走査熱量計を用いて測定した融点は、80℃以上100℃以下であることが好ましい。
【0043】
上記ポリオレフィン系樹脂として、具体的には、例えば、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。なかでも、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0044】
上記中間層は、更に、示差走査熱量計を用いて測定した融点が130℃以上である樹脂を含有することが好ましい。
上記中間層に上記示差走査熱量計を用いて測定した融点が60℃以上130℃未満であるポリオレフィン系樹脂のような軟化温度の低い樹脂を用いる場合には、熱プレス成形時の圧力によって、離型フィルムの端部で上記中間層から樹脂が染み出し、基板、熱プレス板等を汚染してしまうことがある。これに対し、更に上記示差走査熱量計を用いて測定した融点が130℃以上である樹脂を併用することで、熱プレス成形時に離型フィルムの端部で生じる上記中間層からの樹脂の染み出しを抑制することができる。
上記示差走査熱量計を用いて測定した融点が130℃以上である樹脂は特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、結晶性芳香族ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0045】
上記中間層が上記示差走査熱量計を用いて測定した融点が130℃以上である樹脂を含有する場合、このような樹脂の配合量は特に限定されないが、中間層中の好ましい下限が5重量%、好ましい上限が50重量%である。上記示差走査熱量計を用いて測定した融点が130℃以上である樹脂の配合量が5重量%未満であると、熱プレス成形時に離型フィルムの端部で生じる上記中間層からの樹脂の染み出しを抑制する効果が充分に得られないことがある。上記示差走査熱量計を用いて測定した融点が130℃以上である樹脂の配合量が50重量%を超えると、基板表面の凹凸に対する追従性が充分に向上した離型フィルムを製造することができないことがある。
【0046】
上記中間層は、上記ポリエチレン系樹脂を含有するフィルムと同様に、繊維、無機充填剤、難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、無機物、高級脂肪酸塩等の添加剤を含有してもよい。
【0047】
本発明の離型フィルムの製造方法によって複数層のフィルムを製造する場合、上記表層の厚さを5〜20μmとすることが好ましい。上記表層の厚さが5μm未満であると、表層の強度が損なわれることから、熱プレス成形時又は離型フィルムの剥離時に、表層が破壊されることがある。上記表層の厚さが20μmを超えると、基板表面の凹凸に対する追従性が充分に向上した離型フィルムを製造することができないことがある。上記表層の厚さのより好ましい下限は10μm、より好ましい上限は15μmである。
また、上記中間層の厚さを10〜200μmとすることが好ましい。上記中間層の厚さが10μm未満であると、上記中間層が薄すぎ、熱プレス成形時において中間層が軟化すると、部分的に中間層が存在しない箇所が発生し、プレス圧力を基板に均一に荷重することができないことがある。上記中間層の厚さが200μmを超えると、上記中間層が必要以上に厚いため、熱プレス成形時に離型フィルムの端部で生じる上記中間層からの樹脂の染み出しを抑制できないことがある。上記中間層の厚さのより好ましい下限は20μm、より好ましい上限は100μmである。
【0048】
本発明の離型フィルムの製造方法は、上述したような摩擦処理する工程を有していれば、更に、製膜する工程、熱処理する工程を有してしてもよい。
本発明の離型フィルムの製造方法によれば、上述したような摩擦処理する工程を行うことにより、熱処理等の他の工程を行わなくても極めて高い離型性を有する離型フィルムを製造することができるが、更に、熱処理を行うことで、得られる離型フィルムの耐熱性、寸法安定性、離型性を更に向上させることができる。なお、上記熱処理する工程は、上記摩擦処理する工程の前に行われることが好ましい。
【0049】
上記製膜する方法は特に限定されず、例えば、水冷式又は空冷式の共押出インフレーション法、共押出Tダイ法で製膜する方法、表層となる上記ポリエステル系樹脂を含有するフィルムを作製した後、このフィルムに中間層を押出ラミネーション法にて積層する方法、表層となる上記ポリエステル系樹脂を含有するフィルムと、中間層となるフィルムとをドライラミネーションする方法、溶剤キャスティング法、熱プレス成形法等が挙げられる。なかでも、本発明の離型フィルムの製造方法によって複数層のフィルムを製造する場合には、各層の厚み制御に優れることから、共押出Tダイ法で製膜する方法が好ましい。
【0050】
上記溶剤キャスティング法では、例えば、中間層となるフィルム上にアンカー層を下塗り処理した後、このアンカー層上に、上記ポリエステル系樹脂等を溶剤に溶解した表層となる樹脂組成物を塗工し、塗膜を均一に加熱し乾燥させて表層を形成する。
また、上記熱プレス成形法では、例えば、表層となる上記ポリエステル系樹脂を含有するフィルムと、中間層となるフィルムとを重ね合わせて熱プレス成形する。
【0051】
上記熱処理する方法は特に限定されないが、例えば、一定の温度に加熱したロールの間にフィルムを通す方法、ヒーターによりフィルムを加熱する方法等が好ましい。
また、上記熱処理の温度は、上記ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上かつ融点以下であれば特に限定されないが、40〜200℃とすることが好ましい。上記熱処理の温度が40℃未満であると、熱処理による離型性の向上効果がほとんど得られないことがある。上記熱処理の温度が200℃を超えると、熱処理時に上記ポリエステル系樹脂を含有するフィルムが変形しやすくなり、離型フィルムを製造することができないことがある。上記熱処理の温度のより好ましい下限は50℃、より好ましい上限は80℃である。
【0052】
本発明の離型フィルムの製造方法によれば、極めて高い離型性を有する離型フィルムを製造することができ、また、離型フィルムの製造効率も向上する。更に、本発明の離型フィルムの製造方法によれば、摩擦処理を行うことによる離型フィルムに生じるシワ、傷等の損傷を抑制することができ、基板表面の凹凸に対する追従性が充分に向上した離型フィルムを製造することができる。
【0053】
本発明の離型フィルムの製造方法によって製造される離型フィルムは、170℃において荷重3MPaで60分間加圧した場合の寸法変化率が1.5%以下であることが好ましい。上記寸法変化率が1.5%を超えると、熱プレス成形時にフレキシブルプリント基板の回路パターンを損なうことがある。上記寸法変化率は、1.0%以下であることがより好ましい。
また、本発明の離型フィルムの製造方法によって製造される離型フィルムは、離型フィルムの巾方向(以下、TDという)と長さ方向(以下、MDという)の寸法変化率が同方向かつ同等程度であることが好ましい。一方(例えば、MD)が収縮し、他方(例えば、TD)が伸長するというように、縦横の寸法変化が異なる場合には、離型フィルムにより、熱プレス成形時にフレキシブルプリント基板の回路パターンを損なうことがある。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、離型性に優れた離型フィルムを、損傷を抑制しながら効率良く製造することのできる離型フィルムの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0056】
(実施例1)
表層用の結晶性芳香族ポリエステル樹脂としてポリブチレンテレフタレート(ノバデュラン5010R5、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、融点224℃)を、中間層用のポリオレフィン系樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン(エクセレンFX(CX5501)、住友化学社製、融点66℃)とエチレン−メチルメタクリレート共重合体(アクリフト(WH401)、住友化学社製、融点86℃)とポリプロピレン(PS207A、サンアロマー社製、融点160℃)とを、共押出成形機に投入し、Tダイスより共押出成形して、表層の厚さ10μm、中間層の厚さ80μmのフィルムを得た。なお、融点は、示差走査熱量計(DSC 2920、TAインスツルメント社製)を用いて測定した。
【0057】
得られたフィルムの表面を、摩擦処理ロールの表面の素材として表1に示す繊維からなる織物を用いた摩擦処理装置(研磨処理装置、型式YCM−150M、山縣機械社製)で摩擦処理することにより、離型フィルムを得た。摩擦処理は、表1に示す仕事エネルギー量(KJ)となるように行った。
なお、仕事エネルギー量は、摩擦処理装置が摩擦処理する面積Ar(m)、摩擦処理するための単位時間あたりの仕事量J(KJ/分)、摩擦処理されるフィルムの巾W(m)及び摩擦処理されるフィルムのライン速度LS(m/分)を、式(1)に当てはめることにより算出した。
【0058】
(実施例2〜7)
摩擦処理ロールの表面の素材と仕事エネルギー量とを表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。
【0059】
(実施例8)
事前に60℃で加熱(予備加熱)した状態で摩擦処理したこと以外は実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。
【0060】
(比較例1)
摩擦処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。
【0061】
(比較例2〜7)
摩擦処理ロールの表面の素材と仕事エネルギー量とを表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。
【0062】
(評価)
実施例、比較例で得られた離型フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0063】
(1)離型性(剥離力)
200mm角に切り抜いたカバーレイフィルム(CISV−2535、ニッカン工業社製)のエポキシ接着剤面と、得られた離型フィルムとを重ね、スライド式真空ヒータープレス(MKP−3000v−MH−ST、ミカドテクノス社製)を用いて、圧力30kgf、180℃、6分間でプレスを行った後、23℃、50%RHの条件で1日養生した。その後、養生後のサンプルから巾30mm、長さ150mmの評価サンプルを切り出し、この評価サンプルについて、テンシロン(STA−1150、エーアンドデー社製)を用いて、剥離速度500mm/分、剥離角度180°で剥離力(N/30mm)を測定した。
【0064】
(2)フィルム外観
得られた離型フィルムについて、目視検査をすることにより損傷の有無を評価した。単位面積1mにおいて、幅1mm以上又は長さ100mm以上のシワ又は傷が1本以上観察された場合を×、観察されなかった場合を○として評価を行った。
【0065】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、離型性に優れた離型フィルムを、損傷を抑制しながら効率良く製造することのできる離型フィルムの製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂を含有するフィルムの表面を摩擦処理ロールで摩擦処理する工程を有する離型フィルムの製造方法であって、
前記摩擦処理ロールの表面の素材は、引張強度が1.0〜5.0g/dである繊維からなる織物であり、
前記摩擦処理を、下記式(1)で表される仕事エネルギー量En(KJ)が50〜500KJとなるように行う
ことを特徴とする離型フィルムの製造方法。
【数1】

式(1)中、Arは摩擦処理装置が摩擦処理する面積(m)を表し、Jは摩擦処理するための単位時間あたりの仕事量(KJ/分)を表し、Wは摩擦処理されるフィルムの巾(m)を表し、LSは摩擦処理されるフィルムのライン速度(m/分)を表す。
【請求項2】
引張強度が1.0〜5.0g/dである繊維は、更に、伸度が1〜30%であることを特徴とする請求項1記載の離型フィルムの製造方法。
【請求項3】
更に、熱処理する工程を有することを特徴とする請求項1又は2記載の離型フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2011−131465(P2011−131465A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292079(P2009−292079)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】