説明

離型フィルム用樹脂組成物及び離型フィルム

【課題】 本発明の目的は、押出加工性やオレフィン系重合体とポリジメチルシロキサンの密着性を維持しながら、粘着剤との離型性を改善した離型フィルム用樹脂組成物ならびに離型フィルムを提供することである。
【解決手段】オレフィン系重合体94〜99.989重量%、エポキシ当量が500g/mol以上50000g/mol以下であるポリジメチルシロキサン0.01〜5重量%、及び界面活性剤0.001〜1重量%からなることを特徴とする離型フィルム用樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルム用樹脂組成物及び/又は離型フィルムに関するものである。更に詳しくは、粘着剤などに対する優れた離型性を有し、かつ離型剤の脱離が改良され粘着剤の粘着性を損なわない離型フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
離型フィルムは、未使用時の接着材料の接着面を保護するために接着面上に積層され、使用時には接着面を損傷することなく容易に剥離される剥離面を備えるフィルム状材料であり、粘着テープやラベルなどの台紙として広く使用されている。離型フィルムは通常、基材と、その基材の少なくとも一方の表面上に設けられた離型剤を含んでなる離型層とを備えている。基材には、紙、プラスチックフィルム等が使用され、離型剤には、シリコーン化合物、長鎖アルキル基含有化合物等が使用される。このような離型フィルムにおいて、離型剤が基材と十分密着していない場合、離型フィルムからテープやラベルを剥離した際にテープやラベルの粘着剤表面に離型剤が転写し、テープやラベルの粘着性を悪化させる場合がある。
【0003】
このため、離型フィルムの製造方法としては、基材にビニル基含有ポリジメチルシロキサンなどの離型剤をコーティングした後、離型剤を硬化させる方法が一般的である。しかしながら本方法では、離型剤を均一に塗布するために有機溶剤が大量に用いられることや、離型剤を硬化させる際、基材が高温に晒されるため、ピンホールが発生するなどといった問題が生じていた。
【0004】
このため、本発明者は、離型剤をコーティングする方法ではなく基材となるプラスチックに離型性を付与する方法として、オレフィン系重合体に特定のエポキシ当量を示すポリジメチルシロキサンを少量配合した樹脂組成物、及び該樹脂組成物表面を酸化処理した離型フィルムを提案した(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この方法によれば、オレフィン系重合体とポリジメチルシロキサンの密着が良好であるものの一部の粘着テープとして用いる場合には粘着剤との離型性が不十分であり、改善が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特開2004−297398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような状況を鑑みなされたものであって、押出加工性やオレフィン系重合体とポリジメチルシロキサンの密着性を維持しながら、粘着剤との離型性を改善した離型フィルム用樹脂組成物ならびに離型フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、オレフィン系重合体に対し、特定のエポキシ当量を有するポリジメチルシロキサンと界面活性剤を併用することにより、離型剤と基材との密着性を維持し、且つ粘着剤との離型性を改善した離型フィルムを製造することが可能となる事を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、オレフィン系重合体94〜99.989重量%、及びエポキシ当量が500g/mol以上50000g/mol以下であるポリジメチルシロキサン0.01〜5重量%、及び界面活性剤0.001〜1重量%からなることを特徴とする離型フィルム用樹脂組成物、それからなる離型フィルム及びそれを用いてなる積層体に関するものである。
【0010】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明にて用いられるオレフィン系重合体は、一般的にポリオレフィン系樹脂と称されているものでよく、このようなポリオレフィン系樹脂とは、エチレン、プロピレン、1−ブテンなど炭素数2〜12のα−オレフィンの単独重合体もしくは共重合体を指す。例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−へキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体等のエチレン系重合体、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体などのプロピレン系重合体、ポリ1−ブテン、ポリ1−ヘキセン、ポリ4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、これらオレフィン系重合体は、1種単独又は2種以上の組み合わせで用いてもよい。このようなオレフィン系重合体の中では、エチレン系重合体が離型性、フィルム成形性、コストパフォーマンスに優れ、好ましい。
【0012】
ここで、オレフィン系重合体の重合方法は、特に限定するものではなく、低密度ポリエチレンやエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体等の場合、例えば高圧法によるラジカル重合法を挙げることができる。また、高密度ポリエチレン、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−へキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、ポリ1−ブテン、ポリ1−ヘキセン、ポリ4−メチル−1−ペンテン等の場合、チーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒を用いた気相法、溶液法、スラリー法、高圧法等の重合法を挙げることができる。
【0013】
本発明に用いられるオレフィン系重合体は、JIS K6922−1(1997年)によるMFRが0.1〜50g/10分の範囲にあるとフィルム成形加工性に優れるため好ましい。MFRが低すぎるとフィルム成形加工に供した際に押出負荷が大きく製膜時の延展性が悪い場合がある。またMFRが高すぎると、フィルム成形加工に供した際に必要な溶融粘度が低く、フィルム成形加工性に劣る場合がある。
【0014】
また、該オレフィン系重合体は、JIS K6922−1(1997年)で測定した密度が880〜970kg/mの範囲にあると離型性に優れるため好ましい。密度が低すぎると粘着剤塗布工程において離型フィルムの耐熱性が不足し、粘着剤と離型フィルムの接着強度が上昇することがある。一方、密度が高すぎるとフィルムの剛性が高くなり過ぎる場合がある。
【0015】
本発明にて用いられるポリジメチルシロキサンは、主に離型フィルムの離型性を発現させるために配合されるものであり、エポキシ当量が500g/mol以上50000g/mol以下を示すものである。エポキシ当量が500g/mol未満の場合、離型フィルムの離型性が劣り好ましくなく、エポキシ当量が50000g/molを超える場合、ポリジメチルシロキサンとエチレン系重合体の密着が不十分となり、剥離層のラブ・オフ(rub off)が生じるため好ましくない。また押出ラミネート成形などにより形成された積層体において基材と本発明の樹脂組成物との接着性が劣るため好ましくない。
【0016】
本発明にて用いられるエポキシ当量が500g/mol以上50000g/mol以下であるポリジメチルシロキサンは、25℃における粘度が50cSt以上を示すものが押出成形時の減量が少なく好ましい。
【0017】
本発明にて用いられるポリジメチルシロキサンは、例えば信越化学工業株式会社から商品名信越シリコーンKF−1001、KF−102等が市販されている。
【0018】
本発明にて用いられるエポキシ当量が500g/mol以上50000g/mol以下であるポリジメチルシロキサンは、離型フィルム用樹脂組成物に0.01〜5重量%、好ましくは0.2〜5重量%配合される。エポキシ当量が500g/mol以上50000g/mol以下であるポリジメチルシロキサンの配合割合が0.01重量%未満の場合は該ポリジメチルシロキサンのフィルム表面への滲出量が少なく、離型フィルムの離型性が劣り好ましくない。又5重量%を超える場合は該ポリジメチルシロキサンのフィルム表面への滲出量が過剰となり、離型フィルムに粘着させた粘着剤の再粘着性を損なうため好ましくない。また押出機内において樹脂が滑り、フィルム化できない場合がある。
【0019】
本発明に用いられる界面活性剤は、1分子内に疎水基と親水基を有する化合物のことであり、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤がある。
【0020】
陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウムなどの脂肪酸金属塩、アルキルスルフォン酸ナトリウム、アルキルスルフォン酸カリウム、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルフォン酸カリウムなどのアルキルスルフォン酸金属塩、硫酸化脂肪酸エステル、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩などが例示される。
【0021】
陽イオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、アルキルアンモニウムクロライドなどのアルキルアンモニウム塩などが例示される。
【0022】
両イオン性界面活性剤としては、アルキルジメチルカルボキシメチルベタイン、アルキルジヒドロキシエチルカルボキシジメチルベタインなどのアルキルベタイン類を例示することができる。
【0023】
さらに非イオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステルなどの多価アルコールエステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルなどが例示される。
【0024】
このような界面活性剤は、市販品の中から便宜選択することができ、2種以上を混合して使用することもできる。また市販されている界面活性剤の多くは少量の不純物を含むことがあるが、効果を阻害しない範囲であれば特に構わない。
【0025】
この中では、陰イオン性界面活性剤及び非イオン系界面活性剤が押出成形中の耐熱性に優れるため好ましく、さらに陰イオン性界面活性剤であるアルキルスルフォン酸金属塩が積層体として用いた場合の層間接着性に優れるため特に好ましい。
【0026】
本発明にて用いられる界面活性剤は、離型フィルム用樹脂組成物に0.001〜1重量%、好ましくは0.01〜0.7重量%配合される。界面活性剤の配合割合が0.001重量%未満の場合は離型性の改善効果がなく、又1重量%を超える場合は該界面活性剤のフィルム表面への滲出量が過剰となり、離型フィルムに粘着させた粘着剤の再粘着性を損なうため好ましくない。
【0027】
さらに本発明の離型フィルム用樹脂組成物には、エポキシ当量が50g/mol以上500g/mol未満であるポリジメチルシロキサン(以下、ポリジメチルシロキサン(B)と記す場合がある。)を含むと離型性を改善することができるため好ましい。
【0028】
ポリジメチルシロキサン(B)は、例えば信越化学工業株式会社から商品名信越シリコーンKF−101等が市販されている。
【0029】
ポリジメチルシロキサン(B)は、離型フィルム用樹脂組成物に0.001〜1重量%配合されると、エポキシ当量が500g/mol以上50000g/mol以下であるポリジメチルシロキサンの硬化反応を十分に促進することができ、オレフィン系重合体からの脱離を抑制することができるばかりでなく、離型性をも向上させることができるため好ましい。
【0030】
また、エポキシ当量が500g/mol以上50000g/mol以下であるポリジメチルシロキサンとエポキシ当量が50g/mol以上500g/mol未満のポリジメチルシロキサン(B)の重量比が1000/1〜2/1の範囲にあると離型性と粘着剤の粘着性防止効果のバランスに優れるため、さらに好ましい。
【0031】
また、本発明の離型フィルム用樹脂組成物は、必要に応じてアミノ基及び/又はカルボキシル基を有するポリジメチルシロキサンを配合してもよい。アミノ基及び/又はカルボキシル基を有するポリジメチルシロキサンを含むと粘着剤の表面汚染が防止されるため好ましい。このようなアミノ基及び/又はカルボキシル基を有するポリジメチルシロキサンは、例えば東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社から商品名SF−8417、BY16−208、BY16−880、BY16−750等が市販されている。
【0032】
また、本発明の離型フィルム用樹脂組成物は、必要に応じて酸化防止剤、滑剤、中和剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ剤等、通常オレフィン系樹脂に使用される添加剤を添加したものでもかまわない。
本発明の離型フィルム用樹脂組成物は、通常用いられる樹脂の混合装置により製造することができる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダ−、回転ロールなどの溶融混練装置、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーなどが挙げられる。溶融混練装置を用いる場合、溶融温度はオレフィン系重合体の融点〜350℃程度が好ましい。
【0033】
本発明の離型フィルムは、本発明の離型フィルム用樹脂組成物をインフレーション成形機、Tダイキャスト成形機、カレンダー成形機、プレス成形機等を用いて製造することができる。インフレーション成形やTダイキャスト成形においては共押出法により積層体を得ることも可能であり、また押出ラミネート成形や共押出ラミネート成形、ドライラミネート成形、サーマルラミネート成形などのラミネート成形により積層体を得ることも可能である。インフレーション成形機、Tダイキャスト成形機、カレンダー成形機、プレス成形機を用いる場合、樹脂温度は150℃〜300℃が好ましく、押出ラミネート成形機を用いる場合は、200℃〜350℃が好ましく、240℃〜340℃がさらに好適である。
【0034】
また積層体を構成する基材としては合成高分子フィルム又はシート、織布、不織布、紙、金属箔等が挙げられる。合成高分子フィルム又はシートとして、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成高分子からなるフィルム又はシート等が挙げられる。更に、これら高分子フィルム又はシートはさらにアルミ蒸着、アルミナ蒸着されたものでもよい。また、これら高分子フィルム又はシートは、さらにウレタン系インキ等を用い印刷されたものでもよい。織布、不織布としては、ポリエステルやポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂製のもの、あるいはスフなどの天然材料を原料したものが挙げられる。紙としては、クラフト紙、クルパック紙、上質紙、グラシン紙、板紙等が挙げられ、金属箔としてはアルミニウム箔、銅箔などが挙げられる。
【0035】
本発明の離型フィルムの厚みは、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はなく、柔軟性に優れ、破損などの問題が小さいことから、1μm〜5mmの厚みであることが好ましい。
【0036】
本発明の離型フィルムは、テープやラベルの粘着剤表面への離型剤転写を抑制するため、その表面の少なくとも片面が酸化されているものが好ましい。さらに該酸化により剥離強度が低下し離型性を向上させることができる。
【0037】
フィルム表面を酸化する際の酸化処理方法としては、クロム酸処理、硫酸処理、空気酸化、オゾン処理、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理等が挙げられ、ポリオレフィン樹脂表面に酸化物を効果的に形成させるためコロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理が好ましい。
【0038】
コロナ放電処理は、プラスチックフィルムやシート表面の連続処理技術として広く使用されているものであり、コロナ放電処理機により発生したコロナ雰囲気にフィルムを通過させることにより行われる。コロナ放電密度として、1〜100W・分/mであることが粘着剤の再粘着性に優れ好ましい。
【0039】
フレーム処理は、天然ガスやプロパン等を燃焼させたときに生じる火炎にフィルム表面を接することで処理が行われる。
【0040】
プラズマ処理は、アルゴン、ヘリウム、ネオン、水素、酸素、空気等の単体又は混合気体をプラズマジェットで電子的に励起せしめた後、帯電粒子を除去し、電気的に中性とした励起不活性ガスをフィルム表面に吹き付けることにより行われる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の離型フィルム用樹脂組成物を用いた離型フィルムは、ラベル、シール用の剥離紙やテープ等、広範囲にわたる産業用資材として極めて有用である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0043】
以下に、物性、加工性の測定方法と評価方法を示す。
【0044】
(1)メルトマスフローレート(MFR)
JIS K6922−1(1997年)に準拠して測定した。
【0045】
(2)密度
JIS K6922−1(1997年)に準拠して測定した。
【0046】
(3)離型性
実施例により得られた積層体の離型フィルム側表面にクラフト粘着テープ(ニチバン社製 商品名クラフト粘着テープNo.313)を貼付し、線圧5kgf/cm、速度5m/分の条件でゴムロール間を通過させた後、23℃の雰囲気で1日間放置した。その後、布粘着テープと離型フィルムとの接着強度を引張試験機(島津製作所製 オートグラフDCS−100)にて測定した。剥離速度は300mm/分、試験片の巾は50mmである。
【0047】
(4)粘着テープの再粘着性
離型性試験により剥離した布粘着テープをアルミニウム板(東洋アルミニウム(株)製 商品名A1N30H−H18、厚み0.1mm)に5kgf/cmの線圧で貼付した。23℃の雰囲気にて1日放置した後、布粘着テープとアルミニウム板の接着強度を引張試験機(島津製作所製 オートグラフDCS−100)にて測定した。剥離速度は300mm/分、試験片の巾は50mmである。粘着テープの粘着剤表面が離型フィルムにより汚染された場合、粘着テープの再粘着性が低下し、粘着テープとしての性能を損なう。すなわち、再粘着強度は高い方が好ましい。
【0048】
(5)基材との接着性
実施例により得られた積層体の紙/離型フィルム間の接着強度を引張試験機(島津製作所製 オートグラフDCS−100)にて測定した。剥離速度は300mm/分、試験片の巾は15mmである。基材である紙の材質破壊が起こる程度に接着していれば、基材との接着性が良好であると言える。
【0049】
実施例1
オレフィン系重合体として、MFRが8g/10分、密度が918kg/mである低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン213、以下LDPEと記す場合がある)96.9重量%、エポキシ当量が500g/mol以上50000g/mol以下であるポリジメチルシロキサンとして、エポキシ当量3500g/mol、粘度17000cStであるエポキシ変性シリコーン(A−1)(信越化学工業(株)製 商品名信越シリコーンKF−1001、以下、A−1と記す場合がある)を3重量%、界面活性剤としてアルキルスルフォン酸ナトリウム塩(C−1)(ミヨシ油脂(株)製 商品名ダスパー802D、以下、C−1と記す場合がある)を0.1重量%になるよう配合し、ニ軸押出機(東芝機械製、TEM50B)にて溶融混練(温度150℃)し、離型フィルム用樹脂組成物のペレットを得た。
【0050】
得られたペレットを90mmΦのスクリューを有する押出ラミネーターの押出機へ供給し、325℃の温度でTダイより押出し、基材として予めクラフト紙(王子製紙(株)製坪量50g/m)に低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン213)を15μm積層した積層紙の低密度ポリエチレン面に、ライン速度150m/分の条件にて、離型フィルム用樹脂組成物が15μmの厚さになるようラミネートし積層体を得た後、積層体の離型フィルム用樹脂組成物表面に15W・分/mの条件でコロナ処理を施し、離型フィルムを得た。
【0051】
得られた積層体を20時間40℃に保温されたオーブン中に保管した後、離型性、再粘着性、基材との接着性を測定し、その測定結果を表1に示した。
【0052】
【表1】

実施例2
オレフィン系重合体として、LDPEを96.7重量%、エポキシ当量が500g/mol以上50000g/mol以下であるポリジメチルシロキサンとして、エポキシ変性シリコーン(A−1)を3重量%、界面活性剤(C−1)を0.3重量%になるよう配合した以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。評価結果を表1に示した。
【0053】
実施例3
界面活性剤として、アルキルスルフォン酸ナトリウム塩(C−1)の代わりにステアリン酸モノグリセリド(理研ビタミン製 商品名リケマールS−100、以下C−2と記す場合がある。)を用いたこと以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。評価結果を表1に示した。
【0054】
実施例4
オレフィン系重合体として、LDPEを96.9重量%、エポキシ当量が500g/mol以上50000g/mol以下であるポリジメチルシロキサンとして、エポキシ変性シリコーン(A−1)を2.7重量%、エポキシ当量が50g/mol以上500g/mol未満であるポリジメチルシロキサンとしてエポキシ当量が350g/molであるエポキシ変性シリコーン(信越化学工業製 商品名KF101、以下B−1と記す場合がある。)を0.3重量%、界面活性剤(C−1)を0.1重量%になるよう配合した以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。評価結果を表1に示した。
【0055】
実施例5
オレフィン系重合体として、LDPEの代わりに、MFRが7.5g/10分、密度が902kg/mであるエチレン・1−オクテン共重合体(ダウケミカル製 商品名アフィニティPT1450、以下C8LLと記す場合がある)とした以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。評価結果は表1に示した。
【0056】
比較例1
オレフィン系重合体としてLDPEを97重量%、エポキシ当量が500g/mol以上50000g/mol以下であるポリジメチルシロキサンとしてエポキシ変性シリコーン(A−1)を3重量%とし、界面活性剤を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。評価結果を表2に示したが、粘着剤との剥離強度が高く、離型性に劣っていた。
【0057】
【表2】

比較例2
オレフィン系重合体としてLDPEを99.9重量%、界面活性剤(C−1)0.1重量%とし、エポキシ当量が500g/mol以上50000g/molであるポリジメチルシロキサン(A−1)を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。評価結果を表2に示したが、粘着剤との剥離強度が著しく上昇し、粘着剤の再粘着性試験ができなかった。
【0058】
比較例3
オレフィン系重合体としてLDPEを93.9重量%、エポキシ当量が500g/mol以上50000g/mol以下であるポリジメチルシロキサンとしてエポキシ変性シリコーン(A−1)を6重量%、界面活性剤(C−1)を0.1重量%としたこと以外は実施例1と同様にして離型フィルムの製造を試みたが、押出不良のためフィルムを得ることができなかった。
【0059】
比較例4
オレフィン系重合体としてLDPEを95.8重量%、エポキシ当量が500g/mol以上50000g/mol以下であるポリジメチルシロキサンとしてエポキシ変性シリコーン(A−1)を3重量%、界面活性剤(C−1)を1.2重量%としたこと以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。評価結果を表2に示したが、粘着剤の再粘着性に劣っていた。
【0060】
比較例5
オレフィン系重合体としてLDPEを95.8重量%、エポキシ当量が500g/mol以上50000g/mol以下であるポリジメチルシロキサンとしてエポキシ変性シリコーン(A−1)を3重量%、界面活性剤(C−2)を1.2重量%としたこと以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。評価結果を表2に示したが、紙とLDPE層の接着性が著しく低下し、離型性及び粘着剤の再粘着性の測定ができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系重合体94〜99.989重量%、及びエポキシ当量が500g/mol以上50000g/mol以下であるポリジメチルシロキサン0.01〜5重量%、及び界面活性剤0.001〜1重量%からなることを特徴とする離型フィルム用樹脂組成物。
【請求項2】
界面活性剤が、アルキルスルフォン酸金属塩であることを特徴とする請求項1に記載の離型フィルム用樹脂組成物。
【請求項3】
オレフィン系重合体が、JIS K6922−1(1997年)で測定したメルトマスフローレイトが0.1〜50g/10分、JIS K6922−1(1997年)で測定した密度が880〜970kg/mであるであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の離型フィルム用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の離型フィルム用樹脂組成物を用いてなることを特徴とする離型フィルム。
【請求項5】
少なくとも片面が酸化されていることを特徴とする請求項4に記載の離型フィルム。
【請求項6】
酸化処理が、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の処理方法であることを特徴とする請求項5に記載の離型フィルム。
【請求項7】
請求項4〜請求項6のいずれかに記載の離型フィルムを少なくとも1層以上含むことを特徴とする積層体。
【請求項8】
紙、布、合成樹脂からなる織布又は不織布から選ばれる1種以上の基材と積層されてなることを特徴とする請求項7に記載の積層体。

【公開番号】特開2007−262188(P2007−262188A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87338(P2006−87338)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】