説明

離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルム及びこれを用いた離型フィルム

【課題】離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルム及びこれを用いた離型フィルムを提供すること。
【解決手段】本発明は、離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルム及びこれを用いた離型フィルムに関する。本発明においては、幅方向に2m間の配向角差が3°以内であり、複屈折率が0.05以上である離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルムを提供する。本発明に係る離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルムは、複屈折率が大きく、且つ、延伸によるボーイング現象の減少により配向角に優れていることから、偏光板を用いた欠点検査時に光漏れ現象や光沢現象を制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルム及びこれを用いた離型フィルムに係り、さらに詳しくは、複屈折率が大きく、且つ、延伸によるボーイング現象の減少により配向角に優れていることから、偏光板を用いた欠点検査時に光漏れ現象や光沢現象を制御することのできる離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルム及びこれを用いた離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、従来の陰極線管(CRT;Cathode Ray Tube)に比べて軽量、低電力消費、薄型及び高画質の長所を有する液晶表示装置(Liquid Crystal Display;以下、「LCD」と称する。)の需要が急増している。最近、この種のLCDの大画面化が進んでおり、この傾向から、バックライトの輝度を上げたり輝度を向上させた機能性フィルムを使用する場合が多い。かような高輝度型のLCDにおいては、輝度が高いため、部品内の小さな異物も問題視されている。これにより、各部品の製造工程において異物の混入を防ぐ活動が強化されており、たとえ異物が混入されたとしても、当該製品が流出されないように工程検査、品質検査及び出荷検査に対する基準が段々厳しくなるのが現状である。このときに採用する欠点検査法は、2枚の偏光板を用いて偏光板の配向軸を直交させ、偏光板の間に検査しようとする製品を挟み込んで検査する直交偏光子法(クロスニコル)による目視検査が一般的であり、クロスニコル法による検査時に異物や欠点が存在する場合には輝点として現れることになる。
【0003】
特に、偏光板フィルムの部材として、優れた機械的、熱的、光学的特性などにより2軸延伸されたポリエステルフィルムが多用されているが、2軸延伸工程によるポリエステルフィルムの光学的異方性により偏光板クロスニコル法検査時に光が漏れるといった現象が発生し、これにより、偏光板関連製品に存在する小さな異物や欠点を検査するのに障害となっている。また、最近には、クロスニコル法による検査が強化される中で、2枚の偏光板の配向を直交させた状態で正面から検査する他に、左右側面から傾斜角を与えて検査することになるが、このときに発生する光沢現象による眩しさにより検査員が目に疲労感を感じ易く、欠点と異物検査時に障害となっている。
【0004】
偏光板用部材の一例として、例えば、下記の特許文献1には、2軸配向芳香族ポリエステルフィルムを基材フィルムとする離型フィルムを使用し、前記2軸配向ポリエステルフィルムの配向主軸の方向と偏光板、位相差偏光板または位相差板の配向軸の方向とが実質的に同じくなるように位置させることを特徴とする積層体及びそのための離型フィルムが記載されている。しかしながら、2軸配向ポリエステルフィルムの配向主軸の方向と偏光板、位相差偏光板または位相差板の配向軸の方向とが実質的に一致するように位置させるためには、2軸配向ポリエステルフィルムの配向主軸を確認し、その方向と偏光板、位相差偏光板または位相差板の配向軸の方向とを実質的に一致させる必要があるが、生産性の側面で極めて困難である。また、2軸配向ポリエステルフィルムの配向主軸が幅方向(機械方向と直交する方向)に存在する部分だけを使用した場合には、上記の如き配向主軸を確認する手間はなくなるが、製造された2軸配向ポリエステルフィルムの中央部の一部であり、それ以外の部分は同様に使えなくなって生産性及びコストの側面で不利であり、商業的に難点が存在する。
【0005】
一般的に、2軸配向ポリエステルフィルムは、製膜工程における長手方向及び幅方向への延伸工程により機械的、熱的特性が互いに均衡をなし、前記フィルムの分子配向主軸の方向は幅または長手方向の延伸比率に依存的であり、幅方向の中央部は幅方向に向かうものの、中央部から端部に進むにつれて漸進的に長手方向に傾くことになる。
【0006】
配向角とは、フィルムの幅方向または長手方向と分子配向主軸との間の角度を意味するものであり、本発明においては、フィルムの幅方向に対して分子配向がなす角度を意味する。すなわち、幅方向の位置に応じて配向角に大きな違いが発生するが、その主たる原因としては、テンター延伸工程中の機械的物性確保のための高温の熱処理工程によりフィルムの長手方向への応力が制御し難くてボーイング現象が発生することが挙げられる。このような現象により、フィルムの中央部よりも両端方向に進むにつれて配向角が大きくなる。このとき、偏光基材を保護するために用いられるポリエステルフィルムは、配向角があるレベル以上に大きくなると、1軸配向された偏光基材に積層されたとき、クロスニコル法による目視検査時に光学的等方性による光の干渉が発生し、これにより、検査時の完璧なブラックモード状態から光が漏れてしまい、異物や欠点検査が困難になる。干渉の度合いは中央部よりも両端方向に進むにつれて激しくなるため、離型フィルムとして配向角があるレベル以下の値を満足する特定(特に、中央部)の部分だけを使用すると、生産性が大幅に低下するという不都合がある。
【0007】
このため、偏光基材保護用に適しており、且つ、生産される全幅のポリエステルフィルムを当該用途に使用するためには、ボーイング現象を極力抑えるための試みが必要である。ボーイング現象を極力抑えるためには、ポリエステルの製造工程に際して長手方向と幅方向の延伸比率に大きな違いを与えて、どの方向にでも一方向に強く配向させる方法が提案されている。特に、長手方向よりも相対的に幅方向の延伸比率を高めることにより、幅方向への配向角の変動差を小さくする方法が一般的である。これを実現するために、幅方向に延伸し過ぎる場合には延伸工程中にフィルムが引きちぎれる場合が頻繁に発生して生産性に不利に作用することになる。そこで、幅方向の延伸比はフィルムが引きちぎれない範囲に固定し、長手方向の延伸比を低くすれば低くするほど、幅方向への配向角は0°に次第に近づき、幅方向の位置別配向角の変動差も減少されるが、長手方向の延伸による延伸むらが発生してしまう結果、クロスニコル法による目視検査時に欠点として現れたり検査に妨害を与える。これに対し、延伸むらの問題を改善するために長手方向の延伸比を高めると、幅方向への配向角が大きくなるため、偏光板用保護フィルムとして不向きである。また、2軸延伸ポリエステルフィルムの場合において、熱的安定性が悪ければ後加工コーティング工程においてフィルムの熱シワが発生する場合があるため、後加工工程温度が通常150℃以下であるため、これに対する熱収縮管理が必要であり、これは、検査障害を誘発し、寸法安定性に問題をきたすだけではなく、粘着コーティング時に欠点を引き起こす原因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−101026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、偏光板を用いた欠点検査時に光漏れ現象や光沢現象を制御することのできる離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルムを提供することである。
【0010】
また、本発明の他の目的は、前記2軸延伸ポリエステルフィルムを用いた離型フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明に係る離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルムは、幅方向に2m間の配向角差が3°以内であり、複屈折率が0.05以上である。
【0012】
また、本発明に係る離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルムにおいて、長手方向と幅方向の屈折率値が0.05以上であることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明に係る離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルムの収縮率は、幅方向及び長手方向の熱収縮率がそれぞれ5%以内であることが好ましく、さらに好ましくは、4%以内である。
【0014】
本発明に係る離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルムのヘイズが6%以内であることが好ましい。
【0015】
本発明に係る離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルムは、下記式1を満足しなければならない:
【0016】
[式1]
A≦B×30
【0017】
式中、Aは、配向軸が直交された2枚の偏光板の間に2軸延伸ポリエステルフィルムを挟み込み、長手方向を偏光板の1配向軸と一致させた状態で下部光源から通過された輝度値であり、Bは、2枚の偏光板の配向軸を直交させた状態で下部光源から通過された輝度値である。
【0018】
本発明に係る離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルムは、どちらか1面にシリコーンコーティング層がさらに形成されて離型フィルムとして使用されうる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルムは、複屈折率が大きく、且つ、延伸によるボーイング現象の減少により配向角に優れていることから、偏光板を用いた欠点検査時に光漏れ現象や光沢現象を制御することができる。その結果、本発明に係る離型フィルムは、クロスニコル法による異物や欠点の目視検査を容易に行うことができ、特に、大画面のLCDに使用する場合において欠点と異物を見逃す可能性を低めることにより目視検査の正確度を高めて製品の不良率を画期的に低減することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルムは、フィルムの幅方向に2m間の配向角差が3°以内であり、複屈折率が0.05以上である。
【0021】
本発明に係る離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルムは、幅方向への配向角差が2m幅に3°以内であることが好ましい。2m幅に3°以内である場合には、2枚の偏光板のクロスニコル検査時に光が漏れることなくブラックモード環境を維持することにより、異物と欠点検査が容易であり、且つ、生産性とコストの側面で有利である。2m幅に3°を超える場合には偏光板の配向軸との配向軸のねじれにより光が漏れるという問題点が発生する。
【0022】
一方、本発明において、複屈折率とは、幅方向及び長手方向の屈折率値差の絶対値であり、本発明においては、幅方向の延伸倍率の方が大きなため、幅方向の屈折率値から長手方向の屈折率値を差し引いた値を複屈折率と称する。本発明に係る離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルムにおいて、複屈折率値が0.05以上であることが好ましい。複屈折率値が0.05未満である場合には2枚の偏光板クロスニコル検査時に光沢が激しく発生して検査の障害を引き起こす結果、異物や欠点を見逃す場合があるためである。
【0023】
本発明に係る離型フィルム用2軸配向フィルムに用いられるポリエステルは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールを重縮合させて得られたポリエステルのことをいい、その種類には特に制限がない。前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などを挙げることができ、前記脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどを挙げることができる。ポリエステルの代表例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)などがある。前記ポリエステルとしては、第3成分を含有する共重合体を使用することも可能である。前記第3成分を含有した共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)を挙げることができ、グリコール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコールなどを挙げることができる。これらのジカルボン酸成分及びグリコール成分は、2種以上を併用してもよい。
【0024】
一方、本発明に係る離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルムの熱収縮率は150℃、30分の乾燥条件下で測定するが、幅方向及び長手方向の熱収縮率がそれぞれ5%以内であることが好ましく、さらに好ましくは、4%以内である。5%を超えると、後加工工程においてフィルムに発生する熱シワにより検査障害を誘発したり粘着剤などのコーティング外観に問題を引き起こす恐れがある。熱収縮率は、熱的安定性を維持するためのものであり、低ければ低いほど好ましい。
【0025】
本発明に係る離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルムのヘイズが6%以内であることが好ましい。ヘイズ値が6%を超えると、フィルム表面と内部に存在する異物欠点が検査時に見逃され易く、偏光板の付着時に異物による輝点発生などの不良を誘発してしまう。測定方法が段々厳しくなる製品欠点及び光学的特性値の管理強化のために低いヘイズを有する透明なフィルムが求められている。ヘイズが6%を超えると、色感など光学的特性低下が発生するといった問題がある。
【0026】
ヘイズはポリエステルフィルムの内部に存在する粒子の種類と含量に依存的であり、粒子使用量が少な過ぎると、製品の巻取に不利であって傷付きや巻取突起などの問題点が発生する恐れがあるが、できる限り少量を使用して光学的特性を低下させないことが好ましい。使用される粒子の種類としては、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、二酸化チタンなどの無機粒子、および、架橋ポリスチレン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂などの有機粒子などが好ましく、1種以上を使用することができ、平均粒子径は0.05〜3.5μmであることが好ましい。粒子径が0.05μm未満と低過ぎるとフィルム面の表面粗さが低過ぎてポリエステルフィルムの製造工程中にフィルム表面に傷付き及び粘着欠点を引き起こし、3.5μmを超えると、フィルム表面の傷付きと粘着欠点には有利であるとはいえ、ヘイズが高すぎて製品欠点検査時に欠点を見逃す可能性があり、表面にクレーターが形成されるといった欠点を誘発する恐れがある。
【0027】
本発明に係る離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルムは、下記式1を満足しなければならない:
【0028】
[式1]
A≦B×30
【0029】
式中、Aは、配向軸が直交された2枚の偏光板の間に2軸延伸ポリエステルフィルムを挟み込み、長手方向を偏光板の1配向軸と一致させた状態で下部光源から通過された輝度値であり、Bは、2枚の偏光板の配向軸を直交させた状態で下部光源から通過された輝度値である。
【0030】
B値は、2枚の偏光板の配向軸を直交させた状態であるため、下部から通過された光が最小となった状態であることから、内部異物検査が容易であり、2枚の直交偏光板の間にポリエステルフィルムが挟み込まれる場合には下部から通過される光の経路がポリエステルフィルムにより屈折されて2枚の偏光板を通過した光は多量になり、このときに測定されたA値は高くなる。A値がB値の30倍を超える場合には直交偏光板の検査に際して光漏れにより偏光板内部の異物や欠点検査を容易に行うことができなくなり、もし、欠点や異物が混入された状態で加工される場合、最終製品の不良を誘発することになる。
【0031】
本発明に係る離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルムは、どちらか1面にシリコーンコーティング層がさらに形成されて離型フィルムとして使用可能である。ポリエステルフィルムのどちらか1面に塗布されたシリコーンコーティング層は、特定の機能を持つフィルム面に貼着された粘着層と貼り合わせられ、粘着層が他の基材に貼着するまで粘着層を保護する用途に用いられる。この目的で用いられるシリコーンコーティング層用化合物は、安定的な離型剥離力の管理のために硬化型シリコーン樹脂が好ましく、その例として、硬化型シリコーン樹脂を含有する樹脂を主成分とする樹脂、またはウレタン樹脂、エポキシ樹脂またはアルキド樹脂などの有機樹脂をグラフト重合反応させて得られたシリコーン樹脂などが使用可能である。
【0032】
本発明に係る2軸延伸ポリエステルフィルムは、上述した構成を有するポリエステル樹脂を真空乾燥後に押出機により溶融してT−ダイを介してシート状に押出し、冷却ロールに静電気印加法によりキャストドラムに密着させて冷却・固化させて未延伸ポリエステルシートを得、これをポリエステル樹脂のガラス転移温度以上に加熱されたロールにおいてロールとロールとの間の走速比を2.5〜4.0倍の範囲にして長手方向に1軸延伸を行うことにより1軸延伸ポリエステルフィルムを製造する。
【0033】
1軸延伸されたポリエステルフィルムを幅方向に3.5〜6倍の範囲においてさらに延伸して2軸延伸されたポリエステルフィルムを製造する。95℃以上における幅方向への延伸工程を通過させ、次いで、180〜240℃の高温の熱処理工程を経由させて機械的強度と伸び及び結晶化度などを調整し、最後に、高温延伸による応力緩和のために幅方向のフィルムの長さを減らす応力緩和工程を通じて2軸延伸ポリエステルフィルムを製造し、厚さは、通常、5〜300μm、好ましくは、10〜250μmである。
【0034】
以下、本発明を実施例を挙げて詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するために例示されたものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されないということは当業界における通常の知識を持った者にとって自明である。
【0035】
[実施例1〜3]
平均粒子径が2.3μmのシリカ粒子を樹脂内に400ppm含有するポリエチレンテレフタレート樹脂を160℃の温度条件下で6時間減圧乾燥した。乾燥された樹脂を280℃の押出機により溶融させて押し出し、8μmサイズのフィルターに通させてろ過させ、溶融物をT−ダイを介して押出させた後、静電気印加法により20〜25℃の冷却ロールによりシート状に冷却成形して未延伸シートを製造した。前記未延伸シートを加熱ロールに通過させた後、赤外線ヒーター及びロール間の走速比を用いて長手方向に2.8倍延伸させ、次いで、90〜110℃のテンター延伸区間を通過させて幅方向に4.7〜5.0倍延伸させた。最後に、195〜205℃の熱処理工程を通過させて厚さ38μmの透明な離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルムを製造した(応力緩和率4.7〜5.0%)。得られた結果を下記表1にまとめる。
【0036】
[比較例1〜3]
延伸条件下で長手方向に2.8〜3.4倍、幅方向に4.7倍延伸し、熱処理温度を205〜230℃、応力緩和率を4.5〜5.0%に変えた以外は、実施例の方法と同様にして2軸延伸ポリエステルフィルムを製造した。
【0037】
前記実施例1〜3及び比較例1〜3において製造された2軸延伸ポリエステルフィルムに対して、偏光板検査環境下の保護フィルムとして求められる特性を調べるために下記の如き実験を行った。
【0038】
[実験例1]:複屈折率の測定
前記実施例1〜3及び比較例1〜3において製造された2軸延伸ポリエステルフィルムに対して、屈折計(KS−SYSTEM社製ATAGO ABBE)を用いて屈折率を測定した。下記の計算式により複屈折率を得、その結果を下記表1にまとめる。
【0039】
複屈折率=幅方向の屈折率値−長手方向の屈折率値
【0040】
[実験例2]:熱収縮の測定
前記実施例1〜3及び比較例1〜3において製造された2軸延伸ポリエステルフィルムを切り取って幅150mm、長さ150mmの試験片をサンプリングした後、拡大鏡(Mitutoyo社製Profile project PJ−H3000F)により10倍拡大して実際のサイズを確認した。150℃に設定された熱風循環式高温乾燥機により試料を30分間加熱した後に取り出し、これを拡大鏡により実際のサイズを確認し、下記式から算出して、その結果を下記表1にまとめる。
【0041】
熱収縮率(%)=((加熱前の長さ−加熱後の長さ)/加熱前の長さ)×100
【0042】
[実験例3]:光漏れ現象
前記実施例1〜3及び比較例1〜3において製造されたフィルムを横縦それぞれ10cmのサイズのフィルムにし、これを配向軸が互いに90°になるように直交させた2枚の偏光板の間に挟み込んだ。2軸延伸ポリエステルフィルムの長手方向をどちらか1枚の偏光板の配向軸に一致させた状態で輝度測定機(コニカミノルタ社製CA2000)を用いてサンプル内の一定間隔範囲の9個所に対してクロスニコル状態での輝度を測定し、その平均値(A)を求めた。2枚の偏光板を直交させた状態で測定された輝度平均値(B)を基準とし、且つ、下記の基準に準拠して光漏れ現象を評価した。
【0043】
○:A≦B×30
△:B×30<A≦60
×:A>60
【0044】
[実験例4]:光沢現象
前記実施例1〜3及び比較例1〜3において製造されたA4サイズの2軸延伸ポリエステルフィルムを1軸延伸され、且つ、配向軸を互いに直交させた2枚の偏光板の間に付着する。2軸延伸ポリエステルフィルムの長手方向を偏光板の配向軸に一致させた状態で、検査用サンプルと肉眼がなす角度が30°程度であり、かつ、サンプルから約50cm離れた位置において強い虹色の発生度合いによる光沢現象を目視観察した。光沢現象の発生度合いは下記の基準に準拠して評価した。
【0045】
○:サンプルの全体に亘って青っぽくて赤っぽい領域だけが存在し、黄色や白色がまったくなくて光沢がない
△:サンプルの全体に亘って青っぽくて赤っぽい領域がほとんどであるが、一部の縁部に黄色が薄く見られる
×:サンプルの多くの領域において黄色と白色の光が強く現れ、眩しさが強くて欠点検査し難い
【0046】
[実験例5]:ヘイズ測定
JIS K7105に準拠し、フィルムの長手方向4cm及び幅方向4cmの寸法に切り取った2軸延伸ポリエステルフィルムのサンプルをヘイズ測定機(日本電色社製AUTOMATIC DIGITAL HAZEMETER)を用いて位置が異なる3個所を測定してその平均値を適用し、その結果を下記表1にまとめる。
【0047】
[実験例6]:端部配向角の測定
前記実施例1〜3及び比較例1〜3において製造された2軸延伸ポリエステルフィルムの全幅製品に対して、幅方向の両端部の位置において配向角測定のためのA4サイズのサンプルを取り、そこから内側に毎2mおきの位置において配向角測定のためのA4サイズにサンプルを取った。各位置のサンプルに対して分子配向計(MOA;Molecular Orientation Analyzer)を用いて配向角を測定し、その結果を下記表1にまとめる。ここで、配向角は、分子配向の主軸が幅方向に対してなす角度である。
【0048】
【表1】

【0049】
実施例1〜3及び比較例1〜3に対し、上記表1の結果から明らかなように、長手方向の延伸倍率を低くし、幅方向の延伸倍率を高くするほど、そして、熱処理温度を低くするほど配向角が低くなって2枚の偏光フィルムを通過する光が低くなることが分かり、同時に複屈折率が高くなって光沢の発生が抑えられるという効果が得られ、その結果、フィルム表面または内部異物検査に優れた2軸延伸ポリエステルフィルムを製造することができるということが分かる。
【0050】
以上、本発明は記載された実施例についてのみ詳細に記述されたが、本発明の技術思想の範囲内において種々の変形及び修正が可能であることは当業者にとって自明であり、このような修正及び変形が特許請求の範囲に属することは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの幅方向に2m間の配向角差が3°以内であり、複屈折率が0.05以上である離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項2】
幅方向及び長手方向の熱収縮率が150℃、30分の乾燥条件下でそれぞれ5%以内であることを特徴とする請求項1に記載の離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記ポリエステルフィルムに、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、二酸化チタン、架橋ポリスチレン樹脂及び架橋アクリル樹脂粒子よりなる群から選ばれる1種以上の粒子がさらに含有されていることを特徴とする請求項1に記載の離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記粒子は平均粒子径が0.05〜3.5μmであることを特徴とする請求項3に記載の離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項5】
ヘイズが6%以内であることを特徴とする請求項1に記載の離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルム。
【請求項6】
下記式1を満足する離型フィルム用2軸延伸ポリエステルフィルム:
[式1]
A≦B×30
式中、Aは、配向軸が直交された2枚の偏光板の間に2軸延伸ポリエステルフィルムを挟み込み、長手方向を偏光板の1配向軸と一致させた状態で下部光源から通過された輝度値であり、Bは、2枚の偏光板の配向軸を直交させた状態で下部光源から通過された輝度値である。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の2軸延伸ポリエステルフィルムのどちらか1面にシリコーンコーティング層が形成された離型フィルム。

【公開番号】特開2011−104981(P2011−104981A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39486(P2010−39486)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(504092127)トーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア・インコーポレーテッド (20)
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA INCORPORATED
【Fターム(参考)】