説明

離型フィルム

【課題】
加工適性、耐熱性に優れた少なくとも片面に離型用樹脂層が形成された二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる離型フィルムを得ることを目的とする。
【解決手段】
本発明は、縦方向の弾性率(EMD)及び横方向の弾性率(ETD)が共に2500MPa以上で、且つ縦方向の弾性率(EMD)と横方向の弾性率(ETD)の比(EMD/ETD)が0.8〜1.2の範囲にある二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に離型用樹脂層、好ましくはシリコーン樹脂層が形成されてなることを特徴とする離型フィルムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加工適性、耐熱性に優れた少なくとも片面に離型用樹脂、好ましくはシリコーン樹脂層が形成された二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下OPPフィルムと呼ぶことがある)は、その優れた透明性、機械的強度、防湿性、剛性等を活かして包装材料をはじめ、ラベル、粘着テープ、離型フィルムの基材フィルムなど広い分野で使用されている。
OPPフィルムを離型フィルムに用いる例として、例えば、特定のフェノール系酸化防止剤とラクトン系酸化防止剤を添加したポリプロピレンを二軸延伸してなるフィルムにシリコーンを塗布することが提案されている(特許文献1)。しかしながら、実施例に記載されている縦延伸倍率が4.6倍及び横延伸倍率が9.2倍の逐次二軸延伸ポリプロピレンフィルムにシリコーン樹脂を塗布して架橋させる際の熱により収縮したり、カールしたりする虞がある。
【0003】
【特許文献1】特開2003−82177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、離型用樹脂を塗布して架橋させた場合にも熱収縮が少ない二軸延伸ポリプロピレンフィルムの開発を種々検討した結果、高弾性率で縦方向及び横方向の弾性率の比が同程度の範囲の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いることにより、加工適性、耐熱性に優れた少なくとも片面に離型用樹脂層が形成された二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる離型フィルムが得られることが判り本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、縦方向の弾性率(EMD)及び横方向の弾性率(ETD)が共に2500MPa以上で、且つ縦方向の弾性率(EMD)と横方向の弾性率(ETD)の比(EMD/ETD)が0.8〜1.2の範囲にある二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に離型用樹脂層、好ましくはシリコーン樹脂層が形成されてなることを特徴とする離型フィルムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の離型フィルムは、縦方向及び横方向の弾性率が共に高く、且つ、高弾性率で縦方向及び横方向の弾性率の比が同程度の範囲にあるので、加工適性、耐熱性に優れた離型用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
ポリプロピレン
本発明に係わる二軸延伸ポリプロピレンフィルムの原料となるポリプロピレンは、一般にポリプロピレンの名称で製造・販売されているプロピレンを主体とする重合体であり、通常、密度が0.890〜0.930g/cm、MFR(ASTM D1238 荷重2160g、温度230℃)が0.5〜60g/10分、好ましくは0.5〜10g/10分、更に好ましくは1〜5g/10分のプロピレンの単独重合体若しくはプロピレンと他の少量例えば、1重量%以下のα−オレフィン、例えばエチレン、ブテン、ヘキセン−1等との共重合体、あるいは単独重合体と共重合体との組成物である。
これらの中でも、プロピレンの単独重合体、若しくは1重量%以下のランダム共重合体でアイソタクテシティの高い重合体もしくはそれらの組成物が、得られる二軸延伸ポリプロピレンフィルムの弾性率、耐熱性が優れるので好ましい。
本発明に係わるポリプロピレンは、チーグラー・ナッタ系触媒に限らず、シングルサイト触媒(メタロセン触媒)を始め種々公知の触媒を用いて重合されたものを用い得る。
また、ポリプロピレンには、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の通常、ポリオレフィンに用いる各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加しておいてもよい。
【0008】
離型用樹脂
本発明に係わる離型用樹脂は、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂あるいはメラミン樹脂等の離型性に優れる樹脂として一般に使用されている樹脂である。これら離型用樹脂の中でも、シリコーン樹脂がセラミックグリーンシートを比較的容易に剥離せしめることができるので好ましい。
かかるシリコーン樹脂としては、例えば、熱縮合反応型:両末端シラノール官能性ジメチルポリシロキサンとメチルハイドロジエンポリシロキサンあるいはメチルメトキシシロキサンとを有機錫系触媒の存在下で反応させたもの、熱付加反応型:分子鎖両末端あるいは両末端及び側鎖にビニル基を有するメチルビニルポリシロキサンとメチルハイドロジエンポリシロキサンとを白金系触媒の存在下で反応させたもの、紫外線硬化型(ラジカル付加型):アルケニル基とメルカプト基を含有するシロキサンに光重合剤を加えたもの、紫外線硬化型(ヒドロシリル型):熱付加反応型と同じ白金系触媒を用いたもの、紫外線硬化型(ラジカル重合型):(メタ)アクリル基を含有するシロキサンに光重合剤を加えたもの、紫外線硬化型(カチオン重合型):エポキシ基を含有するシロキサンにオニウム塩光開始剤を添加したもの、及び電子線硬化型:ラジカル重合性基含有シロキサン(官能基はなくてもよく、また光開始剤がなくてもよい)が挙げられる。また、シリコーン樹脂の形態は、溶剤型、エマルジョン型、無溶剤型等の中から適宜選択して用いることができる。
これらシリコーン樹脂の中でも、熱付加反応型が好ましい。
シリコーン樹脂の原料となる各種シロキサンとしては、例えば、信越化学工業(株)からKS−778、KS−835、KS−847、KS−838、KS−770L、KS−776L、KS−3702、東レ・ダウコーニング(株)からSRX357、BY24−384、SRX211、SD7220、SD7226及びGE東芝シリコーン(株)からTPR6722、TPR6721、TPR6702、XS56−A8012、TPR6701,XS56−A3969などの商品名で製造・販売されている。
【0009】
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)
本発明の離型フィルムの基材となる二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、縦方向の弾性率(EMD)及び横方向の弾性率(ETD)が共に2500MPa以上、好ましくは2700MPa以上で、且つ縦方向の弾性率(EMD)と横方向の弾性率(ETD)の比(EMD/ETD)が0.8〜1.2、好ましくは0.9〜1.1の範囲にある二軸延伸ポリプロピレンフィルムである。縦方向の弾性率(EMD)及び横方向の弾性率(ETD)が共に2500MPa未満のフィルムでは、離型フィルムとしての剛性が低く、離型用樹脂をコートする際の加工性が悪くなる虞がある。また、縦方向の弾性率(EMD)と横方向の弾性率(ETD)の比(EMD/ETD)が上記範囲外では、離型フィルムとしての剛性バランスが悪く、離型用樹脂をコートする際にフィルムがカールする虞がある。
本発明に係わる二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、前記ポリプロピレンを用いて、公知の二軸延伸フィルム成形装置により、縦方向(MD)に通常7〜12倍、好ましくは8〜11倍、横方向(TD)に通常7〜12倍、好ましくは8〜11倍の範囲で同時二軸延伸あるいは逐次二軸延伸することにより製造し得る。延伸温度は同時二軸延伸の場合は、通常140〜200℃、好ましくは150〜190℃の範囲、逐次二軸延伸の場合は、縦延伸温度を通常100〜150℃、好ましくは110〜140℃、横延伸温度を通常140〜200℃、好ましくは150〜190℃の範囲にすればよい。また、逐次二軸延伸では、さらに縦延伸温度を100〜150℃、好ましくは110〜140℃で、1.0〜2.0倍、好ましく1.1〜1.8倍延伸することもできる。中でも、同時二軸延伸方法が、容易に得られる二軸延伸ポリプロピレンフィルムの縦方向の弾性率(EMD)と横方向の弾性率(ETD)の比(EMD/ETD)を前記範囲にすることができるので好ましい。同時二軸延伸の場合は優れたバランスのフィルムを容易に得ることができる。
また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、離型層を積層する面にコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理等の表面処理を行うことが好ましい。上記表面処理を行わない場合、二軸延伸ポリプロピレンフィルムとシリコーンとの密着性が低下する虞がある。
【0010】
離型フィルム
本発明の離型フィルムは、上記二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)の少なくとも片面に離型用樹脂層、好ましくはシリコーン樹脂層が形成されてなることを特徴とする離型フィルムである。離型フィルムの厚さは、通常、二軸延伸ポリプロピレンフィルムが10〜100μm、好ましくは20〜50μm、離型用樹脂層の厚さが、0.01〜5.0μm、好ましくは0.1〜2.0μmの範囲にある。例えば、この範囲内にあれば、離型フィルム基材への密着性、離型工程の際の剥離強度の安定性、シリコーン樹脂成分の非移行性の点で調整が可能であり、これにより目的とする優れた離型フィルムを得ることができる。
【0011】
本発明の離型フィルムは、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に前記離型用樹脂を塗布した後、必要に応じて熱、紫外線あるいは電子線等により乾燥・硬化(架橋)することにより製造し得る。
離型用樹脂を塗布する方法は特に限定はされず、離型用樹脂層の厚さが所望の厚さになるように、離型用樹脂をそのまま、あるいは溶剤で希釈して塗布すればよい。離型用樹脂を溶剤で希釈する場合は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の有機溶媒を使用し得る。
【0012】
また、離型用樹脂を塗布する方法には、例えば、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、グラビアリバースおよびジェットノズル方式等のグラビアコーター、トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーターおよびノズルフィードリバースコーター等のリバースロールコーター、5本ロールコーター、リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーター等種々公知の塗工機を用いて、二軸延伸ポリプロピレンフィルムに塗布すればよい。
離型用樹脂を乾燥及び硬化(熱硬化、紫外線硬化等)は、それぞれ個別または同時に行うことができる。同時に行うときには、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)の耐熱性(熱的寸法安定性)にも左右されるが、80℃〜120℃、好ましくは90℃〜110℃の温度範囲で15秒以上加熱することが好ましい。乾燥温度が80℃未満では、熱硬化時間が長くなり生産性が低下するとともに、シリコーンなどの離型用樹脂の硬化も十分ではない。また、乾燥温度が120℃以上では、フィルムにしわが生じる虞がある。
【0013】
本発明では、二軸延伸ポリプロピレン(A)に帯電防止剤を配合して帯電防止処方とする他、離型用樹脂の層(C)と共に、静電防止層(B)を設けて帯電防止することも行われる。
このような静電防止層(B)は、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)の片面に、静電防止層(B)、離型用樹脂層(C)をこの順に積層することが好ましい。勿論、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)の片面に静電防止層(B)を設け、他方の面に離型用樹脂層(C)を設けてもよい。
静電防止層(B)は、それを設けることにより、その表面の固有抵抗値が1012Ω/□、特に1012Ω/□以下となる種々の耐電防止性能を有する材料を用いることができる。例えば、帯電防止剤、導電性フィラー、導電性ポリマーを配合したバインダー樹脂、導電性ポリマー自体、金属等の無機化合物を含有する熱硬化性樹脂、ポリマー型耐電防止剤などがある。
帯電防止層に使用する帯電防止剤には、アルキルサルフェート型、アルキルホフフェート型等のアニオン系帯電防止剤、第4級アンモニウム塩型、第4級アンモニウム樹脂型、イミダゾリン型などのカチオン系耐電防止剤、ソルビタン、エーテル型などのノニオン系帯電防止剤、ベタイン型などの両性帯電防止剤がある。バインダー樹脂には、特に限定されず、ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリブチラール樹脂などを用いることができる。
【0014】
ポリマー型帯電防止剤としては、スルホン酸塩基、リン酸塩基、アクリル酸塩基(塩基としては、ナトリウム、リチウム、カリウムなどのアルカリ金属塩基、アンモニウム塩基など)などがある。
これらは、インラインで二軸延伸されたポリプロピレンフィルム(A)にコートしてもよく、二軸延伸前のポリプロピレンフィルムにコートした後に、全体を二軸延伸してもよい。
帯電防止層(B)の厚さは特に限定されないが、0.1〜100μm程度である。
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)に帯電防止剤等を含有するバインダー樹脂を積層するには、共押出、ドライラミネートなどの種々の方法を利用することができる。また、帯電防止剤を塗布する場合は、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、グラビアリバースおよびジェットノズル方式などのグラビアコーター、トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーターおよびノズルフィードリバースコーターなどのリバースロールコーター、5本ロールコーター、リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーターなどの種々の公知の塗工機を用いることができる。
静電防止層(B)の厚さとしては、0.01から100ミクロンメータ(μm)が通常である。
これらの帯電防止層(B)の中でも、ポリエステル樹脂と酸化錫系微粒子を含む静電防止層(B’)が好適である。
【0015】
ポリエステル樹脂と酸化錫系微粒子を含む静電防止層(B’)
ポリエステル樹脂と酸化錫系微粒子を含む静電防止層(B’)を設けるには、一般にポリエステルの微粒子と酸化錫系の微粒子を含むコーティング液を用いることが望ましい。
コーティング剤は、ポリエステル樹脂の微粒子と酸化錫系微粒子を分散させた分散液、なかでも水分散液であることが均一な静電防止層(B’)の塗膜を簡便な操作で形成することができるので好適である。
このコーティング液は、ポリエステル樹脂の微粒子100質量部に対し、酸化錫系の微粒子が通常50〜1000質量部の割合で含有するものである。
酸化錫系の微粒子の割合が少ない場合は静電防止層(B’)の被膜の静電防止性が不十分になることがある。また、多い場合は静電防止層(B’)と二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)との密着性が低下することがある。
【0016】
コーティング剤が分散液の場合の媒体としては、水が好適である。また、水が主成分であれば、さらに他の有機溶媒を併用してもよい。そのような有機溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトンなどのケトン類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコール誘導体、さらには3−メトキシ−3−メチルブタノール、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチルなどがある。これらは1種類、あるいは2種類以上を併用してもよい。
併用される有機溶媒の沸点としては、沸点200℃以下で水と共沸可能であるものが好ましい。また、水と併用される有機溶媒の割合は、エマルジョン中の全媒体の25質量%以下であれば、コーティング剤の貯蔵安定性が良好である。
【0017】
ポリエステル樹脂としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸などのジカルボン酸、中でもテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などとエチレングリコールなどのグリコールから得られるポリエステル樹脂を使用することができる。なお、ポリエステル樹脂には、必要な物性を発現させるために3官能以上の多塩基酸及び/または多価アルコールを共重合することも必要に応じて行われる。
3官能以上の多塩基酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸などが挙げられる。
また、3官能以上の多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。ただし、3官能以上の多塩基酸及び多価アルコールを共重合する場合には、全酸成分及び全アルコール成分に対しそれぞれ10モル%以下、5モル%以下とすることが通常である。10モル%を越えると膜が硬くなりすぎて加工性が悪くなる傾向がある。
【0018】
コーティング剤に配合されるポリエステル樹脂の酸価は、通常10〜40mgKOH/g程度である。
ポリエステル樹脂は、一般に水分散性が付与された微粒子として水分散性ポリエステル樹脂エマルジョンの形態で使用される。水分散性ポリエステル樹脂の微粒子は、通常数平均粒子径が0.001〜0.1μm(動的光散乱法)である。
ポリエステル樹脂の微粒子からなるエマルジョンは、例えば、塩基性化合物を添加した水及び有機溶媒中にポリエステル樹脂の粉末もしくは粒状物を40℃以下の室温付近の温度で混合、撹拌した後、撹拌しながら所定温度まで加熱し、ポリエステル樹脂のガラス転移温度以上であって90℃以下の温度で撹拌してポリエステル樹脂を微粒子化し、冷却することによって製造する方法がある。
ポリエステル樹脂の微粒子は一般に数平均粒子径が通常0.001〜0.1μm程度であり、溶媒中に安定的に分散したエマルジョンの状態で用いられる。
水分散性ポリエステル樹脂エマルジョンを製造する際には、ポリエステル樹脂のカルボキシル基を中和するために有機アミンを添加することが望ましい。
有機アミンとしては、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンなどが例示され、中でもカルボキシル基に対して、0.2〜1.5倍当量が好ましく、さらには、0.4〜1.3倍当量がより好ましい。
【0019】
0.2倍当量未満と少なくなると中和が不完全で分散安定性が良好なエマルジョンが得られない場合があり、1.5倍当量を越えるとエマルジョンが増粘になり取り扱いが困難となる場合がある。
また、これら有機アミンは、静電防止層(B)の形成時の乾燥工程において揮発するものを選ぶことが望ましく、沸点が200℃以下の有機アミンが好適である。これにより、その上に形成される離型用樹脂層(C)の硬化に悪影響を与えることのない静電防止層(B)とすることができる。 水分散性ポリエステル樹脂エマルジョン中におけるポリエステル樹脂の濃度は特に限定されないが、適度の粘性を保ちつつ、良好な貯蔵安定性を示すためには10〜50質量%が好ましい。
コーティング剤中の酸化錫系の微粒子は、一般にその数平均粒子径が通常50ナノメータ(nm)以下であり、中でも数平均粒子径が50ナノメータ(nm)以下でかつ体積平均粒子径が200ナノメータ(nm)以下が好ましい。
この酸化錫系の微粒子は、上記の数平均粒子径を保ったままで分散されたものが好ましい。
分散液中で酸化錫の微粒子が凝集し、体積平均粒子径(動的光散乱法)が200nmを越えると、被膜の透明性が低下する傾向がある。
【0020】
酸化錫系の微粒子としては、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、インジウムドープ酸化錫、アルミニウムドープ酸化錫、タングステンドープ酸化錫、酸化チタン−酸化セリウム−酸化錫の複合体、酸化チタン−酸化錫の複合体などが挙げられ、なかでも導電性などの性能に優れかつそれとコストとがバランスのとれた酸化錫、アンチモンドープ酸化錫、インジウムドープ酸化錫が好ましい。
コーティング剤は、例えば、上記水分散性ポリエステル樹脂エマルジョンと上記酸化錫系の微粒子の水分散液と混合することによって調製される。その際に、水分散性ポリエステル樹脂エマルジョンに酸化錫系の微粒子分散液を加えて混合してもよく、逆に酸化錫系の微粒子分散液に上記エマルジョンを加えて混合してもよく、混合順序は任意である。
なお、両者を混合する際、水分散性ポリエステル樹脂エマルジョンの分散安定性を維持するために、必要に応じて、混合液のpHが8〜12になるようにpH調整を行うことが行われる。
上記コーティング剤は、水分散性ポリエステル樹脂エマルジョンと酸化錫系の微粒子分散液とを混合することにより調製することができる。
【0021】
このようにして得られたコーティング剤中には、上記水分散性ポリエステル樹脂エマルジョンに由来する有機溶媒が含まれており、また、塗布性能を向上させるために例えばイソプロパノールなどの低沸点アルコールのような有機溶媒を加えることも行われる。この場合、有機溶媒の含有量は溶媒全体の50質量%以下とし、50質量%以上は水であることが好ましい。
このコーティング剤中では、水分散性ポリエステル樹脂の微粒子と共に、酸化錫系の微粒子が酸化錫系の微粒子分散液中と同等の良好な分散性を保って溶媒中に分散しているものが好適である。すなわち、酸化錫系の微粒子が数平均粒子径50nm以下、体積平均粒子径200nm以下の一次粒子の状態で存在してものが好適である。
また、このコーティング剤における固形分濃度すなわち水分散性ポリエステル樹脂と酸化錫系の微粒子の総濃度は一般に1〜40質量%であり、固形分濃度が1質量%より低いと、基材フィルム(A)に均一な厚みの塗布する際に十分な厚さの被膜を形成しにくくなる傾向があり、一方40質量%を越えると、酸化錫系の微粒子の分散性が不十分になることがある。
【0022】
また、このコーティング剤には、架橋剤は必要としない。架橋剤を混合せずに、加熱にのみによってコーティング剤から静電防止層(B’)を形成させることにより、その上に形成する離型用樹脂層(C)との密着性を良くすることができる。しかし、必要に応じて、水分散性ポリエステル樹脂が有する官能基、例えばカルボキシル基や水酸基と反応性を有する架橋剤を混合して被膜の硬度を上げることも行われる。
さらに、このコーティング剤には、その特性が損なわれない範囲で、酸化防止剤、滑剤、着色剤などを添加することができる。
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)の表面にコーティング剤を塗布する方法としては、上記と同様の公知の塗工機を用いることができる。
【0023】
塗布されたコーティング剤の乾燥方法としては、通常、熱風循環型のオーブン、赤外線ヒーターなどにより、60℃〜230℃で例えば2秒間〜50秒間乾燥する方法があり、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)上に静電防止層(B’)が形成される。
静電防止層(B)の厚さとしては、強度および傷が付きにくい均一な厚さの被膜が得られる0.01から100ミクロンメータ(μm)が通常である。
また、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)への静電防止層(B’)の密着性を高めるために、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)の表面にシランカップリング剤などの接着層を設けて、接着層の上に静電防止層(B’)を設けてもよいが、通常はその必要はない。
【0024】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
【0025】
実施例及び比較例における物性値などは、以下の評価方法により求めた。
(1)弾性率(MPa)
二軸延伸ポリプロピレンフィルムから縦方向(MD)及び横方向(TD)に短冊状フィルム片(長さ:150mm、幅:15mm)を切出し、引張り試験機[(株)オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225]を用い、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:5mm/分の条件で引張試験を行い、弾性率(MPa)を求めた。
(2)熱収縮率(%)
二軸延伸ポリプロピレンフィルムから100mm×100mmの試験片を切り出し、試験片の長さ(初期の寸法)を測定した後、90℃または120℃のオーブン中に試験片が重ならない用に濾紙に挟んで15分放置した。その後、室温で30分以上放置し、縦方向(MD)及び横方向(TD)の寸法(収縮した寸法)を測定し以下の式から熱収縮率(%)を求めた。
熱収縮率(%)=[収縮した寸法(mm)/初期の寸法(mm)]×100
【0026】
(3)剥離力(N/50mm)
離型フィルムを水平台の上に塗工膜を上にして載置し、その塗工膜に日東電工(株)社製粘着フィルムNo.31Bを貼り付けて、200mm×50mmの大きさにカットし、さらにその粘着フィルムの上から20g/cmとなるように荷重を載せ、70℃で20時間放置した。その後、引張り試験機[(株)オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225]を用いて、引張速度300m/分で180度剥離を行い、剥離が安定した領域における平均剥離荷重を粘着テープ幅で除した値を剥離力とした。
(4)残留接着率(%)
離型フィルムを水平台の上に塗工膜を上にして載置し、その塗工膜に日東電工(株)社製粘着フィルムNo.31Bを貼り付けて、200mm×50mmの大きさにカットし、さらにその粘着フィルムの上から20g/cmとなるように荷重を載せ、70℃で20時間放置した。その後、離型フィルムを剥がし、粘着フィルムをステンレス板に2Kgのゴムローラーを用いて3往復圧着し、70℃で2時間加熱処理する。次いで、JIS−C−2107(ステンレス板に対する粘着力、180度引き剥がし法)の方法に準じて接着力:Fを測定する。粘着フィルムNo.31Bを直接ステンレス板に粘着・剥離した際の接着力Fに対するFの百分率(式2)を残留接着率として求めた。
残留接着率(%)=[接着力(F)/接着力(F)]×100
【0027】
(5)加工適性
離型フィルムを作成する際及び離型フィルムを90℃で15秒乾燥させる際に、離型フィルムがカールしないのもを○、カールするのもを×として加工適性を判断した。
(6)静電防止特性
JIS−K6911に基づいて、アドバンテスト社製デジタル超高抵抗/微少電流計、R8340を用いて、離型フィルムの離型用樹脂層(C’)の表面固有抵抗値を(条件 標準状態(温度23℃、相対湿度50%)電圧560V)で求めた。
【0028】
実施例1
<二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造>
プロピレン単独重合体として、三井化学(株)社製F113G[密度:0.91、MFR:3.0g/10分(230℃)]を用いた。
ブルックナー社製同時二軸延伸フィルム成形装置を用い、プロピレン単独重合体を、スクリュー押出機(温度:250℃)で溶融押出し、冷却ロール(温度:30℃)で急冷し、厚さ約2.4mmの多層シートを得た。次いで、当該シートをテンター(予熱温度:185℃、延伸温度:160℃及び熱セット温度:180℃並びに緩和率;縦方向:5%及び横方向:5%)を用い、縦方向(MD)に9倍、横方向(TD)に9倍延伸して、厚さ30μmの同時二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。次いで、この同時二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面(塗工面)にコロナ処理を施した。
【0029】
<離型フィルムの製造>
シリコーン(信越化学工業(株)社製KS−847)と触媒(信越化学工業(株)社製PL−50T)のトルエン/メチルエチルケトン=70/30(容量比)混合溶媒の溶液を調整し、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの塗工面(コロナ処理面)上に、メーヤーバーNo.4を用いて塗布し、90℃のオーブン中で30秒乾燥・硬化させ、0.1g/mの塗工膜を形成させた後、40℃で数十時間放置して離型フィルムを作成した。得られた離型フィルムの評価を前記記載の方法で測定した。
評価結果を表1に示す。
【0030】
実施例2
実施例1で用いたプロピレン単独重合体に代えて、バゼル社製HA722J[密度:0.91、MFR:3.5g/10分(230℃)]の高結晶性ポリプロピレンを用いて、実施例1と同様に行い離型フィルムを得た。
評価結果を表1に示す。
【0031】
比較例1
実施例1で用いた逐次二軸延伸フィルム製造装置を用い、実施例1で用いたプロピレン単独重合体を、スクリュー押出機(温度:250℃)で溶融押出し、冷却ロール(温度:30℃)で急冷し厚さ約1.5mmのシートを得た。次いで、当該シートを延伸ロール(予熱温度:130℃、延伸温度:120℃及び熱セット温度:130℃並びに緩和率:6.5%)を用いて縦方向(MD)に5倍延伸し、テンター(予熱温度:185℃、延伸温度:160℃及び熱セット温度:180℃並びに緩和率:5%)を用いて、横方向(TD)に10倍延伸して、厚さ30μmの逐次二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。次いで、逐次二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面(塗工面)にコロナ処理を施した。次いで、逐次二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用い、実施例1に記載の方法で離型フィルムを作成した。
評価結果を表1に示す。
【0032】
実施例3
実施例2において、シリコーンを塗布する前に、下記のコーティング剤を、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの塗工面(コロナ処理面)上に、メーヤーバ−No.3を用いて塗工し、100℃のオーブンで20秒乾燥させ、静電防止層(B’)を形成した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)を得た。
コーティング剤の内容
ポリエステルの微粒子と酸化錫の微粒子を含有する水性コーティング剤
・製品名・・・・・・・・・・・・・・SAS−U8135−20 ユニチカ株式会社製
・固形分濃度・・・・・・・・・・・・10〜11質量%
・イソプロピルアルコール濃度・・・・20質量%
・溶媒・・・・・・・・・・・・・・・水、イソプロピルアルコール
【0033】
次に、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)の静電防止層(B’)の側にメーヤーバーNo.4を用いて塗布し、90℃のオーブン中で30秒乾燥・硬化させ、0.1g/mの塗工膜を形成させた後、40℃で数十時間放置して離型フィルムを作成した。得られた離型フィルムの評価を前記記載の方法で測定した。
その結果、離型フィルムの表面の固有抵抗値が 1×10Ω/□であった。
【0034】
【表1】

【0035】
表1の結果から明らかのように、本発明の離型フィルムは、縦方向及び横方向の弾性率が共に高く、且つ、高弾性率で縦方向及び横方向の弾性率の比が同程度の範囲にあるので、加工適性、耐熱性に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の離型フィルムは、縦方向及び横方向の弾性率が共に高く、且つ、高弾性率で縦方向及び横方向の弾性率の比が同程度の範囲にあるので、加工適性、耐熱性に優れており、セラミックコンデンサーやプリント基板材料を製造する工程で台紙として用いる工程フィルムを始め、熱硬化性樹脂製品、化粧板等を製造する時の工程フィルム、粘着テープや各種粘着ラベルの剥離材として用いる剥離フィルム(離型フィルム)として種々の用途に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向の弾性率(EMD)及び横方向の弾性率(ETD)が共に2500MPa以上で、且つ縦方向の弾性率(EMD)と横方向の弾性率(ETD)の比(EMD/ETD)が0.8〜1.2の範囲にある二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)の少なくとも片面に離型用樹脂層(C)が形成されてなることを特徴とする離型フィルム。
【請求項2】
静電防止層(B)を有することを特徴とする請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(A)の片面に、静電防止層(B)、離型用樹脂層(C)がこの順に積層されてなる請求項1または2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムが同時二軸延伸により得られるフィルムである請求項1〜3のいずれかに記載の離型フィルム。
【請求項5】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムが縦方向及び横方向の延伸倍率が少なくとも7倍以上である請求項1〜4のいずれかに記載の離型フィルム。

【公開番号】特開2007−90849(P2007−90849A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10563(P2006−10563)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】