説明

離型フィルム

【課題】離型フィルムをロール巻きにしたり、多数枚を重ねる際に、離型層の表面が接するフィルム背面の微細な凹凸の影響により、平滑な離型層表面に微細な凹凸が発生することを防止し、離型層(B)の表面の平滑性を保つことができる。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなる基材フィルム(A)の少なくとも一方の面に離型層(B)を有する離型フィルムであって、その離型層(B)の表面に接してさらにポリマー層(C)を有する離型フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルムをロール巻きにしたり、多数枚を重ねる際に、離型層表面が接する離型フィルム背面の微細な凹凸の影響により、優れた平滑性を有する離型層の表面に微細な凹凸が発生することを防止するため、フィルムの離型層に接して、更にポリマー層が設けられた離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルムを基材とし、その上に離型層を積層した離型フィルムが、粘着ラベル、粘着テープ等の台紙として広く使用されている。また、セラミックコンデンサーなどの部品の作成の際に離型フィルムとして使用されている。これらの用途において、粘着剤層やセラミックコンデンサーに接する離型層表面は、平滑であることが求められている。
【0003】
特に、セラミックコンデンサーなどの部品が大容量化、小型化するに伴い、セラミックシートは薄層化している。これにより、セラミックシートの厚さが変動するとセラミックの形状欠陥となり、最終製品コンデンサーの歩留まり等に悪影響を与えることになる。
【0004】
さらに、セラミックスラリー塗工の際にスラリーのはじき、ピンホールの発生等があるとグリーンシートの厚さが変動し、離型フィルムからグリーンシートを剥離する際に、グリーンシートが破損したり、コンデンサーの性能不良となる。
【0005】
また、離型層の表面が平滑な離型フィルムであっても、それをロール巻きにしたり、多数枚を重ねて保管する際に、離型層の表面が接する離型フィルムの背面の微細な凹凸の影響により、平滑な離型層表面に微細な凹凸が発生し、高品質のセラミックコンデンサーの生産の歩留まりに不具合を生じる可能性もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、離型フィルムをロール巻きにしたり、多数枚を重ねる際に、離型層の表面が接するフィルム背面の微細な凹凸の影響により、平滑な離型層表面に微細な凹凸の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、熱可塑性樹脂からなる基材フィルム(A)の少なくとも一方の面に離型層(B)を有する離型フィルムであって、その離型層(B)の表面に接してさらにポリマー層(C)を有する離型フィルムに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の離型フィルムは、離型層(B)の表面に更にポリマー層(C)を設けることにより、離型フィルムをロール巻きにしたり、多数枚を重ねる際に、離型層(B)の表面が接する基材フィルム(A)の背面の微細な凹凸の影響を受けることがなく、離型層(B)の表面の平滑性を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
基材フィルム(A)
本発明に用いられる基材フィルム(A)は、フィルム成形が可能である熱可塑性樹脂であれば特に制限されることなく用いることができる。例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−α-オレフィン共重合体などの線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、4―メチルー1−ペンテン系ポリマー、ポリブテンなどのポリオレフィン樹脂などのフィルムであり、無延伸、一軸あるいは二軸延伸などのフィルムが例示される。
【0010】
これらの中ではポリエステルからなるフィルム及びポリオレフィンからなるフィルムが好適である。
ポリエステルからなるフィルムは、例えば、二軸延伸フィルムは、ポリリエステルを溶融し冷却ドラムの上にキャストして未延伸フィルムとし、次いでその未延伸フィルムを当該ポリエステルの二次転移点(Tg)−10℃以上の温度で縦方向に2から7倍に延伸して、まず一軸延伸フィルムとし、この一軸延伸フィルムをさらに80〜140℃で横方向に2〜9倍延伸した二軸延伸してフィルムとすることができる。
【0011】
その際、更に130〜250℃で熱処理することも行われる。また、二軸延伸フィルムは熱処理する前に必要に応じて更に縦方向及び/又は横方向に再延伸することも行われる。
ポリオレフィンからなるフィルムとしては、ポリプロピレンが好適である。中でもポリプロピレンを二軸延伸して得られるフィルム、いわゆるOPPは、その強度、平滑性に優れており好適である。
【0012】
ポリプロピレンフィルムの原料となるポリプロピレンは、一般にポリプロピレンの名称で製造・販売されているプロピレンを主体とする重合体であり、通常、密度が0.890〜0.930g/cm3、MFR(ASTM D1238 荷重2160g、温度230℃
)が0.5〜60g/10分、好ましくは0.5〜10g/10分、更に好ましくは1〜5g/10分のプロピレンの単独重合体若しくはプロピレンと他の少量例えば、1重量%以下のα−オレフィン、例えばエチレン、ブテン、ヘキセン−1等との共重合体、あるいは単独重合体と共重合体との組成物である。
【0013】
これらの中でも、プロピレンの単独重合体、若しくは1重量%以下のランダム共重合体でアイソタクテシティの高い重合体もしくはそれらの組成物が、得られる二軸延伸ポリプロピレンフィルムの弾性率、耐熱性が優れるので好ましい。 本発明に係わるポリプロピレンは、チーグラー・ナッタ系触媒に限らず、シングルサイト触媒(メタロセン触媒)を始め種々公知の触媒を用いて重合されたものを用い得る。また、ポリプロピレンには、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の通常、ポリオレフィンに用いる各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加しておいてもよい。
【0014】
また、ポリプロピレンのフィルムは逐次二軸延伸あるいは同時二軸延伸などにより二軸延伸フィルムとされる。
これらの基材フィルム(A)の厚さは通常10〜100μmである。
【0015】
また、基材フィルム(A)には必要に応じて帯電防止剤等の各種安定剤を配合することも行われ、また不活性微粒子、例えばシリカ、炭酸カルシウム、カオリン、酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ゼオライト等の無機微粒子、架橋ポリスチレン、アクリル樹脂等の有機微粒子を配合することにより、基材フィルムの表面の粗さを制御することも行われる。
【0016】
離型層(B) 離型層(B)に用いられる樹脂は、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂等の離型性に優れる樹脂として一般に知られている樹脂である。 これら離型用樹脂の中でも、シリコーン樹脂がセラミックグリーンシートを比較的容易に剥離することができるので好ましい。
【0017】
シリコーン樹脂としては、例えば、熱縮合反応型:両末端シラノール官能性ジメ
チルポリシロキサンとメチルハイドロジエンポリシロキサンあるいはメチルメトキシシロ
キサンとを有機錫系触媒の存在下で反応させたもの、熱付加反応型:分子鎖両末端あるい
は両末端及び側鎖にビニル基を有するメチルビニルポリシロキサンとメチルハイドロジエ
ンポリシロキサンとを白金系触媒の存在下で反応させたもの、紫外線硬化型(ラジカル付
加型):アルケニル基とメルカプト基を含有するシロキサンに光重合剤を加えたもの、紫
外線硬化型(ヒドロシリル型):熱付加反応型と同じ白金系触媒を用いたもの、紫外線硬
化型(ラジカル重合型):(メタ)アクリル基を含有するシロキサンに光重合剤を加えた
もの、紫外線硬化型(カチオン重合型):エポキシ基を含有するシロキサンにオニウム塩
光開始剤を添加したもの、及び電子線硬化型:ラジカル重合性基含有シロキサン(官能基
はなくてもよく、また光開始剤がなくてもよい)が挙げられる。また、シリコーン樹脂の
形態は、溶剤型、エマルジョン型、無溶剤型等の中から適宜選択して用いることができる

【0018】
これらシリコーン樹脂の中でも、熱付加反応型が好ましい。
シリコーン樹脂の原料となる各種シロキサンとしては、例えば、信越化学工業(株)か
らKS−778、KS−835、KS−847、KS−838、KS−770L、KS−
776L、KS−3702、東レ・ダウコーニング(株)からSRX357、BY24−
384、SRX211、SD7220、SD7226及びGE東芝シリコーン(株)から
TPR6722、TPR6721、TPR6702、XS56−A8012、TPR67
01,XS56−A3969などの商品名で製造・販売されている。
【0019】
ポリマー層(C)
ポリマー層(C)は、離型層(B)の表面に接して設けられるものであり、コート、ラミネート、押圧などにより離型層(B)の表面に一体的に密着させた後、再び容易に剥離できるものであれば、ポリマー層(C)を構成するポリマーは、特に限定することなく用いることができる。
【0020】
このようなポリマーとして、例えばポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂等がある。離型フィルムのポリマー層(C)は、離型層(B)と密着して保管され、ロール巻き、重ね置きに際しても、離型フィルムの背面はこのポリマー層(C)に接するだけで、直接離型層(B)に接することはない。
【0021】
本発明においては、ポリマー層(C)の表面の平滑性が、その表面粗さにおいて、基材フィルム(A)の表面の平滑性よりも、より平滑であるものを用いることにより、基材フィルムの表面の平滑性に影響されることなく、平滑性の優れた離型層(C)を保持する離型フィルムを製造し、ロール状に保管することができる。
【0022】
また、基材フィルム(A)の両面に離型層(B)を設ける場合は、必ずしも、両面の離型層(B)の全部にポリマー層(C)を設ける必要はない。一方の離型層(B)の表面のみにポリマー層(C)を設けることができる。その場合、密着一体化させる離型層(B)とポリマー層(C)との間の剥離力が、他方の離型層(B’)とポリマー層(C)との間の剥離力より小さくなるようにコントロールすることが望ましい。
【0023】
これにより、ポリマー層(C)//離型層(B)//基材フィルム(A)//離型層(B’)
からなる離型フィルムをロール状に巻いて保管後、巻き戻す際に、ポリマー層(C)が、他方の離型層(B’)側に密着し、スムーズに巻き戻すことができる。
また、一方の離型層(B)の表面のみにポリマー層(C)を設ける場合、密着一体化させる離型層(B)とポリマー層(C)との間の剥離力を他方の離型層(B’)とポリマー層(C)との間の剥離力より大きくコントロールすることもできる。
【0024】
この場合、ポリマー層(C)//離型層(B)//基材フィルム(A)//離型層(B’)からなる離型フィルムをロール状に巻いて保管後、巻き戻す際に、ポリマー層(C)を、離型層(B)に密着させたままスムーズに巻き戻すことができる。実使用の際に、離型層(B)からポリマー層(C)を剥離させればよい。
このような離型層(B)とポリマー(C)との間の剥離力と他方の離型層(B’)とポリマー層(C)との間の剥離力の比は、上記の複数の例における大きい剥離力と小さい剥離力の比で、1.1以上とすることが望ましく、中でも1.1〜3が好適である。
ポリマー層(C)の厚さは、経済性の点で薄くすることが望ましい。しかし、基材フィルム(A)の表面の粗さに基づく突起などの凸部に対応して、離型層(B)の表面に凹部が形成されない程度の厚さとすることが望ましい。通常は、0.1〜10ミクロン程度である。
【0025】
離型フィルムの製造方法
本発明の離型フィルムは、例えば基材フィルム(A)、離型層(B)およびポリマー層(C)を同時に共押出することにより、同時に3層からなるフィルムを押出成形することにより得ることができる。この場合、必要に応じて一軸方向、または二軸方向に延伸処理することも行われる。
離型層(B)は、基材フィルム(A)の一方の面に、或いは両方の面に形成される。
また、基材フィルム(A)に離型層(B)をコーティングした後、更にポリマー層(C)を溶融樹脂、樹脂溶液のコート、フィルムのラミネート、フィルム状のポリマー層(C)をドライラミ、押圧などによりして離型フィルムを製造することが行われる。
【0026】
本発明では、必要に応じて基材フィルムと離型層(B)の間に帯電防止層を設けることも行われる。
【実施例】
【0027】
実施例1 基材フィルム(A)として二軸延伸ポリエステルフィルム(A4サイズ、厚さ38μm)を用い、その片面に、シリコーン(信越化学工業(株)社製KS−847)と触媒(信越化学工業(株)社製PL−50T)のトルエン/メチルエチルケトン=70/30(容量比)混合溶媒の溶液を調整し、二軸延伸ポリエステルフィルムの塗工面上に、メーヤーバーNo.4を用いて塗布した。その後、これを100℃のオーブン中で30秒乾燥・硬化させ、0.1g/mの塗工膜を形成させた後、40℃で数十時間放置することにより、離型層(B)を有する離型フィルムを作成した。得られた離型フィルムの離型層(B)の表面に、ポリビニルブチラール樹脂の10重量%エタノール溶液を、メーヤーバーNo36を用いてコート後、70℃で4分間乾燥させた。これにより、厚さ(ドライ時)約4ミクロンのポリマー層(C)を形成した。この離型フィルム2枚を、一方のポリマー層(C)が他方の基材フィルム(A)と接するように重ね合わせ、プレス機(MINI PRESS10;東洋精機(株)製)を用いて、40℃の雰囲気下、圧力ゲージ10MPaで72時間プレスしてエージングした。その後、重ね合わされた離型フィルムのうち、基材フィルム(A)と接しているポリマー層(C)を剥離して、離型層(B)の表面をSEM(JSM-5600 ;日本電子(株)製)で観察した。なお、評価は、作製した離型フィルムの離型層(B)にポリマー層(C)を設けず、離型フィルムの離型層(B)とその反対側(背面)即ち、基材フィルム(A)面を重ね合わせ、プレスによるエージングした後の離型層(B)面の表面状態を以下の通り比較評価した。その結果、離型層(B)の表面の評価は○であった。
【0028】
○ 微小な凹凸の数が減少していた。
△ 微小な凹凸の数がほとんど変わらなかった。
× 微小な凹凸の数が増加していた。
【0029】
実施例2 基材フィルム(A)として二軸延伸ポリエステルフィルム(A4サイズ、厚さ38μm)を用い、その片面に、シリコーン(信越化学工業(株)社製KS−847)と触媒(信越化学工業(株)社製PL−50T)のトルエン/メチルエチルケトン=70/30(容量比)混合溶媒の溶液を調整し、二軸延伸ポリエステルフィルムの塗工面上に、メーヤーバーNo.4を用いて塗布した。その後、これを100℃のオーブン中で30秒乾燥・硬化させ、0.1g/mの塗工膜を形成させた後、40℃で数十時間放置することにより、離型層(B)を有する離型フィルムを作成した。得られた離型フィルムの離型層(B)の表面に、表面粗さ計(サーフコーダSE−30K;(株)小坂研究所製)で測定した中心面平均粗さSRa0.01μm、山高さが0.1μm未満(山粒子としては、スライスレベル0.1μm未満のみ存在する)の平滑フィルムを貼り合わせ、プレス機(MINI PRESS10;東洋精機(株)製)を用いて、40℃の雰囲気下、圧力ゲージ10MPaで72時間プレスしてエージングした。その後、重ね合わされたフィルムのうち、平滑フィルムを取り除き、離型層(B)の表面をSEM(JSM-5600 ;日本電子(株)製)で観察した。 その結果、離型層(B)の表面の評価は○であった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の離型フィルムは、粘着ラベル、粘着テープ、広告、カタログ等の粘着面の台紙、セラミックコンデンサーなどの部品の作成の際に離型フィルム、各種保護フィルム、プロテクトフィルムなどに広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる基材フィルム(A)の少なくとも一方の面に離型層(B)を有する離型フィルムであって、その離型層(B)の表面に接してさらにポリマー層(C)を有する離型フィルム。
【請求項2】
基材フィルム(A)に離型層(B)をコーティングした後、更にポリマー層(C)をコーティングにより成形することを特徴とする請求項1に記載の離型フィルムの製造方法。
【請求項3】
基材フィルム(A)と離型層(B)からなる積層フィルムの離型層(B)の表面に接して予め成形されてたフィルム状のポリマー層(C)を設けられていることを特徴とする請求項1に記載の離型フィルムの製造方法。
【請求項4】
ポリマー層(C)の表面の平滑性が、その表面粗さにおいて、基材フィルム(A)の表面の平滑性よりも、より平滑であることを特徴とする請求項1に記載の離型フィルム。