説明

離型フィルム

【課題】 剥離時に剥離が軽く、かつ耐大気暴露性や非移行性に優れる離型フィルムを提供する。
【解決手段】 溶剤型で付加型の硬化型シリコーンを含有する塗料をポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布してなる離型フィルムであり、当該硬化型シリコーンのポリシロキサン鎖におけるSi−H基、Si−Vi基、Si−CHのモル比率が下記式(1)および(2)を同時に満足することを特徴とする離型フィルム。
Si−H/Si−CH≦0.02・・・(1)
6.0≦Si−H/Si−Vi≦12.0・・・(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムは、優れた特性を有することから、液晶偏光板、位相差板構成部材製造用、PDP構成部材製造用、有機EL構成部材製造用等、各種ディスプレイ構成部材製造用等、各種光学用途等に使用されている。それらの中でも特に液晶偏光板用離型フィルムに関しては、近年のLCD市場の著しい成長に伴う生産量の急激な増加が見られる。また、LCD低価格化に伴い、部材の低価格実現のため、製造歩留まりの向上、および、製造のコスト削減が大きな課題となっている。
【0003】
製造の歩留まりの向上に関しては、LCD偏光板の液晶パネルへの貼り付け時のタクトタイム短縮のため、離型フィルムの剥離速度の高速化が求められており、従来の数m/分から20m/分以上の剥離速度が実用化されており、20m/分以上の高速剥離時の剥離力が高いと、LCD偏光板から離型フィルムの剥離時に、偏向板固定側の吸引力が負け、偏向版の位置がずれる不具合が発生する、一旦不具合が発生すると、自動化ラインが停止し、生産性の低下を余儀なくされる、固定側吸引力を強くする対策も考えられるが、偏向板へ跡が残るため限界がある。
【0004】
このように剥離時に軽剥離化が求められている一方、剥離されるまでの工程では十分な保持力を持って粘着層と密着していなければならない。特に偏光板を裁断、打ち抜き加工する際や、保管時の温湿度の変化による素材の伸縮度の違いなどによってメクレ、浮きが生じやすく、そのようなことが起こると生産性の低下につながる。
【0005】
また、製造コスト削減に関しては、セパレータの薄膜化、セパレータのロス削減が試みられている。巻き替え時などでラインを停止した際に、大気に暴露されたセパレータは、残存Si−Vi基により、重剥離化が起きてしまうため、廃棄されセパレータのロスが増えてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−290141号公報
【特許文献2】特開2001−47580号公報
【特許文献3】特開2009−214357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、剥離が軽く、大気暴露の影響も小さく、さらに非移行性にも優れる離型フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記実状に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を採用することにより、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、溶剤型で付加型の硬化型シリコーンを含有する塗料をポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布してなる離型フィルムであり、当該硬化型シリコーンのポリシロキサン鎖におけるSi−H基、Si−Vi基、Si−CHのモル比率が下記式(1)および(2)を同時に満足することを特徴とする離型フィルム。
【0010】
Si−H/Si−CH≦0.02・・・(1)
6.0≦Si−H/Si−Vi≦12.0・・・(2)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、剥離力の剥離時に剥離が軽く、かつ耐大気暴露性や非移行性に優れる離型フィルムを提供することができ、その工業的価値は極めて高い。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明において、ポリエステルフィルムに使用するポリエステルはホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート
(PEN)等が例示される。
【0013】
一方、共重合ポリエステルの場合は30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であることが好ましい。共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
【0014】
何れにしても本発明でいうポリエステルとは、通常80モル%以上、好ましくは90モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート単位であるポリエチレン−2,6−ナフタレート等であるポリエステルを指す。
【0015】
本発明におけるポリエステル層中には易滑性付与を主たる目的として粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらにポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0016】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等の何れを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0017】
また、本発明においてポリエステルフィルムに含有される粒子の平均粒径は0.1〜5μmを満足するのが好ましく、さらに好ましくは0.5〜3μm、最も好ましくは0.5〜2μmの範囲である。平均粒径が0.1μm未満の場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分となり、一方、5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において離型層を設ける場合等に不具合を生じることがある。
【0018】
さらにポリエステル中の粒子含有量は、0.01〜5重量%を満足するのが好ましく、さらに好ましくは0.01〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.01重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分になる場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合にはフィルム表面の平滑性が不十分になる場合がある。
【0019】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には上述の粒子以外に本発明の主旨を損なわない範囲において、従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0020】
本発明の離型フィルムを構成するポリエステルフィルムの厚みはコスト的にはより薄膜であるのが好ましいが、一方においてはフィルム平面性確保の必要がある。離型フィルムを構成するポリエステルフィルム厚みが薄すぎる場合には加工時の熱処理によるしわ等により、フィルム平面性が損なわれる場合が多い。また偏光板に加工された後に力が加わった場合薄いフィルムでは粘着剤に対する保護機能が十分でなくなる恐れがある。
【0021】
かかる観点より、本発明における離型フィルムを構成するポリエステルフィルムの厚みは12〜125μmであるのが好ましく、さらに好ましくは25〜75μmの範囲がよい。
【0022】
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高める必要があり、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する延伸温度は通常130〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。
【0023】
上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。また、同時二軸延伸を行うことも可能である。同時二軸延伸法としては、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法で、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。
【0024】
上述の延伸方式を使用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動式等、従来から公知の延伸方式を採用することができる。「スクリュー方式」はスクリューの溝にクリップを乗せてクリップ間隔を広げていく方式である。「パンタグラフ方式」はパンタグラフを用いてクリップ間隔を広げていく方式である。「リニアモーター方式」はリニアモーター原理を応用し、クリップを個々に制御可能な方式でクリップ間隔を任意に調整することができる利点を有する。
【0025】
さらに同時二軸延伸に関しては二段階以上に分割して行ってもよく、その場合、延伸場所は一つのテンター内で行ってもよいし、複数のテンターを併用してもよい。
【0026】
本発明において、同時二軸延伸により離型フィルムを構成するポリエステルフィルムを延伸することによれば、従来、逐次二軸延伸では面積倍率が大きくなる場合において、延伸時に破断する等の不具合を生じる場合があったが、同時二軸延伸においては延伸追従性が良好である為、フィルム長手方向および幅方向において、逐次二軸延伸よりもさらに面積倍率を大きくすることが可能な為、さらにフィルム厚みむらの小さいポリエステルフィルムを製造することが可能となるので好ましい。
【0027】
また、上述のポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、いわゆる塗布延伸法(インラインコーティング)を施すことができる。それは以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては特に1段目の延伸が終了して、2段目の延伸前にコーティング処理を施すことができる。
【0028】
本発明の離型フィルムを構成する離型層は、離型性を有する硬化型シリコーン樹脂で形成され、硬化課程においてビニル基とケイ素−水素結合を有する基の付加反応を含むもの(いわゆる付加型シリコーン)である。
【0029】
本発明において、ビニル基を含有するポリシロキサン鎖におけるビニル基の含有割合がシロキサン単位で3%以上であるシリコーンとは、付加型シリコーンにおいて多くの場合主成分となるビニル基を有するポリシロキサンにおいて、その骨格を形成するシロキサン単位(Si原子1個を含む単位であり、一般に下記式で示される)を1単位とする。
【0030】
【化1】

【0031】
硬化処理におけるエネルギー源は熱処理が一般的であるが、紫外線照射、電子線照射を併用することもできる。
【0032】
本発明で用いるシリコーン化合物の分子量は特に限定されないが、溶剤に希釈して塗工することを考慮すると、少なくとも一成分に当業者の間で「ガム」と呼ばれる粘度でおよそ百万mPa・s以上のものを含むことが望ましい。実際の塗料においては30%トルエン溶液とした時の粘度でおよそ1000mPa・s以上、好ましくは5000mPa・s以上のものを少なくとも一成分として含むことが望ましい。粘度が低いと、均一に塗工するための溶剤の選択が難しくなる、はじき等塗工面状が悪化し光学用フィルムとして適さなくなる等の悪影響が懸念される(「シリコーンハンドブック」p.523、日刊工業新聞社、伊藤邦雄編(1990)に記載がある)。
【0033】
本発明で用いる付加型シリコーンにおいてはその架橋反応に関与するシロキサンのビニル基およびSi−H基とビニル基の含有比(Si−H/Si−Vi比)が重要である。通常Si−H基の方が過剰になるように用い、この比は1.2〜2.0程度に設定されることが多い(小川匡彦、コンバーテック p.49(1996))。本発明で用いられるシリコーンは官能基の絶対数が多いので、同じ過剰率でも過剰となるSi−H基の絶対数も多くなるので通常は過剰率を控えめとすることが多い。Si−H基の絶対数が多いと、剥離力が重くなり、経時での安定性欠ける。ロールで保存した場合に中巻部が重剥離化するなどの不具合も報告されている。しかしながら本発明者は、このようなシリコーンをポリエステルフィルムに薄膜塗工する場合は、好ましい領域が従来言われているものと大きくずれていることを知見した。すなわち、本発明においては、当該硬化型シリコーンのポリシロキサン鎖におけるSi−H基の含有割合がSi−H/Si−CH比で0.02以下であり、塗料中のSi−H/Si−Vi比が6.0〜12.0である。
【0034】
本発明で使用する希釈溶剤としては、トルエン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エチルメチルケトン(MEK)、イソブチルメチルケトン等のケトン類、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類が例示でき、溶解性、塗工性や沸点等を考慮して単独または複数混合して使用する。
【0035】
また、離型層の特性を調整するために本発明の主旨を損なわない範囲において、反応調整剤、密着強化剤、剥離コントロール剤等の助剤を併用してもよい。
【0036】
離型層の塗工量(乾燥後)は、ポリエステルフィルムが平坦であるため紙類に塗工するより薄くするのが良く、通常0.01〜1g/m、好ましくは0.04〜0.5g/m、さらに好ましくは0.06〜0.3g/mの範囲である。離型層の塗工量が少な過ぎる場合、剥離力の安定性に欠けることがある。一方、塗工量が多すぎる場合、移行性の増大、ブロッキングの懸念がある。
【0037】
本発明において、ポリエステルフィルムに離型層を設ける方法として、マルチロールコート、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、バーコート、ダイコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著1979年発行に記載例がある。
【0038】
また、本発明における離型フィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。さらに本発明における離型フィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ接着層、帯電防止層等の塗布層が設けられていてもよい。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
【0040】
(1)大気暴露前の剥離力の測定
試料フィルムをA4大に切り取り、ポリエチレン製の袋に入れて外気に触れないようにして同じ実験室に24時間放置すること以外は同様にして剥離力を測定した。
【0041】
(2)大気暴露後の剥離力の測定
試料フィルムをA4大に切り取り、室温23℃湿度50%RHに調節された実験室(非クリーン環境)内に渡した紐に24時間つり下げる。その後、離型面に粘着テープ(日東電工(株)製「No.502」淡色剥離紙側を使用)を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力は(株)島津製作所製「Ezgraph」を使用し、引張速度0.3(m/min)の条件下、180°剥離を行った。
【0042】
(3)離型フィルムの移行性評価接着率
試料フィルムをA4大に切り取り、離型面に75μm厚2軸延伸PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製:ダイアホイルT100−75)を重ねて温度60℃、圧力1MPaの条件で2時間プレスする。この離型面に押し当てた75μm厚フィルムを移行性評価フィルムとする。未処理のPETフィルムにも同様にして75μm厚2軸延伸PETフィルム(同)を押し当て、基準フィルムとする。それぞれのフィルムの押し当てた面に粘着テープ(日東電工(株)製「No.31B」)を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力は(株)島津製作所製「Ezgraph」を使用し、引張速度0.3(m/min)の条件下、180°剥離を行った。
移行性評価接着率(%)=(移行性評価フィルムの剥離力/基準フィルムの剥離力)×100
移行性の大きなフィルムでは押し当てたフィルムに多くのシリコーンが付着するため、粘着テープの剥離力が小さくなり、移行性評価接着率(%)も低下する。90%以上が好ましく、95%以上がさらに好ましい。
【0043】
塗料中のシロキサンのSi−H基およびSi−Vi基の含有量比(SiH/SiVi比)については、塗料単体または混合物のNMR分析により算出した。各種試料は室温で風乾した後、得られた残渣物についてH−NMR(重クロロホルム)測定を行った。シリコーンの官能基として、Si−CH基、Si−H基、Si−Vi基が検出され、ピーク強度からモル比を求めた。
【0044】
実施例1:
厚み38μmの2軸延伸PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製:ダイアホイルT100−38)に下記組成からなる離型剤を塗布量(乾燥後)が約0.12(g/m)になるように塗布し、150℃、10秒間熱処理し、離型フィルムを得た。
《離型剤組成》
・30%トルエン溶液での粘度が15000mPa・s、塗料中のSi−H/Si−CH比が0.0155の溶剤型シリコーン(信越化学(株)製:KS−847H、不揮発分30%) 20重量部
・30%トルエン溶液の架橋剤(信越化学(株)製:X−92−122 0.2重量部
・白金含有触媒(信越化学(株)製:catPL−50T) 0.2重量部
これを、トルエン/MEK/n−ヘプタンの混合溶媒(混合比率は1:1:1)にて希釈し、固形分濃度約1.5重量%の塗布液を作製した。
【0045】
実施例2
実施例1において、離型剤組成を下記離型剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。
《離型剤組成》
・30%トルエン溶液での粘度が30000mPa・s、塗料中のSi−H/Si−CH比が0.0172の溶剤型シリコーン(東レ・ダウコーニング(株)製:BY24−561、不揮発分30%) 20重量部
・白金含有触媒(東レ・ダウコーニング(株)製:BY24−835) 0.3重量部
これを、トルエン/MEK/n−ヘプタンの混合溶媒(混合比率は1:1:1)にて希釈し、固形分濃度約1.5重量%の塗布液を作製した。
【0046】
比較例1:
比較例1において、離型剤組成を下記離型剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。
《離型剤組成》
・30%トルエン溶液での粘度が15000mPa・s、塗料中のSi−H/Si−CH比が0.0155の溶剤型シリコーン(信越化学(株)製:KS−847H、不揮発分30%) 20重量部
・白金含有触媒(信越化学(株)製:catPL−50T) 0.2重量部
これを、トルエン/MEK/n−ヘプタンの混合溶媒(混合比率は1:1:1)にて希釈し、固形分濃度約1.5重量%の塗布液を作製した。
【0047】
比較例2:
比較例2において、離型剤組成を下記離型剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。
《離型剤組成》
・30%トルエン溶液での粘度が15000mPa・s、塗料中のSi−H/Si−CH比が0.0155の溶剤型シリコーン(信越化学(株)製:KS−847H、不揮発分30%) 20重量部
・30%トルエン溶液の架橋剤(信越化学(株)製:X−92−122 0.5重量部
・白金含有触媒(信越化学(株)製:catPL−50T) 0.2重量部
これを、トルエン/MEK/n−ヘプタンの混合溶媒(混合比率は1:1:1)にて希釈し、固形分濃度約1.5重量%の塗布液を作製した。
【0048】
上記実施例および比較例で得られた各フィルムの特性を下記表1にまとめて示す。
【0049】
【表1】

【0050】
実施例1,2のフィルムは、大気暴露の影響も小さく、さらに非移行性にも優れる。一方、Si−H/Si−Vi比が小さい比較例1は、大気暴露性が大きく低下した。また、SiH基量が多い比較例2では、Si−H/Si−Vi比が大きくても、残存Si−H基との相互作用で大気暴露性が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のフィルムは、剥離力の剥離時に剥離が軽く、かつ耐大気暴露性や非移行性に優れる離型フィルムとして好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤型で付加型の硬化型シリコーンを含有する塗料をポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布してなる離型フィルムであり、当該硬化型シリコーンのポリシロキサン鎖におけるSi−H基、Si−Vi基、Si−CHのモル比率が下記式(1)および(2)を同時に満足することを特徴とする離型フィルム。
Si−H/Si−CH≦0.02・・・(1)
6.0≦Si−H/Si−Vi≦12.0・・・(2)

【公開番号】特開2011−207197(P2011−207197A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80036(P2010−80036)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】