説明

離型剤およびポリウレタン成形品の製造でのその使用

【課題】離型剤およびポリウレタン成形品の製造でのその使用を提供する。
【解決手段】本発明は、
A)石鹸、油、ワックスおよびシリコーンからなる群からの、剥離活性を有する少なくとも1つの試剤と、
B)少なくとも1つのビスマス・カルボキシレートと、
C)有機溶剤と、必要に応じて、
D)典型的な助剤および添加剤と
を実質的に含む、ポリウレタン成形品を製造するための離型剤分散系を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型剤およびポリウレタン成形品の製造でのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
成形品を製造するために用いられるポリウレタンシステムは使用される金型材料、好ましくは金属などの高熱伝導性材料に強い接着性を示すことが知られている。それ故、ポリウレタン成形品の離型のために、ポリウレタンとおよび/またはポリウレタン反応混合物と接触する金型壁に塗布される離型剤が必要とされている。
【0003】
この種の離型剤は、炭化水素または水などの溶剤中のワックス、石鹸、油および/またはシリコーンの分散系またはエマルジョンからなる。金型への離型剤の塗布後に、溶剤は蒸発し、剥離活性を有する非揮発性物質が薄い剥離フィルムを形成し、その結果ポリウレタン成形品はそれが製造された後に金型から容易に取り出すことができる。
【0004】
実際に必要とされる剥離効果に加えて、離型剤はまたさらなる機能も呈する。例えば、それはまた、とりわけ、仕上げ成形品を布または皮革で容易にカバーできることを確実にする目的で、有細孔または平滑および均一であるべきである、ポリウレタン成形品の表面にも非常に大きな影響を及ぼす。
【0005】
自動車供給産業での生産速度のさらなる最適化の過程で、重要な品質特性になったのは、まさしくポリウレタン成形品のカバー能力の上記特性である。
【0006】
ポリウレタンフォーム成形品の表面品質を改善する一選択肢は、ポリオール−イソシアネート反応を触媒するおよびそれによって促進する物質を使用することである。ポリウレタン成形品用の市販離型剤はそれ故、スズ反応促進剤と呼ばれるもの、言い換えれば有機スズ化合物をベースにする触媒を典型的には含む。表面品質を改善するだけでなく、これらのスズ反応促進剤はまた、ポリオール−イソシアネート反応をフォームと剥離フィルムとの界面で促進させることによる、剥離補助効果も有する。例えば(特許文献1)に記載されているような、ジ−n−ブチルスズジカルボキシレートが特に好適である。例えば(特許文献2)または(特許文献3)に記載されているように、主にジブチルスズジラウレート(DBTL)が使用される。
【0007】
公知であるように、DBTLはR50/53(環境にとって危険な、水性生物体に非常に毒性の)に分類され、そしてDBTLを含有する離型剤の貯蔵および輸送の間ずっと環境へのリスクを抱えている。
【0008】
その結果として、例えば、履物底部またはマットレス分野での、多くのポリウレタンフォーム成形品顧客は、使用される離型剤がスズ化合物フリーであることを既に要求しつつある。
【0009】
さらに、ECB(欧州化学物質局(European Chemical Bureau))は、有機スズ化合物をR語句R60−R61の生殖毒素として分類するカテゴリー化に着手しつつある。これは、ある種のジ−n−ブチルスズジカルボキシレート、中でもDBTLに影響を及ぼすであろう。当該ケースでは、かかる成分を含む離型剤をこれ以上使用することは事実上不可能であろう。
【0010】
それ故、スズ化合物フリーであり、かつ、有効な剥離作用およびポリウレタン成形品の表面の有利な作用を依然として示す、言い換えれば、それらを有細孔で、わずかに開孔ありおよび平滑および均一なままにする外部金型離型剤を見いだすことが本発明の目的であった。
【0011】
意外なことに、0.05重量%〜10重量%、好ましくは0.1重量%〜5重量%、特に0.2重量%〜1重量%の量での有機酸のビスマス塩と一緒での有機溶剤中の、ワックス、石鹸、油および/またはシリコーンなどの、剥離活性を有する通常の物質の分散系がこの目的を達成することが今や見いだされた。
【0012】
【特許文献1】EP 1 082 202号明細書
【特許文献2】DE 35 41 513号明細書
【特許文献3】DE 34 10 219号明細書
【非特許文献1】「クラリアントによるワックス、生産、特性および用途(Waxes by Clariant,production,characteristics and applications)」、クラリアント(Clariant)、2003年5月
【非特許文献2】「ヴェストワックス(登録商標)入り離型剤(Formtrennmittel mit Vestowax)(登録商標)」、デグッサ(Degussa)、2001年2月
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明は、
A)石鹸、油、ワックスおよびシリコーンからなる群からの、剥離活性を有する少なくとも1つの試剤と、
B)少なくとも1つのビスマス・カルボキシレートと、
C)有機溶剤と、必要に応じて、
D)典型的な助剤および添加剤と
を実質的に含む、ポリウレタン成形品を製造するための離型剤分散系(ディスパージョン、dispersion)を提供する。
【0014】
分散系は好ましくは
A)石鹸、油、ワックスおよびシリコーンからなる群からの、剥離活性を有する0.5重量%〜40重量%の少なくとも1つの試剤、
B)0.05重量%〜10重量%の少なくとも1つのビスマス・カルボキシレート、
C)0.1重量%〜10重量%の助剤およびアジュバント、
D)100重量%までの有機溶剤
からなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ビスマス・カルボキシレートとして有機酸R−COOH(式中、
R=場合により多重結合を含有する非分岐のまたは分岐したC〜C22炭化水素基、すなわち、アルキル基、アルケニル基および/またはアリール基)
のBi(III)塩を使用することが好ましい。
【0016】
有機酸は、カプロン酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、カプリン酸、ネオデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ペトロセリン酸、エライジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、エルカ酸、ガドレイン酸、ナタネ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、トール油脂肪酸、およびまた加圧開裂の過程で得られた技術的混合物などの、この分野で慣例的であり、公知である、そして6〜22個の炭素原子を有する、好ましくは8以上〜20個の炭素原子を有する、特に8〜18個の炭素原子を有する天然の植物性または動物性脂肪および油をベースとする一価脂肪酸である。原則として、類似した鎖分布のすべての脂肪酸が好適である。
【0017】
これらの脂肪酸の不飽和成分含有率は−必要に応じて−公知の接触水素化法を用いて所望のヨウ素価に調整されるか、または完全水素化脂肪成分を非水素化脂肪成分とブレンドすることによって達成される。
【0018】
脂肪酸の平均飽和度の数値尺度としてのヨウ素価は、二重結合の飽和のために化合物の100gによって吸収されるヨウ素の量である。
【0019】
ビスマス・カルボキシレートは、文献から公知の方法によって有機酸R−COOHと共にBi(III)化合物から製造することができるか、または三オクタン酸ビスマスもしくは三ネオデカン酸ビスマスなどの、それぞれのブランド名で、例えばボルチ(Borchi)(登録商標)カット(Kat)(ボルチャーズGmbH(Borchers GmbH))またはテゴカット(Tegokat)(登録商標)(ゴールドシュミットTIB GmbH(Goldschmidt TIB GmbH))、シェパード(Shepherd)製のネオビ(Neobi)(登録商標)200、およびカスケム(Caschem)製のコスキャット(Coscat)(登録商標)のブランド名で市販製品として入手可能である。これらの物質は毒性として分類されず、環境にとって危険として分類されない。
【0020】
一方、これらの塩は、反応混合物/金型表面の界面でポリオールとイソシアネートとの反応を触媒し、さらに、必須の気泡化(celledness)および構造の方向にフォームの表面品質に影響を及ぼし、後者は一定の気泡サイズ内にある(微細気泡化されているが、マイクロフォームまたは粗いフォームがない)べきであり、かつ、わずかに開孔されている(閉鎖していないすなわち大部分は開いている)べきである。これらの判定基準は概して実用的である、すなわち、わずかな範囲の認定試験を用いて最適化することができ、例えば、テキスタイル覆いで成形品をカバーすることをより容易にする。
【0021】
本発明はさらに、ポリウレタン成形品の製造での外部離型剤としてのこれら分散系の使用を提供する。
【0022】
剥離活性を有する通常の物質として、例えば
ワックス、すなわち、また酸化されたおよび/または部分加水分解された、液体、固体、天然または合成ワックス、
アルコールまたは脂肪アルコールとのカルボン酸のエステル、
脂肪酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩などの金属石鹸、
必要に応じて−しかし好ましくはないが−不飽和オリゴマーおよび/またはポリマー炭化水素と共に使用される、室温で粘稠であるまたは液体である炭化水素などの油
必要に応じて脂肪族または芳香族炭化水素基で置換されたポリジメチルシロキサンなどのシリコーン
を本発明に従って使用することが可能である。
【0023】
剥離活性を有する典型的なワックスは、例えば会社概要(非特許文献1)および(非特許文献2)に提示されている。
【0024】
使用することができる溶剤は好ましくは、HCFC(ヒドロクロロフルオロカーボン)フリーである溶剤である。好ましくは22℃より高い、より好ましくは55℃より高い引火点で、25〜280℃、好ましくは80〜200℃の沸点範囲を有する炭化水素を使用することが好ましい。
【0025】
好適な溶剤の例は、例えば、スペシャル沸点スピリット(special boiling spirit)100/140、シェルゾル(Shellsol)(登録商標)D40、エクゾル(Exxsol)(登録商標)D40、イソウンデカンとイソドデカンとの混合物などのイソパラフィン(イソパール(Isopar)(登録商標)H)、またはホワイト・スピリットの形での、例えばクリスタルロエル(Kristalloel)K30である。
【0026】
典型的な助剤および添加剤として、ポリシロキサン−ポリエーテル共重合体のようなポリウレタンフォーム安定剤、そしてまたタルク、増粘剤、シリカ、必要に応じて典型的な触媒からなる群から選択される、先行技術で公知である化合物の1つもしくはそれ以上を約0.1重量%〜10重量%の典型的な量で使用することが可能である。
【0027】
本発明の分散系は、先行技術で公知の方法によって調製することができる。好ましい手順は、剥離活性を有する物質を最初に溶融した形で導入し、高い剪断力下に溶剤の一部を導入し、次に低い剪断力下に残りの溶剤をさらなる成分と一緒に加えることである。
【0028】
本発明はさらに、ポリウレタン成形品の製造での上記離型剤の使用を提供する。
【0029】
通常、金型は40〜80℃、好ましくは45〜75℃の所望の金型温度にされ、離型剤を吹き付けられ、溶剤の大部分が蒸発してしまうまで一定の時間放置され、次に、ポリオール、ポリイソシアネート、および必要に応じて、触媒、フォーム安定剤、および発泡剤などのさらなる添加剤を含む反応性ポリウレタンシステムがポンプで入れられる。金型は閉められ、硬化時間後に、金型は開かれ、成形品が取り出される。
【0030】
本発明はさらに、例えば、自動車シート、張り椅子またはマットレスのための、上記離型剤を使用して製造されたポリウレタン成形品の布、テキスタイル、不織布、皮革または他の被覆材料での覆いを提供する。
【実施例】
【0031】
使用される物質のリスト
マイクロワックス=50〜90℃の凝固温度を有する市販ワックス
ポリエチレンワックス=50〜90℃の凝固温度を有する市販ワックス
炭化水素溶剤=80〜200℃の沸点範囲の市販ベンジン留分
テゴカット(登録商標)ネオデカン酸ビスマス(III)、製造業者:ゴールドシュミットTIB GmbH
ボルチ(登録商標)カット・オクタン酸ビスマス(III)、製造業者:ボルチャーズGmbH
コスモス(Kosmos)(登録商標)19=ジブチルスズジラウレート(DBTL)、製造業者:デグッサ
DC(登録商標)190=ポリエーテルシロキサン、製造業者:エア・プロダクツ(Air Products)
デスモフェン(Desmophen)(登録商標)PU21IK01=ポリエーテルポリオール、製造業者:バイエル(Bayer)
テゴアミン(Tegoamin)(登録商標)TA33、製造業者:デグッサ
テゴアミン(登録商標)AS−1、製造業者:デグッサ
テゴスターブ(Tegostab)(登録商標)EP−K−38=有機変性シロキサン、製造業者:デグッサ
スプラセック(Suprasec)(登録商標)2412=ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、製造業者:ハンツマン(Huntsman)
【0032】
実施例1
ネオデカン酸ビスマス入り離型剤
2.5重量%のポリエチレンワックス(凝固点60℃)および2.5重量%のマイクロワックス(凝固点70℃)を溶融させ、45重量%の炭化水素(引火点56℃)を加える。48.5重量%の炭化水素(引火点56℃)を0.5重量%のテゴカット(登録商標)ネオデカン酸ビスマスおよび1重量%のポリエーテルシロキサンDC190と混ぜ合わせ、混合物をワックス分散系に加える。
【0033】
実施例2
オクタン酸ビスマス入り離型剤
2.5重量%のポリエチレンワックス(凝固点60℃)および2.5重量%のマイクロワックス(凝固点70℃)を溶融させ、45重量%の炭化水素(引火点56℃)を加える。48.5重量%の炭化水素(引火点56℃)を0.5重量%のボルチ(登録商標)カット・オクタン酸ビスマスおよび1重量%のDC190(登録商標)と混ぜ合わせ、混合物をワックス分散系に加える。
【0034】
比較例A
触媒なしの離型剤
2.5重量%のポリエチレンワックス(凝固点60℃)および2.5重量%のマイクロワックス(凝固点70℃)を溶融させ、45重量%の炭化水素(引火点56℃)を加える。49重量%の炭化水素(引火点56℃)を1重量%のDC190(登録商標)と混ぜ合わせ、混合物をワックス分散系に加える。
【0035】
比較例B
ジブチルスズジラウレート入り離型剤
2.5重量%のポリエチレンワックス(凝固点60℃)および2.5重量%のマイクロワックス(凝固点70℃)を溶融させ、45重量%の炭化水素(引火点56℃)を加える。48.5重量%の炭化水素(引火点56℃)を0.5重量%のコスモス(登録商標)19および1重量%のDC190(登録商標)と混ぜ合わせ、混合物をワックス分散系に加える。
【0036】
離型剤試験
離型剤を、実際に用いられるものに類似の20g/mの量で、金属試験プレートに0.5mmノズルを用いて吹き付けることによって塗布し、100部のデスモフェン(登録商標)PU21IK01、3.5部の水、0.4部のテゴミン(Tegomin)(登録商標)TA33、0.25部のテゴアミン(登録商標)AS−1、0.7部のジエタノールアミン、0.5部のテゴスターブ(登録商標)EP−K−38、0.2部の酢酸(水中60%)および63.5部のスプラセック(登録商標)2412からなる発泡性ポリウレタンシステムを55℃のボックス金型中でこれらのプレート上へ発泡させた。
【0037】
硬化が起こった(10分)後に、金属プレートを、剥離効果の程度を測定するために、スプリング力計を用いてフォームから剥離した。
【0038】
【表1】

【0039】
上の表から明らかであるように、離型剤1および2に本発明に従って使用される非毒性ビスマス塩は、触媒なしの対照(離型剤A)に勝る顕著な技術的利点を示し、技術的効果の点で毒性スズ化合物(離型剤B)と同等である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)石鹸、油、ワックスおよびシリコーンからなる群からの、剥離活性を有する少なくとも1つの試剤と、
B)少なくとも1つのビスマス・カルボキシレートと、
C)有機溶剤と、必要に応じて、
D)典型的な助剤および添加剤と
を実質的に含む、ポリウレタン成形品を製造するための離型剤分散系。
【請求項2】
成分B)として少なくとも1つの有機酸R−COOH(式中、Rは、場合により多重結合を含有する、場合により分岐したC〜C22炭化水素基である)のBi(III)塩が使用される、請求項1に記載の分散系。
【請求項3】
三オクタン酸ビスマスおよび/または三ネオデカン酸ビスマスが使用される、請求項2に記載の分散系。
【請求項4】
A)石鹸、油、ワックスおよびシリコーンからなる群からの、剥離活性を有する0.5重量%〜40重量%の少なくとも1つの試剤と、
B)0.05重量%〜10重量%のビスマス・カルボキシレートと、必要に応じて、
C)0.1重量%〜10重量%の助剤およびアジュバントと、
D)100重量%までの有機溶剤と
を実質的に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の分散系。
【請求項5】
ポリウレタン成形品を製造するための請求項1〜4のいずれか一項に記載の離型剤分散系の使用。
【請求項6】
それを使用して製造されるポリウレタン成形品のカバー能力を改善するための請求項1〜4のいずれか一項に記載の離型剤分散系の使用。

【公開番号】特開2007−331392(P2007−331392A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153571(P2007−153571)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(500442021)ゴールドシュミット ゲーエムベーハー (28)
【Fターム(参考)】