説明

離型材

【課題】剥離速度依存性が小さい剥離剤層を有し、且つ基材と剥離剤層とが接触したときにブロッキングを有効に抑制することができる離型材を提供すること。
【解決手段】基材の片面に、非反応性ポリオレフィン(A)、イソシアネート(B)およびポリオレフィンポリオール(C)を含有する剥離剤から形成された剥離剤層を有し、非反応性ポリオレフィン(A)の含有量が剥離剤中80質量%以上であり、非反応性ポリオレフィン(A)が、23℃における引張弾性率が10MPa以下であり、且つ23℃における引張破壊応力が8MPa以下である非反応性ポリオレフィン(A−1)を含有し、非反応性ポリオレフィン(A−1)の含有量が非反応性ポリオレフィン(A)中90質量%以上であり、剥離剤層が形成されていない基材の他方の面の表面粗さRaが0.1μm以上である離型材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材および剥離剤層を有する離型材に関する。
【背景技術】
【0002】
離型材は、紙、プラスチックフィルムおよびプラスチックラミネート紙等の基材の少なくとも片面に剥離剤層を設けたものであって、粘着テープ、粘着シートおよびラベル等の粘着剤面を保護する目的や、セラミックグリーンシート等の製造工程に使用されている。
【0003】
剥離剤層を形成するための剥離剤としては、シリコーン系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤、ポリオレフィン系剥離剤およびフッ素系剥離剤等が知られている。しかし、電子部品関連等の用途では、シリコーン系剥離剤では問題を生ずるケースがあるため、非シリコーン系剥離剤、例えばポリオレフィン系剥離剤が使用されている。
【0004】
ポリオレフィン系剥離剤としては、基材密着性を高めるために、ポリオレフィンに加えて、イソシアネート系架橋剤およびポリオールを含有するものが知られている(例えば特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−346213号公報
【特許文献2】特開2004−250681号公報
【特許文献3】特開2004−230773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基材密着性に優れた剥離剤層を有する離型材の中には、低速剥離では低い剥離力を示すが、高速剥離では高い剥離力を示すもの(即ち、大きい剥離速度依存性を示すもの)がある。剥離速度依存性が大きい離型材は使い勝手が悪い。そのため、小さい剥離速度依存性を有する離型材が求められている。
【0007】
また、基材の片面にオレフィン系剥離剤層が形成された離型材をロール状に巻き取ったり、シート状の離型材を積層する場合には、接触した基材と剥離剤層とがブロッキングすることがある。特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)製基材とオレフィン系剥離剤層との組合せでは、ブロッキングが生じやすい。このようなブロッキングが抑制された離型材が求められている。
【0008】
本発明は上記のような事情に着目してなされたものであって、その目的は、剥離速度依存性が小さい剥離剤層を有し、且つ基材と剥離剤層とが接触したときのブロッキングを有効に抑制することができる離型材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、23℃における引張弾性率および引張破壊応力が特定の値以下である非反応性ポリオレフィンを特定量以上で含有する剥離剤から形成した剥離剤層が、小さい剥離速度依存性を示すことを見出した。また、剥離剤層が形成されていない基材の他方の面の表面粗さRaを特定の値以上に設定することによって、剥離剤層と基材とのブロッキングを有効に抑制し得ることを見出した。これらの知見に基づく本発明は、以下の通りである。
【0010】
[1] 基材および剥離剤層を有する離型材であり、
剥離剤層が、38℃において固体である非反応性ポリオレフィン(A)、イソシアネート(B)およびポリオレフィンポリオール(C)を含有する剥離剤から、基材の片面に形成されたものであり、
非反応性ポリオレフィン(A)の含有量が、剥離剤中、80質量%以上であり、
非反応性ポリオレフィン(A)が、23℃における引張弾性率が10MPa以下であり、且つ23℃における引張破壊応力が8MPa以下である非反応性ポリオレフィン(A−1)を含有し、
非反応性ポリオレフィン(A−1)の含有量が、非反応性ポリオレフィン(A)中、90質量%以上であり、
剥離剤層が形成されていない基材の他方の面の表面粗さRaが、0.1μm以上である離型材。
[2] イソシアネート(B)が、1分子中にイソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネートである上記[1]に記載の離型材。
[3] ポリイソシアネートが、芳香族ポリイソシアネートおよび脂環式ポリイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一つである上記[2]に記載の離型材。
[4] ポリイソシアネートが、芳香族ジイソシアネートの多価アルコール付加体および脂環式ジイソシアネートの多価アルコール付加体からなる群から選ばれる少なくとも一つである上記[3]に記載の離型材。
[5] 剥離剤中のイソシアネート(B)の含有量が、非反応性ポリオレフィン(A)100質量部に対して、0.5〜20質量部である上記[1]〜[4]のいずれか一つに記載の離型材。
[6] ポリオレフィンポリオール(C)の数平均分子量が、1500〜50000である[1]〜[5]のいずれか一つに記載の離型材。
[7] 剥離剤が、さらに、38℃における粘度が5〜1500Pa・sである液状炭化水素(D)を含有する上記[1]に記載の離型材。
[8] 剥離剤中の液状炭化水素(D)の含有量が、非反応性ポリオレフィン(A)および液状炭化水素(D)の合計100質量部に対して、3〜30質量部である上記[7]に記載の離型材。
【発明の効果】
【0011】
本発明の離型材の剥離剤層は、小さい剥離速度依存性を示す。また、本発明の離型材では、基材と剥離剤層とが接触したときのブロッキングが有効に抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の離型材は、剥離剤層および基材を有する。以下、剥離剤層および基材を、順に説明する。
【0013】
1.剥離剤層
本発明において、剥離剤層は、38℃において固体である非反応性ポリオレフィン(A)、イソシアネート(B)およびポリオレフィンポリオール(C)を含有する剥離剤から形成されたものである。以下、剥離剤成分について順に説明する。
【0014】
[非反応性ポリオレフィン(A)]
本発明において「非反応性ポリオレフィン」とは、後述するイソシアネート(B)およびポリオレフィンポリオール(C)と反応しないポリオレフィン、即ち、イソシアネート(B)およびポリオレフィンポリオール(C)と反応する官能基、例えば水酸基(ヒドロキシ基)、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基(イソシアナト基)等を含まないポリオレフィンを意味する。この非反応性ポリオレフィン(A)は、38℃において固体である。
【0015】
非反応性ポリオレフィン(A)の含有量は、剥離剤中(即ち、剥離剤層中)、80質量%以上、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。非反応性ポリオレフィン(A)の含有量が80質量%未満である場合、剥離力が大きくなる傾向がある。なお、非反応性ポリオレフィン(A)の含有量の上限値に特に限定は無い。但し、充分な剥離剤層強度を得るために充分な量のイソシアネート(B)およびポリオレフィンポリオール(C)を確保するため、非反応性ポリオレフィン(A)の含有量は、剥離剤中、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。なお、含有量の基準となる「剥離剤」の中には、有機溶媒の量は含まれない。
【0016】
非反応性ポリオレフィン(A)は、23℃における引張弾性率が10MPa以下であり、且つ23℃における引張破壊応力が8MPa以下である非反応性ポリオレフィン(A−1)を、非反応性ポリオレフィン(A)中に90質量%以上の量で含有する。即ち、非反応性ポリオレフィン(A)は、非反応性ポリオレフィン(A−1)以外の非反応性ポリオレフィン(A−2)を、10質量%以下の量であれば含有していてもよい。非反応性ポリオレフィン(A)中の非反応性ポリオレフィン(A−1)の含有量が90質量%未満であると、非反応性ポリオレフィン(A−2)の影響により、低速および/または高速で剥離した時の剥離剤層の剥離力が大きくなる。非反応性ポリオレフィン(A−1)の含有量は、非反応性ポリオレフィン(A)中、好ましくは95質量%以上、より好ましくは100質量%である。
【0017】
非反応性ポリオレフィン(A−1)の23℃における引張弾性率は、10MPa以下、好ましくは8MPa以下、より好ましくは7MPa以下、さらに好ましくは6MPa以下であり、非反応性ポリオレフィン(A−1)の23℃における引張破壊応力は、8MPa以下、好ましくは6MPa以下、より好ましくは4MPa以下である。23℃における引張弾性率が10MPaを超える非反応性ポリオレフィン(A−2)は、低速および高速で剥離した時の剥離剤層の剥離力を増大させる傾向があり、23℃における引張破壊応力が8MPaを超える非反応性ポリオレフィン(A−2)は、高速で剥離した時の剥離剤層の剥離力を増大させる傾向がある。
【0018】
非反応性ポリオレフィン(A−2)としては、(i)23℃における引張破壊応力が8MPa以下であり、23℃における引張弾性率が10MPaを超える非反応性ポリオレフィン;(ii)23℃における引張弾性率が10MPa以下であり、23℃における引張破壊応力が8MPaを超える非反応性ポリオレフィン;および(iii)23℃における引張弾性率が10MPaを超え、23℃における引張破壊応力が8MPaを超える非反応性ポリオレフィン;がある。これらの中では、前記(ii)の態様の非反応性ポリオレフィン(A−2)が好ましい。また、非反応性ポリオレフィン(A−2)の23℃における引張弾性率は、好ましくは100MPa以下であり、非反応性ポリオレフィン(A−2)の23℃における引張破壊応力は、好ましくは35MPa以下である。
【0019】
本発明において、非反応性ポリオレフィン(A−1)の23℃における引張弾性率および23℃における引張破壊応力の下限値のいずれにも限定は無い。但し、充分な剥離剤層強度(塗膜強度)を得るために、非反応性ポリオレフィン(A−1)の23℃における引張弾性率は、好ましくは2MPa以上、より好ましくは3MPa以上であり、23℃における引張破壊応力は、好ましくは1MPa以上、より好ましくは2MPa以上である。
【0020】
非反応性ポリオレフィン(A)の「23℃における引張弾性率」および「23℃における引張破壊応力」とは、以下の方法で測定した値である。
非反応性ポリオレフィン(A)をトルエンに溶かして5〜10質量%の溶液とし、ベーカー式アプリケーターまたはドクターブレード型アプリケーターを使用して、これをポリエチレンテレフタレート(PET)製の離型フィルム上に塗布した後、熱風乾燥機で加熱乾燥し(100℃、3分間)、加熱乾燥後は直ちに23℃雰囲気下で冷却することによって、乾燥後の厚さが20μmの非反応性ポリオレフィン(A)フィルムを作製する。トルエンへの溶解性が悪い場合は、必要に応じて加温して溶解させても良い。得られた非反応性ポリオレフィン(A)フィルムを縦30mm×横100mmの短冊状に切り出し、非反応性ポリオレフィン(A)フィルムを離型フィルムから剥がしながら、切り出したフィルムの一方の短辺を軸にして長手方向に密に巻回して、長さ30mmの棒状サンプルとする。
この棒状サンプルについて、23℃雰囲気下で、チャック間距離10mm、引張速度50mm/minの条件で引張試験機(島津製作所(株)製、オートグラフ AG−IS型)にて引張試験を行い、その時の応力−ひずみ曲線を得る。その応力−ひずみ曲線における引張開始直後の曲線の傾きから引張弾性率を算出する。また、棒状サンプルが破断したときの応力を引張破壊応力として求める。
【0021】
非反応性ポリオレフィン(A){即ち、非反応性ポリオレフィン(A−1)および非反応性ポリオレフィン(A−2)}としては、例えば、他の成分とともに有機溶媒に溶解して基材に塗布できるものが好ましく、有機溶媒への溶解性が良好な低密度の非反応性ポリオレフィン(A)がより好ましい。一般に、低密度ポリオレフィンを含有する剥離剤から形成される剥離剤層は、剥離力が小さい反面、剥離速度依存性が大きいものが多い。しかし、本発明では、23℃における引張弾性率が10MPa以下であり、且つ23℃における引張破壊応力が8MPa以下である非反応性ポリオレフィン(A−1)を90質量%以上の量で含有する非反応性ポリオレフィン(A)を使用するため、剥離速度依存性を小さくすることができる。この作用効果は、剥離過程では粘着剤層と剥離剤層との界面付近で破壊が起こるという仮定の下、引張破壊応力が小さい非反応性ポリオレフィン(A−1)が主として存在することによって界面付近が小さな力で破壊されるので、剥離速度が速くなっても剥離力の増大を抑制し得るためであると推定される。
【0022】
非反応性ポリオレフィン(A)の密度は、好ましくは0.885g/cm以下、より好ましくは0.880g/cm以下である。この密度が0.885g/cmを超えると、有機溶媒への溶解性が低下し、剥離剤溶液の基材への塗布が困難になる場合があり、また剥離剤層の剥離力も増大する場合がある。また、非反応性ポリオレフィン(A)の密度は、好ましくは0.855g/cm以上である。非反応性ポリオレフィン(A)、特にエチレン系α−オレフィン共重合体は、その密度が低いと、融点も低くなり、耐熱性が悪くなる。
【0023】
非反応性ポリオレフィン(A)としては、例えば、エチレン、プロピレンおよび炭素数が4〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも二つの単量体から形成されるα−オレフィン共重合体が挙げられる。これらの中でも、エチレンを主たる単量体とする共重合体(即ち、エチレン系α−オレフィン共重合体)が好ましい。ここで、炭素数が4〜20のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等が挙げられる。また、α−オレフィン共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体のいずれでもよい。
【0024】
エチレン系α−オレフィン共重合体のエチレン構成単位量は、50モル%以上、好ましくは60〜95モル%、より好ましくは70〜95モル%である。エチレン系α−オレフィン共重合体に含まれるα−オレフィン構成単位としては、1−ブテン、プロピレン、1−ヘキセン、1−オクテンからなる群から選ばれる少なくとも一つの単量体から形成されるものが好ましい。特に好ましいエチレン系α−オレフィン共重合体として、エチレン−1−ブテン共重合体およびエチレン−プロピレン共重合体が挙げられる。なお、このようなエチレン−1−ブテン共重合体は、エチレンおよび1−ブテン以外のα−オレフィンに由来する構成単位を10モル%以下の量で含んでいてもよい。同様に、エチレン−プロピレン共重合体は、エチレンおよびプロピレン以外のα−オレフィンに由来する構成単位を10モル%以下の量で含んでいてもよい。このような共重合体は、例えば、遷移金属触媒成分(例えばバナジウム化合物やジルコニウム化合物)と有機アルミニウム化合物触媒成分とからなる触媒を用いて、エチレンとα−オレフィンとを共重合することによって製造することができる。
【0025】
非反応性ポリオレフィン(A)としては、市販品を使用することができる。例えば、市販のエチレン系α−オレフィン共重合体としては、タフマーPシリーズ、タフマーAシリーズ(いずれも、三井化学社製)、エンゲージ(ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。また、非反応性ポリオレフィン(A−1)の要件を満たす市販のエチレン系α−オレフィン共重合体としては、例えば、タフマーP−0080K、タフマーP−0280、タフマーA−35070S、タフマーP−0680、タフマーP−0180、タフマーP−0480、タフマーP−0275、タフマーP−0775(いずれも三井化学社製)等が挙げられる。
【0026】
非反応性ポリオレフィン(A−1)は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、非反応性ポリオレフィン(A)が非反応性ポリオレフィン(A−2)を含有する場合、非反応性ポリオレフィン(A−2)も、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、2種の非反応性ポリオレフィン(A−1)を使用してもよく、また、1種の非反応性ポリオレフィン(A−1)および1種の非反応性ポリオレフィン(A−2)を使用してもよい。
【0027】
本発明において、非反応性ポリオレフィン(A)として、1種の非反応性ポリオレフィン(A−1)のみを使用する場合、該非反応性ポリオレフィン(A−1)の230℃におけるMFR(メルトフローレート)は、剥離剤層強度などの観点から、好ましくは100g/10分以下、より好ましくは70g/10分以下、さらに好ましくは50g/10分以下、特に好ましくは10g/10分以下である。
【0028】
また、非反応性ポリオレフィン(A)として、少なくとも1種の非反応性ポリオレフィン(A−1)および少なくとも1種の非反応性ポリオレフィン(A−2)を使用する場合、非反応性ポリオレフィン(A−1)の少なくとも1種として、230℃におけるMFRが100g/10分以下であるものを用いるのが好ましい。該非反応性ポリオレフィン(A−1)の230℃におけるMFRは、より好ましくは70g/10分以下、さらに好ましくは50g/10分以下、特に好ましくは10g/10分以下である。このようなMFRを有する非反応性ポリオレフィン(A−1)の含有量は、非反応性ポリオレフィン(A)中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。
【0029】
[イソシアネート(B)]
剥離剤層を形成するための剥離剤は、1種または2種以上のイソシアネート(B)を含有する。イソシアネート(B)は、芳香族イソシアネートおよび脂肪族イソシアネートのいずれでもよい。脂肪族イソシアネートは、鎖状脂肪族イソシアネートおよび脂環式イソシアネートのいずれでもよい。これらの中でも、芳香族イソシアネートおよび脂環式イソシアネートが好ましい。芳香族イソシアネートおよび脂環式イソシアネートは、非反応性ポリオレフィン(A)との相溶性が低いため、これらを使用しても、剥離剤層の剥離性は損なわれない。一方、非反応性ポリオレフィン(A)と相溶しない芳香族イソシアネートおよび脂環式イソシアネートは、形成される剥離剤層と基材との間に偏在し、これらの密着性向上に大きく寄与する。
【0030】
基材密着性および耐熱性に優れた剥離剤層を形成するためには、イソシアネート(B)は、好ましくは1分子中にイソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネートであり、より好ましくは芳香族ポリイソシアネートおよび脂環式ポリイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一つであり、さらに好ましくは芳香族ジイソシアネートの多価アルコール付加体および脂環式ジイソシアネートの多価アルコール付加体からなる群から選ばれる少なくとも一つである。
【0031】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。これらの中で、トリレンジイソシアネートおよびキシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0032】
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、トランス−シクロヘキサンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート等が挙げられる。これらの中で、イソホロンジイソシアネートおよび水素化キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0033】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトールなどの脂肪族多価アルコール等が挙げられる。これらの中で、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0034】
ポリイソシアネートとしては、例えば、前記多価アルコールと、過剰量の前記芳香族ジイソシアネートまたは前記脂環式ジイソシアネートとを反応させて得られる、イソシアネート基を末端に含有する化合物が挙げられる。また、芳香族ジイソシアネートまたは脂環式ジイソシアネートの多量体(例えば、イソシアヌレート体)も、ポリイソシアネートとして好適である。芳香族ジイソシアネートの多価アルコール付加体は、好ましくはトリレンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートの多価アルコール付加体であり、より好ましくはトリレンジイソシアネートの多価アルコール付加体である。トリレンジイソシアネートの多価アルコール付加体は、反応性に優れ、優れた基材密着性を達成できる。また、脂環式ジイソシアネートの多価アルコール付加体は、好ましくは水素化キシリレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートの多価アルコール付加体である。
【0035】
剥離剤中のイソシアネート(B)の含有量は、非反応性ポリオレフィン(A)100質量部に対して、好ましくは0.5〜20質量部であり、より好ましくは1.0〜15質量部、さらに好ましくは1.5〜10質量部である。このような含有量でイソシアネート(B)を使用すれば、剥離剤のポットライフが短くなるなどの悪影響もなく、より優れた基材密着性が得られる。
【0036】
[ポリオレフィンポリオール(C)]
剥離剤層を形成するための剥離剤は、1種または2種以上のポリオレフィンポリオール(C)を含有する。ポリオレフィンポリオール(C)は、剥離剤層の形成でイソシアネート(B)と反応させるために用いられる。ポリオレフィンポリオール(C)としては、非反応性ポリオレフィン(A)との相溶性が良いものが好ましい。
【0037】
ポリオレフィンポリオール(C)の数平均分子量(Mn)は、好ましくは1500〜50000、より好ましくは1500〜4000、さらに好ましくは1500〜3000である。このような範囲のMnを有するポリオレフィンポリオール(C)は、非反応性ポリオレフィン(A)およびイソシアネート(B)の両方に対して適度な溶解性を有する。そのため、このようなポリオレフィンポリオール(C)は、剥離剤層強度や耐熱性を向上させることができ、一方で、剥離剤層の外観を損なわない。なお、このMnが前記範囲外であると、白っぽく曇った外観の剥離剤層が得られることがある。さらに、このMnが前記範囲内であれば、基材とは反対側のイソシアネート(B)が偏在していない剥離剤層部分においてポリオレフィンポリオール(C)に起因する水酸基が過剰にならず、剥離力の低い剥離剤層が得られる。さらに、このMnが前記範囲内であれば、基材側のイソシアネート(B)が偏在する剥離剤層部分においてイソシアネート(B)とポリオレフィンポリオール(C)とが適度に反応することができ、より優れた基材密着性が得られる。
【0038】
本発明において、ポリオレフィンポリオール(C)の種類に特に限定はない。ポリオレフィンポリオール(C)としては、例えば、ポリエチレン系ポリオール、ポリプロピレン系ポリオール、ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールおよび水素添加ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。これらの中でも、非反応性ポリオレフィン(A)との相溶性や剥離力への影響の観点から、水素添加ポリイソプレンポリオールおよびポリイソプレンポリオールが好ましい。
【0039】
また、ポリオレフィンポリオール(C)の水酸基価(mgKOH/g)は、剥離剤層強度および硬化性の観点から20以上が好ましく、一方、剥離力への影響の観点から75以下が好ましい。より好ましい水酸基価(mgKOH/g)は、25〜60である。
【0040】
本発明において、市販のポリオレフィンポリオール(C)を使用することができる。そのような市販品としては、例えば、Poly bdR−45HT(水酸基末端液状ポリブタジエン:Mn=2800、水酸基価=46.6mgKOH/g、出光興産社製)、Poly ip(水酸基末端液状ポリイソプレン:Mn=2500、水酸基価=46.6mgKOH/g、出光興産社製)、エポール(水酸基末端液状水添ポリイソプレン:Mn=2500、水酸基価=50.5mgKOH/g、出光興産社製)、GI−1000(水酸基含有液状水添ポリブタジエン:Mn=1500、水酸基価=60〜75mgKOH/g、日本曹達社製)、GI−2000(水酸基含有液状水添ポリブタジエン:Mn=2100、水酸基価=40〜55mgKOH/g、日本曹達社製)、GI−3000(水酸基含有液状水添ポリブタジエン:Mn=3000、水酸基価=25〜35mgKOH/g、日本曹達社製)などが挙げられる。これらのポリオレフィンポリオール(C)は、いずれも常温で液状である。また、ユニストールP−801(水酸基含有ポリオレフィンの16質量%トルエン溶液、トルエン除去物は固体、水酸基価40mgKOH/g、三井化学社製)を使用することもできる。
【0041】
剥離剤中のポリオレフィンポリオール(C)の含有量は、次式(I):
A=ポリオレフィンポリオール(C)の水酸基価(mgKOH/g)×非反応性ポリオレフィン(A)100質量部に対するポリオレフィンポリオール(C)の質量部数 ・・・ (I)
におけるAの値が、好ましくは30〜250、より好ましくは40〜200、さらに好ましくは50〜150となるように設定される。Aの値が30より小さいと、剥離剤層強度が充分ではなくなる傾向があり、250より大きいと、剥離剤層の剥離力が高くなりすぎる傾向がある。
【0042】
[任意成分]
剥離剤層を形成するための剥離剤は、1種または2種以上の任意成分を含有していてもよい。任意成分としては、たとえば、非反応性ポリオレフィン(A)以外の樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤等の光安定剤や帯電防止剤、カーボンブラック、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等の充填剤、顔料などが挙げられる。
【0043】
[液状炭化水素(D)]
剥離力が低い剥離剤層が求められる場合には、剥離剤の任意成分として、1種または2種以上の液状炭化水素(D)を使用してもよい。ここで、本発明における「液状炭化水素(D)」とは、JIS K7117−1:1990に従って測定した38℃における粘度(以下「38℃粘度」と略称することがある)が5〜1500Pa・sである炭化水素を意味する。このような液状炭化水素(D)を使用することによって、粘着テープ類の粘着力を低下させることなく、剥離剤層の剥離力の速度依存性を低減し得る。
【0044】
液状炭化水素(D)の38℃粘度は、通常5〜1500Pa・sであり、好ましくは5〜1300Pa・sである。この38℃粘度が5Pa・s未満である場合、剥離力の速度依存性が充分に低減しないことがある。剥離力の速度依存性を充分に低減するために、38℃粘度が5Pa・s未満である液状炭化水素(D)の使用量を多くすると、粘着テープ類の粘着力が低下する。一方で、38℃粘度が1500Pa・sを超える場合、離型材および粘着テープの想定使用温度である10〜30℃付近で、液状炭化水素(D)の流動性が低くなるため、剥離力の速度依存性が充分に低減しないことがある。
【0045】
液状炭化水素(D)としては、例えば、不飽和炭化水素の重合体等が挙げられる。ここで、本発明における「不飽和炭化水素の重合体」は、ポリマーだけでなく、オリゴマーも含む意味で用いられる。相溶性の観点から、液状炭化水素(D)は、好ましくはエチレンと炭素数3〜5の不飽和炭化水素との液状共重合体、炭素数3〜5の不飽和炭化水素の液状単独重合体および炭素数3〜5の不飽和炭化水素の液状共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一つである。炭素数3〜5の不飽和炭化水素としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、2−ブテン、ブタジエン、1−ペンテン、2−ペンテン、イソペンテン、イソプレン等が挙げられる。液状炭化水素(D)は、より好ましくは液状エチレン−オレフィン共重合体、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状水素化ポリブタジエン、液状水素化ポリイソプレンおよび液状ポリイソブテンからなる群から選ばれる少なくとも一つである。液状炭化水素(D)は、公知の方法、例えばラジカル重合またはカチオン重合等によって製造できる。
【0046】
液状炭化水素(D)として、市販品を用いてもよい。市販の液状炭化水素(D)としては、例えば、ルーカント HC−600(38℃粘度=8.5Pa・s)、HC−2000(38℃粘度=34Pa・s)(以上、三井化学社製)、クラプレンLIR−30(38℃粘度=74Pa・s)、LIR−50(38℃粘度=480Pa・s)、LIR−290(38℃粘度=1000Pa・s)、LBR−300(38℃粘度=280Pa・s)(以上、クラレ社製)、日石ポリブテンHV−100、HV−300、HV−1900(以上、新日本石油社製)、ニッサンポリブテン10N、30N、200N(以上、日油社製)等が挙げられる。
【0047】
液状炭化水素(D)を使用する場合、剥離剤中のその含有量は、非反応性ポリオレフィン(A)および液状炭化水素(D)の合計100質量部に対して、好ましくは3〜30質量部、より好ましくは4〜20質量部、さらに好ましくは5〜15質量部である。この含有量が3質量部未満である場合、剥離速度依存性が充分に低減しないことがあり、逆に30質量部を超える場合、剥離剤層強度が低くなったり、粘着テープの粘着剤層に液状炭化水素が移行して、粘着テープの粘着力が低下することがある。
【0048】
なお、液状炭化水素(D)を使用すると、これを使用しない場合と比べて、得られる離型材がブロッキングしやすくなる。しかし、本発明の離型材は、後述するように剥離剤層が形成されていない基材の他方の面の表面粗さRaを特定値以上に調整することによって、ブロッキングを有効に抑制している。そのため、本発明の離型材は、液状炭化水素(D)を含有する剥離剤から形成した剥離剤層を有する場合であっても、ブロッキングを有効に抑制することができる。
【0049】
[ウレタン化触媒]
イソシアネート(B)とポリオレフィンポリオール(C)との反応を促進するために、剥離剤の任意成分として、1種または2種以上のウレタン化触媒を用いてもよい。ウレタン化触媒としては、通常のウレタン化反応に用いられる触媒を使用でき、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレートなどの錫化合物;亜鉛、コバルト、銅、ビスマスなどの金属のカルボン酸塩;1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンなどのアミン化合物;チタン、ジルコニウムなどの金属のキレート化合物;などが例示される。また、有機酸ビスマス塩も、ウレタン化触媒として使用できる。有機酸ビスマス塩としては、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、d−ピマル酸、イソ−d−ピマル酸およびポドカルプ酸、並びにこれらの2種以上を主成分とする樹脂酸などの脂環族系有機酸のビスマス塩;および安息香酸、ケイ皮酸、p−オキシケイ皮酸などの芳香族系有機酸のビスマス塩;などが挙げられる。これらの中でも、剥離剤成分への相溶性および触媒活性の観点から、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ビスマスのカルボン酸塩および樹脂酸ビスマス塩が好ましい。
【0050】
ウレタン化触媒を使用する場合、その含有量は、非反応性ポリオレフィン(A)100質量部に対して、好ましくは0.05〜2.0質量部、より好ましくは0.1〜1.5質量部、さらに好ましくは0.1〜1.0質量部である。この含有量が0.05質量部未満であると、反応促進効果が充分でない場合があり、2.0質量部を超えると、形成される剥離剤層の剥離力が高くなったり、溶液状の剥離剤ポットライフが短くなるなどの不具合が生ずる場合がある。
【0051】
なお、ここでいうウレタン化触媒の含有量は、ウレタン化触媒のみの量を指し、例えば市販のウレタン化触媒溶液を使用する場合、溶媒量を除いたウレタン化触媒のみの量を意味する。
【0052】
[剥離剤層の形成]
剥離剤層は、例えば、上述の剥離剤成分を溶媒に溶解させ、その溶液を基材に塗布し、乾燥させることによって形成することができる。剥離剤溶液の固形分は、本発明において特に限定されないが、通常、0.1〜5質量%の範囲内である。
【0053】
剥離剤成分を均一に溶解し得るものである限り、溶媒に特に限定はない。但し、本発明の剥離剤は非反応性ポリオレフィン(A)を必須成分として含有するので、溶媒は、好ましくは、1種のみの炭化水素系溶媒、2種以上の炭化水素系溶媒の混合溶媒、または炭化水素系溶媒とその他の溶媒との混合溶媒である。混合溶媒を使用する場合、炭化水素系溶媒の含有量は、混合溶媒中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。炭化水素系溶媒としては、例えば、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素が挙げられる。その他の溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類等が挙げられる。
【0054】
剥離剤溶液の塗布方法としては特に限定は無く、あらゆる公知の方法、例えばキスロールコーター、ビードコーター、ロッドコーター、マイヤーバーコーター、ダイコーター、グラビアコーター等を用いる方法を使用できる。乾燥方法についても特に限定は無く、あらゆる公知の方法を使用できる。一般的な乾燥方法として、熱風乾燥が挙げられる。熱風乾燥の温度は、基材の耐熱性によっても変わり得るが、通常80〜150℃程度である。
【0055】
乾燥後の剥離剤層の厚さは、好ましくは30〜500nm、より好ましくは45〜400nm、さらに好ましくは60〜300nmである。この厚さが30nm未満である場合、剥離剤層の剥離力が高くなりすぎる場合があり、逆に500nmを超える場合、離型材をロール状に巻き取った時に接触する基材と剥離剤層とがブロッキングしやすくなるという問題や、剥離剤層の剥離力が高くなるという問題が生じる場合がある。
【0056】
離型材において、剥離剤層が最表面に存在する限り、剥離剤層と基材との間に別の層が存在していてもよい。但し、剥離剤層は、基材の上に直接形成されていることが好ましい。
【0057】
2.基材
本発明の離型材は、剥離剤層が形成されていない基材の他方の面の表面粗さRaが、0.1μm以上であることを特徴の一つとする。基材の他方の面の表面粗さRaが0.1μm以上であることによって、離型材をロール状に巻き取る場合またはシート状の離型材を積層する場合に、接触しあう基材と剥離剤層とがブロッキングすることを有効に抑制することができる。この表面粗さRaは、好ましくは0.15μm以上、より好ましくは0.2μm以上である。一方、この表面粗さRaが大きすぎると、離型材をロール状に巻き取ったときに、剥離剤層表面にその凹凸が転写されるおそれがある。そこで、この表面粗さRaは、好ましくは1.0μm以下、より好ましくは0.6μm以下である。
【0058】
本発明における「表面粗さRa」とは、JIS B0601:2001に規定する算術平均粗さを意味し、その測定法は、前記JISの規定に従う。
【0059】
基材としては、プラスチックフィルムが好ましい。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム;ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;が挙げられる。また、クラフト紙、グラシン紙、上質紙等の紙を基材として用いてもよい。紙基材としては、剥離剤の基材への過度の含浸を防ぐために、ポリエチレン等のプラスチックがラミネートされたもの、または目止め処理されたものが好ましい。基材には、必要に応じて、予めコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等の処理をしておいても良い。
【0060】
基材の厚さは、特に制限されず、使用目的に応じて適宜設定することができる。基材としてプラスチックフィルムを使用する場合、その厚さは、通常12〜250μm程度、好ましくは16〜200μm、より好ましくは25〜125μmである。
【0061】
また、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤等の光安定剤や帯電防止剤、カーボンブラック、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等の充填剤、顔料等を、基材に配合してもよい。
【0062】
所望範囲の表面粗さRaを有する基材は、市販の基材(例えばプラスチックフィルム)に公知の粗面化処理(例えばサンドマット処理)を施すことによって製造することができる。
【0063】
3.離型材付き粘着テープ
本発明の離型材を、例えば、離型材付き粘着テープを製造するために用いることができる。この粘着テープでは、粘着テープの粘着剤層と本発明の離型材の剥離剤層とが接触する。
【0064】
粘着剤層を形成するために用いられる粘着剤に、特に限定は無い。粘着剤としては、例えばゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤等が挙げられる。これらの中で、アクリル系粘着剤およびポリエステル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤およびポリエステル系粘着剤から形成した粘着剤層を有する離型材付き粘着テープは、安定した剥離性を示す。
【0065】
アクリル系粘着剤は、溶液重合法、エマルション重合法、UV重合法などの慣用の重合法により得られるアクリル系ポリマーを主剤とし、これに必要に応じて、架橋剤、粘着付与剤、軟化剤、老化防止剤、充填剤などの各種添加剤を加えることによって調製できる。
【0066】
アクリル系ポリマーとしては、例えばブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートを主成分とし、これに必要に応じて共重合可能な改質用単量体として2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ基含有単量体、(メタ)アクリル酸などのカルボキシ基含有単量体、スチレンなどのスチレン系単量体、酢酸ビニルなどのビニルエステル類等の他の単量体を加えた単量体混合物の共重合体などが挙げられる。
【0067】
ポリエステル系粘着剤としては、脂肪族系カーボネートジオール(例えば、ブタンジオール等のジオール成分とエチレンカーボネートなどのカーボネート化合物との反応により得られるカーボネートジオールなど)を必須のポリオール成分としたポリエステル系重合体を主剤とする粘着剤が挙げられる。
【0068】
粘着剤層は、例えば、粘着剤溶液を基材上に塗布し、乾燥させることによって形成することができる。また、離型材の基材とは別の基材上に粘着剤溶液を塗布し、乾燥させることによって粘着剤層を形成し、これを離型材の剥離剤層に貼り合わせてもよい。さらに、市販の粘着テープを離型材の剥離剤層に貼り合わせることによって、離型材の粘着剤層を形成してもよい。粘着剤層の厚さは、粘着性などを考慮して適宜選択することができ、好ましくは3〜100μm、より好ましくは5〜90μm、さらに好ましくは10〜80μmである。
【0069】
4.物性、特性等
本明細書中の物性および特性等は、以下の方法での測定値である。
(1)密度
ASTM D1505に準拠して測定した値である。
(2)メルトフローレート(230℃)
ASTM D1238に準拠して測定した値である。
(3)数平均分子量
ASTM D2503に準拠して測定した値である。
(4)水酸基価
JIS K1557:1970に準拠して測定した値である。
【実施例】
【0070】
以下に、参考例、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。なお、以下において「部」および「%」は、別の記載が無い限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を示す。
【0071】
1.剥離剤成分
参考例、実施例および比較例で用いた剥離剤成分を以下に記載する。
【0072】
(1)非反応性ポリオレフィン(A)
【0073】
【表1】

【0074】
表1に記載の「タフマー」は三井化学社製、「エンゲージ」はダウ・ケミカル社製である。また、表1に記載の「引張弾性率」および「引張破壊応力」は、いずれも23℃における値である。
【0075】
(2)イソシアネート(B)
コロネートL(トリレンジイソシアネ−トのトリメチロールプロパン付加物の75%酢酸エチル溶液、1分子中のイソシアネート基数:3個、日本ポリウレタン工業社製)
タケネートD110N(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物の75%酢酸エチル溶液、1分子中のイソシアネート基数:3個、三井化学社製)
【0076】
(3)ポリオレフィンポリオール(C)
エポール(水酸基末端液状水添ポリイソプレン、Mn=2500、水酸基価50.5mgKOH/g、出光興産社製)
ユニストールP−801(水酸基含有ポリオレフィンの16%トルエン溶液、トルエン除去物は固体、Mn]5000、水酸基価40mgKOH/g、三井化学社製)
【0077】
(4)液状炭化水素(D)
ルーカントHC−2000(エチレン−α−オレフィンコオリゴマー、38℃粘度=34Pa・s、三井化学社製)
【0078】
(5)ウレタン化触媒
ジラウリン酸ジブチルすず(IV)(和光純薬工業社製、ジブチル錫ジラウレート)
プキャットB7(樹脂酸ビスマスの58%ミネラルスピリット溶液、日本化学産業社製)
【0079】
2.参考例1〜7および比較例1〜4
非反応性ポリオレフィン(A)の違いによる剥離剤層特性の影響を調べるために、下記参考例1〜7および比較例1〜4にて離型材を作製し、作製した離型材を下記(1)〜(4)の方法によって評価した。評価結果を表2に示す。
【0080】
参考例1
タフマーP−0280/エポール/コロネートL/ジラウリン酸ジブチルすず(IV)=100/2/3/1(各固形分の質量比)をトルエンに溶かし、固形分1.5%の剥離剤溶液を調製した。この剥離剤溶液をマイヤーバー#6で厚さ38μmのポリエステルフィルムに塗布した後、熱風乾燥機で130℃×1分間加熱することによって離型材を作製した。得られた離型材の剥離剤層の厚さは約150nmであった。
【0081】
参考例2
剥離剤の組成をタフマーP−0280/エポール/コロネートL/ジラウリン酸ジブチルすず(IV)=100/2/10/0.2(各固形分の質量比)としたこと以外は参考例1と同様の方法で、離型材を作製した。
【0082】
参考例3
剥離剤の組成をタフマーP−0280/タフマーP−0080K/エポール/コロネートL/ジラウリン酸ジブチルすず(IV)=60/40/1/5/0.2(各固形分の質量比)としたこと以外は参考例1と同様の方法で、離型材を作製した。
【0083】
参考例4
剥離剤の組成をタフマーP−0680/エポール/タケネートD110N/ジラウリン酸ジブチルすず(IV)=100/1/5/0.2(各固形分の質量比)としたこと以外は参考例1と同様の方法で、離型材を作製した。
【0084】
参考例5
剥離剤の組成をタフマーP−0280/タフマーA−35070S/エポール/コロネートL/プキャットB7=80/20/2/3/0.6(各固形分の質量比)としたこと以外は参考例1と同様の方法で、離型材を作製した。
【0085】
参考例6
剥離剤の組成をタフマーP−0280/タフマーA−1070S/エポール/コロネートL/ジラウリン酸ジブチルすず(IV)=90/10/1/5/0.2(各固形分の質量比)としたこと以外は参考例1と同様の方法で、離型材を作製した。
【0086】
参考例7
剥離剤の組成をタフマーP−0280/タフマーA−35070S/ユニストールP-801/コロネートL/ジラウリン酸ジブチルすず(IV)=60/40/2/3/0.2(各固形分の質量比)としたこと以外は参考例1と同様の方法で、離型材を作製した。
【0087】
比較例1
剥離剤の組成をエンゲージ8180/エポール/コロネートL/ジラウリン酸ジブチルすず(IV)=100/2/3/0.2(各固形分の質量比)としたこと以外は参考例1と同様の方法で、離型材を作製した。
【0088】
比較例2
剥離剤の組成をタフマーP−0280/タフマーA−1070S/エポール/コロネートL/ジラウリン酸ジブチルすず(IV)=80/20/1/5/0.2(各固形分の質量比)としたこと以外は参考例1と同様の方法で、離型材を作製した。
【0089】
比較例3
剥離剤の組成をタフマーA−1070S/エポール/コロネートL/ジラウリン酸ジブチルすず(IV)=100/1/5/0.2(各固形分の質量比)としたこと以外は参考例1と同様の方法で、離型材を作製した。
【0090】
比較例4
剥離剤の組成をタフマーA−4085S/エポール/コロネートL/ジラウリン酸ジブチルすず(IV)=100/2/3/0.2(各固形分の質量比)としたこと以外は参考例1と同様の方法で、離型材を作製した。
【0091】
(1)剥離剤層の基材への密着性
剥離剤層表面を指で3往復こすった時の状態を、下記基準で判定した。
○:変化がないが、または表面が白っぽく曇った状態になるが、剥離剤層の脱落はない。
×:剥離剤層がポロポロと脱落して消しゴムをこすった時に出るようなカスが発生し、基材が露出する。
【0092】
(2)低速剥離力(N/50mm)
50mm幅のアクリル系粘着テープNo.31B(日東電工社製)の粘着剤層を離型材の剥離剤層にハンドローラーを用いて貼り合わせて、離型材付き粘着テープを作製した。この離型材付き粘着テープを23℃で24時間保存した後、引張試験機にて離型材を180°方向に0.3m/minの速さで引っ張り、23℃雰囲気で測定した剥離力を低速剥離力(N/50mm)とした。本発明において低速剥離力(N/50mm)は、好ましくは0.10〜0.30N/50mm、より好ましくは、0.10〜0.25N/50mmである。
【0093】
(3)高速剥離力(N/50mm)
離型材の引張速度を3m/minに変更したこと以外は低速剥離力(N/50mm)と同じ条件で剥離力を測定し、この剥離力を高速剥離力(N/50mm)とした。本発明において高速剥離力(N/50mm)は、好ましくは0.5〜2.0N/50mm、より好ましくは0.5〜1.5N/50mmである。
【0094】
(4)剥離速度依存性
表2に示す剥離速度依存性の値は、高速剥離力(N/50mm)を低速剥離力(N/50mm)で割った値である。この剥離速度依存性は、好ましくは7以下、より好ましくは6以下、最も好ましくは5以下である。
【0095】
【表2】

【0096】
参考例1〜7では、基材への密着性に優れるとともに、剥離速度依存性が小さい剥離剤層を有する離型材が得られた。比較例1および3では、非反応性ポリオレフィン(A)として、23℃における引張破壊応力が8MPaを超える非反応性ポリオレフィン(A−2)のみを使用したため、高速剥離力が大きくなり、剥離速度依存性も大きくなった。また比較例2では、23℃における引張破壊応力が8MPaを超える非反応性ポリオレフィン(A−2)を非反応性ポリオレフィン(A)中で20%も使用したため、剥離速度依存性が大きくなった。さらに比較例4では、非反応性ポリオレフィン(A)として、23℃における引張弾性率が10MPaを超え、且つ23℃における引張破壊応力も8MPaを超える非反応性ポリオレフィン(A−2)のみを使用したため、高速剥離力だけでなく低速剥離力(N/50mm)も大きくなり、また剥離速度依存性も大きくなった。
【0097】
3.実施例1〜4並びに比較例5および6
剥離剤層が形成されていない基材の他方の面の表面粗さによるブロッキングの影響を調べるために、下記実施例1〜4並びに比較例5および6にて離型材を作製し、作製した離型材のブロッキングを下記(1)の方法によって評価した。また、実施例1〜4並びに比較例5および6の離型材の高速剥離力(N/25mm)も下記(2)の方法によって評価した。評価結果を表3に示す。
【0098】
実施例1
ルミラーS10(東レ社製、厚さ:50μm、表面粗さRa:0.04μm)の片面をサンドマット処理によって粗面化し、その表面粗さを0.28μmに調整した。また、タフマーP−0280/タフマーA−35070S/エポール/コロネートL/ジラウリン酸ジブチルすず(IV)=80/20/1/3/0.2(各固形分の質量比)をトルエンに溶かし、固形分1.5%の剥離剤溶液を調製した。この剥離剤溶液を、前記ルミラーS10の粗面化した片面にマイヤーバー#6で塗布した後、熱風乾燥機で130℃×1分間加熱することによって離型材を作製した。得られた離型材の剥離剤層の厚さは約150nmであった。
【0099】
実施例2
片面の表面粗さRaをサンドマット処理で0.58μmに調整したルミラーS10(PETフィルム)を基材として使用したこと以外は実施例1と同様の方法で、離型材を作製した。
【0100】
実施例3
剥離剤の組成をタフマーP−0280/タフマーA−35070S/エポール/コロネートL/ルーカントHC−2000/ジラウリン酸ジブチルすず(IV)=75/20/1/3/5/0.2(各固形分の質量比)としたこと以外は実施例1と同様の方法で、離型材を作製した。なお、実施例1と同様に、片面の表面粗さRaをサンドマット処理で0.28μmに調整したルミラーS10(PETフィルム)を基材として使用した。
【0101】
実施例4
片面の表面粗さRaをサンドマット処理で0.58μmに調整したルミラーS10(PETフィルム)を基材として使用したこと以外は実施例3と同様の方法で、離型材を作製した。
【0102】
比較例5
サンドマット処理をしていないルミラーS10(PETフィルム、表面粗さRa:0.04μm)を基材として使用し、且つ剥離剤の組成をタフマーP−0280/タフマーA−35070S/エポール/コロネートL/ジラウリン酸ジブチルすず(IV)=80/20/1/3/0.2(各固形分の質量比)としたこと以外は実施例1と同様の方法で、離型材を作製した。
【0103】
比較例6
剥離剤の組成をタフマーP−0280/タフマーA−35070S/エポール/コロネートL/ルーカントHC−2000/ジラウリン酸ジブチルすず(IV)=75/20/1/3/5/0.2(各固形分の質量比)としたこと以外は比較例5と同様の方法で、離型材を作製した。
【0104】
(1)ブロッキング
離型材を70mm×70mmの大きさに切り出し、離型材の剥離剤層表面と他の離型材の基材表面とが接するように、複数の離型材を重ね合わせた後、それらに6kgの荷重を加えた状態で50℃で1日保存した。その後、重ね合わせた離型材を手で剥離することによって、離型材の基材と剥離剤層とのブロッキングを、下記基準で判定した。
○:剥離抵抗がなく、ブロッキングしていない。
×:剥離抵抗があり、ブロッキングしている。
【0105】
(2)高速剥離力(N/25mm)
25mm幅のアクリル系粘着テープNo.31B(日東電工社製)を使用したこと以外は、参考例1等における高速剥離力(N/50mm)の測定方法と同様にして、高速剥離力(N/25mm)を測定した。
【0106】
【表3】

【0107】
実施例1〜4の離型材(基材の表面粗さRa:0.28μmまたは0.58μm)は、比較例5および6の離型材(基材の表面粗さRa:0.04μm)に比べて、ブロッキングが有効に抑制されていた。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の離型材は、剥離速度依存性が小さい剥離剤層を有し、且つ基材と剥離剤層とが接触したときのブロッキングを有効に抑制することができる。このような離型材は、離型材付き粘着テープの製造などの様々な用途に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材および剥離剤層を有する離型材であり、
剥離剤層が、38℃において固体である非反応性ポリオレフィン(A)、イソシアネート(B)およびポリオレフィンポリオール(C)を含有する剥離剤から、基材の片面に形成されたものであり、
非反応性ポリオレフィン(A)の含有量が、剥離剤中、80質量%以上であり、
非反応性ポリオレフィン(A)が、23℃における引張弾性率が10MPa以下であり、且つ23℃における引張破壊応力が8MPa以下である非反応性ポリオレフィン(A−1)を含有し、
非反応性ポリオレフィン(A−1)の含有量が、非反応性ポリオレフィン(A)中、90質量%以上であり、
剥離剤層が形成されていない基材の他方の面の表面粗さRaが、0.1μm以上である離型材。
【請求項2】
イソシアネート(B)が、1分子中にイソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネートである請求項1に記載の離型材。
【請求項3】
ポリイソシアネートが、芳香族ポリイソシアネートおよび脂環式ポリイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項2に記載の離型材。
【請求項4】
ポリイソシアネートが、芳香族ジイソシアネートの多価アルコール付加体および脂環式ジイソシアネートの多価アルコール付加体からなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項3に記載の離型材。
【請求項5】
剥離剤中のイソシアネート(B)の含有量が、非反応性ポリオレフィン(A)100質量部に対して、0.5〜20質量部である請求項1〜4のいずれか一項に記載の離型材。
【請求項6】
ポリオレフィンポリオール(C)の数平均分子量が、1500〜50000である請求項1〜5のいずれか一項に記載の離型材。
【請求項7】
剥離剤が、さらに、38℃における粘度が5〜1500Pa・sである液状炭化水素(D)を含有する請求項1に記載の離型材。
【請求項8】
剥離剤中の液状炭化水素(D)の含有量が、非反応性ポリオレフィン(A)および液状炭化水素(D)の合計100質量部に対して、3〜30質量部である請求項7に記載の離型材。

【公開番号】特開2012−161963(P2012−161963A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23221(P2011−23221)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】