説明

離型用ポリエステルフィルム

【課題】各種用途の精密化に伴う、微細な欠点のない離型用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】深さ0.5μm以上の窪み欠点数が5個/m以下であり、少なくとも片面の表面の中心線平均粗さSRaが15〜35nm、十点平均粗さSRzが1000nm以下とすることにより達成出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種離型用ポリエステルフィルムに関するものであり、具体的にはセラミックコンデンサ生産時に使用されるグリーンシート用、液晶偏光板用、フォトレジスト用、またポリエステルフィルム上にエポキシ樹脂等をコ−ティングして製造される多層基板用などに好適な各種離型用フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、離型用フィルムは、ポリエステルフィルムを基材として、離型性のある樹脂層、例えばシリコ−ン樹脂やエポキシ樹脂などを塗布し形成される。特に、グリーンシート製造用、液晶偏光板用離型用、液晶保護フィルム用離型用、フォトレジスト用、多層基板用などの各種離型用途として使用されている。ポリエステルフィルム中には、加工適性、例えば滑り性、巻き特性などを良くするために粒子を適量配合しフィルム表面に微細な突起を形成することが一般的である。さらに、加工に耐え得るフィルム物性を確保するため、二軸延伸によって製膜される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−299344号公報
【特許文献2】特開2004−291240号公報
【特許文献3】特開2004−148538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、最近の各種用途の精密化などに伴い、使用される離型フィルムについても微細な欠点の無い、均一な品質が要求されるようになって来た。離型用フィルムから成形される成形体の品質は、基材として使用されるフィルムの精度や品質、特に表面欠点の有無にかかっている。フィルムの欠点を減少するため、フィルム厚みムラ、フィルム表面の粗大突起を低減するなどいろいろな改善が図られてきたが、小型化、高性能化などの市場の要求には十分応えられなかった。
本発明は、かかる従来技術の欠点を解消することにある。すなわち、適正な加工特性を備えな、表面の平滑性に優れ、特にフィルム表面の微細な欠点が少ない離型用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記実状に鑑み鋭意検討した結果、従来技術のとおり、フィルム表面の粗大突起の低減や、厚みムラの低減などに加え、さらに、窪み欠点を減少することが精密化に要求される離型用フィルムとして好適であることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、深さ0.5μm以上の窪み欠点数が5個/m以下であり、少なくとも片面の表面の中心線平均粗さSRaが15〜35nm、十点平均粗さSRzが1000nm以下である離型用ポリエステルフィルムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の離型用ポリエステルフィルムは、適正な加工特性を備えな、表面の平滑性に優れ、特にフィルム表面の微細な欠点が少ないという優れた特性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明におけるポリエステルフィルムとは、分子配向により高強度フィルムとなるポリエステルであれば特に限定しないが、主としてポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートからなることが好ましい。特に好ましくは価格的にも優位なポリエチレンテレフタレートである。エチレンテレフタレート以外のポリエステル共重合体成分としては、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、p−キシリレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン成分、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能ジカルボン酸成分、p−オキシエトキシ安息香酸などが目的とするフィルム物性を阻害しない範囲で使用できる。
【0009】
上記ポリエステルは公知の方法で製造することができ、固有粘度が0.4〜0.9、好ましくは0.5〜0.7、さらに好ましくは0.55〜0.65である。
【0010】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、単層でも2層以上の積層構造であっても良いが、特に3層構造の場合は、積層部の添加粒子量を制御することで容易にフィルム表面の突起形状を制御することができ、さらに内層部にフィルム表面の特性に悪影響を与えない範囲で、製膜工程で発生するエッジ部分の回収原料、あるいは他の製膜工程のリサイクル原料などを適時混合して使用することが容易となり、コスト的も優位である。
【0011】
製膜工程で発生する回収原料は、圧縮処理後、裁断処理して粒状化する方法、溶融処理し、フィルターで粗大粒子・異物を除去したのち冷却・裁断しペレット化する方法が採用でき、原料ペレットと適時混合することによりリサイクル出来る。内層部における回収原料の混合率は任意に設定出来るが、フィルム表面の特性に影響しない範囲でコントロールすることが好ましい。
【0012】
3層の積層構造の場合、フィルムを構成する組成をA,B,Cと表せば、例えばA/B/C、あるいはA/B/Aの構成を取ることが出来るが、特に両面の表面特性を変える必要の無い場合は、表裏を同じ設計としたA/B/Aの構造の場合、製造が容易であり好ましい。
【0013】
本発明のフィルムの総厚みは、単層の場合も、積層の場合も、好ましくは15〜50μm、さらに好ましくは25〜40μmである。また。積層フィルムにおいては、積層厚さを0.1〜3μm、好ましくは0.2〜2μm、さらに好ましくは0.3〜1.8μmである。
【0014】
積層厚さが0.1μm未満では、積層部に含有粒子が脱落する場合があり、一方、積層厚さが2μmを越えると、積層部含有粒子基づく形成突起の均一性が損なわれることがあり、好ましくない。
【0015】
本発明のポリエステルフィルムは、深さ0.5μm以上の窪み欠点数が5個/m以下であり、少なくとも片面の表面の中心線平均粗さSRaが15〜35nm、十点平均粗さSRzが1000nm以下である離型用ポリエステルフィルムである。
【0016】
本発明において窪み欠点とは、フィルム表面の微細な凹部を意味し、深さとは、フィルム表面から厚み方向への最大深さとし、窪み欠点の周りに盛り上がりを生じている場合は、盛り上がり部の頂部から窪みの底部までの最大深さを意味する。
【0017】
窪み欠点数を限りなく少なくすることは望ましいことであるが、実質的に障害となるのは、深さ0.5μm以上の窪みであり、0.5μm以上の窪み欠点数を5個/m以下とすることにより達成される。好ましくは3個/m以下であり、さらに好ましくは1個/m以下である。さらに、窪みの最大径が3mm以上の欠点である。最大径が3mm未満の窪みは実質的に障害となることは少なく、本発明では深さ0.5μm以上、最大径3mm以上の窪み欠点の抑制を課題とした。
【0018】
本発明のフィルムの少なくとも片面の表面の中心線平均粗さSRaが15〜35nm、十点平均粗さSRzが1000nm以下である。好ましくはSRaが18〜32nm、SRzが900nm以下、さらに好ましくはSRaが20〜30nm、SRzが850nm以下である。SRaが15nm以下であると走行性に欠け取り扱い性に問題を生じることがあり、逆に、SRaが35nmを越えると表面の平滑性が損なわれ好ましくない。SRzが1000nmを越えると成形シートに微少な厚みムラを生じ、特にセラミックコンデンサ生産時のグリーンシートの厚さを薄くできない場合があり、好ましくない。
【0019】
上記、フィルムの表面粗さ特性は、フィルム中に微細な不活性粒子を含有させ、不活性粒子の粒径、含有量を制御することで達成できる。含まれる粒子は1種類であっても2種類以上であってもよく、微細な不活性粒子Iと粒径が不活性粒子Iより大きい不活性粒子IIを併用することも出来る。この場合、不活性粒子Iは粒径が0.1〜0.5μm、好ましくは0.2〜0.4μm、含有量は離型用ポリエステルフィルム全体に対して、0.05〜0.3重量%、好ましくは0.08〜0.2重量%である。さらに、不活性粒子IIは粒径が0.5〜2μm、好ましくは0.8〜1.5μmである。これら、不活性粒子は1種類でも2種類以上でも良く、粒径と含有量を制御することにより目標とする表面粗さを達成することが出来る。複合フィルムの場合は積層部に含まれる粒子の粒径、粒子量を制御することで可能で、好ましく達成出来る。
【0020】
不活性粒子は、球状シリカ、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機粒子、またその他有機系高分子粒子としては、架橋ポリスチレン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン−アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子、ポリイミド粒子、メラミン樹脂粒子等が好ましい。これらの1種もしくは2種以上を選択して用いる。いずれについても、粒子形状・粒子分布は均一なものが好ましく、体積形状係数は好ましくはf=0.3〜π/6であり、より好ましくはf=0.4〜π/6である。体積形状係数fは、次式で表される。
f=V/Dm
ここでVは粒子体積(μm),Dmは粒子の投影面における最大径(μm)である。
【0021】
なお、体積形状係数fは粒子が球の時、最大のπ/6(=0.52)をとる。必要に応じて濾過などを行うことが好ましい。中でも、乳化重合法で等で合成された架橋有機粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、特に架橋ポリスチレン粒子は体積形状係数が真球に近く、粒径分布が均一であり、均一な突起形成を図ることが可能で好ましい。さらに、これらの粒子については界面活性剤などによる表処理を施すことにより、ポリエステルとの親和性の改善を図ることが可能であり、脱落の少ない突起を形成することが可能で好ましい。
【0022】
また必要に応じて、地肌補強の観点から一次粒径が0.005〜0.10μm、好ましくは0.01〜0.05μmのα型アルミナ、γ型アルミナ、δ型アルミナ、θ型アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタン粒子などから選ばれる不活性粒子を表面突起形成に影響を及ぼさない範囲で含有してもよい。
【0023】
本発明におけるポリエステルフィルムは、フィルム表面に存在する高さ0.54μm以上の粗大突起を100個/100cm以下、好ましくは60個/100cm以下、更に好ましくは40個/100cm以下である。0.810μm以上の粗大突起は、5個/100cm以下であることが好ましい。さらに好ましくは2個/100cm以下である。粗大突起数が上記の値を超えると、離型剤を塗布時、塗布ムラ、ピンホール状の塗布抜け欠点を生じる場合があり好ましくない。
【0024】
本発明におけるポリエステルフィルムは、長手方向および横方向の破断強度の和が500〜620MPaである。好ましくは520〜580MPaで、さらに好ましくは、長手方向の破断強度よりも横方向の破断強度より小さく、その差は、20〜100MPaである。
【0025】
さらに、破断伸度は80〜200%、好ましくは90〜180%であり、さらに、長手方向の破断伸度が横方向の破断伸度よりも大きく、その差が80〜100%の場合がさらに好ましい。
【0026】
また、本発明におけるポリエステルフィルムにおいては、熱収縮率を適性にコントロールすることが必要で、製膜条件における弛緩処理等の公知の方法により適宜調整することにより達成出来る。150℃における熱収縮率は長手方向で1〜3%、好ましくは1.5〜2.5%、幅方向は0〜2%、好ましくは0.5〜1.5%である。さらに100℃における熱収縮率は長手方向で0〜1.5%、好ましくは0〜1%で、幅方向は−1〜1%、好ましく−0.5〜0.5%である。
【0027】
次に本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法について説明する。ポリエステルに不活性粒子を含有せしめる方法としては、例えばジオール成分であるエチレングリコールに不活性粒子を所定割合にてスラリーの形で分散せしめ、このエチレングリコールスラリーをポリエステル重合完結前の任意段階で添加する。ここで、粒子を添加する際には、例えば、粒子を合成時に得られる水ゾルやアルコールゾルを一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性が良好であり、粗大突起の発生を抑制でき好ましい。また粒子の水スラリーを直接、所定のポリエステルペレットと混合し、ベント方式の2軸混練押出機に供給しポリエステルに練り込む方法も本発明の効果に有効である。
【0028】
このようにして準備した、粒子含有マスターペレットと粒子などを実質的に含有しないペレットを所定の割合で混合し、乾燥したのち、公知の溶融積層用押出機に供給し、ポリマーをフィルターにより濾過する。
【0029】
また、ごく小さな異物もフィルム欠陥となるため、フィルターには例えば5μm以上の異物を95%以上捕集する高精度のものを用いることが有効である。続いてスリット状のスリットダイからシート状に押し出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。すなわち、1から3台の押出機、1から3層のマニホールドまたは合流ブロック(例えば矩形合流部を有する合流ブロック)を用いて必要に応じて積層し、口金からシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを作る。この場合、背圧の安定化および厚み変動の抑制の観点からポリマー流路にスタティックミキサー、ギヤポンプを設置する方法は有効である。
【0030】
延伸方法は同時二軸延伸であっても逐次二軸延伸であってもよい。特に、同時二軸延伸においてはロールによる延伸を伴わないため、フィルム表面の局所的な加熱ムラを抑制し、均一な品質が得られると共に、延伸時にロール延伸に伴うフィルムとロールとの接触場所での速度差、ロールの微少傷の転写などによる特に窪み傷の発生を抑制でき好ましい。同時二軸延伸においては未延伸フィルムを、まず長手および幅方向に延伸温度は80〜130℃、好ましくは85〜110℃で同時に延伸する。延伸温度が80℃よりも低くなるとフィルムが破断しやすく、延伸温度が130℃よりも高くなると十分な強度が得られないため好ましくない。また、延伸ムラを防止する観点から、長手方向・横方向の合計延伸倍率は4〜20倍、好ましくは6〜15倍である。合計延伸倍率が4倍よりも小さいと本発明の対象とする必要十分な強度が得られにくい。一方、倍率が20倍よりも大きくなると、フィルム破断が起こりやすく、安定したフィルムの製造が難しい。必要な強度を得るためには、温度140〜200℃、好ましは160〜190℃で長手方向及び/又は幅方向に1.02〜1.5、好ましくは1.05〜1.2倍で再度延伸を行うことが好ましく、合計延伸倍率が、長手方向で3〜4.5倍、好ましくは3.2〜4倍、幅方向に3.2〜5倍、好ましくは3.8〜4.5倍である。
【0031】
その後、205〜240℃好ましくは210〜230℃で0.5〜20秒、好ましくは1〜15秒熱固定を行う。熱固定温度が205℃よりも低いとフィルムの結晶化が進まないため目標とする熱収縮率などが安定しにくいため好ましくない。また、フィルム物性を安定させるため、フィルム上下の温度差が20℃以下、好ましくは10℃以下、更に好ましくは5℃以下である。フィルム上下での温度差が20℃よりも大きいと、熱処理時に微小平面性の悪化を引き起こしやすいため好ましくない。その後、長手及び/又は幅方向に0.5〜7.0%の弛緩処理を施す。
【0032】
同時二軸延伸では後述する逐次二軸延伸とは異なり、高温空気によってフィルムが加熱される。そのため、フィルム表面のみ局所的に加熱されて粘着が発生することはなく、延伸方式として逐次延伸より好ましい。一方で、同時二軸延伸は最初の延伸温度である90℃前後から熱固定温度である220℃前後までのゾーンが全て長手方向につながっているため、随伴気流など高温空気の自由な流れによりフィルム上下や幅方向に温度差が発生しやすい延伸方法でもある。温度差を低減する方法としては特に限定されないが、温度の異なるゾーンの間に高温空気の自由な流れを抑制するシャッターなどの設備を設けることが有効である。フィルムとシャッターの隙間は1〜250mm、好ましくは2〜100mm、更には3〜50mmであることが好ましい。隙間が1mmよりも小さいとフィルムがシャッターに接触し破れやすいため、製造が難しく好ましくない。しかしながら、250mmよりも大きいと熱特性のばらつきが大きくなり微小平面性が悪化しやすく好ましくない。 フィルムとシャッターが接触しないようにするためには、ノズルから吹き出す風速を適宜調整することが有効である。
【0033】
一方、本発明のポリエステルフィルムは、逐次延伸を用いて製造することもできる。最初の長手方向の延伸が重要であり延伸温度は90〜130℃、好ましくは100〜120℃である。延伸温度が90℃よりも低くなるとフィルムが破断しやすく、延伸温度が130℃よりも高くなるとフィルム表面が熱ダメージを受けやすくなるため好ましくない。また、延伸ムラ、及びキズを防止する観点からは延伸は2段階以上に分けて行うことが好ましく、トータル倍率は長さ方向に3〜4.5倍、好ましくは3.2〜4倍であり、幅方向に3.2〜5倍、好ましくは3.8〜4.5倍である。目標とするフィルムの破断強度を達成するため、適時倍率を選択できるが、幅方向の破断強度を高くするため、幅方向の延伸倍率を長手方向よりも高めに設定することがさらに好ましい。かかる温度、倍率範囲をはずれると延伸ムラあるいはフィルム破断などの問題を引き起こし、本発明の特徴とするフィルムが得られにくいため好ましくない。再縦または横延伸した後、205〜240℃、好ましくは210〜230℃で0.5〜20秒、好ましくは1〜15秒熱固定を行う。特に熱固定温度が205℃よりも低くなるとフィルムの結晶化が進まないために構造が安定せず、目標とする熱収縮率などの特性が得られず好ましくない。
【0034】
逐次延伸においては、延伸過程で、フィルムとロールの接触が避けられず、ロールの周速とフィルムの速度差を極力抑えるようにするとともに、延伸ロールとしては、表面の粗さなどを制御しやすい非粘着性のシリコーンロールが好ましい。従来技術のようにセラミックスやテフロン(登録商標)更には金属のロールを用いても可能であるが、フィルム表面のみが局所的に加熱されて粘着が発生し、フィルム表面に傷を発生する場合があり、好ましくない。
【0035】
さらに延伸ロールの表面粗さRaは、0.005〜1.0μm、好ましくは0.1〜0.6μmである。Raが1.0μmよりも大きいと延伸時ロール表面の凸凹がフィルム表面に転写するため好ましくなく、一方0.005μmよりも小さいとロールとフィルム地肌が粘着し、フィルムが熱ダメージを受けやすくなるため好ましくない。表面粗さを制御するためには研磨剤の粒度、研磨回数などを適宜調整することが有効であるが、特に延伸ロールについては、懸念されるポリエステルの分解物、オリゴマーの付着、蓄積は回避するため、頻度の高いロール研磨が好ましい。
【0036】
さらに、延伸部におけるロールとフィルムのトータルの接触時間は0.1秒以下、好ましくは0.08秒以下にすることがフィルムを製造する上で特に有効である。ロールとフィルムの接触時間が0.1秒よりも大きくなると、延伸ロールの熱によりフィルム表面のみが局所的に加熱され、引いては熱負荷時の微小平面性悪化を引き起こすこともあり、 さらに、フィルムに傷を発生する場合もあり、好ましくない。接触時間を短くする方法としては、例えばフィルムを延伸ロールに巻き付けず、ニップロール間で平行に延伸することが有効である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例で本発明を詳細に説明する。
【0038】
本発明の特性値の測定方法、並びに効果の評価方法は次の通りである。
【0039】
(1)粒子の平均粒径
フィルムからポリマーをプラズマ低温灰化処理法で除去し、粒子を露出させる。処理条件は、ポリマーは灰化されるが粒子は極力ダメージを受けない条件を選択する。その粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、粒子画像をイメージアナライザで処理する。SEMの倍率はおよそ5000〜20000倍から適宜選択する。観察箇所をかえて粒子数5000個以上で粒径とその体積分率から、次式で体積平均径dを得る。粒径の異なる2種類以上の粒子を含有している場合には、それぞれの粒子について同様の測定を行い、粒径を求めた。
d=Σ(di・Nvi)
ここで、diは粒径、Nviはその体積分率である。粒子がプラズマ低温灰化処理法で大幅にダメージを受ける場合には、フィルム断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、3000〜100000倍で観察する。TEMの切片厚さは約100nmとし、場所をかえて500視野以上測定し、上記式から体積平均径dを求める。
【0040】
B.粒子の体積形状係数
走査型電子顕微鏡で、粒子の写真を例えば5000倍で10視野撮影した上、画像解析処理装置を用いて、投影面最大径および粒子の平均体積を算出し、下記式により体積形状係数を得た。
f = V / Dm
ここで、Vは粒子の平均体積(μm)、Dmは投影面の最大径(μm)である。
【0041】
(2)固有粘度
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から、下式で計算した値を用いた。すなわち、
ηsp/C=[η]+K[η]・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1であり、Cは、溶媒100mlあたりの溶
解ポリマー重量(g/100ml、通常1.2)、Kはハギンス定数(0.343とする)である。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。単位は[dl/g]で示す。
【0042】
(3)フィルム積層厚み
表面からエッチングしながらXPS(X線光電子光法)、IR(赤外分光法)あるいはコンフォーカル顕微鏡などで、その粒子濃度のデプスプロファイルを測定する。片面に積層したフィルムにおける表層では、表面という空気−樹脂の界面のために粒子濃度は低く、表面から遠ざかるにつれて粒子濃度は高くなる。本発明の片面に積層したフィルムの場合は、深さ[I]で一旦極大値となった粒子濃度がまた減少し始める。この濃度分布曲線をもとに極大値の粒子濃度の1/2になる深さ[II](ここで、II>I)を積層厚さとした。さらに、無機粒子などが含有されている場合には、二次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、フィルム中の粒子のうち最も高濃度の粒子の起因する元素とポリエステルの炭素元素の濃度比(M+/C+)を粒子濃度とし、層(A)の表面からの深さ(厚さ)方向の分析を行う。そして上記同様の手法から積層厚さを得る。
【0043】
(4)破断伸度および破断強度
インストロンタイプの引張試験機(オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロン”万能試験機RTC−1210)を用いて測定した。幅10mmの試料フィルムを、試長間100mm、引張り速度200mm/分の条件で引っ張り試験を行い、フフィルムが破断した時の応力を求めて破断強度とし、フィルムが破断した時の歪み(伸び率)を求めて破断伸度した。測定は23℃、湿度65%RHで行った。
【0044】
(5)熱収縮率:
フィルム表面に、幅10mm、測定長約100mmとなるように2本のラインを引き、この2本のライン間の距離を23℃で正確に測定しこれをL0とする。このフィルムサンプルを100℃および150℃のオーブン中に30分間、1.5gの荷重下で放置した後、再び2本のライン間の距離を23℃で測定しこれをL1とし、下式により熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)={(L0−L1)/L0]×100。
【0045】
(6)フィルム表面粗さ(SRa、SRz値)
三次元微細表面形状測定器(小坂製作所製ET−350K)を用いて測定し、得られたる表面のプロファイル曲線より、JIS・B0601に準じ、算術平均粗さSRa値、十点平均面粗さSRz値を求めた。測定条件は下記のとおり。
X方向測定長さ:0.5mm、X方向送り速度:0.1mm/秒。
Y方向送りピッチ:5μm、Y方向ライン数:40本。
カットオフ:0.25mm。
触針圧:0.02mN。
高さ(Z方向)拡大倍率:5万倍。
【0046】
(7)粗大突起数
粗大突起数は10cm四方の大きさのフィルムを測定する面同士を2枚重ね合わせて、印可電圧をかけて静電気力で密着し、フィルム表面の粗大突起により発生する干渉縞から高さを推定する。干渉縞が1重環で0.270μmであり、2重環0.540μmおよび3重環0.810μm以上の粗大突起個数を測定した。光源としては、ハロゲンランプに564nmのバンドパルスフィルターをかけたものを用いた。
【0047】
(8)窪み欠点数
約10m2(例えば、1m幅で10m長)スポットライトを光源とし、反射光及び透過光を用いて、光の散乱に基づく輝点に注目しフィルムの表面を肉眼で検査し、欠点箇所にペンでマークを付ける。さらに、偏光光源を用いて、クロスニコルによる偏向乱れ輝点を検出する方法も併用する。マークした欠点箇所について、実体顕微鏡で窪みの最大径を測定し、最大径3mm以上の窪みについて、ミロー型二光束干渉検鏡装置付実体顕微鏡(Nikon製SMZ−10)を用いで窪み深さを測定し、深さ0.5μm以上で、最大径3mm以上の窪み欠点個数を測定した。窪みの深さは得られるλ/2ピッチで得られる干渉縞の乱れを測微接眼レンズで読みとり、下記により求めた。深さはフィルム表面から厚み方向への最大深さであり、窪み欠点の周りに盛り上がりを生じている場合は、盛り上がりの頂部から窪みの底部までの最大深さを求める。
深さ=λ/2×(B/A)
λ:546nm
A:接眼レンズによるλ/2の読みとり値
B:干渉縞の乱れ量
(9)延伸ロールの表面粗さ
Mitutoyo(株)製の表面粗さ計サーフテスト301を使用して、カットオフ0.25mmにてロール幅方向3点において中心面平均粗さを測定し、その平均値を採用した。
【0048】
(10)巻取コアの表面粗度
JIS・B0601に準じ、東京精密(株)の表面粗さ計サーフコム111Aを使用して、カットオフ0.25mmにて中心線平均粗さを幅方向に3等分した各領域の中央部において、表面粗度を測定し、その平均値を採用した。
【0049】
実施例1
ジメチルテレフタレートに1.9モルのエチレングリコールおよび酢酸マグネシウム・4水塩を0.05%、リン酸を0.015%加え加熱エステル交換を行い、引き続き三酸化アンチモン0.025%を加え、加熱昇温し真空化で重縮合反応を行い、粒子を実質的に含有しないホモポリエステルペレットを得た。
さらに上記と同様にポリエステルを製造するにあたり、エステル交換後、平均粒径1.1μmの炭酸カルシウムをポリエステルに対し1%添加し、炭酸カルシウム含有マスターペレットを得た。
【0050】
さらに別に、平均粒径0.3μm、体積形状係数f=0.52のジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子の水スラリーを、上記の実質的に粒子を含有しないホモポリエステルペレットに、ベント式二軸混練機を用いて含有さえ、0.3μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子をポリエステルに対し1%含有するマスターペレットを得た。
次に、炭酸カルシウム含有マスターペレット、ジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子含有するマスターペレットおよび実質的に粒子を含有しないホモポリエステルペレットを混合し、粒径0.3μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子(不活性粒子I)を0.10%、および、粒径1.1μmの炭酸カルシウム(不活性粒子II)を0.5%含有するポリエステルAを調整した。
【0051】
さらに、本発明の製膜工程で発生したエッジ部分などを主体とする回収フィルム原料を60%、および実質的に粒子を含有しないホモポリエステルペレットを40%の重量比で混合し、ポリエステルBを調整した。なお、ポリエステルBには、粒径1.1μmの炭酸カルシウム0.06%、粒径0.3μmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子を0.01%含有していた。
【0052】
これらのポリエステルA、Bをそれぞれ160℃で8時間減圧乾燥した後、別々の押出機に供給し、275℃で溶融押出して高精度濾過した後、矩形の3層用合流ブロックで合流積層し、ポリエステルA/ポリエステルB/ポリエステルAからなる3層積層とした。その後、285℃に保ったスリットダイを介し冷却ロール上に静電印可キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付け冷却固化して未延伸積層フィルムを得た。この未延伸積層フィルムをリニアモーター式の同時二軸延伸機により95℃で長手方向に3.6倍、及び幅方向にそれぞれ4.1倍、トータルで14.8倍延伸しその後、再度180℃で1.05倍幅方向に延伸し、定長下、220℃で3秒間熱処理した。温度の異なるゾーンの間にはシャッターを設けることで、フィルム上下の温度差は1℃とした。その後長手方向に1%、幅方向に2%の弛緩処理を施し、総厚み31μm、両面のポリエステルA層の厚みがそれぞれ1.5μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0053】
実施例2〜5、比較例1〜4
添加する粒子の粒径、添加量、及び層(B)に添加する粒子の添加量、さらに層 (B)の厚み、延伸条件を変更する以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0057】
適正な加工特性を備え、表面の平滑性に優れ、特にフィルム表面の微細な欠点が少ない離型用ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
深さ0.5μm以上の窪み欠点数が5個/m以下であり、少なくとも片面の表面の中心線平均粗さSRaが15〜35nm、十点平均粗さSRzが1000nm以下である離型用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
同時二軸延伸法によって製造されたことを特徴とする請求項1に記載の離型用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
長手方向および横方向の破断強度の和が500〜620MPaである請求項1に記載の離型用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
離型用ポリエステルフィルムが複合フィルムからなり、少なくとも片面に粒径0.1〜0.5μmの有機粒子を複合フィルム全体に対して0.05〜0.3重量%含有している請求項1に記載の離型用ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2013−7054(P2013−7054A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−210355(P2012−210355)
【出願日】平成24年9月25日(2012.9.25)
【分割の表示】特願2006−30560(P2006−30560)の分割
【原出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】