離床判定装置
【課題】正確に就寝者の離床状態を判定する離床判定装置を提供する。
【解決手段】在床した就寝者により生じる振動を検知可能に設置され、検出した振動に応じた出力信号を出力する振動検知部1aを備えている。第1判定部13は、判定期間内の出力信号が振動検出閾値以下となる時間の総和である非検出時間を算出し、当該非検出時間の長さに応じて当該判定期間において就寝者が在床状態または離床状態であると判定する。生体情報算出部14は、出力信号に基づいて就寝者の心臓の拍動数と呼吸数との少なくとも一方を示す生体情報を算出する。第2判定部15は、第1判定部13により在床状態と判定され、かつ、生体情報算出部14により算出された判定期間における少なくとも一の生体情報の値が対応する閾値以下の場合に、判定期間において就寝者が離床状態であると判定する。
【解決手段】在床した就寝者により生じる振動を検知可能に設置され、検出した振動に応じた出力信号を出力する振動検知部1aを備えている。第1判定部13は、判定期間内の出力信号が振動検出閾値以下となる時間の総和である非検出時間を算出し、当該非検出時間の長さに応じて当該判定期間において就寝者が在床状態または離床状態であると判定する。生体情報算出部14は、出力信号に基づいて就寝者の心臓の拍動数と呼吸数との少なくとも一方を示す生体情報を算出する。第2判定部15は、第1判定部13により在床状態と判定され、かつ、生体情報算出部14により算出された判定期間における少なくとも一の生体情報の値が対応する閾値以下の場合に、判定期間において就寝者が離床状態であると判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、就寝者の離床を判定する離床判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病院や高齢者施設等では、患者や入居者等の安全管理のために、これらの人がベッド等の寝具に在床しているかまたは離床しているかを確認したいという要望がある。しかしながら、職員等による見回りでは状態を常に確認することは困難であり、見回り等の頻度を増やすと監視負担が増大する。また、監視カメラ等を用いた場合には患者や入居者等のプライバシーの問題や監視負担の増大の問題も生じる。そのため、監視負担が増大しない簡易な在床/離床状態を把握する技術が望まれている。
【0003】
また、近年、睡眠の質を測るために就寝者の心臓の拍動の状態や呼吸状態、体動(以下、これらを生体情報と総称する)を測定する生体情報測定装置が提案されている。このような生体情報測定装置では、離床している状態を判定できないと、離床しているにもかかわらずノイズ等により生じる信号に基づいて不要かつ正確でない生体情報が算出されるため、好ましくない。このような観点からも、離床状態を正確に判定する技術が望まれている。
【0004】
離床状態を判定する技術としては、例えば、特許文献1から3の技術がある。特許文献1の技術では、就寝者の体動信号と呼吸信号と心拍信号とを検出し、これらの信号のうち2つ以上の信号レベルが、各々に対応する離床判定閾値以下になると、就寝者が離床していると判定している。一方、特許文献2の技術では、閾値以上の呼吸信号の振幅が所定時間以上続いた場合に入床(在床)していると判定している。他方、特許文献3の技術では、振動センサの出力信号に対して全整流化、平滑化、2値化を施し、2値化信号の第1レベルの継続時間に応じて在床/離床を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−97996号公報
【特許文献2】特開2006−280686号公報
【特許文献3】特許第4342298号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、検出された体動信号に基づいて呼吸信号および心拍信号を抽出し、これらの信号に基づいて離床判定を行っているため、検出された体動信号がノイズや外乱に起因するものであっても、人に起因する体動信号と類似する場合には、在床していると誤判定するおそれがある。一方、特許文献2の技術では、呼吸信号のみに基づいて在床判定を行っているため、呼吸信号が正しく検出できなければ在床しているにもかかわらず離床していると誤判定されるおそれがある。他方、特許文献3の技術では、圧力センサの出力信号の振幅のみに基づいて在床/離床判定を行っているため、ノイズや外乱による圧力が付加された場合に誤判定につながるおそれがある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、正確に就寝者の離床状態を判定する離床判定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の離床判定装置は、在床した就寝者により生じる振動を検知可能に設置され、当該振動に応じた出力信号を出力する振動検知部と、判定期間内の前記出力信号が振動検出閾値以下となる時間の総和である非検出時間を算出し、当該非検出時間の長さに応じて当該判定期間において前記就寝者が在床状態または離床状態であると判定する第1判定部と、前記出力信号に基づいて前記就寝者の心臓の拍動数と呼吸数との少なくとも一方を示す生体情報を算出する生体情報算出部と、前記第1判定部により在床状態と判定され、かつ、前記生体情報算出部により算出された前記判定期間における少なくとも一の生体情報の値が対応する閾値以下の場合に、当該判定期間において前記就寝者が離床状態であると判定する第2判定部と、を備えている。
【0009】
この構成では、第1判定部は、振動検知部からの出力信号を所定の判定期間に区切り、その判定期間内の出力信号が所定の振動検出閾値以下となる時間の総和(非検出時間)を求め、非検出時間が所定の閾値(離床判定閾値)未満であれば就寝者は在床状態、非検出時間が離床判定閾値以上であれば就寝者は離床状態であるとの1次的な判定を行う。一方、第2判定部は、第1判定部の判定結果が在床状態であり、生体情報算出部により算出された生体情報の値が所定の閾値以下であった場合には、その判定期間の判定結果を離床状態に変更する。このように、この構成では、振動検知部からの出力信号そのものに基づいて1次的に判定された結果を生体情報に基づいて再判定することにより、判定精度を向上させることができる。
【0010】
なお、前記第1判定部が、前記判定期間を複数の第1の単位時間に区切るとともに当該第1の単位時間毎の前記出力信号の最大振幅を求め、前記振動検出閾値以下となる前記最大振幅がある毎に前記非検出時間に前記第1の単位時間を加算するように構成すると、容易に非検出時間を算出できるため、好ましい。
【0011】
本発明の離床判定装置の好適な実施形態の一つでは、前記生体情報算出部は前記生体情報としてさらに前記就寝者の体動数を算出し、連続して設定された2つの前記判定期間のうち、先の前記判定期間における判定結果が離床状態であり、後の前記判定期間における判定結果が在床状態であり、かつ、当該後の判定期間における少なくとも一の前記生体情報の値が対応する閾値以下の場合に、当該後の判定期間において前記就寝者が離床状態であると判定する。
【0012】
この構成では、再判定の対象となっている判定期間(再判定期間)の直前の判定期間(直前判定期間)の判定結果と再判定期間の生体情報とに基づいて、再判定期間の判定結果の再判定が行われる。これにより、判定精度を向上させることができる。
【0013】
本発明の離床判定装置の好適な実施形態の一つでは、複数の前記振動検知部を備え、前記第1判定部は、全ての前記振動検知部の前記出力信号が前記振動検出閾値以下となった時間に基づいて前記非検出時間を算出する。
【0014】
この構成では、複数の振動検知部からの出力信号の全てが振動検出閾値以下となった時間に基づいて、非検出時間が算出される。そのため、就寝者と振動検知部との位置関係が良好でなく、一部の振動検知部のみでしか就寝者に起因する振動を検知できない場合であっても、正確に非検出時間を算出することができる。
【0015】
本発明の離床判定装置の好適な実施形態の一つでは、前記就寝者が離床した状態で得られた前記出力信号の第2の単位時間毎の最大振幅の平均算出期間における平均値を求め、当該平均算出期間内の当該最大振幅のうち、当該平均値からの偏差が所定値以下である前記最大振幅の平均値に基づいて前記振動検出閾値を決定する閾値決定部を備えている。
【0016】
振動検出閾値は振動検知部が有するノイズレベルや、建物等を通じて寝具に加えられている微小な振動のレベルを表すものである。そのため、振動検出閾値は、通常は就寝者が離床した状態で計測された出力信号に基づいて算出する必要がある。しかしながら、就寝者が離床している場合でも、オペレータ等により振動が加えられるおそれがある。そこで、本構成では、突出した値を除外した上で、平均値を求め、振動検出閾値としている。これにより、不要に加えられた振動に起因する出力信号を除外して振動検出閾値を算出することができ、精度の高い振動検出閾値を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】離床判定装置の構成図である。
【図2】実施例1における処理装置の機能ブロック図である。
【図3】振動検出閾値の設定処理の流れを表すフローチャートである。
【図4】出力信号の例である。
【図5】平均値算出期間において求められた出力信号の振幅の例である。
【図6】実施例1における離床判定装置の処理の流れを表すフローチャートである。
【図7】実施例1における第1判定部の処理の流れを表すフローチャートである。
【図8】実施例2における処理装置の機能ブロック図である。
【図9】実施例2における第3判定部の処理の流れを表すフローチャートである。
【図10】実施例3における離床判定装置の構成図である。
【図11】実施例3における第1判定部の処理の流れを表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0018】
以下に、図面を用いて本発明の離床判定装置の実施形態を説明する。図1は、本実施形態における離床判定装置の構成図である。本実施形態の離床判定装置は、人(以下、就寝者Mと称する)が寝具上に在床している在床状態か、寝具から離床している離床状態かを判定する機能を備えている。なお、本発明における在床とは就寝者Mが寝具に横臥している状態であり、横臥せずに寝具上に座っている等の状態は離床状態として扱っている。図に示すように、本実施形態における離床判定装置は、振動を検知する振動検知装置1および振動検知装置1からの出力に基づいて就寝者Mの在床/離床状態を判定する処理装置10により構成されている。
【0019】
振動検知装置1は、就寝者Mの下、または、就寝者Mが用いる敷布団、マットレス等の寝具の下に設置され、検出した振動に応じた出力信号を出力する。就寝者Mが在床している場合には、就寝者Mの心臓の拍動、呼吸、体動等に起因する振動を検知することができる。図に示すように、本実施例における振動検知装置1は、振動検知部の一例として1つの公知の振動センサ1aを備えており、振動センサ1aからの出力信号は処理装置10に入力されている。なお、以下の説明では、振動センサ1aからの出力信号の流れをチャネルと称する。したがって、本実施例では振動検知装置1から処理装置10に対して1チャネルの信号系が形成されている。
【0020】
図1に示すように、処理装置10はその前面に各種情報を表示するためのディスプレイ20およびディスプレイ20の表面に形成されたタッチパネル21を備えている。就寝者M等のユーザは、タッチパネル21を操作することにより、処理装置10に対して指示を与えることができる。また、処理装置10の前面右下隅にはプッシュ式の電源スイッチ22が設けられており、この電源スイッチ22により離床判定装置の起動・終了を行うことができる。
【0021】
図2は、処理装置10に備えられている機能部を表す機能ブロック図である。本実施形態では、処理装置10は各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)やメモリを中核としてソフトウェアにより各機能部が構成されているが、各機能部はハードウェアにより構成しても構わないし、ハードウェアとソフトウェアとを協働させて構成しても構わない。
【0022】
図に示すように、処理装置10は、処理装置10全体を制御する制御部11、振動センサ1aからの出力信号を取得する出力信号取得部12、出力信号に基づいて就寝者Mの1次的な在床/離床状態の判定を行う第1判定部13、出力信号に基づいて生体情報を算出する生体情報算出部14、生体情報算出部14により算出された生体情報に基づいて第1判定部13の判定結果の再判定を行う第2判定部15、振動検出閾値(後述)を設定する閾値決定部16を備えている。
【0023】
制御部11は、処理装置10全体の処理を制御する機能を有しており、就寝者Mの在床/離床についての判定結果や各種情報を就寝者M等に通知するためにディスプレイ20への表示を制御する。また、タッチパネル21に対する操作を取得する機能も有している。さらに、ネットワークを介して在床/離床についての判定結果を遠隔地に送信する機能を備えても構わない。このように構成すると、就寝者Mの看護者等が遠隔地にいる場合でも、看護者等は就寝者Mの在床/離床状態を把握することができる。また、判定結果の表示や送信はリアルタイムでも構わないし、判定結果をメモリ(図示せず)に記憶しておいて単位期間ごと、または、指定された期間について表示、送信を行う構成とすることもできる。
【0024】
出力信号取得部12には、リアルタイムに計測された振動センサ1aからの1チャネルの出力信号が入力されている。出力信号取得部12は、入力される出力信号を所定のサンプリング間隔でサンプリングし、A/D変換する。なお、本実施形態では、サンプリング間隔を10msecとしている。出力信号取得部12によりA/D変換された1チャネルの出力信号は、第1判定部13および生体情報算出部14に送られる。なお、以下の説明ではA/D変換された出力信号も単に出力信号と称する。
【0025】
第1判定部13は、予め設定されている判定期間毎に出力信号に基づいて就寝者Mが在床状態であるか離床状態であるかを判定する。具体的には、第1判定部13は、判定期間に属する出力信号が振動検出閾値以下となる時間の総和(以下、非検出時間と称する)を求め、非検出時間の長さに応じて就寝者Mが在床状態であるか離床状態であるかを判定する。なお、本実施形態では判定期間は1分に設定されている。第1判定部13による判定結果は第2判定部15に送られる。
【0026】
生体情報算出部14は、出力信号取得部12から出力信号を取得し、その出力信号に基づいて就寝者Mの生体情報を算出する。本実施例では、生体情報として就寝者Mの心拍数および呼吸数を示す情報を用いている。なお、生体情報算出部14は、心臓の拍動のタイミングや呼吸のタイミングを示すデータを生体情報として出力してもよいし、判定期間毎の心拍数や呼吸数を生体情報として出力してもよい。本実施形態では、他の機能部の処理との親和性を考慮して後者を採用している。
【0027】
なお、振動データからの生体情報の算出は、フィルタリング処理、例えば、特開2009−112596号公報に開示されている方法等の公知の方法を用いることができる。生体情報算出部12により算出された生体情報は、第2判定部15に送られる。
【0028】
第2判定部15は、第1判定部13による判定結果および生体情報算出部14により算出された生体情報に基づいて就寝者Mの在床/離床状態の再判定を行う。第2判定部15による判定結果は制御部11に送られる。
【0029】
閾値設定部16は、就寝者Mが離床している状態の出力信号に基づいて振動検出閾値を決定する。振動検出閾値とは、就寝者Mからの振動が加わらない状態で振動センサ1aが検知する振動レベルを表す値である。換言すると、振動検出閾値は振動センサ1aが有するノイズや外乱等(以下、これらをノイズと総称する)による振動の大きさである。したがって、この振動検出閾値に基づけば振動センサ1aにより検出された振動が就寝者Mに起因するものであるか、ノイズであるかを判定することができる。
【0030】
以下に、図3のフローチャートを用いて振動検出閾値の設定処理の流れを説明する。なお、この振動検出閾値の設定処理は離床判定装置を使用する度に行う必要はなく、寝具を変更した場合や振動検知装置1の設置状態を変更した場合等に行えばよい。
【0031】
まず、就寝者Mやオペレータ等は就寝者Mが離床した状態でタッチパネル21を操作して、処理装置10を振動検出閾値設定モードに移行させる(#01)。なお、上述したように振動検出閾値はノイズレベルを表す値であるため、寝具等の状態は就寝者Mが通常就寝する状態としておくことが望ましい。
【0032】
振動検出閾値設定モードに移行した処理装置10は、制御部11を介して閾値設定部16に対して振動検出閾値の設定処理の開始を指示する。まず、閾値設定部16は出力信号取得部12を介して予め設定された期間(以下、平均値算出期間と称する)の出力信号を取得する(#02)。なお、本実施形態では平均算出時間を30秒としている。
【0033】
平均値算出期間分の出力信号を取得した閾値設定部16は、平均値算出期間を複数の期間に区分けする。この期間は本発明の第2の単位時間の一例であり、第2単位時間と称する。本実施形態では、第2単位時間を1秒としている。次に、各第2単位時間における出力信号の振幅、すなわち、出力信号の最大値と最小値との差を算出する(#03)。図4は、平均値算出期間(30秒)分の出力信号であり、図中円内は第2単位時間における出力信号の振幅の算出の様子を模式的に表している。図に示しているように、各第2単位時間において、出力信号の最大値と最小値とを検出し、それらの差の絶対値を各第2単位時間における出力信号の振幅としている。
【0034】
このようにして、平均値算出期間の各第2単位時間の出力信号の振幅が算出されると、本実施形態では図5に示すように30個の振幅が得られることになる。次に、この30個の振幅の平均値μ0および標準偏差σを算出し(#04)、これらに基づいて仮の閾値TH0=μ0+σを求める(#05)。
【0035】
次に、30個の振幅から仮の閾値TH0以下の振幅のみを抽出し、それらの振幅の平均値を算出する(#06)。ここで仮の閾値TH0以下の振幅のみを用いるのは、仮の閾値TH0以上の振幅は何らかの異常状態により生じた振動を表しているとみなし、振動検出閾値からその振動に基づく出力信号の影響を排除するためである。例えば、平均値μ0=5.85、標準偏差σ=11.75であったとすると、仮の閾値TH0は5.85+11.75=17.60となる。この仮の閾値TH0を図5の例に適用すると、No.2の振幅が仮の閾値TH0を超えているため除外され、No.2以外の振幅の平均値μが求められる。
【0036】
さらに、このようにして求められた平均値μを所定の定数倍することにより最終的な振動検出閾値THを求める(#07)。本実施形態では、所定の定数を1.5としているため、振動検出閾値TH=1.5μである。この所定の定数は適宜変更可能であり、実験を通じて最適値を求めればよい。このようにして求められた振動検出閾値THは、第1判定部13に送られる。
【0037】
このようにして、振動検出閾値を算出する際に平均から大きく外れた振幅を除外することにより、平均値算出期間内に何らかの異常状態により振動が発生した場合であっても、その振動の影響を抑制した振動検出閾値を算出することができる。
【0038】
次に、図6のフローチャートを用いて本実施例における離床判定装置の処理の流れを説明する。まず、就寝者Mまたはオペレータ等はタッチパネル21を操作し、処理装置10を離床判定モードに切り替える。振動検出閾値設定モードに移行した処理装置10は、制御部11を介して各機能部に対して離床判定処理を行うように指示を送る。
【0039】
制御部11からの指示を受けた出力信号取得部12は、振動センサ1aからの出力信号を取得し、取得した時刻順に一時的にメモリ(図示せず)に記憶する(#11)。一時的に記憶した出力信号の長さが設定されている判定期間に達すると(#12のYes分岐)、出力信号取得部12から第1判定部13および生体情報算出部14に対してその旨が通知される。なお、本実施形態では判定期間を1分に設定している。すなわち、出力信号取得部12は、1分間分の出力信号が蓄積された時点で第1判定部13および生体情報算出部14に対する通知を行う。
【0040】
出力信号取得部12から通知を受けた第1判定部13は、メモリに記憶された出力信号に基づいて就寝者Mが在床状態であるか離床状態であるかを1次的に判定する(#13)。具体的には、図7に示すフローチャートの処理が行われる。
【0041】
まず、第1判定部13は、初期化として非検出時間を0リセットする(#21)。次に、第1判定部13は、判定期間を複数の期間に区分けする。この期間は本発明の第1の単位時間の一例であり、第1単位時間と称する。本実施形態では、第1単位時間を1秒に設定している。次に、各第1単位時間における出力信号の振幅を算出する(#22)。なお、ここでの振幅の求め方は上述した振動検出閾値を算出する際の振幅の求め方と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0042】
本実施例では60個の第1単位時間の振幅が算出されると、第1判定部13は順次一つの振幅を選択し(#23)、その振幅が振動検出閾値TH未満であれば(#24のYes分岐)、非検出時間に第1単位時間、すなわち、1秒を加算する(#25)。一方、その振幅が振動検出閾値TH以上であれば(#24のNo分岐)非検出時間は更新されない。この処理を60個全ての振幅に対して行う(#26)。この処理により算出された非検出時間は、判定期間に属する出力信号のうち振動検出閾値以下となっている部分の総時間を表している。
【0043】
上述の処理が完了すると、第1判定部13は非検出時間と予め設定されている離床判定閾値とを比較し、非検出時間が離床判定閾値以上であれば(#27のYes分岐)、離床状態であると判定する(#28)。一方、非検出時間が離床判定閾値未満であれば(#27のNo分岐)、在床状態であると判定する(#29)。このようにして判定された判定結果は第2判定部15に送られる。なお、離床判定閾値は本実施形態では20秒としているが、判定期間の長さや所望の判定精度に応じて適宜変更可能である。
【0044】
一方、出力信号取得部12から通知を受けた生体情報算出部14は、メモリに記憶された1分間の判定期間分の出力信号に基づいて就寝者Mの生体情報を算出する(#14)。なお、本実施例では第1判定部13の判定結果にかかわらず、生体情報算出部14は生体情報を算出しているが、第1判定部13の判定結果が在床状態であった場合のみ生体情報を算出する構成としても構わない。本実施例では、生体情報算出部14は生体情報として判定期間における心拍数および呼吸数を算出する。算出された生体情報は第2判定部15に送られる。
【0045】
第1判定部13からの判定結果と生体情報算出部14により算出された生体情報を取得した第2判定部15は、これらの情報に基づいて第1判定部13の判定結果の再判定を行う。具体的には、第1判定部13の判定結果が離床状態であれば(#15のYes分岐)、第2判定部15は再判定を行わずに、第2判定部15は第1判定部13の判定結果をそのまま制御部11に送る(#18)。一方、第1判定部13の判定結果が在床状態であれば(#15のNo分岐)、生体情報とその生体情報に対応する閾値を比較し(#16)、生体情報が閾値未満であれば(#16のYes分岐)、判定結果を離床に変更(再判定)する(#17)。一方、生体情報が閾値以上であれば(#16のNo分岐)、は第1判定部13の判定結果をそのまま制御部11に送る(#18)。生体情報に対する閾値は、一般的な人が有する生体情報よりも小さな値を設定しておけばよい。例えば、心拍数であれば35、呼吸数であれば10に設定する。
【0046】
なお、本実施例のように複数の生体情報を用いた場合には生体情報と閾値との比較結果が生体情報毎に異なる場合が生じる。例えば、心拍数は閾値よりも大きいが、呼吸数は閾値よりも小さい場合が生じ得る。このような場合には、一つの生体情報が閾値未満であれば#16の処理をYesに分岐させることもできるし、全ての生体情報が閾値未満の場合のみ#16の処理をYesに分岐させることもできる。本実施例では、後者を採用する。
【0047】
この処理を終了指示が行われるまで繰り返す(#19)。したがって、1分間の判定期間毎に上記の処理が実行され、制御部11は1分毎に在床状態もしくは離床状態であるかの判定結果を取得することとなる。なお、一の判定期間についての処理が完了すると、メモリに一次記憶されている出力信号は消去される。
【0048】
このように、本実施例における離床判定装置によれば、振動センサ1aからの出力信号に基づいて在床状態/離床状態が判定されるが、生体情報を用いてその判定結果を再判定することにより、判定結果の精度を向上させることができる。
【実施例2】
【0049】
上述したように、第1判定部13や第2判定部15は逐次入力される出力信号を判定期間に区切り、各判定期間における就寝者の在床状態/離床状態の判定を行うものである。そのため、他の判定期間の誤判定の影響を受けずに判定を行えるという利点がある。しかし、その一方、誤判定があると長時間にわたる判定結果を集計する場合等には好ましくない。そこで、本実施例における離床判定装置は、実施例1の離床判定装置の判定結果を再判定する機能を備えている。
【0050】
図8に示すように、本実施例における離床判定装置は、実施例1の機能部に加えて、第2判定部15の判定結果を再判定する第3判定部17を備えている。また、生体情報算出部14はさらに就寝者Mの体動数を算出する機能を有している。なお、体動とは寝返り等の大きな体の動きの総称である。
【0051】
第3判定部17は、複数の判定期間の在床/離床状態の判定結果およびそれらの判定期間の生体情報に基づいて、それらの判定期間の判定結果を再判定する機能を有している。具体的には、再判定の対象となっている判定期間(以下、再判定期間と称する)の判定結果が在床状態であり、その直前の判定期間(以下、直前判定期間と称する)の判定結果が離床状態であり、再判定期間の生体情報の値が所定値以下であれば、再判定期間の判定結果を離床状態に変更する。
【0052】
第3判定部17は少なくとも2つの判定期間における判定結果があれば動作可能である。したがって、実施例1の処理のうち第2判定部15の後段に組み込むこともできるし、一連の判定処理が完了した後に、独立して処理することもできる。ここでは、実施例1の処理とは独立して、特定のタイミングで動作する場合を説明する。なお、特定のタイミングは、例えば、1時間に一度、離床判定処理の終了指示がなされた時点等、適宜変更可能である。
【0053】
図9は、第3判定部17の処理の流れを表すフローチャートである。なお、この処理に先立ち、メモリには複数の判定期間についての判定結果と生体情報とが記憶されているものとする。また、以下の説明では、判定期間数をT、i番目の判定期間の判定結果および生体情報をres[i]、inf[i]と表記する。
【0054】
第3判定部17は処理を開始すると、初期化として制御変数iに2を設定する(#31)。なお、i番目の判定期間が再判定期間であり、i−1番目の判定期間が直前判定期間である。第3判定部17は、再判定期間の判定結果としてres[i]をメモリから取出し、その判定結果が在床状態であれば(#32のYes分岐)、直前判定期間の判定結果としてres[i−1]をメモリから取り出す。直前判定期間の判定結果が離床状態であれば(#33のYes分岐)、さらに再判定期間の生体情報inf[i]をメモリから抽出する。
【0055】
再判定期間の生体情報が対応する所定の閾値以下であれば(#34のYes分岐)、第3判定部17は再判定期間の判定結果res[i]を離床状態に変更し(#35)、メモリの内容を更新する。
【0056】
なお、本実施例の生体情報算出部14は拍動数、呼吸数に加えて体動数を算出することができる。したがって#24の判定はこれらの生体情報を用いることができるが、本実施例では体動数を用い、その閾値を0に設定している。当然ながら、他の生体情報を用いて判定しても構わないし、複数の生体情報を組み合わせて判定しても構わない。なお、拍動数、呼吸数を用いて判定を行う場合には、第1判定部の閾値よりも小さく設定した閾値を用いればよい。
【0057】
そして、制御変数iに2を加算する(#36)。本実施例では、再判定の連鎖を防止するために、判定結果が変更された再判定期間が次の直前判定期間とならないようにしているが、制御変数iに1を加算する構成としても構わない。
【0058】
一方、上記の条件のいずれかが満たされない場合(#32のNo分岐、#33のNo分岐、#34のNo分岐)、制御変数iに1を加算する(#37)。
【0059】
そして、制御変数iと判定期間数Tとを比較し(#38)、未処理の判定期間が存在すれば(#38のYes分岐)、処理を#32に移行し、上述の処理を繰り返す。
【0060】
このように、本実施例における離床判定装置では、再判定期間における生体情報と再判定期間の直前の直前判定期間の判定結果とに基づいて、再判定期間における判定結果を再判定することにより、判定精度を向上させている。
【実施例3】
【0061】
本実施例における離床判定装置は、図10に示すように振動検知装置1が8つの振動センサ1aを備えている点において実施例1の構成と異なっている。したがって、本実施例では振動検知部1から処理装置10に対して8チャネルの信号系が形成されている。また、出力信号取得部12から、第1判定部13に対しては4チャネル、生体情報算出部14に対しては8チャネルの信号系が形成されている。第1判定部13に送るチャネル数を減らしているのは、第1判定部13における演算量を低減し、処理速度を向上させるためである。したがって、十分な処理速度が得られる場合には、第1判定部13に対しても8チャネル分の出力信号を入力しても構わない。なお、本実施例では、図10の8個の振動センサ1aのうち上列4個の振動センサ1aの出力信号を第1判定部13に入力しているが、第1判定部13に入力する出力信号のチャネル数は適宜変更可能であり、また、選択される出力信号も適宜変更可能である。
【0062】
このように、本実施例では複数チャネルの出力信号が用いられているが、全体の処理は実施例1と大きく異ならない。ただし、第1判定部13および生体情報算出部14における処理が実施例1と異なっており、以下に実施例1と異なる点について説明する。
【0063】
まず、複数の振動センサ1aを用いる場合には、それぞれの振動センサ1aのノイズレベルが異なっているおそれがある。そのため、それぞれの振動センサ1aに対応する振動検出閾値THを求める必要がある。具体的には、それぞれの振動センサ1aからの出力信号に対して図3のフローチャートの処理を施して、それぞれの振動センサ1aに対する振動検出閾値THを設定する。
【0064】
次に、図11のフローチャートを用いて第1判定部13の処理の流れを説明する。まず、第1判定部13は、初期化として非検出時間を0リセットする(#41)。次に、第1判定部13は、判定期間を複数の期間(第1単位時間)に区分けし、各第1単位時間におけるそれぞれの出力信号の振幅を算出する(#42)。すなわち、各第1単位時間において各チャネルの振幅が算出される。本実施例では4チャネルの出力信号が使用されているため、各第1単位時間について4つの振幅が得られることとなる。
【0065】
全ての第1単位時間の振幅を算出すると、第1判定部13は一つの第1単位時間を選択し、(#43)、その第1単位時間の全ての振幅が対応する振動検出閾値TH未満であれば(#44のYes分岐)、非検出時間に第1単位時間、すなわち、1秒を加算する(#45)。一方、振動検出閾値TH以上の振幅が1つでもあれば(#44のNo分岐)、非検出時間は更新されない。この処理を60個全ての第1単位時間に対して行う(#46)。
【0066】
上述の処理が完了すると、第1判定部13は非検出時間と予め設定されている離床判定閾値とを比較し、非検出時間が離床判定閾値以上であれば(#47のYes分岐)、離床状態であると判定する(#48)。一方、非検出時間が離床判定閾値未満であれば(#47のNo分岐)、在床状態であると判定する(#49)。
【0067】
このように、本実施例では、各第1単位時間における全ての出力信号の振幅が対応する振動検出閾値TH以下となった場合に非検出時間を更新することにより、非検出時間の算出精度を高めている。例えば、就寝者と振動検知部との位置関係が良好でなく、一部の振動検知部のみでしか就寝者に起因する振動を検知できない場合であっても、正確に非検出時間を算出することができる。
【0068】
一方、生体情報算出部14には8チャネルの出力信号が入力されているが、本実施例では1の出力信号を選択し、その出力信号から生体情報を算出する構成としている。そのため、本実施例の生体情報算出部14は、実施例1の生体情報算出部14の前段に出力信号を選択する機能部を付加するだけで構成することができる。また、本実施例の生体情報算出部14の出力は実施例1と同様であるため、生体情報算出部14の後段の第2判定部は実施例1と同様の構成とすることができる。なお、生体情報を算出するための出力信号は、例えば、判定期間における振幅の平均値が最大のものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、就寝時等における人の生態情報を測定する生体情報測定装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
M:就寝者
1a:振動検知部(振動センサ)
12:出力信号取得部
13:第1判定部
14:生体情報算出部
15:第2判定部
16:閾値設定部
17:第3判定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、就寝者の離床を判定する離床判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病院や高齢者施設等では、患者や入居者等の安全管理のために、これらの人がベッド等の寝具に在床しているかまたは離床しているかを確認したいという要望がある。しかしながら、職員等による見回りでは状態を常に確認することは困難であり、見回り等の頻度を増やすと監視負担が増大する。また、監視カメラ等を用いた場合には患者や入居者等のプライバシーの問題や監視負担の増大の問題も生じる。そのため、監視負担が増大しない簡易な在床/離床状態を把握する技術が望まれている。
【0003】
また、近年、睡眠の質を測るために就寝者の心臓の拍動の状態や呼吸状態、体動(以下、これらを生体情報と総称する)を測定する生体情報測定装置が提案されている。このような生体情報測定装置では、離床している状態を判定できないと、離床しているにもかかわらずノイズ等により生じる信号に基づいて不要かつ正確でない生体情報が算出されるため、好ましくない。このような観点からも、離床状態を正確に判定する技術が望まれている。
【0004】
離床状態を判定する技術としては、例えば、特許文献1から3の技術がある。特許文献1の技術では、就寝者の体動信号と呼吸信号と心拍信号とを検出し、これらの信号のうち2つ以上の信号レベルが、各々に対応する離床判定閾値以下になると、就寝者が離床していると判定している。一方、特許文献2の技術では、閾値以上の呼吸信号の振幅が所定時間以上続いた場合に入床(在床)していると判定している。他方、特許文献3の技術では、振動センサの出力信号に対して全整流化、平滑化、2値化を施し、2値化信号の第1レベルの継続時間に応じて在床/離床を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−97996号公報
【特許文献2】特開2006−280686号公報
【特許文献3】特許第4342298号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、検出された体動信号に基づいて呼吸信号および心拍信号を抽出し、これらの信号に基づいて離床判定を行っているため、検出された体動信号がノイズや外乱に起因するものであっても、人に起因する体動信号と類似する場合には、在床していると誤判定するおそれがある。一方、特許文献2の技術では、呼吸信号のみに基づいて在床判定を行っているため、呼吸信号が正しく検出できなければ在床しているにもかかわらず離床していると誤判定されるおそれがある。他方、特許文献3の技術では、圧力センサの出力信号の振幅のみに基づいて在床/離床判定を行っているため、ノイズや外乱による圧力が付加された場合に誤判定につながるおそれがある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、正確に就寝者の離床状態を判定する離床判定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の離床判定装置は、在床した就寝者により生じる振動を検知可能に設置され、当該振動に応じた出力信号を出力する振動検知部と、判定期間内の前記出力信号が振動検出閾値以下となる時間の総和である非検出時間を算出し、当該非検出時間の長さに応じて当該判定期間において前記就寝者が在床状態または離床状態であると判定する第1判定部と、前記出力信号に基づいて前記就寝者の心臓の拍動数と呼吸数との少なくとも一方を示す生体情報を算出する生体情報算出部と、前記第1判定部により在床状態と判定され、かつ、前記生体情報算出部により算出された前記判定期間における少なくとも一の生体情報の値が対応する閾値以下の場合に、当該判定期間において前記就寝者が離床状態であると判定する第2判定部と、を備えている。
【0009】
この構成では、第1判定部は、振動検知部からの出力信号を所定の判定期間に区切り、その判定期間内の出力信号が所定の振動検出閾値以下となる時間の総和(非検出時間)を求め、非検出時間が所定の閾値(離床判定閾値)未満であれば就寝者は在床状態、非検出時間が離床判定閾値以上であれば就寝者は離床状態であるとの1次的な判定を行う。一方、第2判定部は、第1判定部の判定結果が在床状態であり、生体情報算出部により算出された生体情報の値が所定の閾値以下であった場合には、その判定期間の判定結果を離床状態に変更する。このように、この構成では、振動検知部からの出力信号そのものに基づいて1次的に判定された結果を生体情報に基づいて再判定することにより、判定精度を向上させることができる。
【0010】
なお、前記第1判定部が、前記判定期間を複数の第1の単位時間に区切るとともに当該第1の単位時間毎の前記出力信号の最大振幅を求め、前記振動検出閾値以下となる前記最大振幅がある毎に前記非検出時間に前記第1の単位時間を加算するように構成すると、容易に非検出時間を算出できるため、好ましい。
【0011】
本発明の離床判定装置の好適な実施形態の一つでは、前記生体情報算出部は前記生体情報としてさらに前記就寝者の体動数を算出し、連続して設定された2つの前記判定期間のうち、先の前記判定期間における判定結果が離床状態であり、後の前記判定期間における判定結果が在床状態であり、かつ、当該後の判定期間における少なくとも一の前記生体情報の値が対応する閾値以下の場合に、当該後の判定期間において前記就寝者が離床状態であると判定する。
【0012】
この構成では、再判定の対象となっている判定期間(再判定期間)の直前の判定期間(直前判定期間)の判定結果と再判定期間の生体情報とに基づいて、再判定期間の判定結果の再判定が行われる。これにより、判定精度を向上させることができる。
【0013】
本発明の離床判定装置の好適な実施形態の一つでは、複数の前記振動検知部を備え、前記第1判定部は、全ての前記振動検知部の前記出力信号が前記振動検出閾値以下となった時間に基づいて前記非検出時間を算出する。
【0014】
この構成では、複数の振動検知部からの出力信号の全てが振動検出閾値以下となった時間に基づいて、非検出時間が算出される。そのため、就寝者と振動検知部との位置関係が良好でなく、一部の振動検知部のみでしか就寝者に起因する振動を検知できない場合であっても、正確に非検出時間を算出することができる。
【0015】
本発明の離床判定装置の好適な実施形態の一つでは、前記就寝者が離床した状態で得られた前記出力信号の第2の単位時間毎の最大振幅の平均算出期間における平均値を求め、当該平均算出期間内の当該最大振幅のうち、当該平均値からの偏差が所定値以下である前記最大振幅の平均値に基づいて前記振動検出閾値を決定する閾値決定部を備えている。
【0016】
振動検出閾値は振動検知部が有するノイズレベルや、建物等を通じて寝具に加えられている微小な振動のレベルを表すものである。そのため、振動検出閾値は、通常は就寝者が離床した状態で計測された出力信号に基づいて算出する必要がある。しかしながら、就寝者が離床している場合でも、オペレータ等により振動が加えられるおそれがある。そこで、本構成では、突出した値を除外した上で、平均値を求め、振動検出閾値としている。これにより、不要に加えられた振動に起因する出力信号を除外して振動検出閾値を算出することができ、精度の高い振動検出閾値を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】離床判定装置の構成図である。
【図2】実施例1における処理装置の機能ブロック図である。
【図3】振動検出閾値の設定処理の流れを表すフローチャートである。
【図4】出力信号の例である。
【図5】平均値算出期間において求められた出力信号の振幅の例である。
【図6】実施例1における離床判定装置の処理の流れを表すフローチャートである。
【図7】実施例1における第1判定部の処理の流れを表すフローチャートである。
【図8】実施例2における処理装置の機能ブロック図である。
【図9】実施例2における第3判定部の処理の流れを表すフローチャートである。
【図10】実施例3における離床判定装置の構成図である。
【図11】実施例3における第1判定部の処理の流れを表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0018】
以下に、図面を用いて本発明の離床判定装置の実施形態を説明する。図1は、本実施形態における離床判定装置の構成図である。本実施形態の離床判定装置は、人(以下、就寝者Mと称する)が寝具上に在床している在床状態か、寝具から離床している離床状態かを判定する機能を備えている。なお、本発明における在床とは就寝者Mが寝具に横臥している状態であり、横臥せずに寝具上に座っている等の状態は離床状態として扱っている。図に示すように、本実施形態における離床判定装置は、振動を検知する振動検知装置1および振動検知装置1からの出力に基づいて就寝者Mの在床/離床状態を判定する処理装置10により構成されている。
【0019】
振動検知装置1は、就寝者Mの下、または、就寝者Mが用いる敷布団、マットレス等の寝具の下に設置され、検出した振動に応じた出力信号を出力する。就寝者Mが在床している場合には、就寝者Mの心臓の拍動、呼吸、体動等に起因する振動を検知することができる。図に示すように、本実施例における振動検知装置1は、振動検知部の一例として1つの公知の振動センサ1aを備えており、振動センサ1aからの出力信号は処理装置10に入力されている。なお、以下の説明では、振動センサ1aからの出力信号の流れをチャネルと称する。したがって、本実施例では振動検知装置1から処理装置10に対して1チャネルの信号系が形成されている。
【0020】
図1に示すように、処理装置10はその前面に各種情報を表示するためのディスプレイ20およびディスプレイ20の表面に形成されたタッチパネル21を備えている。就寝者M等のユーザは、タッチパネル21を操作することにより、処理装置10に対して指示を与えることができる。また、処理装置10の前面右下隅にはプッシュ式の電源スイッチ22が設けられており、この電源スイッチ22により離床判定装置の起動・終了を行うことができる。
【0021】
図2は、処理装置10に備えられている機能部を表す機能ブロック図である。本実施形態では、処理装置10は各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)やメモリを中核としてソフトウェアにより各機能部が構成されているが、各機能部はハードウェアにより構成しても構わないし、ハードウェアとソフトウェアとを協働させて構成しても構わない。
【0022】
図に示すように、処理装置10は、処理装置10全体を制御する制御部11、振動センサ1aからの出力信号を取得する出力信号取得部12、出力信号に基づいて就寝者Mの1次的な在床/離床状態の判定を行う第1判定部13、出力信号に基づいて生体情報を算出する生体情報算出部14、生体情報算出部14により算出された生体情報に基づいて第1判定部13の判定結果の再判定を行う第2判定部15、振動検出閾値(後述)を設定する閾値決定部16を備えている。
【0023】
制御部11は、処理装置10全体の処理を制御する機能を有しており、就寝者Mの在床/離床についての判定結果や各種情報を就寝者M等に通知するためにディスプレイ20への表示を制御する。また、タッチパネル21に対する操作を取得する機能も有している。さらに、ネットワークを介して在床/離床についての判定結果を遠隔地に送信する機能を備えても構わない。このように構成すると、就寝者Mの看護者等が遠隔地にいる場合でも、看護者等は就寝者Mの在床/離床状態を把握することができる。また、判定結果の表示や送信はリアルタイムでも構わないし、判定結果をメモリ(図示せず)に記憶しておいて単位期間ごと、または、指定された期間について表示、送信を行う構成とすることもできる。
【0024】
出力信号取得部12には、リアルタイムに計測された振動センサ1aからの1チャネルの出力信号が入力されている。出力信号取得部12は、入力される出力信号を所定のサンプリング間隔でサンプリングし、A/D変換する。なお、本実施形態では、サンプリング間隔を10msecとしている。出力信号取得部12によりA/D変換された1チャネルの出力信号は、第1判定部13および生体情報算出部14に送られる。なお、以下の説明ではA/D変換された出力信号も単に出力信号と称する。
【0025】
第1判定部13は、予め設定されている判定期間毎に出力信号に基づいて就寝者Mが在床状態であるか離床状態であるかを判定する。具体的には、第1判定部13は、判定期間に属する出力信号が振動検出閾値以下となる時間の総和(以下、非検出時間と称する)を求め、非検出時間の長さに応じて就寝者Mが在床状態であるか離床状態であるかを判定する。なお、本実施形態では判定期間は1分に設定されている。第1判定部13による判定結果は第2判定部15に送られる。
【0026】
生体情報算出部14は、出力信号取得部12から出力信号を取得し、その出力信号に基づいて就寝者Mの生体情報を算出する。本実施例では、生体情報として就寝者Mの心拍数および呼吸数を示す情報を用いている。なお、生体情報算出部14は、心臓の拍動のタイミングや呼吸のタイミングを示すデータを生体情報として出力してもよいし、判定期間毎の心拍数や呼吸数を生体情報として出力してもよい。本実施形態では、他の機能部の処理との親和性を考慮して後者を採用している。
【0027】
なお、振動データからの生体情報の算出は、フィルタリング処理、例えば、特開2009−112596号公報に開示されている方法等の公知の方法を用いることができる。生体情報算出部12により算出された生体情報は、第2判定部15に送られる。
【0028】
第2判定部15は、第1判定部13による判定結果および生体情報算出部14により算出された生体情報に基づいて就寝者Mの在床/離床状態の再判定を行う。第2判定部15による判定結果は制御部11に送られる。
【0029】
閾値設定部16は、就寝者Mが離床している状態の出力信号に基づいて振動検出閾値を決定する。振動検出閾値とは、就寝者Mからの振動が加わらない状態で振動センサ1aが検知する振動レベルを表す値である。換言すると、振動検出閾値は振動センサ1aが有するノイズや外乱等(以下、これらをノイズと総称する)による振動の大きさである。したがって、この振動検出閾値に基づけば振動センサ1aにより検出された振動が就寝者Mに起因するものであるか、ノイズであるかを判定することができる。
【0030】
以下に、図3のフローチャートを用いて振動検出閾値の設定処理の流れを説明する。なお、この振動検出閾値の設定処理は離床判定装置を使用する度に行う必要はなく、寝具を変更した場合や振動検知装置1の設置状態を変更した場合等に行えばよい。
【0031】
まず、就寝者Mやオペレータ等は就寝者Mが離床した状態でタッチパネル21を操作して、処理装置10を振動検出閾値設定モードに移行させる(#01)。なお、上述したように振動検出閾値はノイズレベルを表す値であるため、寝具等の状態は就寝者Mが通常就寝する状態としておくことが望ましい。
【0032】
振動検出閾値設定モードに移行した処理装置10は、制御部11を介して閾値設定部16に対して振動検出閾値の設定処理の開始を指示する。まず、閾値設定部16は出力信号取得部12を介して予め設定された期間(以下、平均値算出期間と称する)の出力信号を取得する(#02)。なお、本実施形態では平均算出時間を30秒としている。
【0033】
平均値算出期間分の出力信号を取得した閾値設定部16は、平均値算出期間を複数の期間に区分けする。この期間は本発明の第2の単位時間の一例であり、第2単位時間と称する。本実施形態では、第2単位時間を1秒としている。次に、各第2単位時間における出力信号の振幅、すなわち、出力信号の最大値と最小値との差を算出する(#03)。図4は、平均値算出期間(30秒)分の出力信号であり、図中円内は第2単位時間における出力信号の振幅の算出の様子を模式的に表している。図に示しているように、各第2単位時間において、出力信号の最大値と最小値とを検出し、それらの差の絶対値を各第2単位時間における出力信号の振幅としている。
【0034】
このようにして、平均値算出期間の各第2単位時間の出力信号の振幅が算出されると、本実施形態では図5に示すように30個の振幅が得られることになる。次に、この30個の振幅の平均値μ0および標準偏差σを算出し(#04)、これらに基づいて仮の閾値TH0=μ0+σを求める(#05)。
【0035】
次に、30個の振幅から仮の閾値TH0以下の振幅のみを抽出し、それらの振幅の平均値を算出する(#06)。ここで仮の閾値TH0以下の振幅のみを用いるのは、仮の閾値TH0以上の振幅は何らかの異常状態により生じた振動を表しているとみなし、振動検出閾値からその振動に基づく出力信号の影響を排除するためである。例えば、平均値μ0=5.85、標準偏差σ=11.75であったとすると、仮の閾値TH0は5.85+11.75=17.60となる。この仮の閾値TH0を図5の例に適用すると、No.2の振幅が仮の閾値TH0を超えているため除外され、No.2以外の振幅の平均値μが求められる。
【0036】
さらに、このようにして求められた平均値μを所定の定数倍することにより最終的な振動検出閾値THを求める(#07)。本実施形態では、所定の定数を1.5としているため、振動検出閾値TH=1.5μである。この所定の定数は適宜変更可能であり、実験を通じて最適値を求めればよい。このようにして求められた振動検出閾値THは、第1判定部13に送られる。
【0037】
このようにして、振動検出閾値を算出する際に平均から大きく外れた振幅を除外することにより、平均値算出期間内に何らかの異常状態により振動が発生した場合であっても、その振動の影響を抑制した振動検出閾値を算出することができる。
【0038】
次に、図6のフローチャートを用いて本実施例における離床判定装置の処理の流れを説明する。まず、就寝者Mまたはオペレータ等はタッチパネル21を操作し、処理装置10を離床判定モードに切り替える。振動検出閾値設定モードに移行した処理装置10は、制御部11を介して各機能部に対して離床判定処理を行うように指示を送る。
【0039】
制御部11からの指示を受けた出力信号取得部12は、振動センサ1aからの出力信号を取得し、取得した時刻順に一時的にメモリ(図示せず)に記憶する(#11)。一時的に記憶した出力信号の長さが設定されている判定期間に達すると(#12のYes分岐)、出力信号取得部12から第1判定部13および生体情報算出部14に対してその旨が通知される。なお、本実施形態では判定期間を1分に設定している。すなわち、出力信号取得部12は、1分間分の出力信号が蓄積された時点で第1判定部13および生体情報算出部14に対する通知を行う。
【0040】
出力信号取得部12から通知を受けた第1判定部13は、メモリに記憶された出力信号に基づいて就寝者Mが在床状態であるか離床状態であるかを1次的に判定する(#13)。具体的には、図7に示すフローチャートの処理が行われる。
【0041】
まず、第1判定部13は、初期化として非検出時間を0リセットする(#21)。次に、第1判定部13は、判定期間を複数の期間に区分けする。この期間は本発明の第1の単位時間の一例であり、第1単位時間と称する。本実施形態では、第1単位時間を1秒に設定している。次に、各第1単位時間における出力信号の振幅を算出する(#22)。なお、ここでの振幅の求め方は上述した振動検出閾値を算出する際の振幅の求め方と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0042】
本実施例では60個の第1単位時間の振幅が算出されると、第1判定部13は順次一つの振幅を選択し(#23)、その振幅が振動検出閾値TH未満であれば(#24のYes分岐)、非検出時間に第1単位時間、すなわち、1秒を加算する(#25)。一方、その振幅が振動検出閾値TH以上であれば(#24のNo分岐)非検出時間は更新されない。この処理を60個全ての振幅に対して行う(#26)。この処理により算出された非検出時間は、判定期間に属する出力信号のうち振動検出閾値以下となっている部分の総時間を表している。
【0043】
上述の処理が完了すると、第1判定部13は非検出時間と予め設定されている離床判定閾値とを比較し、非検出時間が離床判定閾値以上であれば(#27のYes分岐)、離床状態であると判定する(#28)。一方、非検出時間が離床判定閾値未満であれば(#27のNo分岐)、在床状態であると判定する(#29)。このようにして判定された判定結果は第2判定部15に送られる。なお、離床判定閾値は本実施形態では20秒としているが、判定期間の長さや所望の判定精度に応じて適宜変更可能である。
【0044】
一方、出力信号取得部12から通知を受けた生体情報算出部14は、メモリに記憶された1分間の判定期間分の出力信号に基づいて就寝者Mの生体情報を算出する(#14)。なお、本実施例では第1判定部13の判定結果にかかわらず、生体情報算出部14は生体情報を算出しているが、第1判定部13の判定結果が在床状態であった場合のみ生体情報を算出する構成としても構わない。本実施例では、生体情報算出部14は生体情報として判定期間における心拍数および呼吸数を算出する。算出された生体情報は第2判定部15に送られる。
【0045】
第1判定部13からの判定結果と生体情報算出部14により算出された生体情報を取得した第2判定部15は、これらの情報に基づいて第1判定部13の判定結果の再判定を行う。具体的には、第1判定部13の判定結果が離床状態であれば(#15のYes分岐)、第2判定部15は再判定を行わずに、第2判定部15は第1判定部13の判定結果をそのまま制御部11に送る(#18)。一方、第1判定部13の判定結果が在床状態であれば(#15のNo分岐)、生体情報とその生体情報に対応する閾値を比較し(#16)、生体情報が閾値未満であれば(#16のYes分岐)、判定結果を離床に変更(再判定)する(#17)。一方、生体情報が閾値以上であれば(#16のNo分岐)、は第1判定部13の判定結果をそのまま制御部11に送る(#18)。生体情報に対する閾値は、一般的な人が有する生体情報よりも小さな値を設定しておけばよい。例えば、心拍数であれば35、呼吸数であれば10に設定する。
【0046】
なお、本実施例のように複数の生体情報を用いた場合には生体情報と閾値との比較結果が生体情報毎に異なる場合が生じる。例えば、心拍数は閾値よりも大きいが、呼吸数は閾値よりも小さい場合が生じ得る。このような場合には、一つの生体情報が閾値未満であれば#16の処理をYesに分岐させることもできるし、全ての生体情報が閾値未満の場合のみ#16の処理をYesに分岐させることもできる。本実施例では、後者を採用する。
【0047】
この処理を終了指示が行われるまで繰り返す(#19)。したがって、1分間の判定期間毎に上記の処理が実行され、制御部11は1分毎に在床状態もしくは離床状態であるかの判定結果を取得することとなる。なお、一の判定期間についての処理が完了すると、メモリに一次記憶されている出力信号は消去される。
【0048】
このように、本実施例における離床判定装置によれば、振動センサ1aからの出力信号に基づいて在床状態/離床状態が判定されるが、生体情報を用いてその判定結果を再判定することにより、判定結果の精度を向上させることができる。
【実施例2】
【0049】
上述したように、第1判定部13や第2判定部15は逐次入力される出力信号を判定期間に区切り、各判定期間における就寝者の在床状態/離床状態の判定を行うものである。そのため、他の判定期間の誤判定の影響を受けずに判定を行えるという利点がある。しかし、その一方、誤判定があると長時間にわたる判定結果を集計する場合等には好ましくない。そこで、本実施例における離床判定装置は、実施例1の離床判定装置の判定結果を再判定する機能を備えている。
【0050】
図8に示すように、本実施例における離床判定装置は、実施例1の機能部に加えて、第2判定部15の判定結果を再判定する第3判定部17を備えている。また、生体情報算出部14はさらに就寝者Mの体動数を算出する機能を有している。なお、体動とは寝返り等の大きな体の動きの総称である。
【0051】
第3判定部17は、複数の判定期間の在床/離床状態の判定結果およびそれらの判定期間の生体情報に基づいて、それらの判定期間の判定結果を再判定する機能を有している。具体的には、再判定の対象となっている判定期間(以下、再判定期間と称する)の判定結果が在床状態であり、その直前の判定期間(以下、直前判定期間と称する)の判定結果が離床状態であり、再判定期間の生体情報の値が所定値以下であれば、再判定期間の判定結果を離床状態に変更する。
【0052】
第3判定部17は少なくとも2つの判定期間における判定結果があれば動作可能である。したがって、実施例1の処理のうち第2判定部15の後段に組み込むこともできるし、一連の判定処理が完了した後に、独立して処理することもできる。ここでは、実施例1の処理とは独立して、特定のタイミングで動作する場合を説明する。なお、特定のタイミングは、例えば、1時間に一度、離床判定処理の終了指示がなされた時点等、適宜変更可能である。
【0053】
図9は、第3判定部17の処理の流れを表すフローチャートである。なお、この処理に先立ち、メモリには複数の判定期間についての判定結果と生体情報とが記憶されているものとする。また、以下の説明では、判定期間数をT、i番目の判定期間の判定結果および生体情報をres[i]、inf[i]と表記する。
【0054】
第3判定部17は処理を開始すると、初期化として制御変数iに2を設定する(#31)。なお、i番目の判定期間が再判定期間であり、i−1番目の判定期間が直前判定期間である。第3判定部17は、再判定期間の判定結果としてres[i]をメモリから取出し、その判定結果が在床状態であれば(#32のYes分岐)、直前判定期間の判定結果としてres[i−1]をメモリから取り出す。直前判定期間の判定結果が離床状態であれば(#33のYes分岐)、さらに再判定期間の生体情報inf[i]をメモリから抽出する。
【0055】
再判定期間の生体情報が対応する所定の閾値以下であれば(#34のYes分岐)、第3判定部17は再判定期間の判定結果res[i]を離床状態に変更し(#35)、メモリの内容を更新する。
【0056】
なお、本実施例の生体情報算出部14は拍動数、呼吸数に加えて体動数を算出することができる。したがって#24の判定はこれらの生体情報を用いることができるが、本実施例では体動数を用い、その閾値を0に設定している。当然ながら、他の生体情報を用いて判定しても構わないし、複数の生体情報を組み合わせて判定しても構わない。なお、拍動数、呼吸数を用いて判定を行う場合には、第1判定部の閾値よりも小さく設定した閾値を用いればよい。
【0057】
そして、制御変数iに2を加算する(#36)。本実施例では、再判定の連鎖を防止するために、判定結果が変更された再判定期間が次の直前判定期間とならないようにしているが、制御変数iに1を加算する構成としても構わない。
【0058】
一方、上記の条件のいずれかが満たされない場合(#32のNo分岐、#33のNo分岐、#34のNo分岐)、制御変数iに1を加算する(#37)。
【0059】
そして、制御変数iと判定期間数Tとを比較し(#38)、未処理の判定期間が存在すれば(#38のYes分岐)、処理を#32に移行し、上述の処理を繰り返す。
【0060】
このように、本実施例における離床判定装置では、再判定期間における生体情報と再判定期間の直前の直前判定期間の判定結果とに基づいて、再判定期間における判定結果を再判定することにより、判定精度を向上させている。
【実施例3】
【0061】
本実施例における離床判定装置は、図10に示すように振動検知装置1が8つの振動センサ1aを備えている点において実施例1の構成と異なっている。したがって、本実施例では振動検知部1から処理装置10に対して8チャネルの信号系が形成されている。また、出力信号取得部12から、第1判定部13に対しては4チャネル、生体情報算出部14に対しては8チャネルの信号系が形成されている。第1判定部13に送るチャネル数を減らしているのは、第1判定部13における演算量を低減し、処理速度を向上させるためである。したがって、十分な処理速度が得られる場合には、第1判定部13に対しても8チャネル分の出力信号を入力しても構わない。なお、本実施例では、図10の8個の振動センサ1aのうち上列4個の振動センサ1aの出力信号を第1判定部13に入力しているが、第1判定部13に入力する出力信号のチャネル数は適宜変更可能であり、また、選択される出力信号も適宜変更可能である。
【0062】
このように、本実施例では複数チャネルの出力信号が用いられているが、全体の処理は実施例1と大きく異ならない。ただし、第1判定部13および生体情報算出部14における処理が実施例1と異なっており、以下に実施例1と異なる点について説明する。
【0063】
まず、複数の振動センサ1aを用いる場合には、それぞれの振動センサ1aのノイズレベルが異なっているおそれがある。そのため、それぞれの振動センサ1aに対応する振動検出閾値THを求める必要がある。具体的には、それぞれの振動センサ1aからの出力信号に対して図3のフローチャートの処理を施して、それぞれの振動センサ1aに対する振動検出閾値THを設定する。
【0064】
次に、図11のフローチャートを用いて第1判定部13の処理の流れを説明する。まず、第1判定部13は、初期化として非検出時間を0リセットする(#41)。次に、第1判定部13は、判定期間を複数の期間(第1単位時間)に区分けし、各第1単位時間におけるそれぞれの出力信号の振幅を算出する(#42)。すなわち、各第1単位時間において各チャネルの振幅が算出される。本実施例では4チャネルの出力信号が使用されているため、各第1単位時間について4つの振幅が得られることとなる。
【0065】
全ての第1単位時間の振幅を算出すると、第1判定部13は一つの第1単位時間を選択し、(#43)、その第1単位時間の全ての振幅が対応する振動検出閾値TH未満であれば(#44のYes分岐)、非検出時間に第1単位時間、すなわち、1秒を加算する(#45)。一方、振動検出閾値TH以上の振幅が1つでもあれば(#44のNo分岐)、非検出時間は更新されない。この処理を60個全ての第1単位時間に対して行う(#46)。
【0066】
上述の処理が完了すると、第1判定部13は非検出時間と予め設定されている離床判定閾値とを比較し、非検出時間が離床判定閾値以上であれば(#47のYes分岐)、離床状態であると判定する(#48)。一方、非検出時間が離床判定閾値未満であれば(#47のNo分岐)、在床状態であると判定する(#49)。
【0067】
このように、本実施例では、各第1単位時間における全ての出力信号の振幅が対応する振動検出閾値TH以下となった場合に非検出時間を更新することにより、非検出時間の算出精度を高めている。例えば、就寝者と振動検知部との位置関係が良好でなく、一部の振動検知部のみでしか就寝者に起因する振動を検知できない場合であっても、正確に非検出時間を算出することができる。
【0068】
一方、生体情報算出部14には8チャネルの出力信号が入力されているが、本実施例では1の出力信号を選択し、その出力信号から生体情報を算出する構成としている。そのため、本実施例の生体情報算出部14は、実施例1の生体情報算出部14の前段に出力信号を選択する機能部を付加するだけで構成することができる。また、本実施例の生体情報算出部14の出力は実施例1と同様であるため、生体情報算出部14の後段の第2判定部は実施例1と同様の構成とすることができる。なお、生体情報を算出するための出力信号は、例えば、判定期間における振幅の平均値が最大のものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、就寝時等における人の生態情報を測定する生体情報測定装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
M:就寝者
1a:振動検知部(振動センサ)
12:出力信号取得部
13:第1判定部
14:生体情報算出部
15:第2判定部
16:閾値設定部
17:第3判定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
在床した就寝者により生じる振動を検知可能に設置され、当該振動に応じた出力信号を出力する振動検知部と、
判定期間内の前記出力信号が振動検出閾値以下となる時間の総和である非検出時間を算出し、当該非検出時間の長さに応じて当該判定期間において前記就寝者が在床状態または離床状態であると判定する第1判定部と、
前記出力信号に基づいて前記就寝者の心臓の拍動数と呼吸数との少なくとも一方を示す生体情報を算出する生体情報算出部と、
前記第1判定部により在床状態と判定され、かつ、前記生体情報算出部により算出された前記判定期間における少なくとも一の生体情報の値が対応する閾値以下の場合に、当該判定期間において前記就寝者が離床状態であると判定する第2判定部と、を備えた離床判定装置。
【請求項2】
前記第1判定部は、前記判定期間を複数の第1の単位時間に区切るとともに当該第1の単位時間毎の前記出力信号の最大振幅を求め、前記振動検出閾値以下となる前記最大振幅がある毎に前記非検出時間に前記第1の単位時間を加算する請求項1記載の離床判定装置。
【請求項3】
前記生体情報算出部は前記生体情報としてさらに前記就寝者の体動数を算出し、
連続して設定された2つの前記判定期間のうち、先の前記判定期間における判定結果が離床状態であり、後の前記判定期間における判定結果が在床状態であり、かつ、当該後の判定期間における少なくとも一の前記生体情報の値が対応する閾値以下の場合に、当該後の判定期間において前記就寝者が離床状態であると判定する第3判定部を備えた請求項1または2記載の離床判定装置。
【請求項4】
複数の前記振動検知部を備え、
前記第1判定部は、全ての前記振動検知部の前記出力信号が前記振動検出閾値以下となった時間に基づいて前記非検出時間を算出する請求項1から3のいずれか一項に記載の離床判定装置。
【請求項5】
前記就寝者が離床した状態で得られた前記出力信号の第2の単位時間毎の最大振幅の平均算出期間における平均値を求め、当該平均算出期間内の当該最大振幅のうち、当該平均値からの偏差が所定値以下である前記最大振幅の平均値に基づいて前記振動検出閾値を決定する閾値決定部を備えた請求項1から4のいずれか一項記載の離床判定装置。
【請求項1】
在床した就寝者により生じる振動を検知可能に設置され、当該振動に応じた出力信号を出力する振動検知部と、
判定期間内の前記出力信号が振動検出閾値以下となる時間の総和である非検出時間を算出し、当該非検出時間の長さに応じて当該判定期間において前記就寝者が在床状態または離床状態であると判定する第1判定部と、
前記出力信号に基づいて前記就寝者の心臓の拍動数と呼吸数との少なくとも一方を示す生体情報を算出する生体情報算出部と、
前記第1判定部により在床状態と判定され、かつ、前記生体情報算出部により算出された前記判定期間における少なくとも一の生体情報の値が対応する閾値以下の場合に、当該判定期間において前記就寝者が離床状態であると判定する第2判定部と、を備えた離床判定装置。
【請求項2】
前記第1判定部は、前記判定期間を複数の第1の単位時間に区切るとともに当該第1の単位時間毎の前記出力信号の最大振幅を求め、前記振動検出閾値以下となる前記最大振幅がある毎に前記非検出時間に前記第1の単位時間を加算する請求項1記載の離床判定装置。
【請求項3】
前記生体情報算出部は前記生体情報としてさらに前記就寝者の体動数を算出し、
連続して設定された2つの前記判定期間のうち、先の前記判定期間における判定結果が離床状態であり、後の前記判定期間における判定結果が在床状態であり、かつ、当該後の判定期間における少なくとも一の前記生体情報の値が対応する閾値以下の場合に、当該後の判定期間において前記就寝者が離床状態であると判定する第3判定部を備えた請求項1または2記載の離床判定装置。
【請求項4】
複数の前記振動検知部を備え、
前記第1判定部は、全ての前記振動検知部の前記出力信号が前記振動検出閾値以下となった時間に基づいて前記非検出時間を算出する請求項1から3のいずれか一項に記載の離床判定装置。
【請求項5】
前記就寝者が離床した状態で得られた前記出力信号の第2の単位時間毎の最大振幅の平均算出期間における平均値を求め、当該平均算出期間内の当該最大振幅のうち、当該平均値からの偏差が所定値以下である前記最大振幅の平均値に基づいて前記振動検出閾値を決定する閾値決定部を備えた請求項1から4のいずれか一項記載の離床判定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−165950(P2012−165950A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30814(P2011−30814)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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