説明

離間距離調整装置およびこれを用いた搬送装置

【課題】二つの部材間の離間距離調整作業の作業性向上を図る。
【解決手段】レベリング装置3は、ユニット化されたアジャスター33、スペーサ34を有する。アジャスター33において、スリーブ331は、レール2の貫通穴23に挿入される六角穴付ボルト32用のネジ穴部331Aが形成された雄ネジ部331D、ベース1のT字状溝11に挿入されるTボルト31用のネジ穴部331B、バネ332を受けるフランジ331Cを有し、六角穴付止めネジ334はスリーブ331に対して回転不能にネジ穴部331A内に固定され、ナット333は雄ネジ部331Dに締結されてバネ332に接触し、フランジ331Cとの間でバネ332をプリロードする。スペーサ34は、ナット座面−雄ネジ先端の間隔より深く、雄ネジ部331Dに被せられてバネ332に支持された状態でレール2を支持し、かつネジ穴部331Aをレール2の貫通穴23に露出する開口341を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離間距離調整技術に関し、特に、搬送物を浮上させて搬送する浮上搬送装置に好適なレベリング装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットディスプレイパネル(FDP)に用いられる基板等を搬送面から浮上させて搬送する浮上搬送装置として、特許文献1記載の基板搬送装置が知られている。
【0003】
この浮上搬送装置は、配列された複数の浮上ブロックの搬送面から圧縮空気を噴出させることによって搬送対象の基板を浮上させながら、この基板を搬送方向に搬送する。ここで、各浮上ブロックの搬送面の高さおよび平面度を調整可能とするため、各浮上ブロックは個別の可動プレート上にネジで固定されており、これらの可動プレートと固定プレートとの間隔がそれぞれ3点で調整できるようになっている。
【0004】
具体的には、浮上ブロックの底部両側からはり出す可動プレートには合計3ケ所に雌ネジが切られており、固定プレートには、各可動プレートの雌ネジに対向する位置に、それらの雌ネジとはピッチの異なる雌ネジが切られている。そして、可動プレートの雌ネジと固定プレートの雌ネジとにかみあう雄ネジ部を有する調整ネジが、可動プレートと固定プレートとの間に介在するバネ内に挿入された状態で、対向する各組の雌ネジに締結されている。作業者は、隣り合う浮上ブロックの間に工具を差し入れて調整ネジを回転させることにより、調整ネジの位置における可動プレートと固定プレートとの間隔を、両プレートの雌ネジのピッチ差分に相当する距離ずつ増減させ、調節することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−229258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1記載の基板搬送装置においては、可動プレートを固定プレートに取り付ける際、作業者は、可動プレートの各雌ネジにねじ込んだ調整ネジにそれぞれバネを挿入し、これらのバネが抜け落ちないように保持しながら、各調整ネジの先端を、固定プレートの対応雌ネジに位置付ける必要がある。このため、作業性がよくない。
【0007】
また、作業者が調整ネジの締め・緩め作業を行うための空間を浮上ブロックの両側に確保しておく必要があるため、隣り合う浮上ブロックの間隔をさらに狭くしたり、隣り合う浮上ブロックを密着させたりすることができない。このため、隣り合う浮上ブロックの隙間位置で、搬送対象に良好な状態で圧縮空気を吹き付けることができず、搬送対象の浮上状態が不安定になる可能性がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、二つの部材間の離間距離調整作業の作業性を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、離間距離調整装置において、ベース部材と支持対象物との間隔を調整するための弾性体等を含む複数の構成部品をユニット化可能な構造とすると共に、支持対象の取付け、およびベース部材と支持対象物との離間距離調整を共通のネジに対する作業で行えるようした。
【0010】
例えば、本発明の第一の態様は、
ベース部材と支持対象物との間に介在し、前記ベース部材と前記支持対象物との間隔を調整可能に前記支持対象物を前記ベース部材に固定する離間距離調整装置であって、
外面にフランジ部が形成されたスリーブ本体を有するスリーブと、
前記フランジ部に一方の端部が接触すると共に前記スリーブ本体を囲むように配され、前記スリーブ本体の軸方向に伸縮する弾性体と、
前記弾性体を前記フランジ部との間で前記スリーブ本体の軸方向に圧縮させるプリロードナットと、
前記スリーブ本体の一方の端部側に配され、当該スリーブ本体と前記ベース部材とを固定する固定手段と、
前記スリーブ本体の他方の端部側に配され、前記支持対象物と当該スリーブ本体とを固定すると共に、当該支持対象物と前記ベース部材との間隔を調整する固定調整手段と、
前記スリーブ本体の他方の端部側に配され、前記支持対象物と前記弾性体との間に介在して、前記弾性体の反力により前記支持対象物を支持するスペーサと、を具備する。
【0011】
また、本発明の第二の態様は、
ベース部材と支持対象物との間に介在し、前記ベース部材と前記支持対象物との間隔を調整可能に前記支持対象物を前記ベース部材に固定する離間距離調整装置であって、
外面にフランジ部が形成されたスリーブ本体を有するスリーブと、
前記フランジ部に一方の端部を接触させると共に前記スリーブ本体を囲むように配され、前記スリーブ本体の軸方向に伸縮する弾性体と、
前記弾性体を前記フランジ部との間で前記スリーブ本体の軸方向に圧縮させるプリロードナットと、
前記スリーブ本体の一方の端部側に配され、当該スリーブ本体と前記ベース部材とを固定する固定手段と、
前記スリーブ本体の他方の端部側に配され、前記支持対象物と当該スリーブ本体とを固定すると共に、当該支持対象物と前記ベース部材との間隔を調整する固定調整手段と、
前記スリーブ本体の他方の端部側に配され、前記支持対象物と前記弾性体との間に介在して、前記弾性体の反力により前記支持対象物を支持するスペーサと、を具備し、
前記固定手段として、前記スリーブ本体は、一方の端部側の端面に第四雄ネジ部を有した突起部を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、二つの部材間の離間距離調整作業の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係る浮上搬送装置の搬送台100の概略構成を示す外観図である。
【図2】図2(A)は、図1に示すレベリング装置3のX−Z断面図であり、図2(B)は、図2(A)に示すレベリング装置3に用いられるTボルト31のT頭部311の部分拡大図である。
【図3】図3(A)〜図3(C)は、図1に示すフレーム1へのエアレール2の取付け作業の手順を説明するための断面図である。
【図4】図4(A)〜図4(C)は、図1に示すフレーム1へのエアレール2の取付け作業の手順を説明するための断面図である。
【図5】図5(A)は、図1に示す搬送台100の変形例である搬送台110の概略構成を示す外観図であり、図5(B)は、図5(A)に示すレベリング装置5のアジャスター33の断面図であり、図5(C)は、図5(A)に示すエアレール2の取付け部分のX−Z断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
まず、本実施の形態に係る浮上搬送装置の構成について説明する。
【0016】
本実施の形態に係る浮上搬送装置は、搬送物を搬送面21から浮上させて搬送する搬送台100を備えている。図1に、この搬送台100の概略構成を示し、図2(A)に、この搬送台100に用いられるレベリング装置3の断面を示す。また、図2(B)に、このレベリング装置3に用いられるTボルト31のT頭部311の部分拡大図を示し、図3(B)に、このレベリング装置3に用いられるアジャスター33の断面図を示す。
【0017】
図1に示すように、この搬送台100は、所定の間隔をおいて並べられた2本の角柱状のベースフレーム(例えばアルミフレーム)1と、2本のベースフレーム1の間にかけ渡された板状のエアレール2と、2本のベースフレーム1上でエアレール2を支える4本のレベリング装置3と、を有する。本実施の形態では、2本のベースフレーム1の間に1本のエアレール2がかけ渡された場合を例示しているが、実際には、例えば搬送距離分の長さを有する2本のベースフレーム1の間に、複数本のエアレール2がベースフレーム1の長手方向(図1のY方向)に並べてかけ渡される。
【0018】
2本の夫々のベースフレーム1の上面12A、左側面12B、下面12Cおよび右側面12Dから構成される4つの外面の夫々に、ベースフレーム1の長手方向にT字状溝11が1本ずつ形成されている。各T字状溝11は、図2(B)に示すように、溝縁112から溝底111までの間の位置で溝幅が溝幅s1および溝幅s2(>s1)の二段階の幅を有するT字状の断面形状を有し、各ベースフレーム1の長手方向の一方の端面13から他方の端面14まで連続している。このT字状溝11により、ベースフレーム1の一方の端面13および他方の端面14にはT字状の開口が形成され、前記4つの外面(上面12A、左側面12B、下面12C、右側面12D)の各々にも、一方の端面13から他方の端面14まで連続する溝幅s1の開口が形成される。本実施の形態では、2本の夫々のベースフレーム1として、前記4つの全ての外面に夫々1本ずつのT字状溝が配された4面溝タイプのフレームを使用しているが、これらのベースフレーム1は、少なくとも、エアレール2側に向けられる上面12Aに1本のT字状溝11が形成されたフレームであればよい。
【0019】
エアレール2は、外部からエア供給口(不図示)に供給された圧縮空気を、内部のエア供給路(不図示)を介して、搬送面21の複数のエア吹き出し穴(不図示)から噴出する。このエアレール2の裏面(搬送面21とは反対側の面)24には、エアレール2の長手方向(図1のX方向)に連続した2つの空洞部22が形成されている。各空洞部22は、略長方形の断面形状を有する。また、このエアレール2には、エアレール2の厚さ方向(図1のZ方向)に、搬送面21から空洞部22を介して裏面24に貫通する貫通穴23が空洞部22毎に2つずつあけられている。図2(A)に示すように、この貫通穴23に搬送面21側から挿入される六角穴付きボルト32の座面323を空洞部22の内壁面(底面)25で受けるように、この貫通穴23は、搬送面21から空洞部22の内壁面(底面)25までの領域における直径r1よりも、空洞部22の内壁面(底面)25から裏面24までの領域における直径r2が小さく形成され、六角穴付きボルト32の座面323の直径r3は、直径r1よりも小さく、直径r2よりも大きく形成されている。なお、空洞部22および貫通穴23は、いずれも、エアレール2内部のエア供給路にはつながっていない。本実施の形態では断面略長方形の空洞部22を設けているが、このような空洞部22を設けずに、搬送面21側に大径部、裏面24側に小径部を有する段付き貫通穴を形成してもよい。
【0020】
レベリング装置3は、図2(A)および図2(B)に示すように、ベースフレーム1のT字状溝11に挿入されるTボルト31と、エアレール2の空洞部22に挿入される六角穴付きボルト32と、Tボルト31および六角穴付きボルト32が締結されるアジャスター33と、エアレール2をコイルバネ332を介して支持するためにアジャスター33にかぶせたキャップ型のスペーサ34と、を有する。
【0021】
Tボルト31は、ベースフレーム1のT字状溝11に収まる角型のT頭部311と、ベースフレーム1のT字状溝11からエアレール2側に突き出す第一雄ネジ部312と、を有している。図2(B)に示すように、ベースフレーム1のT字状溝11の溝幅が溝幅s1から溝幅s2に切り替わる位置113から、T字状溝11の溝底の内壁面111までの距離t3は、後述するアジャスター33をベースフレーム1に固定するために必要なTボルト31の第一雄ネジ部312の締め代分の間隔t2だけ、T頭部311の厚みt4よりも、大きくとられている。
【0022】
六角穴付きボルト32は、エアレール2の空洞部22に収まる六角穴付き頭部321と、エアレール2の貫通穴23からベースフレーム1側に突き出す第二雄ネジ部322と、を有する。
【0023】
アジャスター33は、図3(B)に示すように、スリーブ331と、スリーブ331の外周部に配されたコイルバネ332と、コイルバネ332をプリロードするためのプリロードナット333と、スリーブ331に対して回転不能に埋め込まれた回転操作受付部としての六角穴付き止めネジ334と、を有する。
【0024】
スリーブ331は、軸方向に伸びた円筒状のスリーブ本体331Hと、スリーブ本体331Hの一方の端部331F(以下、底面)の外周面に、スリーブ本体331Hの外周面を囲むように配されたコイルバネ332の一方の端面3321と接触する円盤状のフランジ331Cと、を有している。
【0025】
コイルバネ332は、搬送対象の搬送中に受ける荷重(搬送対象、エアレール2等によりレベリング装置1本あたりにかかる荷重、および後述のプリロードナット333によりかけられる荷重等)を安定に支持可能な許容荷重およびばね定数を有している。このような弾性を有しているものであれば、コイルバネ332の代わりに、スリーブ本体331Hの外周部に配されることが可能な形状を有する他の弾性体(ゴム等)を用いてもよい。
【0026】
スリーブ本体331の他方の端部331G(以下、上面)側の外周面には、プリロードナット333を締結するための第三雄ネジ部331Dが形成されている。
【0027】
また、コイルバネ332に囲まれるスリーブ本体331Hの外径寸法r4は、この第三雄ネジ部331Dの外径寸法r5よりも大きくとられている。これにより、スリーブ本体331Hの上面331G側の外周には、フランジ331Cからコイルバネ332の自由高さ(プリロード無し)よりも低い位置(フランジ331Cとの間でコイルバネ332を所定量圧縮したプリロードナット333の座面3331が位置する高さ)に、プリロードナット333の座面3331が接触する座331E(図3(A)および図3(B)を参照)が形成されている。
【0028】
また、スリーブ本体331Hの上面331G側の内周面には、スリーブ本体331Hの軸方向(図1のZ方向)に、六角穴付きボルト32が締結される第一雌ネジ穴部331Aが形成され、底面331F側の内周面には、Tボルト31が締結される第二雌ネジ穴部331Bが第一雌ネジ穴部331Aと同心に形成されている。第一雌ネジ穴部331Aの長さには六角穴付きボルト32の第二雄ネジ部332の長さに対して余裕が設けてあり、六角穴付き止めネジ334は、この第一雌ネジ穴部331Aの一方の端部側(以下、底部331Jと記載)にねじ込まれ、スリーブ331に対して回転不能に固定されている。本実施の形態では、六角穴付き止めネジ334を回転操作受付部として第一雌ネジ穴部331Aの底部331Jに埋め込んでいるが、六角穴付き止めネジ334の代わりに、すりわり溝付き止めネジ、十字溝付き止めネジ等の、工具先端を差し込む穴または溝を有する他の止めネジを回転操作受付部として第一雌ネジ穴部331Aの底部331Jに埋め込んでもよい。また、本実施の形態では、第一雌ネジ穴部331Aの底部331Jにねじ込むことによって六角穴付き止めネジ334をスリーブ本体331Hに固定しているが、例えば第一雌ネジ穴部331Aを止り穴とした閉塞状態にした場合には、この雌ネジ穴部の底に、工具先端を差し込む穴または溝が頭部に形成された止めネジを接着剤で接着してもよいし、工具先端を差し込む穴または溝が頭部に形成されたボルトをねじ込んでもよい。または、回転操作受付部として、この雌ネジ穴部の底に工具先端を差し込む穴または溝を加工してもよい。
【0029】
スペーサ34は、図2(A)に示すように、プリロードナット333とスリーブ本体331Hの上面331G側の外周面に形成された第三雄ネジ部331Dとを覆うようにアジャスター33にかぶせられる。スペーサ34の一方の端面である縁342はコイルバネ332の他方の端面(フランジ331Cに接触している一方の端面3321と反対側の端面)3322に接触しており、スペーサ34の他方の端面343(以下、上面:図4(A)の343)にエアレール2が載せられると、プリロードナット333で圧縮されたコイルバネ332がスペーサ34を介して伝達されるエアレール2の重量によりさらに圧縮される。なお、スペーサ34の縁342は、他の部材を介して間接的にコイルバネ332の他方の端面3322に接触していてもよい。また、スペーサ34は、プリロードナット333の座面3331からスリーブ本体331Hに形成された第三雄ネジ部331Dの先端331Gまでの距離よりも大きな深さ寸法、すなわち、図2(A)に示すように、エアレール2が載せられた状態で、スペーサ34の内側上面(図4(A)の344)とスリーブ331の上面331G(第三雄ネジ部331Dの先端331G)との間に隙間t1が形成される深さ寸法を有している。スペーサ34のエアレール2が載せられる上面343には、スリーブ本体331Hに形成された第一雌ネジ穴部331Aを露出させる開口341が形成されている。六角穴付きボルト32の第二雄ネジ部332は、この開口341を通してスリーブ本体331Hの第一雌ネジ穴部331Aに挿入される。
【0030】
なお、本実施の形態においては、1本のエアレール2を4本のレベリング装置3で支持しているが、必ずしも、このようにする必要はない。エアレール2を安定に支持可能な本数のレベリング装置3を用いればよい。
【0031】
つぎに、エアレール2のベースフレーム1への取付け作業について説明する。図3〜図4に、エアレール2の取付け作業の手順を示す。
【0032】
エアレール2の取付けに必要な本数のアジャスター33をあらかじめ組み立てておく。具体的には、以下の通りである。図3(A)に示すように、コイルバネ332内にスリーブ331を第三雄ネジ部331D側から挿入する。そして、スリーブ本体331Hに形成された第三雄ネジ部331Dにプリロードナット333をねじ込み、スリーブ本体331Hに形成されたフランジ331Cの他方の端面331Iとプリロードナット333の座面3331との間でコイルバネ332を圧縮することによって、コイルバネ332にプリロードをかける。このとき、図3(B)に示すように、プリロードナット333の座面3331がスリーブ331の座331Eに接触するまで第三雄ネジ部331Dにプリロードナット333をねじ込むことによって、エアレール2のベースフレーム1への取付け作業に使用する複数本のレベリング装置3のアジャスター33間における、コイルバネ332にかけたプリロードのバラツキを抑制することができる。
【0033】
一方、2本のベースフレーム1の上面12A側の各T字状溝11には、図3(C)に示すように、それぞれ、2本ずつTボルト31のT頭部311を挿入し、各Tボルト31を、エアレール2の貫通穴23の位置関係に応じた位置に配置する。それから、図4(A)に示すように、これらのTボルト31のT頭部311がT字状溝11内部をスライド可能な程度に、これらのTボルト31の第一雄ネジ部312をそれぞれのアジャスター33の構成部品であるスリーブ331のスリーブ本体331Hの第二雌ネジ穴部331Bに仮締めする。
【0034】
つぎに、図4(A)に示すように、プリロードナット333とスリーブ本体331Hに形成された第三雄ネジ部331Dとを覆うように各アジャスター33にそれぞれスペーサ34をかぶせる。そして、図4(B)に示すように、エアレール2の貫通穴23にスペーサ34の開口341が位置付けられるようにアジャスター33の位置を調整しながら、スペーサ34の上面343にエアレール2を載せる。さらに、エアレール2の貫通穴23に搬送面21側から六角レンチ60を挿入し、この六角レンチ60の先端がアジャスター33の構成部品であるスリーブ331のスリーブ本体331Hに形成された第一雌ネジ穴部331Aの底部331Jに位置する六角穴付き止めネジ334の六角穴3341にはまる位置にエアレール2とアジャスター33とを位置決めする。そして、六角レンチ60で六角穴付き止めネジ334をアジャスター33とともに回転させ、Tボルト31の第一雄ネジ部312をアジャスター33の構成部品であるスリーブ331のスリーブ本体331Hに形成された第二雌ネジ穴部331Bに本締めする。
【0035】
その後、一旦、エアレール2の貫通穴23から六角レンチ60を搬送面21側から抜き出し、図4(C)に示すように、エアレール2の搬送面21の貫通穴23とスペーサ34の開口341とから、六角穴付きボルト32の第二雄ネジ部322の先端をアジャスター33の構成部品であるスリーブ331のスリーブ本体331Hに形成された第一雌ネジ穴部331Aに差し込み、再度、エアレール2の貫通穴23に搬送面21側から六角レンチ60を挿入する。そして、六角レンチ60で六角穴付きボルト32の第二雄ネジ部322をアジャスター33のスリーブ331のスリーブ本体331Hの第一雌ネジ穴部331Aに締結することによって、六角穴付きボルト32でエアレール2とスペーサ34をアジャスター33に共締めする。これにより、スペーサ34で圧縮されたコイルバネ332の復元力でエアレール2が押し上げられるため、六角穴付きボルト32の座面323に空洞部22の内壁面(底面)25が押しあてられて、搬送面21の高さが位置決めされると共にエアレール2をベースフレーム1に固定することができる。さらに、4本のレベリング装置3について、それぞれ、六角穴付きボルト32の締め・緩めでコイルバネ332の圧縮量を増減させ、上述の隙間t1の範囲(図2(A)を参照)でスペーサ34の上面343の高さを微調整することによって、搬送面21のレベリングを行う。
【0036】
以上、本発明の一実施の形態を説明した。
【0037】
本実施の形態に係るレベリング装置3は、ベースフレーム1とエアレール2との間隔を調整するためのスリーブ331、プリロードナット333およびコイルバネ332等を含む複数の構成部品が1本のアジャスター33としてコンパクトにユニット化されているため、作業者は、一部の部品の落下等を気にすることなく片手で簡単に、このアジャスター33の構成部品であるスリーブ331のスリーブ本体331Hの第二雌ネジ穴部331Bを、ベースフレーム1のT字状溝11から突き出したTボルト31の第一雄ネジ部312に上からねじ込むことができる。このため、ベースフレーム1への配置の際に取り扱いやすく、作業性に優れる。そして、このようなアジャスター33を必要な本数だけあらかじめ組み立てておけば、エアレール2の取付け現場における作業効率をさらに向上させることができる。
【0038】
また、アジャスター33にはプリロード済みのコイルバネ332が組み込まれているため、コイルバネ332が自由高さで配置されている場合と比較して少ない回数、六角穴付きボルト32を締めつけるだけで、エアレール2およびスペーサ34をアジャスター33に共締めすることができる。スリーブ本体331Hの上面331G側の外周には、フランジ331Cの他方の端面331Iから所定の間隔離れた位置に座331Eが形成されているため、この座331Eにプリロードナット333の座面3331が接触するまで、スリーブ本体331Hの第三雄ネジ部331Dにプリロードナット333をねじ込むだけで、コイルバネ332を所定量圧縮することができる。すなわち、面倒なプリロード調整を行わなくても、全てのアジャスター33においてコイルバネ332に均等なプリロードをかけておくことができる。
【0039】
また、スペーサ34を介してエアレール2を支持するコイルバネ332の高さを調整する六角穴付きボルト32が、エアレール2の長手方向(図1のX方向)の両側面側(図1の6)ではなく、エアレール2の裏面24側に位置し、この六角穴付きボルト32の締め・緩め作業を行うための貫通穴23がエアレール2の搬送面21から裏面24側に向かってあけられているため、特許文献1記載の基板搬送装置と異なり、調整用の隙間をエアレール2の長手方向(図1のX方向)の両側面側(図1の6)に確保しておく必要がない。したがって、複数のエアレール2を並べた場合、隣り合うエアレール2を密着させる等、複数のエアレール2の間隔寸法を、搬送対象の浮上安定性等を考慮して柔軟に設定することができる。このため、搬送対象をより安定に浮上させて搬送することができる。
【0040】
また、スペーサ34がプリロードナット333およびスリーブ本体331Hの第三雄ネジ部331Dを覆っているため、六角穴付きボルト32の締め・緩め作業中に、エアレール2の裏面24がプリロードナット333またはスリーブ本体331Hの第三雄ネジ部331Dによって傷つくことを防止することができる。
【0041】
さらに、Tボルト31の締め作業を行うための貫通穴23を、この六角穴付きボルト32の締め・緩め作業を行うための貫通穴23としても利用しているため、ベースフレーム1上にエアレール2を取り付ける際、作業者は、1本のレベリング装置3につき、Tボルト31の本締め作業から、エアレール2およびスペーサ34のアジャスター33への共締め作業までの一連の作業を、搬送面21上の一箇所(貫通穴23)へのアクセスにより一軸で行うことができる。このため、作業性がよい。
【0042】
なお、本実施の形態では、2本のベースフレーム1上にエアレール2が設置されているが、図5(A)に示す搬送台110のように、1枚のベースプレート4上にエアレール2が設置されてもよい。ここで、ベースプレート4の上面(エアレール2側に向ける面)41には、エアレール2の貫通穴23に対向する第三雌ネジ穴部42が貫通穴23毎に形成されている。このベースプレート4上でエアレール2を支えるレベリング装置5は、図2に示すレベリング装置3と異なり、六角穴付きボルト32および六角穴付き止めネジ334を備えておらず、またスリーブ51も、図2に示すレベリング装置3のスリーブ331とは異なる形状をしている。このスリーブ51の底面512には、図5(B)および図5(C)に示すように、レベリング装置3のTボルト31が締結する第二雌ネジ穴部331Bの代わりに、ベースプレート4上の第三雌ネジ穴部42に締結する第四雄ネジ部511が形成されている。このスリーブ51のその他の形状は、図2に示すレベリング装置3のスリーブ331と同様である。また、レベリング装置5のその他の構成も、図2に示すレベリング装置3と同様である。
【0043】
図2に示すレベリング装置3をベースフレーム1へ取り付ける場合のアジャスター33をベースフレーム1に固定する工程において、ベースフレーム1のT字状溝11に挿入されたTボルト31の、アジャスター33の構成部品であるスリーブ331のスリーブ本体331Hの第二雌ネジ穴部331Bへの仮締めと、六角穴付き止めネジ334を利用した本締めとが必要であった。これに対して、レベリング装置5をベースプレート4へ取り付ける場合、スリーブ51の第四雄ネジ部511の、ベースプレート4の第三雌ネジ穴部42への本締めのみでよい。その他は、図2に示すレベリング装置3を用いた場合と同様な手順でエアレール2を設置することができる。
【0044】
また、本実施の形態において、キャップ型のスペーサ34を用いているが、スペーサ34は、図2に示すキャップ型のものに限定されない。コイルバネ332の他方の端面3322とエアレール2との間隔を、スリーブ本体331Hの座331E(プリロードナット333の座面3331)と第三雄ネジ部331Dの先端331Gとの間隔よりも大きな寸法に保つスペーサとしての機能を有するものであって、かつスリーブ本体331Hの第一雌ネジ穴部331Aをエアレール2の貫通穴23に露出させるものであればよい。
【0045】
また、本実施の形態では、搬送台100、110を有する浮上搬送装置への適用を例に説明したが、本発明は、レベリング対象面を有するテーブルがベース材に固定されている他の装置にも適用可能である。
【0046】
また、本実施の形態では、ベースフレーム1上でエアレール2を支持し、ベースフレーム1に対するエアレール2の高さを調整するレベリング装置3を説明したが、本発明は、二つの部材間の離間距離を調整する離間距離調整装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0047】
1:ベースフレーム、2:エアレール、3:レベリング装置、4:ベースプレート、5:レベリング装置、6:エアレールの両側面側、11:T字状溝、12A,12B,12C,12D:ベースフレームの外面、13,14:ベースフレームの端面、21:搬送面、22:空洞部、23:貫通穴、24:エアレールの裏面、25:空洞部の内壁面、31:Tボルト、311:T頭部、312:第一雄ネジ部、32:六角穴付きボルト、33:アジャスター、34:スペーサ、41:ベースプレート上面、42:第三雌ネジ穴部、51:スリーブ、60:六角レンチ、100、110:搬送台、111:T字状溝の内壁面(溝底)、112:T字状溝の溝縁、321:頭部、322:第二雄ネジ部、323:座面、331:スリーブ、331A:第一雌ネジ穴部、331B:第二雌ネジ穴部、331C:フランジ、331D:第三雄ネジ部、331E:座、331F:スリーブの底面、331G:スリーブの上面(第三雄ネジ部の先端)、331H:スリーブ本体、331I:フランジの端面、331J:第二雌ネジ穴部の底部、332:コイルバネ、333:プリロードナット、334:六角穴付き止めネジ(回転操作受付部)、341:開口、342:スペーサの縁、343:スペーサの上面、511:第四雄ネジ部、512:スリーブの底面、3111:TボルトのT頭部の底面、3321、3322:コイルバネの端面、3331:座面、3341:六角穴付き止めネジの六角穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と支持対象物との間に介在し、前記ベース部材と前記支持対象物との間隔を調整可能に前記支持対象物を前記ベース部材に固定する離間距離調整装置であって、
外面にフランジ部が形成されたスリーブ本体を有するスリーブと、
前記フランジ部に一方の端部が接触すると共に前記スリーブ本体を囲むように配され、前記スリーブ本体の軸方向に伸縮する弾性体と、
前記弾性体を前記フランジ部との間で前記スリーブ本体の軸方向に圧縮させるプリロードナットと、
前記スリーブ本体の一方の端部側に配され、当該スリーブ本体と前記ベース部材とを固定する固定手段と、
前記スリーブ本体の他方の端部側に配され、前記支持対象物と当該スリーブ本体とを固定すると共に、当該支持対象物と前記ベース部材との間隔を調整する固定調整手段と、
前記スリーブ本体の他方の端部側に配され、前記支持対象物と前記弾性体との間に介在して、前記弾性体の反力により前記支持対象物を支持するスペーサと、
を具備する離間距離調整装置。
【請求項2】
前記スリーブ本体は、一方の端部側に第一雌ネジ穴部を有する請求項1に記載の離間距離調整装置。
【請求項3】
前記固定手段として、前記スリーブ本体の一方の端部側の第一雌ネジ穴部に螺合して当該スリーブ本体を前記ベース部材に固定するための第一雄ネジ部を有したTボルトを具備する請求項2に記載の離間距離調整装置。
【請求項4】
ベース部材と支持対象物との間に介在し、前記ベース部材と前記支持対象物との間隔を調整可能に前記支持対象物を前記ベース部材に固定する離間距離調整装置であって、
外面にフランジ部が形成されたスリーブ本体を有するスリーブと、
前記フランジ部に一方の端部を接触させると共に前記スリーブ本体を囲むように配され、前記スリーブ本体の軸方向に伸縮する弾性体と、
前記弾性体を前記フランジ部との間で前記スリーブ本体の軸方向に圧縮させるプリロードナットと、
前記スリーブ本体の一方の端部側に配され、当該スリーブ本体と前記ベース部材とを固定する固定手段と、
前記スリーブ本体の他方の端部側に配され、前記支持対象物と当該スリーブ本体とを固定すると共に、当該支持対象物と前記ベース部材との間隔を調整する固定調整手段と、
前記スリーブ本体の他方の端部側に配され、前記支持対象物と前記弾性体との間に介在して、前記弾性体の反力により前記支持対象物を支持するスペーサと、を具備し、
前記固定手段として、前記スリーブ本体は、一方の端部側の端面に第四雄ネジ部を有した突起部を有する離間距離調整装置。
【請求項5】
前記スリーブ本体は、他方の端部側に第二雌ネジ穴部を有し、
前記スペーサは、前記スリーブ本体の第二雌ネジ穴部に対向する貫通穴を有する請求項1から4の何れか一項に記載の離間距離調整装置。
【請求項6】
前記固定調整手段として、前記スペーサの貫通穴を介して、前記スリーブ本体の他方の端部側の前記第二雌ネジ穴部に螺合して当該スリーブ本体と前記支持対象物とを固定すると共に、当該支持対象物と前記ベース部材との間隔を調整する第二雄ネジ部を有する六角穴付きボルトを具備する請求項5に記載の離間距離調整装置。
【請求項7】
前記スリーブ本体は、他方の端部側の外周部に前記プリロードナットと螺合して前記弾性体を押圧する第三雄ネジ部を有する請求項1から6の何れか一項に記載のレベリング固定装置。
【請求項8】
前記スリーブ本体は、第二雌ネジ穴部の一方の端部側に工具と係合することにより当該スリーブ本体を軸心周り方向に回転させるための回転操作受付部を具備する請求項5または6に記載の離間距離調整装置。
【請求項9】
前記スリーブ本体は、前記フランジ部からの距離が前記弾性体の自由高さよりも短い位置で前記プリロードナットの座面に接触する座を有する請求項1から8の何れか一項に記載の離間距離調整装置。
【請求項10】
前記スペーサは、内部に凹部を有し、一方の端面が前記弾性体の他方の端部に接触し、他方の端面の外面が前記支持対象物に接触し、他方の端面が前記スリーブ本体の他方の端面より前記支持対象物側に配されている請求項1から9の何れか一項に記載の離間距離調整装置。
【請求項11】
前記スペーサの貫通穴の他方の端面側の開口部は、前記スリーブ本体の第二雌ネジ穴部と同心の穴を有する請求項5または6に記載の離間距離調整装置。
【請求項12】
搬送面から搬送物を浮上させる浮上搬送装置であって、
前記ベース部材と、
前記搬送面を備え、当該搬送面に貫通穴が形成されたエアレールと、
当該エアレールの貫通穴から前記固定調整手段が露出するように、当該エアレールを前記支持対象物として支持する請求項1から11の何れか一項に記載の離間距離調整装置と、
を有する浮上搬送装置。
【請求項13】
搬送面から搬送物を浮上させる浮上搬送装置であって、
前記ベース部材と、
前記搬送面を備え、当該搬送面に貫通穴が形成されたエアレールと、
当該エアレールの貫通穴から前記固定調整手段が露出するように、当該エアレールを前記支持対象物として支持する請求項3に記載の離間距離調整装置と、を備え、
前記ベース部材は、当該ベース部材の長手方向に直交する一方並びに他方の端面にて開口し、当該一方の端面から他方の端面まで連続すると共に前記支持対象物側に開口し、前記Tボルトが挿入されるT字状溝を有する浮上搬送装置。
【請求項14】
前記ベース部材は、前記支持対象物に対向する面に、前記スリーブ本体の前記第四雄ネジ部が螺合する第三雌ネジ穴部を有した請求項4から11の何れか一項に記載の離間距離調整装置を有する浮上搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−162364(P2012−162364A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24336(P2011−24336)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)