説明

難分解性リグニン含有植物粉砕微粉のリグニン分解糖化方法

【課題】 本発明は、難分解性リグニン含有植物のリグノセルロース物質から酸化加水分解し単糖類を、低コストで容易に生成し、アルコール中間体原料とするとともに、主要加水分解溶液を再利用する難分解性リグニン分解糖化方法を提供する。
【解決の手段】 オルトリン酸溶液に酸化剤の過酸化水素を用い、強酸性領域において酸化と加水分解活性力の高い、パイナップル酵素入り天然ミネラル溶液を触媒併用することによって、低温で容易に難分解性リグニンを酸化加水分解し、単糖類のグルコース、キシロース、マンノースが生成する難分解性リグニン分解糖化方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術の分野】
【0001】
本発明は、難分解性リグニン含有植物粉砕微粉を、オルトリン酸と過酸化水素、パイナップル酵素によって、酸化加水分解して単糖類のグルコース、キシロース、マンノースのアルコール中間体原料を生成させる難分解性リグニン分解糖化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リグノセルロースは、高等植物の草木樹の構成成分としてセルロース、ヘミセルロース、リグニンを含んでいる。そして、木質繊維や木粉のようなリグニンを含んでおりグノセルロース構造性多糖のセルロースは35〜50%、ヘミセルロースは20〜35%、芳香族化合物の重合体である難分解性リグニンは15〜35%から構成される生体高分子の高次網目構造を形成した無定型結合体である。その構造は複雑で、リグニンはフェニルプロパノイドを起源とするフェニルプロパンが複数縮合化合物の誘導体であり、ポリフェノールの一種である。その構造は、現在、解明されていない。このように生体高分子構造を形成しているため、草木樹のセルロース成分は比較的容易に単分子化されるが、リグニン成分は分解することが極めて困難で、リグニンの分解技術は取り残された多くの課題がある。
【0003】
それ故、従来、リグニン含有植物からグルコースを製造する為には、リグニン成分を分解したセルロースの糖化方法が一般に採用されていた。(特許文献1)
また、リグニン系物質を食塩と無機酸の電解溶液で電気分解することによるリグニン系物質の分解方法が(特許文献2)に提案されている。
次に、セルロースの糖化方法として、高圧容器を用いて過酸化水素とリン酸アルミニウムを用いて、高温下で熱水処理する提案が(特許文献3)に開示されている。
更に、セルロース物質に二酸化チタンを添加し紫外線照射した後、リン酸溶液を用いる単糖製造方法が(特許文献4)に開示されている。
【0004】
しかしながら、上記、特許文献2に記載の方法は、食塩水の電気分解装置により次亜塩素酸生成による酸化加水分解反応を用いたもので、電極板にセルロース等の 夾雑物が付着する為、分解効率の低下、次亜塩素酸とともに有害な塩素ガス対策など、環境問題が高コストとなる欠点がある。
また、特許文献3に記載の方法は、高圧装置容器の中で高温245℃下の亜臨界領域で過酸化水素水やオゾンを含有するリン酸アルミニウム熱水を用いたセルロースとリグニンを糖化方法で、高温高圧下における臨界状態の酸化加水分解反応を用いたもので、高圧装置作成に多大なるコストを必要とする他、リグニン製造量が制限される。また安全性と高コストという課題があることに着目すべきである。
次に、特許文献4に記載する方法は、セルロースを二酸化チタン含有のリン酸溶液中で、紫外線照射して、二酸化チタンの光触媒活性により生成した活性酸素の酸化作用を、セルロースの酸化加水分解反応に応用したもので、紫外線照射装置を要する設備負担が増大する課題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2006−255676号公報
【特許文献2】特開2000−144592号公報
【特許文献3】特開2007−74992号公報
【特許文献4】特許第4134250号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(本発明の目的)
本発明者らは、上記したような種々の難分解性リグニン系物質の分解技術を検討した結果、何れも高コスト安全性、分解効率等多くの問題点を包含していることから、低コストで、環境に優しく、且つ、難分解性リグニン系物質を分解処理時の安全性を考慮して、高効率で分解が可能な技術の開発が必要であることの結論に至った。
【0007】
本発明の課題の達成に向けて更なる検討を行ったところ、これまで難分解性ハロゲンの湿式分解方法にオルトリン酸溶液と過酸化水素及びパイナップル酵素入りミネラル抽出液の併用による酸化加水分解反応、特願2009−168236及び特願2008−293888に提案した技術を利用し、上記した難分解性リグニン含有籾殻微粉の溶解に試みたところ、溶解液中にグルコース、キシロース、マンノース等が生成することができ、しかも特殊な装置を必要としないため、難分解性リグニンの分解糖化方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、難分解性リグニン含有籾殻微粉の少量をガラスビーカーに入れオルトリン酸とともに過酸化水素水およびパイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液を注入し、木製割り箸で攪拌したところ、多量のガスが発生し、短時間で籾殻微粉残分は黒化し、残渣は3分の1となり溶解したことが分かった。
【0009】
リグニン含有植物を酸化分解する上記の従来技術は、酸化剤として次亜塩素酸や亜臨界状態での酸化物質、また、二酸化チタンの光触媒の酸化作用等で、酸化反応を応用した手法であるが、開放容器中で酸化剤として過酸化水素を含有したオルトリン酸溶液で酸化加水分解させて、単分子化して効率的にグルコース、キシロース、マンノース等を生成させる過酸化水素含有リン酸溶液を用いる本発明とは基本的に異なる。
【0010】
本発明は、過酸化水素含有リン酸溶液とパイナップル酵素入りミネラル抽出液の混合液に、難分解性リグニン含有植物粉砕微粉を投入しつつ、開放状態で加温酸化加水分解する難分解性リグニン分解糖化方法として、設備負担が少なく、省エネルギーで危険性が少なく、且つ、短時間で難分解性リグニンを含むリグノセルロースを容易にグルコース、キシロース、マンノースを生成することを見だし、本発明を完成に至った。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の通りの構成からなっている。すなわち
(1)過酸化水素含有リン酸溶液とパイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液との混合液に、難分解性リグニン含有植物粉砕微粉を投入攪拌しつつ、加温酸化加水分解処理する難分解性リグニン含有植物粉砕微粉のリグニン分解糖化方法である。
(2)難分解性リグニン含有植物粉砕微粉が貝殻焼成粉末を5〜10%添加粉砕して得ることを特徴とする(1)に記載する難分解性リグニン含有植物粉砕微粉のリグニン分解糖化方法である。
(3)過酸化水素含有リン酸溶液が、オルトリン酸(HPO)50〜80%、過酸化水素(H)0.5〜5%からなる(1)、(2)に記載する難分解性リグニン含有植物粉砕微粉のリグニン分解糖化方法である。
(4)パイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液が表−1別紙記載の成分組成である。パイナップル酵素主成分と天然ミネラル成分を含有する(1),(2),(3)に記載する難分解性リグニン含有植物粉砕微粉のリグニン分解糖化方法である。
(5)貝殻焼成微粉末添加粉砕した難分解性リグニン含有植物粉砕微粉(300μm)100重量部、過酸化水素(H)1%含有するオルトリン酸(HPO)75%溶液150重量部、パイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液2重量部を攪拌しつつ、35〜50℃に加温酸化加水分解することにより、グルロース(C12)、マンノース(C12)、キシロース(C10)等に単分子化する(1)、(2)、(3)、(4)に記載する難分解性リグニン含有植物粉砕微粉のリグニン分解糖化方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は過酸化水素含有リン酸溶液とパイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液との混合液に、難分解性リグニン含有植物粉砕微粉を投入しつつ、開放状態で加温酸化加水分解する難分解性リグニン分解糖化方法として、設備負担が少なく省エネルギーで危険性が少なく、短時間で難分解性リグニンを含むセルロース類を容易に単分子化し、グルコース、キシロース、マンノース等のアルコール中間体原料となり、酵素分解によるアルコールの製造をすることが出来る効果があり、且つ再生リン酸を再利用する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図−1】溶解率と攪拌時間との関係。
【図−2】溶解率とオルトリン酸及び貝殻焼成微粉末添加量との関係。
【図−3】溶解率とパイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液添加との関係。
【図−4】リグノセルロース分解とリン酸回収フローシート図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、上述した構成からなる難分解性リグニン含有植物粉砕微粉を加温酸化加水分解処理する難分解性リグニン分解糟化方法を実施するに際し、最も好ましい実施形態を更に詳しく説明する。
本発明の難分解性リグニンを含む植物系物質であれば、稲藁、籾殻、大鋸屑、木材の間伐材、樹皮、雑草類等を用いることが可能である。
【0015】
上記の難分解性リグニン含有植物体は気流打解方式粉砕機により微粉砕されるが、酸化加水分解反応が50℃以下の加温でスムーズに進行させるために、本発明に於いては、微粉砕に際し、難分解性リグニン含有植物体にアルカリ物質の貝殻焼成微粉末を混合して、同時粉砕することにより、アルカリ処理亀裂表面となって貝殻焼成粉末を添加した難分解性リグニン含有植物粉砕微粉となる。貝殻焼成微粉末の混合量は5〜15%添加するとよい。
また、粉砕の際、粉砕機(磁器)の遠赤外線照射により50℃に加温しつつ粉砕した難分解性リグニン含有植物粉砕微粉は、酸化加水分解反応が促進され易くなり、難分解性リグニン分解糖化率が向上する。
貝殻焼成微粉末添加5%以下では、酸化加水分解反応は無添加粉砕に近く、難分解性リグニン分解糖化率も向上が少ない。本発明には、アルカリ物質として特に貝殻焼成微粉末を用いたが、生石灰、消石灰及び苛性ソーダ、苛性カリ等であっても差し支えない。
【0016】
リン酸溶液中に、酸化剤として過酸化水素を含有する溶液で、難分解性リグニンを含むリグノセルロース含有植物体の難分解性リグニン分解糖化する技術は、従来技術には見当らない。発明者による知見が最初である。
本発明の過酸化水素含有リン酸溶液は、難分解性リグニン含有植物粉砕微粉の生体高分子の高次網目構造物質を過酸化水素による酸化とリン酸による加水分解を同時併行させることによって、これまでの難分解性リグニンを極めて短時間のうち、単分子化することが可能となる。
【0017】
本発明の過酸化水素含有リン酸溶液は、オルトリン酸(HPO)50〜80%中、過酸化水素(H)0.5〜3.6%の好適濃度範囲外である。オルトリン酸50%以下、過酸化水素0.5%以下の過酸化水素含有リン酸溶液によるリグニン含有植物粉砕微粉の酸化加水分解反応は長時間(5時間以上)を要する。
本発明の最適な過酸化水素含有リン酸溶液は、オルトリン酸(HPO)75%、過酸化水素(H)2.5%含有することである。これによると難分解性リグニン含有植物粉砕微粉の酸化加水分解反応は、短時間(2時間以内)で完了する。
【0018】
過酸化水素含有リン酸溶液のオルトリン酸(HPO)80%以上、過酸化水素(H)5%以上を用いての難分解性リグニン含有植物粉砕微粉の糖化は、酸化分解反応が極めて激しく、攪拌中に溶液の黒変が起こる。
【0019】
本発明のパイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液につきパイナップル主成分と天然ミネラルイオン成分の含有組成について説明する。
パイナップル酵素は、パイナップル皮果汁液中に含有することは公知である。パイナップル酵素中にはセルロース分解酵素の他、蛋白質及びアミノ酸単分子分解酵素、各種有機酸分解酵素等30種以上の酵素成分が含まれる。この中で、セルロース分解酵素は5種類の主要な酵素が含まれることが分かっている。
次に、天然ミネラル抽出液について説明する。
本発明に用いる天然鉱石は、ゼオライト、麦飯石、ヒル石、医王石等を挙げることができる。本発明には、ヒル石の鉱物(学名バームキュライト)の微粉末をパイナップル皮果汁液に浸漬することにより、パイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液を得ることが出来る。
【表−1】
【0020】
(表−1)に、パイナップル酵素成分及びパイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液組成を示す。
【表−1】

【0021】
本発明は、貝殻焼成微粉末添加した難分解性リグニン含有植物である籾殻粉砕微粉(300μm)に、過酸化水素含有リン酸溶液とパイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液との混合溶液を投入し、混合攪拌することにより容易に単分子化して、単糖類のグルコース、キシロース、マンノース等を得ることができるが、パイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液を添加しない過酸化水素含有リン酸溶液単独の場合は、単分子化して単糖類成分を得ることに長時間が必要である。
【0022】
本発明のパイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液が酸化加水分解反応の促進効果としては、リグニンの成分であるコニフェリルアルコール(C1012)から糖誘導体のリン酸エステル(C13P)の加水分解反応の触媒作用に働くため重要な役割がある。
本発明に於いては、パイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液は、表−1組成液の20倍希釈を用い、加水分解反応の触媒として働くため、極めて少量であっても、その効果は多大となる。
本発明の酸化加水分解反応促進効果としての好適なパイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液の添加量は、リグニン含有植物粉砕微粉100重量部に対し0.5〜5重量部が好ましい。
パイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液添加量が0.5以下の場合、酸化加水分解反応による単糖類のグルコース、キシロース、マンノース等の生成量が低下し、且つ、反応時間を長時間行っても生成量は向上しない。
パイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液による酸化加水分解反応の触媒作用の機序(メカニズム)については以下に記述することによって説明を加える。
【0023】
本発明のリグニン酸化加水分解反応について説明する。
リグノセルロースは地球上で最も多量に存在する植物物質でフェニルプロパンのうちP−クマリルアルコール(C10)、コニフェリルアルコール(C1012)、シナピルアルコール(C1114)の3種類のリグニンモノマーがフェキシラジカルの中間体となり高度に重合した複雑な三次元網目構造を形成していることが知られている。
【0024】
本発明においてリグニン酸化加水分解反応は複雑で単純なものではないが、発明者はリグノセルロースの難分解性リグニン含有植物物質が、ほぼ完全に溶解する事実を基については、以下に述べるように移動するものと考えている。つまり、リグニン成分の3成分中、リグニンモノマーの1成分であるコニフェリルアルコール(C1012)が過酸化水素(H)により酸化され、同時にオルトリン酸(HPO)により、糖誘導体のリン酸エステル(C13P)D−グルコース−1−リン酸生成を経て加水分解され、加水分解性生物のグルコース(C12)及び燐酸(HPO)となることが考えられる。
(化1)を(1)、(2)、(3)に示す。
【化−1】
【0025】
(化−1)は、コニフェリルアルコール(C1012)の酸化反応とリン酸反応によるリン酸エステル(D−グルコース−1−リン酸)の生成反応である。
(1)コニフェリルアルコール(C1012)の酸化リン酸反応による糖誘導体のリン酸エステル(C13P)D−グルコース−1−リン酸の生成反応を示す。
(2)C1012+11H+HPO→C13+4CO
+11HO・・・・・(1)
(2)加水分解反応によるグルコースとリン酸の生成反応。
13+HO→C12+HPO・・・・・(2)
(リン酸エステル) (D−グルコース)(リン酸)
【化−1】

(化−1)(1)は、酸化エステル反応により、D−グルコースのリン酸エステル生成し同時併行的に、式(2)は、リン酸エステルが加水分解され単糖類のD−グルコースを生成し、再びオルトリン酸になり、グルコース分解することにより再生リン酸は再利用が可能となることが考えられる。
【0026】
前記したように、本発明における難分解性リグニン含有植物を容易に分解糖化する必須要件は、
(1)難分解性リグニン含有植物体の微粉化時に、貝殻焼成微粉末を添加し、アルカリ処理亀裂表面となった難分解性リグニン含有植物粉砕微粉ができるため、酸化加水分解を容易にすること。
(2)オルトリン酸。
(3)過酸化水素。
(4)パイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液。
(5)分解温度。
の5要件が不可欠であり、全く新規な知見を見出し、本発明を完成した。
【実施例1】
【0027】
貝殻焼成微粉末10%混合籾殻粉砕微粉(300μm)30gと、試薬、関東化学株式会社製の1級過酸化水素(H、34.5%)10ml、下関三井化学株式会社製のオルトリン酸溶液(HPO、75%)150ml混合用液を開放容器に投入した後、加温40℃にて2時間攪拌した。濾別した乾燥残渣(水分11%含有)19.2gとなり、溶解残渣からの溶解率は82.3%となり、溶解液150mlを得た。該溶解の糖度は100%に近い値を得た。溶解液の成分は、グルコース、キシロース、マンノースであることは分析により確認した。籾殻成分の分析は、高知県高知工科分析センターで分析した。溶解後の液は、静岡大学理学部で分析した。糖成分のグルコース、キシロース、マンノース等の含有を確認した。
結果を表−2に示すとともに、本発明を更に詳しく実施例により説明する。
【表−2】

比較例として、貝殻焼成微粉末無添加籾殻粉砕微粉(300μm)100g、下関三井化学株式会社製のオルトリン酸溶液(HPO、75%)150mlを開放容器に投入し、温度40℃で2時間攪拌した。濾別乾燥残渣(水分13%含有)18.9gとなり、溶解率は51.0%となった。
【実施例2】
【0028】
実施例1に用いた籾殻粉砕微粉(300μm)30gと試薬、関東化学株式会社製の1級過酸化水素(H、34.5%)10ml、下関三井化学株式会社製のオルトリン酸溶液(HPO、75%)150ml、パイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液10mlの混合溶液を開放容器の中に投入した後、40℃にて2時間攪拌した。こりを濾別乾燥残渣(水分11%含有)5.21gとなり、溶解残渣からの算定溶解率は89.3%となる結果となった。
【実施例3】
【0029】
(実施例1)及び(実施例2)に準じ、貝殻焼成微粉末10%混合籾殻粉砕微粉(300μm)2.5gと試薬、関東化学株式会社製の1級過酸化水素(H、34.5%)1.5ml、下関三井化学株式会社製のオルトリン酸溶液(HPO、75%)20ml、パイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液1.0mlを100mlガラスビーカーに投入、40℃に加温して0.3Hr〜5.0Hr攪拌した。乾燥残渣量から算出した溶解率を(図−1)に示す。
【0030】
(図−1)貝殻焼成微粉末10%混合籾殻粉砕微粉は、過酸化水素含有リン酸溶液とパイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液との混合溶液により、比較的低い温度で2時間程度の短時間内で、酸化加水分解反応より、90%以上の溶解率となることも分かる。
【実施例4】
【0031】
実施例1及び2に準じ、貝殻焼成微粉末3、5、10、15、20%、籾殻粉砕微粉各々2.5g、オルトリン酸濃度50,60、75%を各々20mlと過酸化水素(H、34.5%)1.5ml、パイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液1mlを100mlガラスビーカーに投入40℃に加温にて2時間攪拌した。
乾燥残渣から算出した溶解率を(図−2)に示す。
【0032】
(図−2)より貝殻焼成微粉末の添加量とオルトリン酸濃度との関係は、貝殻焼成微粉末1.0%以上の籾殻粉砕微粉を用いて、過酸化水素2.5%含有リン酸濃度60%以上、パイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液の混合液を用いることにより、低い温度に於いて比較的短時間内程度の攪拌で、溶解率90%以上となる値を得た。
【実施例5】
【0033】
(実施例1)及び(実施例(実施例4)に準じ、貝殻焼成微粉末10%混合籾殻粉砕微粉2.5gと過酸化水素(H2O2,34.5%)1.5ml、オルトリン酸(H3PO4,75%)20mlの混合溶液に、パイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液(20倍希釈液)0.3,0.5,1.0,1.5,2.0mlを添加し、40℃に加温して2時間攪拌した。結果を(図−3)に示す。
【0034】
図−3より、パイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液と溶解率との関係は、貝殻焼成微粉末10%混合籾殻粉砕微粉は、過酸化水素(H2O2)2.5%含有オルトリン酸(H3PO4)溶液に、パイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液1.0ml以上添加することにより、攪拌時間2時間以内で溶解率80%以上となることがわかる。
【実施例6】
【0035】
(実施例1)及び(実施例2)に従い、難分解リグニン含有植物粉砕微粉として、籾殻と製材所の大鋸屑を粉砕時に貝殻焼成微粉末添加した微粉(各々300μm)の供試料各々2.5gと試薬、関東化学株式会社製の1級過酸化水素(H、345%)0.5、1.0,1.5,2.0ml、下関三井化学株式会社製のオルトリン酸溶液(HPO、75%)20ml、パイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液0.5,1.0ml夫々を100mlガラスビーカーに投入し、40℃に加温して2時間攪拌し、難分解性リグニン分解糖化処理を実施した。結果を[表−3]に示す。
【0036】
(表−3)を下記に示す。
【表−3】

(表−3)よりオルトリン酸中の過酸化水素濃度が高濃度になると酸化反応が激しく供試料が溶液中で黒変する。即ち、酸化加水分解処理のオルトリン酸溶液の過酸化水素好適濃度は1.6%(1.0ml)〜3.6%(2.0ml)であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、リグノセルロース系バイオマスから単糖類のグルコース、キシロース、マンノース等を酸化加水分解する難分解性リグニン分解糖化法として本特許を提案することでありますが、前記した如く、グルコース、キシロース、マンノース等の単糖類を分解した後、生成リン酸を精製することによりリン酸の再利用を可能とする。バイオマスによるアルコール生産の全く新規な低コストエコシステム産生となり得る。
【0038】
リン酸エステル化しているグルコースとリン酸を特殊イオン交換樹脂で分離濾過することにより、リン酸を回収して再利用できる。特殊イオン交換樹脂で濾過されたグルコースは、アルコール発酵槽を経由してエタノール製造工程に進み、製造されたエタノールはバイオ燃料として使用することができる。また、回収された難分解性リグニン分解溶液として過酸化水素(H2O2)、オルトリン酸(H3PO4)及びパイナップル酵素入り天然ミネラル成分が不足した場合は、溶液濃度に合わせて不足分を追加することができる。リン酸回収フローを(図−4)に示す。
【図−1】

【図−2】

【図−3】

【図−4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素含有リン酸溶液とパイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液との混合液に、リグニン含有植物粉砕微粉を投入攪拌しつつ、加温酸化加水分解処理するリグニン分解糖化方法。
【請求項2】
リグニン含有植物粉砕微粉が、貝殻焼成微粉末を5〜10%添加粉砕して得ることを特徴とする請求項1に記載するリグニン分解糖化方法。
【請求項3】
過酸化水素含有リン酸溶液が、オルトリン酸(HPO)50〜80%過酸化水素(H)0.5〜5%から成る請求項1〜2に記載するリグニン含有植物粉砕微粉のリグニン分解糖化方法。
【請求項4】
パイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液が、表−1別紙記載の成分組成であるパイナップル酵素主要成分と天然ミネラルイオン成分を含有組成とする請求項1〜3に記載するリグニン含有植物粉砕微粉のリグニン分解糖化方法。
【請求項5】
貝殻焼成微粉末含有粉砕したリグニン含有植物粉砕微粉(300μm)30重量部、過酸化水素(H)1%含有のオルトリン酸(HPO)75%溶液150重量部、パイナップル酵素入り天然ミネラル抽出液、2重量部を混合攪拌しつつ、35〜50℃に加温酸化加水分解処理することにより、効率よく酸化加水分解してグルコース、キシロース等に単分子化する請求項1〜4記載のリグニン含有植物粉砕微粉のリグニン分解糖化方法。

【公開番号】特開2011−160780(P2011−160780A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39347(P2010−39347)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(508323562)
【Fターム(参考)】