説明

難水溶性又は非水溶性の活性物質及び単細胞タンパク質物質の混合物の水性分散液、並びにそれから製造される乾燥粉末

本発明は、少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性物質と、保護コロイドとしての少なくとも1種のタンパク質とを含む水性分散液に関する。本発明は、該タンパク質が発酵によって産生された単細胞タンパク質物質であるという事実により特徴付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物と、保護コロイドとしての少なくとも1種のタンパク質とを含む水性分散液であって、該タンパク質が発酵により産生された単細胞タンパク質物質である、前記分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
動物飼料及び食品分野に適する、或いは医薬及び化粧品用途に適する非常に多くの活性化合物、例えば脂溶性ビタミン、カロチノイド、及び天然着色剤であるクルクミン又はカルミン、並びに、非常に多くのUVフィルターは、その非水溶性及び/又は酸化に対する感受性に起因して、特別に安定化された調製物の形態でのみ使用することができる。特に飼料添加物としての水性食品を着色するための、或いは化粧品における活性化合物及び有効な化合物としての、結晶性物質の直接的使用は、一般的には不可能である。特に水性媒体中だけでなく、親油性媒体中での生物学的利用能、着色性及び分散性に関する高い必要条件は、特別な処方を用いることによってのみ満たすことができる。
【0003】
活性化合物(例えばカロチノイド)が微紛化した形態で存在し、保護コロイドによって酸化に対して保護される調製物を用いることによってのみ、満足すべき着色収量が食品の直接的な着色において達成され得る。動物飼料で使用されるこれらの処方は、活性化合物のより高い生物学的利用能をもたらし、その結果、例えば卵黄又は魚の着色の際に、間接的に着色効果の改善をもたらす。
【0004】
文献によれば、多くの多様な処方方法の大部分は既に知られており、これらの方法は全て、活性化合物の結晶サイズを低減すること、及びその粒径の範囲を10μm未満の範囲にすることを目的とする。
【0005】
特にChimia 21, 329(1967)、WO 91/06292及びさらにWO 94/19411に記載されている非常に多くの方法は、コロイドミルによるカロチノイドの粉砕を利用し、これにより2〜10μmの粒径を達成する。
【0006】
さらに、例えばDE-A-12 11 911又はEP-A-0 410 236に記載されているように、乳化/噴霧乾燥を組合せる方法が存在する。
【0007】
ヨーロッパ特許EP-B-0 065 193によれば、微粉砕化した粉末状カロチノイド調製物は、β−カロチンを、例えば揮発性の水混和性有機溶媒に、50℃〜200℃の温度で、場合により高められた圧力下で、10秒未満の時間溶解することによって製造される。β-カロチンは、0℃〜50℃の温度で保護コロイドの水溶液とすぐに迅速に混合することによって、生じた分子分散液から沈殿する。これは、このようにして、橙黄色の色調を有するコロイド状に分散したβ-カロチンヒドロゾルを生じさせる。その後の分散液の噴霧乾燥により、水に溶解して透明な黄橙色の分散液を生じる、自由流動性の乾燥粉末を与える。
【0008】
水非混和性溶媒を用いて微粉砕化した粉末状カロチノイド調製物を製造する同様の方法がEP-A-0 937 412に記載されている。
【0009】
WO 98/26008は、再分散可能なキサントフィル含有乾燥粉末を製造するための、低分子量保護コロイドと高分子量保護コロイドとの混合物の使用に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、難水溶性又は非水溶性で疎水性の活性化合物及び有効な化合物を、安定な水性分散液、又は安定なかつ容易に再分散可能な乾燥粉末に変換することである。
【0011】
本発明の意義の範囲内で、安定なとは、処方物が、個々の用途に十分な期間及び温度の範囲にわたって、特に酸化に安定である及び光に安定である、並びに沈殿及びクリーミングに対して安定であることを指す。
【0012】
したがって、本発明の1つの目的は、保護コロイドとして、特に飼料、医薬、食品、食品サプリメント及び化粧品に使用することができる天然ポリマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の目的は、少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物と、保護コロイドとしての少なくとも1種のタンパク質とを含む水性分散液であって、該タンパク質が発酵により産生される単細胞タンパク質物質である、該分散液によって達成された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
単細胞タンパク質物質という用語は、本発明の関連で、生合成方法によって、例えば単細胞微生物の発酵によって産生され得るタンパク質を一般的に含む。本明細書で記載し得る好適な単細胞微生物は、藻類、菌類、酵母及び細菌である。全ての酵母及び細菌が特に好ましく、とりわけ食品及び動物飼料分野で承認されている細菌が好ましい。
【0015】
適当な細菌として、例えば化学有機栄養細菌、特にメタン栄養細菌だけでなく、従属栄養細菌又はそれらの混合物も使用し得る。様々なタイプの細菌に関するより詳細な説明は、特にEP 1 265 982 B1で見出し得る。そこに開示される細菌株は、単細胞タンパク質物質を製造するのに好適な微生物として記載し得る。
【0016】
微生物学的方法によって製造される単細胞タンパク質物質は、精製形態で、又は発酵で産生されるバイオマスを含む混合物として、本発明の水性分散液用の保護コロイドに使用することができる。この場合、バイオマスが細胞壁物質を含まないことが有利である。
【0017】
好適な実施形態では、単細胞タンパク質物質は、細胞壁物質を含まないホモジナイズしたバイオマスとの混合物で、本発明の水性分散液用の保護コロイドとして使用される。ここでは、このホモジナイズした混合物を噴霧乾燥した顆粒として使用することが有利である。
【0018】
バイオマスのホモジナイゼーションについての詳細もEP 1 265 982 B1中で同様に見出し得る。
【0019】
本発明で使用されるホモジナイズしたバイオマスの形態の単細胞タンパク質材料は、さらに50〜90重量%、好ましくは60〜80重量%のタンパク質を含む。
【0020】
水性分散液という用語は、本発明の関連で、難水溶性又は非水溶性活性化合物の物質の物理的状態に従って、水性懸濁液だけでなく、乳濁液をも意味するものとする。水性懸濁液を、分散相が少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物をナノ粒子として含む水性懸濁液として記載し得ることが好ましい。さらに、本発明における主要な役割は、乾燥粉末又は乳濁液によって、好ましくは二重乳濁液、特に上記水性分散液から製造されるo/w/o乳濁液によっても果たされる。
【0021】
難水溶性の有機化合物は、この関連で、その水溶性が5重量%未満、好ましくは1重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満、とりわけ好ましくは0.01重量%未満である化合物を指すものとする。
【0022】
本発明の関連で、食品及び動物栄養分野、並びにさらに医薬用途及び化粧品用途に適当な活性化合物として、以下の化合物を例示目的で記載し得る:
脂溶性ビタミン、例えばビタミンK、ビタミンA及びその誘導体(ビタミンAアセテート、ビタミンAプロピオナート又はビタミンAパルミタートなど)、ビタミンD2及びビタミンD3、並びにビタミンE及びその誘導体。この関連で、ビタミンEは天然又は合成のα-、β-、γ-又はδ-トコフェロール、好ましくは天然又は合成のα-トコフェロール、及びトコトリエノールである。ビタミンE誘導体は、例えば、トコフェリルC1-C20カルボン酸エステル(トコフェリルアセテート又はトコフェリルパルミタートなど)である。
【0023】
ポリ不飽和脂肪酸、例えばリノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸。
【0024】
食品着色剤、例えばクルクミン、カルミン又はクロロフィルなど。
【0025】
カロチノイド、カロチン及びキサントフィル、例えばβ-カロチン、リコピン、ルテイン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、カプサンシン、カプソルビン、クリプトキサンチン、シトラナキサンチン、カンタキサンチン、ビキシン、β-アポ-4-カロテナール、β-アポ-8-カロテナール及びβ-アポ-8-カロチン酸エチルエステル。
【0026】
フィトステロール、コエンザイムQ10。
【0027】
非水溶性の又は難水溶性の有機UVフィルター物質、例えば、トリアジン、アニリド、ベンゾフェノン、トリアゾール、シンアミド及びスルホン化ベンズイミダゾールの群からの化合物。
【0028】
好適な活性化合物は、カロチノイド、特にβ-カロチン、リコピン、ルテイン、アスタキサンチン及びカンタキサンチン、さらにビタミンA及びビタミンE、並びに一連のUVフィルター物質、トリアジンクラス、特にUvinul T150である。
【0029】
本発明の水性分散液の特に好適な実施形態は、これらが、β-カロチン、リコペン、ルテイン、アスタキサンチン及びカンタキサンチンよりなるカロチノイドの群から選択された少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物をナノ粒子として含む場合である。
【0030】
水性分散液中のナノ粒子の平均粒径は、処方方法のタイプに応じて、0.01〜100μmの範囲、好ましくは0.01〜10μmの範囲、特に好ましくは0.01〜2μmの範囲、とりわけ好ましくは0.02〜1μmの範囲である。
【0031】
本発明の分散液、特に懸濁液の種々の成分量は、本発明に従って、調製物が0.1〜90重量%、好ましくは2〜40重量%、特に好ましくは3〜30重量%、とりわけ好ましくは5〜25重量%の、少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物、発酵により産生される、0.1〜99.9重量%、好ましくは5〜70重量%、特に好ましくは10〜60重量%の単細胞タンパク質となるように選択される。重量%は、それぞれの場合で、処方物の乾燥質量に基づく。
【0032】
さらに、この調製物は、活性化合物を保護するための低分子量の安定化剤(抗酸化剤及び/又は防腐剤など)をさらに含むことができる。適当な抗酸化剤又は防腐剤は、例えばα-トコフェロール、アスコルビン酸、第3級ブチルヒドロキシトルエン、第3級ブチルヒドロキシアニソール、レシチン、エトキシキン、メチルパラベン、プロピルパラベン、ソルビン酸又は安息香酸ナトリウムである。抗酸化剤又は防腐剤は、製剤の乾燥質量に基づいて、0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%、とりわけ好ましくは1〜10重量%の量であることができる。
【0033】
さらに、この分散液は、場合によりそれらから製造される乾燥粉末の機械的安定性を増加するための可塑剤をさらに含むことができる。適当な可塑剤は、例えば糖及び糖アルコール(例えばスクロース、マルトース、グルコース、ラクトース、トレハロース、転化糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、グルコースシロップ、マルトデキストリン又はグリセロールなど)である。可塑剤として、スクロース又はラクトースを使用することが好ましい。可塑剤は、製剤の乾燥質量に基づいて、0.1〜70重量%、好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは20〜50重量%の量で存在することができる。
【0034】
さらに、分散液は、処方物の乾燥質量に基づいて、0.01〜70重量%、好ましくは0.1〜50重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%の濃度で低分子量の界面活性剤(乳化剤)を含むことができる。これらとして適当な化合物は特に両親媒性化合物又はかかる化合物の混合物である。原則的に、5〜20のHLB値を有する全ての界面活性剤が考慮される。これに対応する表面活性物質として、例えば以下が考慮される:長鎖脂肪酸とアスコルビン酸とのエステル、脂肪酸のモノグリセリド及びジグリセリド並びにその酸化エチル化産物、モノ脂肪酸グリセリドと酢酸とのエステル、クエン酸、乳酸又はジアセチル酒石酸、脂肪酸のポリグリセロールエステル、例えばトリグリセロールのモノステアラート、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びレシチン。アスコルビルパルミテートを使用することが好ましい。
【0035】
カロチノイド含有乳濁液の製造に関して、さらに生理学的に承認された油(例えばゴマ油、トウモロコシ胚芽油、綿実油、ダイズ油又はピーナッツ油)及び化粧油(例えばパラフィン油、グリセリルステアラート、イソプロピルミリスタート、ジイソプロピルアジパート、セチル-ステアリル2-エチルヘキサノエート、水素化ポリイソブテン、ワセリン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、微結晶性ワックス、ラノリン及びステアリン酸)を、使用する難水溶性の又は非水溶性の活性化合物に基づいて、0.1〜500重量%、好ましくは10〜300重量%、特に好ましくは20〜100重量%の濃度で使用することが有利であり得る。
【0036】
さらに好適な実施形態として、本発明の水性分散液は、これらが、発酵により産生された単細胞タンパク質物質の水性分子分散液又はコロイド分散液中の、ビタミンA及び/又はビタミンE或いは上に記載したそれらの誘導体のo/w乳濁液である点で特徴付けられる。
【0037】
本発明はまた、1種以上の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物を、タンパク質保護コロイドの水性分子分散液又はコロイド分散液に分散させることによって、少なくとも1種の難水溶性又は非水溶性の活性化合物の水性分散液を製造する方法であって、該タンパク質が発酵により産生された単細胞タンパク質物質であることを特徴とする、前記方法に関する。
【0038】
この発明方法の好適な実施形態では、分散ステップは、タンパク質保護コロイドの水性分子分散液又はコロイド分散液中での、少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物の懸濁液又は乳濁液の製造であって、該タンパク質が発酵により産生された単細胞タンパク質物質である、前記製造である。
【0039】
この方法の特に好適な実施形態は、分散、特に懸濁が以下のステップ:
a1)1種以上の水混和性有機溶媒中、又は水と1種以上の水混和性有機溶媒中に、少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物を溶解するステップ、或いは
a2)1種以上の水非混和性有機溶媒中に、少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物を溶解するステップ、
b)a1)又はa2)後に取得した溶液と、発酵により産生された単細胞タンパク質物質の水性分子分散液又はコロイド分散液とを混合するステップであって、難水溶性の又は非水溶性の活性化合物の疎水性相がナノ分散相として生じる、前記ステップ、及び
c)有機溶媒を分離するステップ
を含む。
【0040】
記載されるべき、ステップa1)で使用される水混和性溶媒は、主に、炭素、水素及び酸素のみを含む水混和性の熱安定性揮発性溶媒(アルコール、エーテル、エステル、ケトン及びアセタールなど)である。少なくとも10%水混和性であり、沸点が200℃以下でありかつ/又は10未満の炭素数であるこれらの溶媒を使用することが好都合である。メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、1,2-ブタンジオール 1-メチルエーテル、1,2-プロパンジオール 1-n-プロピルエーテル、テトラヒドロフラン又はアセトンが特に好適である。
【0041】
本発明において、「水非混和性の有機溶媒」という用語は、大気圧で10%未満の水溶解性を有する有機溶媒を指す。ここで考慮される可能な溶媒は、特にハロゲン化脂肪族炭化水素、例えば塩化メチレン、クロロホルム及び四塩化炭素、カルボン酸エステル、例えば炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル又は酢酸イソプロピルなど、並びにメチル第3ブチルエーテルなどのエーテルである。
【0042】
水非混和性有機溶媒として、本発明に従い、上に記載した油も挙げるべきである。
【0043】
好適な水非混和性有機溶媒は、以下の、炭酸ジメチル、炭酸プロピレン、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル及びメチル第3ブチルエーテルよりなる群の化合物である。
【0044】
分散/懸濁ステップに特に好適な溶媒として、少なくとも1種の水混和性有機溶媒、又は水と少なくとも1種の水混和性有機溶媒の混合液が使用される。イソプロパノール又はアセトンが特に好ましい。
【0045】
上記発明の方法の有利な実施形態は、ステップa)で、少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物の分子分散液を、場合により圧力下において、30℃超の温度で、好ましくは50℃〜240℃で、特に100℃〜200℃で、特に好ましくは140℃〜180℃で製造し、その直後に、ステップb)において、35℃〜120℃に設定した混合温度で保護コロイドの水溶液と混合することによって特徴付けられる。
【0046】
溶媒成分は水相に変換され、活性化合物の疎水性相がナノ分散相として生じる。
【0047】
上記分散に関するより詳細な方法及び装置の記載については、現段階ではEP-B-0 065 193を参照されたい。
【0048】
本発明はさらに、上記水性乳濁液、例えばビタミンA及び/又はビタミンE含有水性乳濁液が、或いはカロチノイド含有製剤(特に懸濁液)の場合に、水を除去しかつ乾燥されていることによって特徴付けられる、少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物をナノ粒子として含む乾燥粉末を製造する方法に関する。
【0049】
乾燥粉末への変換は、特に、場合によりコーティング物質の存在下における、流動床中での噴霧乾燥、噴霧冷却、凍結乾燥又は乾燥によって生起させることができる。適当なコーティング物質は、特にコーンスターチ又はシリカである。
【0050】
上記方法の好適な実施形態は、製造される少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物の懸濁液を乾燥粉末への変換前に粉砕することによって特徴付けられる。
【0051】
この場合に、粉砕はそれ自体公知の様式で、例えばボールミルを用いて実施することができる。この場合に使用されるミルのタイプに応じて、粉砕は、粒子の平均粒径が、フラウンホーファー回折による測定により、0.1〜100μm、好ましくは0.2〜50μm、特に好ましくは0.2〜20μm、さらに好ましくは0.2〜5μm、特に0.2〜0.8μmのD[4,3]となるまで続けられる。D[4,3]という用語は、体積加重平均直径を示す(Handbook for the Malvern Mastersizer S, Malvern Instruments Ltd., UK参照)。
【0052】
このために使用される粉砕及び設備構成についての更なる詳細は、特にUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Sixth Edition, 2000, Electronic Release, Size Reduction, 3.6章: Wet Grinding、及びEP-A-0 498 824で見出し得る。
【0053】
上記乾燥粉末の1つを製造するための本発明の方法の特に好適な実施形態は、
a)水混和性有機溶媒中、又は水と水混和性有機溶媒の混合液中に、少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物を30℃超の温度で溶解する、
b)生じた溶液を発酵によって産生された単細胞タンパク質物質の水性分子分散液又はコロイド分散液と混合する、及び
c)生じた分散液を乾燥粉末に変換する、
ことによって特徴付けられる。
【0054】
本発明はさらに、上記方法の1つによって取得可能な、少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物の粉末状調製物に関する。
【0055】
本発明は同様に、二重分散の形態で、少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物を含む油混和性調製物を製造する方法であって、上に記載される水性分散液が油中で乳化されることによって特徴付けられる、前記方法に関する。
【0056】
この場合、乳化剤を用いることで、水相が、少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の有機UVフィルター物質の保護コロイド安定化ナノ粒子を含む、油中水型乳濁液が生じる。考慮される乳化剤は、それ自体公知であり、かつ10未満、特に2〜6のHLB値を有するW/O型乳化剤である(H.P. Fiedler, Lexikon der Hilfsstoffe fur Pharmazie, Kosmetik und angrenzende Gebiete [Lexikon of aids for pharmacy, cosmetics and related sectors], 1996, pages 753 ff)参照)。このクラスの乳化剤の典型的な代表例は、(単数又は複数の)活性化合物に基づいて、10〜1000重量%、好ましくは100〜900重量%、特に好ましくは400〜800重量%の濃度で使用される、多価アルコールの部分脂肪酸エステル(例えばモノステアリン酸グリセロール、又はモノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドの混合物)、ソルビタンの部分脂肪酸エステル、及び/又は好ましくはポリグリセロールの脂肪酸エステル(例えばポリリシノール酸ポリグリセロール)である。
【0057】
分散媒は、合成起源、天然起源、植物起源だけでなく、動物起源であることができる。典型的な代表例は、特に、ゴマ油、トウモロコシ胚芽油、綿実油、大豆油又はピーナッツ油、中鎖植物脂肪酸のエステル及びパラフィン油、グリセリルステアラート、イソプロピルミリスタート、ジイソプロピルアジパート、セチル-ステアリル2-エチルヘキサノエート、水素化ポリイソブタン、ワセリン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、微結晶性ワックス、ラノリン及びステアリン酸である。分散媒の量は、最終乳濁液の全質量に基づいて、一般的に30〜95重量%、好ましくは50〜80重量%である。
【0058】
乳化は連続式又はバッチ式で実施することができる。
【0059】
二重分散系の物理的安定性、例えば沈殿安定性は、例えば、20〜80℃、好ましくは40〜70℃の温度でローター/スターター分散機を用いた、又は高圧ホモジナイザー(APV Gaulinなど)を用いた、又は700〜1000barの圧力範囲で高圧ホモジナイザー(Microfluidizerなど)を用いた激しい処理による、油相中での水相のかなり良好な微細分布によって達成される。これによって達成しうる水-分散層の平均直径は、500μm未満、好ましくは100μm未満、特に好ましくは10μm未満、特に1μm未満である。
【0060】
本発明はさらに、二重分散系として、500μm未満の粒径を有する水-分散相を含み、1種以上の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物の保護コロイド安定化粒子が分散媒としての油中に分散形態で存在することによって特徴付けられる、上記方法によって取得可能な少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物の油混和性液体調製物に関する。
【0061】
本発明はさらに、上記水性分散液の、食品、食品サプリメント、動物飼料、医薬品及び化粧品への添加物としての使用に関する。
【0062】
本発明はさらに、上記粉末状調製物の、食品、食品サプリメント、動物飼料、医薬品及び化粧品への添加物としての使用に関する。
【0063】
本発明はさらに、上記油混和性液体調製物の、食品、食品サプリメント、動物飼料、医薬品及び化粧品への添加物としての使用に関する。
【0064】
本発明は以下、実施例を参照しながらより詳細に説明される。
【実施例】
【0065】
実施例1
アスタキサンチン水性懸濁液の製造と、その後の乾燥粉末への変換
加熱可能なレシーバー中、30℃の温度で20gのアスタキサンチン、10gのエトキシキン(EQ)及び2gのアスコルビルパルミテートを、294gのイソプロパノール/水(88/12, w/w)に懸濁する。この懸濁液を、混合室中で、536gのイソプロパノール/水(88/12, w/w)と、170℃の混合温度、0.2秒の滞留時間で混合する。該滞留時間後に、生じたアスタキサンチン分子分散液を別の混合室(該混合室には、発酵により産生された60gの単細胞タンパク質物質とさらに110gのスクロースとを含む、pH8に設定された6.5kgの水溶液が高圧ポンプを介して90°の混合角で添加されている)に直接注入し、その際、100〜300nmの平均粒径を有するコロイド分散形態のアスタキサンチンが45℃の温度で沈殿する。
【0066】
次いで、この分散液を濃縮し、それ自体公知の様式で50〜200μmの平均粒径を有する自由流動性、10%強度のアスタキサンチン乾燥粉末に変換する。
【0067】
実施例2
ビタミンAアセテート水性乳濁液の製造、及びその後の乾燥粉末への変換
水500g中の80gのラクトースを攪拌フラスコに仕込み、発酵により産生された100gの単細胞タンパク質物質と混合する。この混合物を簡単に約1分間攪拌し、60℃で20分間膨潤させた後、400rpmで5分間攪拌する。水相をガラスビーカーに移す。ビタミンAアセテート(50g)とエトキシキン(EQ、10g)の混合物を該水相に添加し、5000rpmで1分間水相中に乳化する。次いで、乳濁液をオートクレーブに移し、粉末化装置を用いて噴霧により製剤化する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物と、保護コロイドとしての少なくとも1種のタンパク質とを含む水性分散液であって、該タンパク質が発酵によって産生された単細胞タンパク質物質である、前記分散液。
【請求項2】
単細胞タンパク質物質が、菌類、酵母及び細菌よりなる群から選択された少なくとも1種の微生物による発酵によって産生されたタンパク質物質である、請求項1に記載の水性分散液。
【請求項3】
単細胞タンパク質物質を、精製された形態で、又は発酵で産生されたバイオマスとの混合物として含む、請求項1又は2に記載の水性分散液。
【請求項4】
単細胞タンパク質物質を、ホモジナイズしたバイオマスの形態で含む、請求項3に記載の水性分散液。
【請求項5】
単細胞タンパク質物質が50〜90重量%のタンパク質を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項6】
乳濁液又は懸濁液である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項7】
少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物をナノ粒子として含む、請求項6に記載の水性分散液。
【請求項8】
水性分散液の乾燥質量に基づいて、0.1〜90重量%の少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物と、発酵によって産生された0.1〜99.9重量%の単細胞タンパク質物質とを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性分散液。
【請求項9】
0.1〜70重量%の少なくとも1種の可塑剤、0.01〜70重量%の少なくとも一種の乳化剤、並びに/或いは0.01〜50重量%の少なくとも一種の抗酸化剤及び/又は防腐剤をさらに含む、請求項8に記載の水性分散液。
【請求項10】
1種以上の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物を、タンパク質保護コロイドの水性分子分散液又はコロイド分散液中に分散することによって、少なくとも1種の難水溶性又は非水溶性の活性化合物の水性分散液を製造する方法であって、該タンパク質が発酵により産生された単細胞タンパク質物質である、前記方法。
【請求項11】
前記分散ステップが、発酵により産生された単細胞タンパク質物質の水性分子分散液又はコロイド分散液中での、少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物の懸濁液又は乳濁液の製造である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
分散が以下のステップ:
a1)1種以上の水混和性有機溶媒、又は水と1種以上の水混和性有機溶媒との混合液中に、少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物を溶解するステップ、或いは
a2)1種以上の水非混和性有機溶媒中に、少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物を溶解するステップ、
b)a1)又はa2)後に取得される溶液を、発酵により産生された単細胞タンパク質物質の水性分子分散液又はコロイド分散液と混合するステップであって、難水溶性又は非水溶性の活性化合物の疎水性相がナノ分散相として生じる、前記ステップ、及び
c)有機溶媒を分離するステップ
を含む、請求項11に記載の水性懸濁液の製造方法。
【請求項13】
分散ステップ用の有機溶媒として、少なくとも1種の水混和性有機溶媒、又は水と少なくとも1種の水混和性有機溶媒の混合液を使用する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップa)で、分子分散液を少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物から30℃超の温度で製造し、その直後に、ステップb)で、保護コロイドの水溶液と35℃〜120℃に設定された混合温度で混合する、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
ナノ粒子として少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物を含む乾燥粉末の製造方法であって、請求項1に記載の水性分散液が、該分散液から水を除去し、かつ、場合によりコーティング物質の存在下で、乾燥される、前記方法。
【請求項16】
水性分散液が少なくとも1種の難水溶性又は非水溶性の活性化合物の水性懸濁液又は乳濁液である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
懸濁液の場合に、乾燥粉末に変換する前に、懸濁した粒子を粉砕する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
a)少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物を、30℃超の温度で、水混和性有機溶媒、又は水と水混和性有機溶媒との混合液中に溶解し、
b)生じた溶液を発酵により産生された単細胞タンパク質物質の水性分子分散液又はコロイド分散液と混合し、及び
c)生じた分散液を乾燥粉末に変換する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法によって取得可能な、少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物の粉末状調製物。
【請求項20】
少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物の油混和性調製物の製造方法であって、請求項1に記載の水性分散液を乳化剤の存在下で油中で乳化する、前記方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法によって取得可能な少なくとも1種の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物の油混和性液体調製物であって、二重分散系として500μm未満の粒径を有する水性分散相を含み、1種以上の難水溶性の又は非水溶性の活性化合物の保護コロイド安定化粒子が分散媒としての油の中に分散形態で存在する、前記調製物。
【請求項22】
食品、食品サプリメント、動物飼料、医薬品及び化粧品への添加剤としての、請求項1〜9のいずれか1項に記載の水性分散液の使用。
【請求項23】
食品、食品サプリメント、動物飼料、医薬品及び化粧品への添加剤としての、請求項19に記載の粉末状調製物の使用。
【請求項24】
食品、食料サプリメント、動物飼料、医薬品及び化粧品への添加剤としての、請求項21に記載の油混和性液体調製物の使用。

【公表番号】特表2008−521948(P2008−521948A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541854(P2007−541854)
【出願日】平成17年11月26日(2005.11.26)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012652
【国際公開番号】WO2006/058671
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】