説明

難水溶性薬剤含有皮膚用シート

【課題】難水溶性薬剤を含み、白濁が生じることなく皮膚機能を改善でき、患部に対し弱い刺激で汚れを拭取ることができ、拭取り時のさっぱり感とベタツキ感のなさとを両立し、拭取り時に白残りが生じることのない難水溶性薬剤含有皮膚用シートの提供。
【解決手段】本発明の難水溶性薬剤含有皮膚用シートは、難水溶性薬剤含有組成物を、吸水性不織布に含浸させた難水溶性薬剤含有皮膚用シートであって、前記難水溶性薬剤含有組成物が、少なくとも前記難水溶性薬剤含有組成物における含有量が1質量%以上である難水溶性薬剤、HLBが10以上であるノニオン性界面活性剤、エタノール、及び多価アルコールを含む澄明な可溶化組成物であり、前記エタノールと前記多価アルコールとの含有比が0.05/1〜6/1であり、前記難水溶性薬剤と前記ノニオン性界面活性剤との含有比が0.2/1〜20/1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鎮痒剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤等の難水溶性薬剤を含有する皮膚用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚用シートは、さっぱり感や汚れを取ることを目的としていた。
近年、皮膚用シートの高機能化のニーズにより、皮膚の治療を目的として、皮膚用シートに皮膚外用薬剤を含有させ、皮膚の機能を改善させることが望まれている。
【0003】
皮膚外用薬剤として、鎮痒剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤等があり、これらの多くは、難水溶性である。このため、これらの皮膚外用剤を従来の皮膚用シートに添加しても、溶剤が含まれていないため、シートに含有されにくいという問題がある。
一方、皮膚用シートに、前記皮膚外用薬剤及び溶剤を添加してシートに含有させると、前記溶剤によるベタツキや、前記皮膚外用薬剤による白濁に起因して拭取り時に白残りが発生するという問題がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、皮膚疾患に対する薬剤を含有させたシート状の治療剤は、適用部位が健常皮膚ではなく、皮膚状態が悪化した患部である。そのため、前記患部に付着した皮脂等の汚れを拭取る時には、物理的刺激をなるべく低減して拭取ることが望ましく、前記物理的刺激が弱くても患部に付着した汚れを除去できるという特性が求められている。
【0005】
したがって、難水溶性薬剤を含みながらも白濁が生じることなく、皮膚機能を改善することができ、患部に対し弱い刺激で汚れを拭取ることができ、拭取り時のさっぱり感とベタツキ感のなさとを両立し、拭取り時に白残りが生じることのない難水溶性薬剤含有皮膚用シートの速やかな開発が強く望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−312603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
難水溶性の薬剤を乳化組成物として皮膚用シートに含浸させると、前記乳化組成物の凝集やクリーミングにより、前記シート内で前記薬剤が局在する懸念があること、白濁した乳化組成物を患部に塗布した時には白残りが発生することが、本発明者らにより知見された。そのため、前記薬剤は澄明な可溶化組成物として前記シートに含浸させることが望ましいことがわかった。
【0008】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、難水溶性薬剤を含みながらも白濁が生じることなく、皮膚機能を改善することができ、患部に対し弱い刺激で汚れを拭取ることができ、拭取り時のさっぱり感とベタツキ感のなさとを両立し、拭取り時に白残りが生じることのない難水溶性薬剤含有皮膚用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成すべく、鋭意検討を行った結果、難水溶性薬剤含有組成物を吸水性不織布に含浸させた難水溶性薬剤含有皮膚用シートであって、前記難水溶性薬剤含有組成物が、少なくとも難水溶性薬剤、ノニオン性界面活性剤、エタノール、及び多価アルコールを含む澄明な可溶化組成物であり、前記難水溶性薬剤の前記難水溶性薬剤含有組成物における含有量が1質量%以上であり、前記ノニオン性界面活性剤のHLBが10以上であり、前記エタノールと前記多価アルコールとの含有比(エタノール/多価アルコール)が0.05/1〜6/1であり、前記難水溶性薬剤と前記ノニオン性界面活性剤との含有比(難水溶性薬剤/ノニオン性界面活性剤)が0.2/1〜20/1である難水溶性薬剤含有皮膚用シートを用いることにより、難水溶性薬剤を含みながらも白濁が生じることなく、皮膚機能を改善することができ、患部に対し弱い刺激で汚れを拭取ることができ、拭取り時のさっぱり感とベタツキ感のなさとを両立し、拭取り時に白残りが生じることのない難水溶性薬剤含有皮膚用シートとなることを知見し、本発明の完成に至った。
【0010】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下のとおりである。即ち、
<1> 難水溶性薬剤含有組成物を、吸水性不織布に含浸させた難水溶性薬剤含有皮膚用シートであって、前記難水溶性薬剤含有組成物が、少なくとも難水溶性薬剤、ノニオン性界面活性剤、エタノール、及び多価アルコールを含む澄明な可溶化組成物であり、前記難水溶性薬剤の前記難水溶性薬剤含有組成物における含有量が1質量%以上であり、前記ノニオン性界面活性剤のHLBが10以上であり、前記エタノールと前記多価アルコールとの含有比(エタノール/多価アルコール)が0.05/1〜6/1であり、前記難水溶性薬剤と前記ノニオン性界面活性剤との含有比(難水溶性薬剤/ノニオン性界面活性剤)が0.2/1〜20/1であることを特徴とする難水溶性薬剤含有皮膚用シートである。
<2> エタノールと多価アルコールとの含有比(エタノール/多価アルコール)が、0.05/1〜1/3である前記<1>に記載の難水溶性薬剤含有皮膚用シートである。
<3> ノニオン性界面活性剤の難水溶性薬剤含有組成物における含有量が、0.3質量%〜15質量%である前記<1>から<2>のいずれかに記載の難水溶性薬剤含有皮膚用シートである。
<4> エタノールの難水溶性薬剤含有組成物における含有量が、1質量%〜55質量%である前記<1>から<3>のいずれかに記載の難水溶性薬剤含有皮膚用シートである。
<5> ノニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン基を有する前記<1>から<4>のいずれかに記載の難水溶性薬剤含有皮膚用シートである。
<6> 難水溶性薬剤が、鎮痒剤、抗ヒスタミン剤、及び抗炎症剤の少なくともいずれかである前記<1>から<5>のいずれかに記載の難水溶性薬剤含有皮膚用シートである。
<7> 吸水性不織布が、天然繊維、及び再生繊維の少なくとも1種を含む前記<1>から<6>のいずれかに記載の難水溶性薬剤含有皮膚用シートである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来における諸問題を解決でき、難水溶性薬剤を含みながらも白濁が生じることなく、皮膚機能を改善することができ、患部に対し弱い刺激で汚れを拭取ることができ、拭取り時のさっぱり感とベタツキ感のなさとを両立し、拭取り時に白残りが生じることのない難水溶性薬剤含有皮膚用シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(難水溶性薬剤含有皮膚用シート)
本発明の難水溶性薬剤含有皮膚用シートは、皮膚疾患に対する難水溶性の薬剤を含有するシート状の治療剤である。
前記難水溶性薬剤含有皮膚用シートは、難水溶性薬剤含有組成物を吸水性不織布に含浸させてなり、更に必要に応じてその他の部材を含む。
【0013】
前記難水溶性薬剤含有組成物は、難水溶性薬剤、ノニオン性界面活性剤、エタノール、及び多価アルコールを含み、更に必要に応じてその他の成分を含む。
前記難水溶性薬剤含有組成物は、澄明な可溶化組成物である。ここで、前記澄明な可溶化組成物とは、第16改正日本薬局方において開示される澄明性試験法において、「澄明」と判定できる組成物であり、前記難水溶性薬剤を可溶化できる組成物である。
【0014】
<(A)難水溶性薬剤>
前記難水溶性薬剤は、前記難水溶性薬剤含有皮膚用シートの有効成分である。
前記難水溶性薬剤は、第15改正日本薬局方において開示されているように、やや水に溶け難い(1g/30mL)ものか、それよりも溶け難いもの、即ち、水溶性が1g/30mL以下の薬剤を意味する。
【0015】
前記難水溶性薬剤としては、難水溶性の薬剤であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、鎮痒剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤として用いられるものが好ましく、例えば、クロタミトン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、インドメタシン、ウフェナマート、吉草酸酢酸プレドニゾロン、グリチルレチン酸、トコフェロール酢酸エステル、イソプロピルメチルフェノールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記難水溶性薬剤の前記難水溶性薬剤含有組成物における含有量としては、1質量%以上であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、薬剤の有効性を担保することができる点で、1質量%〜20質量%が好ましい。
【0017】
前記難水溶性薬剤としては、特に制限はなく、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、クロタミトン(住友化学株式会社製)、吉草酸酢酸プレドニゾロン(金剛薬品株式会社製)などが挙げられる。
【0018】
<(B)ノニオン性界面活性剤>
前記ノニオン性界面活性剤は、前記難水溶性薬剤を可溶化し、患部に対し弱い刺激で皮膚等に付着した汚れを除去するための成分である。
【0019】
前記ノニオン性界面活性剤としては、前記難水溶性薬剤を可溶化することができ、患部に対し弱い刺激で皮膚等に付着した汚れを除去できる点で、HLBが10以上のノニオン性界面活性剤であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(POE)グリセリン脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビット脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油、POEステロール、POEアルキルエーテル、POEポリオキシプロピレン(POP)アルキルエーテル、ポリエチレングリコール(PEG)脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0020】
前記ノニオン性界面活性剤としては、HLBが10以上のノニオン性界面活性剤であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、少量で前記難水溶性薬剤を可溶化でき、皮膚刺激が少なく、さっぱり感及びベタツキ感の悪化を抑制できる点で、ポリオキシエチレン(POE)基を有するノニオン性界面活性剤がより好ましい。
【0021】
前記ノニオン性界面活性剤におけるHLBは、親水性−親油性バランス(Hydrophile−Lipophile Balance)、つまり、界面活性剤の分子がもつ親水性と親油性の相対的な強さを意味し、その親水親油バランスを数量的に表したものである。本願発明の難水溶性薬剤含有皮膚用シートでは、具体的には、Griffinの方法により求められた値を指す(吉田、進藤、大垣、山中共編、「新版界面活性剤ハンドブック」,工学図書株式会社,1991年,第234頁参照)。
【0022】
前記ノニオン性界面活性剤の前記難水溶性薬剤含有組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.3質量%〜15質量%が好ましく、0.6質量%〜15質量%がより好ましい。前記含有量が、0、3質量%未満であると、前記難水溶性薬剤を可溶化できないことがあり、拭取り時に患部に生じる刺激が強くなることがあり、15質量%を超えると、さっぱり感及びベタツキ感が悪化することがある。前記含有量が好ましい範囲であると、前記難水溶性薬剤を可溶化することができ、患部に対し弱い刺激で皮膚等に付着した汚れを除去できる点で有利である。
【0023】
前記ノニオン性界面活性剤としては、特に制限はなく、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、NIKKOL HCO−60(日光ケミカルズ株式会社製)、NIKKOL TO−10MV(日光ケミカルズ株式会社製)などが挙げられる。
【0024】
<(C)エタノール>
前記エタノールは、前記難水溶性薬剤の溶解を補助し、肌に塗布した際のベタツキ感を抑制する成分である。
【0025】
前記エタノールの前記難水溶性薬剤含有組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1質量%〜55質量%が好ましく、1質量%〜45質量%がより好ましく、15質量%〜45質量%が特に好ましい。前記含有量が、1質量%未満であると、前記難水溶性薬剤の溶解を補助する作用が小さくなり、前記難水溶性薬剤含有組成物から前記難水溶性薬剤が分離する可能性があり、また、肌に塗布した際のさっぱり感及びベタツキ感が悪化することがある。前記含有量が、55質量%を超えると、前記ノニオン性界面活性剤の有する皮脂などの刺激成分を清浄する作用が低減し、かつ刺激を感じる可能性がある。前記含有量が、前記好ましい範囲であると、前記難水溶性薬剤の溶解補助に優れ、肌に塗布した際のベタツキの抑制に優れる点で有利である。
【0026】
<(D)多価アルコール>
前記多価アルコールは、前記難水溶性薬剤の溶解、及び皮膚等に付着した汚れの除去を補助し、皮膚刺激を低減させるための成分である。
【0027】
前記多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,3−ブチレングリコール等の2価のアルコール;グリセリン等の3価のアルコール;D−ソルビトール等の6価のアルコール;ポリエチレングリコール等のアルコールアルキルエーテル;マルトテトラオース等の糖アルコール;ヘパリン類似物質等の多糖アルコールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記難水溶性薬剤の溶解補助、汚れの除去補助、及び皮膚刺激の低減に優れる点で、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコールが好ましい。
【0028】
前記多価アルコールの前記難水溶性薬剤含有組成物における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量%〜50質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましい。前記含有量が、5質量%未満であると、前記難水溶性薬剤の溶解補助及び汚れの除去補助が悪化することがあり、50質量%を超えると、ベタツキ感が悪化することがある。前記含有量が、前記好ましい範囲であると、前記難水溶性薬剤の溶解補助、汚れの除去補助、及び皮膚刺激の低減に優れる点で有利である。
【0029】
<(A)難水溶性薬剤と(B)ノニオン性界面活性剤との含有比>
前記難水溶性薬剤と前記ノニオン性界面活性剤との含有比(質量比)(難水溶性薬剤/ノニオン性界面活性剤)としては、0.2/1〜20/1であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5/1〜10/1が好ましく、0.5/1〜5/1がより好ましい。前記含有比が、0.2/1未満であると、前記難水溶性薬剤の有効性が十分に発揮されない恐れがあり、さっぱり感及びベタツキ感が悪化することがある。20/1を超えると、前記難水溶性薬剤の溶解性の低下や、汚れ除去効果が劣ることがある。
【0030】
<(C)エタノールと(D)多価アルコールとの含有比>
前記エタノールと前記多価アルコールとの含有比(質量比)(エタノール/多価アルコール)としては、0.05/1〜6/1であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05/1〜1/1が好ましく、0.05/1〜1/3がより好ましい。前記含有比が、0.05/1未満であると、さっぱり感及びベタツキ感が悪化することがあり、6/1を超えると、汚れ除去効果が劣ったり、拭取り時に患部に生じる刺激が強くなることがある。前記含有比が、前記より好ましい範囲であると、皮膚のベタツキ感を抑制することでき、汚れの除去補助が良好となる点で有利である。
【0031】
<(E)吸水性不織布>
前記吸水性不織布は、汗、皮脂等をふき取るための不織布であり、前記難水溶性薬剤含有組成物を保持し、皮膚等に塗布する際に用いる不織布である。
【0032】
前記吸水性不織布としては、前記難水溶性薬剤含有組成物を吸収し、その繊維の間や表面に十分量保持することができる素材であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コットン、パルプ、麻、シルク等の天然繊維;ポリノジック、キュプラ、リヨセル、アセテート、レーヨン等の再生繊維;ナイロン、アクリル、ポリアミド等の合繊繊維などが挙げられる。これらは、不織布としての吸水性を保つ範囲であればよく、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよく、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリウレタン等の吸水性の低い繊維を混合して使用してもよい。これらの中でも、天然繊維及び/又は再生繊維が好ましく、前記難水溶性薬剤含有組成物の保持量が良好で、肌触りがよく、汚れの除去効果が高い点で、コットン及び/又はレーヨンを含む不織布がより好ましい。
【0033】
前記吸水性不織布としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記天然繊維及び/又は前記再生繊維を、30質量%以上含むことが好ましく、55質量%以上含むことがより好ましく、80質量%以上含むことが更に好ましい。
【0034】
<(F)その他の成分>
本発明の難水溶性薬剤含有皮膚用シートには、前記その他の成分として本発明の効果を損なわない範囲で、通常の皮膚用シートに添加される任意成分を配合することができる。
【0035】
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水溶性薬剤、シリコーン油、エステル油、保湿剤、増粘剤、pH調整剤、経皮吸収促進剤、キレート剤、防腐剤、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、水溶性高分子、皮膜剤、紫外線吸収剤、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、HLBが10未満のノニオン性界面活性剤、香料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
−水溶性薬剤−
前記水溶性薬剤としては、皮膚外用剤として配合することができるものであれば、特に制限されないが、例えば、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、グリチルリチン酸塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
−シリコーン油−
前記シリコーン油としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の各種変性ポリシロキサン;3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
−エステル油−
前記エステル油としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、1,2−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
−保湿剤−
前記保湿剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル−1,2−ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl−ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
−増粘剤−
前記増粘剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルメチルエーテル(PVM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸及びそのナトリウム塩、ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリン塩架橋重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリン塩架橋重合体、ローカストビーンガム、グアガム、タマリントガム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト、ヘクトライト、ケイ酸AlMg(ビーガム)、ラポナイト、無水ケイ酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
−pH調整剤−
前記pH調整剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乳酸−乳酸ナトリウム、クエン酸−クエン酸ナトリウム、コハク酸−コハク酸ナトリウム、リン酸−リン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
−キレート剤−
前記キレート剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸、1−ヒドロキシエタン−ジフォスホン酸四ナトリウム塩、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、エデト酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸3ナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
−防腐剤−
前記防腐剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、フェノキシエタノールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
−粉末成分−
前記粉末成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機粉末(例えば、タルク、カオリン、雲母、絹雲母、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、パーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(例えば、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム等)、窒化ホウ素等);有機粉末(例えば、ポリアミド樹脂粉末、ポリエチレン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸との共重合体樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン粉末、セルロース粉末等);無機白色顔料(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛等);無機赤色系顔料(例えば、酸化鉄、チタン酸鉄等);無機褐色系顔料(例えば、γ−酸化鉄等);無機黄色系顔料(例えば、黄酸化鉄、黄土等);無機黒色系顔料(例えば、黒酸化鉄、低次酸化チタン等);無機紫色系顔料(例えば、マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等);無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等);無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等);パール顔料(例えば、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等);金属粉末顔料(例えば、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等);ジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料(例えば、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、黄色401号、及び青色404号などの有機顔料、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号及び青色1号等);天然色素(例えば、クロロフィル、β−カロチン等)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
−液体油脂−
前記液体油脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
−固体油脂−
前記固体油脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
−ロウ類−
前記ロウ類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
−炭化水素油−
前記炭化水素油としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
−高級脂肪酸−
前記高級脂肪酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
−高級アルコール−
前記高級アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等);分枝鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2−デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
−紫外線吸収剤−
前記紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、安息香酸系紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N−ジエトキシPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAブチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル等);アントラニル酸系紫外線吸収剤(例えば、ホモメンチル−N−アセチルアントラニレート等);サリチル酸系紫外線吸収剤(例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p−イソプロパノールフェニルサリシレート等);桂皮酸系紫外線吸収剤(例えば、オクチルメトキシシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、オクチル−p−メトキシシンナメート(2−エチルヘキシル−p−メトキシシンナメート)、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル−ジパラメトキシシンナメート等);3−(4’−メチルベンジリデン)−d,l−カンファー、3−ベンジリデン−d,l−カンファー、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール;2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニルベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン、5−(3,3−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オンジモルホリノピリダジノンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
−アミノ酸−
前記アミノ酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、中性アミノ酸(例えば、スレオニン、システイン等);塩基性アミノ酸(例えば、ヒドロキシリジン等)などが挙げられる。また、アミノ酸誘導体として、例えば、アシルサルコシンナトリウム(ラウロイルサルコシンナトリウム)、アシルグルタミン酸塩、アシルβ−アラニンナトリウム、グルタチオン、ピロリドンカルボン酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
−有機アミン−
前記有機アミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
−高分子エマルジョン−
前記高分子エマルジョンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル樹脂エマルジョン、アクリルレジン液、ポリアクリルアルキルエステルエマルジョン、ポリ酢酸ビニル樹脂エマルジョンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
−HLBが10未満のノニオン性界面活性剤−
前記HLBが10未満のノニオン性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
<難水溶性薬剤含有皮膚用シートの製造方法>
前記難水溶性薬剤含有皮膚用シートの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、第十五改正日本薬局方製剤総則ローション剤に準じて製造することができるが、前記難水溶性薬剤を前記ノニオン性界面活性剤に溶解して得られた溶解液を、前記エタノールと前記多価アルコールと精製水とを混合した液に加えて溶解し、次いで、メンブランフィルター(例えば、Millipore(株)製、Omnipore メンブランフィルターJHWP04700等)でろ過することにより難水溶性薬剤含有組成物を調製し、前記難水溶性薬剤含有組成物を前記吸水性不職布に含浸させることにより製造する方法が好ましい。
【0057】
<用途>
本発明の難水溶性薬剤含有皮膚用シートは、難水溶性薬剤を含みながらも白濁が生じることなく、皮膚機能を改善することができ、患部に対し弱い刺激で汚れを拭取ることができ、拭取り時のさっぱり感とベタツキ感のなさとを両立し、拭取り時に白残りが生じることがないため、例えば、化粧料、医薬品、医薬部外品等に好適に適用することができる。
【実施例】
【0058】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0059】
(実施例1〜43及び比較例1〜11)
<難水溶性薬剤含有皮膚用シートの製造>
表1〜7に記した組成に従い組成物を調製後、20cm四方の不織布に、不織布1gに対して前記組成物5gを含浸させて実施例1〜43及び比較例1〜9の難水溶性薬剤含有皮膚用シートとし、下記評価に供した。なお、表1〜7に記した数値は、質量%を表す。
【0060】
<評価>
各実施例及び各比較例で製造した難水溶性薬剤含有皮膚用シートに対し、「汚れ除去効果」、「拭取りによる肌刺激」、「さっぱり感」、「ベタツキ感」、及び「吸水性」について評価した。前記評価は全て、25℃、湿度60%の恒温恒湿の一定条件下で実施し、「×」と判定されたものは、満足な効果を有さないと判断した。結果をそれぞれ表1〜7に併記し、表8に用いた成分の市販品名を記載する。
なお、各実施例及び各比較例で調製した組成物を含浸させた難水溶性薬剤含有皮膚用シートは、50℃で2ヶ月保存後も薬剤の残存率は初期値の90%以上であった。また、実施例1〜43及び比較例3〜11で調製した組成物は澄明な可溶化組成物であったが、比較例1及び2で調製した組成物は白濁していた。
【0061】
<<汚れ除去効果の評価>>
評価パネル10名により、各実施例及び各比較例で得られた組成物を含浸させた難水溶性薬剤含有皮膚用シートを左内腕に施し、拭取り直後の汚れ除去効果を下記評価基準に従って官能評価した。
−汚れ除去効果の評価基準−
◎:10名中8名以上が不織布に汚れが付着しており、汚れが落ちた感があると回答
○:10名中6名〜7名が不織布に汚れが付着しており、汚れが落ちた感があると回答
△:10名中3名〜5名が不織布に汚れが付着しており、汚れが落ちた感があると回答
×:10名中2名以下が不織布に汚れが付着しており、汚れが落ちた感があると回答
【0062】
<<拭取りによる肌刺激の評価>>
前記拭取りによる肌刺激の評価は、患部に付着した汚れを拭取る際に生じる物理的刺激が低減されたことを確認するために行った。そのため、本評価は、実際に汚れが除去できたことが前提となる。そこで、上記「汚れ除去効果の評価」において、「◎」「○」「△」の評価となった実施例及び比較例についてのみ、本評価を実施した。また、前記拭取りによる肌刺激の評価は、上記「汚れ除去効果の評価」において、「不織布に汚れが付着しており、汚れが落ちた感がある」と回答したパネラーについてのみ、下記評価基準に従って官能評価した。
−拭取りによる肌刺激の評価基準−
◎:80%以上のパネラーが不織布による肌の刺激を感じないと回答
○:60%以上80%未満のパネラーが不織布による肌の刺激を感じないと回答
△:30%以上60%未満のパネラーが不織布による肌の刺激を感じないと回答
×:30%未満のパネラーが不織布による肌の刺激を感じないと回答
【0063】
<<さっぱり感の評価>>
評価パネル10名により、各実施例及び各比較例で得られた組成物を含浸させた難水溶性薬剤含有皮膚用シートを左内腕に施し、拭取り直後のさっぱり感を下記評価基準に従って官能評価した。なお、前記さっぱり感は、前記皮膚用シート中の組成物を肌に塗布した直後に肌が感じる感覚である。
−さっぱり感の評価基準−
◎:10名中8名以上がさっぱり感があると回答
○:10名中6名〜7名がさっぱり感があると回答
△:10名中3名〜5名がさっぱり感があると回答
×:10名中2名以下がさっぱり感があると回答
【0064】
<<ベタツキ感の評価>>
評価パネル10名により、各実施例及び各比較例で得られた組成物を含浸させた難水溶性薬剤含有皮膚用シートを左内腕に施して、拭取ってから20分間経過後のベタツキ感を下記評価基準に従って官能評価した。なお、前記ベタツキ感は、前記皮膚用シート中の組成物を肌に塗布して20分間経過した後、肌に触れたときのベタツキの感覚である。
−ベタツキ感の持続の評価基準−
◎:10名中8名以上がベタツキを感じないと回答
○:10名中6名〜7名がベタツキを感じないと回答
△:10名中3名〜5名がベタツキを感じないと回答
×:10名中2名以下がベタツキを感じないと回答
【0065】
<<吸水性の評価>>
各実施例及び各比較例で得られた組成物を含浸させた難水溶性薬剤含有皮膚用シートで用いた不織布への吸水性の評価は、それぞれの不織布の0.15gに相当する面積を採取し、不織布の中央部分にスポイトを用いて前記組成物1gを滴下し、以下の基準により評価した。
−吸水性の評価基準−
◎:不織布に非常に吸水させやすい
○:不織布に吸水させやすい
△:不織布にやや吸水させにくい
×:不織布に吸水させにくい
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
【表4】

【0070】
【表5】

【0071】
【表6】

【0072】
【表7】

【0073】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の難水溶性薬剤含有皮膚用シートは、難水溶性薬剤を含みながらも白濁が生じることなく、皮膚機能を改善することができ、患部に対し弱い刺激で汚れを拭取ることができ、拭取り時のさっぱり感とベタツキ感のなさとを両立し、拭取り時に白残りが生じることがないため、例えば、化粧料、医薬品、医薬部外品等に好適に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難水溶性薬剤含有組成物を、吸水性不織布に含浸させた難水溶性薬剤含有皮膚用シートであって、
前記難水溶性薬剤含有組成物が、少なくとも難水溶性薬剤、ノニオン性界面活性剤、エタノール、及び多価アルコールを含む澄明な可溶化組成物であり、
前記難水溶性薬剤の前記難水溶性薬剤含有組成物における含有量が1質量%以上であり、
前記ノニオン性界面活性剤のHLBが10以上であり、
前記エタノールと前記多価アルコールとの含有比(エタノール/多価アルコール)が0.05/1〜6/1であり、
前記難水溶性薬剤と前記ノニオン性界面活性剤との含有比(難水溶性薬剤/ノニオン性界面活性剤)が0.2/1〜20/1であることを特徴とする難水溶性薬剤含有皮膚用シート。
【請求項2】
エタノールと多価アルコールとの含有比(エタノール/多価アルコール)が、0.05/1〜1/3である請求項1に記載の難水溶性薬剤含有皮膚用シート。
【請求項3】
ノニオン性界面活性剤の難水溶性薬剤含有組成物における含有量が、0.3質量%〜15質量%である請求項1から2のいずれかに記載の難水溶性薬剤含有皮膚用シート。
【請求項4】
エタノールの難水溶性薬剤含有組成物における含有量が、1質量%〜55質量%である請求項1から3のいずれかに記載の難水溶性薬剤含有皮膚用シート。
【請求項5】
ノニオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン基を有する請求項1から4のいずれかに記載の難水溶性薬剤含有皮膚用シート。
【請求項6】
難水溶性薬剤が、鎮痒剤、抗ヒスタミン剤、及び抗炎症剤の少なくともいずれかである請求項1から5のいずれかに記載の難水溶性薬剤含有皮膚用シート。

【公開番号】特開2013−35830(P2013−35830A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−152742(P2012−152742)
【出願日】平成24年7月6日(2012.7.6)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】