説明

難水溶性(疎水性)液体および固体活性成分のカプセル化および放出制御のための方法

本発明は、水中で均一な懸濁液を調製するための、およびまたカプセル化された活性成分の放出制御のための、疎水性の、または疎水性に修飾された、多孔性微粒子の、疎水性物質を用いた充填と、その後の、結果として生じる疎水性粒子の、交互積層(LbL)高分子電解質技術を用いるカプセル化に関する。LbL表面の特異的修飾を通じて、標的部位での好ましい接着を実現することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中で均一な懸濁液を調製するための、およびまたカプセル化された活性成分の放出制御のための、疎水性の、または疎水性に修飾された、多孔性微粒子の、疎水性物質を用いた充填と、その後の、結果として生じる疎水性粒子の、交互積層(LbL)高分子電解質技術を用いるカプセル化に関する。LbL表面の特異的修飾を通じて、標的部位での好ましい接着を実現することが可能である。
【0002】
交互に吸着された高分子電解質層(交互積層LbL)から形成されるマイクロカプセルは、たとえば、参照により全体が本開示に含まれる、[1]から知られており、およびDE19812083A1,DE19907552A1,EP0972563,WO99/47252 および US6,479,146に記載される。それらの調整可能な半透性のため、そのようなカプセル系はマイクロリアクター、ドラッグデリバリーシステムなどとして高い応用可能性を有する。前提条件は、適当な活性成分、酵素、ポリマーまたは触媒での充填である。
【0003】
これまでに、高分子物質および水溶性物質で内部を充填されうるLbLマイクロカプセルが調製されている。これまでに知られた技術は、高分子電解質フィルムを用いて難水溶性または疎水性活性成分を主に単分散形でカプセル化することができない。
【0004】
疎水性活性成分のマイクロカプセル化のための下記の選択肢が知られている:
【0005】
a)複合コアセルべーション
この方法では、疎水性活性成分の水中油エマルジョンが調製され、および、水相のpHを変化させることによって、ゼラチンおよびアラビアゴムのシェルが付与される。そのような多分散カプセルは乾燥さえされうるが、しかし一般的には機械的作用後にまたはpHが変化する際にはじめて、活性成分を再び放出する。
【0006】
b)エマルジョン重合
エマルジョンにおいて、油/水界面にて、モノマーが架橋されてポリマーシェルを与える。これらのカプセルの分散度は同様に高く、およびエマルジョンの品質によって決定される。また、放出速度は、LbL層の場合ほど細かく調節できない。
【0007】
c)固体活性成分の可溶化
特許WO01/51196,WO2004/030649A2およびPCT/EP03/10630によると、水溶液中の懸濁液のより良好な安定性を達成するために、粉末の活性成分にいくつかのLbL層が付与される。この方法では、多分散のおよび非球状の粒子が得られる。コーティング中に、特に非常に広範囲の微結晶上に(たとえば針または血小板)、破片が生じ、それは不均一な放出速度に、およびオストワルド熟成のまたは今は部分的に疎水性の表面の凝集の結果としての、その後の懸濁液の不安定性に繋がる。
【0008】
d)コア−シェル構造
別の方法(同一出願者の2004年3月19日付の未公開DE102004013637.8)は、多孔性粒子中の材料の吸着を、LbL技術によるその後のカプセル化と共に用いる。ここでは、高分子電解質層によって放出もまた修飾されうる、球状のおよび主に単分散の粒子が得られる。しかし、高い表面電荷を有する記載の親水性粒子を用いては、疎水性活性成分を、または非水溶性油さえも、固定化するのは不可能である。
【0009】
したがって、活性成分が
a)多孔性材料の内部でより高い濃度に濃縮されうる
b)疎水性粒子がLbL高分子電解質層を用いて水中に懸濁されうる
c)活性成分が遅延してまたはトリガーによって放出されうる、
疎水性活性成分のカプセル化のための方法を示すことが本発明の目的である。
【0010】
本発明によると、この目的は、下記の段階を含む、活性成分を積載した粒子の調製のための方法によって達成される:
−疎水性内表面および外表面を有する多孔性テンプレートが調製され、多孔性テンプレートは直径100μm未満の多孔性微粒子である;
−カプセル化すべき少なくとも一つの疎水性活性成分がテンプレートに吸着される;
−活性成分が吸着されたテンプレートが水系媒体に懸濁される;および
−水系媒体中での単分散粒子の安定懸濁液が形成されるように、交互に荷電高分子電解質および/またはナノ粒子層を付加することによって親水性LbLカプセルシェルが多孔性テンプレートの周囲に形成される。
【0011】
多孔性テンプレートは、
−内表面および外表面が疎水化された、合成および/または天然に存在する無機親水性微粒子;または
−多孔性構造を有する疎水性有機微粒子
でありうる。
【0012】
疎水性表面での積載テンプレートのLbLコーティングは、助剤または添加剤を必要としない、水系媒体中の安定懸濁液に繋がる。
【0013】
吸着された活性成分を積載したテンプレートは、少なくとも一つの添加剤を用いて水系媒体中に懸濁でき、添加剤は表面への吸着によって水系媒体中の粒子を安定化する。
【0014】
内表面とは孔壁によって形成される表面を意味すると理解され、一方、外表面とは外側に面したテンプレートの表面を意味する。
【0015】
本発明の目的で、多孔性親水性微粒子とは、特に、多数の孔すなわち内部空隙を有する無機アルミケイ酸または純粋なケイ酸の粒子を意味すると理解される。これらの孔は適当な化学処理によって疎水化されている。代替的に、疎水性有機微粒子もまた、それ以上の修飾無しに使用されうる。テンプレートの充填は、疎水性活性成分が容易に溶解しうる溶媒を用いて有利に起こる。充填後、非常に疎水性なテンプレートは、たとえば、界面活性剤または両親媒性ポリマーのような添加剤を用いて、水溶液中に懸濁される。次いで、ポリカチオンおよびポリアニオンの交互の層が、通常のLbLコーティング技術に従って加えられる。少なくとも2層の上で、粒子はますます静電気的に安定化され、それは、懸濁液中で凝集現象がほとんど起こらず、界面活性剤または他の助剤の添加がもはや必要ないことを意味する。
【0016】
少なくとも一つの添加剤を用いた積載疎水性テンプレートの懸濁後、添加剤と同一の電荷を有する高分子電解質を水系媒体に加えるならば好ましいと証明されている。添加剤が正電荷を有するならばポリカチオンが加えられ、および負に荷電した添加剤の場合はポリアニオンが加えられる。この添加は、カプセルシェルの構造に必要であると証明されている。
【0017】
カプセルシェルは、少なくとも2から3以上の、交互に荷電した高分子電解質層および/またはナノ粒子層から成る。最大20または30のそのように交互に荷電した層を有するカプセルシェルが可能である。各層は順次加えられ、構造に用いられる高分子電解質および/またはナノ粒子が、前に加えられた層の上に静電気的に集合する。
【0018】
使用される テンプレートは、サイズが好ましくは100μm未満の多孔性微粒子である。微粒子は、たとえば、0.3nm〜100nm、好ましくは1nm〜30nmの孔幅の孔を有する。多数の用途で、孔幅の下限は1nmないし6nm、たとえば2nmまたは4nmでよく、および孔幅の上限は10nmないし40nm、たとえば15nmまたは30nmでありうる。原則として、孔幅は、活性成分が孔を透過しおよび孔に沈着してカプセル化されるのを可能にするほど十分な大きさであるべきである。したがって、孔の内壁で形成される大きな内表面を有する多孔性テンプレート(疎水性および/または疎水性に修飾された親水性微粒子)が好ましい。
【0019】
たとえばケイ酸塩またはアルミケイ酸塩のような親水性無機微粒子を用いる場合、粒子の内表面および外表面は負荷前に疎水性に修飾される。他の化学処理に加えて、Si−OH基のアルキル−またはアリール−アルコキシシランとの反応が特にこれに適している。疎水性の程度は、表面部分当たりのアルキル鎖の長さおよび数によって選択的に調整されうる。結果として、多孔性粒子および疎水性活性成分間の相互作用のエネルギーが調整でき、それは疎水性材料での充填の程度および、何よりも、放出速度の調節を可能にする。
【0020】
カプセルシェルの構築後、テンプレートは、活性成分だけがカプセルシェルに封入されて残るように適当に分離されうる。
【0021】
さらに、目的は、
−100μm未満の直径;
−少なくとも一つの疎水性活性成分が吸着されている疎水性内表面および外表面を有する多孔性コア;および
−交互に荷電した高分子電解質および/またはナノ粒子層の複数の層を有するカプセルシェル
を有する粒子によって達成される。
【0022】
その多孔性コアが記載の多孔性テンプレートである。任意に、多孔性コアおよびカプセルシェルの間に、コアを囲みおよびカプセルシェルの構造の改善に寄与するプライマー層が配置されうる。
【0023】
調製されおよび活性成分で充填された粒子は、たとえば下記のような多数の分野で有利に使用されうる
−製薬および化粧品工業において、カプセル化に、目的部位への接着に、および疎水性活性成分の放出に
−化粧品、医薬、洗剤生産および手入れ用品生産(皮革工業)の分野で、安定水懸濁液としての油および香料のカプセル化に
−目的の表面への接着後、規定の放出速度を有する、油および疎水性固体のカプセル化に
−周囲条件の変化(pH、機械的ストレス、溶媒または界面活性剤の影響、乾燥、熱など)に際して放出トリガーされる、油および疎水性固体のカプセル化に
−食品工業および農業および林業での応用に。
【0024】
本発明の他の有利な実施形態は、方法または充填された粒子に関するかどうかとは無関係に、図を参照して以下に記載される。
【0025】
各処理段階は図1を参照して説明される。好ましくは、内表面および外表面がたとえばアルキルアルコキシシランで疎水性に修飾された、規定の空隙率を有するコロイド親水性微粒子(テンプレート)が使用される。これらの微粒子は、カプセル化されるべき材料(下記で活性成分と呼ばれる)で目的の濃度に充填される。図1は、後の時点で内部に永久的に固定化されるかまたは、適当な壁透過性の場合には調節放出される、活性成分での重点を示す。
【0026】
活性成分は無機または有機材料で作られた任意の液体または固体疎水性材料でありうる。特に、カプセル化されるべき活性成分は、水に溶解できないかまたは溶解が非常に困難である固体または油である。通常は、安定な懸濁液またはエマルジョンを作製するためには、別の助剤(たとえば界面活性剤)が必要である。特に、カプセル化されるべき物質は、医薬または化粧品の活性成分、たとえば香料、皮膚保護油脂、UV吸収剤、および/または洗浄および手入れ組成物添加剤、たとえば脂質、シリコーン油および/または潤滑剤および/または作物保護組成物でありうる。カプセル化されるべき活性成分は、孔内での沈着に関して、異なる親和性または結合定数を有しうる。活性成分はその結合定数に依存して、内表面上の利用可能な結合部位を占める。表面との相互作用は、疎水化の程度(アルキルまたはアリール基の数およびサイズ)を通じて適合されうる。
【0027】
テンプレートの充填(段階A)
疎水性活性成分4での疎水化多孔性テンプレート2の充填は、主に分散相互作用を基礎とする引力相互作用を通じて起こる(疎水性相互作用またはファンデルワールス相互作用ともいう)。特に、二つの異なる過程が充填に用いられる:
1.疎水性材料4を、たとえば、エタノール、アセトン、アセトニトリルなどといった水と混和可能な有機溶媒に溶解する。粒子2の添加後、溶媒の極性を、常に撹拌しながら溶液中の活性成分の飽和点まで、水の段階添加によって高める。上清を水で洗い去る。
2.活性成分4を、充填に使用する量で有機溶媒に溶解する。粒子2の添加後、溶媒を撹拌でおよび任意に加熱でまたは減圧下で完全に蒸発する。充填された粒子5は残る。過剰に多量の活性成分の場合または粒子表面への活性成分の親和性が低すぎる場合のみ、微結晶または油状の活性成分の残りが粒子の外に残される。それ以外は、活性成分は粒子内だけに位置する。
【0028】
活性成分での充填のために、充填されるべき分子のサイズに合わせた孔径が用いられる。特に多孔性ケイ酸粒子の場合、0.1ないし5000kDa(100g/mol〜5000000g/mol)の分子は0.4ないし100nmの孔径内に挿入されうる。複数の活性成分もまた、同等の結合定数の場合には同時に、または異なる結合定数の場合には順に、挿入されうる。これに関連して、より高い結合定数を持つ活性成分は完全に充填されない、すなわちその濃度は、この活性成分がすべての利用可能な結合部位を占めないように選択される。その後、不完全に充填された粒子は別の活性成分で充填される。結果として、テンプレート2は主に活性成分4で充填される。
【0029】
可溶化(段階B)
今や充填されたテンプレート5は、水溶液中で、公知のLbL処理または同様の1段階工程によってコーティングされる。このために、最初の段階で、それらを水に懸濁しなければならず、それはほとんどの場合、さまざまな種類の界面活性剤または同様の両親媒性ポリマーの添加でのみ可能である。ここで、適当な助剤を、活性成分を粒子内部から溶解せず、およびミセルの形で可溶化する、可能な最低濃度で選択する。加えて、界面活性剤を用いた水への懸濁後、界面活性剤と同一の電荷を有する高分子電解質が添加されうる。作用形態は完全には明らかでないが、および何ら限定を課することを意図しないが、この高分子電解質は、プライマー電解質ともいうが、界面活性剤を部分的に抑制しおよび/または界面活性剤と共にプライマー層を形成すると考えられている。
【0030】
任意に、プライマー層6もまた付加されうる。任意なプライマー層6は以降の段階では記載されない。
【0031】
コーティング(段階C)
水に懸濁された充填粒子は、交互に陽イオンおよび陰イオン的に荷電した物質(高分子電解質)、好ましくはポリマーでコーティングされる。一つの高分子電解質層の後でさえ、界面活性剤は概ね不要になりうる。荷電および疎水性の程度に依存して、2〜6層後、粒子が静電気的に安定化された形で存在する(凝集に向かう傾向無しに)、水中での均一な粒子懸濁液が得られる。安定懸濁液を調製するための他の添加剤はもはや必要ない。
【0032】
LbLカプセルの透過性は、付加される層の数、高分子電解質の組み合わせを通じて、アニーリングによる後処理を通じて、またはカプセル壁への別の物質の導入を通じて、特定のカプセル化された材料について特異的に調整されうる[8]。カプセル壁の構成後、充填された多孔性コアを有するコーティングされた粒子10が現れる。カプセル壁の形成に適した物質および適した製造工程は、既に言及した文書DE19812083A1、DE19907552A1、EP0972563、WO99/47252およびUS6,479,146に見出すことができる。
【0033】
規定の標的としてのこれらの粒子の吸着は、時には非常に特異的に、最も外側の高分子電解質層および標的の間の相互作用によって達成されうる。このために、最も単純な場合には、粒子の外側の電荷(負または正)の調整、またはより規定された、目的の表面に対する高い親和性を有する高分子電解質を用いるコーティング、または、非常に特異的に、粒子表面と共有結合された生物分子を介する受容体の認識による(ストレプトアビジン、ビオチン、タンパク質、ペプチド、DNA、RNA)のが有用である。
【0034】
活性成分の任意な放出(段階D)
活性成分は、任意に、活性成分で充填された微粒子10から調節された方法で放出されうる(図1)。放出は、ここでは、遅延した方法で、さもなければシグナルによってトリガーされて起こりうる。そのようなトリガーは、たとえば、
a)粒子を乾燥
b)活性成分を容易に溶解する(有機溶媒)の濃度上昇
c)活性成分を可溶化する界面活性剤
d)pH変化
e)機械的ストレス
f)温度上昇
g)および前記因子の組み合わせ
によって達成されうる。
【0035】
放出速度は、たとえば:
1.粒子表面への結合定数(疎水性)
2.LbLカプセル壁の厚さ
3.カプセル壁材料
4.壁材料の架橋
といったさまざまなパラメーターを通じて変化させることができる。
【実施例】
【0036】
1.疎水性色素ペリレン:モデル色素ペリレン12.5mgをクロロホルム6mlに溶解した。100mgの球状多孔性シリカテンプレート(直径5μm、孔径6nm)のクロロホルム1ml中の懸濁液をそこに加えた。テンプレートの表面はC18アルキル鎖(RP18、クロマトグラフィー材料)で疎水性に修飾されている。溶媒を40℃にて乾燥キャビネット内で撹拌しながら蒸発させた。残った粉末を、1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用いて水に懸濁した。図2aは、SDSにもかかわらずまだ非常に凝集した形で存在する、ペリレンで充填された粒子の共焦点顕微鏡像を示す。粒子中のペリレンの蛍光の他に、より小さい充填量を用いてはもう見られない、純粋な色素のいくつかのより大きい(およびより明るい)結晶もまた見られる。SDS溶液を遠心分離で除去し、および粒子を1g/l Cy5標識化ポリ(アリルアミン塩酸塩)(PAH−Cy5、MW70000g/mol)、pH6.5および0.5M NaClの溶液500μlと共に20分間、超音波を短時間用いて、インキュベートした。粒子を水で3回洗浄後、1g/lのポリ(4−スチレンスルホナートナトリウム)(PSS、MW70000g/mol)を含む0.5M NaCl、pH6.1の溶液500μlを加える。懸濁液を20分間、超音波を短時間用いてインキュベートし、および上清を水で3回洗浄して除去した。これらの2つのLbL層の後、凝集はまだあちこちで起こった(図2b)。その後のコーティングは凝集傾向をさらに低下させ、6番目の層以降はすべての粒子が水中で個別に分離した形で存在した(図2c)。拡大では、緑色の蛍光疎水性ペリレンを内部に明瞭に見ることができる(図2d)。長波長(ここでは青色で示される)蛍光Cy5標識化された親水性カプセル壁(図2e)は粒子の周りに閉じた層を形成し、および疎水性内部へ透過しない。
【0037】
得られた粒子の分析は、 内部で、粒子100mg当たりペリレン濃度8.5mg を示した(図2d)。粒子の内部でのペリレンの濃度は、共焦点顕微鏡によって対照溶液を参照して測定した。ここでは、カプセルの内部の色素の高い濃度は自己消光に繋がる可能性があり、見かけ上はより低濃度となる。
【0038】
2.疎水性活性成分イミダクロプリド:
いくらか水溶性の活性成分イミダクロプリド25mgを、アセトン3mlに溶解し、および球状多孔性シリカテンプレート100mg(直径5μm、孔径6nm)を加えた。30分間インキュベート後、溶液が、さらに顕著な混濁から明らかな、イミダクロプリドの飽和に達するまで、水を段階的に添加した。上清を遠心分離で除去し、および粒子を1%SDS溶液で懸濁した。これに関連して、ここでおよび下記の洗浄およびコーティング溶液のすべてにおいて、粒子からの溶出を防ぐため、イミダクロプリド飽和溶液が用いられた。PSSおよびPAHを用いたコーティング後(実施例1と同様に)、15%m/m(イミダクロプリドの質量/粒子の質量)で充填された分離した粒子が得られた(図3)。イミダクロプリドの量は、活性成分の大過剰でのメタノール中での放出とその後の上清のUV/可視スペクトル分析によって測定した。
【0039】
3.香油(オレンジ油およびペパーミント油)
ペパーミント油50mgをアセトン1mlに溶解した。200mgの球状多孔性シリカテンプレート(直径5μm、孔径6nm、疎水性C18修飾)のアセトン2mlの懸濁液をそこに加えた。溶媒を20℃にて撹拌しながら蒸発させた。残った粉末を、1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用いて水2.5mlに超音波を用いて懸濁した。SDS溶液を遠心分離除去し、および粒子を1g/lのPSS、pH5.6および0.5M NaClの溶液2.5mlと共に20分間、超音波を短時間用いて、インキュベートした。粒子を水で3回洗浄後、粒子はここでも顕著に凝集している(図4a)、さらに4層のPAHおよびPSSでのコーティングは、水中でよく分離した粒子を生じた(図4b)。数週間保存後でさえ、それらは問題無く再び混合できた。メタノール中で2時間の粒子のインキュベートは、粒子当たりペパーミント油22%の放出量を生じた。この量は、粒子を遠心分離で除去した後の上清について230nmでのUVスペクトルによって測定した。オレンジ油は同様にカプセル化されおよび放出量19.2%を生じた。
【0040】
メタノール中での放出が定量的に起こる一方、水中では事実上、香油は粒子外へ溶出されず、すなわち懸濁液は事実上無臭である。しかし、粒子を乾燥または加熱することによって、または粒子を機械的に破壊することによって、たとえば化粧品または繊維製品用途に重要なトリガー放出が達成されうる。このために、負に荷電した繊維表面に良好に接着するペパーミント粒子を木綿に配置した。材料が濡れている限り、試料は事実上無臭である。乾燥後、匂いは増強しおよび長期間にわたって一定に留まる。物質が摩擦または加熱(2分間70℃にて)される場合、試料はより強く香り、時間経過に伴って匂いは再び弱まる。匂いの分析は被験者4姪によって独立に実施された。
【0041】
4.光吸収剤OMC/非球状粒子
UVA吸収剤として化粧品に用いられる疎水性メトキシ桂皮酸オクチル油(OMC)を非球状ケイ酸粒子にカプセル化した。OMC380mgをアセトン5mlに溶解した。アセトン2mlに懸濁した1.5gの壊れた多孔性シリカテンプレート(サイズ約5μm、孔径10nm、疎水性C18修飾)の懸濁液をそこに加えた。そのような粒子は球状粒子よりも相当に安価であるが、しかし相対的に大きい接触面積のために、球状の代替物よりも高い程度で凝集物を形成するという短所がある。溶媒を20℃にて撹拌しながら蒸発させた。残った粉末を、1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用いて水2.5mlに超音波を用いて再懸濁した。SDS溶液を遠心分離除去し、および粒子を1g/lのアルギン酸ナトリウム、pH5.6および0.5M NaClの溶液2.5mlと共に20分間、超音波を短時間用いて、インキュベートした。さらに5層(外側正)および6層(外側負)のPAHおよびPSSでのコーティングは、両方の電荷について、水中で良好に分離した粒子を生じた(図5a、b)。メタノール中で2時間の粒子のインキュベートは、粒子当たりOMC22%の放出量を生じた。この量は、粒子を遠心分離で除去した後に、上清中で310nmでのUVスペクトルによって測定した。
【0042】
OMCの不溶性のため、水中での放出は起こらない。対照的に、メタノールに水系懸濁液が加えられるならば、OMCは数秒以内に放出される(トリガーされる)。非水系溶媒中では、LbL層は構造変化の結果として透過性が大幅に増大することがよく知られている[2]。水中のメタノール濃度を低下させることは、脂の漸増的に遅くおよび不完全な放出に繋がる(粒子相および溶液相の間のネルンスト分配係数に依存する)。
【0043】
参照一覧
2 多孔性テンプレート
4 活性成分
5 活性成分で充填されたテンプレート
6 プライマー層
8 カプセルシェルの層
9 カプセルシェル
10 充填された親水性粒子
【0044】
文献
[1] E.ドナト(Donath),G.B.スコルコフ(Sukhorukov),F.カルーソ(Caruso),S.A.デービス(Davis),M.メーワルト(Mohwald),Angewandte Chemie−International Edition 1998,37,2202−2205.
[2] B.−S−キム(Kim),O.レベデワ(Lebedeva),O.I.ビノグラドワ(Vinogradova)他.Macromolecules 2005,38,5214−5222
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は本発明に記載の方法の各処理段階、および結果として生じる、疎水性材料で充填されたマイクロカプセルを示す。
【図2】図2aは助剤と共に水に懸濁された疎水性活性成分を負荷されたテンプレートの共焦点像を示す。 図2bは二つのLbL層で形成されたカプセルシェルを伴う負荷されたテンプレートを示す。 図2cは六つのLbL層で形成されたカプセルシェルを伴う負荷されたテンプレートを示す。 図2dは粒子の内部の蛍光活性成分の共焦点顕微鏡像を示す。 図2eは蛍光(Cy5標識化)LbLカプセルシェルの共焦点顕微鏡像を示す。
【図3】図3は、a)一つのPSS層後、b)6層のPAH/PSS後(別個のイミダクロプリド結晶もまた時々カプセルの外側に見られる)の、イミダクロプリド充填された粒子の透過電子顕微鏡像を示す。;
【図4】図4は、a)一つのPSS層後、b)さらに4層のPAH/PSS後の、ペパーミント油で充填された5μm粒子の透過電子顕微鏡像を示す。
【図5】図5は、a)6つの高分子電解質層(正に荷電)を有する、およびb)7つの高分子電解質層(負に荷電)を有するOMC充填粒子を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の段階を含む、活性成分積載粒子の調製のための方法:
−疎水性内表面および外表面を有する多孔性テンプレートが調製され、多孔性テンプレートは直径100μm未満の多孔性微粒子である;
−カプセル化すべき少なくとも一つの疎水性活性成分がテンプレートに吸着される;
−活性成分が吸着されたテンプレートが水系媒体に懸濁される;および
−水系媒体中での単分散粒子の安定懸濁液が形成されるように、交互に荷電高分子電解質および/またはナノ粒子層を付加することによって親水性LbLカプセルシェルが多孔性テンプレートの周囲に形成される。
【請求項2】
多孔性テンプレートが、多孔性の合成および/または天然に存在する無機親水性微粒子である点;および疎水性外表面および内表面を有するテンプレートが得られるように親水性微粒子の内表面および外表面が疎水化されている点で特徴づけられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
疎水化されるべき親水性微粒子がケイ酸塩またはアルミケイ酸塩である点で特徴づけられる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
テンプレートが多孔性疎水性有機微粒子である点で特徴づけられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
カプセル化されるべき疎水性活性成分が液体または固体である点で特徴づけられる、前記請求項のうちの一つに記載の方法。
【請求項6】
水系媒体中の懸濁液において、積載テンプレートが一つ以上の添加剤を用いて懸濁され、その一または複数の添加剤がテンプレートを水系媒体中で表面への吸着によって安定化する点で特徴づけられる、前記請求項のうちの一つに記載の方法。
【請求項7】
内部に吸収された活性成分を有する疎水性テンプレートの懸濁後、添加剤と等しい電荷のプライマー高分子電解質が水系媒体に添加される点で特徴づけられる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
プライマー高分子電解質の添加後、カプセルシェルがテンプレートへ、プライマー電解質とは反対の電荷の高分子電解質および/またはナノ粒子から始めて付加される点で特徴づけられる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
添加剤が両親媒性ポリマーである点で特徴づけられる、請求項6から9のうちの一つに記載の方法。
【請求項10】
LbLカプセルシェルの表面が、選択的に結合するリガンドを与えられている点で特徴づけられる、前記請求項のうちの一つに記載の方法。
【請求項11】
−100μm未満の直径;
−少なくとも一つの疎水性活性成分が孔内に吸着されている、疎水性内表面および外表面を有する多孔性コア;および
−交互に荷電した高分子電解質および/またはナノ粒子層の複数の層を含む多孔性コアの周囲の親水性カプセルシェル
:を含む粒子。
【請求項12】
多孔性コアが疎水性有機材料から構成される点で特徴づけられる、請求項11に記載の粒子。
【請求項13】
多孔性コアが疎水化表面を有する親水性材料から成る点で特徴づけられる、請求項11に記載の粒子。
【請求項14】
多孔性コアがケイ酸塩またはアルミケイ酸塩から成る点で特徴づけられる、請求項13に記載の粒子。
【請求項15】
多孔性コアの孔が、0.3nm〜100nmの、好ましくは1nm〜30nmの孔幅を有する点で特徴づけられる、請求項11から14のうちの一つに記載の粒子。
【請求項16】
油および疎水性医薬活性成分および化粧品活性成分をカプセル化するための、請求項11から15のうちの一つに記載の粒子および/または請求項1から10のうちの一つに従って得られた粒子の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−507592(P2009−507592A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530434(P2008−530434)
【出願日】平成18年9月18日(2006.9.18)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009063
【国際公開番号】WO2007/031345
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(505040121)カプサルーション ナノサイエンス アクチェン ゲゼルシャフト (7)
【Fターム(参考)】