説明

難溶性活性物質のための医薬組成物

【課題】特に好適な賦形剤を選択することによる、経口投与のための活性剤の溶解性、吸収能力、従って、また活性剤の生体内利用能の増加または改善する医薬組成物およびその組成物の製造法の提供。
【解決手段】親油性添加剤および非イオン性界面活性剤と、ポリグリセロール脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択される、10以下の親水性−親油性バランス(グリフィンのHLB値による)を有する本質的に純粋なまたは混合物としての共界面活性剤とを含む担体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難溶性活性剤のための医薬製剤およびそのような製剤の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、錠剤、カプセルまたは糖衣錠のような経口投与の手段により薬理活性剤を投与することは、例えば、他の非経口の形の投与よりも利点がある。純粋に主観的に、注射により処置しなければならない疾病は、殆ど錠剤、カプセルまたは糖衣錠の投与が処方される疾病よりも重いと認識される。幾つかの例外を除いて、このような形態が患者自身が投与するのに適合していることが具体的な利点であり、一方、非経口投与は、医者または資格を有する医療補助者によって投与されなければならない。
【0003】
経口投与形の投与および分解の後、胃腸管内の液体、例えば胃または腸液が活性剤に働く。経口投与のための多くの活性剤は親油特性を有し、従って胃腸管の水性環境では難溶性である。この場合、吸収され得る活性剤の量は減少し、その生体内利用能は減少する。一般に、活性剤の高用量での投与が必要になる。作用の増加した生体間変化および望ましくない変動が結果として起こる。
【0004】
難溶性活性剤の溶解性を改善するために、いわゆる可溶化剤、例えばエタノール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールのような親水性共溶媒またはレシチン、脂肪酸ポリグリコールエステルまたは脂肪酸グリセロールポリグリコールエステルのような親油性可溶化剤が記載されている。このような可溶化剤を使用する場合、減少した耐性および投与形の不適当な安定性、例えば分離作用による問題が起こる。
【0005】
従って、ドイツ公開特許DOS4005190において、グリセロール脂肪酸部分エステル、またはプロピレングリコールの部分エステルを使用すべきであると提案された。これらの賦形剤(共界面活性剤)は、それらが2から3の狭いHLB範囲でのみ入手可能であるため、不都合である。溶解すべき活性剤を異なった可溶性に合わせる目的のための担体組成物中の成分の比の限定された変化しか可能にしない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特に好適な賦形剤を選択することによる、経口投与のための活性剤の溶解性、吸収能力、従って、また活性剤の生体内利用能の増加または改善の問題を基にしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この問題は、担体組成物中で、水に難溶性の活性剤の溶解性を改善するために特に有利な医薬組成物に関する本発明により解決される。本発明の担体組成物は以下の成分を含む:
a)担体組成物を基本にして約10−50重量%の、ポリグリセロール脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択される、10以下の親水性−親油性バランス(グリフィンのHLB値による)を有する本質的に純粋なまたは混合物としての共界面活性剤;
b)担体組成物を基本にして約5−40重量%の、必須親油性成分としてトリグリセリドを含む、本質的に純粋なまたは混合物としての薬理学的に許容可能な油;および
c)担体組成物を基本にして約10−50重量%の、HLB値が10以上を有する本質的に純粋なまたは混合物としての非イオン性界面活性剤;
および所望により他の薬理学的に許容可能な賦形剤。
【0008】
加えて、上記成分からなる担体組成物中の可溶化難溶性活性剤を有する医薬組成物の製造法がまた本発明の目的である。本医薬組成物は、例えば澱粉、硬ゼラチンまたは軟ゼラチンカプセルのような経口単位用量形に充填するのが好適である。
【0009】
上記および下記に使用する語は、本発明の記載の範囲内で以下のように定義される:
医薬組成物の語は、混合物が経口投与形、好ましくは澱粉、硬ゼラチンまたは軟ゼラチンカプセルへの処理に適している、上記成分からなる担体組成物中の可溶化難溶性医薬活性剤または混合活性剤の混合物と定義する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
難溶性の活性剤または混合活性剤の可溶化または可溶性にするという語は、好適な可溶化剤の働きにより行い、それにより本剤が活性剤の分散能力を、治療的有効量が完全に溶解するか、または少なくとも部分的溶解工程の結果生体内利用可能になる程度まで増加させる、分散工程と定義する。分散能力の語は、濾過後、特に孔直径5−10μmの滅菌フィルターを使用した場合、いかなる種類の固体粒子も残らないことが必要である、水中の活性剤および賦形剤のマイクロエマルジョン、真の分子溶液およびコロイド状溶液、例えば透明または乳白色の結合コロイドまたは分子コロイドの溶液、または、超遠心でのみ分離できる、例えばミセル溶液またはスフェロコロイドの形成の目盛りと定義する。分散能力は、例えば水リットル当たりのmgまたはmmolで表示し得る。
【0011】
水に難溶性の薬理学的活性剤または混合活性剤は、500mg/1000mlより少ない、好ましくは200mg/mlより少ない水への溶解性を有する。
【0012】
特に好適な難溶性活性剤は、マクロライド構造を有する免疫抑制剤、例えばシクロスポリンA、シクロスポリンG、ラパマイシン、タクロリムス、デオキシスペルグアリン、マイコフェノレート−モフェチル、グスペリムス、非ステロイド系消炎剤、例えばアセチルサリチル酸、イブプロフェンまたはS(+)−イブプロフェン、インドメタシン、ジクロフェナック、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ナプロキセン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、フェルビナック、スリンダック、エトドラック、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ナブメトン;心血管系活性を有するジヒドロピリジン誘導体、例えばニフェジピン、ニトレンジピン、ニモジピン、ニソルジピン、イスラジピン、フェロジピン、アムロジピン、ニルバジピン、ラシジピン、ベニジピン、マスニジピン、フルニジピン、ニグルジピン、神経治療剤、例えばα−リポ酸、ムラミルペプチド、例えばムラミルジペプチドまたはトリペプチド、ロムルチド、脂肪可溶性ビタミン、例えばビタミンA、D、EまたはF;アルカロイド、例えばビンコペクチン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、レセルピン、コデイン、エルゴットアルカロイド、例えばブロモクリプチン、ジヒドロエルゴタミン、ジヒドロエルゴクリスチン;抗癌剤、例えばクロラムブシル、エトポシド、テニポシド、ヨードキシフェン、タリムスチン、テロキサントロン、トリアパザミン、カルゼレシン、デキシニグルジピン、イントプリシン、イダルビシン、ミルテフォシン、トロフォサミド、テロキサントロン、メルファラン、ロムスチン、4,5−ビス(4'−フルオロアニリノ)−フタルイミド;4,5−ジアニリノフタルイミド;免疫調節剤、例えばチモクトナン、プレザチド酢酸銅;抗感染剤、例えばエリスロマイシン、ダウノルビシン、グラミシジン、ドキソルビシン、アンフォテリシンB、ゲンタマイシン、リューコマイシン、ストレプトマイシン、ガンフロマイシン、リファメキシル、ラモプラニン、スピラマイシン;抗真菌剤、例えばフルコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール;H2−受容体アンタゴニスト、例えばファモチジン、シメチジン、ラニチジン、ロキサチジン、ニザチジン、オメプラゾール、タンパク質−キナーゼ阻害剤、例えばN−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イルピリミジン−2−イルアミノ)−フェニル]−ベンズアミド、N−ベンゾイル−スタウロスポリン;HIV−1−プロテアーゼ阻害剤、例えばBOC−PhePhe−Val−Phe−モルホリンまたはそのO−[2−(2−メトキシエトキシ)−アセトキシ]誘導体;ロイコトリエンアンタゴニスト、例えばN−[4−(5−シクロペンチルオキシカルボニルアミノ−1−メチルインドール−3−イルメチル)−3−メトキシベンゾイル]−2−ビニルオキシ]−ベンゼン−スルホンアミドである。
【0013】
特に好ましいのはシクロスポリン、ラパマイシン、タクロリムス、デオキシスペルグアリン、マイコフェノレート−モフェチル、ニフェジピン、ニモジピン、エトポシド、イブプロフェンおよびα−リポ酸である。
【0014】
遊離酸または塩基形で存在する活性剤の代わりに、医薬組成物中で、活性剤は薬理学的に許容可能な塩、例えば臭化水素酸塩、塩酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、硫酸塩、マレイン酸塩等としてまた存在し得る。
【0015】
活性剤または活性剤の組み合わせの濃度は、投与すべき用量により決定する。担体組成物を基本にして、1から30重量%、好ましくは5から20重量%、特に5から12重量%であり得る。
【0016】
列記した活性剤の一つまたは活性剤の組み合わせのための担体組成物は、以下のように定義される:
担体組成物中に存在する成分に関して「本質的に純粋」という条件は、担体組成物で他の成分と混ぜる前のその成分の純度が90%以上、好ましくは95%以上の程度であると定義する。「本質的に純粋」と定義した成分は、好ましくは簡単に定義される構造および組成を有する。
【0017】
担体組成物中に混合物として存在する成分は、その組成が、原料そのもの、その単離および更なる加工により規定される、天然試薬の混合物であり得る。このような混合物の成分は、製造者により提供された明細書(specification)により示唆される。
【0018】
成分a)のポリグリセロール脂肪酸エステルが、ポリグリセロールが8−20の範囲の偶数のC−原子を有する飽和または不飽和カルボン酸由来の1−10の酸ラジカルでエステル化されているグリセロール単位を好ましくは10単位まで含む、本質的に純粋なポリグリセロール脂肪酸エステルまたはポリグリセロール脂肪酸エステルの混合物を含む。
【0019】
ポリグリセロールをエステル化する、8−20の範囲の偶数のC−原子を有する飽和カルボン酸の酸ラジカルは、好ましくは12、14、16および18C−原子の直鎖、例えばn−ドデカノイル、n−テトラデカノイル、n−ヘキサデカノイルまたはn−オクタデカノイルである。
【0020】
ポリグリセロールをエステル化する、8−20の範囲の偶数のC−原子を有する不飽和カルボン酸の酸ラジカルは、好ましくは12、14、16および18C−原子の直鎖であり、1個の2重結合を有する、例えば9−シス−ドデセノイル、9−シス−テトラデセノイル、9−シス−ヘキサデセノイルまたは9−シス−オクタデセノイルである。
【0021】
括弧内に示した名前は、また酸ラジカルについて慣用的である:
加えて、以下の名前は、酸ラジカルについて慣用的である:9−シス−ドデセノイル(ラウロレオイル)、9−シス−テトラデセノイル(ミリストレオイル)、9−シス−ヘキサデセノイル(パルミトレオイル)、6−シス−オクタデセノイル(ペトロセロイル)、6−トランス−オクタデセノイル(ペトロセライドイル)、9−シス−オクタデセノイル(オレイル)、9−トランス−オクタデセノイル(エライドイル)、11−シス−オクタデセノイル(バセノイル)、9−シス−イソセノイル(ガドレオイル)、n−ドデカノイル(ラウロイル)、n−テトラデカノイル(ミリストイル)、n−ヘキサデカノイル(パルミトイル)、n−オクタデカノイル(ステアロイル)、n−アイコサノイル(アラキドイル)。
【0022】
単に定義された構造を有する好適なポリグリセロール脂肪酸エステルは、例えば(英名で)ジグリセロールモノカプレート、ジグリセリルモノラウレート、ジグリセロールジイソステアレート、ジグリセロールモノイソステアレート、ジグリセロールテトラステアレート(ポリグリセリル2−テトラステアレート)、トリグリセロールモノオレエート(ポリグリセリル3−モノオレエート)、トリグリセロールモノラウレート、トリグリセロールモノステアレート(ポリグリセリル3−ステアレート)、トリグリセロールモノイソステアレート、ヘキサグリセロールジオレエート(ポリグリセロール6−ジオレエート)、ヘキサグリセロールジステアレート(ポリグリセロール6−ジステアレート)、デカグリセロールジオレエート(ポリグリセロール10−ジオレエート)、デカグリセロールテトラオレエート(ポリグリセロール10−テトラオレエート)、デカグリセロールデカオレエート(ポリグリセロール10−デカオレエート)、デカグリセロールデカステアレート(ポリグリセロール10−デカステアレート)である。CTFA命名法を括弧内に記載する。これらの製品は、商品名カプロール(Caprol)(商標)(商標は、オハイオ、コロンバスの会社、カールシャムナス・ユー・エス・エー・インコーポレイテッド(Karlshamns USA Inc.)に属する)で、商業的に入手可能である。正確な製品名:カプロール2G4S、3GO、3GS、6G2O、6G2S、10G2O、10G4O、10G10O、10G10Sである。更なる製品は、DGLC−MC、DGLC−ML、DGLC−DISOS、DGLC−MISOS、TGLC−MLおよびTGLC−MISOSの名前で、デー−3002ハノーバーの会社、ソルベイ・アルカリ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング(Solvay Alkali GmbH)から入手可能である。
【0023】
種々のポリグリセロール脂肪酸エステルの混合物は、デカグリセロールモノ−、ジ−オレエート、混合脂肪酸のポリグリセロールエステル、脂肪酸のポリグリセロールエステル、ポリグリセロールカプレート、ココエート、ラウレート、ラノリネート、イソステアレートまたはリシノレートのような名前で定義され、ウードマークス(Wordmarks)トリオダン(Triodan)(商標)およびホモダン(Homodan)(商標)(商標は、デンマーク、グリンステッドの会社、グリンステッド・プロダクツ(Grinsted Products)に属する)、正確な製品名:トリオダン20、55、R90およびホモダンMO、ラジアムルス(Radiamuls)(商標)(商標は、ベルギー、ブリュッセルの会社、ペトロフィナ(Petrofina)(FINA)に属する)、正確な商品名ラジアムルスポリ2253、カプロールPGE 860またはETまたは商品名プルロール(Plurol)(商標)(商標は、フランス、セント・プリエスト、ガテフォッセ・エタブリッシュメント(Gattefosse Etablissements)に属する)、正確な製品名:プルロールステアリキ(Stearique)WL1009またはプルロールオレキ(Oleique)WL1173で、商業的に入手可能である。別の製品は、PGLC−C 1010 S、PGLC−C 0810、PGLC−C 1010/S、PGLC−L T 2010、PGLC−LAN 0510/S、PGLC−CT 2010/90、PGLC−ISOS T UE、PGLC−R UE、PGLC−ISOS 0410の名前で、デー−3002ハノーバー、ソルベイ・アルカリ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツングから入手可能である。
【0024】
列記したポリグリセロール脂肪酸エスエルは、フードケミカル・コデックスFCC IIIの「モノグラフ」下の232頁の「記載」、「要件」および「試験」に関する条件を満たす。列記した製造者により発行されている製品の明細は、各々の製品のデータシートの詳細に関して、特に、モノエステル含量、滴下点、遊離グリセロール、遊離脂肪酸、ヨウ素価、形、抗酸化剤、HLB価、特性および貯蔵寿命のような詳細は、特に有効である。
【0025】
特に、ポリグリセロール脂肪酸エステルは、EC食物添加剤規制(ECガイドライン74/329)の第E475およびU.S.FDAコード21CFR§172.854の要件を満たす。
【0026】
成分a)のソルビタン脂肪酸エステルは、好ましくは、ソルビタンが8−20の範囲の偶数のC−原子を有する飽和または不飽和直鎖カルボン酸由来の1−3の酸ラジカルでエステル化されている、本質的に純粋なソルビタン脂肪酸エステル、または種々のソルビタン脂肪酸エステルの混合物を含む。
【0027】
ソルビタンをエステル化する、8−20の範囲の偶数のC−原子を有する飽和カルボン酸の酸ラジカルは、好ましくは12、14、16および18C−原子の直鎖、例えばドデカノイル、n−テトラデカノイル、n−ヘキサデカノイルまたはn−オクタデカノイルである。
【0028】
8−20の範囲の偶数のC−原子を有する不飽和カルボン酸の酸ラジカルは、好ましくは12、14、16および18C−原子の直鎖であり、例えばオレオイルである。
【0029】
好適なソルビタン脂肪酸エステルは、特にソルビタン−モノラウレート、−モノパルミテート、−モノステアレート、−トリステアレート、−モノオレエート、−セスキオレエートおよび−トリオレエートである。これらの製品は、商品名スパン(Span)(商標)(商標は、アメリカ合衆国、ウィルミングトンの会社、アトラス(Atlas)に属する)、正確な製品名:スパン20、40、60、65、80および85、アラーセル(Arlacel)(商標)(商標は会社、アトラスに属する)、正確な製品名:アラーセル20、40、60、80、83、85およびC、クリル(Crill)(商標)(商標は、イギリス、スネイス・ゴール、コーイック・ホールの会社、クローダ・ケミカルズ・リミテッド(Croda Chemicals Ltd.)に属する)、正確な製品名:クリル1、3および4、デヒムルス(Dehymuls)(商標)(商標は、ドイツ連邦共和国、デュッセルドルフの会社、ヘンケル(Henkel)に属する)、正確な商品名:デヒムルスSML、SMO、SMS、SSO、ファモダン(Famodan)(商標)(商標は、デンマーク、グリンステッドの会社、グリンステッド・プロダクツ(Grinsted Products)に属する)、正確な商品名:ファモダンMSおよびTS、カプムル(Capmul)(商標)(商標は、オハイオ、コロンバスの会社、カールシャムナス・ユー・エス・エー・インコーポレイテッドに属する)、正確な商品名:カプムルSおよびO、ラジアスルフ(Radiasurf)(商標)(商標は、ベルギー、ブリュッセルの会社、ペトロフィナ(FINA)に属する)、正確な商品名:ラジアスルフ7125、7135、7145および7155で商業的に入手可能である。
【0030】
ソルビタン脂肪酸エステルおよびポリグリセロール脂肪酸エステルは、英国薬局法(特別なモノグラフ)またはPh.Helv.VIの条件を満たす。列記した製造者により発行されている製品の明細は、各々の製品のデータシートの詳細に関して、特に、形、色、HLB価、粘性、上昇した融点および溶解性のような記載は、特に有効である。
【0031】
成分a)は、10以下のHLB価を有する。担体組成物の全重量を基本にして、10−50重量%、好ましくは15−40重量%、更に好ましくは15−20重量%の量で担体組成物中に存在する。成分a)は、またポリグリセロール脂肪酸エステル同士の混合物またはソルビタン脂肪酸エステル同士の混合物もしくはポリグリセロール脂肪酸エステルとソルビタン脂肪酸エステルの混合物を含み得る。
【0032】
薬理学的に許容可能な油b)は、天然起源、または合成または半合成のトリグリセリド、特に純粋トリグリセリドである。グリセロールが、8−20の範囲の偶数のC−原子を有する飽和または不飽和カルボン酸の酸ラジカルでエステル化されている、天然起源のトリグリセリドが好ましい。このような酸ラジカルは、上記に定義の、例えばn−ドデカノイル、n−テトラデカノイル、n−ヘキサデカノイル、n−オクタデカノイルまたはオレオイルである。
【0033】
好適な天然起源のトリグリセリドは、例えばピーナッツ油、ゴマ油、ヒマワリ油、オリーブ油、コーン油、大豆油、ヒマシ油、綿実油、アブラナ油、アザミ油、ブドウ種油、魚油または中性油(neutral oil)である。
【0034】
成分b)は、担体組成物の全重量を基本にして、約5−40重量%、好ましくは10−35重量%の量で担体組成物中に存在する。成分b)は、また薬理学的に許容可能な油の製品混合物を含む。
【0035】
成分c)のHLB価10以上の非イオン性界面活性剤は、好ましくは、親水性成分がポリエチレンオキサイドからなり、ポリエチレンオキサイド部分の平均分子量が、15−60エチレンオキサイド単位に対応する、約600−2500である、両親媒性物質である。
【0036】
好適な非イオン性界面活性剤は、例えば天然または水素化ヒマシ油およびエチレンオキサイドの反応産物である。このような製品は、例えば商標クレモフォー(Cremophor)(商標)、ニコル(Niccol)(商標)およびエムルジン(Emulgin)(商標)で商業的に入手可能である。好適な非イオン性界面活性剤は、同様にポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)、例えばPOE−(20)−ソルビタンモノラウレート、POE−(20)−ソルビタンモノパルミテート、POE−(20)−ソルビタントリステアレート、POE−(20)−ソルビタンモノオレエートまたはPOE−(20)−ソルビタントリオレエートおよびポリオキシエチレン脂肪酸エステル、例えばPOE−(20,30,40,50)−ステアレートである。このような製品は、例えば、商標トゥイン(Tween)(商標)およびミルジ(Mirj)(商標)で商業的に入手可能である。
【0037】
成分c)は、担体組成物の全重量を基本にして、約10−50重量%、好ましくは20−45重量%の量で担体組成物中に存在する。成分c)は、また薬理学的に許容可能な非イオン性界面活性剤の製品混合物を含み得る。
【0038】
好適な、薬理学的に許容可能な他の賦形剤は、成分a)、b)およびc)ならびに活性剤または活性剤の組み合わせの量と共に、100重量%を構成するような量、担体組成物に添加し得る。更なる賦形剤は、担体組成物中に0から約75重量%の量で存在し得る。更なる賦形剤が、医薬投与形の選択により規定される。点滴薬、懸濁液またはカプセル充填物のような液体投与形では、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールまたは水もしくはこれらの混合物のような薬理学的に許容可能な希釈剤が添加される。
【0039】
更に、通常の賦形剤、例えばベンジルアルコール、エタノール、p−ヒドロキシ安息香酸、ソルビン酸、抗酸化剤、例えばトコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、アスコルビン酸、アスコルビルパルミテート;安定化剤、例えばクエン酸、酒石酸、EDTA、フレーバリングまたは芳香剤を加え得る。
【0040】
通常の濃厚剤は、ゼラチンカプセルのカプセル充填物または軟化剤に好適であり、安定なゼラチン殻を得る。このような賦形剤は、例えばソルビトール、ソルビタン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースまたはコロイド状シリコンジオキサイドである。
【0041】
本発明の別の態様は、上記に定義の医薬組成物の製造法であり、成分a)、b)およびc)および所望により他の薬理学的に許容可能な賦形剤を任意の比率で混合し、水に難溶性の医薬活性剤を本混合物中に分散させ、望ましい場合この分散を好適な経口投与形にすることを特徴とする。
【0042】
活性剤または活性剤の組み合わせの分散は、成分a)、b)およびc)および他の賦形剤の混合の後に行い得る。あるいは、活性剤または活性剤の組み合わせは、個々の成分中、または上記成分2個中に分散し得、残った成分をその後加える。可溶化分散工程は、個々の成分またはその混合物を加熱することにより加速し得る。コロイド状分散相の形成を促進する反応条件が好ましい。
【0043】
酸素感受性活性剤の存在下、工程は保護ガス雰囲気下、例えば窒素、ヘリウムまたはアルゴン下で成す。液体成分に既に存在している酸素を、減圧、例えば50−100mbarに付すことにより、または超音波処理の手段により除去し得る。2重壁および撹拌機を有する反応容器が、本工程に好ましい。
【0044】
経口投与可能投与形への変換は、既知の方法で成す。点滴薬、懸濁液、乳濁液等のような液体経口形を産生するための既知の方法、例えば、ハーガース・ハンドブッフ・デル・ファルマサイティッシェン・プラキシス(Hagers Handbuch der Pharmazeutischen Praxis)またはレミントンズ・ファーマシューティカル・サイエンス(Remington's Pharmaceutical Science)のような標準刊行物に記載のものを使用する。
【0045】
カプセルは、好ましくは、所望によりグリセロールまたはソルビトールを加えて製造し、時間差無しに胃液の働きにより溶解する、2ピースゼラチンカプセルである。あるいは、澱粉カプセル、例えば商品名カピル(Capill)(商標)でカプスゲル/ヴェルナー・ランバート(Capsugel/Warner Lambert)から入手可能な商業製品を使用し得る。ラクトース、澱粉、澱粉またはマグネシウムステアレートのような滑沢剤のような更なる賦形剤および充填物をカプセルと混合し得る。軟カプセルは、レシチン、脂肪、油、パラフィン油または液体ポリエチレングリコールのような液体を更に含み得る。用量に依存して、0−4、好ましくは0−2のサイズの2ピースカプセルが好ましい。塩野義、カプスゲル(Capsugel)またはシェーラー(Scherer)社の商業製品が好適である。
【0046】
以下の実施例は本発明を、上記で定義の一般的な範囲を限定することなく、説明する。活性剤は、上記のすべての活性剤の代表である。温度は摂氏である。
【実施例】
【0047】
実施例1
軟ゼラチンカプセル内へ充填する方法:量は、最終カプセル当たりのmgとして記載、軟ゼラチンカプセル型:22ミニム楕円形。
【表1】

【0048】
成分2−4を、撹拌機付ステンレススチールボイラー内で、40℃に加熱しながら混合する。減圧に付することにより、ガスを溶液から除去する。抗酸化剤5を透明な溶液に加え、活性剤シクロスポリンAを次いでその中に分散させる。エタノールを加えた後、全バッチを透明溶液が得られるまで撹拌する。約20°に冷却した後、溶液を軟ゼラチンカプセル内に充填する。蒸発分を補うために、バッチは上記方法より30−60mg多いエタノールを含む。
【0049】
ゼラチンに加えて、軟ゼラチンの壁は、賦形剤を含み、濃度に影響を与え、例えばグリセロールおよび/またはプロピレングリコールまたはソルビトールおよび/またはマンニトールである。壁は、更に色素または着色剤、例えば二酸化チタニウム、酸化鉄、キノリンイエローまたはコチニールレッドA(cochineal red A)を含み得る。
【0050】
実施例2
硬ゼラチンカプセルまたは澱粉カプセル内へ充填する方法:量は、バッチ当たりのkgとして記載。
【表2】

【0051】
全ての成分を300l容2重壁ボイラー内で、45℃で混合し、透明な溶液が得られるまで撹拌する。透明、冷却溶液のバッチ300mgを、二酸化チタニウム/酸化鉄で不透明にした、サイズ1の硬ゼラチンカプセルにそれぞれ充填する。
封印バンドを充填カプセルの回りに置く。ニフェジピンの光感受性のために、全ての工程は日光を排除して行わなければならない。
【0052】
実施例3
ガラスビンに充填する方法。本製剤は、茶色の40ml滴下ビンに満たした、滴下薬として経口投与するのに好適である。量はグラムで記載する。
【表3】

溶液の製造は、実施例2と同様にして行う。
【0053】
実施例4
軟ゼラチンカプセル内へ充填する方法:量は、最終カプセル当たりのmgとして記載、軟ゼラチンカプセル型:4ミニム楕円形。
【表4】

カプセルの製造は、実施例1と同様にして行う。プロピレングリコールは、カプセル壁の濃厚の目的で特に好ましい。
【0054】
実施例5
硬ゼラチンカプセル内へ充填する方法:量は、サイズ0のカプセルへの充填に関する。
【表5】

溶液の製造は、実施例2と同様にして行う。ここで、リポ酸の酸素感受性をまた考慮に入れなければならない。
【0055】
実施例6
軟ゼラチンカプセル内へ充填する方法:量は、最終カプセル当たりのmgとして記載、軟ゼラチンカプセル型:6ミニム楕円形。
【表6】

製造は、実施例1と同様にして行い、ベンジルアルコールを最後の成分として加える。
【0056】
実施例7
軟ゼラチンカプセル内へ充填する方法:量は、最終カプセル当たりのmgとして記載。
【表7】

製造は、実施例1と同様にして行う。
【0057】
実施例8
軟ゼラチンカプセル内へ充填する方法:量は、最終カプセル当たりのmgとして記載、軟ゼラチンカプセル型:9.5ミニム楕円形。
【表8】

製造は、実施例1と同様にして行う。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体組成物が、
a)担体組成物を基本にして約10−50重量%の、ポリグリセロール脂肪酸エステルおよびソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択される、10以下の親水性−親油性バランス(グリフィンのHLB値による)を有する本質的に純粋なまたは混合物としての共界面活性剤;
b)担体組成物を基本にして約5−40重量%の、親油性成分としてトリグリセリドを含む、本質的に純粋なまたは混合物としての薬理学的に許容可能な油;および
c)担体組成物を基本にして約10−50重量%の、HLB値が10以上を有する本質的に純粋なまたは混合物としての非イオン性界面活性剤;
および所望により他の薬理学的に許容可能な賦形剤:
を含むことを特徴とする、担体組成物中のシクロスポリンを可溶化するための、医薬組成物。
【請求項2】
500mg/1000mlより少ない純水への溶解性を有する活性剤を、担体組成物の総重量を基本にして、約1−30%可溶化するための、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
活性剤がシクロスポリンAである、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
成分a)が10単位までのグリセロール単位を含み、かつ8−20の範囲の偶数のC−原子を有する飽和または不飽和カルボン酸由来の1−10の酸ラジカルでエステル化されている、本質的に純粋なまたは混合物としてのポリグリセロール脂肪酸エステルを含むことを特徴とする、請求項1−3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
成分a)がポリグリセロール脂肪酸エステルとして、本質的に純粋なまたは混合物としてのポリグリセリル2−テトラステアレート、3−モノオレエート、3−ステアレート、6−ジオレエート、6−ジステアレート、10−ジオレエート、10−テトラオレエート、10−デカオレエートまたは10−デカステアレートを含むことを特徴とする、請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
成分a)がソルビタンが8−20の範囲の偶数のC−原子を有する飽和または不飽和カルボン酸由来の1−3酸ラジカルでエステル化されている、本質的に純粋なまたは混合物としてのソルビタン脂肪酸エステルを含むことを特徴とする、請求項1−3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
成分a)がソルビタン脂肪酸エステルとして、本質的に純粋なまたは混合物としてのソルビタンモノラウレート、モノパルミテート、モノステアレート、トリステアレート、モノオレエート、セスキオレエートまたはトリオレエートを含むことを特徴とする、請求項6記載の医薬組成物。
【請求項8】
成分b)が薬理学的に許容可能な油として、ピーナッツ油、ゴマ油、ヒマワリ油、オリーブ油、コーン油、大豆油、ヒマシ油、綿実油、アブラナ油、アザミ油、ブドウ種油、魚油または中性油を含み、成分c)が親水性部分が15−60エチレンオキサイド単位の非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1−7の何れかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
成分a)、b)およびc)および所望により他の薬理学的に許容可能な、水溶性賦形剤を任意の比率で混合し、水に難溶性の薬理学的活性物質を本混合物中に分散させ、望ましい場合この分散を好適な経口投与形にすることを特徴とする、請求項1記載の医薬組成物の製造法。
【請求項10】
分散物を澱粉、硬ゼラチンまたは軟ゼラチンカプセルに充填することを特徴とする、請求項9記載の方法。

【公開番号】特開2009−138008(P2009−138008A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23837(P2009−23837)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【分割の表示】特願平7−503830の分割
【原出願日】平成6年7月8日(1994.7.8)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】