説明

難溶性物質を含有する顆粒、錠剤、及び難溶性物質の可溶化方法

【課題】難溶性の機能性物質を多量に吸着し固形化することができる一方、水性の環境下ではその機能性物質の放出性に優れた新規な顆粒を提供すること。
【解決手段】多孔性ケイ酸カルシウムを含む担体、該担体に吸着した機能性物質及びノニオン性界面活性剤、及び結合剤を含む顆粒であって、該機能性物質は難溶性液体、低融点かつ難溶性の固体及び難溶性の有効成分を含む生薬エキスからなる群から選択される少なくとも一種である顆粒である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は顆粒や錠剤およびそれらの製造方法に関し、特に機能性物質として難溶性物質を含む顆粒、錠剤およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や健康食品の有効成分である機能性物質を摂取する際の剤形としては、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤等がある。このうち錠剤は、取扱いや服用が容易であり、もっともよく使用されている。
【0003】
一般に、錠剤は、機能性物質と賦形剤、結合剤の任意成分を配合した混合粉末に水および/または有機溶媒を加えて造粒し、造粒した顆粒にさらに崩壊剤等(いずれもセルロースや合成もしくは天然由来の高分子添加物)や滑沢剤を加え打錠用顆粒とし、この顆粒をホッパー(打錠用顆粒が入った容器)からこれを打錠機の回転盤の上に定量的に流し、回転盤に形成されている穴(臼)に入った造粒した顆粒を上下2組のスチール棒(上杵、下杵)で圧縮することにより製造される。
【0004】
錠剤はこのように圧縮して賦形されるため、機能性物質が常温環境下で油状液体や低融点固体である場合、機能性物質が油状液体であるときはそのままでは錠剤に成形することが困難であり、低融点固体であるときはスティッキングやキャッピングなどの打錠障害を起こしやすい。それゆえ、機能性物質がかかる性状である場合は、それらの形態を固体や粉末に変換する処理が行われる。
【0005】
特許文献1には、不揮発性溶剤に溶解させた液性薬剤を、予め計算された量の結晶セルロースなどの担体物質及び軽質無水ケイ酸などの被覆物質と単純に混合して、容易流動性及び圧縮可能な液体/粉体混合物(リキソリッド)を提供する方法が記載されている。しかし、このリキソリッドは担時可能な液体量が少なく、液性薬剤の含有量が不十分である。また、液性薬剤を溶解させる不揮発性溶媒の量を最初に決め、担体とコーティング物質の量を数学的モデルに基づいて計算して決める必要があり、錠剤化に適した粉体の流動性や圧縮性を満足させるための多くの制限がある。
【0006】
特許文献2には、油状液体又は低融点固体である機能性物質を吸着粉末化するための担体としてケイ酸カルシウムを用い、結合剤としてデンプン類又は糖類を用いるリキソリッドシステムが記載されている。そうすることによって得られる粉末のゆるみ嵩密度が適度に調節され、打錠機で肉厚に製錠することが可能となった。その結果、担体にケイ酸カルシウムを用いた錠剤に、実使用に耐える適切な直径及び厚さ、かつ適切な重量を付与することができる。
【0007】
ケイ酸カルシウムは比較的多量の液体を担持可能であり、担体にケイ酸カルシウムを用いた錠剤は、高濃度で液性薬剤等の機能性物質を含有することができる。しかし、特に粉末化又は錠剤化される機能性物質が難溶性である場合、機能性物質の製剤から水への溶出性および消化液への移行性を高めることが求められている。
【0008】
特許文献3には、脂溶性又は水溶性の難・低吸収性薬物の体内における吸収性を高める技術が記載されている。この技術は、多孔性吸着剤を用いることにより体内における吸収改善作用を示す界面活性剤を固体化し、これを難・低吸収性薬物と組み合わせて固形化製剤とするものである。しかしながら、特許文献3は界面活性剤の効果により生体の薬物の吸収性を高める技術であり、難溶性の薬物の水への溶解性を記述したものではない。界面活性剤の効果が薬物の生体膜の通過を高めることは必ずしも水への溶解性を高めることを意味するものではない。界面活性剤は生体膜への相互作用に影響することが多く、必ずしも両作用機序は同一ではないからである。そのため、特許文献3に記述されている技術は本発明が記載している技術とは、基本的に異なる領域の発明といえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2000−512295
【特許文献2】国際公開第2007/97333号パンフレット
【特許文献3】特開2006−56781
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、難溶性の機能性物質を多量に吸着し固形化することができる一方、その機能性物質の水への溶出性に優れた新規な顆粒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、多孔性ケイ酸カルシウムを含む担体、該担体に吸着した機能性物質及びノニオン性界面活性剤、及び結合剤を含む顆粒であって、
該機能性物質は難溶性液体、低融点かつ難溶性の固体及び難溶性の有効成分を含む生薬エキスからなる群から選択される少なくとも一種である顆粒を提供するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0012】
ある一形態においては、前記担体は更にセルロースを含有する。
【0013】
ある一形態においては、前記機能性物質はビタミンE、コエンザイムQ10、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、リポ酸、ルテイン、ノコギリヤシエキス、イチョウ葉エキス、セントジョーンズワート及びロイヤルゼリーからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0014】
ある一形態においては、前記ノニオン性界面活性剤は、食品添加物又は医薬品添加物に該当し、親水性部分としてポリエーテル鎖を有する化合物を含むものである。
【0015】
ある一形態においては、前記ノニオン性界面活性剤はポリソルベート類及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群から選択される少なくとも一種を含むものである。
【0016】
ある一形態においては、前記ノニオン性界面活性剤は更にショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも一種を含むものである。
【0017】
ある一形態においては、前記界面活性剤はポリソルベート類とポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を1:1〜1:3の割合で混合したもの、あるいは、ポリソルベート類とショ糖脂肪酸エステルを1:1〜1:3の割合で混合したもの、あるいは、ポリソルベート類とポリグリセリン脂肪酸エステルを1:1〜1:3の割合で混合したものである。
【0018】
ある一形態においては、前記界面活性剤は機能性物質100重量部に対し20〜1000重量部の量で配合されている。
【0019】
ある一形態においては、前記結合剤が糖類及び糖アルコール類からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0020】
ある一形態においては、前記担体は機能性物質100重量部に対し50〜400重量部の量で配合され、前記結合剤は担体100重量部に対し50〜1500重量部の量で配合され、そしてゆるみ嵩密度が0.20〜0.80g/mlである。
【0021】
また、本発明は、難溶性液体、低融点かつ難溶性の固体及び難溶性の有効成分を含む生薬エキスからなる群から選択される少なくとも一種である機能性物質及びノニオン性界面活性剤を、多孔性ケイ酸カルシウムを含む担体に吸着させる工程;及び
得られた担持物に水及び結合剤を混合して造粒する工程;
を包含する顆粒の製造方法を提供する。
【0022】
ある一形態においては、前記機能性物質及びノニオン性界面活性剤の前記担体に対する吸着は、当該機能性物質及びノニオン性界面活性剤を、エタノールに溶解または分散させて低粘度化し、担体と混合し、エタノールを蒸発させることにより行われる。
【0023】
また、本発明は上記いずれか記載の顆粒を打錠する工程を包含する錠剤の製造方法を提供する。
【0024】
また、本発明は上記の方法により得られる錠剤を提供する。
【0025】
更に、本発明は、難溶性液体、低融点かつ難溶性の固体及び難溶性の有効成分を含む生薬エキスからなる群から選択される少なくとも一種である機能性物質を、ノニオン性界面活性剤とともに、多孔性ケイ酸カルシウムを含む担体に吸着させる工程;及び
該機能性物質を水に溶出させる工程;
を包含する難溶性物質の可溶化方法を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の顆粒は、固形化した機能性物質が難溶性であっても、水への溶出性に優れている。そのため、本来消化液に移行しにくい機能性物質であっても、本発明による顆粒を用いることにより、この問題を解決できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
顆粒
本発明の顆粒は、担体、機能性物質、ノニオン性界面活性剤、及び結合剤を含むものである。そして、少なくとも機能性物質及びノニオン性界面活性剤は担体に吸着されている。
【0028】
担体とは液体を担持して固形化できる固体物質をいう。一般には化学的な安定性に優れた微粉や多孔質材料が担体として用いられる。担体の具体例としてケイ酸類などの無機物質やセルロース類などが広く知られている。
【0029】
その中で多孔性ケイ酸カルシウムは、平均粒径18〜32μmであり、ゆるみ嵩密度が0.07〜0.15g/mlであり、吸油量が300〜550ml/100gのものである。このような特性を有するケイ酸カルシウム粉末は、式
【0030】
[化1]
2CaO・3SiO・mSiO・nH
[式中、1<m<2であり、2<n<3である。]
【0031】
で表される組成であり、電子顕微鏡で観察して花弁状結晶構造を有するジャイロライト型ケイ酸カルシウム粉末が挙げられる。具体的には、株式会社トクヤマの商品名「フローライト」がある。
【0032】
担体は機能性物質100重量部に対し、好ましくは20〜200重量部、より好ましくは50〜150重量部となる比率で配合される。担体の量が20重量部未満であると機能性物質が担体から浸出し易くなり、顆粒を打錠する際のキャッピングやスティッキング、錠剤の硬度不足や外観不良などの問題が発生する。担体の量が200重量部を越えると、錠剤とすることはできるが、有効成分の含量が減り、飲用に困難な大きな錠剤となる。
【0033】
担体としては、多孔性ケイ酸カルシウムに加えて多孔性でない物質、例えば結晶セルロースを用いることが好ましい。多孔性部分に保持された難溶性物質は水の浸透が悪く、溶出しにくくなるが、そのことによってこの問題を回避できるからである。その場合は、多孔性でない物質の使用量は担体全体の50重量%まで、好ましくは40重量%までを占める量とする。結晶セルロースの使用量が60重量%を超えると担持可能な液体の量が低下し、その後の造粒が困難となる。
【0034】
多孔性でない物質の具体例としては、例えば、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、結晶セルロース・軽質無水ケイ酸等が挙げられる。この中で好ましい多孔性でない物質は結晶セルロースである。
【0035】
機能性物質とは人体に摂取した後に、体内で所期の作用を奏する物質をいい、医薬品や健康食品でいう有効成分を含む概念である。機能性物質は、何等かの方法で担体に吸着させることができるものであれば限定されないが、好ましい機能性物質は難溶性液体、低融点かつ難溶性の固体及び難溶性の有効成分を含む生薬エキスからなる群から選択される少なくとも一種である。難溶性の機能性物質は本来消化液に溶解し難く、体内における吸収性に劣るからである。ここで、液体とは常温(20℃)で流動性を示す物質をいい、固体とは常温で流動性を示さない物質をいう。低融点とは融点が100〜120℃以下であることをいう。
【0036】
難溶性液体の具体例を示すと、ビタミンA、ビタミンA誘導体、ビタミンE、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸等である。天然物由来の難溶性液体は天然物より抽出した物質であり、脂溶性成分を中心とした油状エキスを総称する。天然物由来の難溶性液体の具体例を示すと、ノコギリヤシエキスである。
【0037】
低融点固体は圧縮するとスティッキング現象が生じることが多いため、難溶性液体と同様に圧縮して錠剤とすることが困難である。それゆえ低融点固体も本発明の機能性物質として有用である。低融点固体の具体例を示すと、コエンザイムQ10、αリポ酸、リボース等である。
【0038】
多孔性ケイ酸カルシウム及びノニオン性界面活性剤と組み合わせて用いるのに特に好ましい難溶性の機能性物質は、例えば、ビタミンE、コエンザイムQ10、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、リポ酸、ルテイン、ノコギリヤシエキス、イチョウ葉エキス、セントジョーンズワート及びロイヤルゼリーからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0039】
ノニオン性界面活性剤は親水性部分として、例えばポリオキシエチレン鎖及びポリオキシプロピレン鎖のようなポリエーテル鎖を有する化合物を用いることが好ましい。親水性部分としてポリエーテル鎖を有するノニオン性界面活性剤は、固形化された難溶性物質の水性環境下における溶出性を向上させるからである。また、ノニオン性界面活性剤は人体に悪影響を与えないように、食品添加物又は医薬品添加物に該当するものが好ましい。
【0040】
好ましいノニオン性界面活性剤は、例えばポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール及びポリソルベート類等である。これらのうちで特に好ましいノニオン性界面活性剤はポリソルベート80及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である。
【0041】
親水性部分としてポリエーテル鎖を有するものに加えて、脂肪酸エステルをノニオン性界面活性剤として用いてもよい。そのことによって、ポリエーテル鎖を有するものと脂肪酸エステルを有するものとの相乗的な効果が期待できるからである。その場合は、脂肪酸エステルの使用量はノニオン性界面活性剤全体の90重量%まで、好ましくは80重量%までを占める量とする。脂肪酸エステルの使用量が90重量%を超えるとポリエーテル鎖を有するものとの相乗的な効果が弱くなる。
【0042】
脂肪酸エステルの具体例としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。
【0043】
ノニオン性界面活性剤は機能性物質100重量部に対し、20〜1000重量部、好ましくは50〜600重量部、より好ましくは200〜500重量部となる比率で配合される。ノニオン性界面活性剤の量が20重量部未満であると水性環境下において機能性物質が担体から溶出し難くなる。ノニオン性界面活性剤の量が1000重量部を越えると機能性物質の配合量が少なくなるため、摂取数量が多くなり、実用的でなくなる。
【0044】
結合剤とは担体の粒子を結合して顆粒状にするのに用いる成分をいう。本発明のように溶出の観点に立てば、使用するのに好ましい結合剤の種類はある程度限定される。
【0045】
好ましい結合剤は糖類である。例えば、担体としてケイ酸カルシウムのみを用いる場合、ケイ酸カルシウムは軽質であり、造粒することは困難であるが、このように糖類を加えて造粒することにより、適切なゆるみ嵩密度、粒度分布をもつ顆粒を得ることができる。
【0046】
糖類は、公知なものが制限なく使用することができ、例えば、グルコース、マルト―ストレハロース等、これらの糖類を水素添加して得られる糖アルコールであってよい。好ましくは、糖アルコールが挙げられる。糖アルコールとしては、ソルビトール、エリスリトール、キシリトールおよびマルチトールのいずれも使用することができる。
【0047】
結合剤の使用量は特に限定されない。使用量が少なすぎれば顆粒が軽質となり、多すぎれば機能性物質の含有量が低下し、錠剤化に大量の顆粒が必要になってくるのみならず水での造粒、特に造粒が急激に進行し塊状となり、顆粒を製造することが難しくなり実用的ではない。結合剤は、担体100重量部に対し、20〜500重量部、好ましくは30〜300重量部、より好ましくは50〜200重量部となる比率で配合される。結合剤の量が20重量部未満であると顆粒のゆるみ嵩密度が小さくなりすぎて、錠剤が肉圧になりにくい。結合剤の量が500重量部を越えると配合できる機能性物質の量が少なくなり、錠剤に含まれる機能性物質の濃度が低くなりすぎる。
【0048】
本発明の顆粒は、担体、機能性物質、ノニオン性界面活性剤及び結合剤の他に、必要に応じて滑沢剤、崩壊剤等の添加物を含んで良い。例えば、滑沢剤として硬化油、硬化ヒマシ油、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸グリセリド、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステルなど、崩壊剤として低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、デンプン、寒天等を配合して行っても良い。
【0049】
本発明の顆粒は、担体としてケイ酸カルシウムのみを用いる場合、機能性物質の含有率が10〜50重量%、好ましくは、25〜35重量%であり、機能性物質の含有率を非常に高めることができる。また、本発明の顆粒は、ゆるみ嵩密度が0.20〜0.80g/ml、好ましくは、0.30〜0.60g/mlである。
【0050】
顆粒のゆるみ嵩密度がかかる範囲に調節されることにより、通常の打錠機を用いて適切な直径及び厚さ、かつ適切な重量の錠剤を得ることができる。つまり、本発明の顆粒を用いれば、実用として強度が充分で取扱いにも便利な形状、寸法の錠剤が提供される。
【0051】
本発明の顆粒には、必要に応じて水溶性高分子を用いたコーティングを施してもよい。コーティングを施すことにより、水溶性抗酸化成分由来の匂いや味を低減することが可能となる。また、顆粒剤の服用性並びに耐湿性が向上する。なお、本発明による顆粒へのコーティングについては、方法、使用する素材は限定されない。水溶性高分子の例には、一般に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどがある。
【0052】
顆粒の製造方法
機能性物質含有液は常法又は特開2001−97858、特開2007−15970又は特開平6−32774号公報に記載の方法等により機能性物質を難溶性液体又は低融点固体に溶解又は分散させるなどして調製する。
【0053】
機能性物質の担体に対する吸着、担持は、当該機能性物質を、要すれば溶媒に溶解または分散させて低粘度化し、担体と混合した後、結合剤を用いて造粒し、その後乾燥させることにより行う。その結果、造粒後機能性物質は、担体の細孔に密に保持され、打錠時において、機能性物質は顆粒剤表面に滲出することがなく、圧縮成形性が向上し、硬度低下、キャッピングまたはスティッキング現象等が抑制される。
【0054】
機能性物質を低粘度化するのに使用する有機溶媒としては、エタノールが好ましい。安全性が高いからである。機能性物質を溶解または分散させた有機溶媒と、担体との混合は、通常は、混合機や後述する造粒工程で使用する攪拌造粒機等を使用して攪拌下で行われる。
【0055】
機能性物質を溶解または分散させた有機溶媒の使用量は、溶解する機能性物質を溶解または分散して低粘度化する量であれば足りる。有機溶媒の量が少なすぎると機能性物質は均一に吸着せず、多すぎると担持物が湿潤化するので適宜調節すればよい。
【0056】
ノニオン性界面活性剤の担体に対する吸着、担持は、ノニオン性界面活性剤および機能性物質をエタノールに溶解したものを、担体に添加、攪拌混合して行う。また、溶解を行う際、必要に応じて加温してもよい。
【0057】
次いで、得られた担持物(担体と機能性物質もしくはその含有液との混合物)の造粒、顆粒化を行う。担持物の造粒は、結合剤、水を用いて通常の方法により行う。
【0058】
造粒は攪拌造粒によって行われることが好ましい。界面活性剤と機能性物質の相互作用に強い攪拌力が必要であり、さらに嵩密度の高い顆粒が得られるからである。攪拌造粒は、様々な形態を有するものであるが、容器の上部の回転アームによるもの、容器の底部にある回転翼によるものと、さらにこれに異方向の攪拌を加えたものがある。
【0059】
造粒に使用される装置としては、例として、バーチカルグラニュレータ、ハイシェアーミキサー、ハイスピードミキサー、プラネタリーミキサー、コレットグラル造粒機、チョッパー式プラネタリーミキサーなどである。造粒には、粉体を適切に混合可能な装置であればよく、その撹拌力が強いほど、造粒が速やかに進行する。
【0060】
このようにして得られた顆粒は、乾燥し、含有する水や有機溶媒を除去する。乾燥温度は、20〜90℃、好ましくは25〜75℃、より好ましくは30〜60℃である。
【0061】
錠剤の製造方法
乾燥した顆粒は整粒を行い、高分子添加物、崩壊剤および滑沢剤を加え、打錠用顆粒とし、圧縮成形して錠剤とする。高分子添加物としては、一般に顆粒や錠剤を作るために使用するものを使うことができる。具体的には、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース類、ポリビニルピロリドン等の合成高分子、アラビアゴム、寒天、プルラン等の天然高分子が挙げられる。
【0062】
高分子添加物は、一つまたは二つ以上組み合わせて使用されるが、その用途に応じて賦形剤、結合剤、崩壊剤に分けて使うことが望ましい。このように製造した錠剤には、フィルムコーティングまたは糖衣コーティングを施すコーティング工程を適宜設けてもよい。
【0063】
製造用打錠用顆粒は、打錠機を用いて錠剤にする。なお、打錠用顆粒を錠剤にする方法は、従来と同様なのでその説明は省略する。
【0064】
難溶性物質の可溶化方法
上述のようにして、ノニオン性界面活性剤とともに、多孔性ケイ酸カルシウムを含む担体に吸着させた機能性物質は、難溶性であるにもかかわらず、水への溶出性に優れる。多孔性ケイ酸カルシウムの作用により、おそらく、ノニオン性界面活性剤及び機能性物質が均質に混合され、良好な相互接触が実現されるためである。
【0065】
機能性物質を水に溶出させるためには、担体に吸着した機能性物質を水に接触させる。水は純水に限らず、水を含む液体であればよい。例えば、消化液のような体液等はここでいう水に含まれる。水の温度は機能性物質の種類に応じて適宜調節されうるが、一般には約15〜25℃である。
【0066】
例えば、上述のようにして調製した顆粒や錠剤を水中に投入し、必要に応じて放置や攪拌などすれば、吸着されている機能性物質は水に接触する。また、例えば、人や動物が上述のようにして調製した顆粒や錠剤を服用するなどして体内に取り込めば、吸着されている機能性物質は水に接触する。
【0067】
機能性物質の溶出性については、一般的に、錠剤の溶出性が良ければ顆粒の溶出性も良い。しかし、顆粒の溶出性が良いからといって錠剤の溶出性が良いとは必ずしも言えないようである。
【0068】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0069】
実施例1〜21及び比較例1〜3
ステップ1
エタノールなどの揮発性溶剤及びポリソルベートなどのノニオン性界面活性剤を攪拌機を用い混合した。攪拌しながら、ビタミンE、コエンザイムQ10又は生薬エキスである機能性物質を徐々に投入し、十分に攪拌し均一に溶解又は分散させた。
【0070】
その際、コエンザイムQ10は、室温で溶解しないので、45℃付近まで温度を上昇させ溶解させた。生薬エキスの場合は、エタノールに不溶な物質も含んでいるので、必ずしも100%溶解は難しいが、50℃付近まで温度を上昇させ、時間をかけ、分散・一部溶解させた。グリセリンなどの不揮発性の溶剤を併用する場合は、ここに加え、混和させた。
【0071】
ステップ2
一方、フローライトの使用する量をバーチカルグラニュレーター(造粒機、株式会社パウレックス製)に投入した。結晶セルロースを併用する場合は、同時に入れ、バーチカルグラニュレーターの混合機能を用いよく混合した。
【0072】
ステップ3
ステップ1で製造した液を、フローライト(あるいは、フローライトと結晶セルロース混合末)に、投入し、バーチカルグラニュレーターの混合機能を用い、攪拌し、均一に吸着させた。
【0073】
ステップ4
吸着した粉末に所定量の水を加えた。
【0074】
ステップ5
そこに、糖アルコールを投入し、造粒を開始した。通常の生薬エキスには、造粒に必要な成分が含まれているため、この段階で糖アルコールを入れる必要のないものがある。ただし、造粒は必須である。
【0075】
ステップ6
流動層を用い乾燥を行った。エタノールはこの段階で完全に除去された。
【0076】
ステップ7
得られた顆粒に、寒天5重量部、ショ糖脂肪酸エステル1重量部を加え、打錠用顆粒とし、打錠機(畑鉄工所社製、型番:HT-AP12SS-U)を用いて打錠することにより錠剤を得た。
【0077】
ステップ8
得られた錠剤について、機能性物質の水への溶出性を試験した。すなわち、まず、機能性物質1回摂取量に相当する錠剤を試験に用いた。溶出試験は日本薬局方に収載されている試験方法を用いた。パドル法で試験を行い、毎分50回転のスピードでパドルを回転させ、錠剤から水へ溶出する有効成分を液体クロマトグラフ法で測定した。
【0078】
各実施例で使用した材料の入手先を表1に示す。また、使用材料の種類、量及び溶出性試験の結果を表2に示す。
【0079】
[表1]

【0080】
比較例4
市販されているセントジョーンズワートの錠剤(佐藤製薬社製「サトウ セントジョーンズワート」)を入手し、上記実施例と同様にして機能性物質の水への溶出試験を行った。セントジョーンワートエキスの有効成分とされているヒペルフォリンの溶出を評価した。結果を表2に示す。
【0081】
比較例5
市販されているノコギリヤシエキスのソフトカプセル(大塚製薬社製「ネーチャーズリソース ノコギリヤシ」)を入手し、上記実施例と同様にして機能性物質の水への溶出試験を行った。ノコギリヤシは特定の有効成分が定まっていないため、溶出液中に溶け出した成分をパターン分析し、得られたピークの総面積で溶出を評価した。結果を表2に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
実施例の錠剤は、一部を除き、比較例のものよりも機能性物質の溶出性に優れていた。実施例14の処方は溶剤成分を含まず、所期の溶出性が得られなかった。
【0086】
なお、エタノールやエステルのような溶剤の必要性、その好ましい種類や適量は、使用する機能性物質の種類などに依存して変化する。そのため、実施例14において所期の溶出性が得られなかった上記結果は、溶剤を含まない処方が、コエンザイムQ10以外の機能性物質に関しても、一般的に不適当であることを示すものではない。
【0087】
そして、これらの実施例の結果は、難溶性物質をノニオン性界面活性剤と共に多孔性ケイ酸カルシウムに吸着させた場合に、難溶性物質が水に可溶化されることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性ケイ酸カルシウムを含む担体、該担体に吸着した機能性物質及びノニオン性界面活性剤、及び結合剤を含む顆粒であって、
該機能性物質は難溶性液体、低融点かつ難溶性の固体及び難溶性の有効成分を含む生薬エキスからなる群から選択される少なくとも一種である顆粒。
【請求項2】
前記担体が更にセルロースを含有する請求項1記載の顆粒。
【請求項3】
前記機能性物質がビタミンE、コエンザイムQ10、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、リポ酸、ルテイン、ノコギリヤシエキス、イチョウ葉エキス、セントジョーンズワート及びロイヤルゼリーからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1又は2記載の顆粒。
【請求項4】
前記ノニオン性界面活性剤が、食品添加物又は医薬品添加物に該当し、親水性部分としてポリエーテル鎖を有する化合物を含むものである請求項1〜3のいずれか記載の顆粒。
【請求項5】
前記ノニオン性界面活性剤がポリソルベート類及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群から選択される少なくとも一種を含むものである請求項1〜4のいずれか記載の顆粒。
【請求項6】
前記ノニオン性界面活性剤が更にショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも一種を含むものである請求項5記載の顆粒。
【請求項7】
前記界面活性剤がポリソルベート類とポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を1:1〜1:3の割合で混合したもの、あるいは、ポリソルベート類とショ糖脂肪酸エステルを1:1〜1:3の割合で混合したもの、あるいは、ポリソルベート類とポリグリセリン脂肪酸エステルを1:1〜1:3の割合で混合したものである請求項1〜6のいずれか記載の顆粒。
【請求項8】
前記界面活性剤が機能性物質100重量部に対し20〜1000重量部の量で配合されている請求項1〜7のいずれか記載の顆粒。
【請求項9】
前記結合剤が糖類及び糖アルコール類からなる群から選択される一種である請求項1〜8のいずれか記載の顆粒。
【請求項10】
前記担体は機能性物質100重量部に対し50〜400重量部の量で配合され、前記結合剤は担体100重量部に対し50〜1500重量部の量で配合され、そしてゆるみ嵩密度が0.20〜0.80g/mlである請求項1〜9のいずれか記載の顆粒。
【請求項11】
難溶性液体、低融点かつ難溶性の固体及び難溶性の有効成分を含む生薬エキスからなる群から選択される少なくとも一種である機能性物質及びノニオン性界面活性剤を、多孔性ケイ酸カルシウムを含む担体に吸着させる工程;及び
得られた担持物に水及び結合剤を混合して造粒する工程;
を包含する顆粒の製造方法。
【請求項12】
前記機能性物質及びノニオン性界面活性剤の前記担体に対する吸着は、当該機能性物質及びノニオン性界面活性剤を、エタノールに溶解または分散させて低粘度化し、担体と混合し、エタノールを蒸発させることにより行われる請求項11記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか記載の顆粒を打錠する工程を包含する錠剤の製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法により得られる錠剤。
【請求項15】
難溶性液体、低融点かつ難溶性の固体及び難溶性の有効成分を含む生薬エキスからなる群から選択される少なくとも一種である機能性物質を、ノニオン性界面活性剤とともに、多孔性ケイ酸カルシウムを含む担体に吸着させる工程;及び
該機能性物質を水に溶出させる工程;
を包含する難溶性物質の可溶化方法。

【公開番号】特開2010−189337(P2010−189337A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36785(P2009−36785)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】