説明

難溶性触媒によるエポキシ樹脂調製物の触媒作用

本発明の対象は、反応性向上のために、特別な難溶性混合物を有するエポキシ樹脂調製物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、反応性向上のために特別な難溶性触媒混合物を有する、エポキシ樹脂調製物である。
【0002】
エポキシ樹脂硬化のために潜在的な硬化剤、例えばジシアンジアミドを用いることは、公知である(例えばUS 2,637,715又はUS 3,391,113)。ジシアンジアミドの利点はとりわけ、毒性の心配が無い点、及び化学的に不活性なことであり、このことが良好な貯蔵安定性に繋がる。
【0003】
その一方でこの僅かな反応性は常に、きっかけ、触媒、いわゆる促進剤を発達させて反応性を向上させ、これにより硬化が比較的低い温度でも起こり得る。このことはエネルギーを節約し、サイクル時間を向上させ、とりわけ温度敏感性の下地を損なうことがない。促進剤としては、一連の様々な物質が既に記載されており、それは例えば、第三級アミン、イミダゾール、置換尿素(ウロン)など多数である。
【0004】
ブロックトイミダゾールもまた、触媒として提案された(US 4,335,228)。しかしながら生成物の良好な溶解性が原因で、貯蔵の間に不所望の反応が生じることがある。
【0005】
多数の系が使用されているにも拘わらず、反応性を向上させながら、貯蔵安定性は実質的に損なわれない触媒に対する需要がなお存在している。
【0006】
よって本発明の課題は、上記欠点を有さず、硬化温度では高い反応性を有し、また硬化温度未満では良好な貯蔵安定性を有するエポキシ樹脂系用の促進剤を提供することであった。
【0007】
意外なことに、潜在的な硬化剤を有する反応性エポキシ樹脂系は、促進剤として、イソシアヌレート及び複素環及びさらなるポリアミン又はポリオールから得られる難溶性の尿素を使用すると、反応性と貯蔵性とのバランスが有利であることが判明した。
【0008】
本発明の対象は、基本的に以下のA)〜C)、任意でD)を含有する反応性組成物である:
A)少なくとも1種のエポキシ樹脂、
B)成分A)との非触媒反応でDSCにおいて、150℃超の温度で発熱性反応ピークの最大値を有する、少なくとも1種の潜在的な硬化剤、
C)以下のC1)〜C3):
C1)少なくとも1種のNCO含有成分、及び
C2)N、S、及び/又はPを含有する1種又は複数種の複素環、及び
C3)1種又は複数種のポリアミン及び/又はポリオール
から得られる反応生成物を含有する少なくとも1種の促進剤
D)任意で、その他の通常の添加剤。
【0009】
エポキシ樹脂A)は通常、A型又はF型ベースのビスフェノールをベースとするグリシジルエーテルから、並びにレゾルシノール又はテトラキスフェニロールエタン又はフェノール/クレゾール−ホルムアルデヒドノボラック(例えばLackharze, Stoye /Freitag, Carl Hanser Verlag, ミュンヘン、ウィーン、1996年、p230〜280に記載)をベースとするグリシジルエーテルから成る。ここで挙げられた他のエポキシ樹脂も、もちろん考慮される。例として挙げられるのは:EPIKOTE 828、EPIKOTE 834、EPIKOTE 835、EPIKOTE 836、EPIKOTE 1001、EPIKOTE 1002、EPIKOTE 154、EPIKOTE 164、EPON SU-8(EPIKOTE及びEPONは、Resolution Performance Products社の市販名である)。
【0010】
エポキシ樹脂成分A)として好ましくは、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF−ジグリシジルエーテル、又は脂環式型のものをベースとするポリエポキシドを用いる。
【0011】
本発明により硬化可能な組成物において好適には、以下ものを含む群から選択されるエポキシ樹脂A)を使用する:ビスフェノールA−ジグリシジルエーテルベースのエポキシ樹脂A)、ビスフェノールF−ジグリシジルエーテル及び脂環式型をベースとするエポキシ樹脂、例えば3,4−エポキシシクロヘキシル−エポキシエタン、又は3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−シクロヘキサンカルボキシレート。ここでビスフェノールAベースのエポキシ樹脂、及びビスフェノールFベースのエポキシ樹脂が、特に好ましい。
【0012】
本発明によれば、エポキシ樹脂の混合物も成分A)として使用できる。
【0013】
潜在的な硬化剤B)(EP 682 053も参照)は、低温では特に反応性が低いか、又は難溶性であり、しばしばその両方の特性を有する。本発明による潜在的な硬化剤として適切なものは、成分A)との非触媒反応(硬化)時に、150℃超の温度で発熱性反応ピークの最大値を有し、ここで170℃超の温度で発熱性反応ピークの最大値を有するものが、特に適している(DSCにより測定、周辺温度(通常は約25℃)で開始し、加熱速度は10K/分、目的温度250℃)。ここで考慮される硬化剤は、US 4,859,761又はEP 306 451に記載されている。好ましくは、置換グアニジン及び芳香族アミンを使用する。置換グアニジンのうち最も代表的なのは、ジシアンジアミドである。他の置換グアニジン、例えばベンゾグアナミン、又はo−トルイルビグアニジンも使用できる。芳香族アミンのうち最も代表的なのは、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンである。他の芳香族ジアミンとして考慮されるのは例えば、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−メチレンジアミン、1,2−ベンゼンジアミン1,3−ベンゼンジアミン、1,4−ベンゼンジアミン、ビス−(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン(例えばshell社のEPON 1061)、ビス−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン(例えばshell社のEPON 1062)、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノベンゾフェノン、2,6−ジアミノピリジン、2,4−トルエンジアミン、ジアミノジフェニルプロパン、1,5−ジアミノナフタリン、キシレンジアミン、1,1−ビス−4−アミノフェニルシクロヘキサン、メチレン−ビス−(2,6−ジエチレンアニリン)(例えば、Lonza社のLONZACURE M-DEA)、メチレン−ビス−(2−イソプロピル,6−メチルアニリン)(例えば、Lonza社のLONZACURE M-MIPA)、メチレン−ビス−(2,6−ジイソプロピルアニリン)(例えば、Lonza社のLONZACURE M-DIPA)、4−アミノジフェニルアミン、ジエチルトルエンジアミン、フェニル−4,6−ジアミノトリアジン、ラウリル−4,6−ジアミノトリアジンである。
【0014】
適切な潜在的硬化剤は同様に、N−アシルイミダゾール、例えば1−(2’,4’,6’−トリメチルベンゾイル)−2−フェニルイミダゾール、又は1−ベンゾイル−2−イソプロピルイミダゾールである。このような化合物は例えば、US 4,436,892及びUS 4,587,311に記載されている。
【0015】
さらなる適切な硬化剤は、イミダゾールの金属塩錯体、例えばUS 3,678,007又はUS 3,677,978に記載のもの、カルボン酸ヒドラジド、例えばアジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、若しくはアントラニル酸ヒドラジド、トリアジン誘導体、例えば2−フェニル−4,6−ジアミノ−s−トリアジン(ベンゾグアナミン)、若しくは2−ラウリル−4,6−ジアミノ−s−トリアジン(ラウログアナミン)、並びにメラミン、及びその誘導体である。最後に挙げた化合物は、例えばUS 3,030,247に記載されている。
【0016】
潜在的な硬化剤として適しているのはまた、シアノアセチル化合物、例えばUS 4,283,520に記載のもの、例えばネオペンチルグリコールビスシアノ酢酸、シアノ酢酸−N−イソブチルアミド、1,6−ヘキサメチレン−ビス−シアノアセテート、又は1,4−シクロヘキサンジメタノール−ビス−シアノアセテートである。
【0017】
適切な潜在的硬化剤は、また、N−シアノアシルアミド化合物、例えばN,N’−ジシアノアジピン酸ジアミドである。このような化合物は例えば、US 4,529,821、US 4,550,203、及びUS 4,618,712に記載されている。
【0018】
さらなる適切な潜在的硬化剤は、US 4,694,096に記載のアシルチオプロピルフェノール、及びUS 3,386,955に開示の尿素誘導体、例えばトルエン−2,4−ビス(N,N−ジメチルカルバミド)である。
【0019】
もちろんまた、充分に反応不活性でありさえすれば、脂肪族又は脂環式のジアミン及びポリアミンも使用できる。ここで例としては、ポリエーテルアミン、例えばJEFFAMINE 230及び400が挙げられる。脂肪族若しくは脂環式のジアミン又はポリアミンを用いることも考えられ、これらの反応性は、立体性及び/又は電気的な影響係数により低減されたものであるか、かつ/又は難溶性若しくは高溶融性であるもの、例えばJEFFLINK 754 (Huntsman)、又はCLEARLINK 1000 (Dorf Ketal)である。
【0020】
もちろんまた、潜在的硬化剤の混合物も使用できる。
【0021】
好ましくは、ジシアンジアミド、及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホンを使用する。
【0022】
エポキシ樹脂と潜在的硬化剤との量比は、広い範囲で変えることができる。しかしながらその量比は、潜在的な硬化剤が、エポキシ樹脂に対して約1〜15質量%、好ましくは4〜10質量%で用いることが有利と実証されている。
【0023】
本発明により使用されるNCO含有成分C1)は、任意の芳香族、脂肪族、脂環式、及び/又は(環式)脂肪族のジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートから成り得る。
【0024】
芳香族のジイソシアネート又はポリイソシアネートとして適しているのは、原則的にあらゆる公知の化合物である。特に適しているのは、1,3−及び1,4−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレン−ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、2,6−トルイレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、モノマー性ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と、オリゴマー性ジフェニルメタンジイソシアネート(ポリマー性MDI)とからの混合物、キシレンジイソシアネート、テトラメチルジイソシアネート、及びトリイソシアナトトルエンである。
【0025】
適切な脂肪族のジイソシアネート又はポリイソシアネートは、有利には3〜16個の炭素原子、好適には4〜12個の炭素原子を、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基中に有し、適切な脂環式又は(環式)脂肪族のジイソシアネートは有利には4〜18個の炭素原子、好適には6〜15個の炭素原子を、シクロアルキレン基中に有する。(環式)脂肪族のジイソシアネートとは、環及び脂肪族に同時に結合されたNCO基であると、当業者には充分理解される(例えばイソホロンジイソシアネートがこれに該当する)。これに対して脂環式のジイソシアネートとは、脂環式環にのみ直接結合されたNCO基を有するもの、例えばH12MDIである。その例は、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、エチルシクロヘキサンジイソシアネート、プロピルシクロヘキサンジイソシアネート、メチレンジエチルシクロヘキサンジイソシアネート、プロパンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、ノナントリイソシアネート、例えば4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(TIN)、デカンジイソシアネート、デカントリイソシアネート、ウンデカンジイソシアネート、ウンデカントリイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、及びドデカントリイソシアネートである。
【0026】
好ましくは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、2−メチルペンタンジイソシアネート(MPDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)を使用する。特に好ましくは、IPDI、HDI、TMDI、及びH12MDIを使用する。
【0027】
極めて特に好ましくは、IPDI及びHDIがベースのイソシアヌレートを、成分C1)として使用する。これらは市販で、例えばDESMODUR N3300(HDIのイソシアヌレート、Bayer AG)、及びVESTANAT T1890(IPDIのイソシアヌレート、Evonik-Degussa GmbH)として得られる。
【0028】
同様に適しているのは、4−メチルシクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、2−ブチル−2−エチルペンタメチレンジイソシアネート、3(4)−イソシアナトメチル−1−メチルシクロヘキシルイソシアネート、2−イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、2,4’−メチレンビス(シクロヘキシル)ジイソシアネート、1,4−ジイソシアナト−4−メチルペンタンである。
【0029】
もちろん、前述のあらゆるジイソシアネート及びポリイソシアネートの混合物も使用できる。
【0030】
さらに好適には、オリゴイソシアネート又はポリイソシアネートを使用し、これらは上述のジイソシアネート若しくはポリイソシアネート、又はこれらの混合物から、ウレタン構造、アロファネート構造、尿素構造、ビウレット構造、ウレトジオン構造、アミド構造、イソシアヌレート構造、カルボジイミド構造、ウレトンイミン構造、オキサジアジントリオン構造、又はイミノオキサジアジンジオン構造による結合によって製造できる。特に適しているのは、イソシアヌレート、とりわけIPDI及びHDIから得られるイソシアヌレートである。
【0031】
複素環C2)として適しているのは、窒素、硫黄、又は硫黄を含有するあらゆる環系であり、好ましくは5〜7個の環原子を有し、イソシアネート反応性水素を少なくとも1個有するもの、例えばアジリジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、アゼピン、及びインドールである。好ましくは、イミダゾール、ピラゾール、及びトリアゾールを使用する。
【0032】
適切なのはまた、アルキル置換された複素環であり、例えば3,5−ジメチルピラゾールが好ましい。
【0033】
ポリアミン又はポリオールC3)として適しているのは、アミノ基(NH又はNH2)及び/又はアルコール基の群から選択されるイソシアネート反応性の水素原子を少なくとも2つ有する、あらゆるモノマー、オリゴマー、又はポリマーである。本発明による適切な例として挙げられるのは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメチレンジアミン、メチルジフェニルジアミン、トルエンジアミン、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチロールプロパン、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエーテルジアルコール、ポリエーテルトリアルコール、ポリエーテルジアミン、及び/又はポリエーテルトリアミンである。好ましくはモノマー性ポリアミンを使用し、好ましくはエチレンジアミン及びジエチレントリアミンを使用する。
【0034】
C1)、C2)、及びC3)の間の反応は、通常の装置で、例えば撹拌槽、強力混合機、強力混練機、スタチックミキサ、又は押出成形機で行うことができ、溶剤は存在していても、存在していなくてもよい。このためには通常、C1)をまず装入し、室温〜180℃の適切な温度にして、それから順次又は同時にC2)及びC3)を加えて、反応を完全に進行させる。その後、溶剤が存在する場合には、この溶剤を蒸留により除去するか、又は濾別する。溶剤無しで作業する場合には、いずれも場合においても、混合物を粉砕及びふるい分けする前に、適宜、混合物を冷却することができる。
【0035】
C1)、C2)、及びC3)の間の量比は、反応性水素原子Hの合計が、ほぼNCO当量に相当するように、つまりH:NCOが、1.5:1〜1:1.5、好ましくは1.1:1〜1:1.1、特に好ましくは1:1であるように選択する。
【0036】
促進剤C)の調製物全体への混入、又は全調製物の一部への混入は、単純に撹拌によって行うことができるが、また適切な分散装置での分散によって、任意で分散助剤、例えばTEGO Dispers(Evonik Degussa GmbH)の添加剤を使用して行うことができる。
【0037】
通常の添加剤D)は、溶剤、顔料、均展助剤、艶消し剤、並びにさらなる通常の促進剤、例えばウロン又はイミダゾールであり得る。これらの添加剤の量は、適用次第で大きく変わり得る。
【0038】
本発明の対象はまた、特許請求の範囲に記載した反応性組成物を、例えば繊維複合材料、接着剤、電子光学的積層体、並びに粉末塗料で用いることであり、また本発明による反応性組成物を含有する物品である。
【0039】
本発明による組成物を製造するために、上記成分を適切な装置、例えば撹拌槽、強力混合機、強力混練機、スタチックミキサ、又は押出成形機で、通常は昇温下(70〜130℃)で均質化させる。
【0040】
粉末塗料を適用する場合、冷却した混合物を入れ、粉砕し、そしてふるい分けする。
【0041】
本発明による組成物の特徴は、特別な貯蔵安定性にあり、特に、60℃で8時間後の粘度が、出発値の50%以下しか上昇しない。本発明による組成物はさらに、本発明により含有される成分C)、つまり促進剤が原因で、30分後に140℃で完全な架橋が起こっているほどの反応性を少なくとも有する(可撓性かつ耐薬品性の塗膜により実証)。
【0042】
適用範囲に応じて、反応性組成物は適切な方法で塗布することができ、例えばヘラ塗り、ハケ塗り、吹き付け、噴霧、スプレー、流しがけ、フロート法、又は浸漬法で塗布できる。
【0043】
粉末塗料の場合には例えば、ふるい分けされた粉末を静電塗布し、その後、被覆する基材にスプレーする。
【0044】
反応性組成物を基材に施与した後、その硬化は一段階又は多段階の昇温下で、加圧して、又は加圧せずに行うことができる。硬化温度は70〜220℃の間であり、通常は120〜180℃である。ここで硬化時間は、反応性と温度次第で1分〜数時間であり、通常は5分〜30分である。
【0045】
以下、実施例を用いて本発明をより詳しく説明する。本発明の代替的な実施形態は、類似の方法で得られる。
【0046】
実施例:
【表1】

【0047】
触媒の製造:
VESTANAT T1890を220g、アセトン600mlに溶解させる。これに少しずつ、イミダゾール32.5gを入れる。添加終了後に10時間、還流下で加熱する。その後、室温に冷却し、エチレンジアミン溶液11gを、アセトン100mlに滴加する。生成する沈殿を濾別し、真空乾燥機で50℃で、質量定数まで乾燥させる。生成する白色の固体(207g)の融点は、>250℃である。この固体を粉末塗料ミル(Fritsch社)で粉砕し、<28μmにふるい分けする(Retsch社のふるい分け機)。
【0048】
反応性調製物の製造(比較例1)
触媒3.1gを、EPIKOTE 828 43.3gに、水冷下で30分、3000回転/分で分散させ、それからさらに30分、9000回転/分で高速撹拌機を用いて分散させる。この際、温度が上昇して50℃を越えないように注意する。これに、さらにEPIKOTE 56.7gと、DYHARD SF 100 6.0gとを加え、もう一度10分間、9000回転/分で撹拌する。
【0049】
比較例(2*)として、同じ混合物を触媒無しで製造する。それから、粘度測定により貯蔵安定性を、そして硬化によって被覆における反応性を試験した。
【0050】
組成
すべての記載は質量%である。
【表2】

【0051】
a)貯蔵安定性
【表3】

【0052】
組成物1及び2は貯蔵安定性である(60℃で8時間後の粘度上昇率が、50%以下)。
【0053】
b)反応性
組成物1及び2*を鋼板にヘラ塗りし、30分、140℃で空気強制循環炉で硬化した。ここで、以下の塗料データが得られる:
【表4】

【0054】
・エリクセン深さは、DIN 53 156準拠。
・落球試験は、ASTM D 2794-93準拠。
・ペンデル硬度は、DIN 53 157準拠。
・クロスカット試験は、DIN 53 151準拠。
・MEK試験:メチルエチルケトン耐性試験は、MEKに浸した綿球で1kgの負荷(Auflage)で層が溶解するまで摩擦(往復ストロークでカウント)。
【0055】
組成物1は硬化している:可撓性(エリクセン深さ>5mm、落球試験(dir)>10インチ*ibs)は充分であり、耐薬品性(MEK試験、往復ストロークで>100)は満足のいくものである。
【0056】
組成物2は、硬化しなかった。粘りの問題で、試験は行えなかった。
【0057】
本発明による組成物1のみが、貯蔵安定性であり、かつ充分に反応性である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本的に以下のA)〜C):
A)少なくとも1種のエポキシ樹脂、
B)成分A)との非触媒反応でDSCにおいて、150℃超の温度で発熱性反応ピークの最大値を有する、少なくとも1種の潜在的な硬化剤、
C)以下のC1)〜C3):
C1)少なくとも1種のNCO含有成分、及び
C2)N、S、及び/又はPを含有する1種又は複数種の複素環、及び
C3)1種又は複数種のポリアミン及び/又はポリオール
から得られる反応生成物を含有する少なくとも1種の促進剤
を含む、反応性組成物。
【請求項2】
D)その他の通常の添加剤
が含まれていることを特徴とする、請求項1に記載の反応性組成物。
【請求項3】
A型若しくはF型ベースのビスフェノール、及び/又はレゾルシノール及び/又はテトラキスフェニロールエタン、及び/又はフェノール/クレゾール−ホルムアルデヒドノボラックをベースとするグリシジルエーテルから得られるエポキシ樹脂A)が含まれていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の反応性組成物。
【請求項4】
ビスフェノールA−ジグリシジルエーテルベースのエポキシ樹脂A)、ビスフェノールF−ジグリシジルエーテル及び/又は脂環式型がベースのエポキシ樹脂、例えば3,4−エポキシシクロヘキシル−エポキシエタン、又は3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−シクロヘキサンカルボキシレートが含まれていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の反応性組成物。
【請求項5】
前記潜在的な硬化剤B)として、置換グアニジン、特にジシアンジアミド及び/又は芳香族アミン、特に4,4’−ジアミノジフェニルスルホンが含まれていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の反応性組成物。
【請求項6】
前記潜在的な硬化剤B)として、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−メチレンジアミン、1,2−ベンゼンジアミン、1,3−ベンゼンジアミン、1,4−ベンゼンジアミン、ビス−(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン(例えばShell社のEPON 1061)、ビス−(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノベンゾフェノン、2,6−ジアミノピリジン、2,4−トルエンジアミン、ジアミノジフェニルプロパン、1,5−ジアミノナフタリン、キシレンジアミン、1,1−ビス−4−アミノフェニルシクロヘキサン、メチレン−ビス−(2,6−ジエチルアニリン)、メチレン−ビス−(2−イソプロピル,6−メチルアニリン)、メチレン−ビス−(2,6−ジイソプロピルアニリン)、4−アミノジフェニルアミン、ジエチルトルエンジアミン、フェニル−4,6−ジアミノトリアジン、及び/又はラウリル−4,6−ジアミノトリアジンが含まれていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の反応性組成物。
【請求項7】
前記C1)として、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、2−メチルペンタンジイソシアネート(MPDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)が含まれていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の反応性組成物。
【請求項8】
前記C1)として、IPDI、HDI、TMDI、及びH12MDIが含まれていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の反応性組成物。
【請求項9】
前記C1)として、イソシアヌレート、特にIPDI及びHDIから得られるイソシアヌレートが含まれていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の反応性組成物。
【請求項10】
前記C2)として、アジリジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、好ましくは3,5−ジメチルピラゾール、トリアゾール、アゼピン、及び/又はインドールが含まれていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の反応性組成物。
【請求項11】
前記C2)として、イミダゾール、ピラゾール、好ましくは3,5−ジメチルピラゾール、及び/又はトリアゾールが含まれていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の反応性組成物。
【請求項12】
前記C3)として、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメチレンジアミン、メチルジフェニルジアミン、トルエンジアミン、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエーテルジアルコール、ポリエーテルトリアルコール、ポリエーテルジアミン、及び/又はポリエーテルトリアミンが含まれていることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の反応性組成物。
【請求項13】
前記C3)として、エチレンジアミン及びジエチレントリアミンが含まれていることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の反応性組成物。
【請求項14】
前記C1)、前記C2)、及び前記C3)の量比を、反応性水素原子Hの合計が、NCO当量にほぼ相当するように選択することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の反応性組成物。
【請求項15】
H体NCOの比が、1.5:1〜1:1.5、好ましくは1.1:1〜1:1.1、特に好ましくは1:1であることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載の反応性組成物。
【請求項16】
前記添加剤D)として、溶剤、顔料、均展助剤、艶消し剤、及び/又は促進剤、例えばウロン若しくはイミダゾールが含まれていることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の反応性組成物。
【請求項17】
貯蔵安定性を有し、60℃で8時間後の粘度上昇率が、初期値の50%以下であることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項に記載の反応性組成物。
【請求項18】
本発明による組成物が少なくとも、140℃で30分後に完全な架橋が起こっているほど反応性であることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項に記載の反応性組成物。
【請求項19】
例えば撹拌槽、強力混合機、強力混練機、スタチックミキサ、又は押出成形機での均質化による、請求項1から14までのいずれか1項に記載の反応性組成物の製造方法。
【請求項20】
請求項1から19までのいずれか1項に記載の反応性組成物を、繊維複合材、接着剤、電子工学的積層体、並びに粉末塗料で用いる使用。
【請求項21】
請求項1から19までのいずれか1項に記載の反応組成物を含有する、物品。

【公表番号】特表2012−533663(P2012−533663A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520968(P2012−520968)
【出願日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055793
【国際公開番号】WO2011/009648
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】