説明

難燃ポリフェニレンエーテル樹脂組成物

【課題】ポリフェニレンエーテル樹脂中での層状珪酸塩鉱物の分散性を著しく改良して、優れた耐熱性、剛性を付与し、成形品の耐面衝撃性、引張伸度、表面光沢と剛性とのバランスに著しく優れ、リサイクル性に優れ、なおかつ難燃性にも優れたポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得る。
【解決手段】ポリフェニレンエーテル樹脂(a)50〜99.9重量部、分子構造中に芳香族環を有する有機化剤で層間処理した強熱減量が30〜60重量%の範囲内にある層状珪酸塩鉱物(b)50〜0.1重量部、(a)成分と(b)成分の合計量100重量部に対してスチレン系樹脂(c)0〜150重量部、更に(a)成分と(b)成分或いは(a)成分と(b)成分と(c)成分の合計量100重量部に対して芳香族リン酸エステル系難燃剤(d)5〜40重量部を含有し、これらを溶融混練してなるポリフェニレンエーテル樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低比重で良好な成形品表面光沢を保持し、極めて優れた耐面衝撃性、引張伸度と、剛性とのバランスを示し、なおかつ優れた難燃性を有するポリフェニレンエーテル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテル系樹脂は軽量性、機械的性質、成形加工性、耐熱性、寸法安定性あるいは電気特性等に優れるため、家電OA分野、事務機分野や情報機器分野、自動車分野等に広く用いられている。
一般に熱可塑性樹脂の欠点は金属に比べて剛性が低いことであり、剛性を改良するために無機質充填剤を配合する手法が広く用いられている。しかし、熱可塑性樹脂に無機質充填剤を配合する場合、剛性や機械的強度は向上するが、一方では高比重となり、耐衝撃性、引張伸度、表面平滑性等の低下が伴う。
【0003】
またポリフェニレンエーテル系樹脂に有機化剤で層間処理した層状珪酸塩鉱物を配合して、比重の増加が少なく、成形品表面外観を低下させずに剛性、靭性等を改良する技術として、アルキル基で置換した四級アンモニウム化合物等の有機化剤で層間処理した層状珪酸塩鉱物を少量添加する方法が既に開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。これらの特許文献にはいずれも、ポリフェニレンエーテル樹脂またはこれを含む熱可塑性樹脂に、このような層状珪酸塩鉱物を添加した樹脂組成物を作成する際に、層状珪酸塩鉱物を樹脂中に均一に微分散させることが延性を保持するためには好ましいこと、そのために二軸押出機のような強いせん断力を伴う溶融混練の必要性や、予め樹脂成分と層状珪酸塩鉱物とを予備混練しておく方法が示されている。また、熱可塑性樹脂の溶融状態での機械的せん断下で混合することが肝要であり、重合終了後の粉体、フレーク、チップ等、任意の形態の熱可塑性樹脂に添加し、押出機等の混練機にて溶融混合する方法も混合可能である旨、記載されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかし、これらの文献に記載された有機化剤で層間処理した層状珪酸塩鉱物をポリフェニレンエーテル系樹脂に配合した場合、成形品の表面外観を悪化させずに剛性や靭性が改良される反面、ポリフェニレンエーテル系樹脂の難燃性は著しく低下し、難燃剤を用いても、難燃性の低下を抑えることは著しく困難になる。
ポリフェニレンエーテル系樹脂に、有機化剤で層間処理した層状珪酸塩鉱物と、亜リン酸エステルのような極性化合物を配合して、層状珪酸塩鉱物の樹脂中における分散性を改良して成形品の剛性、引張伸度、耐久性を高める技術も開示されている(例えば、特許文献3)。しかし、この技術は難燃性を改良するためのものではなく、従って難燃性に関する記述は一切無い。
【0005】
ポリフェニレンエーテル系樹脂に、層状珪酸塩と、リン酸エステル系難燃剤や水酸化マグネシウムのような非ハロゲン系難燃剤を配合した難燃性に優れた樹脂組成物に関する技術も開示されている(例えば、特許文献4)。しかし、この文献に記されている技術を用いても、成形品に良好な表面光沢を保持させ、優れた耐面衝撃性、引張伸度と、剛性とのバランスを付与して、なおかつ優れた難燃性を有するポリフェニレンエーテル樹脂組成物を得るためには、十分ではなかった。
【特許文献1】特許第3261782号公報
【特許文献2】特許第3269277号公報
【特許文献3】特開2002−256144号公報
【特許文献4】特開2003−26915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、家電・OA、事務機、情報機器分野や自動車分野に有効に使用できる、高剛性で、なおかつ成形品表面光沢、耐面衝撃性、引張伸度に優れ、難燃性にも優れたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、環境に悪影響を及ぼさず、高耐熱性、高剛性を付与して、成形流動性を低下させずに、成形品の耐面衝撃性や引張伸度を改良し、なおかつ難燃性にも優れたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を開発することを目的として鋭意検討した結果、ポリフェニレンエーテル樹脂と芳香族リン酸エステル系難燃剤、またはポリフェニレンエーテル樹脂とスチレン系樹脂と芳香族リン酸エステル系難燃剤を含有してなる樹脂に、分子構造中に芳香族環を有する有機化剤で処理した強熱減量が30〜60重量%の範囲内にある層状珪酸塩鉱物を配合することによって、耐熱性、流動性、成形品表面光沢に優れ、剛性と耐面衝撃性、引張伸度とのバランスに著しく優れる樹脂組成物の製造が可能であり、なおかつ難燃性にも優れた樹脂組成物が得られることを見出して、本発明に至った。
【0008】
即ち本発明は、
[1]ポリフェニレンエーテル樹脂(a)50〜99.9重量部、分子構造中に芳香族環を有する有機化剤で層間処理した強熱減量が30〜60重量%の範囲内にある層状珪酸塩鉱物(b)50〜0.1重量部、(a)成分と(b)成分の合計量100重量部に対してスチレン系樹脂(c)0〜150重量部、更に(a)成分と(b)成分或いは(a)成分と(b)成分と(c)成分の合計量100重量部に対して芳香族リン酸エステル系難燃剤(d)5〜40重量部を含有し、これらを溶融混練してなるポリフェニレンエーテル樹脂組成物、
[2]上記(b)成分の有機化剤が、分子構造中に芳香族環を有するアルキル置換四級アンモニウム化合物である、上記[1]に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物、
[3]上記(b)成分の有機化剤が、分子構造中にベンゼン環を有するアルキル置換四級アンモニウム化合物である、上記[1]または[2]に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物、
[4]上記(b)成分の有機化剤が、ベンジルメチル水添ジタローアンモニウム化合物である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物、
[5]上記(b)成分の層状珪酸塩鉱物が、モンモリロナイト或いはヘクトライトである上記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物、
[6]上記(b)成分が、有機処理量100〜200ミリ等量/100gの範囲内にある、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物、
[7]上記[1]〜[6]のいずれかのポリフェニレンエーテル樹脂組成物を用いて成形した成形体、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、低比重、高耐熱、高流動、高剛性で、成形品の耐面衝撃性、表面光沢、引張伸度に優れ、難燃性にも優れたポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を更に詳細に説明する。
本発明の(a)成分であるポリフェニレンエーテル樹脂とは、次に示す一般式(1)を繰り返し単位とし、構成単位が一般式(1)の〔a〕または〔b〕からなる単独重合体、あるいは共重合体が使用できる。
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R1,R2,R3,R4,R5,R6は炭素1〜4のアルキル基、アリール基、ハロゲン、水素等の一価の残基であり、R5,R6は同時に水素ではない)
【0013】
ポリフェニレンエーテル系樹脂の単独重合体の代表例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等のホモポリマーが挙げられる。
ポリフェニレンエーテル共重合体としては、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体あるいは2,3,6−トリメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体等、ポリフェニレンエーテル構造を主体としてなるポリフェニレンエーテル共重合体を包含する。
【0014】
また、本発明で使用されるポリフェニレンエーテル樹脂には、本発明の主旨に反しない限り、他の種々のフェニレンエーテルユニットを部分構造として含んでいても構わない。これらフェニレンエーテルユニットとしては、例えば、特開平01−297428号公報及び特開昭63−301222号公報に記載されている、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニットや、2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニット等が挙げられる。
また、ポリフェニレンエーテル樹脂の主鎖中にジフェノキノン等が少量結合したものも含まれる。
【0015】
本発明で使用されるポリフェニレンエーテル樹脂において、その一部または全部を不飽和カルボン酸等の官能的誘導体で変性した官能化ポリフェニレンエーテルで置き換えることが可能である。この場合、変性は官能的誘導体の中の1種により行われても良いし、2種以上の組み合わせによって行われても良い。
本発明に用いられるポリフェニレンエーテル樹脂の固有粘度(クロロホルム溶媒で30℃にて測定)は0.3〜0.9の範囲が好ましく、より好ましくは0.4〜0.6の範囲にあることである。無機質充填剤を十分に微分散させるためには0.3以上が好ましく、成形加工性の観点から0.9以下が好ましい。
【0016】
本発明で使用されるポリフェニレンエーテル樹脂の性状は、特に限定されるものではないが、(b)成分との混和性の観点から、重合後の粉体性状のものを用いることが好ましい。
本発明の(b)成分である、有機化剤で層間処理した層状珪酸塩鉱物において、本発明に使用される層状珪酸塩鉱物は熱可塑性樹脂を強化するために一般的に用いられるものである。その具体例としては、、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、バイデライト、スティーブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ等が挙げられる。本発明(b)成分の層状珪酸塩鉱物として特に好ましいのは、モンモリロナイトおよびヘクトライトである。
【0017】
本発明の(b)成分において、層状珪酸塩鉱物を層間処理するために用いられる、分子構造中に芳香族環を有する有機化剤としては、層状珪酸塩鉱物の結晶層間の交換性カチオンと置換されて結晶層間に取り込まれる四級アンモニウム化合物や四級ホスホニウム化合物などが挙げられる。このような有機化剤で層状珪酸塩鉱物粒子を層間処理することにより、ポリフェニレンエーテル樹脂に対する層状珪酸塩鉱物の溶融混和性が著しく改良され、組成物の剛性を向上させ、耐面衝撃性、引張伸度等の靭性を改良すると同時に、難燃性にも優れた組成物が得られる。このような有機化剤として好ましいのが分子構造中に芳香族環を有するアルキル置換四級アンモニウム化合物であり、更に好ましいのは分子構造中にベンゼン環を有するアルキル置換四級アンモニウム化合物であり、その具体例として、ベンジルジメチル水添タローアンモニウム化合物、ベンジルメチル水添ジタローアンモニウム化合物等である。本発明(b)成分として特に好ましいのは、ベンジルメチル水添ジタローアンモニウム化合物である。
【0018】
本発明(b)成分の、強熱減量は、30〜60重量%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは40〜50重量%である。十分な耐面衝撃性の観点から30重量%以上が好ましく、十分な難燃性保持の観点から60重量%以下が好ましい。
本発明(b)成分における、分子構造中に芳香族環を有する有機化剤の処理量は100〜200ミリ当量/100gの範囲にあることが好ましく、より好ましくは130〜160ミリ当量/100gであり、更に好ましくは135〜145ミリ当量/100gの範囲内である。成形品の十分な引張伸度の観点から100ミリ当量/100g以上が望ましく、十分な耐熱性、剛性保持の観点から200ミリ当量/100g以下が望ましい。
X線回折で測定したd(001)面の層間距離の値は20Å以上であることが好ましく、より好ましくは25〜40Åの範囲である。溶融混練時の十分な層剥離促進の観点から、層間距離は20Å以上であることが好ましい。
本発明(c)成分であるスチレン系樹脂とは、スチレン系化合物またはスチレン系化合物と共重合可能な化合物を、ゴム質重合体存在下または非存在下に重合して得られる重合体である。
スチレン系化合物とは、一般式(2)で表される化合物を意味する。
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、Rは水素、低級(炭素数0〜5)アルキルまたはハロゲンを示し、Zはビニル、水素、ハロゲン及び低級(炭素数0〜5)アルキルよりなる群から選択され、pは0〜5の整数である。)
【0021】
これらの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。また、スチレン系化合物と共重合可能な化合物としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物類;無水マレイン酸等の酸無水物等が挙げられ、スチレン系化合物と共に使用される。また、ゴム質重合体としては共役ジエン系ゴムおよび共役ジエンと芳香族ビニル化合物のコポリマーまたはこれらの水添物あるいはエチレン−プロピレン共重合体系ゴム等が挙げられる。本発明のために特に好適なポリスチレン系樹脂はポリスチレンおよびゴム強化ポリスチレンである。
【0022】
本発明における(d)成分である芳香族リン酸エステル系難燃剤の配合によって、本発明の樹脂組成物は特に優れた難燃性が発現される。本発明(d)成分としては、例えばトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジキシレニルフェニルホスフェート、ヒドロキシノンビスホスフェート、レゾルシノールビスホスフェート、ビスフェノールAビスホスフェート等のトリフェニル置換タイプの芳香族リン酸エステル類が特に好適に用いられる。これらは単独でも二種以上組み合わせて用いても良い。
本発明の(a)成分である、ポリフェニレンエーテル樹脂の配合量は50〜99.9重量部の範囲より選ばれる。好ましい範囲は70〜99重量部、より好ましい範囲は80〜97重量部である。(b)成分との混和性や耐熱性、加工性の観点から50重量部以上の配合量が望ましく、剛性等の機械物性の観点から99.9重量部以下の配合が望ましい。
【0023】
本発明の(b)成分である有機化剤で処理した無機質充填剤の配合量は50〜0.1重量部の範囲より選ばれる。好ましい範囲は30〜1重量部、より好ましい範囲は20〜3重量部である。(a)成分との混和性、加工性等の観点から50重量部以下での配合が望ましく、機械物性改良の観点から0.1重量部以上の配合が望ましい。
本発明の(c)成分である、スチレン系樹脂の配合量は、(a)成分と(b)成分との合計量100重量部に対して、0〜150重量部の範囲より選ばれる。好ましくは10〜130重量部、より好ましくは20〜100重量部である。十分な耐熱性付与の観点から150重量部以下の配合が望ましい。
本発明の(d)成分である、芳香族リン酸エステル系難燃剤の配合量は(a)成分と(b)成分の合計量100重量部、または(a)成分、(b)成分、(c)成分の合計量100重量部に対して、5〜40重量部の範囲より選ばれる。好ましくは10〜30重量部、より好ましくは15〜25重量部である。十分な難燃性付与の観点から5重量部以上の配合が好ましく、耐熱性の観点から40重量部以下の添加が好ましい。
【0024】
本発明の樹脂組成物には必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等の安定剤類や着色剤、離型剤等も添加することができる。
本発明の樹脂組成物のより具体的な調整方法として、樹脂組成物を大量に安定して製造するには単軸または二軸の押出機が好適に用いられる。特に、(b)成分をより高度に微分散させるには、二軸の押出機を用いることが望ましく、例えば(a)成分と(b)成分の混合物、或いは(a)成分と(b)成分と(c)成分の混合物を十分に溶融混練した後、残りの(c)成分や(d)成分等をフィードできるように、押出機のシリンダーの途中に原料フィード口を備えた二軸押出機を用いることがより好ましい。このような原料フィード口を備えた二軸押出機を用いて、一段押出で目的とする樹脂組成物を得ることも可能であるし、また、例えば、単軸押出機で予め(a)成分と(b)成分の混合物、或いは(a)成分と(b)成分と(c)成分等の混合物を押出した後、押出ペレットに残りの原材料を配合、溶融混練して、最終樹脂組成物を得てもよい。
【0025】
また、本発明の樹脂組成物の射出成形等で発生したランナー部などの成形屑や、市場に出回った後に回収した成形品を粉砕して、任意の割合で未使用の樹脂ペレットに配合して新たな成形品を作成することも、材料の物性保持、向上の点から十分に可能であり、資源の有効利用と環境保護の観点から好ましい。
本発明の樹脂組成物を用いて成形体を成形する場合、特に成形法に制限はないが、射出成形、押出成形、真空成形、圧空成形など既に広く知られた成形法が好適に用いられる。
【実施例】
【0026】
本発明について、実施例に基づき以下具体的に説明する。本発明がこれらの例によって何ら限定されるものではない。尚、以下に用いる部は重量部である。
実施例および比較例中の各測定値は以下の方法によって求めた。
(1)比重
厚み1/8インチのダンベル成形片のデッド側3cmを切り取り、アルファーミラージュ(株)製の電子比重計ED−120Tを用いて、23℃にて測定した。
(2)落錘衝撃強度(耐面衝撃性)
50mm×90mm×2.5mm(厚さ)の平板を用い、(株)東洋精機製作所製の落錘グラフィックインパクトテスターにより、23℃における破壊時の全吸収エネルギーを測定した。
(3)引張強度、引張破断伸び
ASTMのD638による引張試験法に基づいて23℃で測定した。
(4)曲げ弾性率
ASTMのD790による曲げ試験法に基づいて三点曲げ試験を23℃で測定した。
(5)グロス(光沢)
50mm×90mm×2.5mm(厚さ)の平板を用い、(株)村上色彩技術研究所製のグロスメーターGM−26Dにより、平板中央部のグロス(光沢値)を測定した。
(6)難燃性
1.6mm厚みのタンザク試験片5本を用いて、UL−94試験法に基づいて測定した。
【0027】
[実施例1]
固有粘度(クロロホルム溶媒で30℃にて測定)が0.43dl/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル粉体54部と、ベンジルジメチル水添タローアンモニウム化合物で層間処理したベントナイト(主成分はモンモリロナイト)(商品名:BENTON111、米国エレメンティススペシャリティーズ社製、強熱減量(650℃で5時間強熱)33重量%、有機処理量104ミリ等量/100g)5部、ビスフェノールA−ビス(ジフェニルフォスフェート)15部を、独国Werner&Pfleiderer社製ベントポート付きZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:3個、ニーディングディスクR:5個、シーリング:1個を有するスクリューパターン)を用いて、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数500rpmで溶融混練して押出し、ペレットを作成した。次に、得られた前記ペレットを74部、PSジャパン(株)社製ポリスチレンH9405を19部、PSジャパン(株)製ポリスチレン685を7部、エチレンビスステアリルアマイド(商品名:カオーワックスEB−FF、花王(株)製)0.5部と2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)1部とを混合した後、池貝鉄工所(株)製のPCM30二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:3個、シーリング1個を有するスクリューパターン)を用いて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数150rpmで溶融混練して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0028】
[実施例2]
実施例1で使用したBENTON111を、ベンジルメチル水添ジタローアンモニウム化合物で層間処理したベントナイト(商品名:BENTON2019、米国エレメンティススペシャリティーズ社製、強熱減量47重量%、有機処理量129ミリ等量/100g)に置き換えた以外は実施例1を繰り返して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0029】
[実施例3]
実施例1で使用したBENTON111を、ベンジルメチル水添ジタローアンモニウム化合物で層間処理したベントナイト(商品名:BENTON2010、米国エレメンティススペシャリティーズ社製、強熱減量40重量%、有機処理量136ミリ等量/100g)に置き換えた以外は実施例1を繰り返して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表1に示す。
【0030】
[比較例1]
固有粘度(クロロホルム溶媒で30℃にて測定)が0.43dl/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル粉体57部と、ビスフェノールA−ビス(ジフェニルフォスフェート)16部を、独国Werner&Pfleiderer社製ベントポート付きZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:3個、ニーディングディスクR:5個、シーリング:1個を有するスクリューパターン)を用いて、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数500rpmで溶融混練して押出し、ペレットを作成した。次に、得られた前記ペレットを73部、PSジャパン(株)社製ポリスチレンH9405を19部、PSジャパン(株)製ポリスチレン685を8部、エチレンビスステアリルアマイド(商品名:カオーワックスEB−FF、花王(株)製)0.5部、と2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)1部、とを混合した後、池貝鉄工所(株)製のPCM30二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:3個、シーリング1個を有するスクリューパターン)を用いて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数150rpmで溶融混練して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0031】
[比較例2]
実施例1で使用したBENTON111を、ジメチル水添ジタローアンモニウム化合物で層間処理したベントナイト(商品名:BENTON107、米国エレメンティススペシャリティーズ社製、強熱減量39重量%、有機処理量101ミリ等量/100g)に置き換えた以外は実施例1を繰り返して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0032】
[比較例3]
実施例1で使用したBENTON111を、ジメチル水添ジタローアンモニウム化合物で層間処理したベントナイト(商品名:BENTON2176、米国エレメンティススペシャリティーズ社製、強熱減量47重量%、有機処理量145ミリ等量/100g)に置き換えた以外は実施例1を繰り返して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表2に示す。
【0033】
[実施例4]
実施例1で使用したBENTON111を、ベンジルメチル水添ジタローアンモニウム化合物で層間処理したベントナイト(商品名:BENTON1651、米国エレメンティススペシャリティーズ社製、強熱減量50重量%、有機処理量142ミリ等量/100g)に置き換えた以外は実施例1を繰り返して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表3に示す。
【0034】
[実施例5]
固有粘度(クロロホルム溶媒で30℃にて測定)が0.43dl/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル粉体56部と、ベンジルジメチル水添タローアンモニウム化合物で層間処理したベントナイト(商品名:BENTON1651、米国エレメンティススペシャリティーズ社製、強熱減量50重量%、有機処理量142ミリ等量/100g)3部、ビスフェノールA−ビス(ジフェニルフォスフェート)15部を、独国Werner&Pfleiderer社製ベントポート付きZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:3個、ニーディングディスクR:5個、シーリング:1個を有するスクリューパターン)を用いて、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数500rpmで溶融混練して押出し、ペレットを作成した。次に、得られた前記ペレットを74部、PSジャパン(株)社製ポリスチレンH9405を19部、PSジャパン(株)製ポリスチレン685を7部、エチレンビスステアリルアマイド(商品名:カオーワックスEB−FF、花王(株)製)0.5部、と2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)1部、とを混合した後、池貝鉄工所(株)製のPCM30二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:3個、シーリング1個を有するスクリューパターン)を用いて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数150rpmで溶融混練して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表3に示す。
【0035】
[実施例6]
固有粘度(クロロホルム溶媒で30℃にて測定)が0.43dl/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル粉体57部と、ベンジルジメチル水添タローアンモニウム化合物で層間処理したベントナイト(商品名:BENTON1651、米国エレメンティススペシャリティーズ社製、強熱減量50重量%、有機処理量142ミリ等量/100g)1部、ビスフェノールA−ビス(ジフェニルフォスフェート)15部を、独国Werner&Pfleiderer社製ベントポート付きZSK25二軸押出機(ニーディングディスクL:3個、ニーディングディスクR:5個、シーリング:1個を有するスクリューパターン)を用いて、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数500rpmで溶融混練して押出し、ペレットを作成した。次に、得られた前記ペレットを73部、PSジャパン(株)社製ポリスチレンH9405を20部、PSジャパン(株)製ポリスチレン685を7部、エチレンビスステアリルアマイド(商品名:カオーワックスEB−FF、花王(株)製)0.5部、と2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)1部、とを混合した後、池貝鉄工所(株)製のPCM30二軸押出機(ニーディングディスクL:2個、ニーディングディスクR:3個、シーリング1個を有するスクリューパターン)を用いて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数150rpmで溶融混練して樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の物性試験結果を表3に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、低比重で、優れた耐熱性、成形流動性、剛性を有し、極めて良好な成形品表面光沢、耐面衝撃性、引張伸度と剛性とのバランスを有し、リワークやリサイクルにも有利で、なおかつ良好な難燃性を保持するため、家電OA機器、事務機、情報・通信機器、電気電子部品、建材、日用品、玩具、自動車部品等に広く用いることができる。例えば、テレビハウジング、テレビシャーシ、デフレクションヨーク等のテレビ部品、エアコン部品、オーディオ部品、TVゲーム機部品、モニターハウジング、モニターシャーシ、ノート型PCハウジング、MDシャーシ類、DVDシャーシ類、DVDスリムトレー、車載用CDチェンジャートレー、車載用DVDデッキフレーム、モーターカバー、ギアボックス、液晶プロジェクターハウジング、PDAハウジング、アンテナカバー、プリンターハウジング、プリンターシャーシ、プリンター光学箱、トナーカートリッジ、給紙用トレー、スキャナーハウジング、スキャナーフレーム、携帯電話ハウジング、デジタルカメラ周辺部品、空気清浄機部品、煙検知器部品、自動車バンパー、フェンダー、ドアミラー、ドアパネル、ホイールカバー、サイドリアカバー、スポイラー、バッテリーハウジング、バッテリートレー等の用途が挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンエーテル樹脂(a)50〜99.9重量部、分子構造中に芳香族環を有する有機化剤で層間処理した強熱減量が30〜60重量%の範囲内にある層状珪酸塩鉱物(b)50〜0.1重量部、(a)成分と(b)成分の合計量100重量部に対してスチレン系樹脂(c)0〜150重量部、更に(a)成分と(b)成分或いは(a)成分と(b)成分と(c)成分の合計量100重量部に対して芳香族リン酸エステル系難燃剤(d)5〜40重量部を含有し、これらを溶融混練してなるポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
【請求項2】
上記(b)成分の有機化剤が、分子構造中に芳香族環を有するアルキル置換四級アンモニウム化合物である、請求項1に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
【請求項3】
上記(b)成分の有機化剤が、分子構造中にベンゼン環を有するアルキル置換四級アンモニウム化合物である、請求項1または2に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
【請求項4】
上記(b)成分の有機化剤が、ベンジルメチル水添ジタローアンモニウム化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
【請求項5】
上記(b)成分の層状珪酸塩鉱物が、モンモリロナイト或いはヘクトライトである、請求項1〜4のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
【請求項6】
上記(b)成分が、有機処理量100〜200ミリ等量/100gの範囲にある、請求項1〜5のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかのポリフェニレンエーテル樹脂組成物を用いて成形した成形体。

【公開番号】特開2006−131664(P2006−131664A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319133(P2004−319133)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】