説明

難燃剤組成物およびその製造法、並びにそれから得られる難燃性樹脂組成物

【課題】ハロゲン、窒素等の原子や有機リンを実質的に含有せず、また無機リンに関しては極微量に含有量を抑えて環境に配慮した難燃剤組成物であり、多様な樹脂に対して少量で極めて高い難燃性を付与することが可能な難燃剤組成物およびその製造法並びにこれを用いて難燃化された難燃性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】オルガノポリシロキサンと、バナジウム、モリブデン、タングステンなどの元素から構成される酸素酸またはその塩とを混合してなる難燃剤組成物を、主鎖に芳香族を有する樹脂や含ハロゲン系樹脂に、バナジウム、モリブデン、タングステン元素が合計で100ppm〜20,000ppmとなるように含有させることで難燃化された難燃性樹脂組成物を得ることができる。また、該難燃剤組成物は、オルガノポリシロキサンと、バナジウム、モリブデン、タングステンなどの元素から構成される酸素酸またはその塩を有機溶剤に分散または溶解した混合液から該溶剤を除去して得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲンやリン等の元素を含まない、あるいはリン含有量が極めて少ない難燃剤組成物およびその製造法並びにその難燃剤を含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、合成樹脂などの難燃化技術は各産業で検討され、その技術内容も多岐にわたっている。その中で有機の合成高分子自体を基本的に難燃化する技術も行なわれているが、素材特性から、現時点では難燃化技術に限界が見られる。したがって、更なる難燃化には難燃性改良剤(難燃剤)を併用するのが一般的で、難燃剤の性能向上検討が昨今たゆまなく続けられている。かかる難燃剤としては、その多くは臭素や塩素の化合物であるハロゲン系難燃剤、リン酸エステルに代表されるリン系難燃剤、メラミンやグアニジン等の窒素含有化合物である窒素系難燃剤、あるいは金属酸化物や水和金属化合物等の無機系難燃剤である。近年、環境意識の高まりから非ハロゲン系、非リン系の難燃剤の開発が盛んになり、その代表的難燃剤として、例えば特許文献1や特許文献2に開示されたシリコーン系難燃剤や、特許文献3に開示された水和金属系が挙げられる。
【0003】
シリコーン系難燃剤による難燃機構は、燃焼時のチャー形成の結果、通常の大気での燃焼が持続しにくい構造に変質させ、あるいはその構造により大気中の酸素との接触を低減させる作用や断熱効果による燃焼継続の阻止効果と考えられる。しかしながら、シリコーン自体がそもそも不燃性ではないため、そのシリコーン単独で難燃化できる素材はかなり限定され、しかもリン系難燃剤やハロゲン系難燃剤が単独で難燃化に用いられる量以上の量を必要とすることが多く、難燃化性能は小さいと言わざるを得ない。また、水和金属系の難燃剤による難燃化は、燃焼時の吸熱反応や燃焼物質の希釈による燃焼持続の抑制による作用と考えられ、樹脂への多量添加が必要となる。特許文献3は添加量を減らすための技術であるが、それでもリン系難燃剤やハロゲン系難燃剤に比べて未だ多量の添加量を必要としている。その結果、樹脂成形品の物性低下が余儀なくされるため、かかる難燃剤単独で難燃目的を果たす配合樹脂では、その用途が極めて限定される欠点がある。
【0004】
シリコーン系難燃剤以外の非ハロゲン、非リン系の難燃剤としては、例えばメラミンやグアニジン等、窒素含有の化合物である窒素系難燃剤が挙げられ、その作用は窒素系ガスの生成による酸素や燃焼物の希釈、燃焼時の脱水吸熱やチャー形成による燃焼抑制効果と考えられ、その効果が発揮されるには、やはり相当量の添加量を必要とするため物性や成形加工性の低下が大きな課題となる。
【0005】
一方、難燃剤の主な成分ではないが、バナジウム、モリブデン、タングステンなどの元素から構成される酸素酸、またはその塩に着目した複合難燃化技術がいくつか見られる。その例として、窒素系難燃剤とチャー形成触媒作用のある特定の添加剤を併用することが挙げられている。例えば、特許文献4では、約30〜70重量%のポリエステルあるいはナイロン6,6樹脂に、約15〜40重量%のガラスまたは無機補強剤と、約20〜30重量%のメラミンホスフェート化合物並びに10重量%のチャー化触媒を併用することで難燃性を向上させる樹脂組成物が提案されており、チャー化触媒の例として例えばケイタングステン酸やリンタングステン酸を挙げているが、ベース樹脂にチャー化触媒を含め、かなり多くの樹脂以外の添加剤の併用が必須となっているため、ベース樹脂の特徴が損なわれることは否めない。特許文献5では、ポリマー組成物、リン含有化合物およびトリアジン難燃剤からなる難燃混合物が提案されており、リン化合物としてはリンの酸化物あるいは水素化物を挙げており、また、強化剤および/または充填剤を含むことも記載されている。更に、特許文献5の[発明の詳細な説明]の(発明の開示)の欄には、木炭形成を促進する触媒としてタングステン酸、ケイタングステン酸、リンタングステン酸の記載があるが、該発明のトリアジン難燃剤に関して相乗作用する内容であることから、トリアジン難燃剤の併用が必須となっている。更には、他の難燃成分として種々の化合物を挙げ、その中に有機ケイ素化合物も挙げられているが、その効果は特に明確にされておらず、付加的に記載されているのみで該発明の構成に至っていない。特許文献6にも類似の技術が提案されており、メラミン縮合生成物とリン原子含有酸との塩に関するものであり、[発明の詳細な説明]の欄には、チャットの形成を促進する触媒として例示されているものの、単に付加的に記載されているだけであり、実施例では特別な使用法については触れていない。また、ケイ酸塩との併用に関して特許文献7では明細書中に難燃性向上に関する記載があるもののリン酸エステル系難燃剤配合組成物となっている。
【特許文献1】特開2001−316671号公報
【特許文献2】特開2002−114982号公報
【特許文献3】特開2001−226676号公報
【特許文献4】特表2000−502395号公報
【特許文献5】特表2003−510392号公報
【特許文献6】特表2003−522228号公報
【特許文献7】特開2000−119502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような現状に鑑み、ハロゲン、窒素等の原子や有機リンを実質的に含有せず、また、無機リンに関しては可能な限り含有量を極微量に抑えて環境に配慮し、難燃化を目的とする樹脂に対して少量の添加で極めて高い難燃性を付与することが可能な難燃剤組成物およびその製造法、並びにこれを用いて難燃化された難燃性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題のハロゲン、リン、窒素等の原子を実質的に含有しない化合物に着目して難燃効果を調べ、更にその化合物の樹脂への分散性について検討した結果、本発明に至った。
【0008】
更に詳細に述べると、燃焼反応は酸化還元反応が同一系で短時間で起きていることから、本課題解決にはハロゲン、リン、窒素等の原子を実質的に含有しない物質について、酸化反応時間に関与するような物質特性を調べた。特に、樹脂と混合して得られた成形品に接炎した時、炎を伴うような気化物の酸化反応においてはその炎や発煙の挙動、炭火や線香の燃焼のように炎を伴わない固体の酸化反応においては燃焼速度や発煙性等を観察した。更に、その燃焼挙動を総合的に判断して難燃性を基本的に付与できる物質の組み合わせを検討した。その結果、難燃性の効果をより高めるため特定物質の樹脂への分散をできるだけ細かくすることが有効であることが分かった。そこで、更に微分散できる方法を検討した。その結果、特定物質を有する難燃剤の、樹脂への分散特性改良を図ることで、少量で極めて高い難燃性を付与することが可能な難燃剤を提供できるに至った。そのさらなる詳細技術は以下の記載で明らかとなろう。
【0009】
すなわち、本発明は、オルガノポリシロキサンと、バナジウム、モリブデン、タングステンから選ばれる少なくとも1種の元素から構成される酸素酸またはその塩とを混合してなることを特徴とする難燃剤組成物およびその製造法、並びに前記難燃剤組成物により難燃化された難燃性樹脂組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の難燃剤組成物の使用により、難燃剤によるハロゲン、窒素、有機リンの含有量を実質的に無くし、また、無機リンに関しては可能な限り含有量を極微量に抑えることができ、環境に配慮した難燃剤処方となるため、従来に比べて難燃剤の混合使用量を低減させた難燃性樹脂成形物を得ることができ、樹脂の難燃化に対し、環境に配慮した樹脂組成物の提供が可能となる。更には、通常ドリップ防止効果をより高めるために添加しているフッ素樹脂については、その併用が無くてもドリップの発生がないことから、フッ素樹脂を併用しない、真の意味での非ハロゲン難燃樹脂を提供できる。また、フッ素樹脂の添加による溶融粘度上昇が抑制できるため、流動性向上により加工性が改良され、且つ、耐熱性はそのまま維持できる長所の発揮が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で言うオルガノポリシロキサンとしては、公知の技術で製造できるオルガノポリシロキサンが使用でき、SiO4/2(Q単位)、RSiO3/2(T単位)、R2SiO2/2(D単位)から選ばれる少なくとも1種の単位からなるオルガノポリシロキサン(Rは、おのおの独立して水素またはC1〜C20からなる炭化水素またはヘテロ原子を含む炭化水素基を表し、同一でも異なってもよい)が適用できる。2官能であるD単位、3官能であるT単位および4官能であるQ単位を単独または2〜3種組み合わせて重合することで、性状をオイル、樹脂、ゴム状に変えることができる。
【0012】
前記オルガノポリシロキサンにおける分子構造の末端は、R3SiO1/2(M単位)で封鎖されていても良い。M単位に結合しているRは、水素または炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基やナフチル基に代表される芳香族基、更にはアルキル基またはその一部、あるいは芳香環の一部がメチル基やエチル基等の低級アルキル基、ビニル基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、スルホン酸基やハロゲン原子等のヘテロ原子を含む官能基と置換されたものであってもよく、またおのおの同一でも異なってもよく、好ましくはメチル基やフェニル基が多用される。ここで言うオルガノポリシロキサンにおける分子構造の末端とは、Si−OX(Xは水素、メチル基やエチル基からなる)を意味し、必ずしも分子鎖の最長末端を指すものではなく、主鎖の途中や分岐鎖に含まれるSi−OXをも含む。
【0013】
オルガノポリシロキサンの分子量としては重量平均分子量で500〜200,000が好ましい。末端の封鎖率は特に限定されるものではないが、50モル%以上がM単位により封鎖されていることが好ましく、更に好ましくは70モル%以上である。末端封鎖率が50モル%未満では難燃性への寄与が小さくなる場合がある。ポリシロキサンに結合する有機基はメチル基やフェニル基が多用されるが、そのモル比は該難燃剤組成物の樹脂中の分散性を考慮するとフェニル基のモル比は20モル%以上であり、更に好ましくは40モル%以上であるが、特に限定されるものではない。
【0014】
本発明におけるバナジウム、モリブデン、タングステンなどの元素から構成される酸素酸またはその塩とは、バナジン酸、モリブデン酸、タングステン酸等の単純な酸や、それら酸イオンである単核の金属酸素酸イオンが脱水縮合して多核化して得られるイソポリ酸やヘテロポリ酸またはその塩が挙げられ、中でもヘテロポリ酸およびその塩が好ましい。その好ましい代表的化合物としては、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンバナドモリブデン酸、リンタングストモリブデン酸等が有り、それらの塩としてはアンモニウム、ナトリウム、カリウム等の1価の陽イオンとの組み合わせからなる化合物が挙げられ、好ましくは酸やナトリウム塩である。
【0015】
更に、ヘテロポリ酸としては、分子式として上記の基本型の酸以外に、混合配位型としてはH3(PWxMo(12-x)40)・nH2O〔但し、1≦x≦11(xは整数)〕で表されるリンタングストモリブデン酸、H4(SiWyMo(12-y)40)・nH2O〔但し、1≦y≦11(yは整数)〕で表されるケイタングストモリブデン酸、Hi(PVj(12-j)40)・nH2O〔但し、4≦i≦7、1≦j≦4、(iおよびjは整数)〕で表されるリンバナドタングステン酸、H15-k〔PV12-kMok40〕・nH2O(但し、6<k<12)で表されるリンバナドモリブデン酸等があるが、これらに限られるものではなく、これらは混合使用しても良い。
【0016】
難燃剤組成物に占める前記酸素酸、またはその塩などの含有量としては、それらに含まれる金属元素化合物として1重量%〜99重量%、好ましくは2重量%〜95重量%、更に好ましくは5重量%〜90重量%である。1重量%未満であると該難燃剤組成物単独で使用した場合に難燃性を付与するマトリックス樹脂の難燃性向上効果が小さく、99重量%を超えるとマトリックス樹脂への該金属元素化合物の分散性が低下して添加量の割には難燃性向上効果が小さくコスト的に不経済である。
【0017】
本発明に係る難燃剤組成物の製造方法は、上記のような各成分を単に物理的に混合してもよいが、オルガノポリシロキサンを溶解させた溶液に該酸素酸を添加混合した後、溶剤を除去した混合物として回収する製造方法、該酸素酸の溶液にオルガノポリシロキサンを分散または溶解混合した後、溶剤を除去した混合物として回収する方法、あるいはオルガノポリシロキサン溶液と酸素酸の溶液を混合攪拌して得られた分散液または乳化液から、それぞれの溶剤を除去した混合物として回収する方法等が挙げられるが、オルガノポリシロキサンと酸素酸の共通溶剤に両者を混合溶解させた後、溶剤を除去することで、混合斑や酸素酸の結晶粒子が肉眼で判断して見分けがつかない程度に微分散されている状態として回収する方法が好ましい。オルガノポリシロキサンの溶液に酸素酸を混合する場合において、酸素酸が該溶液に不溶である場合は予め該酸素酸の粒径を小さくする必要があり、その平均粒径は10μm以下、好ましくは5μm以下、更に好ましくは2μm以下である。酸素酸の粒径は、難燃性を高めるには小さいほど好ましく、10μmを超えるような大きさでは難燃性付与効果が小さくなる。一方、酸素酸の溶液にオルガノポリシロキサンが不溶の場合は、適用できるオルガノポリシロキサンとしては微粉化したものが好ましく、その粒径は100μm以下が好ましい。100μmを超えると酸素酸の存在分布に斑を生じ、難燃効果が小さくなる。
【0018】
かかる溶剤としての代表的な例は、水、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等の低級ケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、グリコールアセテート等のカルボン酸エステル類、正ケイ酸メチル、正ケイ酸エチル、正ケイ酸イソプロピル等の正ケイ酸の低級アルキルエステル類、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、パークロロエチレン、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミド、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、ブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の極性溶剤、また、ベンゼン、トルエン、キシレン、m−クレゾール、塩素化ジフェニル、ニトロフェノール、クロルナフタリン等の芳香族系溶剤、あるいはそれらの2種以上の混合溶剤であってもよい。好ましくは低級アルコール類や低級ケトン類をはじめとする沸点が250℃以下、更に好ましくは200℃以下の有機溶剤である。
【0019】
溶剤の除去方法としては、通常常圧または減圧蒸留法が適用できる。
【0020】
溶剤を除去して得られた難燃剤組成物は、使用したオルガノポリシロキサンの性状にもよるが、流動性のある液状であればそのままで、粘性が極めて高くて計量困難な性状であれば冷却粉砕、固体であれば粉砕を行うことで難燃剤組成物として使用可能である。
【0021】
難燃性樹脂組成物を構成する、主鎖に芳香族を有する樹脂とは、マトリックス樹脂が主鎖に芳香族を有する樹脂を意味し、該樹脂としては、例えばポリ縮合型であるポリエステル系樹脂、ポリサルホン系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ付加型のポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酸化重合型樹脂であるフェノキシ型樹脂ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等が挙げられ、更には、これらのうちの少なくとも2種からなるポリマーアロイ、あるいはこれら以外、例えばポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂やスチレン共重合体であるABS樹脂、AS樹脂、AAS樹脂、SMA樹脂のような主鎖に芳香族を含まない他の各種樹脂とのアロイとして用いてもよい。
【0022】
含ハロゲン系樹脂としては、ハロゲン含有ビニルモノマーを重合してなるハロゲン化ビニル樹脂やハロゲン化ビニリデン樹脂、ハロゲン含有ビニルモノマーに他のビニルモノマー、例えば酢酸ビニル、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ビニルエーテルを共重合してなる含ハロゲン共重合体やペントン樹脂等が挙げられる。
【0023】
中でも、芳香族ポリエーテル樹脂、ポリサルホン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等は好適である。更には3次元構造となる芳香族を有する熱硬化性樹脂も勿論好適である。芳香族ポリエーテル(PPE)樹脂とは、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル樹脂が代表的樹脂であるが、その加工性改良のためポリスチレン樹脂をコンパウンドしたポリマーアロイである変性PPE樹脂や、機械的特性を改良するためポリアミド(PA)樹脂とのアロイ化した変性PPE/PAアロイ樹脂であってもよい。
【0024】
本発明の難燃剤組成物が適用される難燃性樹脂組成物の形態としては、粉体、顆粒、ペレット、塊状、粘性液体等適宜選択してよい。製品は、成形物、フィルム、シート、繊維等として利用できる。
【0025】
本発明の難燃性樹脂組成物に占める難燃剤組成物の割合は、オルガノポリシロキサンと、バナジウム、モリブデン、タングステンなどの元素から構成される酸素酸またはその塩との混合割合にもよるが、難燃性樹脂組成物に対して夫々の元素の合計が100ppm〜20,000ppmとなるような割合にすることが好ましく、より好ましくは500ppm〜15,000ppm、更に好ましくは1,000ppm〜10,000ppm、更に特に好ましくは1,000ppm〜7,000ppmである。100ppm未満であると難燃性の効果が発揮されにくく、20,000ppmを超えると、むしろ難燃性が悪化する傾向がある。
【0026】
なお、難燃性樹脂組成物中のバナジウム、モリブデン、タングステンなどの元素量は、難燃剤組成物中のそれぞれの金属化合物の含有量から計算で求めてもよく、また、難燃性樹脂組成物の分析で測定した値であっても良い。
【0027】
本発明でいう難燃性樹脂組成物とは、主鎖に芳香族を有する樹脂および/または含ハロゲン系樹脂であるマトリックス樹脂、および前記オルガノポリシロキサン、並びにバナジウム、モリブデン、タングステンから選ばれる少なくとも1種の元素から構成される酸素酸またはその塩を含有してなる混合物を意味する。前記オルガノポリシロキサンと酸素酸またはその塩と前記マトリックス樹脂との混合は、同時にそれぞれを混合して成形加工してもよく、また、前記オルガノポリシロキサンと酸素酸またはその塩とを予め混合して難燃剤組成物として調製した後、前記マトリックス樹脂と混合して成形加工してもよい。更には前記難燃剤組成物と適当量のオルガノポリシロキサンおよび/または前記酸素酸を適当量混合して成形してもよい。前記オルガノポリシロキサンと、酸素酸またはその塩と、前記マトリックス樹脂との混合は、工程を簡略化できるという点からは同時にそれぞれを混合することが好ましく、分散性が良くなるという点からは前記オルガノポリシロキサンと酸素酸またはその塩とを予め混合して難燃剤組成物として調製した後、前記マトリックス樹脂と混合することが好ましい。
【0028】
難燃性樹脂組成物中に含まれるオルガノポリシロキサンとしては、該マトリックス樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.3〜15重量部であり、更に好ましくは0.5〜10重量部である。オルガノポリシロキサンの含有量が0.1重量部未満であると併用する前記酸素酸との難燃に対する相乗効果が弱くなり、20重量部を超えた場合は難燃化には特に影響はしないが、製造上の経済性よりメリットが薄れてくる。
【0029】
本発明の難燃剤組成物と、他の公知の各種難燃剤とを組み合わせて使用することにより、更に高度な難燃性を得ることができるが、そのときには上記使用量に限定されず、更に少量の添加量でも難燃性樹脂組成物を得ることが可能である。かかる難燃剤として、公知技術で得られるハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤や水和金属系難燃剤やその他の難燃剤との併用も所望の特性が維持できる範囲ではそれらの使用量を減少させ、環境を考慮した難燃化技術として適用可能である。
【0030】
更には、本発明の難燃性樹脂組成物には、難燃性、特にドリップ防止をより高めるためにフッ素樹脂の併用も勿論有効である。ここでいうフッ素樹脂とは、樹脂中にフッ素原子を有する樹脂を意味する。具体的には、ポリモノフルオロエチレン、ポリジフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体が挙げられる。フッ素樹脂の添加量としては、本発明の特性(耐薬品性、耐熱性、物性など)を損なわない限り制限はないが、難燃性樹脂組成物を構成するマトリックス樹脂100重量部に対して、フッ素樹脂10重量部以下が好ましく、下限値は特に限定されるものではない。10重量部を超えると成形性や物性などが低下する場合があって好ましくない。
【0031】
また、本発明の難燃性樹脂組成物をより高性能な物にするために、フェノール系安定剤、チオエーテル系安定剤、リン系安定剤等の熱安定剤を1種または2種以上併用してもよい。更に必要に応じて滑剤、離型剤、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料や染料等の着色剤、帯電防止剤、導電付与剤、分散剤、相溶化剤、抗菌剤、その他の性能向上剤等の1種または2種以上を目的の性能が得られる範囲で併用してもよい。
【0032】
更に、本発明の難燃性樹脂組成物には、本発明の特性(例えば難燃性)を損なわない範囲で強化充填剤(材)を使用することは可能である。強化充填剤(材)を併用することで、更に耐熱性や機械的強度等の向上を図ることができる。かかる強化充填剤(材)としては特に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維や各種無機ウィスカー等の繊維状充填剤;ガラスビーズ、ガラスフレーク;タルク、マイカ、カオリンをはじめとする複合ケイ酸塩、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。その強化充填剤(材)中でも複合ケイ酸塩に関しては、オルガノポリシロキサンと該酸素酸またはその塩とを併用することで更なる難燃性向上が見られるため特に好ましい。これら強化充填剤(材)は、マトリックス樹脂に直接添加してもよいし、もちろん難燃剤組成物の成分であってもよい。難燃剤組成物として混合使用すると、ポリシロキサンと該酸素酸の混合物に粘着性が見られる場合、ハンドリング性の向上が期待できる。かかる強化充填剤(材)の難燃性樹脂組成物に対する組成割合は、マトリックス樹脂100重量部に対し0.1〜50重量部であり、更に好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部である。50重量部を超えると得られる成形品の難燃性や物性が低下する上、溶融混練時の樹脂との混練が困難になる傾向がある。また、0.1重量部未満であると、強化充填剤(材)として混合した目的が得にくい。
【0033】
本発明の難燃性樹脂組成物を製造するための方法は特に限定されない。例えば、上述したような成分を必要に応じて乾燥させた後、単軸、二軸等の押出機のような溶融混練機にて、溶融混練する方法等により製造することができる。また、配合剤が液体である場合は、液体供給ポンプ等を用いて二軸押出機に途中添加して製造することもできる。
【0034】
本発明の難燃性樹脂組成物の成形加工法は特に限定されず、一般に用いられている成形法、例えば、射出成形、ブロー成形、押出成形、真空成形、プレス成形、カレンダー成形、発泡成形等を利用することができる。
【0035】
また、本発明の難燃性樹脂組成物は、種々の用途に好適に使用することができる。好ましい用途としては、家電、OA機器部品、自動車部品等の射出成形品、ブロー成形品、押出成形品、発泡成形品等が挙げられる。
【0036】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。なお、実施例における樹脂組成物の調製、試験片の作成および評価方法は以下の方法に従った。
【0037】
(樹脂組成物の調製)
変性PPE樹脂(Noryl EFN4230−111(ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン比70/30):日本GEプラスチックス(株))50重量部と、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製PX100F)およびポリスチレン樹脂(PSJ−ポリスチレン HF−77:PSジャパン)を所定の混合比に調整した樹脂混合物50重量部とからなるマトリックス樹脂100重量部に、安定剤としてアデカスタブHP−10(旭電化(株)製)を0.2重量部、およびアデカスタブAO−60(旭電化(株)製)を0.2重量部、更にドリップ防止強化剤としてポリフロン MPA FA−500(ダイキン工業(株)製)を0.5重量部、並びに所定量の難燃剤組成物(または所定量の酸素酸および/またはオルガノポリシロキサン)をドライブレンドした後、2軸押出機 JSW TEX30HSS(日本製鋼所(株)製)を用いて溶融押出してプラスチック用加工機(ペレタイザー:いすず加工機械(株)製、型式SCF−100)でペレットを作成して樹脂組成物とした。
【0038】
(試験片の作成)
射出成型加工機 FAS 100B(ファナック(株)製)を使用して試験片を作成した。
【0039】
(燃焼性評価方法)
UL94V垂直燃焼性試験方法に準じて試験片の厚さ1/16”で燃焼性試験を行い、5サンプルのトータル燃焼時間で評価した。
【0040】
(元素量測定)
難燃剤組成物中のモリブデンおよびタングステンの元素量は、エネルギー分散型蛍光X線分析装置 SEA2200A(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株))で元素量を測定し、それぞれのポリ酸素酸の分子量に換算してポリ酸素酸量を推定した。次いで、樹脂組成中の元素量は、前記測定した難燃剤組成物中の元素量に基づき難燃剤組成物の添加部数から計算により求めた。
【実施例】
【0041】
(製造例1):オルガノポリシロキサンの製造
4−メチル−2−ペンタノン48kgにジクロロジフェニルシラン18.7kg、ジクロロジメチルシラン3.2kgおよびMシリケート51(多摩化学工業(株)製)11.6kgを攪拌混合して液温10℃にした後、水6.74kgを液温15℃以下に保ちながら滴下して攪拌混合した。その後、攪拌しながら液温を76℃まで昇温し、所定温度に達した後、同温度で更に3時間攪拌して重合反応を行なった。重合液は一旦15℃以下に冷却した後、更にトリメチルクロロシラン10.7kgを15℃以下に保ちながら滴下混合し、更に水1.76kgを同様に15℃以下に保ちながら滴下混合した。その混合液を、攪拌しながら再度液温56℃まで昇温し、所定温度に達した後、同温度で更に3時間攪拌して反応させた。得られた反応液は、室温まで冷却した後、水100Lを加えて攪拌し、反応液中の水溶性物質を抽出して水層部を除去する水洗を行なった。この水洗操作をpHが6以上となるまで繰り返し行なった。水層部を除去分離して得られた重合体溶液は65.6kgであった。その重合体溶液の一部をサンプリングし、ロータリーエバポレーターを用いて真空ポンプでの減圧下で150℃に加温し、所定温度で1.5時間減圧濃縮して重合体を回収した時の不揮発分濃度は37.6%であった。得られた不揮発分であるシリコーン重合体は乳鉢で粉砕して粉体とした。このオルガノポリシロキサンの特性は、GPCによるポリスチレン換算重量平均重合度で3,700、NMR測定によるフェニル基/メチル基の比は44.4/55.6であった。
【0042】
(実施例1):難燃剤組成物(A)の製造法
(製造例1)で水層部を除去分離して得られた重合体溶液667gと市販試薬の12タングスト(VI)りん酸n水和物25gを計りとって混合してロータリーエバポレーターに入れ、真空ポンプでの減圧下で150℃に加温し、所定温度で1.5時間減圧濃縮して不揮発分を回収して乳鉢で粉砕して粉体とし、12タングスト(VI)りん酸n水和物換算で9.1重量%含む、タングステン化合物とオルガノポリシロキサンからなる難燃剤組成物(A)を得た。
【0043】
(実施例2):難燃剤組成物(B)の製造法
製造例2で用いた12タングスト(VI)りん酸n水和物の代わりに12モリブド(VI)りん酸n水和物を用いた以外は実施例1と同様に行って、12モリブド(VI)りん酸n水和物換算で9.1重量%含む、モリブデン化合物とオルガノポリシロキサンからなる難燃剤組成物(B)を得た。
【0044】
(実施例3):難燃剤組成物(C)の製造法
製造例2で用いた12タングスト(VI)りん酸n水和物の代わりに12タングスト(VI)ケイ酸n水和物を用いた以外は実施例1と同様に行って、12タングスト(VI)ケイ酸n水和物換算で9.1重量%含む、タングステン化合物とオルガノポリシロキサンからなる難燃剤組成物(C)を得た。
【0045】
(実施例4):難燃剤組成物(D)の製造法
XC99 B5664(GE東芝シリコーン社製シリコーン難燃剤)200g、12タングスト(VI)りん酸n水和物50gおよびメチルイソブチルケトン(MIBK)350gを混合溶解した。その後、ロータリーエバポレーターに入れ、真空ポンプでの減圧下で150℃に加温し、所定温度で1.5時間減圧濃縮して不揮発分を回収し乳鉢で粉砕して粉体とし、12タングスト(VI)りん酸n水和物換算で20重量%を有する、タングステン化合物とオルガノポリシロキサンからなる難燃剤組成物(D)を得た。
【0046】
(実施例5〜8)
予め、前記(樹脂組成物の調製)で記載したポリフェニレンエーテル樹脂/ポリスチレン樹脂=90/10の混合比で混合した樹脂50重量部に変性PPE樹脂50重量部を加えて、マトリックス樹脂の組成をポリフェニレンエーテル/ポリスチレン=80/20の組成比に調整した混合樹脂100重量部を準備し、このマトリックス樹脂に所定量の安定剤並びにドリップ防止強化剤を混合し、更に、実施例1〜3で作成した難燃剤組成物(A)〜(C)についてはそれぞれ6重量部(実施例5〜7用)配合し、また実施例4で作成した難燃剤組成物(D)については3重量部(実施例8用)配合してドライブレンドした。その後、それぞれの配合物から2軸押出機を使用してペレットを作成して難燃性樹脂組成物とし、更に射出成型機で試験片(実施例5〜8)を作成した。
【0047】
(比較例1)
実施例1で混合した難燃剤組成物(A)の代わりに、12タングスト(VI)りん酸n水和物を添加せず、重合体溶液をそのままロータリーエバポレーターを用いて真空ポンプでの減圧下で150℃に加温し、所定温度で1.5時間減圧濃縮して得られたオルガノポリシロキサンを乳鉢で粉砕して粉体とし、その粉体を5.45部ドライブレンドして同様の方法で試験片を作成した。
【0048】
(比較例2)
実施例1で作成した難燃剤組成物(A)の代わりに、12タングスト(VI)りん酸n水和物を0.55部をドライブレンドして同様の方法で試験片を作成した。
【0049】
実施例5〜8および比較例1〜2の試験片について難燃性評価を行い、結果を表1に示した。
【0050】
【表1】

表1から、本発明の難燃剤組成物は、その難燃剤組成物を構成する単独成分の難燃効果より優れているのが分かる。
【0051】
(実施例9、比較例3)
製造例1で重合して得られたオルガノポリシロキサンの重合体溶液(12タングスト(VI)りん酸n水和物の未添加液)から、同条件で減圧濃縮して得られた不揮発分であるオルガノポリシロキサンを作成した。このオルガノポリシロキサンに12タングスト(VI)りん酸n水和物を所定含有量になるよう混合してアセトンを加えて再度溶解・混合・減圧濃縮して不揮発分を回収し、12タングスト(VI)りん酸n水和物換算で、5重量%(E)、9.1重量%(F)、15重量%(G)、20重量%(H)、33重量%(I)をそれぞれ含有するオルガノポリシロキサン混合物となる難燃剤組成物を作成した。また、12タングスト(VI)りん酸n水和物未添加でオルガノポリシロキサンのみとした難燃剤組成物も併せて作成した(比較例3)。次いで、(樹脂組成物の調製)に準じて、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン比80/20からなるマトリックス樹脂100重量部に対し、得られた各種難燃剤組成物3重量部をドライブレンドしてペレットを作成し、試験片に仕上げた。各試験片の難燃性評価の結果を図1に示す。
【0052】
(実施例10、比較例4)
ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン比80/20からなるマトリックス樹脂100重量部に対し、乳鉢で微粉砕した12タングスト(VI)りん酸n水和物を0.3重量部(マトリックス樹脂に対してタングステン元素量0.19重量部相当)と所定量の実施例9で用いた不揮発分であるオルガノポリシロキサンを準備した。(樹脂組成物の調製)および(試験片の作成)に準じて試験片を作成した(12タングスト(VI)りん酸n水和物とオルガノポリシロキサンは、難燃剤組成物とせずにそのまま混合した。)。また、12タングスト(VI)りん酸n水和物未添加でオルガノポリシロキサンのみを難燃剤として所定量添加した試験片も作成した(比較例4)。それらの燃焼性評価の結果を図2に示す。
【0053】
(実施例11):難燃剤組成物(J)の製造法
実施例1で用いた12タングスト(VI)りん酸ナトリウムn水和物の代わりに12タングスト(VI)りん酸ナトリウムn水和物を用いた以外は実施例1同様に行って、12タングスト(VI)りん酸ナトリウムn水和物換算で9.1重量%含む、タングテン化合物とオルガノポリシロキサンからなる難燃剤組成物(J)を得た。
(実施例12〜17および比較例5、6)
予め、前記(樹脂組成物の調製)で記載したポリフェニレンエーテル/ポリスチレン=90/10の混合比で混合した樹脂50重量部に変性PPE樹脂50重量部を加えて、マトリックス樹脂の組成をポリフェニレンエーテル/ポリスチレン=80/20の組成比に調整した混合樹脂100重量部を準備し、このマトリックス樹脂に所定量の安定剤および添加量を変えたドリップ防止強化剤、複合ケイ酸塩としてタルク(日本タルク(株)製 SG−200)またはマイカ((株)山口雲母工業所製 A−21S)を混合し、更に、実施例6、実施例9及び実施例10で作成した難燃剤組成物(A)、(G)および(J)についてはそれぞれ3重量部配合してドライブレンドした。その後、それぞれの配合物から2軸押出機を使用してペレットを作成して難燃性樹脂組成物とし、更に射出成型機で試験片(実施例12〜17)を作成した。
【0054】
一方、安定剤の他にヘテロポリ酸を含有せずオルガノポリシロキサン、ドリップ防止強化剤を配合した組成物、および、複合ケイ酸塩(タルク)とドリップ防止強化剤を配合した組成物から得られた試験片である樹脂組成物(比較例5および比較例6)を作成し、それらの燃焼性評価の結果を表2に示した。
【0055】
【表2】

表2からは、難燃性樹脂組成物において同一量の12タングスト(VI)りん酸n水和物の混合であっても、複合ケイ酸塩が混合されている方が難燃性は優れているのがわかる。しかも複合ケイ酸塩とヘテロポリ酸またはその塩を混合してなる難燃性樹脂組成物は実施例13〜17を観察すると、一様にその難燃効果が顕著に優れているのが分る。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例9および比較例3における、12タングスト(VI)りん酸n水和物含有量と樹脂組成物の難燃性との関係を示すグラフである。
【図2】実施例10および比較例4における、オルガノポリシロキサン添加量と樹脂組成物の難燃性との関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルガノポリシロキサンと、
バナジウム、モリブデンおよびタングステンから選ばれる少なくとも1種の元素から構成される酸素酸またはその塩と、
を混合してなることを特徴とする難燃剤組成物。
【請求項2】
前記酸素酸がイソポリ酸およびヘテロポリ酸の少なくとも一方である請求項1記載の難燃剤組成物。
【請求項3】
前記酸素酸がリン、ケイ素およびバナジウムから選ばれる少なくとも1種の元素を含んでなる、モリブデンおよびタングステンの少なくとも一方からなるヘテロポリ酸素酸である請求項2記載の難燃剤組成物。
【請求項4】
前記オルガノポリシロキサンが、SiO4/2(Q単位)、RSiO3/2(T単位)、R2SiO2/2(D単位)から選ばれる1種以上の単位からなるシリコーン(Rはおのおの独立して水素またはC1〜C20からなる炭化水素またはヘテロ原子を含む炭化水素基を表し、同一でも異なってもよい)である請求項1記載の難燃剤組成物。
【請求項5】
オルガノポリシロキサンと、バナジウム、モリブデンおよびタングステンからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素から構成される酸素酸またはその塩とを有機溶剤に分散または溶解して混合液とし、該混合液から溶剤を除去することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の難燃剤組成物を製造する方法。
【請求項6】
前記有機溶剤がオルガノポリシロキサンの溶剤および膨潤剤の少なくとも一方である請求項5記載の難燃剤組成物の製造方法。
【請求項7】
主鎖に芳香族を有する樹脂および含ハロゲン系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
オルガノポリシロキサンと、
バナジウム、モリブデンおよびタングステンから選ばれる少なくとも1種の元素から構成される酸素酸またはその塩と、
を含有する難燃性樹脂組成物であって、
バナジウム、モリブデンおよびタングステンの元素を、それらの合計で100ppm〜20,000ppm含有することを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【請求項8】
前記主鎖に芳香族を有する樹脂が芳香族ポリエーテル樹脂をマトリックス樹脂とする請求項7記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項9】
複合ケイ酸塩化合物を含有してなる請求項1〜4のいずれかに記載の難燃剤組成物。
【請求項10】
複合ケイ酸塩化合物を含有してなる請求項7または請求項8に記載の難燃性樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−69335(P2008−69335A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326944(P2006−326944)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】