説明

難燃化ポリエステル−綿混紡素材およびその加工方法

【課題】 洗濯に対する耐久難燃性を有するポリエステル−綿混紡素材を低コストで提供すること。洗濯に対する耐久難燃性を低コストで付与できるポリエステル−綿混紡素材の難燃加工方法を提供すること。
【解決手段】 放射線を照射された後、ラジカル重合性リン含有化合物を付与されてなるポリエステル−綿混紡素材。ポリエステル−綿混紡素材に対して放射線を照射した後、ラジカル重合性リン含有化合物を付与するポリエステル−綿混紡素材の難燃加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性を示すポリエステル−綿混紡素材、およびポリエステル−綿混紡素材の難燃加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種繊維あるいは生地の難燃加工方法として、繊維あるいは生地に所定のリン含有化合物を付与した後で電子線等の放射線を照射する方法が知られている(特許文献1〜5)。
【0003】
しかしながら、従来の方法で処理された生地は十分な難燃性を有し得なかった。たとえ、処理直後において良好な難燃性を有していたとしても、洗濯されると、難燃性が低下する問題が生じていた。すなわち、処理された生地を洗濯すると、当該生地におけるリン含量が低減され、難燃性が低下した。さらには、リン含有化合物は処理液中、比較的高濃度(10%以上)で使用されるため、処理コストに問題があった。
【特許文献1】特公平1−20268号公報
【特許文献2】特開平5−163673号公報
【特許文献3】特開平6−257070号公報
【特許文献4】特開2001−254272号公報
【特許文献5】特開平8−246346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、洗濯に対する耐久難燃性を有するポリエステル−綿混紡素材を低コストで提供することを目的とする。
【0005】
本発明はまた、洗濯に対する耐久難燃性を低コストで付与できるポリエステル−綿混紡素材の難燃加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、放射線を照射された後、ラジカル重合性リン含有化合物を付与されてなることを特徴とするポリエステル−綿混紡素材に関する。
【0007】
本発明はまた、ポリエステル−綿混紡素材に対して放射線を照射した後、ラジカル重合性リン含有化合物を付与することを特徴とするポリエステル−綿混紡素材の難燃加工方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリエステル−綿混紡素材は、初期の難燃性だけでなく、洗濯に対する耐久難燃性も有する。そのような難燃性は当該素材におけるリン含量が比較的低くても発揮されるので、低コストで付与可能である。
また本発明の難燃加工方法においてリン含有化合物は繊維に対して有効に結合するので、処理液中のリン含有化合物は比較的低濃度であってもよい。よって、本発明の方法はポリエステル−綿混紡素材に対して初期難燃性および耐久難燃性を一層、低コストで付与可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のポリエステル−綿混紡素材は、以下に示す難燃加工方法によって処理されてなっている。
【0010】
まず、ポリエステル−綿混紡素材に対して放射線を照射する。
ポリエステル−綿混紡素材は、ポリエステル繊維と綿繊維との混紡糸のみからなる生地である。生地の組織構造としては平面形状を有する限り特に制限されず、例えば、織物構造を有していても良いし、または編物構造を有していても良い。
【0011】
ポリエステル繊維とはポリエチレンテレフタレート繊維やポリトリメチレンテレフタレート繊維などを示す。
綿繊維とは木綿、再生セルロース繊維などのセルロース系繊維を示す。
ポリエステル繊維および綿繊維の繊度は本発明の目的が達成される限り特に制限されない。
【0012】
本発明において難燃性が発現するメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のメカニズムに基づくものと考えられる。燃焼場において、綿繊維に共有結合したリン含有化合物の存在下、混紡糸表面で炭化被膜を形成する。形成された炭化被膜は混紡糸内部への伝熱を抑制する断熱作用を発揮するだけでなく、混紡糸内部で発生する可燃性分解生成物の燃焼場への拡散を防止する遮蔽作用を発揮するので、発火による燃焼が回避され、難燃性が発現するものと考えられる。素材を形成する糸がポリエステル繊維のみまたは綿繊維の一方のみからなっていると、初期から難燃性は発現しない。特に、糸が綿繊維のみからなるときに難燃性が発現しないのは、溶融するポリマーつまりポリエステル繊維等が共存しないため、糸表面において炭化被膜が有効に形成されないためと考えられる。糸がポリエステル繊維のみからなるときに難燃性が発現しないのは、ポリエステル繊維単独ではリン化合物の導入量が極端に低く、十分な炭化被膜が形成されず、当該糸が発火点となるためと考えられる。また、素材にポリエステル−綿混紡糸以外の糸(例えば、アクリル繊維の糸)が含有されると、当該糸が発火点となるため、難燃性は発現しない。また、たとえ素材がポリエステル繊維と綿繊維とからなっていても、例えば、ポリエステル繊維のみからなる糸を緯糸に用い、綿繊維のみからなる糸を経糸に用いた交織生地を用いる場合など、糸自体にポリエステル繊維と綿繊維との両者が含有されない場合、糸の表面に炭化被膜が有効に形成されないため、難燃性は発現しない。
【0013】
素材全体におけるポリエステル繊維と綿繊維との混率、すなわち混紡糸におけるポリエステル繊維と綿繊維との混率は、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではなく、例えば、重量比(ポリエステル繊維:綿繊維)で10:90〜90:10、好ましくは20:80〜80:20、より好ましくは70:30〜30:70が好適である。
【0014】
ポリエステル−綿混紡素材としては例えば、TD1661(倉敷紡績(株)社製)、ポリエステル65%、綿35%の混紡糸からなる生地等が使用可能である。その他ポリエステル−綿混紡糸を使用している素材はすべて使用可能である。
【0015】
放射線は、照射によって綿繊維に含有されるセルロースにラジカルを発生させることができれば特に制限されず、例えば、電子線、ベータ線、アルファ線などのような粒子線、紫外線、エックス線、ガンマ線などのような電離放射線等が挙げられる。中でも、取り扱いやすさ、安全性やラジカルを有効に発生させる観点から、電子線を採用することが好ましい。
【0016】
本発明においては、放射線を、後述のリン含有化合物の付与に先立って、素材に対して照射しておくことにより、リン含有化合物が綿繊維と有効に化学的に結合する。よって、洗濯によっても難燃性が低下せず、耐久難燃性が発現するものと考えられる。リン含有化合物の付与後に放射線を照射すると、リン含有化合物同士の重合が優先的に起こり、リン含有化合物と綿繊維との結合は有効に起こらないため、耐久難燃性は発現しない。
【0017】
本発明のポリエステル−綿混紡素材におけるリン含有化合物と綿繊維との化学的結合は、グラフト反応に基づく共有結合によりなされる。放射線照射によって綿繊維に生じるラジカルはセルロース分子の構造単位における5位の炭素、次に4位や1位の炭素に生成しやすく、さらには2,3,6位の炭素にも生成するものと推測される。これらのラジカルを開始点として、後で詳述するリン含有化合物のラジカル重合性基であるメタ(ア)クリロイル基に転移したラジカルに、さらに別のリン含有化合物のメタ(ア)クリロイル基が結合し、これが連鎖的に起こる。ある程度の連鎖になると末端ラジカル同士の結合や他のセルロースラジカルとの結合により、停止反応が起こる。
【0018】
本発明において、個々のリン含有化合物は1分子単独で綿繊維に結合していてもよいし、または綿繊維に結合したリン含有化合物分子から別の1またはそれ以上のリン含有化合物分子がラジカル重合反応によって伸長(グラフト)していてもよい。
例えば、以下の(A)および(B)に示されるような結合形態が挙げられる。なお、「Cell」はセルロースを示す。
Cell−(CH−C(CH))

COOCHCHOP(=O)(OH) (A)

Cell−(CH−C(CH))−Cell

COOCHCHOP(=O)(OH) (B)
【0019】
リン含有化合物の付与前に行われる放射線の照射条件は、セルロースにラジカルを発生可能であればよく、例えば、強条件で短時間の照射が行われても、または弱条件で長時間の照射が行われても良い。具体的には、電子線を照射する場合、通常は1〜200kGy、好ましくは5〜100kGy、より好ましくは10〜50kGyの照射量が達成されればよい。
【0020】
特に、電子線を照射する場合は、窒素雰囲気下で照射を行うことが好ましく、また透過力があるため、素材の片面に照射するだけでよい。
電子線照射装置としては市販のものが使用可能であり、例えば、エリアビーム型電子線照射装置としてEC300/165/800(岩崎電気(株)社製)やEPS300((株)NHVコーポレーション製)などが使用される。
【0021】
次いで、放射線を照射された素材に対してリン含有化合物を付与する。
リン含有化合物の付与方法は、リン含有化合物溶液が素材に含浸される限り特に制限されず、例えば、溶液に素材を浸漬して絞る方法、溶液を素材に塗布する方法、溶液をスプレーなどを用いて噴霧にて付与する方法等を採用すればよい。難燃性を簡便かつ均一に付与する観点からは、溶液に素材を浸漬して絞る方法を採用することが好ましい。
【0022】
リン含有化合物はリン原子を含有し、かつラジカル重合性基を含有する構造を有するものであればよく、例えば、一般式(1)で表されるビニルホスフェート化合物が好ましく使用される。
【0023】
【化1】

【0024】
一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、好ましくはRはメチル基であり、Rは水素原子である。
は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表し、好ましくは水素原子である。
nは1〜3である。
mは1〜6の整数であり、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1である。
【0025】
一般式(1)で表されるビニルホスフェート化合物の中でも、当該化合物の水溶液を作製して難燃加工処理を簡便に行う観点から、nが1または2のものを使用することが好ましい。
【0026】
リン含有化合物は一種類のものを単独で使用されてもよいし、または二種類以上のものを組み合わせて使用されてもよい。
【0027】
一般式(1)のビニルホスフェート化合物の好ましい具体例として、例えば、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ジエチル−(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ジエチル−(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ポリアルキレングリコール(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ポリアルキレングリコール(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェートなどが挙げられる。
【0028】
ビニルホスフェート化合物は市販品として入手可能である。
例えば、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェートはシグマアルドリッチジャパン(株)より入手可能である。
また例えば、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェートとビス(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェートとの混合物は「ALBRITECTTM6835」(ローディア日華(株)製)として入手可能である。
また例えば、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェートは「ホスマーM」(ユニケミカル(株)製)として入手可能である。
また例えば、ポリアルキレングリコール(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェートは「SIPOMER PAM−100」(ローディア日華(株)製)として入手可能である。
また例えば、ポリエチレングリコール(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェートは「ホスマーPE」(ユニケミカル(株)社製)として入手可能である。
【0029】
リン含有化合物は水または有機溶剤、さらには水と有機溶剤の混合溶媒に溶解されて溶液の形態で使用される。環境安全性と難燃加工処理の簡便性の観点から、リン含有化合物、特にビニルホスフェート化合物は水溶液の形態で使用されることが好ましい。有機溶剤としては、リン含有化合物を後述の濃度かつ室温で溶解可能な限り特に制限されず、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン等が使用可能である。
【0030】
溶液中におけるリン含有化合物の濃度は、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではないが、本発明においては比較的低濃度であっても、本発明の目的を達成できる。例えば、10重量%未満、好ましくは3.0〜9.0重量%、より好ましくは3.0〜7.0重量%、最も好ましくは3.0〜5.0重量%の低濃度であっても、初期難燃性および耐久難燃性を発現させ得る。なお、本発明は溶液のリン含有化合物の濃度を、上記範囲を超える濃度に設定することを妨げるものではない。
本明細書中、リン含有化合物の濃度は溶液全量に対するリン含有化合物の含有量の割合で示すものとする。二種類以上のリン含有化合物を使用する場合、溶液全量に対するリン含有化合物の全含有量の割合が上記範囲内であればよい。
【0031】
リン含有化合物の素材に対する含浸率は、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではなく、通常は溶液のリン含有化合物濃度が大きいほど、含浸率は小さくてもよい。一方、リン含有化合物濃度が小さいほど、含浸率は大きく設定される。例えば、溶液のリン含有化合物濃度が上記の比較的低濃度に設定される場合、含浸率は通常、50〜100重量%、好ましくは60〜80重量%に設定される。
本明細書中、含浸率は、乾燥時の素材重量に対する溶液の含浸量の割合で示される。
【0032】
リン含有化合物の付与方法として溶液に素材を浸漬して絞る方法を採用する場合、浸漬された素材は上記含浸率が達成されるまで絞られる。絞る方法としては、均一性の観点から、浸漬され、引き上げられた素材を二枚のPETフィルムで挟み込み、マングルに通す方法を採用することが好ましい。
【0033】
本発明においては素材にリン含有化合物を付与すると同時にリン含有化合物と綿繊維とが反応し化学的結合が形成されるため、リン含有化合物の付与後は、比較的早期に未反応のリン含有化合物を除去するための水洗処理を行えばよい。リン含有化合物と綿繊維との化学的な結合をより有効に形成する観点からは、リン含有化合物の付与後、水洗処理に先立って、リン含有化合物を付与された素材を加熱処理することが好ましい。
【0034】
加熱処理条件はリン含有化合物と綿繊維との化学的結合が形成される限り特に制限されず、通常は30〜100℃、特に40〜80℃で0.1〜60分間、特に1〜30分間加熱することが好ましい。
【0035】
以上の難燃加工方法によって処理された本発明のポリエステル−綿混紡素材のリン含量は、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではないが、本発明においては比較的低くても、難燃性を示す。例えば、本発明のポリエステル−綿混紡素材は、1.00重量%以下、好ましくは0.02〜0.80重量%、より好ましくは0.02〜0.40重量%、最も好ましくは0.02〜0.10重量%の低リン含量であっても、難燃性を示す。上記低リン含量は、リン含有化合物の付与工程において溶液の濃度を前記した低濃度範囲に、含浸率を前記範囲内に設定し、好ましくは加熱処理を行うことによって、容易に達成可能である。なお、本発明は上記範囲以上のリン含量であることを妨げるものではなく、すなわち本発明のポリエステル−綿混紡素材は上記範囲以上のリン含量であっても難燃性を示す。
【0036】
リン含量は難燃加工済み素材に含有・付着されるリン原子の割合であり、すなわち当該素材全体に占めるリン原子の含有割合である。
本明細書中、リン含量は走査型蛍光X線分析装置ZSX 100e((株)リガク製)によって測定された値を用いているが、蛍光X線分析法を採用する装置であればいかなる装置によって測定されてもよい。
【0037】
本発明において難燃性を示すとは、45°ミクロバーナー法試験を行っても、素材の炭化が起こるだけで、燃焼は起こらないことを意味する。
45°ミクロバーナー法試験とはJIS L 1091:1999 A−1法(2001年版)に基づく試験であって、概略的には、水平面に対して45°傾斜させて設置された素材に、垂直方向に吹き出したガスバーナー由来の火炎を当てて、素材の難燃性の有無を知見するための一般的な試験である。
【0038】
本発明のポリエステル−綿混紡素材においてリン含有化合物は綿繊維と化学的に結合し、洗濯によっても除去され難いので、洗濯の前後においてリン含量はほとんど変わらない。そのため、洗濯後においても洗濯前と変わらない難燃性を示す。
【実施例】
【0039】
(実施例1〜14および比較例1)
苛性シルケット上がりの各種混率のT(ポリエステル)/C(綿)混紡糸からなる生地の一方の面に対して、エリアビーム型電子線照射装置(エレクトロンビームEC250/15/180L;岩崎電気(株)社製)により窒素ガス雰囲気下で電子線照射(照射線量:40kGy)した(前照射)。電子線照射した生地を、所定のラジカル重合性リン含有化合物を所定濃度含む水溶液に浸漬し、PETフィルムで挟んだ後、含浸率が約70重量%になるまでマングルで絞り、50℃で1分間加熱処理した。加熱処理した生地を、未反応の上記リン含有化合物を除去するために、水洗し、ついで80℃で30分間乾燥した。
なお、実施例14では、照射線量は20kGy、加熱処理は35℃で24時間実施した。
【0040】
(比較例2)
モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート(MMP)15重量部及びジメチルフォスファイト(DMP)10重量部をジメチルホルムアミド75重量部に溶解した処理液を作成した。この処理液により、T(ポリエステル)/C(綿)(T/C=65/35)混紡糸からなる生地をパディング処理し、次にこれを乾燥せずに、窒素雰囲気下で120kGyの電子線照射を行った。その後、60℃で10分間ソーピングし、120℃で2分間乾燥した。
【0041】
(比較例3〜5)
苛性シルケット上がりの綿繊維100%の生地またはT(ポリエステル)/C(綿)の交織生地を用いたこと、および所定のラジカル重合性リン含有化合物の所定濃度水溶液を用いたこと以外、実施例1と同様の方法により、生地を加工した。
【0042】
(比較例6)
ポリエステル繊維100%の生地の一方の面に対して、エリアビーム型電子線照射装置により窒素ガス雰囲気下で電子線照射(照射線量:100kGy)した(前照射)。電子線照射した生地を、所定のラジカル重合性リン含有化合物を所定濃度含む水溶液に浸漬し、PETフィルムで挟んだ後、含浸率が約70重量%になるまでマングルで絞り、80℃で30分間加熱処理した。加熱処理した生地を、未反応の上記リン含有化合物を除去するために、水洗し、ついで80℃で30分間乾燥した。
【0043】
(比較例7〜10(同時照射))
苛性シルケット上がりのT(ポリエステル)/C(綿)(T65/C35)混紡糸からなる生地を、所定のラジカル重合性リン含有化合物を所定濃度含む水溶液に浸漬し、含浸率が約70重量%になるまでマングルで絞った。次いで、生地の一方の面に対して、エリアビーム型電子線照射装置により窒素ガス雰囲気下で電子線照射(照射線量:40kGy)した(後照射)。電子線照射した生地を50℃で1分間加熱処理した。加熱処理した生地を、未反応の上記リン含有化合物を除去するため、水洗し、ついで80℃で30分間乾燥した。
【0044】
(評価)
上記の各方法で加工した生地のリン含有量および難燃性について、洗濯前後において評価した。
リン含量は、蛍光X線分析により測定を行った。
難燃性能については、前記45°ミクロバーナー法により炭化面積で評価を行った。
洗濯は、家庭洗濯に準じたJIS L0217 103法(2001年版)にて10回行った。
加工条件および評価結果を表1および表2に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
リン含有化合物について「ALBRITECT」は「ALBRITECTTM6835」(ローディア日華(株)製)を意味する。
「MMP」はモノ(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート(シグマアルドリッチジャパン(株)製)を意味する。
比較例1では未加工品を評価した。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を照射された後、ラジカル重合性リン含有化合物を付与されてなることを特徴とするポリエステル−綿混紡素材。
【請求項2】
リン含量が1.00重量%以下である請求項1に記載のポリエステル−綿混紡素材。
【請求項3】
ポリエステル−綿混紡素材に対して放射線を照射した後、ラジカル重合性リン含有化合物を付与することを特徴とするポリエステル−綿混紡素材の難燃加工方法。



【公開番号】特開2006−183166(P2006−183166A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376295(P2004−376295)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、経済産業省、地域新生コンソーシアム研究開発事業委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【出願人】(592029256)福井県 (122)
【出願人】(501016984)ローディア日華株式会社 (6)
【Fターム(参考)】