説明

難燃化不織布およびそれからなるフィルター

【課題】フィルター材として好適に用いることのできる非ハロゲン化、非りん化の難燃化不織布およびそれからなるフィルターの提供。
【解決手段】70重量%以上の親水性樹脂繊維、好ましくはレーヨン繊維又はビニロン繊維を含む繊維からなる不織布に水溶性難燃剤、好ましくは硫酸アンモニウムを含浸させてなる難燃化不織布であって、水溶性難燃剤の不織布への付着量が不織布を構成する繊維の5〜50重量%であることを特徴とする難燃化不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃化不織布およびそれからなるフィルターに関し、特に非ハロゲン、非りん系の水溶性難燃剤を用いた親水性樹脂繊維からなる難燃化不織布およびそれからなるフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種不織布は、安全性の観点から難燃性の付与の要望が高く、特になかでもフィルターについて難燃性の要望が高い。更に、難燃剤については、ハロゲン系難燃剤は、燃焼時に発生する臭化水素、塩化水素などの酸性ガスだけでなく、最近はダイオキシンの発生についても問題視されており、非ハロゲン系難燃剤に関して種々の検討が実施されている。非ハロゲン系難燃剤としては、リン系難燃剤、無機難燃剤等が用いられているが、使用量が多いリン系難燃剤(リン酸エステル、ハロゲン含有リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ポリリン酸塩及び赤リン)は、河川の富栄養化の原因となる等の公害防止及び環境保全に対する不適合性が指摘されている。
【0003】
一方、フィルター材を構成する不織布の構成繊維としても非ハロゲン系材料の使用、及び不織布を構成する繊維の相互間を結合するバインダー樹脂の非ハロゲン化樹脂の使用が検討されている。例えば、実質的にハロゲン元素を含有しない重合体で形成された構成繊維群相互間を、実質的にハロゲン元素を含有しない結合剤を含むバインダー樹脂で結合した不織布よりなり、該バインダー樹脂中には、粉末状リン系難燃剤が含有されていることを特徴とする非ハロゲン化難燃性フィルター材(例えば、特許文献1参照。)が提案されているが、リン系難燃剤の問題は解決されておらず、また、セルロース系繊維とポリビニルアルコール系繊維のハロゲンを含まない繊維からなる繊維ウエブに含リン化合物、含リン窒素系化合物を加えた難燃加工剤と非ハロゲン熱可塑性樹脂よりなるバインダーで結合し構成してなることを特徴とする非ハロゲン難燃性不織布(例えば、特許文献2参照。)が提案されているが、リン系難燃剤の使用を除くまでには至っていない。
【0004】
無環境適応型の難燃剤の中でも、熱可塑性樹脂の難燃化に適するものとしては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アンチモン、ほう酸亜鉛、スズ酸亜鉛等の無機難燃剤が挙げられるているが、これらの無機難燃剤は、可塑化機能を有しないので、無機充填材混入の熱可塑性樹脂について生ずるのと同様の問題である、無機難燃剤の充填量を多くすると、成形加工性の低下、成形品の機械的物性等の問題があり、フィルター等に用いる不織布等の成形には問題があった。
【特許文献1】特開2000−126523号公報
【特許文献2】特開2000−328418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、フィルター材として好適に用いることのできる非ハロゲン化、非りん化の難燃化不織布およびそれからなるフィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定量以上の親水性樹脂繊維からなる不織布に水溶性難燃剤、特に硫酸アンモニウムを含有する難燃剤を浸透処理させて、特定量の水溶性難燃剤を不織布に付着させることにより、フィルター用途に好適に用いることのできる難燃化不織布が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、70重量%以上の親水性樹脂繊維を含む繊維からなる不織布に水溶性難燃剤を含浸させてなる難燃化不織布であって、水溶性難燃剤の不織布への付着量が不織布を構成する繊維の5〜50重量%であることを特徴とする難燃化不織布が提供される。
【0008】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、親水性樹脂繊維が、レーヨン繊維またはビニロン繊維であることを特徴とする難燃化不織布が提供される。
【0009】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、水溶性難燃剤が、硫酸アンモニウムであることを特徴とする難燃化不織布が提供される。
【0010】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、水溶性難燃剤が、硫酸アンモニウムと助剤からなることを特徴とする難燃化不織布が提供される。
【0011】
また、本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、助剤が、ホウ酸アンモニウム、メラミンシアヌレートまたはスルファミン酸グアニジンから選ばれる少なくとも1種類の化合物であることを特徴とする難燃化不織布が提供される。
【0012】
また、本発明の第6の発明によれば、第4の発明において、助剤が、撥水剤であることを特徴とする難燃化不織布が提供される。
【0013】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明の難燃化不織布から構成されることを特徴とするフィルターが提供される。
【0014】
また、本発明の第8の発明によれば、第7の発明において、フィルターが、空気清浄用フィルターであることを特徴とするフィルターが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の難燃化不織布は、親水性樹脂繊維からなる不織布に、非ハロゲン化、非りん化の水溶性難燃剤である難燃剤を浸透処理させて付着させた難燃性に優れた難燃化不織布である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の難燃化不織布は、親水性樹脂繊維からなる不織布に、水溶性難燃剤を浸透処理させて付着させた難燃性に優れた難燃化不織布である。以下に詳細に説明する。
【0017】
本発明の難燃化不織布で用いる不織布は、親水性樹脂短繊維からなる親水性不織布である。
親水性樹脂繊維としては、水親和性を有する樹脂の繊維であれば特に制限はなく、例えば、レーヨン繊維、セルロース繊維、架橋ポリビニルアルコール繊維、パルプや綿等の天然繊維等などが用いられる。
本発明で用いる不織布は、70重量%以上の上記親水性樹脂繊維から構成されている必要がある。親水性樹脂繊維が70重量%未満では、後述の水溶性難燃剤を浸透処理して付着させることができず、好ましくない。ここで、親水性樹脂繊維以外の繊維としては、フィルター等の用途に用いられる樹脂繊維であれば、特に制限なく用いることができるが、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の疎水性合成繊維などを挙げることができる。このような合成繊維などを混紡する場合は、親水性樹脂繊維の30重量%未満であることが必要である。合成繊維などを混紡すると、不織布に剛性と風合いのバランスが付与される。
【0018】
不織布を構成する繊維の平均繊維径は、10〜50μmが好ましく、より好ましくは12〜40μmである。平均繊維径が10μm未満では不織布の厚みが薄くなりやすく、50μmを超えると繊維間隙が大きくなり保型性が低下する場合がある。
【0019】
親水性繊維不織布は、スパンレース法、ニードルパンチ法等により製造でき、特に公知のパラレルカード機、クロスレイドカード機、ランダムカード機などで形成するか、水中に分散させ、1%以下の濃度のスラリーを傾斜式網抄造機で形成することができる。
【0020】
本発明の難燃化不織布では、非ハロゲン、非リン系の無機系水溶性難燃剤を用いる。水溶性難燃剤としては、特に制限はなく、好ましい水溶性難燃剤としては、例えば、硫酸アンモニウム、ホウ酸又はその塩、塩化亜鉛、グアニジン塩からなる群から選ばれた1種以上の化合物を含有するものが挙げられ、硫酸アンモニウムが好ましい。
【0021】
従来、可燃性重合体の難燃剤として、硫酸アンモニウムが有効であることは、知られている。しかし、硫酸アンモニウムは、自己凝集性(ケーキングもしくは固結性)が強く、微粉末化しにくく、たとえ微粉末化できても保存中に凝集を起こすという欠点がある。また、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等の合成樹脂に混練もしくは添加すると、混合時の剪断作用によって凝集を起こすことが知られている。さらに、硫酸アンモニウムは、水に易溶性であるため、これを配合した樹脂成形品は、耐水性が問題となる。即ち、樹脂組成物ないしはこれを加工して得た成形物を水性物質と接触させると、硫酸アンモニウムが溶出し、この組成物の物性あるいは成形物の表面状態などが変化し、使用上、支障を来す。また、湿度の高い状態下でこの組成物を使用した場合も、空気中の水分が結露した時等に、その水分により硫酸アンモニウムが溶出し、樹脂表面に硫酸アンモニウムの結晶が析出するというような実用上の問題が生じる。これらのことが理由となって、難燃剤として有効であるにもかかわらず、硫酸アンモニウムの熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等の合成樹脂への使用は大幅に制限されてきていた。
【0022】
しかしながら、本発明においては、不織布の材料を親水性繊維にすることにより、難燃剤の硫酸アンモニウムの上記のような問題点を克服し、不織布への付着を水溶液を用いて浸透処理し、さらに助剤を併用することにより、さらに難燃性を向上させたことに特徴がある。
【0023】
上記水溶性難燃剤には、浸透剤等種々の添加剤を混合することができる。これらの水溶性難燃剤は、水又はメタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール等のアルコール類、エーテル類、エステル類等の有機溶媒を、溶媒とする溶液の形で使用される。これらの溶媒は単独又は2種以上の混合物として使用することができるが、通常は水又は水と水溶性有機溶媒の混合物を使用することが好ましい。
【0024】
また、上記無機系水溶性難燃剤には、助剤を用いて、主難燃剤の使用量を抑え、難燃性を向上させることができる。難燃助剤としては、ホウ酸アンモニウム、メラミンシアヌレート、スルファミン酸グアニジン等が挙げられる。これらの中でも、グアニジン塩は、それ自体難燃性(防炎性)を有する難燃剤として用いられるものである。上記グアニジン塩の例としては、難燃剤としての機能を有する限り特に制限されないが、例えば、ジシアンジアミドと、スルファミン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム及びホウ酸アンモニウムからなる群より選ばれた1種以上のアンモニウム塩との反応混合物や、スルファミン酸グアニジン、硫酸グアニジン、ホウ酸グアニジン等が挙げられ、中でも、ジシアンジアミドと、スルファミン酸アンモニウム及び硫酸アンモニウムからなる群より選ばれた1種以上のアンモニウム塩との反応混合物、並びにスルファミン酸グアニジン及び硫酸グアニジンからなる群より選ばれた1種以上のグアニジン塩が好ましく用いられる。スルファミン酸グアニジン及び硫酸グアニジンが好ましく、特にスルファミン酸グアニジンが好ましい。
【0025】
また、本発明の水溶性難燃剤は、ホルマリンの発生を伴わないものであることが必須であり、しかも難燃性に優れ、加熱後の着色や強力劣化の少ない難燃剤である。
【0026】
本発明の難燃化不織布において、不織布への水溶性難燃化剤の付着方法としては、不織布表面にハケ、ロールコーター、スプレー等により水溶性難燃化剤を塗布するか又は含浸して浸透処理する方法が挙げられる。これらの中では、不織布を水溶性難燃化剤の水溶液に浸透処理する方法が好ましい。浸透処理する方法としては、水溶性難燃化剤の液中に不織布基材を含浸させて、これをマングルロール機を通すことにより付着量を調整し、乾燥機で乾燥させるのが一般的である。具体的には、濃度5〜30%の難燃化剤水溶液に不織布を含浸させ、マングルで付着量を調整し150℃で乾燥させる方法が好ましい。
【0027】
本発明の難燃化不織布においては、不織布に付着させる難燃剤の量は、不織布を構成する繊維の5〜50重量%であり、好ましくは10〜30重量%である。難燃剤の量が5重量%未満では難燃効果がなく、50重量%を超えると基材がべとついたり、難燃剤が繊維表面で微粉末化して脱落したりする。
【0028】
なお、本発明で用いる難燃剤は、基本的には水溶性であるため、製品の耐吸湿性、耐水性に影響を及ぼす可能性もあり、このため撥水剤、あるいは、アクリル、SBRなどの繊維バインダーを少量加え、皮膜を形成することもできる。
上記撥水剤としては、フッ素系撥水剤、シリコーン系撥水剤等を挙げることができ、特にフッ素系撥水剤が添加量が少なくて効果が大きく、難燃性を阻害しないで用いることができる。撥水剤を用いる場合は、その添加量は水溶性難燃剤の有効成分100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、より好ましくは2〜20重量部である。撥水剤の添加量が1重量部未満では、不織布基材に撥水性が出ず水に濡れた場合水溶性難燃剤が溶け出し効果が低下し、30重量部を超えると撥水剤が難燃効果を阻害する。
【0029】
本発明の難燃化不織布は、他の不織布と積層した複合不織布として、フィルター等に用いても良い。
本発明の難燃化不織布に積層する不織布としては、特に制限されないが、例えば、スパンボンド不織布、スパンボンド/メルトブロー複合不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド複合不織布、メルトブロー不織布などと貼り合わせたることができる。
【0030】
貼り合わせに用いる不織布としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン、ポリエステル等が好ましい。それらの中では、ポリプロピレン系樹脂の不織布を用いるのが好ましい。ポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体、或いは過半重合割合のプロピレンと他のα−オレフィン(エチレン、ブテン、ヘキセン、4−メチルペンテン、オクテン等)、不飽和カルボン酸又はその誘導体(アクリル酸、無水マレイン酸等)、芳香族ビニル単量体(スチレン等)等とのランダム、ブロック又はグラフト共重合体である。また、ポリプロピレンのメルトフローレート(MFR)は、10〜2000g/10分のものが好ましい。これらプロピレンは、得られた不織布が上記物性を有する範囲であれば、単独でも、或いは複数種類の重合体の混合物としても使用することもできるし、ポリプロピレンを主成分としてなる樹脂でもよい。
なお、本発明で用いる複合不織布においては、スパンボンド不織布とメルトブロー不織布を構成する樹脂材料は、同一であることが好ましく、特にポリプロピレン製であることが好ましい。
【0031】
また、本発明の難燃化不織布に積層する不織布としては、微粒子を捕集する機能を向上させるために、エレクトレット化処理をしたものを用いてもよい。エレクトレット化不織布を用いるのは、静電気力によって微細な粉塵を効率良く捕集することができるためであり、このエレクトレット化は、不織布をアースされた電極上を走行させ、この上から針電極又はワイヤー電極に高電圧を印加することによってコロナ放電を行い達成される。このエレクトレット化の程度は、不織布の表面電荷密度を2×10−10クーロン/cm以上の電荷密度とするのが好ましい。この表面電荷密度が2×10−10クーロン/cm未満であると、空気中の粉塵等の分離捕集性能が劣るようになるため好ましくない。表面電荷密度が5×10−10クーロン/cm以上であると、空気中の粉塵等の分離捕集性能が著しく高まるため好ましく用いられる。
【0032】
本発明の難燃化不織布は、前述のように非ハロゲン、非りんの不織布であり、さらにホルムアルデヒドを発生する材料を用いていないため、環境保全に優れた空気清浄用フィルター、自動車キャビンフィルター、掃除機用フィルター等の材料として用いることができる。
【実施例】
【0033】
以下に本発明を実施例で説明するが、本発明は、実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例、比較例で用いた試験方法は以下の通りである。
【0034】
(1)不織布の目付重量:試料長さ方向より、100×100mmの試験片を採取し、水分平衡状態の重さを測定し、1m当たりに換算して求めた。
(2)難燃性試験:JIS L1091(繊維製品の燃焼試験方法 a−1法(45° ミクロバーナ法)に準拠して行なった。すなわち、約350mm×250mmの不織布試験片を燃焼試験箱に取り付け、1分間過熱し、残炎時間(秒)及び残じん時間(秒)を測定する。次に試験片を支持枠から外し、プラニメータなどを用いて燃焼面積(cm2)を整数単位まで測定する。また、1分間の間に加熱中に着炎するものについては、別の試験片について、着炎後3秒で、炎をのぞく試験を行い、同様の試験を行なう。ただし、この場合は、加熱時間を付記する。
ここで、「残炎時間」は着火源を取り去った後の材料が炎を発生し続ける時間の長さ(秒)を表し、炎の持続時間ともいう。「残じん時間」は、着火源を取り去った後、又は炎が消えた後の材料の赤熱が持続する時間の長さ(秒)を表し、残じんの持続時間ともいう。「残炎時間+残じん時間」は加熱終了時から試験片の赤熱が停止するまでの時間をいう。「燃焼面積、長さ」は、燃焼又は熱分解によって破壊された材料の損傷範囲又は長さをいう。それぞれの項目において、1〜3の評価区分があり、難燃性の判定では、実質上有効なのは総合評価で2以上であり、1は難燃効果が安定して認められないものと判断される。
【0035】
(実施例1、2)
2.2dt×51mmのレーヨン繊維からスパンレース法で目付40g/mの不織布を製造した。得られた不織布に、硫酸アンモニウム(東亞合成株式会社製)を用いた難燃剤水溶液を塗布し、マングル加工機を使用して難燃剤を不織布の構成繊維重量に対して10重量%と15重量%付着させ、150℃で熱風乾燥機で乾燥させて難燃化不織布を得た。
得られた難燃化不織布について燃焼試験を行なった。その結果を表1に示す。
【0036】
(実施例3〜8)
実施例1で得られた不織布に、主難燃剤として硫酸アンモニウム80重量%と、難燃助剤として、ホウ酸アンモニウム(富山薬品興業株式会社製)、メラミンシアヌレート(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)、又はスルファミン酸グアニジン(三和ケミカル社製)20重量%とを加えた難燃剤水溶液を塗布し、マングル加工機を使用して難燃剤を不織布の構成繊維重量に対して表1に示す量を付着させ、150℃で熱風乾燥機で乾燥させて難燃化不織布を得た。
得られた難燃化不織布について燃焼試験を行なった。その結果を表1に示す。
【0037】
(実施例9)
実施例1で得られた不織布に、難燃剤として硫酸アンモニウムと、添加剤として、フッ素系撥水剤(三木理研工業株式会社製)を硫酸アンモニウム100重量部に対して20重量部を加えた難燃剤水溶液を塗布し、マングル加工機を使用して難燃剤を不織布の構成繊維重量に対して表1に示す量を付着させ、150℃で熱風乾燥機で乾燥させて難燃化不織布を得た。
得られた難燃化不織布について燃焼試験を行なった。その結果を表1に示す。
【0038】
(比較例1)
実施例1で得られた不織布に難燃剤を付着させないで燃焼試験を行なった。その結果を表1に示す。
【0039】
(比較例2)
難燃剤の付着量を表1に示す量にする以外は、実施例1と同様にして不織布を得、得られた難燃化不織布について燃焼試験を行なった。その結果を表1に示す。
【0040】
(実施例10)
構成繊維比率(重量%)が2.2dt×51mmのレーヨン繊維80重量%と2.2dt×51mmのポリエステル繊維20重量%の繊維ウェブを用い、スパンレース法で目付40g/mの不織布を製造した。得られた不織布に、硫酸アンモニウムを用いた難燃剤水溶液を塗布し、マングル加工機を使用して難燃剤を不織布の構成繊維重量に対して30重量%付着させ、150℃で熱風乾燥機で乾燥させて難燃化不織布を得た。
得られた難燃化不織布について燃焼試験を行なった。その結果を表2に示す。
【0041】
(実施例11〜13)
実施例10で得られた不織布に、主難燃剤として硫酸アンモニウム80重量%と、難燃助剤として、ホウ酸アンモニウム、メラミンシアヌレート(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)、又はスルファミン酸グアニジン(三和ケミカル社製)20重量%とを加えた難燃剤水溶液を塗布し、マングル加工機を使用して難燃剤を不織布の構成繊維重量に対して30重量%付着させ、150℃で熱風乾燥機で乾燥させて難燃化不織布を得た。
得られた難燃化不織布について燃焼試験を行なった。その結果を表2に示す。
【0042】
(比較例3)
構成繊維比率(重量%)が2.2dt×51mmのレーヨン繊維80重量%と2.2dt×51mmのポリエステル繊維20重量%の繊維ウェブを用い、スパンレース法で目付40g/mの不織布を製造した。得られた不織布に、硫酸アンモニウムを用いた難燃剤水溶液を塗布し、マングル加工機を使用して難燃剤を不織布の構成繊維重量に対して3重量%付着させ、150℃で熱風乾燥機で乾燥させて難燃化不織布を得た。
得られた難燃化不織布について燃焼試験を行なった。その結果を表2に示す。
【0043】
(比較例4)
構成繊維比率(重量%)が2.2dt×51mmのレーヨン繊維70重量%と2.2dt×51mmのポリエステル繊維30重量%の繊維ウェブを用い、スパンレース法で目付40g/mの不織布を製造した。得られた不織布に、硫酸アンモニウムを用いた難燃剤水溶液を塗布し、マングル加工機を使用して難燃剤を不織布の構成繊維重量に対して30重量%付着させ、150℃で熱風乾燥機で乾燥させて難燃化不織布を得た。
得られた難燃化不織布について燃焼試験を行なった。その結果を表2に示す。
【0044】
(比較例5〜7)
構成繊維比率(重量%)が2.2dt×51mmのレーヨン繊維70重量%と2.2dt×51mmのポリエステル繊維30重量%の繊維ウェブを用い、スパンレース法で目付40g/mの不織布を製造した。得られた不織布に、主難燃剤として硫酸アンモニウム80重量%と、難燃助剤として、ホウ酸アンモニウム、メラミンシアヌレート(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)、又はスルファミン酸グアニジン(三和ケミカル社製)20重量%とを加えた難燃剤水溶液を塗布し、マングル加工機を使用して難燃剤を不織布の構成繊維重量に対して30重量%付着させ、150℃で熱風乾燥機で乾燥させて難燃化不織布を得た。
得られた難燃化不織布について燃焼試験を行なった。その結果を表2に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
表1〜2から明らかなように、レーヨン繊維からなる不織布に硫酸アンモニウム及び助剤の難燃化剤を付着させることにより、優れた難燃効果が得られた(実施例1〜13)。一方、難燃剤を加えないかその量が少ない場合は、難燃効果が発揮されず(比較例1、2、3)、不織布繊維として親水性樹脂繊維以外の繊維が30重量%超えると難燃効果が発揮されなかった(比較例4〜7)。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の難燃化不織布は、非ハロゲン化、非りん化の水溶性難燃剤と親水性樹脂繊維からなり、難燃性に優れた難燃化不織布であり、フィルター材として好適に用いることができ、特に環境保全に優れた空気清浄用フィルター、自動車キャビンフィルター、掃除機用フィルター等の材料として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
70重量%以上の親水性樹脂繊維を含む繊維からなる不織布に水溶性難燃剤を含浸させてなる難燃化不織布であって、水溶性難燃剤の不織布への付着量が不織布を構成する繊維の5〜50重量%であることを特徴とする難燃化不織布。
【請求項2】
親水性樹脂繊維が、レーヨン繊維またはビニロン繊維であることを特徴とする請求項1に記載の難燃化不織布。
【請求項3】
水溶性難燃剤が、硫酸アンモニウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の難燃化不織布。
【請求項4】
水溶性難燃剤が、硫酸アンモニウムと助剤からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃化不織布。
【請求項5】
助剤が、ホウ酸アンモニウム、メラミンシアヌレートまたはスルファミン酸グアニジンから選ばれる少なくとも1種類の化合物であることを特徴とする請求項4に記載の難燃化不織布。
【請求項6】
助剤が、撥水剤であることを特徴とする請求項4に記載の難燃化不織布。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の難燃化不織布から構成されることを特徴とするフィルター。
【請求項8】
フィルターが、空気清浄用フィルターであることを特徴とする請求項7に記載のフィルター。

【公開番号】特開2007−16341(P2007−16341A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198269(P2005−198269)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000201881)倉敷繊維加工株式会社 (41)
【Fターム(参考)】