説明

難燃性に優れた床材

【課題】燃焼時に有害ガスを発生しにくく燃焼安全性に優れると共に、低発煙性であり、難燃性に優れた床材を提供する。
【解決手段】本発明の床材10は、基材層1、2と、該基材層の下面側に積層された裏打層3とを少なくとも備え、前記基材層1、2は、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して、赤燐を5〜40質量部、層状珪酸塩を3〜20質量部、鱗片状充填剤を15〜50質量部、金属水酸化物を100〜230質量部含有する樹脂組成物からなり、前記裏打層3は、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して、層状珪酸塩を1〜5質量部含有する樹脂組成物からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、船舶の床材、鉄道、バス等の車輌の床材、或いはビル、マンション、家屋、商業施設等の建築物の床材等として用いられる難燃性に優れた床材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビル、マンション、家屋、商業施設等の建築物の床材、或いは鉄道、バス等の車輌の床材としては、難燃性、耐摩耗性、耐熱性に優れ、加工が容易で経済的にも優れていることから、可塑剤を多量に含有せしめた塩化ビニル樹脂(PVC)からなる床材が多く採用されていた。
【0003】
しかしながら、PVC製床材は、燃焼時において多量の発煙と共に塩化水素等の有害ガスを発生することから、火災時において避難者が該有害ガス等を吸入してしまう等の防災上の問題、また焼却廃棄処理によって環境汚染をもたらすという問題があった。また、PVC製床材は、可塑剤を多量に含有しているので、特有の臭気があるし、このような可塑剤による臭気はシックハウス症候群の原因の1つとも言われている。また、長年の使用により可塑剤が表面にブリードしてきて曇りを生じやすく外観体裁が悪くなるという問題もあった。
【0004】
そこで、近年では、次のような材料を床材の構成材料として用いることが提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、難燃性材料として、ポリオレフィン系樹脂を構成するモノマーユニット1単位に対して、炭素−炭素二重結合を有するリン酸系化合物0.01〜1単位がグラフト反応されてなるポリオレフィン系樹脂を用いることが提案されている。
【0006】
また、特許文献2では、難燃性材料として、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂及びアクリル系樹脂から選択された少なくとも1種のベース樹脂と、シアノ基を有する複素環式化合物と、赤リン、リン酸エステル、リン酸エステルアミド、ホスホニトリル化合物、有機ホスホン酸化合物及び有機ホスフィン酸化合物から選択された少なくとも一種のリン含有化合物と、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、芳香族ナイロン、ポリアリレート系樹脂、芳香族エポキシ樹脂、並びにヒドロキシル基及び/又はアミノ基を有する芳香族環を主鎖又は側鎖に有する樹脂から選択された少なくとも一種の芳香族樹脂とで構成された難燃性樹脂組成物を用いることが提案されている。
【0007】
これら提案された床材では、燃焼時における有害ガス発生の問題、可塑剤由来の特有の臭気の発生と曇り発生の問題は、ほぼ解決されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−171936号公報
【特許文献2】特開2009−132935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1、2に記載の床材は、難燃性能が不十分であるし、燃焼時において発煙量が比較的多いという問題があった。
【0010】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、燃焼時に有害ガスを発生しにくく燃焼安全性に優れると共に、低発煙性であり、難燃性に優れた床材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0012】
[1]基材層と、該基材層の下面側に積層された裏打層とを少なくとも備え、
前記基材層は、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して、赤燐を5〜40質量部、層状珪酸塩を3〜20質量部、鱗片状充填剤を15〜50質量部、金属水酸化物を100〜230質量部含有する樹脂組成物からなり、
前記裏打層は、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して、層状珪酸塩を1〜5質量部含有する樹脂組成物からなることを特徴とする難燃性に優れた床材。
【0013】
[2]前記基材層の引張り弾性率が100〜1500MPaであり、前記裏打層の引張り弾性率が500〜1500MPaであり、
前記基材層及び前記裏打層の一体での引張り弾性率が700MPa以下であり、
線膨張率の比率が、基材層の線膨張率/裏打層の線膨張率=1.0/1.2〜4.0の範囲である前項1に記載の難燃性に優れた床材。
【0014】
[3]第1基材層と、該第1基材層の下面側に積層された第2基材層と、該第2基材層の下面側に積層された裏打層とを少なくとも備え、
前記第1基材層は、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して、赤燐を5〜40質量部、層状珪酸塩を3〜20質量部、鱗片状充填剤を15〜50質量部、金属水酸化物を100〜230質量部含有する樹脂組成物からなり、
前記第2基材層は、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して、赤燐を5〜40質量部、層状珪酸塩を3〜20質量部、鱗片状充填剤を15〜50質量部、金属水酸化物を100〜230質量部含有する樹脂組成物からなり、
前記裏打層は、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して、層状珪酸塩を1〜5質量部含有する樹脂組成物からなることを特徴とする難燃性に優れた床材。
【0015】
[4]前記第1基材層の引張り弾性率が100〜1500MPaであり、前記第2基材層の引張り弾性率が100〜1500MPaであり、前記裏打層の引張り弾性率が500〜1500MPaであり、
前記第1基材層、前記第2基材層及び前記裏打層の一体での引張り弾性率が700MPa以下であり、
線膨張率の比率が、第1基材層の線膨張率/第2基材層の線膨張率/裏打層の線膨張率=1.0/1.0〜3.0/1.2〜4.0の範囲である前項3に記載の難燃性に優れた床材。
【0016】
[5]前記裏打層を構成する化学構造中に塩素原子を有しない樹脂として、スチレン成分の含有率が40〜80質量%であるスチレン系エラストマーと、結晶性樹脂とが少なくとも用いられ、
前記裏打層において、前記スチレン系エラストマーを樹脂成分全体に対して5〜40質量%含有し、前記結晶性樹脂を樹脂成分全体に対して55〜80質量%含有する前項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性に優れた床材。
【0017】
[6]前記赤燐として、表面が樹脂で被覆された赤燐が用いられている前項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性に優れた床材。
【0018】
[7]前記赤燐として、表面がフェノール樹脂で被覆された赤燐が用いられている前項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性に優れた床材。
【0019】
[8]前記鱗片状充填剤として鱗片状ガラスが用いられている前項1〜7のいずれか1項に記載の難燃性に優れた床材。
【発明の効果】
【0020】
[1]の発明では、基材層及び裏打層の構成材料として化学構造中に塩素原子を有しない樹脂が用いられているから、燃焼時の有害ガスの発生が少なく燃焼安全性に優れて防災面で好都合であると共に環境保全にも十分に貢献できる。また、基材層は、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して層状珪酸塩を3〜20質量部含有するから、難燃効果を得ることができ、さらに同樹脂100質量部に対して金属水酸化物を100〜230質量部含有するから、前記難燃効果をさらに高めることができる。また、基材層は、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して鱗片状充填剤を15〜50質量部含有するので、床材の熱寸法安定性を向上させることができる。更に、基材層は、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して赤燐を5〜40質量部含有するので、発煙量を低く抑制しつつ、さらに高い難燃化を図ることができる。また、裏打層は、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して層状珪酸塩を1〜5質量部含有するから、床材として十分な難燃効果を得ることができる。
【0021】
[2]の発明では、線膨張率の比率が、基材層の線膨張率/裏打層の線膨張率=1.0/1.2〜4.0の範囲になっているから、床材の反りを十分に防止できる。
【0022】
[3]の発明では、第1基材層、第2基材層及び裏打層の構成材料として化学構造中に塩素原子を有しない樹脂が用いられているから、燃焼時の有害ガスの発生が少なく燃焼安全性に優れて防災面で好都合であると共に環境保全にも十分に貢献できる。また、第1基材層及び第2基材層では、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して層状珪酸塩を3〜20質量部含有するから、難燃効果を得ることができ、さらに同樹脂100質量部に対して金属水酸化物を100〜230質量部含有するから、前記難燃効果をさらに高めることができる。また、第1基材層及び第2基材層では、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して鱗片状充填剤を15〜50質量部含有するので、床材の熱寸法安定性を向上させることができる。更に、第1基材層及び第2基材層では、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して赤燐を5〜40質量部含有するので、発煙量を低く抑制しつつ、さらに高い難燃化を図ることができる。また、裏打層は、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して層状珪酸塩を1〜5質量部含有するから、床材として十分な難燃効果を得ることができる。
【0023】
[4]の発明では、線膨張率の比率が、第1基材層の線膨張率/第2基材層の線膨張率/裏打層の線膨張率=1.0/1.0〜3.0/1.2〜4.0の範囲になっているから、床材の反りを十分に防止できる。
【0024】
[5]の発明では、裏打層を構成する樹脂組成物は、スチレン系エラストマーを裏打層の樹脂成分全体に対して5〜40質量%含有するから、敷設下地面と接着するための接着剤との接着性を向上できると共に、結晶性樹脂を裏打層の樹脂成分全体に対して55〜80質量%含有するから、床材の反りをより十分に防止できる。
【0025】
[6]の発明では、赤燐として、表面が樹脂で被覆された赤燐が用いられているから、難燃性能を一層向上させることができる。
【0026】
[7]の発明では、赤燐として、表面がフェノール樹脂で被覆された赤燐が用いられているから、難燃性能をより一層向上させることができる。
【0027】
[8]の発明では、鱗片状充填剤として鱗片状ガラスが用いられているから、床材の熱寸法安定性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の床材の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の床材の他の実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の床材のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る床材(10)の一実施形態を図1に示す。この床材(10)は、第1基材層(1)と、該第1基材層(1)の下面に積層された第2基材層(2)と、該第2基材層(2)の下面に積層された裏打層(3)と、前記第1基材層(1)の上面に積層された表面層(4)とを備える。本発明では、図2に示すように、前記表面層(4)が設けられていない構成を採用しても良い。即ち、床材(10)は、第1基材層(1)の下面に第2基材層(2)が積層され、該第2基材層(2)の下面に裏打層(3)が積層された構成であってもよい。
【0030】
前記第1基材層(1)は、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して、赤燐を5〜40質量部、層状珪酸塩を3〜20質量部、鱗片状充填剤を15〜50質量部、金属水酸化物を100〜230質量部含有する樹脂組成物からなる。
【0031】
また、前記第2基材層(2)は、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して、赤燐を5〜40質量部、層状珪酸塩を3〜20質量部、鱗片状充填剤を15〜50質量部、金属水酸化物を100〜230質量部含有する樹脂組成物からなる。
【0032】
なお、本発明では、前記第1基材層(1)及び前記第2基材層(2)の積層部を単一層で構成するものとしてもよい。即ち、図3に示すように、本発明の他の実施形態に係る床材(10)は、基材層(6)と、該基材層(6)の下面に積層された裏打層(3)と、前記基材層(6)の上面に積層された表面層(4)とを備える。前記基材層(6)は、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して、赤燐を5〜40質量部、層状珪酸塩を3〜20質量部、鱗片状充填剤を15〜50質量部、金属水酸化物を100〜230質量部含有する樹脂組成物からなる。
【0033】
次に、前記第1基材層(1)、前記第2基材層(2)及び前記基材層(6)の構成について詳述する。
【0034】
前記第1基材層(1)、前記第2基材層(2)及び前記基材層(6)を構成する、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂等が挙げられる。
【0035】
前記オレフィン系樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン−αオレフィン共重合体、ランダム型ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−ブテン−ジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体等が挙げられる。
【0036】
前記スチレン系樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、水素添加スチレン−ブタジエンゴム(HSBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)等が挙げられる。
【0037】
前記赤燐としては、特に限定されるものではないが、表面が樹脂で被覆された赤燐を用いるのが好ましい。赤燐を含有することで床材は高難燃性のものとなるのであるが、赤燐の表面が樹脂で被覆されていることで、難燃性能をさらに向上できる。前記被覆用の樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、前記赤燐としては、表面がフェノール樹脂で被覆された赤燐を用いるのがより好ましい。
【0038】
前記赤燐の含有量は、前記化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して5〜40質量部(樹脂で被覆されたものである場合には被覆樹脂の量を含む)とする。5質量部未満では高い難燃性能が得られない。また、40質量部を超えると、発煙量が多くなるという問題を生じる。中でも、前記赤燐の含有量は、前記化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して15〜30質量部(樹脂で被覆されたものである場合には被覆樹脂の量を含む)とするのが好ましい。
【0039】
前記層状珪酸塩としては、特に限定されるものではないが、例えばモンモリロナイト、マイカ、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、ノントロナイト、カオリナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、パイロフィライト等が挙げられる。これらの中でも、モンモリロナイト又は/及びマイカを用いるのが好ましい。
【0040】
前記層状珪酸塩としては、有機化処理されたものを用いるのが好ましい。前記有機化処理は、層状珪酸塩の層間を有機オニウム塩等を用いて拡張するものである。層状珪酸塩の層間に有機オニウムイオン構造を存在させると、負に帯電した珪酸塩の層間に樹脂等の分子間力の小さい物質を挿入させることができ、層状珪酸塩の樹脂中への分散性を向上させることができる。前記有機オニウム塩としては、特に限定されるものではないが、アルキルオニウム塩を用いるのが好ましい。中でも、炭素数1〜32のアルキル基を少なくとも1個有する4級アンモニウム塩を用いるのがより好ましく、炭素数1〜18のアルキル基を少なくとも1個有する4級アンモニウム塩を用いるのが特に好ましい。前記4級アンモニウム塩としては、特に限定されるものではないが、例えばテトラエチルアンモニウム,テトラブチルアンモニウム,テトラオクチルアンモニウム,トリメチルオクチルアンモニウム,トリメチルデシルアンモニウム,トリメチルドデシルアンモニウム,トリメチルテトラデシルアンモニウム,トリメチルヘキサデシルアンモニウム,トリメチルオクタデシルアンモニウム,トリメチルエイコサニルアンモニウム,トリメチルオクタデセニルアンモニウム,トリメチルオクタデカジエニルアンモニウム,トリエチルドデシルアンモニウム,トリエチルテトラデシルアンモニウム,トリエチルヘキサデシルアンモニウム,トリエチルオクタデシルアンモニウム,トリブチルドデシルアンモニウム,トリブチルテトラデシルアンモニウム,トリブチルヘキサデシルアンモニウム,トリブチルオクタデシルアンモニウム,ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジデシルアンモニウム,ジメチルジテトラデシルアンモニウム,ジメチルジヘキサデシルアンモニウム,ジメチルジオクタデシルアンモニウム,ジメチルジオクタデセニルアンモニウム,ジメチルジオクタデカジエニルアンモニウム,ジエチルジドデシルアンモニウム,ジエチルジテトラデシルアンモニウム,ジエチルジヘキサデシルアンモニウム,ジエチルジオクタデシルアンモニウム,ジブチルジドデシルアンモニウム、ジブチルジテトラデシルアンモニウム,ジブチルジヘキサデシルアンモニウム,ジブチルジオクタデシルアンモニウム,メチルベンジルヘキサデシルアンモニウム,ジベンジルジヘキサデシルアンモニウム,トリオクチルメチルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウム、トリテトラデシルメチルアンモニウム,トリオクチルエチルアンモニウム,トリドデシルエチルアンモニウム,トリオクチルブチルアンモニウム、トリドデシルブチルアンモニウム,トリメチルベンジルアンモニウム,トリメチルフェニルアンモニウム等が挙げられる。
【0041】
前記層状珪酸塩としては、前記有機化処理により、その層間距離が2.0nm以上になっているものを用いるのが好ましい。この場合には、層状珪酸塩の樹脂中への分散性を向上させることができる利点がある。中でも、前記層状珪酸塩としては、前記有機化処理により、その層間距離が3.0nm以上になっているものを用いるのがより好ましい。
【0042】
前記層状珪酸塩の含有量は、前記化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して3〜20質量部(有機化処理されたものである場合には有機物の量を含む)とする。3質量部未満では十分な難燃性を付与することができない。また20質量部を超えると樹脂組成物が脆くなり、引張強さ、引張伸び等の力学特性が低下する。中でも、前記化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対する層状珪酸塩の含有量は5〜15質量部であるのが好ましい。
【0043】
前記金属水酸化物としては、特に限定されるものではないが、例えば水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等が挙げられる。これらの中でも、より難燃効果を高めることができる点で、水酸化マグネシウムを用いるのが好ましい。前記金属水酸化物の平均粒径は0.1〜50μmであるのが好ましい。
【0044】
前記金属水酸化物としては、脂肪酸処理またはシラン化合物処理されたものを用いるのが好ましい。このような物質で処理(接触処理)されていることで樹脂との分散性を向上させることができるという利点がある。前記脂肪酸としては、特に限定されるものではないが、例えばステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミドが挙げられ、中でもステアリン酸が好適に用いられる。前記シラン化合物としては、特に限定されるものではないが、例えばビニルトリクロルシラン,ビニルトリメトキシシラン,ビニルトリエトキシシラン,2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン,3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン,p−スチリルトリメトキシシラン,p−スチリルトリメトキシシラン,3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン,3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン,3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン,3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン,N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン,N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン,N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン,3−アミノプロピルトリメトキシシラン,3−アミノプロピルトリエトキシシラン,3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンとその部分加水分解物,3−トリメトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンとその部分加水分解物,N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0045】
前記金属水酸化物の含有量は、前記化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して100〜230質量部(脂肪酸処理またはシラン化合物処理されたものである場合には脂肪酸やシラン化合物の量を含む)とする。100質量部未満では十分な難燃性を付与することができない。また230質量部を超えると、樹脂組成物が脆くなり、引張強さ、引張伸び等の力学特性が低下する。中でも、前記化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対する金属水酸化物の含有量は150〜200質量部であるのが好ましい。
【0046】
前記鱗片状充填剤としては、特に限定されるものではないが、例えば鱗片状ガラス、鱗片状黒鉛、鱗片状タルク等が挙げられる。中でも、鱗片状ガラスを用いるのが好ましく、これにより床材の熱寸法安定性をより向上させることができる。
【0047】
前記鱗片状ガラスとしては、平均粒径が50〜1000μm、平均厚さ0.1〜20μmであるものを用いるのが好ましく、この場合には床材の熱寸法安定性をさらに向上させることができる。
【0048】
前記鱗片状ガラスとしては、有機化処理されたものを用いるのが好ましい。有機化処理されることで、樹脂との界面の接着性が向上し、熱寸法安定性向上効果をより高めることができる。前記有機化処理の有機物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビニルトリクロルシラン,ビニルトリメトキシシラン,ビニルトリエトキシシラン,2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン,3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン,p−スチリルトリメトキシシラン,p−スチリルトリメトキシシラン,3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン,3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン,3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン,3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン,N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン,N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン,N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン,3−アミノプロピルトリメトキシシラン,3−アミノプロピルトリエトキシシラン,3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンとその部分加水分解物,3−トリメトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンとその部分加水分解物,N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物などが挙げられる。
【0049】
前記鱗片状充填剤の含有量は、前記化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して15〜50質量部とする。15質量部未満では床材の熱寸法安定性を向上させることができない。また50質量部を超えると、十分な引張強さ、十分な引張伸びを具備させることができないので、耐ヒールマーク性に劣る。中でも、前記化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して鱗片状充填剤を20〜35質量部含有せしめるのが好ましい。
【0050】
次に、前記裏打層(3)の構成について詳述する。前記裏打層(3)は、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して層状珪酸塩を1〜5質量部含有する樹脂組成物からなる。1質量部未満では床材として十分な難燃性を確保することができない。また5質量部を超えると、床材の反りが大きくなる。
【0051】
前記裏打層(3)を構成する層状珪酸塩としては、前記第1基材層(1)、前記第2基材層(2)、前記基材層(6)を構成する層状珪酸塩として例示したものと同じものを使用できる。
【0052】
前記裏打層(3)を構成する化学構造中に塩素原子を有しない樹脂としては、前記第1基材層(1)、前記第2基材層(2)、前記基材層(6)を構成する樹脂として例示したものと同じものを使用できる。
【0053】
中でも、前記裏打層(3)を構成する化学構造中に塩素原子を有しない樹脂としては、スチレン系エラストマーと、結晶性樹脂とを少なくとも用いるのが好ましい。前記スチレン系エラストマーにおけるスチレン成分の含有率は、接着力向上の観点から、40〜80質量%であるのが好ましい。前記スチレン系エラストマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)共重合体等が挙げられる。前記結晶性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、結晶性ポリプロピレン、結晶性ポリエチレン等が挙げられる。
【0054】
前記裏打層(3)において、前記スチレン系エラストマーを裏打層(3)の樹脂成分全体に対して5〜40質量%含有し、前記結晶性樹脂を裏打層(3)の樹脂成分全体に対して55〜80質量%含有する構成を採用するのが好ましい。スチレン系エラストマーを5質量%以上含有することで極性を増大できて接着力を向上できるし、スチレン系エラストマーの含有率を40質量%以下とすることで床材の反りを防止できる。また、結晶性樹脂を55質量%以上含有することで床材の反りを防止できるし、結晶性樹脂の含有率を80質量%以下とすることで敷設下地面と接着するための接着剤との接着性を向上できる。
【0055】
前記表面層(4)を構成する樹脂としては、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂を用いる。前記表面層(4)を構成する化学構造中に塩素原子を有しない樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体、オレフィン系エラストマー等が挙げられる。前記表面層(4)は、単層で構成されていても良いし、多層で構成されていても良い。このような表面層(4)を積層することにより、耐摩耗性と耐汚染性の向上した床材(10)を提供することができる。なお、前記表面層(4)の厚さは0.1〜1.0mmに設定されるのが好ましい。
【0056】
前記表面層(4)は、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して層状珪酸塩を1〜10質量部、有機系難燃剤を3〜15質量部含有せしめた構成であるのが好ましい。
【0057】
図1、2に示す構成の床材(10)において、第1基材層(第1基材シート)の引張り弾性率が100〜1500MPaであり、前記第2基材層(第2基材シート)の引張り弾性率が100〜1500MPaであり、前記裏打層(裏打シート)の引張り弾性率が500〜1500MPaであり、前記第1基材層、前記第2基材層及び前記裏打層の一体での引張り弾性率が700MPa以下である構成を採用するのが、床材の施工性を向上できる点で、好ましい。また、線膨張率の比率が、第1基材層の線膨張率/第2基材層の線膨張率/裏打層の線膨張率=1.0/1.0〜3.0/1.2〜4.0の範囲である構成を採用するのが、床材(10)の反りを十分に防止できる点で、好ましい。
【0058】
また、図1に示す構成の床材(10)において、各層の厚さ比率は、表面層の厚さ/第1基材層の厚さ/第2基材層の厚さ/裏打層の厚さ=1/1.0〜1.3/3.0〜5.0/0.8〜1.2の範囲である構成を採用するのが、難燃性をさらに向上できる点で、好ましい。
【0059】
図3に示す構成の床材(10)において、基材層(基材シート)(6)の引張り弾性率が100〜1500MPaであり、裏打層(裏打シート)(3)の引張り弾性率が500〜1500MPaであり、前記基材層(6)及び前記裏打層(3)の一体での引張り弾性率が700MPa以下である構成を採用するのが、床材の施工性を向上できる点で、好ましい。また、線膨張率の比率が、基材層(6)の線膨張率/裏打層(3)の線膨張率=1.0/1.2〜4.0の範囲である構成を採用するのが、床材(10)の反りを十分に防止できる点で、好ましい。
【0060】
前記床材(10)の意匠性等を向上させるために、例えば、前記表面層(4)の下面又は/及び前記基材層(1)(2)(6)の上面に印刷層が形成されていても良い。前記印刷層形成のための印刷方法としては、特に限定されるものではないが、例えばインクジェット法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、転写印刷法等が挙げられる。
【0061】
なお、前記第1基材層(1)、前記第2基材層(2)、前記基材層(6)、前記裏打層(3)及び前記表面層(4)のいずれにも、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ポリエチレンワックス、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、抗菌防黴剤、柄剤(意匠性向上目的等)等の各種添加剤を適宜含有せしめても良い。
【0062】
また、必要に応じて、床材(10)表面に処理剤を塗工する等して皮膜を形成しても良い。図1、3の構成を例にすれば、表面層(4)の上面に処理剤を塗工する等して皮膜を形成しても良い。例えば耐摩耗性を向上させる観点から、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂を主成分とする皮膜を前記表面層(4)上面に形成しても良い。なお、このような皮膜は50μm以下の厚さに形成するのが一般的である。
【0063】
また、前記裏打層(3)の下面に、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂からなる布が加熱溶融により積層一体化されて繊維層が更に積層された構成を採用しても良い。前記布としては、特に限定されないが、例えば編布、織布、不織布等が挙げられる。前記繊維層が設けられていることで、床材の施工時に接着剤が繊維層に十分に含浸されるものとなり、このアンカー効果によって床材が敷設面に十分に固定されるものとなる。前記編織布としては例えば寒冷紗が挙げられ、前記不織布としては例えばポリプロピレン不織布、ポリエステル不織布、ナイロン不織布等が挙げられる。中でも、薄層化しうるスパンボンドタイプ不織布が好ましく、特に好適なのはポリプロピレンスパンボンド不織布である。
【0064】
本発明の床材(10)の厚さは、全体厚さ(T)として1.0〜4.0mmに設定されるのが好ましい(図1〜3参照)。中でも、前記床材(10)の全体厚さ(T)は1.5〜3.0mmに設定されるのが特に好ましい。
【0065】
本発明の床材(10)は、タイル状床材(例えば500mm角のタイル等)として構成しても良いし、シート状床材(例えば幅600〜2500mm程度の長尺シート等)として構成しても良く、特に限定されない。また、床材(10)の表面に凹凸模様を形成することにより滑り止め機能を付与しても良い。
【0066】
なお、第1基材層(1)、第2基材層(2)、基材層(6)、裏打層(3)、表面層(4)等の各構成層(シート)の製造方法としては、特に限定されず、例えばカレンダ加工機、押出加工機等の公知の装置により製造することができる。
【実施例】
【0067】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0068】
<実施例1>
オレフィン系樹脂100質量部、赤燐(表面がフェノール樹脂で被覆された赤燐)8質量部、モンモリロナイト(有機化処理されたモンモリロナイト、株式会社ホージュン製「エスベンWX」)5質量部、鱗片状ガラス(日本板硝子株式会社製「ガラスフレークREF−160A」、平均厚さ5μm、平均粒径160μm)20質量部、平均粒径5μmの水酸化マグネシウム(ステアリン酸で処理されたもの)180質量部からなる樹脂組成物をバンバリーミキサーで混練し、設定温度160℃、直径25cmの2本ロール試験機を用いて厚さ0.30mmの第1基材シートを作成した。この第1基材シート(第1基材層)の引張り弾性率は190MPaであった。
【0069】
また、上記樹脂組成物と同一組成の樹脂組成物を用いて上記と同様にして厚さ1.2mmの第2基材シートを作成した。この第2基材シート(第2基材層)の引張り弾性率は190MPaであった。
【0070】
また、エチレン系エラストマー5質量部、スチレン系エラストマー(スチレン成分の含有率が67質量%)25質量部、結晶性ポリプロピレン樹脂70質量部、モンモリロナイト(有機化処理されたモンモリロナイト、株式会社ホージュン製「エスベンWX」)3質量部からなる樹脂組成物をバンバリーミキサーで混練し、設定温度160℃、直径25cmの2本ロール試験機を用いて厚さ0.27mmの裏打シートを作成した。この裏打シート(裏打層)の引張り弾性率は650MPaであった。
【0071】
前記第1基材シート、前記第2基材シート及び裏打シートをこの順で重ね合わせて3層一体での引張り弾性率を測定したところ430MPaであった。
【0072】
次に、下面(重ね合わせ面)に柄印刷が施された厚さ300μmのポリプロピレンシート(このシートの引張り弾性率は300MPa)を準備し、下側から、裏打シート、第2基材シート、第1基材シート、ポリプロピレンシート(表面層)の順に重ね、この重ね合わせ状態でプレス機を用いて160℃、1.0MPaの条件で5分間圧縮成形を行うことによって、厚さ(T)が2.02mmの床材を得た(図1参照)。
【0073】
<実施例2〜11、比較例1〜10>
各シート(各層)の樹脂組成物の組成を表1〜4に示す構成とした以外は、実施例1と同様にして床材を得た。実施例2〜10及び比較例1〜10において表面層は実施例1と同一構成とした。なお、実施例11のみ表面層を設けない構成とした。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
【表4】

【0078】
表1〜4に記載した床材の各構成層の引張り弾性率は、下記測定法により測定した値である。なお、表1〜4における「3層一体での引張り弾性率」とは、第1基材層、第2基材層及び裏打層の3層の一体での引張り弾性率である。
【0079】
また、表1〜4に記載した線膨張率の比(第1基材層/第2基材層/裏打層)は、下記測定法により測定した各層(各シート)の線膨張率の値から算出されたものである。
【0080】
<引張り弾性率の測定法>
JIS K6251−2004に準拠して床材の各層(即ち圧縮成形で積層一体化する前の各シート)の引張り弾性率(MPa)を測定した。
【0081】
<線膨張率の測定法>
JIS A1325−1995に準拠して線膨張率(単位:1/K)を測定した。即ち、セイコーインスツル社製の熱機械測定装置(TMA)を用いて床材の各層(即ち圧縮成形で積層一体化する前の各シート)の線膨張率を測定した。
【0082】
次に、上記のようにして得られた各床材について下記評価法に基づいて性能評価を行った。これらの結果を表1〜4に示す。
【0083】
<難燃性評価法>
国際海事機関が定めるIMO A.653(16)の表面燃焼性試験に準拠して床材の燃焼試験を行い、下記判定基準に基づき評価した。
(判定基準)
「○」…上記表面燃焼性試験規格値に合格する
「×」…上記表面燃焼性試験規格値に合格しない。
【0084】
<発煙性評価法>
国際海事機関が定めるIMO A.653(16)の煙及び毒性試験に準拠して床材の発煙性試験を行い、下記判定基準に基づき評価した。
(判定基準)
「○」…上記発煙性試験規格値に合格する(低発煙性である)
「×」…上記発煙性試験規格値に合格しない。
【0085】
<施工性(反り)評価法>
JIS A1454−2005の6.10の反り試験に準拠して床材の反り量(mm)を測定し、下記判定基準に基づき評価した。
(判定基準)
「○」…反り量が−1.0mm〜0.0mm(0.0mmを含む)
「△」…反り量が0.0mmを超えて0.5mm以下
「×」…反り量が0.5mmを超える。
【0086】
<施工性(硬さ)評価法>
JIS K6251−2004に準拠して床材の硬さ(MPa)を測定し、下記判定基準に基づき評価した。
(判定基準)
「○」…硬さが500MPa以下
「△」…硬さが500MPaを超えて600MPa以下
「×」…硬さが600MPaを超える。
【0087】
<残留へこみ率の測定>
JIS A1454−2005の6.6残留へこみ試験のA法に準拠して残留へこみ率(%)を測定し、下記判定基準に基づき評価した。
(判定基準)
「○」…残留へこみ率が6.0%以下
「△」…残留へこみ率が6.0%を超えて8.0%以下
「×」…残留へこみ率が8.0%を超える。
【0088】
表1、2から明らかなように、本発明の実施例1〜11の床材は、難燃性に優れ、低発煙性であると共に、反りが小さくて施工性に優れ、また残留へこみ率が小さく耐ヒールマーク性にも優れていた。
【0089】
これに対し、比較例1の床材では、基材層における赤燐の含有量が本発明の規定範囲よりも少ないので、難燃性が不十分であった。また、比較例2の床材では、基材層における赤燐の含有量が本発明の規定範囲よりも多いので、高発煙性であった。比較例3の床材では、基材層における層状珪酸塩の含有量が本発明の規定範囲よりも少ないので、難燃性が不十分であった。比較例4の床材では、基材層における鱗片状充填剤の含有量が本発明の規定範囲よりも少ないので、難燃性が不十分であった。比較例5の床材では、基材層における金属水酸化物の含有量が本発明の規定範囲よりも少ないので、難燃性が不十分であった。比較例6の床材では、基材層における金属水酸化物の含有量が本発明の規定範囲よりも多いので、硬さの観点での施工性評価が悪いし、残留へこみ率が大きく耐ヒールマーク性に劣る。比較例7の床材では、基材層における層状珪酸塩の含有量が本発明の規定範囲よりも多いので、残留へこみ率が大きく耐ヒールマーク性に劣る。比較例8の床材では、基材層における鱗片状充填剤の含有量が本発明の規定範囲よりも多いので、残留へこみ率が大きく耐ヒールマーク性に劣る。比較例9の床材では、第2基材層における金属水酸化物の含有量が本発明の規定範囲よりも多いので、反りの観点での施工性評価が悪いし、残留へこみ率が大きく耐ヒールマーク性に劣る。比較例10の床材では、裏打層における層状珪酸塩の含有量が本発明の規定範囲よりも多いので、反りの観点での施工性評価が悪い。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係る床材は、燃焼時に有害ガスを発生しにくく燃焼安全性に優れると共に、低発煙性であり、さらに難燃性、施工性、熱寸法安定性、耐ヒールマーク性のいずれにも優れているので、例えば、船舶の床材、鉄道、バス等の車輌の床材、ビル、マンション、家屋、商業施設等の建築物の床材として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0091】
1…第1基材層
2…第2基材層
3…裏打層
4…表面層
6…基材層
10…床材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、該基材層の下面側に積層された裏打層とを少なくとも備え、
前記基材層は、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して、赤燐を5〜40質量部、層状珪酸塩を3〜20質量部、鱗片状充填剤を15〜50質量部、金属水酸化物を100〜230質量部含有する樹脂組成物からなり、
前記裏打層は、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して、層状珪酸塩を1〜5質量部含有する樹脂組成物からなることを特徴とする難燃性に優れた床材。
【請求項2】
前記基材層の引張り弾性率が100〜1500MPaであり、前記裏打層の引張り弾性率が500〜1500MPaであり、
前記基材層及び前記裏打層の一体での引張り弾性率が700MPa以下であり、
線膨張率の比率が、基材層の線膨張率/裏打層の線膨張率=1.0/1.2〜4.0の範囲である請求項1に記載の難燃性に優れた床材。
【請求項3】
第1基材層と、該第1基材層の下面側に積層された第2基材層と、該第2基材層の下面側に積層された裏打層とを少なくとも備え、
前記第1基材層は、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して、赤燐を5〜40質量部、層状珪酸塩を3〜20質量部、鱗片状充填剤を15〜50質量部、金属水酸化物を100〜230質量部含有する樹脂組成物からなり、
前記第2基材層は、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して、赤燐を5〜40質量部、層状珪酸塩を3〜20質量部、鱗片状充填剤を15〜50質量部、金属水酸化物を100〜230質量部含有する樹脂組成物からなり、
前記裏打層は、化学構造中に塩素原子を有しない樹脂100質量部に対して、層状珪酸塩を1〜5質量部含有する樹脂組成物からなることを特徴とする難燃性に優れた床材。
【請求項4】
前記第1基材層の引張り弾性率が100〜1500MPaであり、前記第2基材層の引張り弾性率が100〜1500MPaであり、前記裏打層の引張り弾性率が500〜1500MPaであり、
前記第1基材層、前記第2基材層及び前記裏打層の一体での引張り弾性率が700MPa以下であり、
線膨張率の比率が、第1基材層の線膨張率/第2基材層の線膨張率/裏打層の線膨張率=1.0/1.0〜3.0/1.2〜4.0の範囲である請求項3に記載の難燃性に優れた床材。
【請求項5】
前記裏打層を構成する化学構造中に塩素原子を有しない樹脂として、スチレン成分の含有率が40〜80質量%であるスチレン系エラストマーと、結晶性樹脂とが少なくとも用いられ、
前記裏打層において、前記スチレン系エラストマーを樹脂成分全体に対して5〜40質量%含有し、前記結晶性樹脂を樹脂成分全体に対して55〜80質量%含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性に優れた床材。
【請求項6】
前記赤燐として、表面が樹脂で被覆された赤燐が用いられている請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性に優れた床材。
【請求項7】
前記赤燐として、表面がフェノール樹脂で被覆された赤燐が用いられている請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性に優れた床材。
【請求項8】
前記鱗片状充填剤として鱗片状ガラスが用いられている請求項1〜7のいずれか1項に記載の難燃性に優れた床材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−220031(P2011−220031A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92139(P2010−92139)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】