説明

難燃性を向上させるためのバイモーダルフィラー系

バイモーダルフィラー系を使用することによって、より高レベルのフィラーで加工可能となるマスターバッチが得られる。湿気硬化性樹脂とともに使用する場合、バイモーダルフィラーを有するマスターバッチを使用することで、ユニモーダルフィラーを使用する場合よりも高い%値の湿気硬化性樹脂を有する組成物を調製することができ、向上した難燃性も得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年9月28日に出願された米国仮出願第60/975,871号の利益を主張し、この出願全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に難燃性ポリマーに関し、特により高レベルの無機フィラーを含有するそのようなポリマーに関する。
【背景技術】
【0003】
ポリマーを難燃性にするために無機フィラーが頻繁に使用されている。しかし、十分な難燃性をポリマーに付与するために必要な無機フィラーの量のために、加工が困難になっている。さらに、これらのフィラーの多くは無機水和物である。このような無機水和物は、保管中に湿気硬化性樹脂と反応することがあり、それによってこのような樹脂の貯蔵寿命が限定される。
【0004】
後に湿気硬化性樹脂と同時押出されるマスターバッチ中にフィラーを充填する方法が、自動車配線用途に適合させるために使用可能な湿気硬化性組成物を得るために使用されている。この方法によって、湿気硬化性樹脂及び水和無機フィラー組成物が早期に架橋するという貯蔵安定性の問題が軽減された。マスターバッチ法の問題の1つは、十分な架橋性を有しながら十分な難燃性を実現することであった。架橋性は、組成物に加えられる湿気硬化性樹脂の量によって制限される。しかし、より多くの量の湿気硬化性樹脂を使用して同時押出すると、最終組成物中の難燃剤の量が減少する。
【0005】
従って、特に難燃性ポリマーを必要とする用途、例えば自動車の配線及びケーブルの場合に、高いフィラー含有率、及び容易な加工性を有する湿気硬化性樹脂が依然として必要とされていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、バイモーダル粒度分布を有するフィラー系を使用することでポリマー組成物の難燃性を改善する。さらなる利点としては、改善された加工性、及び改善された熱物理的性質が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、本発明は、難燃性組成物の製造方法であって、マスターバッチを少なくとも1つのポリマー樹脂とともに同時押出するステップを含み、このマスターバッチが、マスターバッチの全重量を基準にして少なくとも約70重量%のバイモーダルフィラーを含む、方法である。
【0008】
別の一実施形態では、本発明は、難燃性湿気硬化性組成物を製造するための中間体であって、ポリマー樹脂と、全マスターバッチの重量を基準にして少なくとも約70重量%のバイモーダルフィラーとを含むマスターバッチ組成物を含む、中間体に関する。
【0009】
本発明は、本発明の方法によって製造された組成物、特に物品が絶縁ワイヤ又はケーブルである場合のそのような組成物から製造された物品も含んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、バイモーダルフィラーを1つ又はそれ以上のベースポリマー樹脂と混合することによって、十分な量の無機フィラーを有するポリマー組成物を提供する。
【0011】
本明細書において使用される用語「バイモーダル」は、粒度分布(PSD)曲線が2つのピークを示し、一方のピークが、他方のピークに対してハンプ、ショルダー、又はテールとしても存在し得ることを意味する。バイモーダルPSD曲線は、2つの別々のPSD曲線にデコンボリューションすることができる。バイモーダルPSD曲線のデコンボリューションは、任意の好都合な周知のアルゴリズムによって行うことができるが、典型的には適切なコンピューターソフトウェアプログラムによって行われる。
【0012】
フィラー組成物の粒度分布のバイモーダル性は、2つの別個の成分のPSDの差による。言い換えると、バイモーダルフィラーは、互いに異なる平均粒径を有する少なくとも2つの成分を含み、互いに混合されるとバイモーダルPSDを有する組成物である。
【0013】
好ましくは、各成分のPSDは、単独でユニモーダルであるが、平均粒径が互いに異なり、そのため混合すると、得られる組成物は全体的にバイモーダル分布を有する。比較例の全体のPSDに関連して、又は本発明のフィラー組成物の1成分のPSDに関連して本明細書において使用される用語「ユニモーダル」は、そのPSD曲線が複数成分を実質的に示さないことを意味する(すなわち、ハンプ、ショルダー、及びテールが存在しない、又はPSD曲線中で実質的に認識できない)。
【0014】
本発明のフィラーは、それぞれが少なくとも約10重量パーセント(重量%)、好ましくは少なくとも約20重量%、より好ましくは少なくとも約30重量のフィラーを表す少なくとも2つの別個のPSD曲線にデコンボリューション可能なバイモーダル粒度分布曲線を有する。ある実施形態では、「バイモーダルPSD曲線」は、2つを超えるピークに適合させるために自由にデコンボリューションすることができる。このようなマルチモーダルフィラーの場合、マルチモーダルPSD曲線は、上記範囲内となる少なくとも2つの別個のPSD曲線を有するようにデコンボリューションされる。
【0015】
典型的には、バイモーダルフィラーは、異なる粒径を有する2つの別個の成分を含む。これらの成分は、熱可塑性系、過酸化物系、湿気硬化系、及び放射線硬化系の難燃性のために使用される任意の無機フィラーであってよい。ある実施形態では、2つの別個の成分が、異なる平均粒径を有する同じ材料の2つのグレードであってよい。典型的な無機難燃性フィラーとしては、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、スズ、モリブデン、及びビスマスを含有する金属酸化物及び/又は水酸化物が挙げられる。別の難燃性フィラーしては、タルク、炭酸カルシウム、有機クレイ、ガラス繊維、マーブルダスト、セメントダスト、長石、シリカ又はガラス、ヒュームドシリカ、シリケート、アルミナ、種々のリン化合物、臭化アンモニウム、三酸化アンチモン、三酸化アンチモン、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、硫酸バリウム、シリコーン類、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、酸化チタン類、ガラスマイクロスフィア、チョーク、マイカ、クレイ類、ウォラストナイト、八モリブデン酸アンモニウム、膨張性化合物、膨張性黒鉛、及びそれらの混合物が挙げられる。本発明のフィラーは、種々の表面コーティング又は処理剤、例えばシラン類、脂肪酸類などを含有することができる。
【0016】
一実施形態では、それぞれが異なる平均粒径を有し実質的にユニモーダルの粒度分布を有する2つの成分を混合することによって、用途に最適な比率を有するバイモーダルフィラーを得ることができる。大きい方の平均粒径と小さい方の平均粒径との比は、典型的には、約2.5:1〜約7:1或いはそれを超える範囲内とすることができる。一般に、より大きな比の場合に非常に良好な結果が得られると予想されるが、実際的に考慮するとより小さな比で使用することが必要となる場合がある。例えば、多くのフィラーは約1ミクロンの平均粒径を有し、その場合、第2の成分が約0.15ミクロンの平均粒径を有することが必要となる。0.15の粒径範囲内で市販される材料は少ないが、約0.2〜約0.4ミクロンの範囲内のフィラーはより多く市販されている。或いは、大きい比は、大きな粒径の成分としてより大きな平均粒径、例えば、1.5ミクロンを有するフィラーとして使用することによって実現することができる。
【0017】
より具体的な一実施形態では、バイモーダルフィラーは、三水酸化アルミニウム(ATH)と炭酸カルシウムとの混合物である。ATHと炭酸カルシウムとの混合物中、ATHは、混合物の全重量を基準として、約30〜約90重量%、好ましくは約50〜約80重量%、より好ましくは約60〜約70重量%を構成する。ATHの好適なグレードとしては、例えば、1.8ミクロンの公称粒径及び4m/gの表面積を有するMARTINAL(登録商標)OL−104/LE、又は1.1ミクロンの公称粒径及び4.5m/gの表面積を有するAlmatis HYDRAL(登録商標)PGAが挙げられる。
【0018】
別の特定の一実施形態では、前述の実施形態中のATHを別の金属水酸化物、例えば水酸化マグネシウムで置き換えることができる。
【0019】
バイモーダルフィラーを少なくとも1つのポリマー樹脂と混合することで、高充填マスターバッチが形成される。マスターバッチは、任意の好都合な溶融配合方法によって形成することができる。マスターバッチは、最終的には少なくとも1つのベースポリマー樹脂と混合される。従って、マスターバッチ樹脂は、ベース樹脂と相溶性となるべきであるか、或いは相溶化剤を使用すべきである。マスターバッチ樹脂は十分高いメルトインデックスも有するべきであり、それによって高充填マスターバッチが押出機又は溶融ミキサーで溶融加工可能となる。このプロセスに有用な溶融ミキサーとしては、内部ミキサー(例えば、Banbury製のミキサー)又は同時混練ミキサー(例えば、Bussミキサー)が挙げられる。好ましくは、マスターバッチ中に使用される樹脂によって、最終製品を製造するために同時押出される樹脂のレオロジーと類似のレオロジーがマスターバッチに付与される。ポリオレフィンベース樹脂とともに使用すると好適なマスターバッチ樹脂の1つは、約30のメルトインデックスを有するLLDPE樹脂である。マスターバッチは、マスターバッチの全重量を基準にして少なくとも約70重量%、より好ましくは少なくとも約85重量%のフィラーを含むべきである。
【0020】
高充填マスターバッチをベースポリマー樹脂とともに同時押出又は溶融混合することで、高充填難燃性組成物が形成される。このような同時押出及び溶融混合方法は、当分野で長い間周知である。
【0021】
ベースポリマー樹脂は、任意の熱可塑性、過酸化物架橋性、放射線硬化性、又は湿気架橋性のポリマーであってもよい。このようなポリマーの非限定的な例としては、ポリオレフィン(例えば国際公開第2006026256号に列挙されているもの)、ポリアミド、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、或いは、シラン官能基、エポキシ官能基、又は水の存在下で反応してポリマー樹脂を架橋させる他の官能基をさらに含むようなポリマーが挙げられる。本発明は、湿気架橋性官能基を有するポリマーを使用すると特に好都合となり得る。
【0022】
シラン官能基を有する湿気硬化性ポリマーは当分野において周知である。このようなポリマーは、ビニルシランモノマーとの共重合によって、又はシラン含有分子をポリマー鎖の主鎖にグラフトする多くの方法の1つによってのいずれかで製造することができる。このような技術の例は、米国特許第3,646,155号、第6,420,485号、第6,331,597号、第3,225,018号、又は第4,574,133号に開示されており、これらすべてが参照により本明細書に組み込まれる。シラン官能基を有するポリマーは市販もされており、例えば、Dow Chemical Co.より入手可能なSi−Link(商標)エチレン−ビニルトリメトキシシランコポリマーが挙げられる。
【0023】
本発明のシリル化コポリマーは、好ましくは縮合触媒の存在下で、水(水分)に接触又は曝露することによって硬化させることができる。好適な触媒としては、金属カルボキシレート、例えばジブチルスズジラウレート、オクタン酸第一スズ、酢酸第一スズ、ナフテン酸鉛、及びオクタン酸亜鉛;有機金属化合物、例えばチタンエステル及びキレート、例えばチタン酸テトラブチル;有機塩基、例えばエチルアミン、ヘキシルアミン、及びピペリジン;並びに酸、例えば無機酸及び脂肪酸が挙げられる。好ましい触媒は、有機スズ化合物、例えばジブチルスズジラウレート、ジブチルジメトキシスズ、ジブチルスズビス(2,4−ペンタンジオネート)、及びオクタン酸第一スズである。シリル化コポリマーの硬化に十分な触媒量は、一般に、選択される個別の種類に依存するが、好ましくは、グラフトコポリマー100重量部当たり約0.1〜10重量部の範囲である。
【0024】
マスターバッチの同時押出は、湿気硬化性ベースポリマー樹脂と併用すると特に有用である。難燃性フィラーを含有するマスターバッチは、湿気硬化性樹脂とともに使用されることが多いが、その理由は、多くのフィラー、特に金属水酸化物は、湿気硬化性樹脂と反応して、樹脂の早期の架橋を引き起こし、樹脂の貯蔵寿命を短縮するからである。しかし、最終組成物において許容される難燃性を実現するための全充填量の要求は、マスターバッチ法で要求される全フィラー量に対して大きな負担となる。バイモーダルフィラー混合物の使用によって、マスターバッチ中により多くのフィラーを充填することができ、そのためより高い含有率の湿気硬化性樹脂と同時押出することができる。最終組成物は、より高い充填量のマスターバッチを多くは必要とせず、そのため、より多くの硬化性樹脂が存在するためにより高い架橋密度が得られる。より高い架橋密度のために、熱物理的性質において、例えば150℃における熱間変形などの改善が得られる。
【0025】
バイモーダルフィラーの概念は、非湿気硬化系、例えば、熱可塑性、過酸化物、及び放射線硬化系においても有用である。これらの系では、高充填マスターバッチを依然として使用できるが、必ずしも必要ではない場合もある。むしろ、バイモーダルフィラーをベースポリマー樹脂中に直接溶融配合して、バイモーダル混合物を含む最終組成物を得ることができる。マスターバッチ法を使用しても使用しなくても、結果として得られる最終組成物は、改善された難燃性の利点を依然として有する。
【0026】
マスターバッチ及び/又はベースポリマー樹脂のいずれかは、他の添加剤、例えば酸化防止剤、表面処理剤、架橋触媒、又は追加の難燃剤を含有することができる。このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール類、例えばCibaSpecialty Chemicalsの登録商標であるIRGANOX(商標)1010)、ホスフィット類(例えば、CibaSpecialty Chemicalsの登録商標であるIRGAFOS(商標)168)、UV吸収剤、粘着性添加剤(cling additive)、光安定剤(例えばヒンダードアミン類)、可塑剤(例えばジオクチルフタレート又はエポキシ化大豆油)、熱安定剤、離型剤、粘着付与剤(例えば炭化水素粘着付与剤)、ワックス(例えばポリエチレンワックス)、加工助剤(例えば、油、有機酸、例えばステアリン酸、有機酸金属塩)、架橋剤(例えば、過酸化物、フリーラジカル開始剤、又はシラン類)、湿気硬化触媒(例えばジブチルスズジラウレート又はジスタノキサン類)、本発明の組成物の所望の物理的又は機械的性質を妨害しない程度の着色剤又は顔料、並びに他の難燃性添加剤、例えばハロゲン化有機化合物を挙げることができる。ハロゲン化炭化水素、例えば塩素化パラフィン、ハロゲン化芳香族化合物、例えばペンタブロモトルエン、デカブロモジフェニルオキシド、デカブロモジフェニルエタン、エチレン−ビス(テトラブロモフタルイミド)、DECHLORANE PLUS(商標)、及びその他のハロゲン含有難燃剤を含むハロゲン化有機化合物。当業者であれば、組成物の所望の性能に依存して適切なハロゲン剤を理解し選択するであろう。上記添加剤は、当業者に公知の機能的に同等の量で使用され、一般に組成物の全重量を基準にして最大約65重量%の量である。
【0027】
本発明の組成物は、当分野で公知の任意の好適な手段によって二次加工品に加工することができる。例えば、本発明の組成物は、公知の方法、例えばカレンダー加工、ブローイング、キャスティング、又は(同時)押出プロセスによって、フィルム又はシート、又は多層構造の1つ以上の層に加工することができる。射出成形、圧縮成形、押出成形、又はブロー成形による部品を、本発明の組成物から製造することもできる。或いは、本発明の組成物はフォーム又は線維に加工することができる。特に、本発明の組成物は、ケーブル又はワイヤのジャケットの製造に有用である。
【実施例】
【0028】
表1に示す処方を使用して、3つのマスターバッチA、B、及びCを作製した。マスターバッチAは、Almatisより現在入手可能であり、1.1ミクロンの公称粒径及び4.5m/gの表面積を有する三水酸化アルミニウムであるAlcoa PGA SDを70重量%含む。マスターバッチBは、1.8ミクロンの公称粒径及び4m/gの表面積を有する三水酸化アルミニウムであるMARTINALOL−104/LEを70重量%含む。マスターバッチCは、バイモーダルフィラーを85重量%含む。このバイモーダルフィラーは、約2:1の重量比のMARTINAL OL−104/LE ATHと、Specialty Mineralsより販売され0.07ミクロンの粒径及び23m/gの表面積を有する沈降炭酸カルシウムであるMULTIFEX−MMとであった。すべてのマスターバッチは、酸化防止剤のジステアリルチオジプロプリオネート(DSTDP)及びIRGANOX(商標)1010FFを含み、Dow Chemical Co.より入手可能な0.902g/cmの公称密度を有するメルトインデックス30g/10分のポリエチレン中に配合した。配合温度及びトルクも表1に示している。
【0029】
70重量%フィラーのATHのマスターバッチ、及びATH:CaCOの比が約2:1であるATH及びCaCOのバイモーダルフィラー混合物を使用して製造した85重量%フィラーのマスターバッチ。15重量%の追加のフィラーを有することを除けば、マスターバッチC(85重量%フィラー)のトルク値はマスターバッチA(70重量%フィラー)と同様であった。
【0030】
これらのマスターバッチを、メルトインデックス(MI)が1.5g/10分のエチレン−コ−ビニルトリメトキシシラン(VTMS)コポリマーであって1.5重量% VTMSを含有し、Dow Chemical Co.よりSI−LINK(商標)として販売されるコポリマー、及び触媒マスターバッチとともに同時押出して、50重量%フィラーを有する組成物を得た。これより多いフィラーのマスターバッチによって、39.2%のVTMSコポリマーを混入することができ(実施例1)、一方、わずか26.8%のVTMSコポリマーをより少ないフィラーのマスターバッチ(CS1及びCS2)と押出することができる。表2を参照されたい。絶縁ワイヤを製造した(18AWG上に全直径78ミル).このワイヤは、PE計量スクリューを取り付けた3/4インチBrabender押出機を使用して製造した。バレルゾーン上で130C/150C/170℃の温度プロファイルを使用し、ダイ温度設定値は170℃とした。内径0.053インチ及び外形0.076インチのダイを使用して、厚さ16ミルのジャケットを18AWG標準銅線上に作製した。得られた絶縁ワイヤを、90℃の水浴中で4時間硬化させた。バイモーダルフィラーを含有するフィラーマスターバッチを使用して作製した絶縁ワイヤ(実施例1)は、デカリン抽出物がより少なく、150℃でUL−44変形を示した。この系(実施例1)がより多くの架橋性樹脂を含有するため、この結果は予想されていた。予想外にも、J−1128及びMS−8288によって測定した燃焼性能は、100%ATHである他のフィラー系(CS1及びCS2)と比較するとフィラー系の33%が受動的難燃剤(炭酸カルシウム)であるという事実にもかかわらず、バイモーダル粒度分布を有する配合物(実施例1)を有する配合物で最良であった。
【表1】


【表2】

【0031】
法律に従って、本発明を、構造的及び方法的特徴に関して多かれ少なかれ具体的に説明してきた。しかし、本明細書に開示される手段は、本発明を実施するための好ましい形態を含むので、本発明がこれらの提示し説明してきた具体的特徴に限定されるものではないことを理解されたい。従って本発明は、均等論により適切に解釈される添付の特許請求の範囲の適切な範囲内の任意の本発明の形態又は修正において請求される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性組成物の製造方法であって、マスターバッチを少なくとも1つのポリマー樹脂とともに同時押出するステップを含み、前記マスターバッチが、マスターバッチの全重量を基準にして少なくとも約70重量%のバイモーダルフィラーを含む、方法。
【請求項2】
前記マスターバッチが、マスターバッチの全重量を基準にして少なくとも約85重量%のバイモーダルフィラーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記バイモーダルフィラーが2つの別個のピークを有する粒度分布を有し、各ピークが、前記バイモーダルフィラーの少なくとも10重量%を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
各ピークが、前記バイモーダルフィラーの少なくとも20重量%を表す、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各ピークが、前記バイモーダルフィラーの少なくとも30重量%を表す、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記フィラーが少なくとも1つの難燃剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記難燃剤が金属水和物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記バイモーダルフィラーが三水酸化アルミニウム及び炭酸カルシウムを含み、前記三水酸化アルミニウム及び前記炭酸カルシウムのそれぞれが異なる粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記三水酸化アルミニウムが、前記バイモーダルフィラーの約30〜約90重量%を構成する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記三水酸化アルミニウムが、前記バイモーダルフィラーの約50重量%〜約80重量%を構成する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記三水酸化アルミニウムが、前記バイモーダルフィラーの約60重量%〜約70重量%を構成する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記バイモーダルフィラーが水酸化マグネシウム及び炭酸カルシウムを含み、前記水酸化マグネシウム及び前記炭酸カルシウムのそれぞれが異なる粒度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記水酸化マグネシウムが、前記バイモーダルフィラーの約30〜約90重量%を構成する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記水酸化マグネシウムが、前記バイモーダルフィラーの約50重量%〜約80重量%を構成する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記水酸化マグネシウムが、前記バイモーダルフィラーの約60重量%〜約70重量%を構成する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマー樹脂が、熱可塑性、過酸化物架橋性、放射線硬化性、又は湿気架橋性のポリマー樹脂の少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマー樹脂が、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニルの少なくとも1つである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマー樹脂が湿気硬化性である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記湿気硬化性樹脂がシラン官能基を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記マスターバッチが、少なくとも1つのポリマー樹脂とともに、少なくとも50%バイモーダルフィラーを含む難燃性組成物が得られるのに十分な比率で同時押出される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法によって製造された組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の組成物から製造された物品。
【請求項23】
絶縁ワイヤ又はケーブルである、請求項22に記載の物品。
【請求項24】
請求項8に記載の方法によって製造された組成物。
【請求項25】
請求項24に記載の組成物から製造された物品。
【請求項26】
絶縁ワイヤ又はケーブルである、請求項25に記載の物品。
【請求項27】
難燃性湿気硬化性組成物を製造するための中間体であって、ポリマー樹脂と、全マスターバッチの重量の少なくとも約70重量%のバイモーダルフィラーとを含むマスターバッチ組成物を含む、中間体。
【請求項28】
前記バイモーダルフィラーが、マスターバッチの全重量を基準にして少なくとも85重量%の量で存在する、請求項27に記載の中間体。
【請求項29】
前記フィラーが少なくとも1つの難燃剤を含む、請求項27に記載のマスターバッチ。
【請求項30】
前記難燃剤が少なくとも1つの金属水和物である、請求項29に記載の中間体。
【請求項31】
前記バイモーダルフィラーが三水酸化アルミニウム及び炭酸カルシウムの混合物であり、前記三水酸化アルミニウム及び前記炭酸カルシウムのそれぞれが異なる粒径を有する、請求項27に記載の中間体。
【請求項32】
前記三水酸化アルミニウムが、前記混合物の約30〜約90重量%を構成する、請求項31に記載の中間体。
【請求項33】
前記三水酸化アルミニウムが、全混合物の約50〜約80重量%を構成する、請求項31に記載の中間体。
【請求項34】
前記三水酸化アルミニウムが、前記混合物の全重量を基準にして約60〜約70重量%を構成する、請求項31に記載の中間体。

【公表番号】特表2011−501766(P2011−501766A)
【公表日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527055(P2010−527055)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/077063
【国際公開番号】WO2009/045760
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(591123001)ユニオン カーバイド ケミカルズ アンド プラスティックス テクノロジー エルエルシー (85)
【Fターム(参考)】