説明

難燃性エラストマー

【構成】 主剤(ヒマシ油と4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとから誘導されるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー)と硬化剤[ヒマシ油と水酸化アルミニウムとトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートとを混練りしたもの]とからなる難燃性エラストマー。
【効果】 従来のものに比べ、難燃性、作業性、電気特性および機械強度が良好である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、難燃性エラストマーに関する。
【0002】
【従来の技術】電気絶縁用ポツテイング剤、シーラント、電気製品用部材、建築用部材などに使用されるエラストマーは、火災対策として難燃グレードの使用が一部で義務づけられている。このため難燃化方法として、ウレタン樹脂に水和アルミナと水酸化マグネシウムを混練りして難燃化する方法(特公昭57−5808号公報)、ウレタン樹脂に水酸化アルミニウムと赤リンとトリクレジルホスフエートを併用添加して難燃化する方法(特公平2ー34964号公報)、ハロゲン化フェノールと金属酸化物および/または金属水酸化物を併用する方法(特開昭60−147426号公報)などが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、水和アルミナと水酸化マグネシウムを混練りした難燃化ウレタン樹脂の場合は、難燃性の指標である酸素指数を高くするには無機粉末難燃剤を多量に使用しなければならないため高粘度となり作業性が悪く、二液常温硬化型エラストマーには使用できないという問題があった。水酸化アルミニウムと赤リンとトリクレジルホスフエートを併用添加した難燃化ウレタン樹脂の場合は、酸素指数が低いという問題や誘電正接が高いという問題があった。ハロゲン化フェノールと金属酸化物および/または金属水酸化物を併用添加した難燃化ウレタン樹脂の場合は、酸素指数が低いという問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、酸素指数、機械強度、電気絶縁性、誘電正接などの電気特性や作業性の良好な難燃性エラストマーを得ることを目的に鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、エラストマーと難燃剤からなる難燃性エラストマーにおいて、該難燃剤が、金属水酸化物(A)および/または金属炭酸化物(B)とハロゲン含有燐酸エステル(C)とからなることを特徴とする難燃性エラストマーである。
【0005】本発明において、難燃剤を構成する金属水酸化物(A)としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウムなどが挙げられる。金属炭酸化物(B)としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ニツケル、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどが挙げられる。ハロゲン含有燐酸エステル系難燃剤(C)としては、トリスクロロエチルフォスフェート、トリスジクロロプロピルフォスフェート、トリスクロロプロピルフォスフェート、トリス(トリブロモフェニル)フォスフェート、トリスジブロモプロピルフォスフェート、トリス(ジブロモフェニルフェニル)フォスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)フォスフェートなどが挙げられる。
【0006】難燃剤の融点は、通常−30℃以上であるが、好ましくは50℃以上である。融点が低く常温で液状のものは、エラストマーを可塑化するため機械強度を低下させたり誘電正接を高くするので添加量に注意を要するが、融点が50℃以上であれば機械強度や電気特性値に対して悪影響をおよばさないため好ましい。
【0007】難燃剤の配合量は、通常、エラストマー100重量部に対して、(A)または(B)が1〜100重量部、(C)が1〜50重量部である。
【0008】本発明における難燃剤と共に、必要によりその他の難燃剤を併用してもよい。その他の難燃剤としては、活性水素含有難燃剤[ジ(イソプロピル)N,Nービス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフェート、臭素化ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物など]、臭素化ビスフェノールA、尿素、尿素誘導体(尿素とホルマリンの反応物など)、チオ尿素、メラミン、メラミン誘導体(メラミンとホルマリンの反応物など)、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化亜鉛、ジンクボレートなどが挙げられる。
【0009】本発明におけるエラストマーとしては、ウレタン樹脂(熱可塑性ウレタンエラストマー、二液硬化型ウレタンエラストマー、一液硬化型ウレタンエラストマーなど)、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン、メタクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂などが挙げられる。これらのうち特に好ましいものは二液硬化型ウレタンエラストマーである。
【0010】二液硬化型ウレタンエラストマーとしては、有機ポリイソシアネート化合物(1)を主成分とする主剤(D)と、活性水素含有化合物(2)を主成分とする硬化剤(E)からなるものが挙げられる。有機ポリイソシアネート化合物(1)としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート(a)、脂環式ポリイソシアネート(b)、芳香脂肪族ポリイソシアネート(c)、芳香族ポリイソシアネート(d)およびこれらのポリイソシアネートの変性物(e)が挙げられる。
【0011】脂肪族ポリイソシアネート(a)の具体例としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネートなどがあげられる。
【0012】脂環式ポリイソシアネート(b)の具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’ージイソシアネート(水添MDI)、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート(水添TDI)、1,4−ビス(2−イソシアネートエチル)シクロヘキサンなどがあげられる。
【0013】芳香脂肪族ポリイソシアネ−ト(c)の具体例としては、p−キシレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0014】芳香族ポリイソシアネート(d)の具体例としては、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン−2,4’−および/または4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、o−トリジンジイソシアネート、粗製TDI、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(粗製MDI)などが挙げられる。
【0015】ポリイソシアネートの変性物(e)としては、上記(a)〜(d)にカルボジイミド基、ウレチジオン基、ウレトイミン基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基、ウレタン基などを導入した変性物などが挙げられる。該(e)の具体例としては、例えば、活性水素含有化合物(2)と前記(a)〜(d)のポリイソシアネートとから誘導される末端がイソシアネート基であるウレタンプレポリマー(ヒマシ油と4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとから誘導されたウレタンプレポリマー、ビスフェノール−Aにプロピレンオキサイドを付加した分子量600のポリオールとイソホロンジイソシアネートとから誘導されたウレタンプレポリマーなど)、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。以上有機ポリイソシアネート化合物として例示したものは、2種以上の混合物でも良い。(a)〜(e)のうち好ましいものは、(b)、(c)、(d)および(e)である。
【0016】活性水素含有化合物(2)としては、多価アルコール類(イ)、ポリオキシアルキレンポリオール(ロ)、ポリエステルポリオール(ハ)、ポリオレフィンポリオール(ニ)、アクリルポリオール(ホ)、ヒマシ油系ポリオール(ヘ)、重合体ポリオール(ト)、有機アミン化合物(チ)などがあげられる。
【0017】多価アルコール類(イ)の具体例としては、脂肪族2価アルコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタメチレンジオールなど)、環状基を有する低分子ジオール類[1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、m−およびp−キシリレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなど]、3価アルコール類(グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなど)、四官能以上の多価アルコール類(ソルビトール、シュ−クローズなど)、アルカノールアミン類(トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなど)などが挙げられる。
【0018】ポリオキシアルキレンポリオール(ロ)としては、活性水素含有化合物[多価アルコール類(前記に例示したもの)、低分子アミン類(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの低分子ポリアミンや、n−ブチルアミン、ステアリルアミンなどの低分子モノアミン)、フェノール類(ハイドロキノン、ビスフェノールAなど)など]に、アルキレンオキサイド(炭素数2〜4のアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドおよびこれらの併用)を付加(併用の場合、ブロックでもランダム付加でもよい)したものおよびポリオキシアルキレンポリオールとハロゲン化アルキレン(例えば、ブロモクロロメタン、ジブロモエタンなど)とから誘導されるポリオールなどが挙げられる。ポリオキシアルキレンポリオール(ロ)の具体例としては、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシプロピレンテトラオール、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド6モル付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加物とブロモクロロメタンとで平均分子量1200にジャンプしたもの、ポリオキシテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0019】ポリエステルポリオール(ハ)としては、前記に例示した多価アルコール類(イ)とジカルボン酸類とを反応させて得られる縮合ポリエステルポリオール、ラクトンの開環重合により得られるポリラクトンポリオール、エチレンカーボネートと1,6−ヘキサンジオールの反応により得られるポリカーボネートポリオールなどが含まれる。
【0020】縮合ポリエステルポリオールを構成するジカルボン酸類としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸など)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸など)、これらジカルボン酸の無水物、低級アルキル(C1〜C4)エステルもしくはハライド(クロライドなど)、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。ラクトンとしては、例えばε-カプロラクトンが挙げられる。
【0021】これらのポリエステルポリオール(ハ)の具体例としては、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリエチレンプロピレンアジペート、ポリエチレンブチレンアジペート、ポリブチレンヘキサメチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペート、ポリエチレンアゼレート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンアゼレート、ポリブチレンセバケート、ポリエチレンテレフタレ−ト等の縮合ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオールなどが挙げられる。
【0022】ポリオレフィンポリオール(ニ)の具体例としては、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなどが挙げられる。
【0023】アクリルポリオール(ホ)としては、ヒドロキシル基含有エチレン性不飽和単量体[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなど]とそれ以外の単量体[II](例えば特開平4−292683号公報明細書に記載のエチレン性不飽和単量体)との共重合物などが挙げられる。該(ホ)の具体例としては、ヒドロキシエチルアクリレートとエチルアクリレートの共重合物、ヒドロキシエチルアクリレートとエチルアクリレートとスチレンの共重合物などが挙げられる。
【0024】ヒマシ油系ポリオール(ヘ)としては、例えば、ヒマシ油、ヒマシ油誘導体[ヒマシ油脂肪酸と多価アルコール(イ)やポリオキシアルキレンポリオールとのポリエステルポリオール(ヒマシ油脂肪酸のモノ−またはジグリセライド、ヒマシ油脂肪酸とトリメチロールプロパンとのモノ−、ジ−またはトリエステル、ヒマシ油脂肪酸とポリオキシプロピレングリコールとのモノ−またはジエステルなど)、ヒマシ油にアルキレンオキサイド(炭素数2〜4)を付加したもの、ヒマシ油とジフェニルメタンジイソシアネートとから誘導された水酸基末端プレポリマーなど]およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0025】重合体ポリオール(ト)としては、(ロ)〜(ヘ)の項で例示した各ポリオール[I]中で、前記エチレン性不飽和単量体[II]を重合して得られる重合体ポリオールなどが挙げられる。重合体ポリオール(ト)を構成するエチレン性不飽和単量体[II]の含量は、通常0.1〜90重量%、好ましくは5〜80重量%である。重合体ポリオール(ト)の製造法としては、例えば、ポリオール[I]中でエチレン性不飽和単量体[II]を重合開始剤の存在下に重合させる方法(米国特許第3383351号明細書、特公昭39ー24737号公報、特公昭47−47999号公報、特開昭50−15894号公報など)が挙げられる。
【0026】有機アミン化合物(チ)としては、■炭素数2〜6のアルキレンジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど);■ポリアルキレン(炭素数2〜6)ポリアミン[ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミンなど];■脂環式または複素環式ポリアミン類(炭素数4〜15)[N−アミノエチルピペラジン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、水添メチレンジアニリンなど];■芳香環を有する脂肪族ポリアミン類(炭素数8〜15)[キシレンジアミン、テトラクロル−p−キシレンジアミンなど];■芳香族ポリアミン類(炭素数6〜20)[フェニレンジアミン、トルエンジアミン、メチレンジアニリン、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、チオジアニリン、メチレンビス(o−クロロアニリン)、m−アミノベンジルアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタンなど];■ポリオキシアルキレンポリアミン(ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミンなど)などが挙げられる。以上活性水素含有化合物(2)として例示したものは、2種以上の混合物でも良い。
【0027】活性水素含有化合物(2)の活性水素当量は、通常31〜10,000、好ましくは31〜5,000である。官能基数は、通常2〜10、好ましくは2〜8である。
【0028】本発明の難燃性エラストマーには、必要により触媒、充填剤、可塑剤、老化防止剤、溶媒などを含有させても良い。触媒としては、ジブチルチンジラウレート、アルキルチタン酸塩、有機珪素チタン酸塩、スタナスオクトエート、オクチル酸鉛、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ジブチル錫ジオルソフェニルフェノキサイト、錫オキサイドとエステル化合物(ジオクチルフタレートなど)の反応生成物などの金属系触媒、モノアミン類[トリエチルアミンなど]、ジアミン類[N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなど]、トリアミン類[N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンなど]、環状アミン類[トリエチレンジアミンなど]などのアミン系触媒などが挙げられる。これらの触媒は、2種以上を併用して使用しても良い。充填剤としては、タルク、雲母、カーボンブラック、酸化チタン、微粉末シリカなどが挙げられる。可塑剤としては、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、塩素化パラフィン、石油樹脂などが挙げられる。老化防止剤としては、ヒンダードアミン系[4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(三共製「サノールLS−744」)など]、ヒンダードフェノール系[オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(日本チバガイギー製「イルガノックス1076」)など]、ベンゾフェノン系(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなど)、ベンゾトリアゾール系[2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールなど]などが挙げられる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジクロロメタンなどが挙げられる。
【0029】難燃性エラストマーの製法は、通常の方法でよく、熱可塑性エラストマーと難燃剤をエラストマーの軟化温度以上に加温してエクスツルーダーやプラネタリーミキサーなどで混練りしペレット化する方法や、主剤と硬化剤からなる二液硬化型ウレタンエラストマーの場合は、主剤を例えば、反応缶に有機ポリイソシアネート化合物と活性水素含有化合物を仕込み、反応温度50〜120℃で反応して製造し、硬化剤を例えば、活性水素含有化合物と難燃剤をプラネタリーミキサー等で混練りして製造する方法などが例示できる。
【0030】難燃性エラストマーの各用途への適用方法としては、難燃性エラストマーのペレットを射出成型機、押し出し成型機などで成型して部材を作り適用する方法や、二液硬化型ウレタンエラストマーの場合は、主剤と硬化剤の配合比を、通常、主剤のイソシアネート基と硬化剤の活性水素の当量比が1:(0.7〜1.5)の範囲で混合して金型やポツテイング対象物に流し込み、常温〜100℃で硬化させる方法などが例示できる。
【0031】難燃性は、JIS−K7201で判定され、酸素指数で区分される。酸素指数で表す難燃性は、通常、酸素指数21%以上を指し、通常の用途は酸素指数25〜35%が、高難燃グレードの場合は27〜35%のものが要求される。本発明の難燃性エラストマーは、難燃剤を構成する(A)および/または(B)と(C)の比率やエラストマーに対する配合量を変えることにより酸素指数を21〜40%の広い範囲でコントロールできる。本発明における難燃剤は、低粘度で作業性が良く、電気特性や機械強度を悪くせず難燃性を付与できる特徴を有し、従来の難燃剤では作業性、電気特性、機械強度などに欠点が出て酸素指数を上げることが困難であった酸素指数27%以上の難燃性を付与する場合に特に有効である。
【0032】本発明の難燃性エラストマーは、難燃性、電気絶縁性、機械強度、耐候性、耐熱性、耐水性、ムーブメント追随性、接着性などが要求される電気絶縁用ポツテイング剤、シーラント、電気製品用部材、建築用部材、接着剤、塗料などに好適である。
【0033】
【実施例】以下実施例により本発明を更に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。以下において、部は重量部、%は重量%、比は重量比を示す。なお実施例中での略記号の意味および評価試験方法は下記のとおりである。
(略記号)
C−O;分子量=1060,精製ヒマシ油,[豊国製油(株)製、商品名:ELA−DR]
BP−600;分子量600,ビスフェノール−Aのプロピレンオキサイド付加物BP−1200;ビスフェノール−Aのプロピレンオキサイド3モル付加物とブロモクロロメタンとで平均分子量を1200にジャンプしたものPT−1000;分子量1000,ポリオキシテトラメチレングリコール,[三洋化成工業(株)製、商品名:PTMG−1000]
45HT;分子量=2400,ポリブタジエンポリオール,[出光石油化学(株) 製、商品名:Poly−Bd R−45HT]
BD ;1,4−ブタンジオールMI ;2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート/4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート=50/50,[ビーエーエスエフジャパン(株)製、商品名:ルプラネートMI]
MDI;4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートMTL;カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート,[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:ミリオネートMTL]
C−301;水酸化アルミニウム,[住友化学工業(株)製、商品名:C−301]
HM ;水酸化マグネシウム,[協和化学工業(株)製、商品名:キスマ5A]
SB ;炭酸カルシウム,[白石カルシウム(株)製、商品名:ホワイトンSB]
CR−900;難燃剤,トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート,[(株)大八化学工業所製、商品名:CR−900]
PPX−33;難燃剤,トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート,[(株)大八化学工業所製、商品名:PPX−33]
TBBP;テトラブロモ・ビスフェノール−AC−83;ネオデカン酸ビスマス,[COSAN CHEMICAL CORP. 製、商品名:COSCAT T−83]
【0034】(評価試験方法)
1.難燃性;JIS−K7201に準拠。(単位=%)
2.誘電率および誘電正接;JIS−K6911に準拠。100KHzの値。
3.電気絶縁性;JIS−K6911に準拠。(単位=Ω・cm)
4.粘度;B型粘度計 (単位=cps/25℃)
【0035】製造例1〜5[主剤(D)の製造]
4ッ口コルベンに表1に各々示す有機ポリイソシアネート化合物(1)、活性水素含有化合物(2)および触媒を仕込み、90℃で5時間反応して本発明の主剤<1>〜<5>を得た。
【0036】
【表1】


【0037】製造例6〜9[硬化剤(E)の製造]
プラネタリーミキサーに表2に各々示す成分を仕込み、25℃で1時間攪拌混合して本発明の硬化剤〔1〕〜〔4〕を得た。
【0038】
【表2】


【0039】実施例1〜5表3に示す部数比の(D)および(E)を混合脱泡後、厚み3mmの金型に注型し50℃で48時間硬化させて得られた試験体を用いて難燃性、誘電率、誘電正接および電気絶縁性の試験を行った。その結果を表3に示す。
【0040】
【表3】


【0041】実施例6液温度が80℃の主剤<5>と硬化剤〔4〕を1:2の比で2軸エクスツルーダーに定量ポンプで供給し、エクスツルーダー内温度220℃、滞留時間10分の条件で反応させた後ペレット化して難燃性ウレタンエラストマーを得た。そのエラストマーを押し出し成型機で厚み3mmの金型に注入して得た試験体を用いて難燃性の試験を行った結果は30.3%であった。
【0042】実施例7ポリプロピレン[商品名:UBEポリプロJ609H、宇部興産(株)製]とCR−900とC−301を60:12:28の比で2軸エクスツルーダーに定量ポンプで供給し、エクスツルーダー内温度180℃、滞留時間3分の条件で混練りした後ペレット化して難燃性エラストマーを得た。そのエラストマーを射出成型機で厚み3mmの金型に注入して得た試験体を用いて難燃性の試験を行った結果は31.1%であった。
【0043】製造例11および12[比較の硬化剤(E)の製造]
プラネタリーミキサーに表4に各々示す成分を仕込み、25℃で1時間攪拌混合して比較の硬化剤〔5〕および〔6〕を得た。
比較例1および2表5に示す部数比の(D)および(E)を混合脱泡後、厚み3mmの金型に注型し50℃で48時間硬化させて得られた試験体を用いて難燃性、誘電率、誘電正接および電気絶縁性の試験を行った。その結果を表5に示す。
【0044】
【表4】


【0045】
【表5】


【0046】比較例3液温度が80℃の主剤<5>と硬化剤(PT−1000 398部とBD 72部とC−301 400部とHM 130部をプラネタリーミキサーで混練りしたもの)を1:2の比で2軸エクスツルーダーに定量ポンプで供給し、エクスツルーダー内温度220℃、滞留時間10分の条件で反応させた後ペレット化して難燃性ウレタンエラストマーを得た。そのエラストマーを押し出し成型機で厚み3mmの金型に注入して得た試験体を用いて難燃性の試験を行った結果は22.4%であった。
【0047】比較例4ポリプロピレン[商品名:UBEポリプロJ609H、宇部興産(株)製]とC−301とTBBPを76:7:17の比で2軸エクスツルーダーに定量ポンプで供給し、エクスツルーダー内温度180℃、滞留時間3分の条件で混練りした後ペレット化して難燃性エラストマーを得た。そのエラストマーを射出成型機で厚み3mmの金型に注入して得た試験体を用いて難燃性の試験を行った結果は25.0%であった。
【0048】
【発明の効果】本発明の難燃性エラストマーは、従来のものに比べ、難燃性、電気特性(電気絶縁性、誘電率、誘電正接など)、機械強度、耐候性、耐熱性、耐水性、ムーブメント追随性、接着性が優れている。上記効果を奏することから本発明の難燃性エラストマーは、電気絶縁用ポツテイング剤、シーラント、電気製品用部材、建築用部材、接着剤、塗料などに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 エラストマーと難燃剤からなる難燃性エラストマーにおいて、該難燃剤が、金属水酸化物(A)および/または金属炭酸化物(B)とハロゲン含有燐酸エステル(C)とからなることを特徴とする難燃性エラストマー。
【請求項2】 難燃剤の融点が、50℃以上である請求項1記載の難燃性エラストマー。
【請求項3】 ハロゲン含有燐酸エステル(C)が、ブロム含有燐酸エステルである請求項1または2記載の難燃性エラストマー。
【請求項4】 難燃性エラストマーの酸素指数が、27%以上である請求項1〜3いずれか記載の難燃性エラストマー。
【請求項5】 エラストマーが、主剤(D)と硬化剤(E)とからなる二液硬化型ウレタンエラストマーである請求項1〜4いずれか記載の難燃性エラストマー。
【請求項6】 電気絶縁用ポツテイング剤として用いられる請求項1〜5いずれか記載の難燃性エラストマー。
【請求項7】 主剤(D)および硬化剤(E)を構成する活性水素含有化合物が、ヒマシ油、ヒマシ油誘導体、ポリブタジエンポリオール、下記一般式(1)および一般式(2)で表される化合物から選ばれる1種以上である請求項5または6記載の難燃性エラストマー。一般式 H(OR)mO−Ph−X−Ph−O(RO)nH (1)
H(Z−Y−)pZ−H (2)
[式中、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、Phはフェニレン基(ハロゲンまたは炭素数1〜18のアルキル基で置換されてもよい。)、Xは−CH2−,−SO2−,−O−または−C(CH32−、Yは炭素数1〜4のアルキレン基、Zは一般式−(OR)mO−Ph−X−Ph−O(RO)n−であり、m,nおよびpは各々1〜10の整数を表す。]