説明

難燃性グリース組成物

【課題】難燃性、自己消火性及び貯蔵安定性に優れたグリース組成物を提供する。
【解決手段】基油として40℃の動粘度が1〜2000mm/sのリン含有化合物を全基油量に対し10質量%以上含有し、増ちょう剤として、(A)炭素数12〜24のヒドロキシ脂肪酸のリチウム塩と(B)リン酸類化合物リチウム塩との複合体リチウム石けんを含有することを特徴とするグリース組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用機械等の潤滑箇所へ適用できる耐火性及び貯蔵安定性に優れたグリース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機械技術が益々発展する中で、機器は高速・高温・高荷重条件下で運転されるようになってきている。したがって、このような箇所へ使用しているグリースは、劣化や異物の混入等によりグリースが軟化し、高温箇所へ垂れ落ちることを想定しなければならない。また、火元のあるような苛酷な条件下で、ころがり軸受、すべり軸受、ギヤー駆動部等へのグリース充填作業が行われるような場合もある。そこで、このような火災危険性のある箇所へ用いるグリースは、より難燃性であるとともに、例え着火したとしても継続燃焼しないこと、すなわち自己消火性に優れていることが望まれる。
【0003】
従来より、このような箇所へ用いられるグリース組成物は、鉱油を基油としたリチウム石けん、ウレア等を含有したグリースが使用されているため、これらの難燃性さらには自己消火性向上のため、添加剤の配合技術(特許文献1参照)や増ちょう剤及び基油組成の改良(特許文献2参照)などが試みられている。
また、このようなグリースは、グリースの基本性能として、貯蔵安定性にも優れていることが望ましい。
【0004】
【特許文献1】特開平8−199183号公報
【特許文献2】特開2004−67843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、着火の可能性のある種々の用途に使用でき、難燃性と自己消火性にすぐれ、さらには貯蔵安定性にも優れたグリース組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために、鋭意検討を重ねた結果、基油としてリン含有化合物を使用し、増ちょう剤として(A)炭素数12〜24のヒドロキシ脂肪酸のリチウム塩及び(B)リン酸類化合物リチウム塩からなる複合体リチウム石けん系増ちょう剤を用いることにより、難燃性、自己消火性及び貯蔵安定性に優れることを見出した。その中でも基油として式(1)で表されるリン含有化合物を用いることにより、難燃性及び自己消火性を著しく向上させることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、基油として40℃の動粘度が1〜2000mm/sのリン含有化合物を全基油量に対し10質量%以上含有し、増ちょう剤として(A)炭素数12〜24のヒドロキシ脂肪酸のリチウム塩及び(B)リン酸類化合物リチウム塩からなる複合体リチウム石けんを含有することを特徴とするグリース組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記グリース組成物において、基油としてのリン含有化合物が式(1)で表されるリン酸類化合物であるグリース組成物を提供するものである。
【0008】
(RO)(RO)(RO)P(O) (1)
(式中、R、R及びRは水素原子または炭素数1〜24の炭化水素基であり、同一であってもよいし、異なっていてもよく、aは0又は1の整数である。)
また、本発明は、上記グリース組成物において、式(1)におけるR、R及びRが炭素数1〜24の炭化水素基であり、同一であってもよいし、異なっていてもよく、aが1であるグリース組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のグリース組成物は、難燃性、自己消火性及び貯蔵安定性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のグリース組成物に含まれる成分について、以下説明する。
(1)基油
本発明のグリース組成物において、基油として使用されるリン含有化合物は、40℃の動粘度が1〜2000mm/sであり、好ましくは2〜1000mm/s、特に好ましくは5〜600mm/sである。動粘度が、小さすぎると難燃性及び自己消火性が低くなる傾向にある。動粘度が大きすぎると流動性が悪くなり、グリース本来の性能が出にくくなる傾向にある。
【0011】
基油として使用されるリン含有化合物としては、例えば、チオリン酸エステル、ジチオリン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステルの金属塩、リン酸エステル、亜リン酸エステル類等のリン酸類化合物が挙げられる。
その中でも、本発明のグリース組成物において基油として使用されるリン含有化合物としては、式(1)で表されるリン酸類化合物が好ましい。
【0012】
(RO)(RO)(RO)P(O) (1)
(式中、R、R及びRは水素原子または炭素数1〜24の炭化水素基であり、同一であってもよいし、異なっていてもよく、aは0又は1の整数である。)
式(1)において、R、R及びRは水素原子または炭素数1〜24の炭化水素基である。R、R及びRが、全て水素原子である場合は、鋼製の部材を腐食する可能性があるため、R、R及びRの少なくとも一つは炭化水素基であることが好ましく、R、R及びRの全てが炭化水素基であることがより好ましい。
【0013】
炭化水素基は、炭素数が多過ぎると、基油の流動性が低下する傾向にある。炭素数1〜24の炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜18 であり、より好ましくは2〜15であり、特に好ましくは3〜12である。R、R及びRの炭素数の合計量は、好ましくは4〜45であり、より好ましくは6〜40であり、特に好ましくは8〜35である。
炭化水素基は、芳香族炭化水素基、脂環族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基のいずれであってもよいが、好ましくは脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又はこれらを組み合わせたものであり、より好ましくは芳香族炭化水素基、又は脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基を組み合わせたものであり、特に好ましくは芳香族炭化水素基である。
【0014】
脂肪族炭化水素基は、直鎖又は分岐鎖のいずれでもよい。脂肪族炭化水素基の具体例としては、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ステアリル基、オレイル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基等が挙げられる。
また、上記式(1)中のaは0又は1の整数であるが、aが1の整数である場合が、より耐火性に優れている。
なお、基油としてのリン含有化合物には、後述する増ちょう剤のリン含有化合物は含まれない。
【0015】
本発明のグリース組成物には、基油として前記リン含有化合物に他の基油を含有させてもよい。本発明のグリース組成物において、基油としてのリン含有化合物の含有量は、全基油量に対して10質量%以上であるが、好ましくは12質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、さらに好ましくは35質量%以上であり、特に好ましくは50質量%以上である。リン含有化合物量が少なすぎると、自己消火性が得られない。
【0016】
前記リン含有化合物と組み合わせて使用される他の基油としては、通常グリースに使用される鉱油系潤滑油基油、合成系潤滑油基油又はこれらの混合系潤滑油基油などの種々の潤滑油基油が用いられる。他の基油は、40℃における動粘度の値が、1〜2000mm/sが好ましく、より好ましくは2〜1000mm/s、特に好ましくは5〜600mm/sである。動粘度が、小さすぎると自己消火性が低くなる傾向にある。動粘度が大きすぎると流動性が悪くなり、グリース本来の性能が出にくくなる傾向にある。
【0017】
鉱油系潤滑油基油としては、例えば原油の潤滑油留分を溶剤精製、水素化精製などを適宜組み合わせて精製した鉱油系潤滑油基油が挙げられる。
合成系潤滑油基油としては、例えば炭素数3〜12のα−オレフィンの重合体であるα−オレフィンオリゴマー、2−エチルヘキシルセバケート、ジオクチルセバケートを始めとするセバケート、アゼレート、アジペートなどの炭素数4〜12のジアルキルジエステル類、1−トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールと炭素数3〜12の一塩基酸から得られるエステルを始めとするポリオール類、炭素数9〜40のアルキル基を有するアルキルベンゼン類、ブチルアルコールをプロピレンオキシドと縮合させることにより得られるポリグリコールなどのポリグリコール類、約2〜5個のエーテル連鎖及び約3〜6個のフェニル基を有するポリフェニルエーテルなどのフェニルエーテル類などが挙げられる。
【0018】
上記鉱油系潤滑油基油及び合成系潤滑油基油は1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
また、基油の量は、要求特性に応じて適宜選定することができるが、基油と増ちょう剤から成るグリース組成物全量に対して通常60〜98質量%の範囲であり、好ましくは80〜95質量%の範囲である。
【0019】
(2)増ちょう剤
本発明のグリース組成物において使用される増ちょう剤は、(A)炭素数12〜24のヒドロキシ脂肪酸のリチウム塩及び(B)リン酸類化合物リチウム塩からなる複合体リチウム石けんである。
この増ちょう剤をリン含有化合物からなる基油と組み合わせることで、十分な自己消火の効果を得ることができる。また、リン含有化合物をグリースの基油に用いると、保存中にグリースのちょう度が著しく変化するなどして貯蔵安定性が悪くなることがあるが、この増ちょう剤を用いることでリン含有化合物を基油に用いたグリースの貯蔵安定性を向上することできる。
【0020】
上記増ちょう剤を構成する(A)成分の炭素数12〜24のヒドロキシ脂肪酸のリチウム塩は、直鎖または分岐鎖を有する飽和または不飽和の脂肪族モノカルボン酸のリチウム塩であり、ヒドロキシステアリン酸リチウム塩が好ましく、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム塩が特に好ましい。
炭素数12〜24のヒドロキシ脂肪酸のリチウム塩は、炭素数12〜24のヒドロキシ脂肪酸と水酸化リチウムを反応させることで得ることができる。炭素数12〜24のヒドロキシ脂肪酸は直鎖または分岐鎖の脂肪族モノカルボン酸であり、具体例としては、2−ヒドロキシテトラデカン酸、2−ヒドロキシヘキサデカン酸、11−ヒドロキシヘキサデカン酸、リシノール酸、9−ヒドロキシステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。このうち、ヒドロキシステアリン酸が好ましく、12−ヒドロキシステアリン酸が特に好ましく用いられる。
(A)成分は、1種で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
上記増ちょう剤を構成する(B)成分のリン酸類化合物リチウム塩としては、種々のリン酸類化合物のリチウム塩が使用できるが、リン酸リチウム塩、亜リン酸リチウム塩又はその混合物が好ましく挙げられる。
(B)成分のリン酸リチウム塩、亜リン酸リチウム塩又はその混合物は、下記式(2)で表されるリン酸、亜リン酸、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル等のリン酸類化合物と、水酸化リチウムとを反応させることで得ることができる。
【0022】
(RO)(RO)(RO)P(O) (2)
(式中、R、R及びRは水素原子または炭素数1〜24の炭化水素基であり、同一であってもよいし、異なっていてもよく、bは0又は1の整数である。)
式中、R、R及びRは水素原子または炭素数1〜24の炭化水素基であるが、好ましくは水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基、更に好ましくは水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基であり、特に好ましくは水素原子または炭素数1〜6の炭化水素基で、かつ、R、R及びRのうち少なくとも一つは炭素数1〜6の炭化水素基である。
【0023】
炭化水素基は、芳香族炭化水素基、脂環族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基のいずれであってもよいが、好ましくは脂肪族炭化水素基である。
、R又はRが炭化水素基である場合、その炭素数はより小さい方が好ましいが、その理由は以下の通りである。
【0024】
上記のエステルを使用してリン酸リチウム塩、亜リン酸リチウム塩またはその混合物を製造する場合、水酸化リチウムとの反応により副生成物としてアルキルアルコール又はアリルアルコールを生成する。このようなアルコールがグリースに残存したままでは自己消火性が悪くなる傾向になるため、これらのアルコールは除去する必要がある。これらのアルコールの除去は、種々の方法で行うことができるが、蒸発除去が操作が簡単で好ましい。したがって、蒸発除去のし易さから、R、R又はRの炭素数が少ないリン酸類エステル化合物を用いることが好ましい。
また、R、R及びRのうち、少なくとも一つは炭化水素基とすることで、複合体リチウム石けんをより製造し易くすることができる。この観点からは、R、R及びRの全てが炭化水素基であることがより好ましい。
さらに、式中のbについては、0又は1の整数であるが、0が特に好ましい。
(B)成分は、1種で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明のグリース組成物において使用される増ちょう剤である複合体リチウム石けんのグリース全量に対する配合量は、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜20質量%である。配合量が少なすぎるとグリース状にならずに適度なちょう度が得られない傾向にあり、多すぎると製品グリースの潤滑性が低下する傾向にある。また、(A)炭素数12〜24のヒドロキシ脂肪酸のリチウム塩と(B)リン酸類化合物リチウム塩との複合体リチウム石けんからなるが、さらなる自己消火性と貯蔵安定性の向上の観点から、(A)成分と(B)成分の比率はモル比で3:1〜3:5とすることが好ましい。
【0026】
(3)その他の成分
本発明のグリース組成物は、上記各成分の基油と増ちょう剤を配合するものであるが、必要に応じて、各種添加剤を適宜配合することができる。
添加剤としては、例えば、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリシレートなどの金属系清浄剤;アルケニルこはく酸イミド、アルケニルこはく酸イミド硼素化変性物、ベンジルアミン、アルキルポリアミンなどの分散剤、亜鉛系、硫黄系、アミン系、エステル系などの各種摩耗防止剤;ポリメタクリレート系、エチレンプロピレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体の水素化物あるいはポリイソブチレン等の各種粘度指数向上剤;2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールなどのアルキルフェノール類、4,4’−メチレンビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)などのビスフェノール類、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェノール)プロピオネートなどのフェノール系化合物、ナフチルアミン類やジアルキルジフェニルアミン類などの芳香族アミン化合物などの各種酸化防止剤;硫化オレフィン、硫化油脂、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、ヨウ素化ベンジル、フルオロアルキルポリシロキサン、ナフテン酸鉛などの極圧剤、ステアリン酸などのカルボン酸、ジカルボン酸、金属石鹸、カルボン酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールのカルボン酸部分エステルなどの各種錆止め剤;ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾールなどの各種腐食防止剤、シリコーン油などの各種消泡剤などが挙げられる。添加剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【実施例】
【0027】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0028】
(実施例1〜8、及び比較例1〜6)
実施例及び比較例では、以下に示す*1〜*12の各成分を表1〜2に示した配合量(質量部)の割合で含有させたグリース組成物を調製した。*1〜*12の内の増ちょう剤は、その増ちょう剤の原料を基油に混合して、基油中でその原料を反応させて増ちょう剤にして、結果として*1〜*12の各成分を含有するグリース組成物を調製した。なお、グリース組成物は、*1〜*12の各成分を適宜混合し、ミル処理を行ってグリース組成物中に増ちょう剤を均一に分散させ、調製した。
得られたグリース組成物は、それぞれ燃焼性試験、貯蔵安定性試験の評価を行った。
【0029】
*1:複合体リチウム石けんA
耐熱容器にパラフィン系鉱油と12−ヒドロキシステアリン酸及び亜リン酸トリブチル(式(2)中、R、R及びRは炭素数4の炭化水素基であり、bは0の整数である)を投入し、加熱する。次に、水酸化リチウム水溶液を約80℃付近で添加し、充分に反応させることにより12−ヒドロキシステアリン酸リチウム塩と亜リン酸トリリチウム塩を生成させる。その後、約230℃付近まで加熱し、ブチルアルコールを蒸発除去する。そして、半溶融させた後急冷を行うことによって、リチウムコンプレックス石けんの結晶を最適なものとし、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム塩及び亜リン酸トリリチウム塩からなる複合体リチウム石けんを基油中に均一に混合分散させたグリース組成物を調製した。
【0030】
*2:複合体リチウム石けんB
耐熱容器に表中の各基油と12−ヒドロキシステアリン酸を投入し加熱する。次に、水酸化リチウム水溶液を約80℃付近で添加し、けん化反応により12−ヒドロキシステアリン酸リチウム塩を生成させる。さらに、約90℃付近で水酸化リチウムとアゼライン酸を加え約2時間反応させ、複合体リチウム石けんを生成させる。その後、これを加熱し、半溶融させた後急冷を行うことによって、複合体リチウム石けんの結晶を最適なものとし、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム塩及びアゼライン酸リチウム塩からなる複合体リチウム石けんを基油中に均一に混合分散させたグリース組成物を調製した。
【0031】
*3:12−ヒドロキシステアリン酸リチウム塩
耐熱容器に表中の各基油と12−ヒドロキシステアリン酸リチウム塩(堺化学製;商品名「S7000H」)を投入して加熱し、約200℃付近で溶解させ、基油を添加し、冷却後、ミル処理を行うことにより12−ヒドロキシステアリン酸リチウム塩の結晶を最適なものとし、基油中に混合分散させたグリースを調製した。
【0032】
*4:脂肪族ジウレア
耐熱容器に表中の各基油とジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネートを投入し、加熱し、次に、オクチルアミンを約60℃付近で添加し、約40分間反応させ、その後、撹拌しながら170℃に加熱し、基油を添加し、冷却後、ミル処理を行うことによりジウレアの結晶を最適なものとし、基油中に混合分散させたグリース組成物を調製した。
【0033】
*5:リン含有化合物1:クレジルジフェニルフォスフェート
式(1)中、a=1、Rがクレジル基、R、Rがフェニル基である。40℃の動粘度は40mm/sである。
*6:リン含有化合物2:トリクレジルフォスフェート
式(1)中、a=1、R〜Rの全てがクレジル基である。40℃の動粘度は22mm/sである。
*7:リン含有化合物3:トリキシリルフォスフェート
式(1)中、a=1、R〜Rの全てがキシリル基である。40℃の動粘度は48mm/sである。
*8:リン含有化合物4:フェニル・イソプロピルフォスフェート
式(1)中、a=1、R〜Rは、フェニル基とイソプロピルフェニル基の混合物である。40℃の動粘度は42mm/sである。
【0034】
*9:リン含有化合物5:ブチルジフェニルフォスフェート
式(1)中、a=1、R〜Rはブチル基とフェニル基の混合物である。40℃の動粘度は39mm/sである。
*10:鉱油
40℃動粘度が100mm/sの水素化精製鉱油
*11:合成油1
40℃の動粘度が60mm/sのポリアルファオレフィン
*12:酸化防止剤(ジフェニルアミン)
【0035】
(測定方法)
燃焼性試験
内径55mm、深さ30mmの筒型の鋼製容器にグリース組成物を15g入れ、950℃に加熱した直径19.05mmの鋼球を落下しグリース組成物と接触させ、着火の有無と、着火した場合は燃焼が終了するまでの時間を測定した。評価は、以下の基準で行った。
◎:着火せず(不燃性)
○:着火するが、30秒未満で燃焼が終了(自己消火性あり)
×:着火し、30秒以上燃焼が継続(自己消火性なし)
【0036】
貯蔵安定性試験
ビーカーにグリースを20g入れ、湿度95%、温度50℃の恒温槽へ入れ、一週間静置した。評価は、試験前後の混和ちょう度の差により判定した。
◎:試験前後の不混和ちょう度の差が25未満
○:試験前後の不混和ちょう度の差が25以上、かつ50未満
×:試験前後の不混和ちょう度の差が50以上
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のグリース組成物は、種々の産業用機械等の潤滑箇所へ適用でき、特に耐火性を要求される高速・高温・高荷重条件下で運転される産業用機械等の潤滑箇所へ適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油として40℃の動粘度が1〜2000mm/sのリン含有化合物を全基油量に対し10質量%以上含有し、
増ちょう剤として(A)炭素数12〜24のヒドロキシ脂肪酸のリチウム塩及び(B)リン酸類化合物リチウム塩からなる複合体リチウム石けんを含有することを特徴とするグリース組成物。
【請求項2】
基油としてのリン含有化合物が式(1)で表されるリン酸類化合物である請求項1に記載のグリース組成物。
(RO)(RO)(RO)P(O) (1)
(式中、R、R及びRは水素原子または炭素数1〜24の炭化水素基であり、同一であってもよいし、異なっていてもよく、aは0又は1の整数である。)
【請求項3】
式(1)におけるR、R及びRが炭素数1〜24の炭化水素基であり、同一であってもよいし、異なっていてもよく、aが1である請求項3に記載のグリース組成物。

【公開番号】特開2008−239847(P2008−239847A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83916(P2007−83916)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(398053147)コスモ石油ルブリカンツ株式会社 (123)
【Fターム(参考)】