説明

難燃性シリコーンゴム

【課題】従来技術の欠点を有していない、特にケーブル絶縁材としてのシリコーンゴムおよび特に難燃性であり、かつ火災の場合に低い密度で機能の維持を可能にするケーブル絶縁材を提供する。
【解決手段】該組成物が過酸化物架橋性、付加架橋性もしくは縮合架橋性のシリコーンゴムおよび少なくとも1のロジウム化合物またはイリジウム化合物または両方の化合物の混合物を含有する。
【効果】本発明による難燃性組成物を含有するケーブルおよび異形材は機械的特性、電気的特性および耐熱老化性に関して、通常のシリコーンゴムに匹敵する特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難燃性シリコーンゴム材料の組成物および該組成物により絶縁されるケーブルおよび異形材に関する。
【背景技術】
【0002】
難燃性の組成物はDE3831478から公知であり、ここにはポリシロキサン、金属酸化物、たとえば酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、白金化合物ならびに炭素を介してケイ素に結合している塩基性窒素を有する有機ケイ素化合物を含有する組成物が記載されている。しかしこの組成物は極めて臭いが強烈であり、かつ難燃性の特性において不十分である。
【特許文献1】DE3831478
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、従来技術を改善し、かつ従来技術の欠点を克服する、特にケーブル絶縁材料としてのシリコーンゴムを提供すること、および特に難燃性であり、かつ火災の場合に低い密度で機能の維持を可能にするケーブル絶縁材としての材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題は本発明により、過酸化物架橋性、付加架橋性もしくは縮合架橋性のシリコーンゴムおよび少なくとも1のロジウム化合物またはイリジウム化合物または両方の化合物の混合物を含有する難燃性組成物により解決される。
【0005】
本発明によるシリコーンゴムは有利には過酸化物架橋性のオルガノポリシロキサン材料であり、これは有利には次の成分を含有する。
【0006】
一般式
【0007】
【化1】

[式中、
Rは同一であるか、または異なっていてもよく、かつ場合により置換された炭化水素基を表し、
rは0、1、2または3であり、かつ1.9〜2.1の平均値を有する]の単位からなるオルガノポリシロキサン。
【0008】
炭化水素基Rのための例はアルキル基、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソ−プロピル基、n−ブチル基、イソ−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソ−ペンチル基、ネオ−ペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、たとえばn−ヘキシル基、ヘプチル基、たとえばn−ヘプチル基、オクチル基、たとえばn−オクチル基およびイソ−オクチル基、たとえば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、たとえばn−ノニル基、デシル基、たとえばn−デシル基、ドデシル基、たとえばn−ドデシル基、オクタデシル基、たとえばn−オクタデシル基、シクロアルキル基、たとえばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基、アリール基、たとえばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基およびアントリル基およびフェナントリル基、アルカリール基、たとえばo−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基およびエチルフェニル基、アラルキル基、たとえばベンジル基、α−フェニルエチル基およびβ−フェニルエチル基である。
【0009】
置換された炭化水素基Rのための例は、ハロゲン化アルキル基、たとえば3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基およびペルフルオロヘキシルエチル基、ハロゲン化アリール基、たとえばp−クロロフェニル基およびp−クロロベンジル基である。
【0010】
基Rは有利には水素原子および1〜8の炭素原子を有する炭化水素基、特に有利にはメチル基である。
【0011】
基Rのための別の例は、ビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−ペンテニル基、5−ヘキセニル基、ブタジエニル基、ヘキサジエニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、エチニル基、プロパルギル基および1−プロピニル基である。
【0012】
基Rは有利には2〜8の炭素原子を有するアルケニル基、特に有利にはビニル基である。
【0013】
1〜8の炭素原子を有する、場合により置換された炭化水素基はメチル基、ビニル基、ペンチル基および3,3,3−トリフルオロプロピル基が特に有利である。
【0014】
有利には式(I)の単位からなるオルガノポリシロキサン(A)中に含有されているSi原子の少なくとも70モル%にアルキル基、特にメチル基が結合している。オルガノポリシロキサンがSi結合メチル基および/または3,3,3−トリフルオロプロピル基以外にさらにSi結合したビニル基および/またはフェニル基を有している場合、後者は有利には0.001〜30モル%の量である。
【0015】
有利にはオルガノポリシロキサン(A)は主としてジオルガノシロキサン単位からなる。オルガノポリシロキサンの末端基はトリアルキルシロキシ基、特にトリメチルシロキシ基またはジメチルビニルシロキシ基であってよい。しかし前記アルキル基の1もしくは複数はヒドロキシ基またはアルコキシ基、たとえばメトキシ基またはエトキシ基により置換されていてもよい。
【0016】
オルガノポリシロキサン(A)は、液体または高粘性の物質であってもよい。有利にはオルガノポリシロキサン(A)は25℃で10〜10mm/sの粘度を有する。
【0017】
本発明によるシリコーンゴム材料の場合、有利には架橋剤として過酸化物、たとえばジベンゾイルペルオキシド、ビス−(2,4−ジクロロベンゾイル)−ペルオキシド、ジクミルペルオキシドおよび2,5−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンならびにこれらの混合物を使用し、その際、ビス−(2,4−ジクロロベンゾイル)−ペルオキシドおよび2,5−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンが有利である。
【0018】
さらに架橋剤として1:0.4〜0.5:1の比で、有利には1:0.4の比で、有利にビス−(4−メチルベンゾイル)ペルオキシド(=PMBP)および2,5−ジメチル−ヘキサン−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシド(=DHBP)からなる混合物を使用する。
【0019】
さらに本発明によるオルガノポリシロキサン(A)は、有利には補強および/または非補強充填剤を含有する。
【0020】
補強充填剤のための例は少なくとも50m/gのBET表面積を有する熱分解法または沈殿法シリカである。
【0021】
前記のシリカ充填剤は親水性であっても、または後から公知の方法により疎水化されていてもよい。これについてはたとえばDE3839900A(Wacker Chemie社、1988年11月25日出願)もしくは対応するUS−A5,057,151を参照されたい。この場合、そのつどオルガノポリシロキサン材料の全質量に対して一般に1〜20質量%のヘキサメチルジシラザンおよび/またはジビニルテトラメチルジシラザンおよび0.5〜5質量%の水を用いて疎水化を行い、その際、この反応試薬は有利には適切な混合装置、たとえば混練機またはインターナルミキサー中で、すでに装入されたオルガノポリシロキサン(A)に添加し、次いで親水性シリカを連続的に該材料に混合する。
【0022】
非補強充填剤のための例は石英粉、ケイソウ土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ゼオライト、金属酸化物粉末、たとえば酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄または酸化亜鉛、ケイ酸バリウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、セッコウならびにプラスチック粉末、たとえばポリアクリロニトリル粉末またはポリテトラフルオロエチレン粉末である。さらに充填剤として繊維状の成分、たとえばガラス繊維およびプラスチック繊維を使用することができる。該充填剤のBET表面積は有利には50m/gである。
【0023】
エラストマーへと架橋可能な本発明によるオルガノポリシロキサン材料は、充填剤(B)をそのつどオルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して、有利に1〜200質量部、特に有利には30〜100質量部の量で含有する。
【0024】
そのつどの適用に応じて本発明によるエラストマーへと加硫可能なオルガノポリシロキサン材料に添加剤(C)、たとえば可塑剤、顔料および安定剤、たとえば熱安定剤のような加工助剤を添加することが出来る。
【0025】
添加剤(C)として使用することができる可塑剤のための例は、25℃で最大1000mm/sの粘度を有するトリメチルシリル基またはヒドロキシル基を末端に有するポリジメチルシロキサンあるいはまたジフェニルシランジオールである。
【0026】
添加剤(C)として使用することができる熱安定剤のための例は、遷移金属脂肪酸塩、たとえばオクタン酸鉄、遷移金属シラノラート、たとえば鉄シラノラートならびにセリウム(IV)化合物である。
【0027】
さらに本発明による材料は有利には別の物質を含有しない。
【0028】
本発明による材料を製造するために使用されるそのつどの成分は、そのつどこれらの成分の個々の種類であっても、これらの成分の少なくとも2種類からなる混合物であってもよい。
【0029】
さらにシリコーンゴム材料として通例の縮合架橋性オルガノポリシロキサン、たとえばEP0359251に記載されているようなもの(ここで引用することにより取り入れる)、またはたとえばEP0355459B1に記載されているような(ここで引用することにより取り入れる)公知の付加架橋性RTV材料またはHTV材料を使用することができる。
【0030】
付加架橋性HTVシリコーンゴムの製造例:
ジメチルシロキサン単位99.7モル%およびビニルメチルシロキサン単位0.3モル%からなり、25℃で8×10mPa・sの粘度を有する、トリメチルシロキシ基により末端をブロックされたジオルガノポリシロキサン75部ならびに25℃で8×10mPa・sの粘度を有する、ジメチルシロキサン単位99.4モル%およびビニルメチルシロキサン単位0.6モル%からなる、トリメチルシロキシ基により末端をブロックされたジオルガノポリシロキサン25部を、150℃で運転される混練機中で、熱分解法により気相中で製造され、300m/gのBET表面積を有する二酸化ケイ素45部および末端単位中にそのつど1つのSi結合ヒドロキシル基を有し、25℃で40mPa・sの粘度を有するジメチルポリシロキサン7部と共に混合し、かつ2時間混練する。
【0031】
ロジウム化合物は、有利には[Rh(OCCH、Rh(OCCH、Rh(C15、Rh(C、Rh(C)(CO)、Rh(CO)[PhP](C)、Rh(CO)(C)、RhCl[(R)S]、(RP)Rh(CO)X、(RP)Rh(CO)HおよびRhのロジウム化合物であり、その際、少なくとも1つは式
[(R−C(=O)−O−)Rh] (III)
L(X)Rh(PR (IV)
または
【0032】
【化2】

[上記式中、
は同一であるか、または異なっていてもよく、かつ水素原子を表すか、または1〜24の炭素原子を有する一価の、場合により置換されている炭化水素基を表し、
は同一であるか、または異なっていてもよく、かつ水素、−ORを表すか、または1〜24の炭素原子を有する一価の、場合により置換されている炭化水素基を表し、
は同一であるか、または異なっていてもよく、かつ水素原子を表すか、または1〜20の炭素原子を有する一価の、場合により置換されている炭化水素基を表し、
Xは同一であるか、または異なっていてもよく、かつハロゲンまたは水素であり、
Lは同一であるか、または異なっていてもよく、かつCO、アセチルアセトナート、0.5のシクロオクタジエン、0.5のノルボルナジエンまたはP(Rであり、かつ
sは2または3である]の化合物からなる群から選択される。
【0033】
有利であるのは、[Rh(OCCH、Rh(OCCH、Rh(C15、Rh(C、Rh(C)(CO)、Rh(CO)[PhP](C)、Rh(CO)(C)、Rh RhCl[(R)S]、(RP)Rh(CO)X、(RP)Rh(CO)HおよびRhのようなロジウム化合物であり、その際、Xは水素、塩素、臭素またはヨウ素であり、Yはエチル、CO、C14または0.5のC12であり、その際、Rは同一であるか、または異なっていてもよく、かつ18までの炭素原子を有する脂肪族炭素−炭素の多重結合を有していない、場合により置換された有機炭化水素基を表し、有利にはRはアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基である。
【0034】
基Rのための例は、アルキル基、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソ−プロピル基、n−ブチル基、イソ−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソ−ペンチル基、ネオ−ペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、たとえばn−ヘキシル基、ヘプチル基、たとえばn−ヘプチル基、オクチル基、たとえばn−オクチル基およびイソ−オクチル基、たとえば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、たとえばn−ノニル基、デシル基、たとえばn−デシル基、ドデシル基、たとえばn−ドデシル基、およびオクタデシル基、たとえばn−オクタデシル基、シクロアルキル基、たとえばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、およびメチルシクロヘキシル基、アリール基、たとえばフェニル基、ナフチル基、アントリル基およびフェナントリル基、アルカリール基、たとえばo−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、キシリル基およびエチルフェニル基、およびアラルキル基、たとえばベンジル基、α−フェニルエチル基およびβ−フェニルエチル基である。
【0035】
置換された基Rのための例はハロゲンアルキル基、たとえば3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,2,2′,2′,2′−ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ハロゲンアリール基、たとえばo−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基およびp−クロロフェニル基である。
【0036】
有利には基Rは1〜18の炭素原子を有する一価の、脂肪族炭素−炭素の多重結合を有していない、SiC−結合した、場合により置換された炭化水素基、特に有利には1〜6の炭素原子を有する一価の、脂肪族炭素−炭素の多重結合を有していない、SiC結合した炭化水素基、特にメチル基またはフェニル基であり、かつRはアルキル基、たとえばメチル基、エチル基およびブチル基であるか、またはアリール基、たとえばフェニル基およびトリル基であるか、または酸素により置換された基、たとえばメトキシ基、エトキシ基およびフェノキシ基を表し、ならびに有利には(アセチルアセトナト)カルボニル(トリフェニルホスファン)ロジウム(I)、(アセチルアセトナト)ジカルボニルロジウム(I)、カルボニルクロロビス(トリフェニルホスファン)ロジウム(I)、(アセチルアセトナト)(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)、酢酸ロジウム(II)二量体、アセチルアセトナトロジウム(III)およびオクタン酸ロジウム(II)二量体、特に有利にはテトラカルボニルジ−μ−クロロジロジウムであり、かつイリジウム化合物がIr(OOCCH、Ir(C、[Ir(Z)(En)および[Ir(Z)(ジエン)]であり、その際、Zは塩素、臭素、ヨウ素またはアルコキシであり、Enはオレフィンであり、かつジエンはシクロオクタジエンである。有利なイリジウム化合物はクロロビス(シクロオクタン)イリジウム(I)二量体、クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)二量体およびアセチルアセトナトイリジウム(III)である。
【0037】
ロジウム化合物およびイリジウム化合物は組成物の全質量に対して、有利に0.1〜10質量部の量で、好ましくは0.1〜9質量部、特に有利には0.1〜5質量部、とりわけ有利には0.1〜0.8質量部の量で使用する。
【0038】
有利には炭素を介してケイ素に結合した塩基性窒素を有する有機ケイ素化合物が本発明による組成物中に含有されていてもよく、これは式
Si(OR4−a−b
[式中、Rは基あたり、1〜8の炭素原子を有する同一であるか、または異なった一価の炭化水素基であり、Rは基あたり1〜4の炭素原子を有する同一であるか、または異なったアルキル基であるか、または式−SiRの基であり、Yは塩基性窒素を有する同一であるか、または異なった一価のSiC結合した有機基であり、aは1または2であり、かつbは0、1または2である]のシランおよび式
(YSi)
[式中、RおよびYは上記でこのための記載した意味を有し、cは0、1、2または3であり、特に1である]のジシロキサンの群から選択されるが、ただしジシロキサンは少なくとも1の基Yを有し、かつdは0、1、2または3、特に2である。
【0039】
しかしまた炭素を介してケイ素に結合した塩基性窒素を有する有機ケイ素化合物は式
【0040】
【化3】

[式中、RおよびRは上記でこのために記載した意味を有し、xは0.1または2であり、yは0、1、2または3であり、かつzは0、1または2である]の単位からなる最大で10のケイ素原子を有するオルガノ(ポリ)シロキサンであってもよい。炭化水素基Rのための例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基および2−エチルヘキシル基、ならびにブチル基;炭素原子および水素原子から構成され、脂肪族多重結合を有する基、たとえばビニル基およびアリル基;脂環式炭化水素基、たとえばシクロペンチル基およびシクロヘキシル基、ならびにメチルシクロヘキシル基;芳香族炭化水素基、たとえばフェニル基およびキセニル基;アルカリール基、たとえばトリル基;およびアラルキル基、たとえばベンジル基である。炭化水素基Rは、特に該基が、炭素原子を介して塩基性窒素が結合しているケイ素原子に結合しているが、しかし脂肪族多重結合を有していない場合に有利である。すでにより容易な入手性に基づいてさらに基Rの数の少なくとも50%がメチル基であることが有利である。
【0041】
基あたり、1〜4の炭素原子を有するアルキル基Rのための上記の例は、全ての範囲において基Rにも該当する。
【0042】
基Yは有利には式
NHR
[式中、Rは水素を表すか、または基あたり1〜8の炭素原子を有する同一であるか、もしくは異なっているアルキル基またはシクロアルキル基またはアミノアルキル基を表し、かつRは基あたり1の炭素原子または3もしくは4の炭素原子を有する同一であるか、もしくは異なっている直鎖状もしくは分枝鎖状の、脂肪族多重結合を有していない炭化水素基、特に式
−(CH
の基を表す]の基である。
【0043】
アルキル基およびシクロアルキル基Rのための例は全ての範囲においてアルキル基もしくはシクロアルキル基Rに関しても該当する。
【0044】
アミノアルキル基Rのための例は式
N(CH−、
N(CHNH(CH−、
N(CH−、
(HC)NH(CH−、
N(CH−、
H(NHCHCH−および
NH(CHNH(CH
のものである。
【0045】
有利には炭素を介してケイ素原子に結合している塩基性窒素を有する有機ケイ素化合物として、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(シクロヘキシル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリス(トリメチルシロキシ)シランおよび1,2−ビス[N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル]−1,1,2,2−テトラメチルジシロキサンを使用する。
【0046】
特に有利にはN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを使用する。
【0047】
さらに本発明による組成物中には酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウムの群からの金属酸化物および加熱する際に酸化物を生じるこれらの群の金属化合物、たとえば水酸化物が含有されていてもよく、さらにホウ酸、ホウ酸亜鉛もこれらに属し、その際、この群の全ての化合物は常に組成物の全質量に対して1.5%〜40質量%の量で、有利には10〜20質量%の量で使用することができる。これらの混合物を使用することもできる。これらの化合物の中から有利であるのはAl、Sn、Ca、Ti、Ba、Zr、Zn、Ceの水酸化物、特に有利であるのは水酸化アルミニウム、ホウ酸およびホウ酸亜鉛である。
【0048】
本発明による組成物は、少なくとも1の不飽和基を有する白金錯体、たとえば有利に白金−オレフィン−錯体、白金−アルデヒド−錯体、白金−ケトン−錯体、白金−ビニルシロキサン−錯体、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(検出可能な有機ハロゲンを含有しているか、または含有していない)、白金−ノルボルナジエン−メチルアセトナト錯体、ビス−(ガンマピコリン)−白金ジクロリド、トリメチレンジピリジン白金ジクロリド、ジシクロペンタジエン白金ジクロリド、ジメチルスルホキシドエチレン白金(II)ジクロリド、四塩化白金とオレフィンおよび第一アミンまたは第二アミンとの、または第一および第二アミンとの反応生成物、1−オクテン中に溶解した四塩化白金とs−ブチルアミンとの反応生成物を含有していてよく、その際、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体が特に有利である。この白金錯体は5〜200ppm、有利には10〜100ppmの量で添加され、その際、該量は純粋な白金に対するものである。白金錯体の混合物を使用することもできる。
【0049】
本発明による組成物を製造するために上記の全ての成分を混合する。
【0050】
本発明の別の対象は、本発明による組成物を含有しているケーブルおよび異形材である。ケーブルは有利には通信ケーブルもしくはエネルギーケーブルである。異形材は、シリコーン発泡材料または空間、棚、金庫の防火遮断層(Brandabschottung)のための中実封止材料(Massive-Dichtungen)ならびにロケットエンジンなどのライニングのためのアブレーション材料である。
【0051】
意外なことに、本発明は難燃性を可能にし、かつ白金錯体が含有されている場合にはすでに650℃の温度で焼結工程が開始され、該工程によりシリコーンゴムの燃焼生成物からなるセラミック層が形成される。このことによりシリコーンゴム混合物は火災の場合の機能の維持が要求される適用のために、わずかな密度(最大1.27)で、ひいては機械的特性、電気的特性および耐熱老化性に関して、通常のシリコーンゴムに匹敵する特性レベルで製造することができる。通常のシリコーンゴム材料に対して、本発明による組成物のわずかな密度により、より良好な機械的特性レベル、より良好な耐熱老化性およびより高い絶縁性が特に900℃を超える温度範囲で達成される。燃焼の際に形成されるセラミックはさらに、実質的に従来技術において記載される、安定した灰層を形成するのみである混合物よりも耐衝撃性および耐振動性(erschuetterungsempfindlich)である。
【実施例】
【0052】
例1:(ロジウムを含有しないPt)
ジメチルシロキサン単位99.93モルパーセントおよびビニルメチルシロキサン単位0.07モルパーセントからなり、25℃で8・10mPa・sの粘度を有するトリメチルシロキシ基により末端をブロックされたジオルガノポリシロキサン100部に、150℃で運転される混練機中でまず気相中、熱分解法により製造された、200m/gの表面積を有する二酸化ケイ素50部、次いでトリメチルシロキシ基により末端をブロックされた、25℃で96mPa・sの粘度を有するジメチルポリシロキサン1部、次いで末端の単位中にそれぞれ1つのSi結合したヒドロキシル基を有する、25℃で40mPasの粘度を有するジメチルポリシロキサン7部を添加し、混練機中で粒径>10μmを有し、アルカリ金属酸化物<0.5質量%の含有率を有する酸化アルミニウム36部ならびに0.3質量%の白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体を混練機中で混合した。
【0053】
例1a:(Ptを含有しないロジウム)
ジメチルシロキサン単位99.93モルパーセントおよびビニルトリメチルシロキサン単位0.07モルパーセントからなり、25℃で8・10mPa・sの粘度を有するトリメチルシロキシ基により末端をブロックされたジオルガノポリシロキサン100部に、150℃で運転される混練機中でまず気相中熱分解法により製造された、200m/gの表面積を有する二酸化ケイ素50部、次いでトリメチルシロキシ基により末端をブロックされた、25℃で96mPa・sの粘度を有するジメチルポリシロキサン1部、次いで末端の単位中にそれぞれ1つのSi結合したヒドロキシル基を有する、25℃で40mPasの粘度を有するジメチルポリシロキサン7部を添加し、混練機中で粒径>10μmを有し、アルカリ金属酸化物<0.5質量%の含有率を有する酸化アルミニウム36部ならびにポリジメチルシロキサンマトリックス中に溶解した、ロジウム含有率60%を有するシリコーン中に可溶性のロジウム錯体0.6部からなる濃縮液2質量%を混練機中で混合した。
【0054】
比較例2
例1に記載した作業方法を繰り返すが、ただし白金錯体およびロジウム錯体を添加しない点が相違する。
【0055】
比較例3
例2に記載した作業方法を繰り返すが、ただし酸化アルミニウムを添加しない点が相違する。
【0056】
比較例3a
例2に記載した作業方法を繰り返すが、ただし酸化アルミニウムも添加しない点が相違する。ただしロジウム錯体は添加する。
【0057】
比較例4
例1に記載した作業方法を繰り返すが、ただし酸化アルミニウムの代わりに酸化チタンを添加する点が相違する。
【0058】
比較例5:
例2に記載した作業方法を繰り返すが、ただし酸化アルミニウムを添加しない点が相違する。ただしロジウム錯体は添加する。
【0059】
比較例5a:
例2に記載した作業方法を繰り返すが、ただし酸化アルミニウムも添加しない点が相違する。ただしロジウム錯体およびPt錯体を添加する。
【0060】
比較例5b:
例2に記載した作業方法を繰り返すが、ただし酸化アルミニウムも添加しない点が相違する。ただしロジウム錯体、Pt錯体および0.09部のN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを添加する。
【0061】
比較例6:
例2に記載した作業方法を繰り返すが、ただし酸化アルミニウムも添加しない点が相違する。ただしロジウム錯体および0.09部のN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを添加する。例1および比較例2〜6による材料を用いて押出成形により電気伝導体(ワイヤ1.5mm)を絶縁した。壁厚は1mmである。その際に得られた4つの試験サンプルの長さ1メートルの切片をそのつど約5cmの撚りの長さを有する撚り合わせた平衡ケーブル(Doppelleitung)として、長さ80cmの管型の電気加熱可能な炉中で930℃まで加熱する。ドリルで穴を開けた平衡ケーブル(Zwillingsleitung)の一端に、全ての試験の間、500ボルトACの電圧を印加する。他方の末端は開放されている。試験時間は2時間である。さらに比較例からなる試験板も製造した。
【0062】
例1による試験体:
約420℃で導線絶縁材に点火した後、該絶縁材は燃焼し、かつその際、固体のセラミック層を形成する。930℃で2時間の間、500ボルトの電圧負荷を維持し、その際、短絡は生じない。セラミック層中の金属製の導体が熱により膨張するにもかかわらず、散発的に小さい亀裂が生じる。さらに該材料からなる厚さ2mmの試験板は27%の酸素指数(LOI)を有する。
【0063】
例1aによる試験体:
約420℃で導線絶縁材に点火した後、該絶縁材は燃焼し、かつその際、灰が形成され、これは機械的に安定していない。930℃で2時間の間、500ボルトの電圧負荷を維持する。すでに加熱の際に短絡は生じる。というのは、セラミックが形成されないからである。ただし明らかにより遅い燃焼プロセスが観察される。さらに該材料からなる厚さ2mmの試験板は33%の酸素指数(LOI)を有し、このことは観察された高い難燃性を示唆する。該板および材料は無臭である。
【0064】
比較例2による試験体:
420℃で導線に点火した後、該導線は燃焼し、かつその際、付着した灰層を形成するが、しかしこれはその後、さらに930℃に達する前に崩れ、このことによりワイヤの熱による膨張の結果として接触が生じ、かつこのことにより短絡が生じる。試験板は23%のLOIを有する。
【0065】
比較例3による試験体:
420℃で導線に点火した後、該導線は燃焼し、かつその際、粉末状の灰層が形成され、これはさらに燃焼の間に崩れ、その直後に短絡が生じる。試験板は23%のLOIを有する。
【0066】
比較例3aによる試験体:
420℃で導線に点火した後、該導線は燃焼し、かつその際、粉末状の灰層が形成され、これはさらに燃焼の間に崩れ、その直後に短絡が生じる。試験板は33%のLOIを有する。
【0067】
比較例4による試験体:
420℃で導線に点火した後、該導線は燃焼し、かつその際、粉末状の固着した灰層が形成され、これはさらに燃焼の間に崩れ、その直後に短絡が生じる。試験板は27%のLOIを有する。
【0068】
比較例5による試験体:
420℃で導線に点火した後、該導線は燃焼し、かつその際、セラミック状の灰層が形成され、これは例1による結果におけるよりも強固であり、短絡は生じない。試験板は29%のLOIを有する。ただし該試験板はアミンのような臭いを有する。
【0069】
比較例5aによる試験体:
420℃で導線に点火した後、該導線は燃焼し、かつその際、セラミック状の灰層が形成され、これは例1による結果におけるより強固であり、短絡は生じない。試験板は35%のLOIを有する。ただし該試験板はアミンのような臭いを有する。
【0070】
比較例6による試験体:
420℃で導線に点火した後、該導線は燃焼し、かつその際、粉末状の固着した灰層が形成され、これはさらに燃焼の間に崩れ、その直後に短絡が生じる。試験板は33%のLOIを有する。ただし該試験板はアミンのような臭いを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化物架橋性、付加架橋性もしくは縮合架橋性のシリコーンゴムおよび少なくとも1のロジウム化合物またはイリジウム化合物または両方の化合物の混合物を含有する難燃性組成物。
【請求項2】
ロジウム化合物が[Rh(OCCH、Rh(OCCH、Rh(C15、Rh(C、Rh(C)(CO)、Rh(CO)[PhP](C)、Rh(CO)(C)、RhCl[(R)S]、(RP)Rh(CO)X、(RP)Rh(CO)HおよびRhであり、その際、少なくとも1つのロジウム化合物は式
[(R−C(=O)−O−)Rh] (III)
L(X)Rh(PR (IV)
または
【化1】

[上記式中、
は同一であるか、または異なっていてもよく、かつ水素原子を表すか、または1〜24の炭素原子を有する一価の置換されているか、もしくは置換されていない炭化水素基を表し、
は同一であるか、または異なっていてもよく、かつ水素、−ORを表すか、または1〜24の炭素原子を有する一価の置換されているか、もしくは置換されていない炭化水素基を表し、
は同一であるか、または異なっていてもよく、かつ水素原子を表すか、または1〜20の炭素原子を有する一価の置換されているか、もしくは置換されていない炭化水素基を表し、
Xは同一であるか、または異なっていてもよく、かつハロゲンまたは水素であり、
Lは同一であるか、または異なっていてもよく、かつCO、アセチルアセトナート、0.5のシクロオクタジエン、0.5のノルボルナジエンまたはP(Rであり、かつ
sは2または3であり、その際、Xは酸素、塩素、臭素またはヨウ素であり、Yはエチル、CO、C14または0.5のC12であり、Rは同一であるか、または異なっていてもよく、かつ脂肪族の炭素−炭素の多重結合を有しておらず、18までの炭素原子を有する、置換されているか、もしくは置換されていない有機炭化水素基を表し、有利にはRはアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、かつRはアルキル基またはアリール基であるか、または酸素により置換された基を表し、ならびに有利には(アセチルアセトナト)カルボニル(トリフェニルホスファン)ロジウム(I)、(アセチルアセトナト)ジカルボニルロジウム(I)、カルボニルクロロビス(トリフェニルホスファン)ロジウム(I)、(アセチルアセトナト)(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)、酢酸ロジウム(II)二量体、アセチルアセトナトロジウム(III)およびオクタン酸ロジウム(II)二量体である]の化合物からなる群から選択され、かつイリジウム化合物がIr(OOCCH、Ir(C、[Ir(Z)(En)および[Ir(Z)(ジエン)][式中、Zは塩素、臭素、ヨウ素またはアルコキシであり、Enはオレフィンであり、かつジエンはシクロオクタジエンである]であることを特徴とする、請求項1記載の難燃性組成物。
【請求項3】
炭素を介してケイ素原子に結合した塩基性窒素を有する有機ケイ素化合物を含有することを特徴とする、請求項2記載の難燃性組成物。
【請求項4】
酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛の群からなる金属酸化物および加熱する際に酸化物を生じるこれらの群の金属化合物およびホウ酸、ホウ酸亜鉛からなる群からの少なくとも1の化合物が含有されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の難燃性組成物。
【請求項5】
少なくとも1の不飽和基を有する白金錯体が含有されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の難燃性組成物。
【請求項6】
白金ビニルシロキサン錯体が、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の難燃性組成物。
【請求項7】
導体の絶縁材が請求項1から5までのいずれか1項記載の組成物を含有することを特徴とするケーブル。
【請求項8】
請求項1から5までのいずれか1項記載の組成物を含有することを特徴とする異形材。
【請求項9】
火災の場合の機能維持および難燃性のための、請求項4から6までのいずれか1項記載の組成物、請求項5または6記載のケーブル、請求項8記載の異形材の使用。
【請求項10】
火災の場合の難燃性のための請求項1から3までのいずれか1項記載の組成物、請求項7記載のケーブル、請求項8記載の異形材の使用。

【公開番号】特開2006−176778(P2006−176778A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368505(P2005−368505)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】