説明

難燃性セルロース系繊維を含んでなる難燃性繊維混合物ならびにそれから製造される布および衣類

ステープルファイバーの密接混合物は、(10)〜(75)重量部の少なくとも1つのアラミド・ステープルファイバー、(15)〜(80)重量部の少なくとも1つの難燃性セルロース系ステープルファイバー、および(5)〜(30)重量部の少なくとも1つのポリアミド・ステープルファイバーを有する。ステープルファイバーの密接混合物は、難燃性である、また耐火性であるとも言われる糸および布を提供し、衣服のような難燃性物品を製造するために使用することができる。難燃性布は0.13〜0.50kg/平方m(平方ヤード当たり4〜15オンス)の坪量を有してもよい。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
火炎、高温、または電気アークフラッシュの近くで働く人々に好適な衣服を製造するために使用することができる難燃性、また耐火性とも言われる布に対する継続的なニーズがある。優れた熱性能を示すことに加えて、有効な難燃性布は耐久性があり、着心地が良く、かつ、低コストで生産されるべきである。本質的に難燃性の繊維でできた布がこれまで防護服で非常に有用であったが、これらの繊維のある種の特性が問題を提起する。例えば、これらの繊維は、染色するのが困難であり得るし、着心地の悪い織物の感触を提供し、かつ、高価である。これらの問題に取り組むために、本質的に難燃性の繊維は他の材料でできた繊維と混合されてきた。繊維ブレンディングは、成分繊維のそれぞれの有益な特性を兼ね備える最終布を得るために用いることができる。しかしながら、かかるブレンディングはしばしば耐久性および熱性能を犠牲にして行われる。
【0002】
ある種の繊維混合物およびそれらの混合物から製造された布は当該技術で公知である。例えば、1990年4月24日に発行された特許文献1(グリーン(Green))は、コットン、ナイロン、および耐熱性繊維のある種の混合物を含んでなる耐久性の耐熱性布を開示している。2000年10月17日に発行された特許文献2(ランスフォード(Lunsford)ら)は、本質的に難燃性の繊維と、難燃性化合物を含む難燃性セルロース系繊維とを含む染色された布混合物を開示している。2001年7月3日に発行された特許文献3(ズー(Zhu)ら)は、コットン、ナイロン、およびパラ−アラミド繊維の特定混合物よりなる布であって、着心地が良く、耐切断性で、かつ、耐摩耗性である布を開示している。2001年7月26日に公開された特許文献4(シェーファー(Shaffer)ら)は、異なるたて糸とよこ糸とを含んでなる難燃性布であって、たて糸がステープルファイバーまたはフィラメント繊維を含んでなり、かつ、少なくとも27の限界酸素指数(Limiting Oxygen Index)を有し、よこ糸が天然繊維を含んでなり、そして布中のたて糸エンド対よこ糸エンドの比が少なくとも1.0である布を開示している。2003年4月15日に発行された特許文献5(ランスフォードら)は、難燃性布の染色方法を開示している。
【0003】
上述された繊維混合物および糸から製造された布は、必然的に乏しい耐摩耗性に悩むか、1990年4月24日に発行された特許文献1(グリーン)に開示されているように、非常に低い耐摩耗性を有する大部分のコットン繊維を利用するかのどちらかである。防火衣および防火服は一般に厳しい環境で使用され、だから、これらの衣類に使用される布の耐摩耗性のいかなる改善も重要であり、かつ、望まれる。それ故、改善された耐摩耗性を有する難燃性の繊維混合物、糸、および布に対するニーズがある。
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,920,000号明細書
【特許文献2】米国特許第6,132,476号明細書
【特許文献3】米国特許第6,254,988B1号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2001/0009832A1号明細書
【特許文献5】米国特許第6,547,835 B1号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で具現化され、広範に記載されるような、本発明の目的に従って、本発明は、10〜75重量部の少なくとも1つのアラミド・ステープルファイバー、15〜80重量部の少なくとも1つの難燃性セルロース系ステープルファイバー、および5〜30重量部の少なくとも1つのポリアミド・ステープルファイバーを含んでなるステープルファイバーの密接混合物である。
【0006】
別の実施形態では、本発明は、20〜40重量部の少なくとも1つのアラミド・ステープルファイバー、50〜80重量部の少なくとも1つの難燃性セルロース系ステープルファイバー、および15〜20重量部の少なくとも1つのポリアミド・ステープルファイバーを含んでなるステープルファイバーの密接混合物である。
【0007】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つのアラミド・ステープルファイバーがポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)であり、少なくとも1つの難燃性セルロース系ステープルファイバーが難燃性レーヨンである、上記の密接混合物の1つである。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも1つのアラミド・ステープルファイバーがポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)であり、そして少なくとも1つの難燃性セルロース系ステープルファイバーがセルロース支持構造中にポリケイ酸の形で二酸化ケイ素を含んでなり、セルロース支持構造中のポリケイ酸の形での二酸化ケイ素が密接混合物の40重量パーセント以下の量で存在する、上記の密接混合物の1つである。
【0009】
本発明の密接混合物は糸を製造するために使用されてもよく、糸は順繰りに衣服のような難燃性物品での使用のための難燃性布を製造するために使用されてもよい。
【0010】
本発明の適用性のさらなる範囲は、本明細書で以下に与えられる詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の精神および範囲内の様々な変更および修正はこの詳細な説明から当業者に明らかになるであろうから、詳細な説明および具体的な実施例は、本発明の実施形態を示すが、例示のみの目的で与えられることが理解されるべきである。前述の一般的な説明および次の詳細な説明の両方が例示的なおよび説明のためのものであるにすぎず、特許請求されるような本発明について限定するものではないことが理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
火炎、高温、または電気アークフラッシュなどの近くで働く人々に好適な衣服および他の物品を製造するために使用できる、難燃性、また耐火性とも言われる布を製造することができる繊維混合物に対する継続的なニーズがある。それらの着心地の良さおよび耐久性を維持または改善し、かつ、それらの総コストを下げながら、かかる繊維混合物および生じる布の有効性を高めるためにかなりの努力が行われてきた。本発明は、正しく難燃性衣類の分野でのかかる進展を表す。
【0012】
本発明のステープルファイバーの密接混合物は、アラミド繊維、難燃性セルロース系繊維、およびポリアミド繊維を含んでなる。各成分の割合は、物理的品質の必要な組み合わせを達成するために重要である。「密接混合物」とは、2つもしくはそれ以上の繊維クラスが糸を紡績する前に混合されていることを意味する。本発明で、密接混合物は、アラミド繊維、難燃性セルロース系繊維、およびポリアミド繊維を繊維形で組み合わせ、次に糸の単一ストランドへ紡績することによって形成される。「糸」とは、連続ストランドを形成するために一緒に紡績されたまたは撚られた繊維の集まりであって、製織、ニッティング、ブレーディングもしくは折りたたみ、または別のやり方で使用して織編生地または布にすることができる集まりを意味する。かかる糸は、例えば、リング精紡、またはステープルを糸へ撚るために空気が使用される例えば村田エアジェット紡績などのより高速の空気紡績技術のような、ステープルファイバーを糸へ紡績するための従来法によって製造することができる。
【0013】
本発明のステープルファイバーの密接混合物は、本質的に難燃性であるアラミド繊維を含む。「アラミド繊維」とは、アミド(−CONH−)結合の少なくとも85%が2つの芳香環に直接結合している、1つもしくはそれ以上の芳香族ポリアミドから製造された1つもしくはそれ以上の繊維を意味する。芳香族ポリアミドは、アミド溶媒中でのアミド結合を生み出すための芳香族二酸塩化物と芳香族ジアミンとの反応によって形成される。アラミド繊維は、任意の多数の方法を用いて乾式または湿式紡糸によって紡糸されてもよいが、米国特許第3,063,966号明細書、同第3,227,793号明細書、同第3,287,324号明細書、同第3,414,645号明細書、同第3,869,430号明細書、同第3,869,429号明細書、同第3,767,756号明細書、および同第5,667,743号明細書は、本発明で使用することができる繊維を製造するための有用な紡糸法を例示する。
【0014】
アラミド繊維は、2つの別個のクラスで、すなわち、その1つがMPD−Iとも言われるポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)よりなるメタ−アラミド繊維、またはm−アラミド繊維、およびその1つがPPD−Tとも言われるポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)よりなるパラ−アラミド繊維、またはp−アラミド繊維で典型的には入手可能である。メタ−アラミド繊維は現在、商標ノメックス(NOMEX)(登録商標)で幾つかの形でデラウェア州ウィルミントンのイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール(E.I.Du Pont de Nemours of Wilmington,Delaware)から入手可能である:ノメックスT−450(登録商標)は100%メタ−アラミドであり、ノメックスT−455(登録商標)は95%ノメックス(登録商標)と5%ケブラー(KEVLAR)(登録商標)(パラ−アラミド)との混合物であり、ノメックスIIIA(登録商標)(ノメックスT−462(登録商標)としても知られる)は93%ノメックス(登録商標)、5%ケブラー(登録商標)、および2%カーボン・コア・ナイロンである。さらに、メタ−アラミド繊維は、それぞれ、日本国東京都の帝人株式会社および日本国大阪市のユニチカ株式会社によって生産されている商標コーネックス(CONEX)(登録商標)およびアピエル(APYEIL)(登録商標)で入手可能である。パラ−アラミド繊維は現在、デラウェア州ウィルミントンのイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムールから商標ケブラー(登録商標)で、および日本国東京都の帝人株式会社からトワロン(TWARON)(登録商標)で入手可能である。本明細書での目的のためには、日本国東京都の帝人株式会社から入手可能であり、かつ、コポリ(p−フェニレン/3,4’−ジフェニルエステルテレフタルアミド)から製造されるテクノーラ(TECHNORA)(登録商標)繊維はパラ−アラミド繊維と考えられる。
【0015】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つのアラミド・ステープルファイバーはポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)である。
【0016】
本発明のステープルファイバーの密接混合物はまた難燃性セルロース系繊維も含む。難燃性セルロース系ステープルファイバーは、1つもしくはそれ以上のセルロース系繊維および1つもしくはそれ以上の難燃性化合物よりなる。セルロースから誘導された繊維に対する総称である、レーヨン、アセテート、トリアセテート、およびリオセルのようなセルロース系繊維は当該技術では周知である。
【0017】
セルロース系繊維は、本質的に難燃性の繊維よりソフトであり、かつ、安価であるが、必然的に難燃性であるわけではない。これらの繊維の難燃性を高めるために、1つもしくはそれ以上の難燃剤がセルロース系繊維中へまたはそれと共に組み入れられる。かかる難燃剤は、難燃剤をセルロース系繊維に含浸させること、セルロース系繊維を難燃剤でコートすること、セルロース系繊維を難燃剤と接触させてセルロース系繊維に難燃剤を吸収させること、または難燃剤をセルロース系繊維中へまたはそれと共に組み入れる任意の他の方法によって組み入れることができる。例えば、現在サンド(Sandoz)から入手可能なサンドラスト(SANDOLAST)9000(登録商標)のような、ある種のリン化合物、ある種のアンチモン化合物などをはじめとする、様々なかかる難燃剤がある。一般的に言えば、1つもしくはそれ以上の難燃剤を含むセルロース系繊維は、難燃剤にちなんで称号「FR」を与えられる。従って、FRレーヨン、FRアセテ−ト、FRトリアセテート、およびFRリオセルのような難燃性セルロース系繊維が本発明で使用されてもよい。難燃性セルロース系繊維はまた、フィンランド国のサテリ・オイ(Sateri Oy of Finland)から入手可能であるヴィジル(VISIL)(登録商標)のような様々な商標で入手可能である。ヴィジル(登録商標)繊維は、ケイ酸アルミニウム・サイトを含むポリケイ酸の形でセルロース支持構造中に二酸化ケイ素を含む。本発明の密接混合物がヴィジル(登録商標)繊維を含んでなる場合、ヴィジル(登録商標)繊維は、密接混合物の40重量パーセント以下の量で存在すべきである。難燃性セルロース系繊維の製造方法は、例えば、米国特許第5,417,752号明細書におおむね開示されている。
【0018】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの難燃性セルロース系繊維は難燃性レーヨンである。レーヨンは当該技術では周知であり、変性セルロースの様々な溶液からセルロース溶液をプレスまたは延伸することによって製造されたフィラメントに対する総称である。レーヨンの製造用のセルロース質は木材パルプから得られる。
【0019】
本発明の別の実施形態では、少なくとも1つの難燃性セルロース系ステープルファイバーはセルロース支持構造中にポリケイ酸の形で二酸化ケイ素を含んでなり、セルロース支持構造中のポリケイ酸の形での二酸化ケイ素は密接混合物の40重量パーセント以下の量で存在する。
【0020】
本発明のステープルファイバーの密接混合物はまたポリアミド繊維も含む。「ポリアミド繊維」とは、一般にナイロンと言われる、1つもしくはそれ以上の脂肪族ポリアミドポリマーから製造された1つもしくはそれ以上の繊維を意味する。例には、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリブチロラクタム(ナイロン4)、ポリ(9−アミノノナン酸)(ナイロン9)、ポリエナントラクタム(ナイロン7)、ポリカプリルラクタム(ナイロン8)、およびポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6,10)が挙げられる。ナイロン繊維は一般に、ガス状凝固媒体中への毛管を通したポリマーの溶融物の押出によって紡糸される。ナイロンが糸を形成するステープルファイバーの密接混合物中のポリアミド繊維である場合、かかる糸は、布を形成した時に完成布またはかかる布から製造された衣類でソフト表面摩耗からの保護を高めるためにたて糸として好ましくは使用される。本発明の一実施形態では、ナイロンが本発明の布または衣類を製造するためにこのように使用される場合、本発明の布または衣類は、下記の耐摩耗性試験に従って破損までのサイクルで測定されるように、ナイロンなしの類似の布と比較して10パーセント以上高い耐摩耗性を有すると予期される。しかしながら、布中の多すぎるナイロンは、布が高温に短時間曝された時に布が堅くなり、ドレープ性を失う原因となるであろう。
【0021】
本発明の一実施形態では、ナイロン繊維は1〜3デシテックスの線密度を有する。別の実施形態では、ナイロン繊維は1〜1.5デシテックスの線密度を有する。さらに別の実施形態では、ナイロン繊維は約1.1デシテックスの線密度を有する。
【0022】
本発明のステープルファイバーの密接混合物は、難燃性である糸および布を製造するために使用することができる。これらの糸および布は難燃性の衣類および衣服のような難燃性物品を製造するために使用することができ、それらは消防士および火炎、高温、または電気アークフラッシュに近接して投入される他の労働者に特に有用である。一般に、「難燃性」とは、短期間火炎と接触した後に布が空気中で火炎を維持しないことを意味する。より正確には、「難燃性」は下記の垂直燃焼試験の観点から定義することができる。難燃性布は好ましくは火炎への12秒曝露後に6インチ未満の炭化長を有する。用語「難燃性」、「耐燃性」、「防火性」、および「耐火性」は当業界では同義的に用いられ、本発明での「難燃性」化合物、繊維、糸、布、および衣類への言及は、「耐燃性」、「防火性」、または「耐火性」と同等に記載することができよう。
【0023】
紡績での使用のためのステープルファイバーは一般に特定の長さのものおよび特定の線密度のものである。本発明での使用のためには、2.5〜15センチメートル(1〜6インチ)のおよび25センチメートル(10インチ)程度に長い合成繊維ステープル長さを使用することができ、3.8〜11.4センチメートル(1.5〜4.5インチ)の長さが好ましい。2.5センチメートル未満のステープル長さを有するかかる繊維から製造される糸は、加工のための強度を維持するために過度に高いレベルの撚りを必要とすることが分かった。15センチメートルより大きいステープル長さを有するかかる繊維から製造される糸は、長いステープルファイバーが絡み合い、破断されるようになって、短い繊維をもたらす傾向のために製造するのがより困難である。合成ステープルファイバーは、任意の特定目的向けに望まれるように、捲縮する、または捲縮しないこともできる。本発明のステープルファイバーは一般に連続フィラメントを一定の予め定められた長さにカットすることによって製造される。しかしながら、ステープルファイバーは、ストレッチ切断のような他の方法によって製造することができ、糸は、様々なまたは分布の異なるステープルファイバー長さからだけでなく、かかる繊維からも製造することができる。
【0024】
本発明の一実施形態では、本発明の糸は、本発明の糸を織る、編む、または別のやり方で組み合わせることによって製造されたクロスである難燃性布を製造するために使用することができる。本発明の糸を含んでなるたて糸、本発明の糸を含んでなるよこ糸、または本発明の糸を含んでなるたて糸およびよこ糸の両方を有する難燃性布を構築することができる。布が本発明の糸を一方向だけに(すなわち、よこ糸のみまたはたて糸のみとして)使用する場合、他の好適な糸が所望の布特性に従って他の方向に使用されてもよい。最良の耐摩耗性のためには、たて糸が典型的には布の直接接触面のほとんどを形成するので、本発明の糸はたて方向に使用される。これは、衣類形で布の外面のより良好な摩耗性能を生み出すことになる。
【0025】
本発明の一実施形態では、難燃性布は平方ヤード当たり4〜15オンスの坪量を有する。本発明の別の実施形態では、難燃性布は平方ヤード当たり5.5〜11オンスの坪量を有する。かかる布は、シャツ、パンツ、カバーオール、エプロン、ジャケット、または突発的火事もしくは電気アーク防護のための任意の他の単層もしくは多層形のような衣服にすることができる。
【0026】
本発明の物品は、実施例に関連して下にさらに記載されるであろう。しかしながら、本発明のコンセプトはこれらの実施例によって全く限定されないであろうことに留意されるべきである。
【0027】
試験方法
次の試験法を次の実施例で用いた。
【0028】
断熱性能試験(TPP)
熱および火炎中での布の予測保護性能は、「断熱性能試験」(全国防火協会(NFPA)2112)を用いて測定した。火炎を、規定熱流束(典型的には84kW/m)で水平位置に取り付けた布のセクションに向けた。試験は、布と熱源との間に何のスペースもなしに銅スラグ熱量計を用いて検体を通った熱源からの透過熱エネルギーを測定する。試験終点は、ストールおよびチアンタ(Stoll & Chianta)、「ニューヨーク・アカデミー科学報告書(Transactions New York Academy Science)」、33(1971)、649ページにより開発された単純化モデルを用いて、予測第二級皮膚火傷を達成するために必要とされる時間によって特性化された。「TPP値」として示される、本試験で検体に割り当てられる値は、終点を達成するために必要とされる総熱エネルギー、または投射熱流束を乗じた予測火傷までの直接熱源曝露時間である。より高いTPP値はより良好な絶縁性能を示す。
【0029】
垂直燃焼試験
「垂直燃焼試験」(米国材料試験協会(ASTM)D6413)は、布が燃えるかどうかを判断するためのスクリーニング試験として、衣服が少しでも難燃性を有するかどうかについての予測子として一般に用いられる。該試験によれば、3×12インチ・セクションの布を垂直に取り付け、規定火炎をその下縁に12秒間当てた。布の火炎曝露への応答を記録した。燃えたまたは炭化した布の長さを測定した。残炎(すなわち、試験火炎を取り除いた後の布セクションの継続燃焼)および残光(試験火炎を取り除いた後の布セクションのくすぶりによって特性化される)についての時間もまた測定した。さらに、溶融および布セクションからのしたたりに関する観察も記録した。本方法に基づく合格/不合格規格は、工業労働者衣服、消防士出動用具および難燃性ステーションウェア、ならびに軍服については公知である。工業標準によれば、布が火炎への12秒曝露後に6インチ未満の炭化長を有するならば、それは難燃性、または耐火性と考えることができる。
【0030】
耐摩耗性試験
耐摩耗性は、テレダイン・テーバー、ニューヨーク州14120、ノース・トナワンダ、455ブライアント通り(Teledyne Taber,455 Bryant St.,North Tonawanda,N.Y.14120)から入手可能なテーバー(Taber)耐摩耗性メーターでH−18ホイール、500gm荷重で、ASTM方法D3884を用いて測定した。テーバー耐摩耗性は破損までのサイクルとして報告した。
【0031】
引裂強度試験
引裂強度測定はASTM D5587に基づく。編織布の引裂強度は、自記一定速度伸長型(CRE)引張試験機を用いて台形手順によって測定した。本試験方法で測定されるような引裂強度は、引裂が試験前に開始されることを必要とする。検体を台形の最小基部の中心で細長く切って引裂を開始した。印をつけた台形の平行でない辺を引張試験機の平行あごに固定した。あごの分離を連続的に大きくして力を加え、検体を横切った引裂を広めた。同時に、大きくなる力を記録した。引裂を継続するための力を、自記チャート記録計またはマイクロプロセッサーデータ収集システムから計算した。台形引裂強度についての2つの計算値(単一ピーク力および5つの最高ピーク力の平均値)が提供された。ここでの実施例については、単一ピーク力を用いた。
【0032】
グラブ強度試験
布または他のシート材料の破断強度および伸びの測定であるグラブ強度測定はASTM D5034に基づく。100mm(4.0インチ)幅の検体を引張試験機のクランプに中心で取り付け、検体が破断するまで力を加えた。試験検体の破断力および伸びについての値を、機械スケールまたは試験機と連動するコンピューターから得た。
【実施例】
【0033】
実施例1
着心地の良い耐久性布を、ノメックス(登録商標)タイプ462ステープルファイバー、難燃性(FR)レーヨン・ステープルファイバー、およびナイロン・ステープルファイバーの密接混合物を含んでなるたて糸と、FRレーヨン・ステープルファイバーおよびナイロン・ステープルファイバーの密接混合物を含んでなるよこ糸とから製造した。ノメックス(登録商標)タイプ462は93重量%のポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)(MPD−I)ステープルファイバー、5重量%ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(PPD−T)ステープルファイバー、および2重量%カーボン−コア・ナイロン−シース静電気散逸ステープルファイバー(デラウェア州ウィルミントンのイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムールから入手可能なタイプP−140)である。FRレーヨンは難燃性化合物を含むセルロース系繊維であり、ナイロンはポリヘキサメチレンアジパミドであった。40重量パーセントのノメックス(登録商標)タイプ462ステープルファイバー、45重量パーセントのFRレーヨン・ステープルファイバーおよび15重量パーセントのナイロン・ステープルファイバーのピッカー・ブレンドスライバーを製造し、リング精紡機を用いて3.5の撚り係数を有する紡績糸へ通常のコットンシステムによって加工した。そのように製造した糸は19.7テックス(30綿番手)単糸であった。2つの単糸を次に撚糸機で撚り合わせて双糸を製造した。同様な方法と同じ撚りおよび糸密度とを用いて、75重量パーセントのFRレーヨン・ステープルファイバーと25重量パーセント・ナイロン繊維との混合物を用いて双糸を製造した。
【0034】
ノメックス(登録商標)/FRレーヨン/ナイロン糸を、3×1綾織構造において有ひ織機でたて糸として使用し、FRレーヨン/ナイロン糸をよこ糸として使用した。生機綾織布はcm当たり36エンド×22ピック(インチ当たり92エンド×57ピック)の構造、および323g/m(9.7オンス/ヤード)の坪量を有した。上記のように製造した生機綾織布を熱水中でこすって洗い、低張力下に乾燥した。洗上げ布を次に酸性染料を用いて染色した。完成布を次にその熱的および機械的性質について試験した。これらの試験の結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
実施例2
着心地の良い耐久性布を実施例1のように製造したが、たて糸は20重量パーセントのノメックス(登録商標)タイプ462ステープルファイバー、55重量パーセントのFRレーヨン・ステープルファイバー、および25重量パーセントのナイロン・ステープルファイバーから製造し、紡績糸は3.7の撚り係数を有した。そのように製造した糸は24.6テックス(24綿番手)単糸であった。2つの単糸を次に撚糸機で撚り合わせて双糸を製造した。実施例1と同様な方法および同じ撚りを用いて、20重量パーセント・ノメックス(登録商標)タイプ462ステープルファイバーと80重量パーセントFRレーヨン・ステープルファイバーとの混合物を含んでなる、32.8テックス(18綿番手)を有する単糸を製造した。これらの糸の2つを次に撚り合わせて諸撚糸を形成した。
【0037】
ノメックス(登録商標)/FRレーヨン/ナイロン糸およびノメックス(登録商標)/FRレーヨン糸を、3×1綾織構造において有ひ織機で、それぞれ、たて糸およびよこ糸として使用した。生機綾織布はcm当たり26エンド×17ピック(インチ当たり66エンド×44ピック)の構造、および323g/m(9.7オンス/ヤード)の坪量を有した。上記のように製造した生機綾織布を熱水中でこすって洗い、低張力下に乾燥した。洗上げ布を次に酸性染料を用いて染色した。完成布をその熱的および機械的性質について試験した。これらの試験の結果を表2に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
実施例3
布を実施例1のように製造したが、たて糸およびよこ糸の両方とも50重量パーセントのノメックス(登録商標)タイプ462ステープルファイバー、35重量パーセントのヴィジル(登録商標)ステープルファイバー、および15重量パーセントのナイロン・ステープルファイバーから製造し、紡績糸は3.7の撚り係数を有した。そのように製造した糸は24.6テックス(24綿番手)単糸であった。これらの糸の2つを次に撚糸機で撚り合わせて双糸を製造した。同じ繊維組成物、方法、および撚り係数を用いて、32.8テックス(18綿番手)の単糸を製造した。これらの2つを次に撚り合わせて諸撚糸を形成した。
【0040】
ノメックス(登録商標)/ヴィジル(登録商標)/ナイロン糸を、3×1綾織構造において有ひ織機でたて糸およびよこ糸として使用した。生機綾織布はcm当たり23エンド×16ピック(インチ当たり58エンド×40ピック)の構造、および247.5g/m(7.3オンス/ヤード)の坪量を有した。上記のように製造した生機綾織布を熱水中でこすって洗い、低張力下に乾燥した。洗上げ布を次に酸性染料を用いて染色した。完成布をその熱的および機械的性質について試験した。これらの試験の結果を表3に示す。
【0041】
【表3】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
10〜75重量部の少なくとも1つのアラミド・ステープルファイバー、15〜80重量部の少なくとも1つの難燃性セルロース系ステープルファイバー、および5〜30重量部の少なくとも1つのポリアミド・ステープルファイバーを含んでなる、ステープルファイバーの密接混合物。
【請求項2】
20〜40重量部の少なくとも1つのアラミド・ステープルファイバー、50〜80重量部の少なくとも1つの難燃性セルロース系ステープルファイバー、および15〜20重量部の少なくとも1つのポリアミド・ステープルファイバーがある請求項1に記載の密接混合物。
【請求項3】
少なくとも1つのアラミド・ステープルファイバーがパラ−アラミド繊維、メタ−アラミド繊維、およびそれらの混合物よりなる群から選択される請求項1に記載の密接混合物。
【請求項4】
少なくとも1つのアラミド・ステープルファイバーがパラ−アラミド繊維、メタ−アラミド繊維、およびそれらの混合物よりなる群から選択される請求項2に記載の密接混合物。
【請求項5】
少なくとも1つのアラミド・ステープルファイバーがポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)であり、そして少なくとも1つの難燃性セルロース系ステープルファイバーが難燃性レーヨンである請求項1に記載の密接混合物。
【請求項6】
少なくとも1つのアラミド・ステープルファイバーがポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)であり、そして少なくとも1つの難燃性セルロース系ステープルファイバーが難燃性レーヨンである請求項2に記載の密接混合物。
【請求項7】
少なくとも1つのアラミド・ステープルファイバーがポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)であり、そして少なくとも1つの難燃性セルロース系ステープルファイバーがセルロース支持構造中にポリケイ酸の形で二酸化ケイ素を含んでなり、そしてセルロース支持構造中のポリケイ酸の形での二酸化ケイ素が密接混合物の40重量パーセント以下の量で存在する請求項1に記載の密接混合物。
【請求項8】
少なくとも1つのアラミド・ステープルファイバーがポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)であり、そして少なくとも1つの難燃性セルロース系ステープルファイバーがセルロース支持構造中にポリケイ酸の形で二酸化ケイ素を含んでなり、そしてセルロース支持構造中のポリケイ酸の形での二酸化ケイ素が密接混合物の40重量パーセント以下の量で存在する請求項2に記載の密接混合物。
【請求項9】
請求項1に記載の密接混合物を含んでなる糸。
【請求項10】
請求項9に記載の糸を含んでなる難燃性布。
【請求項11】
難燃性布が平方ヤード当たり4〜15オンスの坪量を有する請求項10に記載の難燃性布。
【請求項12】
請求項11に記載の難燃性布を含んでなる難燃性衣服。
【請求項13】
難燃性布が平方ヤード当たり5.5〜11オンスの坪量を有する請求項10に記載の難燃性布。
【請求項14】
請求項13に記載の難燃性布を含んでなる難燃性衣服。
【請求項15】
請求項5に記載の密接混合物を含んでなる糸。
【請求項16】
請求項15に記載の糸を含んでなる難燃性布。
【請求項17】
難燃性布が平方ヤード当たり4〜15オンスの坪量を有する請求項16に記載の難燃性布。
【請求項18】
請求項17に記載の難燃性布を含んでなる難燃性衣服。
【請求項19】
難燃性布が平方ヤード当たり5.5〜11オンスの坪量を有する請求項16に記載の難燃性布。
【請求項20】
請求項19に記載の難燃性布を含んでなる難燃性衣服。


【公表番号】特表2007−500803(P2007−500803A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522056(P2006−522056)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/024462
【国際公開番号】WO2005/019512
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】