説明

難燃性フェルト材料

本発明は、膨張性グラファイト10〜25重量%、結合剤20〜45重量%、天然の織物用繊維からなる残部(100%まで)を含んでなる難燃性フェルト材料に関する。本発明の難燃性フェルト材料はまた、100%ポリエステルの外側コーティングを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音性および難燃性絶縁材料において使用される、難燃性フェルト材料に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、防音性および/または難燃性の絶縁材料は、特に、建築および自動車製造分野において広く使用されている。
【0003】
使用されるこうした材料の一つがフェルトである。フェルトは、通常少量の植物繊維または合成繊維と混合された、非紡績綿繊維を差し込んでいる、ブレード無し、たて糸無しの織物で構成されている。フェルトを製造するために、木綿と共に使用される繊維の中に、レーヨン、ナイロン、数種のポリマー繊維といった合成繊維だけでなく、麻の繊維、ラミーの繊維またはジュートのような植物繊維も存在している。コンシステンシーと最低限の剛性を与えるために結合剤が添加されるが、通常それは樹脂である。産業レベルにおいては、フェルトは2つの状態で存在し、すなわち、プレ重合状態(結合剤がまだ重合されておらず、そのために、成形品製造用の原料として使用可能である)と重合状態(結合剤がすでに重合されていて、材料に十分な機械的特性を与える網状構造を作っている)である。
【0004】
結合剤を重合させるには、モールド内の材料に温度および/または圧力を加えることが必要である。これらの数値は使用する材料の種類によって決まると考えられる。いったんフェルトが重合してしまうと、フェルトはより大きいコンシステンシーと剛性をもつようになるが、それらはフェルトを形成する材料の残部と結合剤の接合によりもたらされる。フェルトの最終特性は、使用した材料に左右されるだけでなく、結合剤や、さらには重合プロセスとその主要なパラメーター(圧力および温度)にも影響されると考えられる。
【0005】
したがって、結合剤とその重合プロセスが改変される場合には、数種の異なった生成物、すなわち、さまざまなタイプの、異なる特性(基本的には、剛性やコンシステンシーのような機械的特性;絶縁性はそのままである)をもつフェルトが得られる。
【0006】
フェルトは広範囲の産業、特に自動車製造および建築産業に応用されるが、自動車製造および建築産業向けの材料はすべて特別な耐火性をもつことが要求され、その要求レベルは、応用のタイプに依存するだけでなく、その最終組み立てから、考えられる熱および/または火炎源までの距離にも依存する。この目的で、フェルトの製造には遅延剤または難燃剤が使用されている。
【0007】
「ユーロクラス」(Euroclasses)としての建築材料の認証の一本化といった、ヨーロッパ法のいくつかの変化、ならびにエンジン用の防音材の規格のいくつかの変化により、特定部品における耐火性の要求レベルが増大している。
【0008】
遅延の方策を理解するためには、耐火性のさまざまな種類を区別しなければならない;耐燃性、耐放射性、延焼性、およびファイアポケットの拡大。
【0009】
現在、化学難燃剤であるポリリン酸アンモニウムまたはホウ酸塩がフェルトまたは凝集フェルト織物材料において耐熱性樹脂と共に使用されているが、これらは15〜30%の割合で樹脂にすでに含まれている。その他のハロゲン系化合物の使用は、オゾン層への負の影響のために、全分野で制限されている。
【0010】
これら化合物の一般的な作用機構は、燃焼中におけるラジカルの発生で始まる。火炎が可燃性の物質をとらえると、それは火炎と熱の作用により燃焼されて、空気中に存在する酸素と反応するガスを放出し、これが燃焼および熱産物を生成して、再度その物質を分解する。これらの化合物のラジカルは、活性化されるために火炎・燃焼(flame)を必要とするので、「難燃剤」(flame retardant)と呼ばれている。
【0011】
しかしながら、主な燃焼源が物質/難燃剤系の外に存在する場合、それは長期適用フレームテスト(例えば、5分間のフォルクスワーゲンによるPV3357、または10分間のボルボによるSTD1028,5816)の場合であるが、難燃剤はその適用の閾値域にのみ適用され、一方、その焦点では、難燃剤を含めて、すべての物質が分解される。
【0012】
その結果は、勢いのある火炎の適用域が完全に破壊されることとなり、これは上記規格により規定された域内では容認されるが、非常に有害な燃焼煙を大量に発生させる。こうした有害な煙の発生は、特にさまざまなタイプの化合物を生成する難燃剤の存在により引き起こされ、こうした化合物の中でも、空気湿度または呼吸系の粘液面に接触する場合の酸を挙げることができる。
【0013】
ファイアポケットの場合には、火炎のない燃焼である。その迅速消化は、エンジンの全ての非金属部品および電線を備えた装置の規格において、最重要目標の一つである。この必要条件を満たすために、多くの場合に、また材料の密度に応じて、難燃性材料の含量を高めることが義務づけられている。しかし、それらがその後、重合中に三次元網状構造の形成に参加することを考慮すると、樹脂/難燃性材料の関係には限界があり、また非難燃性部品と同じ構成を有する部品を達成するために樹脂含量を高める必要がある。他方、50%の非繊維化合物は、一定で均質な材料を達成するにあたって、フェルト製造の限界を暗示している。
【0014】
ファイアポケットを消す際に高レベルの要件を有する部品では、また達成可能な最大難燃剤含量が十分でない場合には、ある量のファイバーグラス(最大40%)が混合物に添加される。ファイバーグラスの高コストに加えて、それと組み合わせたフェルトの製造は厄介であり、それらを製造しかつ作業者を保護するために、生産ラインのかなりの投資が予想される。中間材料および最終部品のいずれの取り扱いにも、さらなる防護が必要であり、ファイバーグラスは皮膚や眼の刺激といった症状を引き起こす可能性がある。
【0015】
長期フレームテストに適合するための現在の解決策は、プレ酸化型ポリアクリルニトリルファイバー(PANOXファイバーまたは炭素繊維)を30〜50%の割合で使用することからなる。その製造後かつ不織布への適用前に、これらのファイバーは燃焼中に発生するのと同様の酸化プロセスを経ており、したがって、どのような種類のさらなる酸化に対しても高い抵抗性を獲得している。この付加的な処理工程は当該ファイバーのコストを劇的に増加させ、そして全体的には、最終部品のコストを大幅に増加させる。
【発明の開示】
【0016】
本発明の難燃性フェルト材料は、火炎に対する良好な難燃耐火性のみならず、より高い防護を可能にする、特定の技術的特徴をいくつか備えている。本発明は、織物用繊維に基づく防音および断熱部品の多種多様な用途に関するものであるが、それらは、建物にだけでなく、客室コンパートメントまたは車両用エンジンに据えつけられるために、高度な耐火性が求められている。
【0017】
本発明の材料は、膨張性グラファイトが難燃性部材として加えられているタイプのフェルトからなる。グラファイトは、一般に、六方晶原子群の重なり合った層に基づいた結晶構造を特徴としている。その層はきわめて安定で抵抗力があるものの、重なり合った層間の結合は比較的弱い。膨張性グラファイトは、好ましくは、層間に窒素系または硫黄系の化合物を包含している。このようにして、グラファイトが熱せられると、その層がアコーディオンのように引き延ばされて、グラファイトは約250℃からその本来のサイズを350倍まで増加する。
【0018】
難燃性フェルト材料は、繊維と結合剤と膨張性グラファイトから構成されているが、例えば火炎により、加熱されると、それは膨張性グラファイト粒子のサイズの増加を引き起こし、繊維間の空間を占有して耐熱層を形成する。その成長は熱源に向かって進行する。この効果はフェルト部品の表面において特に明白であり、このようにしてグラファイトの表面層が作られ、これは火炎や熱が入り込むのを防止する。
【0019】
こうした系を用いると、フェルトは、火炎にさらされた時に有害な汚染煙を大量に放出することがない。さらに、当該材料は他の難燃剤のように消耗することがないので、長引く火炎の場合にも使い切るというリスクがない。
【0020】
その上、膨張性グラファイトの使用は、綿、大麻、ジュートなどの天然起源の織物用繊維の使用を可能にする。
【0021】
本発明の難燃性フェルトは、それが溢れ出る可能性のある液体(例えば、油、水、ベーンモーターの場合には燃料)を吸収するのを避けるためにコーティングを施すことができると予想される。したがって、難燃性材料を用いて製造された部品は100%ポリエステル不織布でコーティングされる。バックフェルトは通常の火炎に対する溶媒または難燃製品を含まないため、このポリエステルはそのような溶媒または難燃製品のいずれも必要としない。
【0022】
本発明の好ましい実施形態
難燃性フェルト材料の好ましい実施形態において、それは以下の成分を含む:
− 膨張性グラファイト 10〜25重量%
− 重合性結合剤 20〜45重量%
− 繊維 100%までの残部
場合により、上記組成の難燃性フェルト材料は、100%ポリエステル不織布による追加の表面コーティングをもつことを特徴とする。
【0023】
本発明の構成、ならびに好ましい実施形態の例を記載してきたが、何らかの適切な目的のために、そこに記載される構成要素の材料、形状、サイズ、配置を改変することができる。ただし、かかる改変は特許請求の範囲に記載される本発明の基本的な構成を変更するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物用繊維、高分子結合剤および添加物質を含むタイプの難燃性フェルト材料であって、難燃剤として膨張性グラファイト10〜25重量%、結合剤20〜45重量%、および織物用繊維100%までの残部を含むことを特徴とする、上記フェルト材料。
【請求項2】
織物用繊維が天然起源のものである、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
織物用繊維が植物起源のものである、請求項2に記載の材料。
【請求項4】
結合剤が重合性の樹脂である、請求項1に記載の材料。
【請求項5】
100%ポリエステルの外側コーティングを有する、請求項1に記載の材料。
【請求項6】
外側コーティングが不織布のシートである、請求項5に記載の材料。

【公表番号】特表2008−542574(P2008−542574A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515231(P2008−515231)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【国際出願番号】PCT/ES2005/000324
【国際公開番号】WO2006/131572
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(507402990)グループ インダストリアル カテンサ エス.アー. (1)
【Fターム(参考)】